JP4055497B2 - 多相モータ駆動用インバータシステム、その異常検出方法および異常検出プログラム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インバータにて駆動されまた発電を行う交流モータと、この交流モータの中性点に接続された電源と、を有する多相モータ駆動用インバータシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、各種の機器の動力源として交流モータが広く利用されており、電気自動車や、ハイブリッド自動車などにおいても、通常はバッテリからの直流電力をインバータで所望の交流電力に変換してモータに供給するシステムが採用されている。このシステムによって、出力トルクの広範囲な制御が可能となり、また回生制動による電力をバッテリの充電に利用できるというメリットもある。
【0003】
ここで、大出力のモータの電源としては高電圧のものが効率がよく、電気自動車やハイブリッド自動車では、そのインバータの入力側に接続する主バッテリとして、数100Vという高電圧のものを利用している。一方、スター結線のモータコイルの中性点では、インバータ入力電圧の1/2の電圧が通常得られている。そこで、この中性点にバッテリを接続することで、システムから2種類の直流電圧を出力することができ、またモータコイルをチョッパ制御することなどによって2つのバッテリ間による電力の授受を制御することもできる。
【0004】
従って、ハイブリッド自動車などでは、モータを発電機としても利用することで、得られた発電電力を2つのバッテリの充電に利用して、2つの電源電圧を得るシステムが採用可能となる。特に、バッテリに代えてコンデンサを用いることもできる。このようなシステムは特開平11−178114号公報などに示されている。
【0005】
ここで、車両には、各種の電気機器が搭載されており、これらの補機バッテリとして通常12V(充電時14V)程度のものが搭載されている。上述のモータ中性点の電圧は、インバータ入力側の電圧の1/2程度であり、通常の電気自動車やハイブリッド自動車では、中性点電圧といえどもかなりの高電圧となり、補機バッテリをここに接続することは困難である。そこで、補機バッテリの充電には、別に設けたDCDCコンバータを利用している。
【0006】
一方、このようなシステムの実用的な応用例として、36V電源と12V電源を備える、いわゆる2電源システムも検討されている。この2電源システムにおいては、36V電源の充電時にはインバータ入力電圧を42V程度とし、12V電源を充電する場合には、中性点電圧を14V程度にすればよいため、モータコイルを利用して2つの電源間の電力の授受が行える。
【0007】
従って、このインバータシステムによれば、高圧側バッテリと低圧側バッテリ間の電荷の移動をモータコイルを利用して行うことができ、DCDCコンバータが不要であるという利点が得られる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、上述のような多相モータ駆動用インバータシステムにおいて、低電圧側バッテリには、多数の補機が接続されており、低電圧側バッテリはこれら補機に安定して電力を供給する役割を果たしている。すなわち、多相モータ駆動用インバータシステムにおいては、インバータにおけるスイッチング素子のスイッチングを制御して中性点電圧を制御しているが、この中性点電圧は必ずしも一定値に維持できるわけではない。従って、この低圧側バッテリがないと、補機に供給する電圧が大きく変動してしまい、補機の安定した動作を確保することができない。また、各補機において、入力電圧の変動を抑制するためのコンデンサを有している場合においては、中性点電圧が大きく変化することでコンデンサの寿命が短くなってしまうという問題がある。そこで、低電圧側バッテリを設けているが、この低電圧側バッテリが何らかの都合で、はずれた(電気的接続が断たれた)場合には、上述の問題が発生する。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、低電圧側バッテリの接続が断たれたことを確実に検出することができる多相モータ駆動用インバータシステムを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、インバータにて駆動されまた発電を行う交流モータと、この交流モータの中性点に接続された電源と、前記中性点における電流または電圧の状態を検出する中性点状態検出手段と、を有し、前記中性点状態検出手段の検出結果に基づいて前記電源の異常判定を行うことを特徴とする。
【0011】
中性点電圧や中性点電流は、電源の存在により平滑化される。しかし、電源が切り離された場合には、この電源の影響がなくなり、中性点電圧や、中性点電流が変化しやすくなる。従って、この中性点の状態によって電源が切り離されてしまった異常を効果的に検出することができる。
【0012】
また、前記中性点状態検出手段は、前記中性点電圧のリップルを検出することが好適である。
【0013】
中性点電圧には、モータ駆動電流に基づくリップルがのり、このリップルの大きさを検出することで、電源が切り離されてしまったことを効果的に検出することができる。
【0014】
また、前記電源には、電力を消費する電気機器である補機負荷が接続され、前記中性点状態検出手段は、補機負荷に供給される電流のリップルを検出することが好適である。
【0015】
中性点電流によっても、中性点電圧と同様に効果的な電源はずれの検出が行える。
【0016】
また、前記中性点状態検出手段により検出したリップルが所定値以上である場合に、異常と判定することが好適である。
【0017】
また、前記中性点と電源の間には、リアクトルが接続されており、前記中性点状態検出手段は、このリアクトルより電源側の電流または電圧の状態を検出することが好適である。
【0018】
また、本発明に係る方法は、インバータにて駆動されまた発電を行う交流モータと、この交流モータの中性点に接続された電源と、を有する多相モータ駆動用インバータシステムにおける異常検出方法であって、前記中性点における電流または電圧の状態を検出し、この検出結果に基づいて前記電源の異常判定を行うことを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係るプログラムは、インバータにて駆動されまた発電を行う交流モータと、この交流モータの中性点に接続された電源と、 前記中性点の電流または電圧を監視する異常検出装置と、を有する多相モータ駆動用インバータシステムにおける異常検出プログラムであって、前記異常検出装置に、前記中性点における電流または電圧の状態を取り込ませ、取り込んだ状態に基づいて前記電源の異常判定を行わせることを特徴とする。
【0020】
また、前記交流モータが車両用交流モータであることが好適である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は、実施形態に係る多相モータ駆動用インバータシステムの全体構成を示す図である。主電源である36V(充電時42V)バッテリ10には、インバータ12が接続されている。すなわち、インバータ12の正極母線、負極母線間にバッテリ10の出力が印加される。
【0023】
インバータ12は、例えば内部に正極母線、負極母線間に2つのスイッチング素子(トランジスタ)を配置したアームを3本並列して設け、各アームのトランジスタ間を3相のモータ出力端としている。
【0024】
そして、このインバータの3相モータ出力端には、3相の交流モータ14の3相モータコイル端が接続される。従って、インバータ12の1つの上側トランジスタを順次オンし、1つの上側トランジスタがオンしている間に他のアームのトランジスタを順次オンして、交流モータ14の各相コイルに120°位相の異なったモータ電流を供給する。
【0025】
また、交流モータ14の中性点には、リアクトル16を介し、補機バッテリ18の正極および各種の補機負荷20が接続されている。そして、リアクトル16より補機バッテリ18側の補機バッテリ18の電源ラインの電圧を検出する電圧計22が設けられており、この電圧計22の出力は制御回路24に供給されている。
【0026】
制御回路24は、電圧計22の出力から、そのリップル成分の大きさを判定し、リップルが所定以上となったことで、補機バッテリ18がはずれているなどの異常を判定する。
【0027】
このようなシステムにおいて、インバータ12における上側トランジスタのオンデューティーと、下側トランジスタのオンデューティーの比を変更することで、中性点電圧を制御することができる。すなわち、両者のオン期間が同一であれば、中性点電圧はインバータ入力電圧(バッテリ10電圧)に等しくなる。一方、下側トランジスタのオン期間「1」に対し、上側電圧のオン期間が「2」であれば、中性点電圧は、バッテリ10電圧の1/3の電圧になる。
【0028】
例えば、バッテリ10の電圧が36V(充電時42V)の場合に、補機バッテリ18の電圧は12V(充電時14V)になる。そして、バッテリ10からの電力によって、交流モータ14を駆動して車両発進時などトルクアシストを行い、補機バッテリ18からの電力によって各種の補機負荷20を動作させる。
【0029】
ここで、中性点電圧を、バッテリ10電圧の1/3になるように制御するため、インバータ12における上側トランジスタと下側トランジスタのオン期間がアンバランスになっており、中性点電圧はモータ各相への電流供給位相に従って、振動することになる。リアクトル16は、この振動する中性点電圧をある程度平滑化する役割を果たし、補機バッテリ18によって補機バッテリ18の出力電圧はほぼ一定値に維持される。
【0030】
ところが、何らかの理由で、補機バッテリ18の接続が解除されてしまうと、リアクトル16の出力がそのまま補機電源ラインの電圧になる。補機バッテリ18が接続されている場合には、補機バッテリ18の能力によって補機電源ラインの電圧はほぼ一定に維持されていたが、補機バッテリ18が切り離されてしまうと、中性点の電圧変化の影響が補機バッテリラインにそのまま現れてしまう。
【0031】
すなわち、補機電源ラインは、中性点電圧と同様に、モータ各相電流のピークにあわせて変動する。すなわち、図2に示すように、モータ各相電流の3倍の周期で変動することになる。
【0032】
本実施形態では、制御回路24において、このリップル成分の大きさを検出し、検出値が所定以上になったことで異常と判定する。この制御回路24における判定について、図3に基づいて説明する。
【0033】
まず他の異常がなかったかを判定し(S11)、異常がなかった場合には、14V系の電圧平均値Vbsaveから14系の目標電圧(電圧指令値)Vbs*を減算した値の絶対値が所定の閾値aより小さいかを判定する(S12)。この判定でYESの場合には、14V系のリップル、すなわち、図2に示す交流成分のピーク間電圧Vbsp-pが所定の閾値bより大きいかを判定する(S13)。この判定において、YESの場合には、補機バッテリ異常と判定する(S14)。
【0034】
なお、14V系の補機電源ラインの平均電圧Vbsaveは、温度によっても変化するが、13.5V〜14.5V程度であり、これに応じて目標電圧Vbs*を14V、閾値aを1V程度に決定する。また、リアクトル16のリアクタンスにもよるが、閾値bは、0.5V程度に設定する。
【0035】
一方、S11またはS12においてNOの場合には、判定不能と判定し(S16)、S13においてNOの場合には異常なしと判定する(S15)。
【0036】
図4には、他の実施形態の構成が示されており、この例では電圧計22に代えて電流計26が採用されている。すなわち、リアクトル16と、補機バッテリ18の正極が接続されている接続点までの間に、中性点と補機バッテリ18および補機負荷20の間に流れる電流を検出する電流計26が設けられており、この電流計26の検出結果に応じて制御回路24が異常判定を行う。
【0037】
すなわち、図6に示すように、まず他の異常がなかったかを判定し(S21)、異常がなかった場合には、電流計26の検出結果である中性点電流についてのリップル、すなわち、図5に示す交流成分のピーク間電流値Inp-pが所定の閾値cより大きいかを判定する(S22)。そして、この判定において、YESの場合には、補機バッテリ異常と判定する(S23)。
【0038】
一方、S21においてNOの場合には、判定不能と判定し(S24)、S22においてNOの場合には異常なしと判定する(S24)。
【0039】
このように、本実施形態のシステムによれば、補機バッテリの異常を効果的に検出することができる。
【0040】
また、この制御は、上述の各相電圧指令をキャリアの振幅に合わせて調整する制御と組み合わせて行うことが好適である。
【0041】
ここで、本実施形態の交流モータ13は、車両に搭載される車両用のものであることが好適である。補機負荷20は車両に搭載される各種の補機が挙げられる。また、車載される交流モータ13としては、特開2002−155773号公報に記載されたエコランシステム用のモータジェネレータなどが好適である。
【0042】
すなわち、このモータジェネレータは、(i)車両停止中にエンジンを停止するアイドルストップ制御を行った後の発進時におけるエンジンを自動始動しながらの車両走行、(ii)車両減速時に駆動系を介して車輪の回転が伝達されることにより行われる回生発電、(iii)車両停止によるエンジン停止時におけるエアコン用コンプレッサやパワーステアリングようポンプなどの駆動、(iv)エンジン駆動時における発電、(v)運転を停止したエンジンの回転制御を行いエンジン停止時の振動発生を抑制する制御、(vi)減速時にエンジンへの燃料供給をカットし、その後燃料供給を開始した際にエンジン回転数を回復させるエンジンストール防止、などに利用される。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、中性点における電流または電圧の状態に基づいて異常判定を行う。中性点電圧や中性点電流は、電源の存在により平滑化される。しかし、電源が切り離された場合には、この電源の影響がなくなり、中性点電圧や、中性点電流が変化しやすくなる。従って、この中性点の状態によって電源が切り離されてしまった異常を効果的に検出することができる。
【0044】
また、中性点電圧や中性点電流には、モータ駆動電流に基づくリップルがのり、このリップルの大きさを検出することで、電源が切り離されてしまったことを効果的に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施形態に係るシステムの構成を示す図である。
【図2】 中性点電圧の波形を示す図である。
【図3】 異常検出の動作を説明するフローチャートである。
【図4】 他の実施形態に係るシステムの構成を示す図である。
【図5】 中性点電圧の波形を示す図である。
【図6】 異常検出の動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
10 主バッテリ、12 インバータ、14 交流モータ、16 リアクトル、18 補機バッテリ、20 補機負荷。
Claims (8)
- インバータにて駆動され、駆動力の出力または発電を行う交流モータと、
この交流モータの中性点に接続された電源と、
前記中性点における電流または電圧の状態を検出する中性点状態検出手段と、
を有し、
前記中性点状態検出手段の検出結果に基づいて前記電源の異常判定を行う多相モータ駆動用インバータシステム。 - 請求項1に記載のシステムにおいて、
前記中性点状態検出手段は、前記中性点電圧のリップルを検出する多相モータ駆動用インバータシステム。 - 請求項1または2に記載のシステムにおいて、
前記電源には、電力を消費する電気機器である補機負荷が接続され、
前記中性点状態検出手段は、前記補機負荷に供給される電流のリップルを検出する多相モータ駆動用インバータシステム。 - 請求項2または3に記載のシステムにおいて、
前記中性点状態検出手段により検出したリップルが所定値以上である場合に、前記電源の異常と判定する多相モータ駆動用インバータシステム。 - インバータにて駆動され、駆動力の出力または発電を行う交流モータと、
この交流モータの中性点に接続された電源と、
前記中性点における電流または電圧の状態を検出する中性点状態検出手段と、
を有し、
前記中性点と電源の間には、リアクトルが接続されており、
前記中性点状態検出手段は、前記リアクトルより電源側の電流または電圧の状態を検出して異常判定を行う多相モータ駆動用インバータシステム。 - インバータにて駆動されまた発電を行う交流モータと、この交流モータの中性点に接続された電源と、を有する多相モータ駆動用インバータシステムにおける異常検出方法であって、
前記中性点における電流または電圧の状態を検出し、この検出結果に基づいて前記電源の異常判定を行う多相モータ駆動用インバータシステムの異常検出方法。 - インバータにて駆動されまた発電を行う交流モータと、この交流モータの中性点に接続された電源と、前記中性点の電流または電圧を監視する異常検出装置と、を有する多相モータ駆動用インバータシステムにおける異常検出プログラムであって、
前記異常検出装置に、
前記中性点における電流または電圧の状態を取り込ませ、
取り込んだ状態に基づいて前記電源の異常判定を行わせる多相モータ駆動用インバータシステムの異常検出プログラム。 - 請求項1〜7のいずれか1つに記載のシステム、方法またはプログラムにおいて、
前記交流モータが車両用交流モータである多相モータ駆動用インバータシステム、多相モータ駆動用インバータの異常検出方法または多相モータ駆動用インバータの異常検出プログラム。
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