JP4058144B2 - 中空ゴルフボールおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、中空ソリッドゴルフボールおよびその製造方法に関し、更に詳述すると、中空部分が真球であり、かつ耐久性に優れ、飛行性能を損なうことなく、衝撃力が小さく打撃時のフィーリングが良好な中空ゴルフボールおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
先行技術においては、主として2種類のゴルフボールがある。一方は、中実のツーピースボール等のソリッドゴルフボールであり、一体成形されたゴム製部材から成るコアおよび該コア上に被覆したアイオノマー樹脂等の熱可塑性樹脂カバーから構成される。また、他方は糸巻きゴルフボールであり、中心の固体または液体の芯部を、ゴム糸の巻線で巻き付け、次いで1〜2mm厚のアイオノマー樹脂やバラタ等によるカバーで被覆したものである。ツーピースソリッドゴルフボールは、糸巻きゴルフボールと比較すると、耐久性、および打撃時のボール速度が大きいことから飛距離が大きく、飛行特性に優れ、特にアマチュアゴルファーを中心に多くのゴルファーに使用されている。その反面、ツーピースソリッドゴルフボールは、打撃時のフィーリングが硬いという問題点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そのような問題点を解決するために、本発明者等はソリッドゴルフボールのコアの内部を中空にすることで、ボールの慣性モーメントを大きくし、飛行性能を損なうことなく、打撃時のフィーリングを向上する方法を新たに提案した。
【0004】
ここで、ツーピースゴルフボールのスピンの保持率は、ディンプルの形状によっても影響を受けるが、ボールの慣性モーメントにも影響を受ける。一般に慣性モーメントが大きいほど、スピンがかかりにくく、保持され易い。即ち、慣性モーメントの大きいボールほどドライバーショットでは打出時のスピンがかかりにくく、ボールが吹き上がらず飛距離が伸びる。詳しく説明すると、ボールは飛行中に揚力を受けるが、この揚力の水平成分は最高点を過ぎた後はプラスに作用する。即ち、ドライバーショット直後からボールが最高点に達するまでは、スピンがかかりにくく、スピン量が少ないほど揚力が小さくなるため、ボールを引き戻そうとする成分の力が小さくなり飛距離が伸び、最高点を過ぎた後はスピンが大きいほど(スピン保持率が大きいほど)揚力が大きく、飛行方向の力成分が大きくなるため飛距離が伸びる。従って、慣性モーメントが大きいボールほど、空力的に飛距離が伸びることになる。また、アプローチショット時には、慣性モーメントが大きいほど、一度かかったバックスピンが保持され易くよく止まる。打撃時フィーリングではコアの硬度を軟らかくすると、ソフトで良好なフィーリングとなるが、軟らかくし過ぎると反撥性能の低下を招く。
【0005】
しかしながら、コアを中空にすることは、製造上の問題をもたらす。例えば図2のような中子10を有する中子金型11を使用して、コア用ゴム組成物をプレス成形、もしくは射出成形により加硫成形して椀状半球体12を成形し、この加硫された椀状半球体2つをゴム糊等により接合した場合、ゴルフクラブによる打撃時の衝撃が非常に大きい為、接着面で割れてしまい耐久性が低下するという問題がある。また、図2のような中子金型11を使用して、コア用ゴム組成物をプレス成形、もしくは射出成形により半加硫成形して椀状半球体12を成形し、この半加硫の椀状半球体2つを、図3のような金型を用いてさらに加硫して接合した場合、コアの厚みに比例してゴムの膨張量が大きくなり、加硫中にコアが変形してしまい中空部が真球状にならず、コアの厚みにばらつきを生じる事となり、打撃部分によって、フィーリング、飛行性能等のばらつきを招く事となる。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決し、真球の中空部を有し、ソリッドゴルフボールの特徴である優れた飛行性能を低下させることなく、打撃時のフィーリングを向上させた中空ゴルフボールおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、中空コアと該コアを被覆するカバー層から成るソリッドゴルフボールの製造方法において、該コア内部に真球の中空部を有する中空センターを封入することにより、中空部が真球に保たれ、かつ耐久性に優れ、飛行性能を損なうことなく、打撃時のフィーリングを向上した中空ゴルフボールが得られることを見い出し、それに基づいて本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は、ゴム、熱可塑性樹脂およびそれらの混合物からなる群から選択される材料から成る球状の中空センター、
該中空センター上に形成された少なくとも一層のコアゴム層、および
該ゴム層上に形成されたカバー、
から成る中空ゴルフボールに関する。
また、本発明は、
(a)ゴムまたは熱可塑性樹脂から成る球状の中空センターを作製する工程、
(b)該中空センター上にゴルフボールのコア用ゴム組成物を少なくとも一層被覆して、加硫成形することにより球状の中空コアを作製する工程、および
(c)該中空コア上にカバーを被覆する工程
から成る中空ゴルフボールの製法を提供する。
【0009】
本発明によれば、予め、ゴムまたは樹脂もしくは両者の混合物からなる球状の中空センターを作製してからその上にコア用ゴム組成物を被覆成形して内部に中空センターを有する中空コアを作製する為、コア用ゴム組成物を被覆成形する際に中空部が変形する事がない。また、中空センターを図2のような中子金型を使用して、中空センター用のゴム組成物をプレス成形、もしくは射出成形により半加硫成形して椀状半球体を成形し、この半加硫の椀状半球体2つを、図3のような金型を用いてさらに加硫して接合して作製する場合でも、中空センターの厚みは、中空センターなしで中空コアを作製する場合のコアの厚みに比して薄くすることができ、加硫成形時におけるゴムの膨張量は小さく、中空部が変形する事はなく、中空部は真球状に保たれる。
【0010】
本発明のゴルフボールの構造を図1に基づいて説明する。図1は本発明の中空ゴルフボールの断面を模式的に示す図である。図1に示す如く、球状の中空センター2上にはコア用ゴム層3が形成され、この中空センター2とコア用ゴム層3とがコア(中空コア)Aを形成する。中空コアA上には、カバー4が被覆される。
【0011】
中空センター2は、ゴム、熱可塑性樹脂またはそれらの混合物からなる群から選択される材料から形成される。ゴムから形成される場合、通常の中空ゴム球を作る方法で形成される。例えば、ゴム組成物を調製した後、該ゴム組成物を椀状半球体に成形すると同時に半加硫する。半加硫とは、ゴム組成物を完全に加硫するのではなく、架橋反応が完了する前に加硫を一旦中止した状態をいう。半加硫したものは、再度加熱すると架橋が更に進行して、架橋反応を完結することができる。半加硫の条件は、完全加硫の条件の加硫時間の約半分程度である。例えば、完全加硫が150℃で30分間の場合、150℃で約15分間加硫することになる。
【0012】
本発明の中空センターの場合、通常完全加硫が150〜170℃で10〜30分間行われるので、その加硫時間の中間点で中止すれば、半加硫状態になる。椀状半球体に成形する方法は公知であり、例えば図2に示すように中空部分と同じ大きさの中子を用いて椀状半球体を形成してもよい。また、射出成形等の方法を用いてもよい。尚、椀状半球体は必ずしも完全に中空センターを2等分したものである必要はないが、完全に中空センターを2等分したものとした場合は、作製に必要な金型が1種類の形状で良く、また準備される椀状半球体も1種類となり、生産性が良く、よって完全に中空センターを2等分したものとするのが良い。
【0013】
形成された半加硫状態の椀状半球体を2個接合して、加硫を完結すれば、中空センターが形成される。半球体接合時には、接合面に有機溶剤を塗布して、接着性を向上することが一般に行われる。
【0014】
中空センターに用いられるゴム組成物は、基材ゴム(例えば、ポリブタジエン、天然ゴム、シスイソプレンゴム、またはその混合物等)、加硫剤、充填材等を含有する。加硫剤は、硫黄加硫を行う場合には硫黄であり、過酸化物加硫の場合には有機過酸化物(例えば、ジクミルパーオキサイド)と加硫助剤(例えば、α,β-不飽和カルボン酸の金属塩、具体的にはアクリル酸やメタクリル酸の2価金属塩)との組合せが用いられる。
【0015】
上述のように、中空センターがゴムから成る場合、コアゴム層3を加硫および成形する時の真球度をより向上するために、中空センターの内圧を大気圧を越える圧力、具体的には1〜2気圧になるように空気や窒素等のガス状気体を封入するのが好ましい。ガスの封入方法は公知であるが、例えば完成した中空センターに注射器で注入した後、封止してもよい。また、中空センター形成時に、ガス発生剤を封入してもよい。
【0016】
中空センターが熱可塑性樹脂で形成される場合、通常の成形方法(例えば、射出成形等)で椀状半球体を形成し、これを2個接着剤や溶着等の方法で接合してもよい。
【0017】
熱可塑性樹脂とは、射出成形が可能である一般的な熱可塑性樹脂のみならず、軟質相(ソフトセグメント)と硬質(ハードセグメント)とから構成される熱可塑性エラストマー、またはそれらの混合物を含む概念である。熱可塑性エラストマーは常温(室温)では加硫ゴムのような特性を示し、昇温下では可塑化して通常のプラスチック成形装置で成形可能になる。この熱可塑性エラストマーは一般にハードセグメントの形によって分類され、例えばハードセグメントがポリスチレンの場合ポリスチレンタイプの熱可塑性エラストマーと呼ばれ、この場合ソフトセグメントはブタジエンゴム、あるいはイソプレンゴムである。全ての熱可塑性エラストマーは公知であり、ソフトセグメントとハードセグメントの組み合わせも公知である。熱可塑性樹脂の融点は150℃以上、好ましくは160℃以上、さらに170℃以上のものが良いが、融点の上限は230℃とするのが好ましい。融点が高い樹脂を用いることにより、中空センターの上にコアゴム層を加硫成形する際に中空コアが変形しにくくなる。熱可塑性樹脂の例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリイミド等またはそれらの混合物を使用することができ、熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等や、それらの混合物を使用できる。ゴルフボールとしての高反発性を達成しうるポリエステル系熱可塑性エラストマーやウレタン系熱可塑性エラストマーが好ましい。尚、樹脂中に、比重調整の為の充填材、柔軟性を付与する為のゴム微粒子、ゴム微粒子用の架橋剤などを配合することもできる。熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)の硬度はショアDで30〜80゜が好ましく、30゜未満では反発性が低下し、80゜を越えると打球感が低下する。
【0018】
中空センターの大きさは特に限定されるものではないが、中空部直径が5〜30mmとするのが好ましい。中空部直径を30mmより大きくすると、ゴルフボールが打撃される際にゴルフボールの変形が大きくなり過ぎてエネルギーロスが大きくなり、ゴルフボールとしての反発性が低下しやすく、また、比重調整の為にコアゴム層に多量の充填材を配合する必要がありゴルフボールとしての反発性が低下することになる。従って、中空部直径は好ましくは25mm以下である。また、中空部直径が5mm未満では中空部を設けることによるゴルフボールの慣性モーメントの増大や、打球感向上という効果が充分に達成できない。従って、中空部直径は好ましくは10mm以上である。
【0019】
中空センターの厚さは0.1〜12.5mmを有することが好ましい。中空センターの厚みが0.1mm未満では、中空センターの上にコアゴム層を被覆する工程において中空センターが変形しやすい。従って、中空センターの厚さは好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1.0mm以上が好ましい。また、中空センターの厚さが12.5mmを越えると中空センターが樹脂の場合、ゴルフボールとしての良好な打球感が得られにくく、また、中空センターがゴムからなる場合は、中空センターを加硫して作製する工程において、加硫による膨張量が大きくなって中空センターが変形しやすく、中空部の形状が真球形状とならない等の欠点が出やすくなる。従って、中空センターの厚みは好ましくは6.0mm以下、より好ましくは4.0mm以下が良い。
【0020】
中空センターを有する中空コアの直径は、上記カバー層の厚さを確保する為に、35〜41mm、好ましくは36〜39mmとするのが良い。
【0021】
中空センターを含めた中空コアの厚み(中空センターとコアゴム層の厚みの合計)は、2.5〜18mmとするのが良い。中空コアの厚みが2.5mm未満とすると、カバー層が厚くなり過ぎる、または中空部の直径が大きくなり過ぎる事となり、カバー層が厚くなり過ぎた場合は、上述のように打球感が低下しやすく、中空部の直径が大きくなり過ぎた場合は、上述のように反発性が低下する。従って、中空コアの厚みは好ましくは3mm以上、さらに7mm以上が良い。また、中空コアの厚みが18mmを越える中空部の直径が小さくなり過ぎる、またはカバーの厚みが小さくなり過ぎる事となり、中空部の直径が小さくなり過ぎた場合は上述のようにゴルフボールの慣性モーメントの増大や、打球感向上という効果が充分に達成できず、また、カバーの厚さが小さくなり過ぎた場合は、上述のように耐久性が低下する事となる。従って、中空コアの厚みは、好ましくは15mm以下が良い。
【0022】
コアゴム層の厚さは5〜16mmが良い。コアゴム層の厚みが5mm未満となると中空センターを樹脂とした場合や、高剛性のゴムとした場合にゴルフボールとしての打球感が低下しやすく、また、コアゴム層の厚さが16mmを越えると、中空部の直径が小さくなり過ぎる、またはカバーの厚みが小さくなり過ぎる事となり、中空部の直径が小さくなり過ぎた場合は上述のようにゴルフボールの慣性モーメントの増大や、打球感向上という効果が充分に達成できず、また、カバーの厚さが小さくなり過ぎた場合は、上述のように耐久性が低下する事となる。
【0023】
本発明のコアゴム層3はゴルフボールのコアに用いられるゴム組成物を加硫することにより得られる。ゴム組成物は通常、基材ゴム、不飽和カルボン酸金属塩、有機過酸化物、充填材等を含有する。基材ゴムとしては、従来からソリッドゴルフボールに用いられている天然ゴムおよび/または合成ゴムが用いられ、特にシス-1,4-構造少なくとも40%以上、好ましくは80%以上を有するいわゆるハイシスポリブタジエンゴムが好ましく、所望により、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンポリブタジエンゴム、EPDM等を配合してもよい。
【0024】
不飽和カルボン酸の金属塩は共架橋剤として作用し、特にアクリル酸またはメタクリル酸等のような炭素数3〜8のα,β-不飽和カルボン酸の、亜鉛、マグネシウム塩等の一価または二価の金属塩が挙げられるが、高い反撥性を付与するアクリル酸亜鉛が好適である。配合量は基材ゴム100重量部に対して、25〜55重量部が好ましい。55重量部より多いと硬くなり過ぎ、フィーリングが悪くなり、25重量部より少ないと反撥が悪くなり飛距離が低下する。
【0025】
有機過酸化物は架橋剤または硬化剤として作用し、例えばジクミルパーオキサイドまたはt-ブチルパーオキサイドが挙げられ、ジクミルパーオキサイドが好適である。配合量は、基材ゴム100重量部に対して0.5〜3.0重量部であることが好ましい。0.5重量部未満では軟らかくなり過ぎて反撥が悪くなり飛距離が低下する。3.0重量部を越えると硬くなり過ぎ、フィーリングが悪くなる。
【0026】
充填材は、ゴルフボールのコアに通常配合されるものであればよく、例えば無機塩(具体的には、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム)、高比重金属粉末(例えば、タングステン粉末、モリブデン粉末等)およびそれらの混合物が挙げられる。本発明に用いる中空コアは通常の中実コアに比べて重量が不足する傾向があるので、無機塩と高比重金属粉末の混合物を用いるのが好ましい。配合量は、基材ゴム100重量部に対して10〜120重量部であることが好ましい。10重量部未満では充填材の効果が見られなくなり、120重量部を越えると反撥性能が低下し過ぎる。
【0027】
本発明の中空コアAは、中空センター2と同様に、上記コア用ゴム組成物で中空センター2と同形の凹みを有する半加硫ゴムシェルを形成し、該半加硫ゴムシェル2個を接合する際に、上記中空センター2を封入して、完全加硫を行うことにより得られる。半加硫とは、中空センターで説明したのと同意義であるが、中空センターの場合より、時間を短縮する方が好ましい(1/10程度)。これは中空センターとの接着をより向上させるためである。
【0028】
次いで、上記中空コアA上にはカバー4を被覆する。カバーはソリッドゴルフボールのカバー材として通常使用されるアイオノマー樹脂やバラタで形成することができ、少量の他の樹脂を加えてもよい。また、上記カバー用組成物には、硫酸バリウム等の充填材や着色のために二酸化チタン等の添加物や、その他の添加剤、例えば紫外線吸収剤、光安定剤並びに蛍光材料または蛍光増白剤等を、ゴルフボールカバーによる所望の特性が損なわれない範囲で含有していてもよいが、通常、着色剤の配合量は0.1〜0.5重量部が好ましい。
【0029】
本発明のカバーは、ゴルフボールのカバーの形成に使用されている一般に公知の方法、例えば射出成形、プレス成型等により形成される。カバー層の厚さは1〜4mmが好ましく、カバー層を被覆する際に通常、ディンプルと呼ばれるくぼみを多数表面上に形成する。カバー層の厚みが1mm未満ではカバー層の強度が不足、ゴルフボールとしての耐久性が低下しやすく、また、カバー層の厚みが4mmを越えると、ゴルフボールとしての良好な打球感が得られにくい。本発明のゴルフボールは美観を高め、商品価値を上げるために、通常ペイントで被覆され、市場に投入される。尚、カバーは2層以上のカバー層によって構成することもできる。
【0030】
本発明の方法により、真球の中空部を有し、かつ耐久性に優れ、飛行性能を損なうことなく、打撃時のフィーリングを向上した中空ゴルフボールを提供する。
【0031】
【実施例】
本発明を実施例により更に詳細に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0032】
中空センターの作製
中空センターI:以下の表1に示すゴム組成物Aを用い、図2の模式図に示す所定寸法の金型内で155℃で15分間加硫成形して、ゴム厚2mm、中空部径20mmの半加硫の椀状ゴム半球体を作製した。この椀状ゴム半球体の2つを、表1のゴム組成物Aのアセトン溶液を用いて予備接着して、図3の模式図に示す所定寸法の金型内に挿入して155℃で20分間加硫接着を行い、外径24mmの中空ゴム球を作製した。この中空ゴム球に注射器にて空気を充填し、内圧が大気圧以上になった状態で、接着剤を塗布したセンターと同材質のゴムシートにより封止して、中空センターIを得た。
中空センターII:熱可塑性ポリアセタールホモポリマー樹脂(旭化成(株)製、商品名テナック7010)を250℃で図2の模式図に示す所定形状の金型内に射出成形し、厚さ1mm、中空部径20mmの椀状半球体を作製し、この2つを接着剤を用いて接着し、外径22mmの中空センターIIを得た。
中空センターIII:中空センターIと同じ製法において、空気の注射器による充填を行わないものを中空センターIIIとして用いた。得られた中空センターは、肉厚2mm、中空部径20mmおよび外径24mmを有した。
中空センターIV:中空センターIIの製法において、熱可塑性ポリアセタールポリマー樹脂を熱可塑性ポリエステルエラストマー(大日本インキ(株)製グリラックスEH700)を用いること以外は、同じ方法で中空センターIVを得た。得られた中空センターは肉厚1mm、中空部径20mmおよび外径22mmを有した。
【0033】
実施例 1 の中空ソリッドゴルフボール
以下の表1に示すゴム組成物Aをコアプレス用金型の間に半球凸型中子を挟み込んだ図4に示す如きモールドで165℃で2分間予備成形して、半加硫椀状半球体を作製し、中子を抜き取り、得られた2つの椀状半球体中に中空センターIを封止して、図5の模式図に示す所定寸法の金型内に入れて165℃×20分プレス加硫することにより、外径38.4mmの中空コアを得た。その後、得られた中空コア上に、以下の表2に示す配合のカバー組成物を被覆してカバー層を形成し、ペイント塗装を施して、直径42.7mmのラージサイズの中空ソリッドゴルフボールを作製した。
【表1】
【表2】
【0034】
(注1)日本合成ゴム社製のシス含量96%を有するハイシス-1,4-ポリブタジエン
(注2)吉富製薬製
(注3)三井ポリケミカル社製アイオノマー樹脂
(注4)三井ポリケミカル社製アイオノマー樹脂
【0035】
実施例1で得られた各ゴルフボールについて、中空径バラツキ、慣性モーメント、衝撃力、ドライバー(ウッド1番クラブ)による飛行性能、打撃時のフィーリング、耐久性について評価を行い、その結果を表3に示す。試験方法は以下の通り行った。
【0036】
(試験方法)
▲1▼中空径バラツキ
図1に示すような3点(各々直交するaa'、bb'、cc')の直径を測定し、その最大値と最小値の差を示した。
▲2▼慣性モーメント
INERTIA DYNAMICS社製モデルナンバー005-002の測定機にて、直行する2方向(ポール方向、シーム方向)の平均値を示した。
▲3▼衝撃力
ツルーテンパー社製スイングロボットを用い、ドライバーにてヘッドスピード45m/秒で打撃する際に、ゴルフクラブヘッド後部に加速度計を取り付けて、ヘッドの進行方向に対して逆方向に生ずる加速度を測定し、この加速度の最大値を力に変換することにより求め、中空部なしボールを100とした時の値で示した。
▲4▼飛距離(キャリー)
ツルーテンパー社製スイングロボットにドライバーを取付け、ゴルフボールをヘッドスピード45m/秒で打撃し、落下点までの距離(キャリー)を飛距離として測定した。
▲5▼打撃時のフィーリング
プロゴルファー10人によりドライバーで実打して評価する。評価基準は下記の通りである。
評価基準
◎ … 8人以上が良いと回答
○ … 5〜7人が良いと回答
△ … 2〜4人が良いと回答
× … 2人以下が良いと回答
▲6▼耐久性
ツルーテンパー社製スイングロボットにドライバーを取付け、ゴルフボールをヘッドスピード45m/秒で打撃し、衝突板に繰り返し衝突させて評価する。評価基準は下記の通りである。
評価基準
○ … 50回で割れなし
× … 50回以内に割れ
【0037】
実施例2〜4の中空ソリッドゴルフボールの作成
中空センターII、IIIおよびIVをそれぞれ用いる以外は実施例1と同様に中空ソリッドゴルフボールを得た。得られたゴルフボールについて同様の評価を行って、結果を表3に示す。
【0038】
比較例1の中空ソリッドゴルフボール
前記表1に示すゴム組成物Aを図4に示す所定寸法のコア用半球体成形用金型内で165℃で2分間という、コア予備成形条件で予備成形して、半加硫椀状半球体を作製し、得られた2つの椀状半球体を合わせて(中空センターを封入せずに)、図3の模式図に示す所定寸法の金型内に入れ、165℃×20分間というコア成形条件でプレス加硫することにより、中空部直径20mm、外径38.4mmの中空コアを得た。その後、得られた中空コア上に、表2に示す配合のカバー組成物を被覆してカバー層を形成し、ペイント塗装を施して直径42.7mmのラージサイズの中空ソリッドゴルフボールを得た。
【0039】
比較例2の中空ソリッドゴルフボール
コア予備成形条件が165℃で7分間であること以外は、比較例1と同様にして中空ソリッドゴルフボールを得た。同じ評価テストを行い、結果を表3に示す。
【0040】
比較例3の中空ソリッドゴルフボール
コア予備成形条件が165℃で20分間であり、2つの椀状半球体を合わせる前に、その合わせ面にコアと同一ゴム組成物のアセトン溶液を用いて予備接着し、コア成形条件が165℃で20分間であること以外は、比較例1と同様にして中空ソリッドゴルフボールを得た。同じ評価テストを行い、結果を表3に示す。
【0041】
比較例4のソリッドゴルフボール
上記表2のコア配合Bを用いて、中子なしで図4に示すコア用の金型内で165℃で20分間加硫して中空ではないソリッドコアを作製し、そのコア上に同様にカバー層を形成して中空でないソリッドゴルフボールを得た。同じ評価テストを行い、結果を表3に示す。
【0042】
(試験結果)
【表3】
【0043】
以上の結果より、本発明の中空ソリッドゴルフボール製造方法を用いると、中空部分が他の方法に比較して真球に近く、かつ耐久性についても優れていることが認められ、また、その性能面でも通常のソリッドゴルフボールに比較して、衝撃力が小さく、打撃時のフィーリングが良好であることが認められた。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、中空部が真球であり、かつ耐久性に優れ、飛行性能を損なうことなく、衝撃力が小さく打撃時のフィーリングが良好な中空ゴルフボールおよびその製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の中空ゴルフボールの断面概略図である。
【図2】 中子金型の断面を示す模式図である。
【図3】 中空センターを加硫する金型の模式断面図である。
【図4】 コアの半加硫椀状半球体を作成する金型の模式断面図である。
【図5】 中空センターを封入したコアを加硫する金型の模式断面図である。
【符号の説明】
1 … 中空部
2 … 中空センター
3 … コア
4 … カバー層
10 … 中子
11 … 中子金型
12 … 椀状半球体
Claims (7)
- 熱可塑性樹脂から成る球状の中空センター、該中空センター上に形成された少なくとも一層のコアゴム層、および該ゴム層上に形成されたカバー、から成る中空ゴルフボールであって、
該中空センターを形成する熱可塑性樹脂が、融点170℃以上およびショアD硬度30〜80を有し、
該中空センターが中空部直径5〜30mmおよび厚さ0.1〜12.5mmを有し、
該コアゴム層が厚さ5〜16mmを有し、
該中空センターとコアゴム層の厚みの合計が2.5〜18mmである、
中空ゴルフボール。 - コアゴム層が、基材ゴム、不飽和カルボン酸の金属塩、有機過酸化物および充填材を含有するゴム組成物を加硫して得られる請求項1記載の中空ゴルフボール。
- カバーがアイオノマー樹脂またはバラタから形成される請求項1記載の中空ゴルフボール。
- (a)(i)熱可塑性樹脂を成形して椀状半球体を形成する工程、および( ii )該椀状半球体2個を接合する工程から成る、球状の中空センターを作製する工程、(b)該中空センター上にゴルフボールのコア用ゴム組成物を少なくとも一層被覆して、加硫成形することにより球状の中空コアを作製する工程、および(c)該中空コア上にカバーを被覆する工程から成る中空ゴルフボールの製法であって、
該中空センターを形成する熱可塑性樹脂が、150℃以上で融解する樹脂であり、
該中空センターが中空部直径5〜30mmおよび厚さ0.1〜12.5mmを有し、
該コアゴム層が厚さ5〜16mmを有し、
該中空センターとコアゴム層の厚みの合計が2.5〜18mmである、
中空ゴルフボールの製法。 - 工程(b)がコア用ゴム組成物を半加硫成形して中空センターと同形の凹みを有する半加硫ゴムシェルを作製し、該半加硫ゴムシェル2個の内部に中空センターを封入して、全加硫することから成る請求項4記載の中空ゴルフボールの製法。
- コア用ゴム組成物が、基材ゴム、不飽和カルボン酸の金属塩、有機過酸化物および充填材を含有する請求項4記載の中空ゴルフボールの製法。
- カバーがアイオノマー樹脂またはバラタである請求項4記載の中空ゴルフボールの製法。
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