JP4061842B2 - 紙葉類鑑別装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙葉類の真偽を鑑別するための紙葉類鑑別装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、紙幣・有価証券・商品券等の紙葉類又はクレジットカード・キャッシュカードというプラスチックカード(以下、本明細書中これら総称して単に紙葉類という。)が偽造されるケースが増えている。対応策としてこれらの紙葉類に、見る角度により明暗・色が変化するOVI(Optical Variable Ink)等により印刷された文字・図形・記号や、ホログラムなどによる文字・図形・記号(以下、これらを単に変色要素という。)を設け、見る角度に応じて色の見え方が異なる紙葉類とする場合がある。
【0003】
これらの変色要素を備えた紙葉類の偽造は困難であり、大量に発行する紙葉類に変色要素を設けることは偽造を防止する有効な手段である。
この変色要素の判別は、人間による判別と機械による判別が存在する。紙葉類を人間が判別しようとするとき、紙葉類を傾けながら変色要素を観察すれば、見る方向により変色要素の色が変化するので真偽を容易に確認できる。
一方、自動販売機、両替機、または、無人店舗等の入出金機等に挿入された紙葉類(特に紙幣)を自動的に判別する場合、変色要素が見る角度により異なる点を利用し、複数の方向からの色を検出して変色要素の有無を検出する。
【0004】
このような紙葉類に設けられた変色要素の検出動作を実現する鑑別装置(以下、紙葉類鑑別装置という。)の従来技術について説明する。図18,図19は従来技術の紙葉類鑑別装置の構成図である。
例えば、図18で示す従来技術の紙葉類鑑別装置では、光源2と、2組のレンズ8、光バンドパスフィルタである2組のフィルタ9、2組の受光素子10を備えており、異なる2方向から色を検出している。
また、図19で示す従来技術の紙葉類鑑別装置では、1台のCCD(Charge Coupled Device)カメラ11を備え、CCDカメラ11が広範囲に紙葉類の色を検出している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術による変色要素を検出する紙葉類鑑別装置の構成にあっては、図18で示したような高価な光学部品であるレンズ8、フィルタ9、受光素子10を少なくとも2組以上用いる構成や、図19で示したような高価のCCDカメラ11を用いる構成とする必要があることから、いずれも高コストの紙葉類鑑別装置となり、低コスト化が望まれる自動販売機などの装置では、コスト的な問題が生じる。
【0006】
また、図18で示した従来技術では、レンズ8、フィルタ9、受光素子10を2組以上設ける構成となって全体形状が大きく、また、図19で示した従来技術では、CCDカメラ11も形状が大きいため、小型化が求められる自動販売機などではこれら技術を採用できないという問題があった。
以上に述べたように従来技術の課題は、上記変色要素を検出する紙葉類鑑別装置の低コスト化および小型化である。
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、形状が小さく、かつ安価な構成で、精度良く変色要素を判別する紙葉類鑑別装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、
変色要素を備える紙葉類の真偽を鑑別する装置において、
紙葉類の変色要素に対し白色光または予め定められた波長を含む光を照射する光源と、
この光源と紙葉類との相対位置に変化を与えることにより前記変色要素の透過または反射光に波長および出射角度が異なる第1,第2の検出光を生ぜしめる移動手段と、
第1,第2検出光を入射の後に偏向し、第1,第2透過光または第1,第2反射光を出射する透過型または反射型の第1の回折型光学素子と、
前記第1の回折型光学素子から出射される第1,第2透過光または第1,第2反射光を相違する波長に応じて異なる方向へ偏向し、第3,第4透過光または第3,第4反射光を出射する透過型または反射型の第2の回折型光学素子と、
前記第2の回折型光学素子から出射された第3,第4透過光または第3,第4反射光を受光し、受光位置に応じて検出信号を出力する位置検出素子と、
前記位置検出素子から出力された検出信号により第3,第4透過光または第3,第4反射光の受光位置を判別し、第3,第4透過光、または、第3,第4反射光の受光位置が所定位置と一致する場合、紙葉類が真正であると判断する鑑別処理部と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に係る発明では、
請求項1に記載の紙葉類鑑別装置において、
前記第1の透過型または反射型の回折型光学素子は、第1,第2検出光を入射の後に偏向し、第1,第2透過光または第1,第2反射光を出射する複合機能を実現する表面形状を有する回折格子面を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に係る発明では、
請求項1に記載の紙葉類鑑別装置において、
前記第1の透過型または反射型の回折型光学素子は、
第1の検出光を入射の後に偏向し、第1透過光または第1反射光を出射する透過型または反射型の第1の部分と、
第2の検出光を入射の後に偏向し、第2透過光または第2反射光を出射する透過型または反射型の第2の部分と、
からなる表面形状を有する回折格子面を備えることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に係る発明では、
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の紙葉類鑑別装置において、
前記第2の透過型または反射型の回折型光学素子は、
前記第1の回折型光学素子から出射される第1,第2透過光または第1,第2反射光を相違する波長に応じて異なる方向へ偏向し、第3,第4透過光または第3,第4反射光を出射する複合機能を実現する表面形状を有する回折格子面を備えることを特徴とする。
【0012】
また、請求項5に係る発明では、
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の紙葉類鑑別装置において、
前記第2の回折型光学素子から出射される第1透過光または第1反射光を相違する波長に応じて異なる方向へ偏向し、第3透過光または第3反射光を出射する透過型または反射型の第1の部分と、
前記第1の回折型光学素子から出射される第2透過光または第2反射光を相違する波長に応じて異なる方向へ偏向し、第4透過光または第4反射光を出射する透過型または反射型の第2の部分と、
からなる表面形状を有する回折格子面を備えることを特徴とする。
【0013】
また、請求項6に係る発明では、
変色要素を備える紙葉類の真偽を鑑別する装置において、
紙葉類の変色要素に対し白色光または予め定められた波長を含む光を照射する光源と、
この光源と紙葉類との相対位置に変化を与えることにより前記変色要素の透過または反射光に波長および出射角度が異なる第1,第2の検出光を生ぜしめる移動手段と、
第1,第2検出光を入射の後に相違する波長に応じて異なる方向へ偏向し、第5,第6透過光または第5,第6反射光を出射する透過型または反射型の第3の回折型光学素子と、
前記第3の回折型光学素子から出射された第5,第6透過光または第5,第6反射光を受光し、受光位置に応じて検出信号を出力する位置検出素子と、
前記位置検出素子から出力された検出信号により第5,第6透過光または第5,第6反射光の受光位置を判別し、第5,第6透過光、または、第5,第6反射光の受光位置が所定位置と一致する場合、紙葉類が真正であると判断する鑑別処理部と、
を備えることを特徴とする。
【0014】
また、請求項7に係る発明では、
請求項6に記載の紙葉類鑑別装置において、
前記第3の透過型または反射型の回折型光学素子は、第1,第2検出光を入射の後に偏向し、第5,第6透過光または第5,第6反射光を出射する複合機能を実現する表面形状を有する回折格子面を備えることを特徴とする。
【0015】
また、請求項8に係る発明では、
請求項6に記載の紙葉類鑑別装置において、
前記第3の透過型または反射型の回折型光学素子は、
第1の検出光を入射の後に偏向し、第5透過光または第5反射光を出射する透過型または反射型の第1の部分と、
第2の検出光を入射の後に偏向し、第6透過光または第6反射光を出射する透過型または反射型の第2の部分と、
からなる表面形状を有する回折格子面を備えることを特徴とする。
【0016】
また、請求項9に係る発明では、
請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の紙葉類鑑別装置において、
各回折型光学素子の形状の設計に際し、
光線を回折型光学素子に入射した場合の回折型光学素子面上における干渉パターンの位相分布を求め、
前記回折型光学素子面上に仮想的に引かれた複数の線に沿う前記位相分布の変化率からその位相分布の極大値および極小値を検索し、
前記仮想的な線に沿って隣り合った二つの前記極大値同士もしくは極小値同士を順次選出し、
前記二つの前記極大値同士を選出した場合には、それら二つの極大値の間に、それら二つの極大値の一方とそれら二つの極大値に挟まれた極小値との差が段差となるように、しかも、前記回折型光学素子から出射される透過光または反射光が所定方向へ向かうような斜面が形成されるように、前記位相分布を鋸歯状パターンで近似することにより、表面形状が決定される透過型又は反射型の回折型光学素子を用い、
前記二つの前記極小値同士を選出した場合には、それら二つの極小値の間に、それら二つの極小値の一方とそれら二つの極小値に挟まれた極大値との差が段差となるように、しかも、前記回折型光学素子からの透過光または反射光が所定方向へ向かうような斜面が形成されるように、前記位相分布を鋸歯状パターンで近似することにより、表面形状が決定される透過型又は反射型の回折型光学素子を用いることを特徴とする。
【0017】
また、請求項10に係る発明では、
請求項9記載の紙葉類鑑別装置において、
前記位相分布が構成する回折格子と交差するように前記回折型光学素子面上に仮想的に引かれた互いに平行な複数の直線に沿って、前記位相分布の極大値および極小値が検索することで表面形状が決定される透過型又は反射型の回折型光学素子を用いることを特徴とする。
【0018】
また、請求項11に係る発明では、
請求項9記載の紙葉類鑑別装置において、
前記位相分布が構成する回折格子の形状から求まる曲率中心近傍から前記回折型光学素子面上を放射状に延びる仮想的な複数の線に沿って、前記位相分布の極大値および極小値が検索することで表面形状が決定される透過型又は反射型の回折型光学素子を用いることを特徴とする。
【0019】
また、請求項12に係る発明では、
請求項9記載の紙葉類鑑別装置において、
前記位相分布が構成する回折格子と交差するように前記回折型光学素子面上に仮想的に複数の折れ線又は曲線を引き、それら複数の折れ線又は曲線に沿って、前記位相分布の極大値および極小値が検索することで表面形状が決定される透過型又は反射型の回折型光学素子を用いることを特徴とする。
【0020】
また、請求項13に係る発明では、
請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の紙葉類鑑別装置において、
各回折型光学素子の形状の設計に際し、
光線を回折型光学素子に入射した場合の回折型光学素子面上における干渉パターンの位相分布を求め、
前記回折型光学素子面上に仮想的に引かれた複数の線に沿う前記位相分布の変化率からその位相分布の極大値および極小値を検索し、
前記仮想的に引かれた線に沿って隣り合った二つの極大値(A,B)を選出し、それら二つの極大値(A,B)の一方(極大値A)に連なる、仮想的な複数の線に沿う極大値列(C1、C2、…、Ci、…、CN:iは1からNまでの自然数)が形成する曲線を考え、前記極大値列の各々の極大値(Ci )位置における前記曲線の法線に沿って、前記極大値(B)の存在する側に前記極大値(Ci)とは別の極大値(Di )を検出し、
前記極大値(Ci )と前記別の極大値(Di )との間に、それら二つの極大値(Ci 、Di )に挟まれた極小値との差が段差となるように、しかも、前記回折型光学素子から出射される透過光または反射光が所定方向へ向かうような斜面が形成されるように、前記位相分布を鋸歯状パターンで近似することにより、表面形状が決定される透過型又は反射型の回折型光学素子を用いることを特徴とする。
【0021】
また、請求項14に係る発明では、
請求項9〜請求項13の何れか1項に記載の紙葉類鑑別装置において、
前記位相分布全体の最大値Imaxoと最小値Iminoとを求め、それら最大値Imaxo及び最小値Iminoの差(Imaxo−Imino )をN分割した間隔((Imaxo−Imino )/N)で、前記近似された前記位相分布を量子化することにより、
表面形状が決定される透過型又は反射型の回折型光学素子を用いることを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の紙葉類鑑別装置の実施形態について説明する。まず、第1実施形態について説明する。図1は本実施形態の構成図、図2は変色要素を説明する説明図、図3は本実施形態の構成要素の第1の回折型光学素子の説明図、図4は本実施形態の構成要素の第2の回折型光学素子の説明図、図5は本実施形態の構成要素の位置検出素子(PSDおよびPDアレイ)の出力例を示す図である。
【0023】
まず、紙葉類鑑別装置の第1実施形態について図1を用いて説明する。紙葉類鑑別装置は、光源2、第1の回折型光学素子4、第2の回折型光学素子5、位置検出素子6を備えている。また、図示しないが、紙葉類1と光源2との相対位置に変化を与える移動手段(本実施例では紙葉類を搬送する移動手段である)と、位置検出素子6から出力される検出信号を用いて鑑別処理を行う鑑別処理部が設けられている。
紙葉類鑑別装置内に搬送される紙葉類1には観察する方向により色の見え方が異なる変色要素31が設けてある。変色要素32は、図示しない搬送装置により搬送方向へ向けて紙葉類1が搬送されたときに、変色要素31が移動した状態を表す、つまり、変色要素31と変色要素32は符号は異なるが同じものである。
【0024】
続いてこの変色要素について図2を用いて説明する。図2(a)では通常の紙葉類の印刷文字等に照明光が照射された場合が、また、図2(b)では紙葉類上にある変色要素31(32)に照明光が照射された場合がそれぞれ図示されている。
通常の紙葉類では、図2(a)で示すように、白色光(波長λ1,λ2が含まれるものとする。)で照明すると印刷されたインクの色により反射される光の波長が決まり、通常の拡散反射面は、全方向に拡散し、どの方向から見ても同じ色に見える。
【0025】
一方、紙葉類1上に設けられた変色要素31(32)に照明光が照射される場合、図2(b)で示すように、変色要素31(32)からの反射光は反射する角度により波長が異なる。このため、図1でも示すように、変色要素31から角度θ1で反射するならば波長λ1の第1検出光となり、変色要素32から角度θ2で反射するならば波長λ2の第2検出光となる。変色要素の具体例として、先に説明したが、OVIによる文字・記号・図形や、ホログラムを用いた文字・記号・図形などがある。
【0026】
続いて、紙葉類鑑別装置の各構成について説明する。紙葉類1には先に説明した変色要素31(32)が印刷等により設けられている。
光源2は、紙葉類鑑別装置内において、紙葉類1が搬送される搬送路の上側であって、かつ紙葉類1の変色要素31(32)を照明できる位置に配置される。
そして、光源2は、紙葉類鑑別装置に挿入された紙葉類1の変色要素31(32)に対し、白色光または所定の波長(λ1およびλ2)を含む光線を照射するようになされている。
【0027】
第1の回折型光学素子4は、図3に示すように、波長λ1・入射角度θ1の第1検出光、および、波長λ2・入射角度θ2の第2検出光が入射したとき、波長はそのまま維持するが、角度についてはともに出射角度θ3となるように偏向して、第1透過光および第2透過光として出射する。これは図1でも示すように、第1検出光が入射する位置を第1の部分とし、また、第2検出光が入射する位置を第2の部分とし、第1の部分と第2の部分とでは回折格子等を相違させた構成としている。この構成は、後述するが、以下登場する第1,第2,第3の回折型光学素子についても共通である。
【0028】
なお、図3では透過型の第1の回折型光学素子4について説明してあるが、波長λ1・入射角度θ1の第1反射光が第1の部分に、および、波長λ2・入射角度θ2の第2反射光が第2の部分に入射したとき、波長はそのまま維持するが、角度については出射角度θ3となるように偏向して、第1反射光および第2反射光を出射するような反射型の第1の回折型光学素子4としても良い。透過型または反射型の第1の回折型光学素子4とするかは適宜設計・選択される。
【0029】
第2の回折型光学素子5は、図4に示すように、入射した光の波長に応じて偏向角を変える機能を有しており、波長λ1・角度θ4の第1透過光(第1反射光)および波長λ2・角度θ4の第2透過光(第2反射光)が入射されたならば、それぞれ角度θ5,θ6に偏向して、波長λ1・角度θ5の第3透過光および波長λ2・角度θ6の第4透過光を出射する。
この場合も図1,図4でも示すように、第1透過光(第1反射光)が入射する位置を第1の部分とし、また、第2透過光(第2反射光)が入射する位置を第2の部分とし、第1の部分と第2の部分とでは回折格子等を相違させた構成としている。
【0030】
なお、図4では透過型の第2の回折型光学素子5について説明してあるが、波長λ1・角度θ4の第1透過光(第1反射光)が第1の部分に、また、波長λ2・角度θ4の第2透過光(第2反射光)が第2の部分に入射されたならば、それぞれ角度θ5,θ6に偏向して、波長λ1・角度θ5の第3反射光および波長λ2・角度θ6の第4反射光を出射する反射型の第2の回折型光学素子5としても良い。透過型または反射型の第2の回折型光学素子5とするかは適宜設計・選択される。
【0031】
位置検出素子6は、半導体位置検出素子(PSD:Position Sensitive Detector)、または、多分割位置検出素子(PDアレイ:Photo Diode Array)等であり、PSDは、図1でも明らかなように、1方向に長い受光面を持ち、光の入射した位置に応じた電気出力を得ることができるようになされている。PDアレイは複数のPDからなり、光の入射したPDより出力が得られる。
【0032】
続いて紙葉類鑑別装置による鑑別処理について説明する。
図1に示すように、紙葉類1が紙葉類鑑別装置に挿入され、搬送方向に向けて搬送路上を搬送されるとき、光源2により照明される。まず、変色要素31で波長λ1の第1検出光が角度θ1で変色要素から出射され、第1の回折型光学素子4の第1の部分および第2の回折型光学素子5の第1の部分を経て位置検出装置6に入射する。
【0033】
続いて、紙葉類1が搬送路上を進み、変色要素31が変色要素32の位置に来ると、第1の回折型光学素子4に対する入射位置が第2の部分となり、波長λ2の第2検出光が角度θ2で変色要素から反射され、第1の回折型光学素子4の第2の部分および第2の回折型光学素子5の第2の部分を経て位置検出素子6に入射する。
【0034】
位置検出素子6においては、入射した光線が第3透過光(第3反射光)であるか、または、第4透過光(第4反射光)であるかによって光の検出位置が相違し、その結果検出信号が異なることとなり、検出位置により波長が判る。
変色要素31からの第3透過光(第3反射光)が波長λ1の光として受光され、少し時間が経って変色要素32からの第4透過光(第4反射光)が波長λ2の光として受光されるので、位置検出素子6の検出信号は図5で示すような信号となる。このような検出信号が図示しない鑑別処理部へ出力されたならば、鑑別処理部は、図示しないメモリ部にこの検出信号を記憶させ、予め登録してある真正の信号パターンと比較して一致するならば変色要素からの反射光であると判別でき、この紙葉類1には変色要素を有している、つまり真の紙葉類と鑑別する。
【0035】
一方、偽造紙幣類等の偽の紙葉類で変色要素を持たない場合、変色要素の検出光が出射されることはなく、反射光の波長はλ1,λ2の何れか1つの波長を有する反射光しか存在しないか、または、両波長の反射光が無くなる。このため図5で示す第3透過光(第3反射光)または第4透過光(第4反射光)であることを示す2つの波形の内1つまたは2つとも無くなる。鑑別処理部は、図示しないメモリ部にこの検出信号を記憶させ、予め登録してある真正の信号パターンと比較して一致しないならば変色要素からの反射光でないと判別でき、この紙葉類1には変色要素を有していない、つまり偽の紙葉類と鑑別する。
【0036】
なお、上述の第1の回折型光学素子4は、図1,図3で示したように、第1の部分と第2の部分とを分ける回折格子面を有する構成以外にも、図20で示すように第1の部分と第2の部分とを分けない回折格子面とすることもできる。
具体的には後述する複合機能を実現する表面形状を設計し、この表面形状を有する回折格子面を備える第1の回折形光学素子4とする。
ここに複合機能を有するとは、本明細書中では、波長および入射角度が異なる複数の入射光をおのおの任意の方向へ偏向させる機能を指している。このような複合機能を実現する表面形状の設計方法は後述される。
この回折格子面は、第1,2検出光をそれぞれ任意の出射角度の第1,2透過光(第1,2反射光)に偏向するため、あえて第1の部分,第2の部分に分けなくとも良い。このように第1,第2の部分を有する回折格子面とするか複合機能を有する回折格子面とするかは適宜選択される。
【0037】
また、上述の第2の回折型光学素子5は、図1,図4で示したように、第1の部分と第2の部分とを分ける回折格子面を有する構成以外にも、図21で示すように第1の部分と第2の部分とを分けない回折格子面とすることもできる。
この回折格子面は通常(例えば単純な鋸形の回折格子面)の回折格子面としても良い。このような通常の回折格子面を有する回折形光学素子に入射角度が同じで波長が異なる第1,2透過光(第1,2反射光)が入射した場合、波長を維持したまま出射角を相違させることができるのは周知であり、あえて第1の部分,第2の部分に分けなくとも良い。
【0038】
さらに、複合機能を有する表面形状を設計し、この表面形状を有する回折格子面を備える第2の回折形光学素子5とするようにしてもよい。この回折格子面は、波長および入射角度が異なる第1,第2透過光(第1,第2反射光)をそれぞれ任意の出射角度の第3,第4透過光(第3,第4反射光)に偏向する格子面であり、あえて第1の部分,第2の部分に分けなくとも良い。このように第1,第2の部分を有する回折格子面とするか複合機能を有する回折格子面とするかは適宜選択されるものである。
さらにまた、上記実施例では、第1,第2の検出光を変色要素31の反射光として説明しているが、変色要素の透過光をもって、第1,第2の検出光としても良い。
【0039】
図22は第1の回折型光学素子4および第2の回折型光学素子5がともに複合機能を有する回折格子面を備える紙葉類鑑別装置の構成図であり、図23は第1の回折型光学素子4は第1,第2の部分を有するが第2の回折型光学素子5は複合機能を有するあるいは通常の回折格子面を有する紙葉類鑑別装置の構成図である。これらのように上述の第1の回折型光学素子4および第2の回折型光学素子5を適宜組み合わせて構成することができる。
【0040】
続いて、本発明の紙葉類鑑別装置の第2実施形態について図を用いて説明する。図6は本実施形態の構成図、図7は本実施形態の構成要素の第3の回折型光学素子の説明図である。第1実施形態では第1の回折型光学素子4および第2の回折型光学素子5を備えていたが、本実施形態では、図6で示すように複合機能を有する第3の回折型光学素子7を有している点が相違する。なお、その他、紙葉類1、変色要素31、変色要素32、光源2、位置検出素子6については、第1実施形態と同様であるとしてその詳細な説明を省略する。
【0041】
複合機能を持つ第3の回折型光学素子7は、第1の実施形態の第1の回折型光学素子4と第2の回折型光学素子5との機能を併せ持つように設計されたものである。図7で示すように、波長λ1・入射角度θ1の第1検出光、および、波長λ2・入射角度θ2の第2検出光が入射したとき、第3の回折型光学素子7は、入射した光の波長および角度に応じて偏向角を変える機能を有しており、それぞれ角度θ5,θ6に偏向して、波長λ1・角度θ5の第5透過光、および、波長λ2・角度θ6の第6透過光を出射する。これも図6,図7でも示すように、第1検出光が入射する位置を第1の部分とし、また、第2検出光が入射する位置を第2の部分とし、第1の部分と第2の部分とでは回折格子等を相違させた構成としている。
【0042】
なお、図6,図7では透過型の第3の回折型光学素子7について説明してあるが、波長λ1・入射角度θ1の第1検出光、および、波長λ2・入射角度θ2の第2検出光が入射したとき、第3の回折型光学素子7は、入射した光の波長に応じて偏向角を変える機能を有しており、それぞれ角度θ5,θ6に偏向して、波長λ1・角度θ5の第5反射光、および、波長λ2・角度θ6の第6反射光を出射する反射型の第3の回折型光学素子7としても良い。透過型または反射型の第3の回折型光学素子7とするかは適宜設計・選択される。
PDアレイやPSDである位置検出素子6により、第3の回折型光学素子7からの出射光が検出され、検出信号が出力される。
【0043】
続いて第2実施形態による鑑別動作について説明する。図6で、紙葉類1が紙葉類鑑別装置に挿入され、搬送方向に向けて搬送路上を搬送されるとき、光源2により照明される。まず、変色要素31で波長λ1の第1検出光が角度θ1で変色要素から出射され、第3の回折型光学素子7の第1の部分を経て位置検出素子6に入射する。
紙葉類1が搬送路上を進み、変色要素31が変色要素32の位置に来ると、第3の回折型光学素子7に対する入射位置が異なり、波長λ2の第2検出光が角度θ2で変色要素から反射され、第3の回折型光学素子7の第2の部分を経て位置検出素子6に入射する。
【0044】
位置検出素子6においては、入射した光線が第5透過光(第5反射光)であるか、または、第6透過光(第6反射光)であるかによって光の検出位置が相違し、その結果検出信号が異なることとなり、検出位置により波長が判る。
変色要素31からの第5透過光(第5反射光)が波長λ1の光として受光され、少し時間が経って変色要素32からの第6透過光(第6反射光)が波長λ2の光として受光されるので、位置検出素子6の検出信号は第1実施形態と同様に図5で示すような信号となる。このような検出信号が図示しない鑑別処理部へ出力されたならば、鑑別処理部は、変色要素からの反射光であると判別でき、この紙葉類1には変色要素を有している、つまり真の紙葉類と鑑別し、また、図5で示した2つの波形の内1つまたは2つともない場合は偽物の葉類と鑑別することとなる。
【0045】
なお、上述の第3の回折型光学素子7は、図6,図7で示したように第1の部分と第2の部分とを分ける回折格子面を有する構成以外にも、図24,図25で示すように第1の部分と第2の部分とを分けない回折格子面とすることもできる。
具体的には後述する複合機能を実現する表面形状を設計し、この表面形状を有する回折格子面を備える第3の回折形光学素子7とする。この回折格子面は、第1,2検出光をそれぞれ任意の出射角度の第5,6透過光(第5,6反射光)に偏向する格子面であり、あえて第1の部分,第2の部分に分けなくとも良い。このように第1,第2の部分を有する回折格子面とするか複合機能を有する回折格子面とするかは適宜選択されるものである。
【0046】
続いて第1,第2の実施形態に共通する、複合機能を実現する表面形状をし、精度の高い第1,第2,第3の回折型光学素子について説明する。上記の第1,第2実施形態で説明したような機能を持つ第1,第2,第3の回折型光学素子の具体例としては、実際の光学系を配置して干渉縞を記録するホログラフィック光学素子がある。ホログラフィック光学素子例として、例えば、図8に示すように、第1の回折型光学素子4と同等の機能を持たせることができるが、透過光や高次回折光などのノイズ成分が多く、位置検出素子6へ入射する光の効率が低い。たとえば、位相分布を2値化したパターンで素子を製作しており、回折効率が40%程度の素子であった。
【0047】
この回折効率を改善するため、本発明者らは、回折効率を向上させる設計方法について発明し、特願平11−327080(発明の名称:回折型光学素子の設計方法)として特許出願するに至った。本実施形態では、回折型光学素子を回折効率を向上させる設計方法により求め、この回折型光学素子を紙葉類鑑別装置に利用することで回折効率を向上させる。
【0048】
まず、第1の回折光学素子4、第2の回折光学素子5、および、第3の回折型光学素子7の第1の設計方法について図面に基づいて説明する。なお、第1の回折光学素子4、第2の回折光学素子5、および、第3の回折型光学素子7の設計方法として、共通する方法であるため、以下これら回折型光学素子を一括して単に回折型光学素子50と称して説明する。
【0049】
図9は、回折型光学素子50の第1の設計方法の手順を示すフローチャート、図10は直接位相計算法の説明図、図11は鋸歯状パターンに近似する処理の説明図、図12は回折型光学素子の一断面における鋸歯状パターンを示す図、図13は鋸歯状パターンを量子化した一例を示す図、図14は極小値を基準に鋸歯状パターンを形成した場合の図である。
本実施の形態における回折型光学素子の設計は、電子計算機内に記憶されたプログラムを実行することに行われるものであって、処理が開始されると、先ずステップ101において、位相分布が演算される。
【0050】
ステップ101における位相分布の演算手法は、特に限定されるものではないが、例えば従来より知られている直接位相計算法が適用可能である。
直接位相計算法については、例えば応用物理学会論文誌に「自由空間光インターコネクション用計算機ホログラム」として発表されている(S.Kawai and Y.Kohga,Computer-Generated Holograms for Free-Space Optical Interconnections,Japanese Journal of Applied Physics,Vol.30,PP.L210-2103(1991))。
【0051】
直接位相計算法の概要を、図10を伴って簡単に説明すると、先ず、これから設計する回折型光学素子50が置かれる平面Aと、その回折型光学素子50によって偏向される各光線の光源S0および焦点S1とを考える。座標(x,y,0)は、平面A上の点を表す座標である。座標原点は、平面A上の一点である。光源S0の位置座標は(Xs、Ys、Zs)である。焦点S1の位置座標は(Xm、Ym、Zm)である。そして、各光源S0から光線を射出したときの平面A上で干渉波の強度I(x、y)を、数式1に従って演算する。
【0052】
【数1】
【0053】
ここでrmおよびrsは、以下のように定義される。
【0054】
【数2】
【0055】
上記式中、Asは入力波の振幅、Amは集光点の焦点S1から光を放射したときの光の振幅、iは虚数単位、λは光の波長、k(=2π/λ)は光の波数、x,yは回折型光学素子上の座標(x=0、1、2、…、n:y=0、1、2、…、n)である。そして、I(x、y)が、回折型光学素子50上の位相分布である。なお、回折型光学素子50に直交する方向を、z方向としている。
【0056】
回折型光学素子50の位相分布I(x、y)が求まったら、ステップ102に移行し、初期設定として、各カウンタi,j,k,lのそれぞれの値を0にセットする。なお、iは、位相分布I(x、y)のx座標上の位置を動かすためのカウンタ、jは、位相分布I(x、y)のy座標上の位置を動かすためのカウンタ、kは、y=jにおける極大値の位置を記憶するためのカウンタ、lは、y=jにおける極小値の位置を記憶するためのカウンタである。
【0057】
そして、ステップ103に移行し、y=jにおけるi番目の位相分布I(i,j)とi+1番目の位相分布I(i+1,j)との大小関係に基づき、そのi番目の位相分布I(i,j)からi+1番目の位相分布I(i+1,j)に向かって増加しているか或いは減少しているかを判断する。
ステップ103で位相分布Iが減少していると判断された場合(I(i、j)>I(1+1、j))には、ステップ104に移行し、フラグF(i)を−1にセットし、次いでステップ105に移行し、前回セットしたフラグF(i−1)が1であるか否かを判定する。
【0058】
即ち、フラグFは、ステップ103において位相分布Iが減少していると判断された場合には、ステップ104で1にセットされる一方、減少していると判断された場合には、後述のステップ108で−1にセットされるフラグであるから、ステップ105の判定が「YES」の場合には、位相分布Iが増加から減少に転じた時点であると判断でき、従って、極大値が検索されたと判断できる。
【0059】
そこで、ステップ105の判定が「YES」の場合には、ステップ106に移行し、y=jにおける極大値の位置を記憶するために、Nmax(k、j)に現在のカウンタiの値を記憶する。そして、ステップ107に移行し、カウンタkを1だけインクリメントする。ステップ105の判定が「NO」の場合には、ステップ106、107の処理は実行しない。
【0060】
一方、ステップ103で位相分布Iが増加していると判断された場合(I(i、j)<I(i+1、j))には、ステップ108に移行し、フラグF(i)を1にセットし、次いでステップ109に移行し、前回セットしたフラグF(i−1)が−1であるか否かを判定する。このステップ109の判定が「YES」の場合には、位相分布Iが減少から増加に転じた時点であると判断でき、従って、極小値が検索されたと判断できる。
【0061】
そこで、ステップ109の判定が「YES」の場合には、ステップ110に移行し、y=jにおける極小値の位置を記憶するために、Nmin(1、j)に現在のカウンタiの値を記憶する。そして、ステップ111に移行し、カウンタ1を1だけインクリメントする。ステップ109の判定が「NO」の場合には、ステップ110、111の処理は実行しない。
【0062】
そして、ステップ107又は111の処理を終えた場合、並びにステップ106又は109の判定が「NO」の場合には、ステップ112に移行し、カウンタiをインクリメントし、ステップ113に移行し、カウンタiがその最大値mを越えているか否かを判断し、越えていない場合には、ステップ103に戻り上述した処理を再び実行するが、ステップ113の判定が「YES」の場合には、ステップ114に移行し、カウンタiを0クリアするとともに、カウンタjをインクリメントする。
【0063】
次いで、ステップ115に移行し、カウンタjがその最大値nを越えているか否かを判断し、越えていない場合には、ステップ103に戻り上述した処理を再び実行するが、ステップ115の判定が「YES」の場合には、ステップ101で求めた全ての位相分布I(i、j)に対して極大値及び極小値の検索処理が終了したと判断し、ステップ116に移行する。
【0064】
つまり、ステップ102〜115の処理が完了すれば、回折型光学素子50が置かれる平面上に仮想的に引かれた互いに平行なx軸方向の線に沿って、位相分布I(i、j)の極大値及び極小値が検索されたことになる。
そこで、ステップ116に移行し、上記ステップ102〜115の処理によって検索された極大値及び極小値を用いて、位相分布I(i、j)を鋸歯状パターンで近似する処理を実行する。ステップ116で実行される鋸歯状処理の槻要は、図11に示す通りである。
【0065】
即ち、図9のステップ106、110において、Nmax(k、j)及びNmin(1、j)を記憶しているから、y=jにおいて何番目の位相分布I(i、j)が極大値又は極小値であるかは既知である。よって、それらNmax(k、j)及びNmin(1、j)に基づけば、極大値Imax(p、j)と極小値Imin(p、j)とを選出することができる。そして、極大値及び極小値の性質から、それらは交互に表れる。
【0066】
図11には、y=jにおけるp番目の極大値Imax(p、j)の次に、p番目の極小値Imin(p、j)が表れ、その次にp+1番目の極大値Imax(p+1、j)、その次にp+1番目の極小値Imin(p+1、j)、その次にp+2番目の極大値Imax(j、p+2)が表れている様子が示されている。
そして、曲線上に並ぶ黒丸が、ステップ116における鋸歯状処理の実行前の位相分布I(x、y)を示している。
【0067】
なお、本実施形態では、隣り合った二つの極大値Imax(p、j)とImax(p+1、j)とに挟まれた部分を単位に鋸歯状処理を実行するようになっていて、全体としてはその鋸歯状処理の繰り返しであるから、ここでは、任意の隣り合った二つの極大値Imax(p、j)とImax(p+1、j)とに挟まれた部分の鋸歯状処理について説明する。
【0068】
先ずは、鋸歯状パターンの間隔と段差とを決定する。なお、これら間隔及び段差は、鋸歯状パターンの一つ一つについて個別に決定する。
鋸歯状パターンの間隔Wpは、隣り合った二つの極大値Imax(p、j)とImax(p+1、j)との間のx軸に沿った方向の距離である。具体的には、Nmax(k、j)−Nmax(p、j)である。
【0069】
鋸歯状パターンの段差Apは、極大値Imax(p、j)と、その隣の極小値Imin(p、j)との差(Imax(p、j)−Imin(p、j))である。なお、鋸歯状パターンの段差は、極大値Imax(p+1、j)と、極小値Imin(p、j)との差とすることも可能であるが、かかる場合には、鋸歯状パターンの斜面の形状が、図11の場合とは逆向きになる。
つまり、鋸歯状パターンの斜面の形状としては、図11のような左下がりのものと、図11とは逆に右下がりのものとの二種類考えれるが、いずれを採用するかは適宜選択される。
【0070】
次に、間隔Wp及び段差Apに基づき、極大値Imax(p、j)を通るように鋸歯状パターンの斜面を決定する。図11の例では、極大値Imax(p、j)を通り左下がりに傾斜した太実線が、決定された斜面である。
そして、極大値Imax(p、j)とImax(p+1、j)との間にある各位相分布I(i、j)を、上記のように決定された斜面上の点に移動する。図11の例では、白丸で示すのが移動した後の位相分布I(i、j)である。
【0071】
以上のような鋸歯状処理をy=jの全体に対して実行すれば、図12に折れ線で示すような鋸歯状パターンが得られ、同様の処理をy=0〜nの全てに対して実行すれば、位相分布I(x、y)全体が、鋸歯状パターンで近似される。
なお、鋸歯状パターンに近似された後の位相分布I(x、y)は、例えば図13に示すように量子化することが望ましい。量子化処理としては、例えば位相分布I(x、y)全体の最大値ImaxOと最小値IminOとを求め、それら最大値ImaxO及び最小値IminOの差(ImaxO−IminO)をN分割した間隔((ImaxO−IminO)/N)で、近似された位相分布I(x、y)を量子化するという処理が有効である。
【0072】
以上で図9の処理を終了する。そして、最終的に得られた近似化(若しくは、近似化及び量子化)されている位相分布I(x、y)を利用して、回折型光学素子50を製造する。
本実施の形態のような手順を踏んで設計・製造された回折型光学素子50にあっては、位相分布Iがブレーズ化されていることになるから、それがなされていない従来の回折型光学素子に比べて、回折効率が大幅に向上する。
また、本実施の形態にあっては、鋸歯状パターンに近似する処理を、位相分布I(x、y)の並んだ方向であるx軸に平行な仮想的な線に沿って行っているため、鋸歯状処理が簡易であるという利点もある。
【0073】
そして、鋸歯状パターンに近似された位相分布I(x、y)を量子化する場合には、位相分布I(x、y)全体の最大値ImaxOと最小値IminOを基準として量子化を行っているから、y=0〜nの全てに対して同じ基準で量子化が行え、実際に回折型光学素子50を製造する際に不具合が生じる可能性が小さいという利点もある。
【0074】
なお、この実施の形態では、図11に示したように、鍍歯状パターンの間隔Wpを、隣り合った二つの極大値Imax(p、j)とImax(p+1、j)との間の距離としているが、これに限定されるものではなく、隣り合った二つの極小値Imin(p、j)とImin(p+1、j)との間の距離を、鋸歯状パターンの間隔Wpとしてもよい。かかる場合でも、実際は、図14に示すように、図12と同様の鋸歯状パターンが得られる。つまり、図14と図12とを比較すると判るが、両者の鋸歯状パターンは、形状が同じで、位置が半周期分ずれているだけである。
【0075】
また、この実施の形態では、鋸歯状パターンに近似する処理を、位相分布I(x、y)の並んだ方向であるx軸に平行な坂想的な線に沿って行っているが、これに限定されるものではなく、例えば、位相分布I(x、y)に含まれる回折格子の形状から曲率中心を求め、その曲率中心から回折型光学素子50に沿って放射状に延びる複数の線に沿って極大値及び極小値を検索し、そして鋸歯状パターンに近似する処理を行ってもよい。かかる処理であれば、鋸歯状パターンをより三次元的に近似できるという利点がある。
【0076】
また、極大値及び極小値を検索するための線は、この実施の形態のように直線に限定されるものではなく、曲線や折れ線であってもよい。そして、そのような曲線や折れ線を、位相分布I(x、y)における勾配が急峻な方向を向き、且つ互いに交差しないように、複数本選定し、その曲線又は折れ線に沿って極大値及び極小値を検索し、そして鋸歯状パターンに近似する処理を行ってもよい。かかる処理であっても、鋸歯状パターンをより三次元的に近似できるという利点がある。
【0077】
次に、他の設計方法による回折型光学素子について、図15を参照して説明する。図15は、第2の設計方法を説明するための説明図である。
鋸歯状パターンで近似する前の元の位相分布I(x、y)を見てみると、山の部分と各の部分からなっている。そこで、本設計方法では、その山の部分又は谷の部分を抽出し、その山の部分又は谷の部分毎に鋸歯状パターンで近似するようにしている。
【0078】
ここで、図15中、符号60は位相分布の極大値の連なりを示す。図15において、上記第1の設計方法と同様の手順によって、y=jについて連続する極大値Imax(s、j)、極小値Imin(p、j)、極大値Imax(q、j)を検出する。図15に矢印で示す、極大値Imax(s、j)を含めた極大値の連なりの曲線に関して極大値Imax(s、j)における法線hjを設定し、この法線上で第1の実施例と同様の手法で位相分布の変化率から極大値Imax(s、j)を含む極大値の連なりImax(s、j)とImax(s’、P’)及びこれら極大値の間にある極小値Imin(s”、p”)を検出する。これら極大値Imax(s、j)、極小値Imin(s”、p”)、極大値Imax(s’、p’)について第1の設計方法と同様に位相分布を斜面により近似する。
【0079】
そして、上記と同様な手法で極大値の連なりについて位相分布の斜面による近似を極大値の連なりについて半周行う。このような操作によって一つの各の部分をブレーズ化することができる。
第1の設計方法と同様に位相分布全面を操作し上記手法を用いることにより位相分布全面の近似的なブレーズ化が行われる。一度ブレーズ化した谷の部分については計算機上で記憶をしておき二重の操作を避けることができる。
【0080】
以上説明した第2の設計方法によれば、回折効率が大幅に向上した回折型光学素子50を設計することができる。
次に、本発明の第3の設計方法について、図16及び図17を参照して説明する。ここで、図16は、第3の設計方法における処理手順を示すフローチャートであり、図17は、第3の設計方法の説明図である。
【0081】
この第3の設計方法は、上記の第2の設計方法の処理手順をより明確化するために、フローチャートなどを補充したものであり、第2の設計方法と同様に、位相分布の山の部分又は谷の部分を抽出し、その山の部分又は谷の部分毎に鋸歯状パターンで近似するようにしたものである。
この第3の設計方法では、図16に示すように、まずステップ201において、位相分布I(x、y)上に仮想的に引かれた線上で位相分布の変化率からその位相分布の極大値及び極小値の検索処理を行う。この検索処理は、第1の設計方法における図9のフローチャートのステップ101〜115に相当する処理であるので、ここではその詳細な説明は省略する。
【0082】
ステップ202では、ステップ201で求めた極大値の内の1つから、その極大値に連なる、仮想的な複数の線に沿う極大値を検出し、極大値の連なる曲線Csを抽出する。図17を参照して具体的に説明すると、先ず極大値MaxI(s、j)から始まり、この極大値MaxI(s、j)に連なる極大値MaxI(t、j+1)と極大値MaxI(t’、j−1)を検出し、これらを含む極大値の連なる曲線を抽出する。なお、図17中の符号60は、位相分布の極大値の連なりを示している。
【0083】
ステップ203では、ステップ201で仮想的に引かれた線上において、ステップ202で選出された極大値と極小値を挟んで隣り合うもう1つの極大値を含む極大値の連なる曲線Cqを抽出する。図17を参照して具体的に説明すると、極大値MaxI(s、j)と極小値MinI(r、j)を挟んで隣合う極大値MaxI(q、j)について、この極大値MaxI(q、j)を含む極大値の連なる曲線を抽出する。
【0084】
このようにして得られる2つの曲線Csと曲線Cqとに挟まれた部分には前述のように極小値が存在し、この部分は位相分布の谷の部分になる。
次に、このようにして求めた位相分布の谷の部分をブレーズ化する方法について説明する。
まずステップ204では、前記曲線Cs上の極大値の1点を選出し、その点における曲線Csの法線を引き、次のステップ205ではその法線と曲線Cqの交点の極大値を求める。さらにステップ206では、その法線上で2つの曲線Cs、Cqに挟まれた極小値を検出する。
【0085】
以上のステップ204〜206の各処理について、図17を参照して説明する。まず、極大値MaxI(s、j)上でこの極大値を含む曲線の法線hjを引く。次に、その法線hjと極大値MaxI(q、j)を含む極大値の連なる曲線との交点の極大値MaxI(s’、p’)を検出する。さらに、その2つの極大値MaxI(s、j)と極大値MaxI(s’、p’)とに挟まれた極小値MinI(s”、p”)を検出する。
【0086】
次に、ステップ207では、ステップ204〜206で求めた各法線上の隣合う2つの極大値と、それらの極大値に挟まれた極小値の位置と、位相分布の強度とから鋸歯状処理を行う。
この鋸歯状処理は、第1の実施の形態の場合に説明した鋸歯状処理と同様である。第1の実施の形態で述べた間隔Wp及び段差Apに相当する量が、第3の実施の形態では、隣合った2つの極大値MaxI(s、j)と極大値MaxI(s’、p,)とが存在する位置間の水平距離、及び極大値MaxI(s、j)とその隣の極小値MinI(s”、p”)との差{MaxI(s、j)−MinI(s”、p”)}に相当する。
【0087】
そこで、間隔Wp及び段差Apに相当する量に基づいて極大値MaxI(s、j)を通るように鋸歯状パターンの斜面を決定する。次に、極大値MaxI(s、j)と極大値MaxI(s’、p’)との間にある各位相分布を第1の設計方法で述べた方法と同様に斜面上の点に移動する。このとき、第1の設計方法と同様に鋸歯状化の処理は面の傾きが2通りあるが、この場合にはその都度、光線追跡等の方法により高効率な方向を選択する。
【0088】
ステップ208では、曲線Cs上の全ての点で上記のステップ204〜207の各処理が終了したか否かを判断する。この判断の結果、肯定判定(Yes)の場合には、曲線Csと曲線Cqに挟まれた部分の鋸歯状処理が終了したことになるので、次のステップ209に進む。
ステップ209では、位相分布上で曲線Csと曲線Cqに囲まれた部分(処理の終了した部分)を電子計算機のメモリに記憶する。これにより、処理済みの部分が後に再処理されるのを防止できる。
【0089】
ステップ210では、位相分布面上で未処理の部分の有無を前記メモリを参照して判断する。そして、未処理部分が有る場合には、ステップ202〜209の各処理を繰り返し、未処理部分がなくなった場合には設計は終了する。
なお、以上の設計方法の手順の説明では、極大値に挟まれた谷の部分の鋸歯状処理を例に挙げたが、これに限定されるものではなく、説明文中の極大値と極小値、山の部分と谷の部分をそれぞれ入れ替えることで、極小値に挟まれた山の部分を鋸歯状処理することができる。
【0090】
以上説明した第3の設計方法によれば、位相分布の山の部分又は谷の部分を抽出し、その山の部分又は谷の部分毎に鋸歯状パターンで近似するようにしたので、回折効率が大幅に向上した回折型光学素子50を設計することができる。
なお、上記第1〜第3の各設計方法では、透過型の回折型光学素子の設計に適用した場合について説明しているが、これに限定されるものではなく、反射型の回折型光学素子の設計であっても当然に適用可能である。
【0091】
以上説明したように、第1〜第3の設計方法によれば、回折格子が重なり合った複雑な場合であってもブレーズ化が行えて回折効率を向上できる回折型光学素子を設計でき、高回折効率である回折型光学素子とすることができる。
特に、請求項13に係る発明であれば、回折効率をより頼著に向上できる回折型光学素子とすることができる。
【0092】
そしてこのような第1〜第3の設計方法により設計された第1〜第3の回折型光学素子を用いて位置検出素子6は変色要素を高効率かつ低ノイズに検出することが可能となり、紙葉類の真偽の判別精度が向上する。
【0093】
さて、上記の数1で表される平面A上で干渉波の強度I(x、y)は、1の光源S0および焦点S1を想定し、入力と出力が1対1の場合の数式であった。これは入力と出力が1:1で対応する第1の部分と第2の部分とを設計する場合を想定している。
しかしながら、第1検出光および第2検出光をそれぞれ異なる方向へ透過または反射させるという複合機能を実現する表面形状とするためには、複数の入力に対し複数の出力を対応させる必要がある。このためには先ほど説明した直接位相計算法で用いた数1を変形する。
【0094】
具体的には、図26に示すように、先ず、これから設計する回折型光学素子50が置かれる平面Aを想定し、その回折型光学素子50によって偏向される光線の光源S0Aおよび焦点S1Aを考える。座標(x、y、0)は、平面A上の点を表す座標である。座標原点は、平面A上の一点である。光源S0Aの位置座標は、(Xs、Ys、Zs)である。焦点S1Aの位置座標は、(Xm、Ym、Zm)である。そして、平面A上で干渉波の強度IA(x、y)を求める。
同様に、光源S0Bおよび焦点S1Bを考える。光源S0Bの位置座標は、(Xl、Yl、Zl)である。焦点S1Bの位置座標は、(Xq、Yq、Zq)である。そして、平面A上で干渉波の強度IB(x、y)を求める。
このようにして求めた強度IA(x、y)および強度IB(x、y)を合成して次式を得る。
【0095】
【数3】
【0096】
ここでrm、rs、rlおよびrqは、以下のように定義される。
【0097】
【数4】
【0098】
上記式中、As,Alはそれぞれ光源S0A,光源S0Bから放射された光の振幅、Am,Aqはそれぞれ焦点S1A,焦点S1Bから光を放射したときの光の振幅、iは虚数単位、λ1,λ2はそれぞれ光源S0A,光源S0Bから放射される光の波長、kA(=2π/λ1),kB(=2π/λ2)はそれぞれ光源S0A,S0Bから放射される光の波数、x,yは回折型光学素子上の座標(x=0、1、2、…、n:y=0、1、2、…、n)である。そして、IA(x、y)および強度IB(x、y)を加算したI(x、y)が、回折型光学素子50上の位相分布である。なお、回折型光学素子50に直交する方向を、z方向としている。
その後は上述の第1〜第3の設計方法を用いることで複合機能を有する表面形状を求めることができるため、その説明を省略する。
【0099】
以上説明したように、第1〜第3の設計方法を用いて複合機能を有する第1,第2または第3の回折型光学素子を求めることができる。これら第1,第2または第3の回折型光学素子を、複合機能を実現する表面形状を有する回折格子面を備えた回折型光学素子とすることで、入射光および出射光を実状に併せて最適な方向へ偏向する回折型光学素子とすることができる。
【0100】
【発明の効果】
以上本発明によれば、1組の受光光学系で2つ以上の方向からの光を検出することが可能で、また回折型光学素子は成形により製作することができるので、従来のレンズのような厚さがなく、全体構成の小型化が可能となり、また、部品数が少ないので低コストである。
さらに請求項4に係る発明によれば、第1の回折型光学素子と第2の光学素子との機能を一体化した第3の回折型光学素子としたため、さらに小型かつ安価にすることができる。
また、請求光7〜請求光14に係る発明によれば、鑑別対象である紙葉類から反射される検出光を高効率かつ低ノイズに検出できる回折型光学素子を用いるので判別精度が高い紙葉類鑑別装置とすることができる。
総じて、形状が小さく、かつ安価な構成で、精度良く変色要素を判別する紙葉類鑑別装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の紙葉類鑑別装置の第1実施形態の構成図である。
【図2】変色要素を説明する説明図である。
【図3】本発明の紙葉類鑑別装置の第1実施形態の構成要素の第1の回折型光学素子の説明図である。
【図4】本発明の紙葉類鑑別装置の第1実施形態の構成要素の第2の回折型光学素子の説明図である。
【図5】本発明の紙葉類鑑別装置の第1実施形態の構成要素の位置検出素子(PSDおよびPDアレイ)の出力例を示す図である。
【図6】本発明の紙葉類鑑別装置の第2実施形態の構成図である。
【図7】本発明の紙葉類鑑別装置の第2実施形態の構成要素の第3の回折型光学素子の説明図である。
【図8】ホログラフィック光学素子の説明図である。
【図9】回折型光学素子50の第1の設計方法の手順を示すフローチャートである。
【図10】直接位相計算法の説明図である。
【図11】鋸歯状パターンに近似する処理の説明図である。
【図12】回折型光学素子の一断面における鋸歯状パターンを示す図である。
【図13】鋸歯状パターンを量子化した一例を示す図である。
【図14】極小値を基準に鋸歯状パターンを形成した場合の図である。
【図15】第2の設計方法を説明するための説明図である。
【図16】第3の設計方法における処理手順を示すフローチャートである。
【図17】第3の設計方法の説明図である。
【図18】従来技術の紙葉類鑑別装置の構成図である。
【図19】従来技術の紙葉類鑑別装置の構成図である。
【図20】本発明の紙葉類鑑別装置の第1実施形態の構成要素の第1の回折型光学素子の説明図である。
【図21】本発明の紙葉類鑑別装置の第1実施形態の構成要素の第2の回折型光学素子の説明図である。
【図22】第1,第2の回折型光学素子がともに複合機能を有する紙葉類鑑別装置の構成図である。
【図23】第1の回折型光学素子は第1,第2の部分を有するが第2の回折型光学素子5は複合機能を有するあるいは通常の回折格子面を有する紙葉類鑑別装置の構成図である。
【図24】第3の回折型光学素子が複合機能を有する紙葉類鑑別装置の第2実施形態の構成図である。
【図25】複合機能を有する第3の回折型光学素子の説明図である。
【図26】直接位相計算法の説明図である。
【符号の説明】
1 紙葉類
2 光源
31 変色要素
32 変色要素
4 第1の回折型光学素子
5 第2の回折型光学素子
6 位置検出素子
7 第3の回折型光学素子
50 回折型光学素子
60 位相分布の極大値の連なり
Claims (14)
- 変色要素を備える紙葉類の真偽を鑑別する装置において、
紙葉類の変色要素に対し白色光または予め定められた波長を含む光を照射する光源と、
この光源と紙葉類との相対位置に変化を与えることにより前記変色要素の透過または反射光に波長および出射角度が異なる第1,第2の検出光を生ぜしめる移動手段と、
第1,第2検出光を入射の後に偏向し、第1,第2透過光または第1,第2反射光を出射する透過型または反射型の第1の回折型光学素子と、
前記第1の回折型光学素子から出射される第1,第2透過光または第1,第2反射光を相違する波長に応じて異なる方向へ偏向し、第3,第4透過光または第3,第4反射光を出射する透過型または反射型の第2の回折型光学素子と、
前記第2の回折型光学素子から出射された第3,第4透過光または第3,第4反射光を受光し、受光位置に応じて検出信号を出力する位置検出素子と、
前記位置検出素子から出力された検出信号により第3,第4透過光または第3,第4反射光の受光位置を判別し、第3,第4透過光、または、第3,第4反射光の受光位置が所定位置と一致する場合、紙葉類が真正であると判断する鑑別処理部と、
を備えることを特徴とする紙葉類鑑別装置。 - 請求項1に記載の紙葉類鑑別装置において、
前記第1の透過型または反射型の回折型光学素子は、第1,第2検出光を入射の後に偏向し、第1,第2透過光または第1,第2反射光を出射する複合機能を実現する表面形状を有する回折格子面を備えることを特徴とする紙葉類鑑別装置。 - 請求項1に記載の紙葉類鑑別装置において、
前記第1の透過型または反射型の回折型光学素子は、
第1の検出光を入射の後に偏向し、第1透過光または第1反射光を出射する透過型または反射型の第1の部分と、
第2の検出光を入射の後に偏向し、第2透過光または第2反射光を出射する透過型または反射型の第2の部分と、
からなる表面形状を有する回折格子面を備えることを特徴とする紙葉類鑑別装置。 - 請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の紙葉類鑑別装置において、
前記第2の透過型または反射型の回折型光学素子は、
前記第1の回折型光学素子から出射される第1,第2透過光または第1,第2反射光を相違する波長に応じて異なる方向へ偏向し、第3,第4透過光または第3,第4反射光を出射する複合機能を実現する表面形状を有する回折格子面を備えることを特徴とする紙葉類鑑別装置。 - 請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の紙葉類鑑別装置において、
前記第2の回折型光学素子から出射される第1透過光または第1反射光を相違する波長に応じて異なる方向へ偏向し、第3透過光または第3反射光を出射する透過型または反射型の第1の部分と、
前記第1の回折型光学素子から出射される第2透過光または第2反射光を相違する波長に応じて異なる方向へ偏向し、第4透過光または第4反射光を出射する透過型または反射型の第2の部分と、
からなる表面形状を有する回折格子面を備えることを特徴とする紙葉類鑑別装置。 - 変色要素を備える紙葉類の真偽を鑑別する装置において、
紙葉類の変色要素に対し白色光または予め定められた波長を含む光を照射する光源と、
この光源と紙葉類との相対位置に変化を与えることにより前記変色要素の透過または反射光に波長および出射角度が異なる第1,第2の検出光を生ぜしめる移動手段と、
第1,第2検出光を入射の後に相違する波長に応じて異なる方向へ偏向し、第5,第6透過光または第5,第6反射光を出射する透過型または反射型の第3の回折型光学素子と、
前記第3の回折型光学素子から出射された第5,第6透過光または第5,第6反射光を受光し、受光位置に応じて検出信号を出力する位置検出素子と、
前記位置検出素子から出力された検出信号により第5,第6透過光または第5,第6反射光の受光位置を判別し、第5,第6透過光、または、第5,第6反射光の受光位置が所定位置と一致する場合、紙葉類が真正であると判断する鑑別処理部と、
を備えることを特徴とする紙葉類鑑別装置。 - 請求項6に記載の紙葉類鑑別装置において、
前記第3の透過型または反射型の回折型光学素子は、第1,第2検出光を入射の後に偏向し、第5,第6透過光または第5,第6反射光を出射する複合機能を実現する表面形状を有する回折格子面を備えることを特徴とする紙葉類鑑別装置。 - 請求項6に記載の紙葉類鑑別装置において、
前記第3の透過型または反射型の回折型光学素子は、
第1の検出光を入射の後に偏向し、第5透過光または第5反射光を出射する透過型または反射型の第1の部分と、
第2の検出光を入射の後に偏向し、第6透過光または第6反射光を出射する透過型または反射型の第2の部分と、
からなる表面形状を有する回折格子面を備えることを特徴とする紙葉類鑑別装置。 - 請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の紙葉類鑑別装置において、
各回折型光学素子の形状の設計に際し、
光線を回折型光学素子に入射した場合の回折型光学素子面上における干渉パターンの位相分布を求め、
前記回折型光学素子面上に仮想的に引かれた複数の線に沿う前記位相分布の変化率からその位相分布の極大値および極小値を検索し、
前記仮想的な線に沿って隣り合った二つの前記極大値同士もしくは極小値同士を順次選出し、
前記二つの前記極大値同士を選出した場合には、それら二つの極大値の間に、それら二つの極大値の一方とそれら二つの極大値に挟まれた極小値との差が段差となるように、しかも、前記回折型光学素子から出射される透過光または反射光が所定方向へ向かうような斜面が形成されるように、前記位相分布を鋸歯状パターンで近似することにより、表面形状が決定される透過型又は反射型の回折型光学素子を用い、
前記二つの前記極小値同士を選出した場合には、それら二つの極小値の間に、それら二つの極小値の一方とそれら二つの極小値に挟まれた極大値との差が段差となるように、しかも、前記回折型光学素子からの透過光または反射光が所定方向へ向かうような斜面が形成されるように、前記位相分布を鋸歯状パターンで近似することにより、表面形状が決定される透過型又は反射型の回折型光学素子を用いることを特徴とする紙葉類鑑別装置。 - 請求項9記載の紙葉類鑑別装置において、
前記位相分布が構成する回折格子と交差するように前記回折型光学素子面上に仮想的に引かれた互いに平行な複数の直線に沿って、前記位相分布の極大値および極小値が検索することで表面形状が決定される透過型又は反射型の回折型光学素子を用いることを特徴とする紙葉類鑑別装置。 - 請求項9記載の紙葉類鑑別装置において、
前記位相分布が構成する回折格子の形状から求まる曲率中心近傍から前記回折型光学素子面上を放射状に延びる仮想的な複数の線に沿って、前記位相分布の極大値および極小値が検索することで表面形状が決定される透過型又は反射型の回折型光学素子を用いることを特徴とする紙葉類鑑別装置。 - 請求項9記載の紙葉類鑑別装置において、
前記位相分布が構成する回折格子と交差するように前記回折型光学素子面上に仮想的に複数の折れ線又は曲線を引き、それら複数の折れ線又は曲線に沿って、前記位相分布の極大値および極小値が検索することで表面形状が決定される透過型又は反射型の回折型光学素子を用いることを特徴とする紙葉類鑑別装置。 - 請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の紙葉類鑑別装置において、
各回折型光学素子の形状の設計に際し、
光線を回折型光学素子に入射した場合の回折型光学素子面上における干渉パターンの位相分布を求め、
前記回折型光学素子面上に仮想的に引かれた複数の線に沿う前記位相分布の変化率からその位相分布の極大値および極小値を検索し、
前記仮想的に引かれた線に沿って隣り合った二つの極大値(A,B)を選出し、それら二つの極大値(A,B)の一方(極大値A)に連なる、仮想的な複数の線に沿う極大値列(C1、C2、…、Ci、…、CN:iは1からNまでの自然数)が形成する曲線を考え、前記極大値列の各々の極大値(Ci )位置における前記曲線の法線に沿って、前記極大値(B)の存在する側に前記極大値(Ci)とは別の極大値(Di )を検出し、
前記極大値(Ci )と前記別の極大値(Di )との間に、それら二つの極大値(Ci 、Di )に挟まれた極小値との差が段差となるように、しかも、前記回折型光学素子から出射される透過光または反射光が所定方向へ向かうような斜面が形成されるように、前記位相分布を鋸歯状パターンで近似することにより、
表面形状が決定される透過型又は反射型の回折型光学素子を用いることを特徴とする紙葉類鑑別装置。 - 請求項9〜請求項13の何れか1項に記載の紙葉類鑑別装置において、
前記位相分布全体の最大値Imaxoと最小値Iminoとを求め、それら最大値Imaxo及び最小値Iminoの差(Imaxo−Imino )をN分割した間隔((Imaxo−Imino )/N)で、前記近似された前記位相分布を量子化することにより、
表面形状が決定される透過型又は反射型の回折型光学素子を用いることを特徴とする紙葉類鑑別装置。
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