JP4056064B2 - 薄膜コート微粉体のコート層膜厚測定方法および膜厚測定装置 - Google Patents
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Description
これらコート膜の厚さを測るには、対象が100μm以下の微粉体であること、光透過性コート膜がサブミクロンオーダーの薄膜であること、及び光透過性コート膜の表面性の粗さとサブストレイトである微粉体(キャリア)の表面性が影響して、界面間の膜厚という尺度で膜厚を計測することが困難であり、従来、微粉体(キャリア)に対する樹脂質量を計測する質量膜厚測定法(例えば、特許文献1、2参照。)、既知のシリコーン膜厚を測定して検量線から膜厚を求める蛍光X式膜厚計測法(例えば、特許文献3参照。)、或いは破壊計測であるSEM断面観察を用いた膜厚の測定(例えば、特許文献4参照。)などが提案されている。
蛍光X線膜厚計測法は、薄膜コート微粉体が電子写真用キャリアである場合、既知のシリコーン膜厚を蛍光X線で測定し、予め検量線を求めて膜厚を測定する光学的測定であるから、物理的な接触なしに層厚を測定できる利点を有している。
しかしながら、電子写真用キャリアの光透過性コート層には、物理的な接触に対する強度を補強するために、無機や有機の微細粒子が分散されることがあり、このような光透過性コート層では「微細粒子による蛍光X線の放射」がない場合が多く、微細粒子とバインダー樹脂の混合比によっては、必要な計測精度を実現できなかったり、光透過性コート膜厚が薄くなった場合も発生する蛍光X線量が少なくなり、膜厚測定自体が不可能になる。
また、膜厚を測定できる光透過性コート膜の種類が限定され、汎用性の面からも問題がある。更に、X線の照射領域に複数個のキャリアを並べるため、サンプル処理の仕方によっては値がバラツクという問題がある。
直接、光透過性コート膜厚を測定する測定方式として従来から知られた「SEM断面観察」により光透過性コート層の膜厚測定を行なうことも実施されているが、試料調整をしてSEM断面観察することは容易ではなく、また破壊検査であるためのデメリットも多い。
本発明者は、以上の認識に基づき、電子写真用キャリアに代表される薄膜コート微粉体上の光透過性コート膜評価技術として、顕微鏡光学系と分光反射率法を用いた薄膜コート微粉体のコート層膜厚測定の可能性を検討した。
電子写真用キャリアに代表される薄膜コート微粉体では、微粉体に対する光透過性物質質量を計測する質量膜厚測定法が一般に行なわれていることと、サブストレイトである微粉体表面からの表面反射を稼げないことから、薄膜コート微粉体の膜厚を繰り返し反射干渉(分光反射率)法で計測するという報告は過去に行なわれていない。
また、K−MAC社製ST−2000は、顕微鏡対物レンズのNAが低く、スポットサイズの大きさの限界から数十ミクロンオーダーである球状の微粉体上の光透過性コート膜から干渉波形を抽出することが市販仕様のままでは困難である。
また、大日本スクリーン社製VM−1200、大塚電子社製FE−3000に関しては、スポット径、計算波長領域の面と顕微鏡光学的な開口絞り、フォーカス調整等の操作が困難なことから、現仕様のまま薄膜コート微粉体の光透過性コート膜計測に使用することが困難である。
顕微鏡光学系を用いた微小領域の近赤外分光反射率測定装置として、他にオリンパスからスポット径50μm、近赤外領域:1050nm〜1650nmに対応した装置(例えば、非特許文献5参照。)が発表されているが、Beam径が50μmと大きいから薄膜コート微粉体の光透過性コート膜計測を精度良く行なうことは困難であり、また波長範囲が1050〜1650nmと近赤外域に限られるため、サブミクロンオーダーの計測が困難となる。
また、オリンパスからは可視光での表面反射率測定に特化した分光反射率測定機USPM−RU(例えば、非特許文献6参照。)が上市されているが、全域に迷光に依るものと思われるノイズが相乗され膜厚算出が困難な状況であり、微細粒子を含んだ薄膜コート微粉体のコート膜厚測定に関しては干渉波形を取得することが困難である。
また、何れの市販干渉膜厚測定装置を用いた場合でも、集束光のフォーカス位置を光透過性コート表面から微粉体側にシフトさせることを行なわなければ、薄膜コート微粉体からの干渉が稼げず、更に高倍率レンズ使用時は焦点深度を確保できないため、良好な干渉スペクトル計測を行なうことは不可能である。
本発明の薄膜コート微粉体のコート層膜厚測定方法は「微粉体上に光透過性コート膜を形成してなる被測定物におけるコート膜の膜厚を測定する方法」であって、以下のような特徴を有するものである。
即ち、所望波長領域のスペクトル光を放射する光源からの光を、照明領域を制限したケーラー照明系を備えた顕微鏡光学系を介して対物レンズにより集光し、集光光束を上記光透過性コート膜に垂直入射させる。スペクトル光の「所望波長領域」は、コート膜厚測定を可能ならしむる波長領域を意味し、光透過性コート膜の構成(微細粒子の有無、微細粒子の粒径、凝集径等)により定められる。
この場合、集束光のフォーカス位置を光透過性コート膜表面から微粉体側に寄せた状態で、上記光透過性コート膜表面と微粉体表面とにより反射して互いに干渉した反射光を、上記対物レンズを介して顕微鏡光学系に戻し、検出光伝送用ファイバにより分光手段に導いて可視域を含む300nm以上の波長幅で分光する。分光により得られる分光スペクトル強度の極小と極大を与える各波長と、上記膜の屈折率とに基づき、光透過性コート膜の膜厚を演算算出する。
即ち、この発明の膜厚測定方法は、周知の「光干渉膜厚計測方式」の原理を利用する。
また、集束光のフォーカス位置を光透過性コート膜表面から微粉体側に寄せることにより、微粉体表面での反射率を増加させることができ、光透過性コート膜表面反射と合わせて良好な干渉波形を取得することが可能となる。また、球形に近い微粉体の特定(頂点)領域から発せられた光だけを抽出して良好な干渉スペクトル強度を取得するためには照明領域を制限することが必要であり、これによって、微粉体頂点以外からの迷光を除去でき、良好な分光スペクトル強度を得ることが達成できる。
更に、可視域を含む300nmの波長幅で分光することにより、薄い光透過性コート膜における分光スペクトル強度の極小と極大を与える波長が検出可能となる。300nm以上とすることで凡そ0.3μmまでの薄膜の測定が可能となる。
更に、集光光束を光透過性コート膜に垂直入射させる方法が、ケーラー照明系の開口絞りを絞ることによって光透過性コート膜厚を良好に測定できる。ケーラー照明系の開口絞りは絞ることによって照明系のNAを小さくでき、集光光束を垂直入射に近い状態にできるので、「光干渉膜厚計測方式」に必要な「垂直入射/垂直受光」の基本原理を満たしやすくなる。
特に集光光束の光透過性コート膜への入射角が0〜18度までであれば、平行光束と同様の取り扱いが可能となり、対物レンズの斜め入射に伴う誤差が小さくなる。
また、照明領域制限方法がケーラー照明系の視野絞りを絞ることで光透過性コート膜厚を良好に測定できる。
微粉体の表面に光透過性コート膜を設けた薄膜コート微粉体は、スライドガラス上に散布された状態で測定されることが多く、顕微鏡光学系のケーラー照明系の視野絞りを絞り、試料面での照射領域を小さくすることによって、高精度の分光スペクトル強度計測が達成される。
ケーラー照明系は、高輝度で均一な平行光で試料面を照らすため、干渉計測に必要な「垂直入射/垂直受光」の基本原理が達成しやすい。また、ケーラー照明系の視野絞りは、絞っていくと六角形や八角形などの多角形に視野が狭くなっていく。この絞りを絞っても測定像の明るさは変わらないが、不必要に広い範囲を照明することが避けられるので、分光スペクトル測定時に迷光を押さえる働きがある。ケーラー照明系の視野絞りの大きさを変えれば、試料面での照明領域を調整できる。
特に、照明領域制限方法であるケーラー照明系の照明領域の直径が薄膜コート微粉体径の1/5〜1/25とすることによって、測定にあずかる光以外の余分な光の対物レンズへの入射を好適に防ぐことが可能となる。
被測定物である微粉体における光透過性コート層は、その光透過性コート層の所定厚さ部分を、微細粒子を分散させた膜として構成することができ、この場合には、微細粒子の粒子径もしくは凝集径が0.8μm以下であり、膜厚測定装置における干渉波形の測定波長領域の一部を、上記粒子径若しくは凝集径以上の領域として測定できる。
光透過性コート膜に分散される微細粒子の粒子径もしくは凝集径は0.8μm以下であることが好ましく、その場合、膜厚測定装置における測定波長領域(分光スペクトル強度の極大・極小を与える波長を特定する領域)を、上記粒子径若しくは凝集径以上の領域を含むものとする。
このように、測定波長領域を微細粒子の粒子径や凝集径よりも大きい波長領域を含むことにより、検出光における「微細粒子やその凝縮粒子による散乱や回折の影響」する波長領域を避けて、良好な干渉波形測定を実現できる。
なお、上記微細粒子は1種に限らず、2種以上のものを混合して分散させることができ、またその場合種類が異なり粒径が異なったものでも使用可能である。
屈折率差は、媒質と媒質の屈折率差が小さくなれば、界面反射が小さくなり、透明に近くなってしまうことと同じで、バインダー樹脂と微細粒子の屈折率差が大きくなれば、境界面の反射率が上がって不透明になり、干渉計測が達成できなくなる。
屈折率差が±0.2の範囲であれば、バインダー樹脂と微細粒子の界面反射も低くなり、光透過性コート膜中で光が散乱されることなく、繰り返し反射干渉を達成することが可能となる。
一般には、表面層に集束光のフォーカス(ピント)を合わせて、対物レンズの光学的特性から決まるモノポーラの焦点深度領域で膜厚の繰り返し反射干渉計測が達成される。この場合、焦点深度内では、擬似的に「光干渉膜厚計測方式」における基本原理が成立するので、顕微鏡光学系を用いた膜厚計測が可能となる。
測定には、光透過性コート膜厚が焦点深度以下である条件が必要となる。焦点深度を越えた場合は2界面の反射を同時に検出できない等の問題が生じ、測定上好ましくない。ここで、集束光のフォーカスポイントを微紛体表面側に移動させると、バイポーラ(±)の焦点深度領域を使用することが可能になる。
スライドガラス上に薄膜コート微粉体を散布した場合、光透過性コート膜の膜厚計測は単一粒子の入射光束に垂直な面、即ち薄膜コート微粉体の頂点附近での計測となる。この場合、通常、各薄膜コート微粉体間のコート層膜厚はバラツキを有しており、1つの薄膜コート微粉体のコート膜厚値が、薄膜コート微粉体全体の平均膜厚を示すものではない。10〜100点の統計的な平均膜厚値を求めることに依って、実用的な膜厚値の取得が可能となる。
「光源」は、所望波長領域のスペクトル光を放射する。
「顕微鏡光学系」は、光源からの光をケーラー照明系の開口絞り、視野絞り、及び対物レンズを介して照明系のNAを可変し照明領域を制限して被測定物側へ導光し、また被測定物からの反射光を対物レンズを介して導光し、検出光伝送用ファイバへと伝送する。
「対物レンズ」は、顕微鏡光学系の開口絞りから射出した照射光を被測定物の膜に向って集光させる。
「分光手段」は、被測定物により反射され、対物レンズ及び顕微鏡光学系を介して検出光伝送用ファイバにより伝送された検出光を分光する。
「スペクトル強度検出手段」は、分光手段により分光された検出光の分光スペクトル強度を検出する。
「演算手段」は、分光スペクトル強度の極小と極大を与える各波長と膜の屈折率とに基づき、被測定物における光透過性の膜の膜厚を演算算出する。
合焦位置以外の樹脂コート膜のボケ像や周囲からの散乱光をピンホールでカットできるので、可視性の極めて高い干渉波形を得ることができる。
本発明の膜厚測定装置において用いられる対物レンズは、開口数:NAが0.4以上であり、作動距離が3mm以上、30mm以下であることが好ましい。
同じ倍率の対物レンズの場合は、NAを少し小さくし作動距離を長くした対物レンズを用いることにより、「光干渉膜厚計測方式」の原理に必要な「垂直入射/垂直受光」の基本原理が成立しやすくなり、分光スペクトル強度の抽出が容易に実現できる様になる。対物レンズとしては、色収差と像面湾曲を補正したプラン型フルオリートレンズ、プラン型アクロマートレンズ、プラン型アポクロマートレンズなどのほかに、反射対物レンズ等を利用できる。
また、対物レンズをプラン型アポクロマートレンズとすることにより、像面を平坦に近くした状態で集光時・受光時における色収差を可視域内で完全に除去でき、高い集光性と波長精度の良い分光スペクトル強度を検出できる。
更に、屈折系の対物レンズでは、対応できる波長範囲が狭く、特に近赤領域の色収差補正が困難であるが、反射対物レンズを用いることにより透過率、色収差等の問題を解決できるので、波長検出精度の良い分光スペクトル強度を検出できる。
本発明者の実験より、NA:0.4以上であり作動距離が3mm以上、30mm以下の長作動距離タイプの対物レンズを用いることで薄膜コート微粉体のコート層からの良好な干渉スペクトル抽出と、膜厚測定に必要な最低限度の照明光のスポット径と受光の焦点深度を確保できることを確認している。
ハロゲン−タングステンランプから放射される光は、広い波長領域に分光分布を持つので、上述の「所望波長領域のスペクトル光」を容易に実現できる。
光源としては、他に400〜1000nmに発光分布を持つLED等を利用できる。
また、顕微鏡光学系及び対物レンズの透過波長域と、分光手段の分光波長域が一致していることが好ましい。
本発明の膜厚測定装置においては、顕微鏡光学系の透過波長として可視域を含む300nm以上の波長幅で700〜1000nmの波長域の一部を有することが好ましい。
対物レンズの場合も、光透過性コート膜の膜厚が薄くなった場合には、原理的には任意の波長域に現われる分光スペクトル強度の極大と極小の数は低減するので、測定に用いられる対物レンズの透過波長帯が可視域を含む300nm以上の波長幅で700〜1000nmの波長域の一部を有する場合は、極大と極小の検出が確実となり、可視性の高い干渉スペクトルを取得することが可能となる。
また、本発明の膜厚測定装置において、分光手段の分光波長帯が可視域を含む300nm以上の波長幅で700〜1000nmの波長域を含んでいることが好ましい。
回折格子等の分光手段は、回転により分光波長領域を変化させる回転方式のものを用いることもできるが、「固定型の分光手段(空間的に固定して用いられる回折格子等)」を用いると、回転のためのスペースや回転機構が不要となるため、膜厚測定装置のコンパクト化が可能になる。
CCDラインセンサは、シリコンフォトダイオードと比較して感度が高く、顕微鏡光学系を用いた微弱計測の場合でも充分な計測感度を有しており、小型、軽量、安価でもある。
また本発明の膜厚測定装置においては、分光手段が0.5〜5nm/画素の波長分解能の範囲であることが好ましい。
微粉体上の光透過性コート膜のような薄膜試料での分光スペクトル強度は、非常にブロードであり0.5nm/画素以上の波長分解能で充分な場合が多い。但し、大き過ぎると分光手段の段階でスムージングが掛かり、1μm以上の膜厚となった場合は分光スペクトル強度の信号の一部が失われることもあるため、上限として5nm/画素程度としておくことが好ましい。
一般的に光干渉反射型着色磁性粒子は、暗色の磁性体微粒子の表面に酸化物からなる薄膜を多層形成したもので、この複数の薄膜により該磁性体微粒子の黒色を隠蔽し、新たな所望の色に着色したものある。このような多層の薄膜はゾル・ゲル法によって形成される高屈折率物質からなる膜と、低屈折率の物質からなり、本発明測定方法によって、このような薄膜の厚さを測定することができる。
まず、膜厚測定装置の実施の1形態を説明する。
図1は、膜厚測定装置の実施の1形態を要部のみ示した説明図である。
図1において、(10)で示される薄膜コート微粉体は、ガラス板(11)上に重ならない状態で散布/保持され、顕微鏡光学系のX−Y粗・微動機構を用いて、測定光軸上に設定される。
図2(a)に示すものは、微粉体(1)に光透過性コート膜(2)が形成されたものであり、図2(b)は、光透過性コート膜部の断面図である。
図2(a)、図3(a)において、光透過性コート膜(2)は、電子写真用キャリアの場合はスペント化を防止するための機能を持ち、図3(a)では耐摩耗性と帯電性制御のために、微細粒子(3)が含有されている。
光透過性コート膜(2)の膜厚は0.1〜1.0μmが好ましく、微粉体(1)の粒径は、φ20〜100μmが好ましい。
電子写真用キャリアで使用できる微細粒子としては以下の様なものがある。導電性ZnO、Al等の金属粉、各種の方法で作られたSnO2、及び種々の元素をドープしたSnO2ホウ化物、例えばTIB2、ZnB2、MoB2、炭化ケイ素、及び導電性高分子(ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリ(パラーフェニレンスルフィド)ポリピロール、ポリエチレン、カーボンブラック(ファーネスブラック、アセチレンブラック、チャネルブラックなど)等である。
即ち、例えば、ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン散共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体などのスチレン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、ケトン樹脂、エチレンーエチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
これら材料による1種若しくは2種以上の微細粒子(3)を分散させて光透過性コート膜とすることができる。微細粒子(3)の分散は、塗布液の状態で適当な分散機を用いることにより行なうことができる。分散させる微細粒子(3)の粒子径あるいは凝集径は0.8μm以下が好ましい。
える各波長と光透過性コート膜の屈折率とに基づき、被測定物における光透過性の膜の膜厚を演算算出する演算手段(98)とを有し、照射光を被測定物の表面に垂直入射させるように構成されている。
光源(91)は「ハロゲン−タングステンランプ」で、可視領域から近赤外領域にわたる広い波長領域のスペクトル光を放射する。放射された光は、顕微鏡光学系を経て対物レンズ(94)へ導光される。顕微鏡光学系から射出した光は対物レンズ(94)により、光透過性コート膜表面に光スポットとして集光される。
分光手段(96)は「回折格子」であり、具体的には、固定型ツェルニターナ型回折格子で、分光領域:400〜1000nm、分解能:0.5nm/ポイントのものである。分光手段(96)としては、前述のように、回折格子に代えて「プリズムあるいは分光フィルタ」を用いることもできる。
スペクトル強度検出手段(97)は「CCDラインセンサ」であり、可視域から1050nmの範囲で感度を持ち、受光素子数:1024のものを用いている。
即ち、この場合、光透過性コート膜は微細粒子(3)と光透過性コート膜(2)により構成される。光透過性コート膜(2)は、例えばバインダー樹脂と±0.2以内の屈折率の粒径:0.5μm、即ち500nmの微細粒子(3)を均一に分散させたものである。
この場合、光透過性コート膜(2)の屈折率は、1.7程であり、したがって、微細粒子(3)の屈折率が1.77程であるので、屈折率差が±0.2以内にあり、膜厚測定に当たってバインダー樹脂と微細粒子(3)の界面反射は殆ど無視して考えることができる。
集光された光は、一部が、薄膜コート微粉体の表面即ち光透過性コート膜(2)の表面で反射され、一部は、光透過性コート膜(2)内に入射し、微粉体(1)の表面で反射される。
これら反射光は対物レンズ(94)及び顕微鏡光学系(93)を介して「検出光伝送用ファイバ(95)の端面」に集光され、同ファイバ(95)により分光手段(96)へ「検出光」として伝送される。伝送された検出光は分光手段(96)により分光され、その分光スペクトル強度がスペクトル強度検出手段(97)により検出される。
図4に示すように、分光スペクトル強度は、可視域を含む、波長:450nmから波長800nmの300nm以上の領域にわたって有限であり、全波長領域で強度が波長とともに振動的に変化する。
分光スペクトル強度のこのような振動的な変化は「検出光における干渉」の結果であるが、分光スペクトル強度の振動的な変化の振幅は、波長:450nmより短波長側と780nmより長波長側ではノイズが急激に重畳してくる。
これは、顕微鏡光学系と対物レンズの透過率が急激に低下することに起因しており、この場合、透過波長領域が狭いと、膜厚計測に必要な分光スペクトル強度の極小と極大を与える各波長の検出ができなくなり、膜厚計測の精度が著しく低下する。
また、波長が「光透過性コート膜に含まれた微細粒子の粒径よりもある程度大きく」なると、光は微細粒子に散乱されなくなり、検出光において良好に干渉する。
波長:450nm〜800nmの波長領域において、演算値の分光スペクトル強度の変化において「隣接する極大と極小」の適当なものを選択し、これら極大・極小を与える波長を、λ2m、λ2m+1とする。mは「干渉の次数」であり適宜に定めることができる。
2m=4n1d/λ2m
2m+1=4n1d/λ2m+1
これらから干渉次数:mを消去すると、
n1d=λ2m・λ2m+1/4(λ2m−λ2m+1)
が得られる。
したがって、上記極大・極小を与える波長:λ2m、λ2m+1が判ると、光透過性コート膜の光学的膜厚:n1dが知られ、さらに、屈折率:n1が判れば、求める光透過性コート膜の厚さ:dは、
d=λ2m・λ2m+1/4n1(λ2m−λ2m+1)……(1)
として算出することができる。
即ち、演算手段(98)は、スペクトル強度検出手段(97)により検出されたデータを「連続した分光スペクトル強度」として演算し、得られた分光スペクトル強度に対して微分演算等により、極小・極大を与える各波長:λ2m+1、λ2mを特定し、光透過性コート膜(2)の屈折率:n1とに基づき光透過性コート膜の膜厚:dを、上記の(1)式に従って演算算出する。
光透過性コート膜(2)の構成として、図2の如き構成の場合にも、上記と同様にして、感光層の厚さを0.05μm以下の分解能で精度良く測定できた。
上述したように、膜厚(光透過性コート膜の厚み)の演算算出には「光透過性コート膜の分光屈折率のデータ」が必要であり、上述した例では、光透過性コート膜の分光屈折率が、制御手段(98)に利用可能に記憶されている。例えば電子写真用キャリアでは、画像形成装置の機種毎に種々のものが用いられており、それら薄膜コート微粉体であるキャリアにおける光透過性コート膜の材質も多岐にわたっている。
膜厚測定装置(9)は、その演算手段(98)に「厚みを測定すべき光透過性コート膜の材質」の分光屈折率のデータを利用可能に記憶させておけば良いが、膜厚測定装置の汎用性を高め、複数種の薄膜コート微粉体に対して適応できるように、演算手段に「測定対象となりうる1種以上の膜(光透過性コート膜)の分光屈折率データ」を利用可能に記憶させておくことが好ましい。
Aは、図2に示す光透過性コート膜の分光屈折率データ、Bは、別の光透過性コート膜の分光屈折率データである。上述したように、膜厚の演算算出においては、分光屈折率:n1は波長:λ2m〜λ2m+1の範囲で一定とみなされる。
上述したように、膜厚測定装置(9)により、微粉体上(1)に光透過性コート膜(2)を形成してなる被測定物における光透過性コート膜(2)の膜厚を測定する方法であって、所望領域の波長スペクトル光を放射する光源(91)からの光を開口絞り(99)及び照明領域を制限可能な視野絞り(100)を有した顕微鏡光学系(93)(OLYMPUS BX60)により導光して、この放射光束を対物レンズ(94)により被測定物(10)に垂直入射させて光透過性コート膜(2)に照明領域を制限して集光させ、集束光のフォーカス位置を光透過性コート膜(2)表面から微粉体(1)表面に寄せた状態で光透過性コート膜(2)表面と微粉体(1)表面とにより反射して互いに干渉した反射光を、対物レ
ンズ(94)、顕微鏡光学系(93)を介して、検出光伝送用ファイバ(95)の端面に戻し、検出光伝送用ファイバ(95)により分光手段(96)に導いて、可視域を含む300nm以上の波長幅で分光し、分光スペクトル強度の極小と極大を与える各波長:λ2m、λ2m+1と、膜の屈折率:n1とに基づき微粉体上の光透過性コート膜の膜厚を演算算出する膜厚測定方法が実施されることになる。
図6から明らかなように、分光スペクトル強度は、振動の振幅(極大値と極小値の差)が判断できず、このため、波長:λ2m、λ2m+1の特定が困難となり、光透過性コート膜(2)の測定値を演算算出することができない。
図8(a)、図8(b)から明らかなように、コート層がない場合の分光スペクトル強度は、図8(a)に示す通り、680nmから上の近赤外域の波長帯域でフレア光のノイズが重畳するようになり、このため、コート膜が存在する場合の振動の振幅(極大値と極小値の差、特に極小値)が図9に示す「視野絞り開」線図ように正確に判断できず、波長:λ2m、λ2m+1の特定が困難となり、光透過性コート膜(2)の測定値を演算算出することができない。ノイズが重畳しない場合は、「視野絞り閉」線図の様になる。
2 光透過性コート膜
3 微細粒子
9 膜厚測定装置
10 薄膜コート微粉体(被測定物)
11 ガラス板
91 光源
92 ケーラー照明系
93 顕微鏡光学系
94 対物レンズ
95 検出光伝送用ファイバ(ファイバプローブ)
96 分光手段
97 スペクトル強度検出手段
98 演算手段
99 開口絞り
100 視野絞り
Claims (26)
- 所望波長領域のスペクトル光を放射する光源からの光を照明領域を制限した顕微鏡光学系を介した対物レンズにより集光し、集光光束を光透過性コート膜に垂直入射させ、集束光のフォーカス位置を前記光透過性コート膜表面から微粉体表面に寄せた状態で、前記光透過性コート膜表面と微粉体表面とにより反射して互いに干渉した反射光を、上記対物レンズを介して顕微鏡光学系に戻し、検出光伝送用ファイバにより分光手段に導いて可視域を含む300nm以上の波長幅で分光し、分光スペクトル強度の極小と極大を与える各波長と、前記光透過性コート膜の屈折率とに基づき前記光透過性コート膜の膜厚を演算算出することを特徴とする薄膜コート微粉体のコート層膜厚測定方法。
- 前記対物レンズを介して顕微鏡光学系に戻した反射光が、対物レンズの合焦点位置と共役な位置に置いたピンホールを通過させた後、検出光伝送用ファイバーに導くことを特徴とする請求項1に記載の薄膜コート微粉体のコート層膜厚測定方法。
- 前記集光光束を前記光透過性コート膜に垂直入射させる方法が、ケーラー照明系の開口絞りを絞ることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜コート微粉体のコート層膜厚測定方法。
- 前記集光光束の前記光透過性コート膜への入射角が0〜18度であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の薄膜コート微粉体のコート層膜厚測定方法。
- 前記照明領域制限方法が、ケーラー照明系の視野絞りを絞ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の薄膜コート微粉体のコート層膜厚測定方法。
- 前記照明領域制限方法であるケーラー照明系の照明領域の直径が薄膜コート微粉体径の1/5〜1/25であることを特徴とする請求項5に記載の薄膜コート微粉体のコート層膜厚測定方法。
- 前記光束の収束点を前記薄膜コート微粉体の中心に合致させることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の薄膜コート微粉体のコート層膜厚測定方法。
- 前記光透過性コート膜が、微細粒子が分散されたものであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の薄膜コート微粉体のコート層膜厚測定方法。
- 前記光透過性コート膜に含まれる微細粒子の粒子径もしくは凝集径が0.8μm以下であり、分光スペクトル強度の測定波長領域の一部を、前記粒子径若しくは凝集径以上の領域としたことを特徴とする請求項8に記載の薄膜コート微粉体のコート層膜厚測定方法。
- 前記微細粒子の屈折率が、前記光透過性コート膜屈折率の±0.2の範囲であることを特徴とする請求項8又は9に記載の薄膜コート微粉体のコート層膜厚測定方法。
- 前記対物レンズを介した集束されたスペクトル光のフォーカス位置を、前記対物レンズの光学的特性から決まるモノポーラの焦点深度内で前記光透過性コート膜表面から前記薄膜コート微粉体側に寄せたことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の薄膜コート微粉体のコート層膜厚測定方法。
- 前記薄膜コート微粉体上の前記光透過性コート膜の膜厚を多点測定の統計的な平均膜厚値とすることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の薄膜コート微粉体のコート層膜厚測定方法。
- 所望波長領域のスペクトル光を放射する光源と、この光源からの光を集光して集光光束を、光透過性コート膜に入射させるための照明領域を制限する機能及び前記光透過性コート膜に垂直入射させる機能を有した顕微鏡光学系及び対物レンズと、被測定物により反射され、前記対物レンズを介して検出光伝送用ファイバにより伝送された検出光を分光する分光手段と、前記分光手段により分光された検出光の分光スペクトル強度を検出するスペクトル強度検出手段と、前記分光スペクトル強度の極小と極大を与える各波長と前記光透過性コート膜の屈折率とに基づき、薄膜コート微粉体のコート層における前記光透過性コート膜の膜厚を演算算出する演算手段とを有し、前記スペクトル光を前記薄膜コート微粉体の前記光透過コート膜表面に垂直入射させるように構成されたことを特徴とする薄膜コート微粉体のコート層膜厚測定装置。
- 前記対物レンズを介して前記検出光伝送用ファイバにより伝送された検出光を分光する分光手段において、前記対物レンズの合焦点位置と共役な位置にピンホールを設置し、前記ピンホールの後段に前記検出光伝送用ファイバを設置したことを特徴とする請求項13に記載の薄膜コート微粉体のコート層膜厚測定装置。
- 前記対物レンズの開口数:NAが0.4以上であり、作動距離が3mm以上、30mm以下であることを特徴とする請求項13又は14に記載の薄膜コート微粉体のコート層膜厚測定装置。
- 前記顕微鏡光学系及び対物レンズの透過波長域と、前記分光手段の分光波長域が一致していることを特徴とする請求項13乃至15のいずれかに記載の薄膜コート微粉体のコート層膜厚測定装置。
- 前記顕微鏡光学系の透過波長が可視域を含む300nm以上の波長幅で700〜1000nmの波長域の一部を有することを特徴とする請求項13乃至16のいずれかに記載の薄膜コート微粉体のコート層膜厚測定装置。
- 前記対物レンズの透過波長帯が可視域を含む300nm以上の波長幅で700〜1000nmの波長域を含んでいることを特徴とする請求項13乃至17のいずれかに記載の薄膜コート微粉体のコート層膜厚測定装置。
- 前記分光手段の分光波長帯が可視域を含む300nm以上の波長幅で700〜1000nmの波長域を含んでいることを特徴とする請求項13乃至18のいずれかに記載の薄膜コート微粉体のコート層膜厚測定装置。
- 前記対物レンズがプラン型のフルオリートレンズであることを特徴とする請求項13乃至19のいずれかに記載の薄膜コート微粉体のコート層膜厚測定装置。
- 前記対物レンズがプラン型のアポクロマートレンズであることを特徴とする請求項13乃至19のいずれかに記載の薄膜コート微粉体のコート層膜厚測定装置。
- 前記対物レンズが反射対物レンズであることを特徴とする請求項13乃至19のいずれかに記載の薄膜コート微粉体のコート層膜厚測装置。
- 前記分光手段が、回折格子もしくはプリズムあるいは分光フィルタであることを特徴とする請求項13乃至22のいずれかに記載の薄膜コート微粉体のコート層膜厚測定装置。
- 前記スペクトル強度検出手段が、CCDラインセンサもしくはシリコンフォトダイオード列であることを特徴とする請求項13乃至23のいずれかに記載の薄膜コート微粉体のコート層膜厚測定装置。
- 前記分光手段が0.5〜5nm/画素の波長分解能の範囲であることを特徴とする請求項13乃至24のいずれかに記載の薄膜コート微粉体のコート層膜厚測定装置。
- 前記演算手段が、測定対象となりうる1種以上の光透過性コート膜の分光屈折率データを利用可能に記憶していることを特徴とする請求項13乃至25のいずれかに記載の薄膜コート微粉体のコート層膜厚測定装置。
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