JP4056921B2 - 水簸粘土の製造方法及び蛙目粘土 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水簸粘土の製造方法及び水簸粘土に関する。
【0002】
【従来の技術】
蛙目粘土、木節粘土等の水簸粘土は一般的に以下の製造方法により製造されている。すなわち、この製造方法では、水簸工程として、採掘され、岩石等が取り除かれた原土を水簸し、上澄み液と沈殿物とに分離する。水簸とは、原土を解膠剤とともに水に分散させて泥漿とし、この泥漿をタンク内に収容して不要な重い物質(主に珪砂)を沈殿させた後、必要な上澄み液だけを得る工程である(例えば、非特許文献1参照。)。そして、脱水工程において、上澄み液をフィルタープレス等によって脱水し、水簸粘土を得る。こうして得られた水簸粘土、例えば蛙目粘土は、5μm未満の粒径を有する粒子の積算質量が全体質量の95%以上であり、1μm未満の粒径を有する粒子の積算質量が全体質量の70〜75%である。この蛙目粘土等の水簸粘土は陶磁器等の原料として用いられる。
【0003】
【非特許文献1】
社団法人 日本セラミックス協会 「セラミックス辞典 第2版」
丸善株式会社、平成9年3月25日、P.335
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の製造方法では、水簸工程によって泥漿を上澄み液と沈殿物とに分離し、上澄み液をそのまま脱水して水簸粘土を得ているに過ぎないため、得られる水簸粘土が特定の粒度分布に限定されやすい。その粒度分布を変更しようとしても、水簸工程の時間を加減し、水簸工程を長時間行うことにより粒度が全体的に細かい水簸粘土としたり、水簸工程を短時間行うことにより粒径の細かい粒子である細粒を多く含みつつ粒度が全体的に粗い水簸粘土としたりすることしかできず、所望の粒度分布の水簸粘土を製造することができない。このため、その水簸粘土を例えば泥漿鋳込成形に用いて陶磁器を製造しようとする場合、着肉部分の可塑性、強度及び着肉性の全てにおいて十分な満足が得られ難かった。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、所望の粒度分布の水簸粘土を製造可能な水簸粘土の製造方法を提供することを解決すべき課題としている。また、本発明は、例えば泥漿鋳込成形に用いる場合の着肉部分の可塑性、強度及び着肉性の全てにおいて十分な満足が得られる新規な水簸粘土を提供することも解決すべき課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の水簸粘土の製造方法は、原土を水簸し、第1の上澄み液と第1の沈殿物とに分離する水簸工程と、
第1の上澄み液を水位によって二分し、下位に区分された選択物を得、該選択物を再度水簸し、第2の上澄み液と第2の沈殿物とに分離する選択工程と、
第2の沈殿物を脱水することによって水簸粘土を得る脱水工程とを備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の水簸粘土の製造方法では、水簸工程において、原土を水簸し、第1の上澄み液と第1の沈殿物とに分離する。次に、選択工程において、第1の上澄み液を水位によって二分し、下位に区分された選択物を得る。水位によって二分された選択物は水位に応じた粒度分布の粒子によって構成されている。上位に区分された選択物は粒径の細かい粒子である細粒によって構成され、下位に区分された選択物は粒径の粗い粒子である粗粒によって構成されている。また、その選択物を再度水簸し、第2の上澄み液と第2の沈殿物とに分離する。そして、脱水工程において、第2の沈殿物を脱水することによって水簸粘土を得る
【0008】
なお、特公昭51−37162号公報には、水簸を何回も行う製造方法が開示されている。しかしながら、この製造方法では、粒径が極めて細かい粒子である超微細粒を多く含む水簸粘土を得るため、前の水簸で最上位に区分された上澄み液を次の水簸に供し、その水簸で再度最上位に区分された上澄み液をさらに次の水簸に供し、最後の水簸で再度最上位に区分された上澄み液を乾燥することを行っており、各水簸で下位に区分された上澄み液を廃棄してしまっている。このため、この製造方法では、超微細粒を多く含む水簸粘土しか製造することができず、必ずしも所望の粒度分布の粘土を製造することができない。これに対し、本発明の製造方法では、水簸工程で得られた第1の上澄み液を選択工程において選択物とし、その選択物を再度水簸して第2の沈殿物を得、脱水工程において第2の沈殿物を脱水するため、超微細粒を多く含む水簸粘土ばかりでなく、所望の粒度分布の水簸粘土を製造することができる。
【0009】
したがって、本発明の製造方法によれば、所望の粒度分布の水簸粘土を製造することができる。
【0010】
選択工程として、第1の上澄み液を水位によって二分し、下位に区分された選択物を得る。下位に区分された選択物は粗粒によって構成されているため、こうして水簸粘土を製造すれば、細粒をほとんど含まない粒度が全体的に粗い水簸粘土を製造することが可能である。
【0011】
その際、水簸工程によって第1の上澄み液を得た後、その第1の上澄み液をタンク内に収容して第2の沈殿物を沈殿させる再度の水簸を行い、この再度の水簸によって得られた第2の沈殿物を選択物として脱水工程に供すれば、第2の沈殿物は下位に区分された選択物として粗粒によって構成されていることとなる。このため、こうして得られた水簸粘土は、細粒をほとんど含まない粒度が全体的に粗いものとなる。
【0012】
発明者らは、こうして本発明の蛙目粘土を製造した。この蛙目粘土は、本発明の水簸粘土の製造方法によって製造された蛙目粘土であって、5μm未満の粒径を有する粒子の積算質量が全体質量の95%以上であり、1μm未満の粒径を有する粒子の積算質量が全体質量の55〜65%であることを特徴とする。
【0013】
発明者らの試験結果によれば、本発明の水簸粘土の粒度分布は、カオリンの粒度分布と酷似している。そして、この水簸粘土を例えば泥漿鋳込成形に用いた場合、着肉部分の可塑性及び強度においてはカオリンと同等の特性が得られ、着肉性においてはより優れた特性が得られた。このため、この水簸粘土をカオリンの代替原料として衛生陶器等の製造に用いることも可能であり、これにより衛生陶器の製造コストの低廉化を実現できる。
【0014】
なお、特公昭57−52208号公報には、原土を含む泥漿を収容するタンクと、このタンク内に水位可変に設けられた泥漿抜きノズルとを備えた水簸装置が開示されている。しかしながら、この水簸装置では、泥漿抜きノズルによって上方に区分された上澄み液のみを取り出すことととしており、特公昭51−37162号公報記載の製造方法と同様、細粒を多く含む水簸粘土しか製造することができず、必ずしも所望の粒度分布の粘土を製造することができない。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明を具体化した実施形態を実施例及び比較例1、2を図面を参照しつつ説明する。
【0016】
実施例の水簸粘土の製造方法では、図1に示すように、水簸工程S10において、採掘され、岩石等が取り除かれた原土を用意し、この原土と水と解膠剤とを混合した泥漿1を用意する。そして、図2に示すように、泥漿1をタンク10に収容する。タンク10に収容された泥漿1を静置する。その際、タンク10内では、泥漿1が上澄み液10aと沈殿物10bとに分離されることとなる。そして、上澄み液10aを回収し、沈殿物10bを他に用いる。こうして、原土が水簸されることとなる。
【0017】
次に、図1に示す選択工程S20において、図2に示す上澄み液10aを別のダンク20に収容する。そのタンク20に収容された上澄み液10aを24時間静置する。その際、そのタンク20内では、上澄み液10aが水位によって二分される。こうして、上澄み液10aを水位によって区分し、区分毎の選択物20a、20bを得る。上位に区分された選択物20bは粒径の細かい粒子である細粒によって構成されている。また、下位に区分された選択物20aは粒径の粗い粒子である粗粒によって構成されている。そして、上位に区分された選択物20bを他に用い、下位に区分された選択物20aを回収する。選択物20aは、水簸工程S10によって上澄み液10aを得た後、その上澄み液10aをタンク20内に収容して再度の水簸によって得られるため、選択物20aは、上澄み液10aを静置して得られる第2沈殿物であり、細粒をほとんど含まない粒度が全体的に粗いものとなる。
【0018】
そして、図1に示す脱水工程S30において、所望の選択物20aをフィルタープレス機で脱水する。こうして、選択物20aを構成する粒子からなる実施例の新蛙目粘土が得られる。
【0019】
(評価)
一般に市販されている蛙目粘土を比較例1とし、一般に市販されているカオリンを比較例2として用意する。実施例の新蛙目粘土、比較例1の蛙目粘土及び比較例2のカオリンの粒度分布測定を行う。その結果を表1に示す。
【0020】
【表1】
Figure 0004056921
【0021】
表1に基づき、実施例及び比較例1、2の水簸粘土を構成する粒子に関し、粒子の粒径(μm)に対する粒子の累積度(%)を図3に示す。また、粒子の粒径(μm)に対する粒子の頻度(%)を図4に示す
【0022】
また、実施例及び比較例1、2の水簸粘土を石膏板上に着肉させる。そして、その水簸粘土を着肉させた石膏板を1時間放置した後、石膏を傾斜させる。こうして、石膏上に残った実施例及び比較例1、2の水簸粘土の質量を測定する。その際、比較例2の質量の値を1.00とし、実施例及び比較例1の質量の値を求める。
【0023】
さらに、実施例及び比較例1、2の水簸粘土を用いて棒状の試験片を得る。そして、各試験片の抗折強度をオートグラフを用いて測定する。その際、比較例2の抗折強度の値を1.00とし、実施例及び比較例1の抗折強度の値を求める。着肉性及び抗折強度の結果を表2に示す。
【0024】
【表2】
Figure 0004056921
【0025】
表1及び図3、4に示すように、実施例の新蛙目粘土は、5μm未満の粒径を有する粒子の積算質量が全体質量の95%以上であり、1μm未満の粒径を有する粒子の積算質量が全体質量の55〜65%である。この新蛙目粘土は、比較例2のカオリンの粒度分布と酷似していることが判る。
【0026】
また、実施例の新蛙目粘土は、表2から判るように、比較例1の蛙目粘土に比して、着肉性が良好であり、比較例2のカオリンに比して、着肉性はほぼ同等である。また、実施例の新蛙目粘土は、比較例1の蛙目粘土に比して、抗折強度が若干劣るものの、比較例2のカオリンに比して、抗折強度はほぼ同等である。
【0027】
さらに、発明者らの目視によれば、抗折強度を測定する際、実施例の新蛙目粘土は、比較例2のカオリンと同等の可塑性を有していることが観察できた。
【0028】
こうして、実施例の新蛙目粘土は、例えば泥漿鋳込成形に用いた場合、着肉部分の可塑性及び強度においてはカオリンと同等の特性が得られ、着肉性においては従来の蛙目粘土より優れた特性が得られることが判る。このため、この新蛙目粘土をカオリンの代替原料として衛生陶器等の製造に用いることが可能であり、その場合には、新蛙目粘土の原価がカオリンの原価に比して低いことから、衛生陶器の製造コストの低廉化を実現できることが判る。
【0029】
したがって、実施例の製造方法により、所望の粒度分布の新蛙目粘土を製造することができる。また、その製造方法で得られる新蛙目粘土は、泥漿鋳込成形に用いる場合の着肉部分の可塑性、強度及び着肉性の全てにおいて十分な満足が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係り、水簸粘土の製造方法の工程図である。
【図2】実施形態に係り、水簸粘土の製造方法の概略図である。
【図3】実施形態に係り、粒度分布に対する累積度のグラフである。
【図4】実施形態に係り、粒度分布に対する頻度のグラフである。
【符号の説明】
10a…上澄み液
10b…沈殿物
S10…水簸工程
20a、b…選択物
S20…選択工程
S30…脱水工程

Claims (2)

  1. 原土を水簸し、第1の上澄み液と第1の沈殿物とに分離する水簸工程と、
    該第1の上澄み液を水位によって二分し、下位に区分された選択物を得、該選択物を再度水簸し、第2の上澄み液と第2の沈殿物とに分離する選択工程と、
    該第2の沈殿物を脱水することによって水簸粘土を得る脱水工程とを備えたことを特徴とする水簸粘土の製造方法。
  2. 請求項1の水簸粘土の製造方法によって製造された蛙目粘土であって、5μm未満の粒径を有する粒子の積算質量が全体質量の95%以上であり、1μm未満の粒径を有する粒子の積算質量が全体質量の55〜65%であることを特徴とする蛙目粘土
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