JP4059565B2 - 新規硫酸基転移酵素 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規硫酸基転移酵素に関し、更に詳細には、ガラクトサミノグリカンに含まれるガラクトサミン残基の4位の水酸基に、硫酸基供与体から硫酸基を転移する活性を有するガラクトサミノグリカン硫酸基転移酵素に関する。
【0002】
【従来の技術】
グリコサミノグリカンはアミノ糖残基とウロン酸残基の二糖単位を基本骨格として有する多糖類である。このようなグリコサミノグリカンとしては、ヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン4−硫酸(コンドロイチン硫酸A)、コンドロイチン6−硫酸(コンドロイチン硫酸C)、デルマタン硫酸(コンドロイチン硫酸B)、ケラタン硫酸、ヘパラン硫酸及びヘパリン等が挙げられる。このうちアミノ糖残基としてガラクトサミン残基を有するグリコサミノグリカンをガラクトサミノグリカンと称し、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸C、デルマタン硫酸等がこれに分類される。
【0003】
近年、グリコサミノグリカンの有する様々な生理機能が注目されており、特にそれらが有する硫酸基の量或いは硫酸基の位置等が、上記生理機能と関連していることが徐々に明らかにされている。このようにグリコサミノグリカンの硫酸基の変化による生理活性の変化は、グリコサミノグリカン及びその修飾物の医薬品としての可能性を示唆する。そのため、硫酸基の変化に関連する硫酸基転移酵素の探索が進められ、グリコサミノグリカンの基本骨格の特定位置に硫酸基を転移する酵素が種々知られるようになり、グリコサミノグリカンの修飾への利用が期待されている。
【0004】
このようなグリコサミノグリカン硫酸基転移酵素としては、例えばコンドロイチン6-硫酸基転移酵素(C6ST:ガラクトサミン残基の6位に硫酸基供与体から硫酸基を転移する:Habuchi,O., Matsui,Y., Kotoya,Y., Aoyama,Y., Yasuda,Y., and Noda,M.(1993) J. Biol. Chem. 268, 21968-21974)、ヘパラン硫酸2-O-硫酸基転移酵素(HS2ST:ウロン酸残基の2位に硫酸基供与体から硫酸基を転移する:特開平9−28374号公報)、ヘパラン硫酸6-O-硫酸基転移酵素(HS6ST:グルコサミン残基の6位に硫酸基供与体から硫酸基を転移する:特開平8−33483号公報)及びケラタン硫酸6-O-硫酸基転移酵素(KSGal6ST:ガラクトース残基の6位に硫酸基供与体から硫酸基を転移する:Fukuta,M., Inazawa,J., Torii,T., Tsuzuki,K., Shimada,E., and Habuchi,O.(1997) J. Biol. Chem. 272(51), 32321-32328)等が挙げられる。しかし、ガラクトサミン残基を有するグリコサミノグリカン(ガラクトサミノグリカン)の、ガラクトサミン残基の4位水酸基に硫酸基供与体から硫酸基を転移する作用を有する酵素は得られていなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ガラクトサミノグリカン基本骨格の特定位置のみを硫酸化できれば、生理活性を有する新たなガラクトサミノグリカンを創製することが可能であるが、化学的手法では特定位置のみを硫酸化することは困難であるため、このような目的には酵素の利用が適している。しかし、ガラクトサミノグリカンを硫酸化しうる酵素としては、C6STしか知られておらず、4位水酸基に硫酸基を転移する作用を有する酵素が期待されている。従って、本発明は、ガラクトサミノグリカンに含まれるガラクトサミン残基の4位の水酸基に硫酸基を転移する酵素を提供することを課題とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決することを目的として、本発明者らは鋭意研究を進めた結果、ガラクトサミノグリカンに含まれるガラクトサミン残基の4位の水酸基に硫酸基を転移するガラクトサミノグリカン4−硫酸基転移酵素が、ラットの軟骨肉腫細胞に存在することを見いだし、さらに、これを単離、精製することに成功し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、ガラクトサミノグリカンに含まれるガラクトサミン残基の4位水酸基に、硫酸基供与体から硫酸基を転移する作用を有するガラクトサミノグリカン4−硫酸基転移酵素を提供する。
【0008】
本発明の酵素は、好ましくはコンドロイチンまたは脱硫酸化デルマタン硫酸に作用する。
【0009】
本発明の酵素は、更に下記の性質を有することが好ましい。
至適pH:pH6.5〜7.5
活性の促進:プロタミン、Ca2+により活性が促進される。
活性の阻害:Co2+により活性が阻害される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
本発明の酵素は、ガラクトサミノグリカンに含まれる、ガラクトサミン残基の4位水酸基に、硫酸基供与体から硫酸基を転移する作用を有するガラクトサミノグリカン4−硫酸基転移酵素(以下「G4ST」とも記載する)である。
【0012】
本発明のG4STが作用するガラクトサミノグリカンとは、ガラクトサミン残基を有するグリコサミノグリカンであり、例えばコンドロイチン、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸C及び脱硫酸化したデルマタン硫酸(以下「脱硫酸化デルマタン硫酸」と記載する)が挙げられ、本発明のG4STは特に好適にはコンドロイチン及び脱硫酸化デルマタン硫酸に対して作用する。
【0013】
硫酸基供与体としては、活性硫酸(3’−ホスホアデノシン5’−ホスホ硫酸;以下「PAPS」とも記載する)が挙げられる。
【0014】
また、本発明のG4STは、典型的には下記の(1)〜(10)の何れかの性質を有し、特に(1)、(6)、(7)及び(9)の性質を有することが好ましく、全ての性質を有することが最も好ましいがこれに限定はされない。
(1)基質特異性:コンドロイチン及び脱硫酸化デルマタン硫酸に硫酸基を転移する。またヘパラン硫酸及びCDSNS−ヘパリン(完全脱硫酸化後、N-硫酸化したヘパリン)には実質的に硫酸基を転移しない。
(2)分子量:トヨパールHW−55(東ソー株式会社製)を用いるゲル濾過による分子量が50kDaを示す。
(3)分子量:還元条件下でのSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分子量が60kDa及び64kDaを示す。
(4)分子量:非還元条件下でのSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分子量が50kDa及び54kDaを示す。
(5)分子量:N−グリカナーゼ処理後の非還元条件下でのSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分子量が33kDa及び35kDaを示す。
(6)至適pH:pH6.5〜7.5の範囲、特にpH7.2付近の反応液中で高い硫酸基転移活性を有する。pH4.0以下ではほとんど活性を有しない。
(7)活性の促進:プロタミン(0.25mg/ml)、Ca2+(5mM)により活性が促進される。
(8)活性の促進:Fe2+、Mn2+、Ba2+及びSr2+からなるイオン群のうち、少なくとも1種のイオン(5mM)によって活性が促進される。
(9)活性の阻害:Co2+(5mM)により活性が阻害される。
(10)Km値(PAPSについて):2.7×10-7M。
【0015】
なお、上記の各性質は、本明細書中に記載の実施例に記載の方法に従って確認することが可能である。
【0016】
次に本発明のG4STの製造方法について説明する。
【0017】
後記実施例に示すようにG4STは、本発明によって初めてラット軟骨肉腫細胞の培養上清から単離され、その性質が明らかにされたものである。G4STの性質が明らかにされたので、この性質を指標にすることにより、G4STの製造のための出発材料および精製条件を容易に選択することができる。
【0018】
出発材料の例としては、哺乳類、鳥類等のコンドロイチン硫酸が多く分布する組織、細胞或いはそれらの培養細胞並びにそれらの培養上清を挙げることができる。好ましくは軟骨組織の細胞が挙げられる。特に、ラット軟骨細胞及びその培養上清は、C6STに比べG4STの含量が高いので、好ましい。
【0019】
これらの出発材料からの精製は、自体公知の硫酸基転移酵素の単離、精製方法を応用することにより行うことができる。
【0020】
さらに、精製されたG4STのアミノ酸配列に基づいて、上記細胞などから本発明のG4STをコードする遺伝子を得れば、この遺伝子を適当なベクターと連結し、他の細胞又は微生物に移入し、これらを培養して本発明の酵素を製造することも可能である。
【0021】
従って、本発明のG4STは、前記作用を有する酵素である限り、その由来、製造法は特に限定はされない。
【0022】
本発明のG4STの製造方法としては、下記に示す方法が例示される。
<1>細胞の培養上清の調製
哺乳動物又は鳥類の組織由来の、G4STを含有する細胞又は培養細胞、例えば軟骨肉腫細胞等を適当な培地、例えばダルベッコ変法イーグル培地(ギブコ BRL社製)、コスメディウム-001(コスモバイオ株式会社製)等で培養し、その培養上清を回収、プールする。細胞の生育を促すために、細胞の培養開始時は牛胎児血清等を含有するダルベッコ変法イーグル培地などの有血清培地で培養し、その後、G4STを精製するための培地(当該培地はその後の精製の簡便性などから無血清培地、例えば上記コスメディウム-001等を用いることが好ましい)に交換して培養を継続することが好ましい。培養上清をプールする際は、そこに含まれるG4STの安定性を確保するために、例えば、適当な緩衝液(好ましくはTris-HCl)によりpHを6〜8、好ましくは6.5〜7.5程度に調整し、Triton X-100、MgCl2、2-メルカプトエタノール、グリセロール又はタンパク質分解酵素阻害剤(例えばNα-p-トシル-L-リジンクロロメチルケトン、N-トシル-L-フェニルアラニンクロロメチルケトン、フェニルメチルスルホニルフルオライド)などを添加することが好ましい。
【0023】
<2>クロマトグラフィーによるG4STの精製
G4STの精製は、一般的なアフィニティークロマトグラフィー及びゲルクロマトグラフィーを組み合わせ、通常の酵素の精製で用いる条件下(例えば4℃)で精製することが可能である。例えば、▲1▼ヘパリンセファロースカラムCL-6B(ファルマシアLKBバイオテクノロジー社製)カラムを用いたアフィニティークロマトグラフィー、▲2▼マトレックスゲルレッド(Matrex gel red)Aカラム(アミコン社製)を用いたアフィニティークロマトグラフィー、▲3▼3',5'-ADP-アガロースゲル(シグマ−アルドリッチ社製)によるアフィニティークロマトグラフィーを適宜組み合わせてG4STの精製を行うことが可能である。以下に、その一例について説明する。
【0024】
▲1▼ヘパリンセファロースカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィー
NaCl(0.15M)を含む緩衝液で平衡化したヘパリンセファロースカラムに、<1>で回収した培地をアプライし、前記カラムへの吸着物質をNaCl(0.4M)を含有する緩衝液で溶出する。酵素活性を、例えばHabuchi,O., Matsui,Y., Kotoya,Y., Aoyama,Y., Yasuda,Y., and Noda,M.(1993) J. Biol. Chem. 268, 21968-21974に記載の方法を用いることでモニターし、G4ST活性が高いフラクションを回収する。
【0025】
▲2▼マトレックスゲルレッドAカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィー
▲1▼で得られたフラクションを混合し、NaCl(0.4M)を含有する緩衝液で平衡化したマトレックスゲルレッドAカラムにアプライし、NaCl(0.4M)を含有する緩衝液、次いで、NaCl(0.75M)を含有する緩衝液及びグアニジン塩酸塩(1M)を含有する緩衝液で溶出する。G4STの活性をモニターし、G4STの活性が確認された画分を回収し、NaCl(0.05M)を含有する緩衝液に対して透析してグアニジン塩酸塩を除去する。透析内液に例えばTriton X-100等の界面活性剤を添加しておくことが好ましい。
【0026】
▲3▼3',5'-ADP-アガロースゲルによるアフィニティークロマトグラフィー
▲2▼で得られた溶液を、NaCl(0.05M)を含有する緩衝液(界面活性剤を含有する)で平衡化した3',5'-ADP-アガロースカラムにアプライし、3',5'-ADPを含有する緩衝液(界面活性剤を含有する)で溶出し、G4ST活性を有する画分を回収する。
【0027】
▲4▼ヘパリンセファロースCL-6Bカラムによるアフィニティークロマトグラフィー
▲3▼で得られた画分を、NaCl(0.05M)を含有する緩衝液で平衡化したヘパリンセファロースカラムに重層し、カラムをNaCl(0.4M)を含有する緩衝液で溶出する。回収した吸着画分をNaCl(0.05M)を含有する緩衝液に対して透析する。
上記に例示した精製方法を基に、当業者であればその方法を適宜応用又は改変することにより更に簡略化した精製方法を実施することも可能であると考えられる。
【0028】
例えば、以下の方法が挙げられる。すなわち、培養細胞を物理的抽出法(ホモジナイザー、ガラスビーズミル法、凍結融解法、超音波破砕法又は浸透圧ショックによる抽出法など)又は化学的抽出法(界面活性剤による抽出法など)により抽出液を調製、又は細胞の培養時の培地を回収した培養上清を調製する。そして、前記抽出液又は培養上清から、例えば、硫酸アンモニウム(硫安)等による塩析、遠心分離、透析、限外濾過法、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ゲル濾過法、ゲル浸透クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー若しくは電気泳動法又はこれらの組み合わせ等の処理操作によってG4STを精製する方法が挙げられる。
【0029】
【実施例】
以下に本発明を実施例により更に具体的に詳述する。
【0030】
まず、本実施例において共通して用いた酵素活性の測定方法を説明する。
【0031】
Habuchi, O.らの方法(Habuchi, O., Matsui, Y., Kotoya, Y., Aoyama, Y., Yasuda, Y., and Noda, M. (1993) J. Biol. Chem. 268, 21968-21974)に従ってG4ST活性及びC6ST活性を測定した。反応混合液は、イミダゾール塩酸塩(2.5μmol、pH6.8)、塩化プロタミン(1.25μg)、ジチオスレイトール(0.1μmol)、コンドロイチン(グルクロン酸換算で25nmol、イカ皮膚由来、Habuchi,O. and Miyata,K.(1980) Biochim. Biophys. Acta 616, 208-217に記載の方法により調製)、[35S]PAPS(50pmol:約5.0×105cpm:Delfert, D.M.らの方法(Delfert, D.M., and Conrad, H.E. (1985) Anal. Biochem. 148, 303-310)に従って調製)及び酵素を含む試料を添加して50μlに調製した。
【0032】
上記反応混合液を37℃で20分間インキュベートし、100℃に保温した水浴中に1分間浸して酵素反応を停止させた。反応停止後、通常の方法でファーストデソルティングカラムを用いたゲルクロマトグラフィーで脱塩し、エタノールにより沈殿させ、35Sで標識したコンドロイチンを単離し、放射能を測定した。
【0033】
C6ST活性及びG4ST活性の区別のために、35SでラベルしたコンドロイチンをコンドロイチナーゼACIIで消化し、ペーパークロマトグラフィー(濾紙:Toyo No.51A及び溶媒:1-ブタノール/酢酸/NH3(1M)(容量比2:3:1))により、不飽和二糖(ΔDi-4S(2-acetamide-2-deoxy-3-O-(β-D-gluco-4-enepyranosyluronic acid)-4-O-sulfo-D-galactose)及びΔDi-6S(2-acetamide-2-deoxy-3-O-(β-D-gluco-4-enepyranosyluronic acid)-6-O-sulfo-D-galactose)を分離し、濾紙上の分離された不飽和二糖を紫外線の照射により可視化して、領域を切り出した後、放射能を測定した。
【0034】
また、酵素活性の単位として37℃,pH6.8条件下で1分間あたり1pmolの硫酸基を転移するために必要な酵素活性の量を、酵素活性の1unitと定義した。
【0035】
<1>ラット軟骨肉腫細胞の培養と培地画分の調製
▲1▼ラット軟骨肉腫細胞の培養
ラットの軟骨肉腫細胞(chondrosarcoma:凍結細胞株:LTC)(Midura, R. J., Calabro, A., Yanagishita, M., and Hascall, V. C. (1995) J. Biol. Chem. 270, 8009-8015)を直径10cmの培養皿(ファルコン社製)に一枚あたり2×106個ずつ蒔いた。細胞を培養した培地(1枚あたり10ml)は、ペニシリン(100unit/ml)、ストレプトマイシン(50μg/ml)、5%牛胎児血清及びインスリン(5μg/ml)を含むダルベッコ変法イーグル培地(pH7.4:ギブコ BRL社製)を用い、37℃、5%CO2、95%空気の条件下で培養を行った。培地は一日おきに交換した。細胞がコンフルエントに達した時点で、トリプシン(0.1%)及びコラゲナーゼ(0.1%)を含有するハンクス液(日水製薬株式会社製)で処理し、200枚の10cmの培養皿に上述の培地を用いて、1枚あたり2.0×105個ずつ再度細胞を蒔き、培養を行った。細胞数が培養皿1枚あたり5.2×106個に達した6日目に、培地をコスメディウム-001(コスモバイオ株式会社製)に置換した。コスメディウム-001での軟骨肉腫細胞の培養を更に4日間継続し、2日目と4日目に、使用した培地を回収した。200枚の10cm培養皿での軟骨肉腫細胞の培養は3回行い、培地を回収した。
▲2▼培養上清の調製
回収した培地を、10,000×gで10分間遠心した。遠心によって得られた上清画分にTris-HCl(最終濃度10mM、最終pH7.2)、Triton X-100(最終濃度0.1%)、MgCl2(最終濃度20mM)、2-メルカプトエタノール(最終濃度10mM)、グリセロール(最終濃度20%)及びタンパク質分解酵素阻害剤の混合液(Nα-p-トシル-L-リジンクロロメチルケトン(最終濃度5μM)、N-トシル-L-フェニルアラニンクロロメチルケトン(最終濃度3μM)、フェニルメチルスルホニルフルオライド(最終濃度30μM)及びペプスタチンA(最終濃度3μM))を添加した。上述の添加物を含む回収した培地は「緩衝化培養上清」として、精製を開始するまで4℃で保存した。
【0036】
▲3▼培養期間中のG4ST活性の測定
培養上清及び細胞抽出液中のG4ST活性及びC6ST活性を、無血清培地(コスメディウム-001)に置換後10日間に渡り測定した(図1)。培養上清の調製は上記▲2▼に従い、細胞抽出液の調製は以下の方法により行った。すなわち、ショ糖(0.25M)、Triton X-100(0.01M)を含有するpH7.2のTris-HCl(0.01M)内で培養皿から細胞を剥離させ、ダウンスホモジナイザーでホモジナイズ後、10,000×gで20分間遠心して得られた上清画分を細胞抽出液とした。
【0037】
G4ST活性の測定の結果、無血清培地中のG4ST活性は急速に低下し、4日後にはG4ST活性が初期のG4ST活性の48%まで低下し(図1中、黒丸)、一方、細胞のG4ST活性は培養期間中を通じてほぼ一定であった(図1中、白丸)。
【0038】
公知のニワトリの軟骨細胞から得られるC6ST(Habuchi,O., Tsuzuki, M., Takeuchi, I., Hara, M., Matsui, Y., and Ashikari, S. (1991) Biochem. Biophys. Acta 1133, 9-16)と異なり、G4STの培地への分泌はアスコルビン酸の添加では促進されなかった。培養の全期間にわたって、培地及び細胞の双方にごく微量のC6ST活性が見られた(図1中、黒四角及び白四角)。
【0039】
<2>ガラクトサミノグリカン4-硫酸基転移酵素(G4ST)の精製
以下の全工程は4℃で行った。
▲1▼ヘパリンセファロースCL-6Bカラムによるクロマトグラフィー
NaCl(0.15M)を含有する緩衝液A(Tris-HCl(10mM、pH7.2)、MgCl2(20mM)、CaCl2(2mM)、2-メルカプトエタノール(10mM)、Triton X-100(0.1%)及びグリセロール(20%)を含有)で平衡化したヘパリンセファロース CL-6Bカラム(2.2×28cm:ファルマシア社製)に、前記<1>の▲2▼で調製された「緩衝化培養上清」(200枚の10cm培養皿から得られた4.7L)をアプライした。前記カラムを、NaCl(0.15M)を含有する1Lの緩衝液Aで洗浄し、カラムへの吸着物質をNaCl(0.4M)を含有する1Lの緩衝液Aで溶出した。ヘパリンセファロースCL-6Bによるカラムクロマトグラフィーは3回行い、得られた0.4MのNaClを含む画分は全て混合した。
【0040】
▲2▼マトレックスゲルレッドAカラムによるクロマトグラフィー
▲1▼で得られた、混合した上記画分の半量を、NaCl(0.4M)を含有する緩衝液Aで平衡化したマトレックスゲルレッドAカラム(2.2×9.5cm:アミコン社製)にアプライした。このカラムを、NaCl(0.4M)を含有する200mlの緩衝液A、NaCl(0.75M)を含有する200mlの緩衝液A及びグアニジン塩酸塩(1M)を含有する200mlの緩衝液Aの順で段階的に溶出した。G4ST活性は全て1Mグアニジン塩酸塩溶出画分で確認された。G4ST活性を有する画分を全て回収、混合し、NaCl(0.05M)を含有する緩衝液Aに対して透析を行った。マトレックスゲルレッドAによるクロマトグラフィーはもう1度繰り返し、透析した後の溶液を全て混合した。この溶液にTriton X-100を最終濃度2%で添加した。
【0041】
▲3▼3',5'-ADP-アガロースゲルによるクロマトグラフィー
▲2▼で得られた、Triton X-100(2%)を含有する透析した溶液を、NaCl(0.05M)を含有する改変緩衝液A(上記緩衝液Aに更にTriton X-100を2%含有する)で平衡化した3',5'-ADP-アガロースカラム(1.2×11cm:シグマ−アルドリッチ社製)にアプライした。前記カラムを、NaCl(0.05M)を含有する150mlの改変緩衝液Aで洗浄後、3',5'-ADP(0.1mM)を含有する150mlの改変緩衝液Aで溶出し、溶出画分にG4ST活性を確認し、活性を有する画分を回収、混合した。
【0042】
図2は3',5'-ADP-アガロースカラムからのG4STの溶出曲線であり、矢印は0.1mMの3',5'-ADPを含有する改変緩衝液Aでの溶出開始を示す。図2中、黒丸はG4ST活性、白丸はタンパク質濃度である。
【0043】
▲4▼第二のヘパリンセファロースCL-6Bカラムによるクロマトグラフィー
▲3▼で得られた、G4STを有する画分を、NaCl(0.05M)を含有する緩衝液Aで平衡化したヘパリンセファロースCL-6Bカラム(0.9×6.7cm)にアプライし、カラムをNaCl(0.05M)を含有する50mlの緩衝液Aで洗浄した。カラムに吸着した硫酸基転移酵素を、NaCl(0.4M)を含有する25mlの緩衝液Aで溶出した。回収した画分をNaCl(0.05M)を含有する緩衝液Aに対して透析し、得られた精製されたG4STを-20℃で保存した。
【0044】
<3>各精製工程における比活性
各精製段階における比活性を測定し、G4STの精製の指標とした(表1)。
【0045】
【表1】
<1>の▲2▼で得られた緩衝化培養上清からの精製において、<2>の▲4▼で得られたG4STは比活性で1900倍以上に精製された。表1は、14.2リットルの緩衝化培養上清からのG4STの精製の各段階における精製度を示す。タンパク質量の測定はウシ血清アルブミンを対照として使用してBradford, M. (1976) Anal. Biochem. 72, 248-254記載の方法により行った。第二のヘパリンセファロースCL-6Bにより得られた画分のタンパク質濃度は検出限界以下であったため、Habuchi, O., Matsui, Y., Kotoya, Y., Aoyama, Y., Yasuda, Y., and Noda, M. (1993) J. Biol. Chem. 268, 21968-21974に記載の方法で濃縮した。表1において、3',5'-ADP-アガロースゲルによるクロマトグラフィーで得られた画分のタンパク質濃度が「測定せず(ND)」とされている理由は、得られた画分中のTriton X-100が高濃度であり、タンパク質量の正確な測定が不可能であったためである。
【0046】
<4>基質特異性の確認
前述の酵素活性の測定方法に従い、上記のようにして得られたG4STの、コンドロイチン以外のグリコサミノグリカンへの硫酸基の転移活性を測定した。反応の対照とする反応混合液は、前述の酵素活性の測定方法について記載した反応混合液(イミダゾール塩酸塩(2.5μmol、pH6.8)、塩化プロタミン(1.25μg)、ジチオスレイトール(0.1μmol)、コンドロイチン(グルクロン酸換算で25nmol)、[35S]PAPS(50pmol:約5.0×105cpm)及び酵素、総量50μl)を使用し、上記対照とする反応混合液中に含まれるコンドロイチンを、▲1▼コンドロイチン硫酸A(クジラ軟骨由来)(生化学工業株式会社製)、コンドロイチン硫酸C(サメ軟骨由来)(生化学工業株式会社製)及びコンドロイチン硫酸E(イカ軟骨由来)(Habuchi,O., Sugiura,K., Kawai,N. and Suzuki,S.(1977) J. Biol. Chem. 252, 4570-4576に記載の方法により調製)、▲2▼デルマタン硫酸(ブタ皮膚由来)(生化学工業株式会社製)、▲3▼脱硫酸化デルマタン硫酸(Nagasawaら(Nagasawa,K., Inoue,Y., and Tokuyasu,T.(1995) J. Biochem. 86, 1323-1329)に記載の方法により調製)、▲4▼ヘパラン硫酸(ウシ腎臓由来)(生化学工業株式会社製)、▲5▼CDSNS-ヘパリン(完全脱硫酸化N硫酸化ヘパリン:生化学工業株式会社製)並びに▲6▼ケラタン硫酸(ウシ角膜由来)(生化学工業株式会社提供)に置換して活性を測定した(▲1▼、▲2▼及び▲3▼はそれぞれガラクトサミン換算で25nmol、▲4▼、▲5▼及び▲6▼はそれぞれグルコサミン換算で25nmol)。
【0047】
その結果、コンドロイチンの他に、脱硫酸化デルマタン硫酸にG4STは硫酸基を転移することが判明した。コンドロイチン硫酸Aに対しては、若干量の活性を示し、コンドロイチン硫酸Cは受容体基質となり得た。デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、コンドロイチン硫酸E、ヘパラン硫酸及びCDSNS-ヘパリンには実質的に硫酸基を転移しなかった。
【0048】
<5>SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動
タンパク質の分析のためのSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動は、Laemmli, U. K. (1970) Nature 227, 680-685記載の方法により還元及び非還元条件下において、10%ポリアクリルアミドゲルを用いて行った。タンパク質のバンドは銀染色及びクマシーブリリアントブルーによる染色で検出した。
【0049】
G4STの各精製段階におけるタンパク質は非還元条件下におけるSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動及び銀染色法で分析した(図3レーン1(緩衝化培養上清(<1>の▲2▼))、レーン2(ヘパリンセファロースCL-6Bカラム(<2>の▲1▼))、レーン3(マトレックスゲルレッドAカラム(<2>の▲2▼))、レーン4(第二のヘパリンセファロースCL-6Bカラム(<2>の▲4▼))。第二のヘパリンセファロースCL-6Bカラムの溶出画分に50kDaの広いタンパク質のバンドが明確に現れ、うすく54kDaのバンドも検出された(図3レーン4)。また、精製したG4ST(<2>の▲4▼)について還元条件下でSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、クマシーブリリアントブルーで染色した結果、60kDaと64kDaの2本のバンドが検出された(図3レーン5)。また、精製後のG4ST(<2>の▲4▼)及び当該G4STをN-グリカナーゼ(ジェンザイム社製)で消化したものについて、非還元条件下でSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、比較した(G4ST:図3レーン6、N-グリカナーゼ処理G4ST:図3レーン7)。G4STで観察された50kDaの広いバンド及び54kDaの薄いバンドは、それぞれ消滅し、新たに太い33kDaのバンドとうすい35kDaのバンドが観察されたことから、精製されたタンパク質はN-結合オリゴ糖を含有することが示唆された。図3のレーン8は対照としてN-グリカナーゼのみを非還元条件下で分析した結果を示す。
【0050】
<6>トヨパールHW-55カラムによるG4STのゲルクロマトグラフィー
緩衝液B(NaCl(2M)、Tris-HCl(10mM、pH7.2)、MgCl2(20mM)、CaCl2(2mM)、Triton X-100(0.1%)及びグリセロール(20%)を含有する)で平衡化したトヨパールHW-55カラム(1.4×99cm:東ソー株式会社製)に、0.8mlの試料をアプライし、緩衝液Bで溶出して1.2mlずつの溶出画分を回収し、G4ST活性を測定した(図4)。矢印による表示は、β-アミラーゼ(200kDa)、牛血清アルブミン(66kDa)及び炭酸脱水酵素(29kDa)の溶出位置を示す。
【0051】
トヨパールHW-55クロマトグラフィーの溶出時間よりG4STの分子量は50kDaと算出された。
【0052】
また、図4の最大ピーク近辺のフラクション番号41ないし46のフラクションに含まれるタンパク質をトリクロロ酢酸(10%)で沈殿させ、アセトンで沈殿物を洗浄後、非還元条件下でSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動に付し、銀染色法により検出した(図5)。その結果、フラクション番号43ないし44において50kDa及び54kDaのバンドが検出された。
【0053】
<7>酵素の特性
(1)活性の促進及び阻害
前述の酵素活性の測定方法において、反応混合液に含まれるジチオスレイトールの濃度を変化させてG4STの活性を測定した結果、ジチオスレイトールがG4STの活性を促進することが明らかになった(図6A)。また、他のSH基を含む物質についても、上記同様前述の酵素活性の測定方法を用いてG4ST活性に対する作用を測定したところ、2-メルカプトエタノール又は還元型のグルタチオンもG4ST活性を促進することが判明した。
【0054】
更に、プロタミン(0.25mg/ml)、並びに、Ca2+(5mM)、Fe2+(5mM)、Mn2+(5mM)、Ba2+(5mM)及びSr2+(5mM)などの金属イオンにより活性化されることも明かとなった。G4STの活性は特に5mMのCa2+を添加した際に最も活性化され、Mg2+が最も活性化作用が低い。C6STを活性化することが知られているCo2+(5mM)は活性を阻害することも判明した。
【0055】
(2)最適pH
また、前述の酵素活性の測定方法において、反応混合液中のイミダゾール塩酸塩緩衝液のpHを変化させた(pH範囲6.3〜7.6)他、この緩衝液を、様々なpH範囲を有する緩衝液(0.05M、酢酸緩衝液:pH4.2〜5.4、MES緩衝液:pH5.4〜6.8、Tris-HCl緩衝液:pH7.2〜9.0)に置き換えて、各種pHにおけるG4STの活性を測定した(図6B)。その結果、G4STはpH6.5〜7.5の範囲において高い活性を示し、特にpH7.2付近で最も活性が高くなることが判明した(図6B)。
【0056】
(3)Km値
前述の酵素活性の測定方法において、反応混合液中の[35S]PAPSの濃度を変化させることにより、硫酸基供与体としての[35S]PAPSのKm値を測定した。その結果、PAPSのKm値は2.7×10-7Mであることが判明した(図6C)。
【0057】
(4)酵素の安定性
精製したG4STはニワトリの軟骨細胞の培養上清由来のC6STと比較して安定性が低いことが判明した。-20℃で4ヶ月間保存した際に保存前の活性と比較して20%程度の活性まで低下する。
【0058】
(5)基質特異性
硫酸基受容体の特定をするために、様々な濃度の塩化プロタミンの存在下で、様々なグリコサミノグリカンと精製したG4STを反応させた(図7)。図7中、黒丸はコンドロイチン、白丸は脱硫酸化デルマタン硫酸、黒三角はコンドロイチン硫酸A、白三角はコンドロイチン硫酸C、黒四角はデルマタン硫酸の結果を示す。その結果、コンドロイチンにおいて最も低濃度(0.25mg/ml)で活性の促進が見られた。
【0059】
(6)G4STの硫酸基転移部位の特定
コンドロイチン及び脱硫酸化デルマタン硫酸への硫酸基転移部位を特定するために、G4STによる硫酸基転移反応により35SラベルしたグリコサミノグリカンをコンドロイチナーゼACII(生化学工業株式会社製)又はコンドロイチナーゼABC(生化学工業株式会社製)で消化し、消化産物をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)により解析した。35Sラベルは、塩化プロタミンの量を10μgに増加させた他は、前述の酵素活性の測定法と同様の条件で行った。35Sラベルしたコンドロイチン及び35Sラベルした脱硫酸化デルマタン硫酸をコンドロイチナーゼACII又はコンドロイチナーゼABCで消化して得られた不飽和二糖の単離は、KH2PO4(35mM)で平衡化したパーチシル10-SAXカラム(4.5mm×25cm:ワットマン製)を使用したHPLCにより行った。カラムの溶出は、図8Aに示すKH2PO4の濃度勾配により、流速1ml/分、カラム温度40℃の条件で行い、0.5mlの画分を回収した。
【0060】
その結果、35SラベルしたコンドロイチンをコンドロイチナーゼACIIで消化した場合(図8A)及び脱硫酸化デルマタン硫酸をコンドロイチナーゼABCで消化した場合(図8B)は、ΔDi-4Sの溶出画分にのみに放射能が検出された。35Sラベルした脱硫酸化デルマタン硫酸をコンドロイチナーゼACIIで消化すると、全放射能のおよそ半分がΔDi-4Sの溶出画分で検出され、他の放射能は遅い溶出時間の小さなピークにおいて検出された(図8C)。図8中、矢印はそれぞれ、1:ΔDi-0S(2-acetamide-2-deoxy-3-O-(β-D-gluco-4-enepyranosyluronic acid)-D-galactose)、2:ΔDi-6S、3:ΔDi-4S、4:ΔDi-diSD(2-acetamide-2-deoxy-3-O-(2-O-sulfo-β-D-gluco-4-enepyranosyluronic acid)-6-O-sulfo-D-galactose)、5:ΔDi-diSB(2-acetamide-2-deoxy-3-O-(2-O-sulfo-β-D-gluco-4-enepyranosyluronic acid)-4-O-sulfo-D-galactose)、及び6:ΔDi-diSE(2-acetamide-2-deoxy-3-O-(β-D-gluco-4-enepyranosyluronic acid)-4,6-bis-O-sulfo-D-galactose)の溶出位置を示す。
【0061】
また、コンドロイチナーゼABC及びコンドロイチナーゼACII又はコンドロイチナーゼACIIのみによって、35Sラベルした脱硫酸化デルマタン硫酸を消化して得られた産物をそれぞれ用いて、スーパーデックス30ゲルクロマトグラフィーを行った。すなわち、NH4HCO3(0.2M)で平衡化したスーパーデックス30 16/60高速脱塩カラム(ファルマシア LKBバイオテクノロジー社製)に、上記の消化産物をアプライした後、流速1ml/分で溶出し、溶出画分を1ml毎に回収した。
【0062】
その結果、コンドロイチナーゼABC及びコンドロチナーゼACIIで消化した場合の放射能は、ΔDi-4Sの溶出画分でのみ検出された(図9B)。コンドロイチナーゼACIIのみで消化後の放射能の約50%は、ΔDi-4Sの溶出画分で検出された(図9C)。図9Cで観察されたオリゴ糖は、図8Cの小さなピークに相当することが判明した。76分に溶出するオリゴ糖(図9Cのピーク6)は、コンドロイチン硫酸六糖とコンドロイチン六糖の間に溶出し、82分に溶出するオリゴ糖(図9Cのピーク7)はコンドロイチン硫酸四糖とコンドロイチン四糖の間に溶出した。これらのオリゴ糖の溶出時間の対照のオリゴ糖の溶出時間の比較から、ピーク6及びピーク7は、一硫酸化六糖及び一硫酸化四糖であることが判明した。なお、図9Aは、酵素消化前の、35Sラベルした脱硫酸化デルマタン硫酸のスーパーデックス30ゲルクロマトグラフィーを示す。図9中、矢印はそれぞれ、Vo:ブルーデキストラン、1:コンドロイチン硫酸A六糖、2:コンドロイチン六糖、3:コンドロイチン硫酸A四糖、4:コンドロイチン四糖、及び5:ΔDi-4Sの溶出位置を示す。
【0063】
【発明の効果】
本発明により、ガラクトサミノグリカンのガラクトサミン残基の4位水酸基に、硫酸基供与体から硫酸基を転移する活性を有するガラクトサミノグリカン4-硫酸基転移酵素が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】ラット軟骨肉腫細胞を無血清培地中で培養した場合の、硫酸基転移活性の変化を示す。
【図2】精製段階における、3',5'-ADP-アガロースカラムによるアフィニティークロマトグラフィーの結果を示す。
【図3】各精製段階の画分及び精製後のG4STのSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分析結果を示す。
【図4】トヨパールHW-55ゲルによるクロマトグラフィーの結果を示す。
【図5】トヨパールHW-55ゲルによるクロマトグラフィーのフラクション番号41ないし46の画分に含まれるタンパク質のSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分析結果を示す。
【図6】 G4STの特性を示す。
【図7】 G4STの基質特異性を示す。
【図8】コンドロイチナーゼACII及びコンドロイチナーゼABCによる、[35S]PAPSラベルしたコンドロイチン及び脱硫酸化デルマタン硫酸の消化産物のワットマンパーチシル10-SAXカラムによるクロマトグラフィーの結果を示す。
【図9】コンドロイチナーゼACII及びコンドロイチナーゼABCによる、[35S]PAPSラベルした脱硫酸化デルマタン硫酸の消化産物のスーパーデックス30ゲルカラムによるクロマトグラフィーの結果を示す。
Claims (4)
- ガラクトサミノグリカンに含まれるガラクトサミン残基の4位の水酸基に、硫酸基供与体から硫酸基を転移する作用を有し、下記(1)〜(3)の性質を有するガラクトサミノグリカン4−硫酸基転移酵素。
(1)基質特異性:コンドロイチン及び脱硫酸化デルマタン硫酸に硫酸基を転移し、ヘパラン硫酸及び完全脱硫酸化後にN硫酸化したヘパリン(CDSNS−ヘパリン)には実質的に硫酸基を転移しない。
(2)至適pH:pH6.5〜7.5
(3)分子量:還元条件下でのSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分子量が60kDa及び64kDaを示す。 - ガラクトサミノグリカンがコンドロイチンまたは脱硫酸化デルマタン硫酸である請求項1記載の酵素。
- 更に下記の性質を有する請求項1または2記載の酵素。
活性の促進:プロタミン、Ca2+により活性が促進される。
活性の阻害:Co2+により活性が阻害される。 - ガラクトサミノグリカンに含まれるガラクトサミン残基の4位の水酸基に、硫酸基供与体から硫酸基を転移する作用を有し、下記(4)〜(7)の性質を有するガラクトサミノグリカン4−硫酸基転移酵素。
(4)基質特異性:コンドロイチン及び脱硫酸化デルマタン硫酸に硫酸基を転移する。また、ヘパラン硫酸及び完全脱硫酸化後にN硫酸化したヘパリン(CDSNS−ヘパリン)には実質的に硫酸基を転移しない。
(5)至適pH:pH6.5〜7.5
(6)分子量:非還元条件下でのSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分子量が33kDa及び35kDaを示す。
(7)請求項1記載のガラクトサミノグリカン4−硫酸基転移酵素をN−グリカナーゼ処理することによって得ることができる。
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