JP4052070B2 - 光通信システム及び光通信装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光信号の伝送経路における伝送損失、及び光分散による受信感度の劣化を補償し得る光通信システム及び光通信装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在広く実用化されている光通信システムは、一般に伝送する情報に応じて光信号の光パワー又は光周波数を変調する送信装置と、該送信装置から送信された光信号を伝送するための伝送媒体である光ファイバケーブルと、該光ファイバケーブルにより伝送される光信号を受信する受信装置とを備えている。
【0003】
伝送する光信号の品質及びビットエラーレートという観点から、光通信システムの性能は、光信号の伝送経路における光ファイバケーブル、コネクタ、回路等のさまざまな光特性により制限を受ける。
特に、伝送経路における光パワーの減衰および波長分散は、最も困難なものとして最初に出現する現象であり、こうした現象によって生じる光信号の劣化を少なくとも部分的に解消するための光通信装置が提案されている。
【0004】
図6は従来の光通信装置を説明するブロック図であり、図7及び図8はその動作を説明するグラフである。従来の光通信装置50は、入力信号に応じたパルス電流Ip を出力する電流駆動回路51、及び発光時間の遅延を短縮するためのバイアス電流Ib を出力するバイアス電流駆動回路52を備えており、これらによって出力されたパルス電流Ip 及びバイアス電流Ib がレーザダイオード53に入力され、光信号が生成される構成となっている。生成された光信号は光ファイバケーブル1を通じて外部へ伝送される。
【0005】
ここで、光通信装置50に用いられるレーザダイオード53は、経時変化等の影響を受けた場合、発光パワーの出力が不安定になり、通信品質の劣化を招くことがある。そのため、フォトダイオードのような受光センサ54を設けて、レーザダイオード53による出力光の一部をモニタ光として取り出し、それを比較器55により基準電圧と比較し、その比較値でもってバイアス電流Ib を調整し、光出力に帰還をかけることによって、安定した発光パワーを得るようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、光伝送経路において伝送損失を起こすこともあるため、受信側の光通信装置にて光信号の受光パワーをモニタしておき、それを基準電圧と比較して受光パワーが平常時よりも減少している場合には、その旨の情報を送信側の光通信装置へ報知し、レーザダイオード53に供給するバイアス電流Ib を制御して発光パワーを調整するようにしている。
【0007】
図7に示したグラフの縦軸はレーザダイオード53の出力パワーP、横軸はレーザダイオード53に供給する駆動電流Iを示しており、この2次元座標内に示した斜めの線はレーザダイオード53の出力パワー特性を示している。
また、横軸の下に示しているのは、レーザダイオード53に供給するバイアス電流Ib 及びパルス電流Ip であり、該パルス電流Ip がデジタル電気信号によってスイッチングされる様子も併せて示している。更に、横軸の上、二次元座標内に示しているのは、レーザダイオード53の出力光の波形である。
【0008】
平常時のバイアス電流がIb1であり、パルス電流をIp の大きさでスイッチングさせているとき、レーザダイオード53の出力光のバイアス発光レベルがPL1であり、ピーク発光レベルがPH1であったとする。
レーザダイオード53の経時変化、又は信号伝送の際の伝送損失の結果、レーザダイオード53の出力光のバイアス発光レベルがPL2、ピーク発光レベルPH2に劣化した場合、見かけ上のバイアス電流はIb2となっていることが分かる。そのため、バイアス電流駆動回路52を制御してバイアス電流をΔIb (=Ib1−Ib2)だけ増加させることによって、平常時の出力波形を確保するようにしている。
【0009】
【特許文献1】
特開平6−291730号公報 (第3−5頁、第2図)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
前述したように、送信側のフォトダイオードの発光パワー、及び受信側で受信した光信号の受光パワーが単に減少したという問題点については、バイアス電流駆動回路52を制御してレーザダイオード53に供給すべきバイアス電流Ib を調整することによって対処することが可能である。
【0011】
しかしながら、光信号の伝送の際、光信号の周波数が高いものは早く進み、周波数が低いものは遅く進むという分散効果が生じ、伝送後の波形が劣化することが知られており、光信号の受信側にてビットエラーレートが悪化するという問題点が生じていた。
受信信号の波形が劣化した場合、図8に示した如く、バイアス発光レベルPL1に変化が生じていない場合であっても、受信信号の波形が劣化しているためにピーク発光レベルPH2が平常時(PH1)と比較して減少することが分かる。すなわち、ピーク発光レベル(PH )とバイアス発光レベル(PL )との比で表される消光比が減少しているため、受信感度が劣化する。このとき、受信感度の劣化を実質的な受信パワーの損失として見積もった量(パワーペナルティ)を、予め送信側にて大きくしておく必要が生じる。
【0012】
さらに、レーザダイオード53の近傍の温度環境が変化した場合、レーザダイオード53の出力特性が変化することが知られている。図9は、環境温度がT2 (低温)からT1 (高温)へ変化した場合の出力特性の変化を示すグラフであり、このグラフが示す通り、環境温度が高温へ変化した場合、レーザダイオード53の出力パワー特性を示す直線の傾きが小さくなる。このとき、レーザダイオード53に同じバイアス電流Ib 及びパルス電流Ip を供給した場合であっても、出力される光信号の消光比は、高温側の方が小さくなることが分かる。
【0013】
しかしながら、前述したようにバイアス電流Ib を制御するだけでは、消光比を一定に保つことは出来ないため、受信側にて消光比をモニタし、消光比に基づいて受信感度を所定値以上に保つことができる光通信システム及び光通信装置の開発が望まれていた。
【0014】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、第2光通信装置は、受信した光信号の消光比を検出し、検出した消光比に関する消光比情報を光信号の送信元へ送信し、第1光通信装置は、第2光通信装置から送信された消光比情報に基づいて、発光手段にて生成すべき光信号の消光比の大きさを制御する構成とすることにより、伝送媒体の分散効果により光信号の波形が劣化した場合であっても、通信品質を保つことができる光通信システム及び光通信装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
第1発明に係る光通信システムは、発光手段により生成した光信号を送信する送信手段及び光信号を受信する受信手段を夫々備えた第1及び第2光通信装置を光ファイバケーブルにて接続してなり、該光ファイバケーブルを通じて双方向通信を行う光通信システムにおいて、前記第2光通信装置は、受信した光信号の消光比を検出する検出手段と、検出した消光比に関する消光比情報を前記光ファイバケーブルを通じて前記第1光通信装置へ送信する手段とを備え、前記第1光通信装置は、前記第2光通信装置から送信された消光比情報を受信する手段と、受信した消光比情報に基づいて、前記発光手段にて生成すべき光信号の消光比を制御する消光比制御手段とを備えることを特徴とする。
【0016】
第1発明にあっては、第2光通信装置にて受信した光信号に基づいて消光比を検出し、例えば、検出した消光比の値より得られる消光比情報を第1光通信装置へ送信し、第1光通信装置にて受信した消光比情報に基づいて送信すべき光信号の消光比を制御するようにしている。そのため、第1光通信装置から第2光通信装置へ光信号を伝送する際、光ファイバのような伝送媒体の分散効果により光信号の波形が劣化した場合であっても、第2光通信装置にて受信信号の消光比を検出するようにしているため、波形の劣化に関する情報が得られる。また、検出した消光比情報を第1光通信装置へ帰還させ、受信した消光比情報に基づいて送信すべき光信号の消光比を予め調整しておくことによって、波形の劣化に起因する受信感度の低下が防止される。
【0017】
第2発明に係る光通信システムは、第1発明に係る光通信システムにおいて、前記第2光通信装置は、受信すべき光信号の消光比に対する基準値を予め記憶する手段と、前記検出手段により検出した消光比と前記基準値とを比較する手段とを備え、前記消光比が前記基準値より小さい場合、消光比情報を前記第1光通信装置へ送信すべくなしてあることを特徴とする。
【0018】
第2発明にあっては、第2光通信装置は検出した消光比と予め記憶した基準値とを比較し、検出した消光比が基準値よりも小さい場合に、消光比情報を第1光通信装置へ送信するようにしている。したがって、伝送中に光信号が劣化し、それを受信した光信号の消光比から検出した場合にのみ、その旨の情報が報知される。
【0019】
第3発明に係る光通信システムは、第1発明又は第2発明に係る光通信システムにおいて、前記第2光通信装置は、検出した消光比に基づいてパケット信号を生成する手段を備え、生成したパケット信号を前記第1光通信装置へ送信すべくなしてあることを特徴とする。
【0020】
第3発明にあっては、第2光通信装置は消光比情報をパケット信号として第1光通信装置へ送信するため、消光比情報を第2光通信装置から第1光通信装置へ送信するにあたって、光信号の伝送媒体を利用して送信可能であるため、特別な配線を別途設ける必要がない。
【0021】
第4発明に係る光通信システムは、第1発明乃至第3発明の何れかの光通信システムにおいて、前記第1光通信装置は、前記発光手段を発光させるべくバイアス電流を前記発光手段に供給する手段と、生成すべき光信号に応じたパルス電流を前記バイアス電流に重畳する手段とを備え、前記消光比制御手段は、受信した消光比情報に基づいて、前記発光手段に供給すべきバイアス電流及びパルス電流を制御する手段を備えることを特徴とする。
【0022】
第4発明にあっては、第1光通信装置は受信した消光比情報に基づいて発光手段に供給するバイアス電流及びパルス電流を制御するようにしている。したがって、バイアス電流を制御することにより光信号の伝送損失が補償され、また、パルス電流を制御することにより光分散による信号の劣化が補償される。
【0023】
第5発明に係る光通信装置は、発光手段により生成した光信号を送信する送信手段及び光信号を受信する受信手段を備え、光ファイバケーブルにより接続された他の光通信装置と双方向通信が可能な光通信装置において、前記光ファイバケーブルを通じて前記他の光通信装置から送信された消光比情報を受信する手段と、受信した消光比情報に基づいて、前記発光手段にて生成すべき光信号の消光比を制御する消光比制御手段とを備えることを特徴とする。
【0024】
第5発明にあっては、外部から消光比情報を受信して、送信する光信号の消光比を制御するようにしている。したがって、受信した消光比情報に基づいて送信すべき光信号の消光比を予め調整しておくことによって、光分散による波形の劣化に起因した受信感度の低下が防止される。
【0025】
第6発明に係る光通信装置は、第5発明に係る光通信装置において、前記発光手段を発光させるべくバイアス電流を前記発光手段に供給する手段と、生成すべき光信号に応じたパルス電流を前記バイアス電流に重畳する手段とを備え、前記消光比制御手段は、受信した消光比情報に基づいて、前記発光手段に供給すべきバイアス電流及びパルス電流を制御する手段を備えることを特徴とする。
【0026】
第6発明にあっては、受信した消光比情報に基づいて発光手段に供給するバイアス電流及びパルス電流を制御するようにしている。したがって、バイアス電流の制御により光信号の伝送損失が補償され、また、パルス電流を制御することにより光分散による信号の劣化が補償される。
【0027】
第7発明に係る光通信装置は、第5発明又は第6発明に係る光通信装置において、前記受信手段にて受信した光信号の消光比を検出する検出手段と、検出した消光比に関する消光比情報を外部へ送信する手段とを更に備えることを特徴とする。
【0028】
第7発明にあっては、受信した光信号の消光比を検出し、消光比情報を外部へ送信する手段を備えているため、光信号が伝送される際、光ファイバのような伝送媒体の分散効果により光信号の波形が劣化した場合であっても、受信信号の消光比を検出するようにしているため、波形の劣化に関する情報が得られる。
【0029】
第8発明に係る光通信装置は、第7発明に係る光通信装置において、受信すべき光信号の消光比に対する基準値を予め記憶する手段と、前記検出手段により検出した消光比と前記基準値とを比較する手段とを備え、前記消光比が前記基準値より小さい場合、消光比情報を前記光ファイバケーブルを通じて前記他の光通信装置へ送信すべくなしてあることを特徴とする。
【0030】
第8発明にあっては、検出した消光比を予め記憶した基準値と比較し、検出した消光比が基準値よりも小さい場合にのみ消光比情報を外部へ送信するようにしている。したがって、伝送中に光信号が劣化し、それを受信した光信号の消光比から検出した場合にのみ、その旨の情報が送信される。
【0031】
第9発明に係る光通信装置は、第7発明又は第8発明に係る光通信装置において、検出した消光比に基づいてパケット信号を生成する手段を備え、生成したパケット信号を前記光ファイバケーブルを通じて前記他の光通信装置へ送信すべくなしてあることを特徴とする。
【0032】
第9発明にあっては、消光比情報をパケット信号として送信可能であるため、消光比情報を送信するにあたって、光信号の伝送媒体を利用して送信可能であるため、特別な配線を別途設ける必要がない。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
図1は本発明に係る光通信システムを利用した通信ネットワークの構成を示す模式図である。図中30A,30Bは、パーソナルコンピュータのような情報処理装置であり、該情報処理装置30A,30Bには電気通信ケーブル2,2を介してルータ20A,20Bがそれぞれ接続され、更にルータ20A,20Bには電気通信ケーブル2,2を介してメディアコンバータのような光通信装置10A,10Bがそれぞれ接続されている。
【0034】
ここで、光通信装置10A、ルータ20A、及び情報処理装置30Aを便宜的に情報の送信側とし、光通信装置10B、ルータ20B、及び情報処理装置30Bを情報の受信側とする。送信側の光通信装置10Aと受信側の光通信装置10Bとを光ファイバケーブル1で接続することにより通信ネットワークを構成している。
【0035】
情報処理装置30Aから外部へ送信される各種のデータは、まず、パケットによる電気信号としてルータ20Aへ送出される。ルータ20Aは、送信すべき信号の経路を設定するために経路制御情報を記憶したルーティングテーブルを有しており、このルーティングテーブルの経路制御情報に従って信号の送信経路を設定し、光通信装置10Aへ送出する。光通信装置10Aは、電気信号を光信号に変換して出力する機能を有しており、ルータ20Aを介して入力されたパケットによる電気信号を光信号に変換し、光ファイバケーブル1を通じてルータ20Aにより定められた送信先へ光信号を送信する。
【0036】
送信された光信号を受信側にて受信する場合、まず、その光信号は光通信装置10Bに入力され、電気信号に変換される。変換された電気信号は、電気通信ケーブル2を介してルータ20Bに送出される。ルータ20Bは、自身が有するルーティングテーブルの経路制御情報に基づいて、入力された電気信号を情報処理装置30Bへ送出する。
【0037】
本発明では、送信側の光通信装置10Aが光ファイバケーブル1を介して送信した光信号を受信側の光通信装置10Bにて受信した際、その光信号の消光比を検出し、検出した消光比の値が正常か否かを判定する。そして、検出した消光比が正常でない場合、その旨の情報をパケットによる光信号によって送信側の光通信装置10Aへ送信し、送信側の光通信装置10Aにて消光比の補正を行う。
【0038】
なお、本実施の形態では、光通信装置10A、ルータ20A、情報処理装置30Aを送信側、光通信装置10B、ルータ20B、情報処置装置30Bを受信側として便宜的に区別したが、後述するように、何れも情報の送受信が可能であるため、必ずしもそれらを区別する必要はない。
【0039】
図2は光通信装置10A,10Bの内部構成を説明するブロック図である。光通信装置10A,10Bは、それぞれ光トランシーバ11、発光コントロール回路12、光通信側の物理層LSI13、フレームバッファ14、電気通信側の物理層LSI9、パルストランス8、及びより対線IF7を備えている。また、光トランシーバ11は、消光比制御回路15、発光部16、方向性結合器17、受光部18、及び消光比検出回路19を備えている。
【0040】
情報処理装置30A及びルータ20Aから送信されたパケットによる電気信号は、より対線IF7に接続された電気通信ケーブル2を通じて光通信装置10Aに入力される。光通信装置10Aに入力された電気信号は、パルストランス8により適切な電圧値に調節され、物理層LSI9により通信処理における物理層の処理がされた後、フレームバッファ14に入力されて一時的に保持される。フレームバッファ14にて一時的に保持された電気信号は、発光コントロール回路12が指示するタイミングにより物理層LSI13を介して光トランシーバ11の消光比制御回路15へ送出される。
【0041】
消光比制御回路15は、発光コントロール回路12からの指示に基づいて、送信すべき光信号の消光比を調整し、発光部16が備えるレーザダイオード(図4参照)を発光させて光信号を生成する。発光部16にて生成された光信号は方向性結合器17を介して光ファイバケーブル1により外部へ送信される。
【0042】
受信側の光通信装置10Bが受信した光信号は方向性結合器17を通じて受光部18に入力される。受光部18はフォトダイオード(不図示)を備えており、入力された光信号を電気信号に変換し、変換した電気信号を光通信側の物理層LSI13へ送出するとともに、消光比検出回路19へ送出する。
【0043】
物理層LSI13は、受光部18から入力された電気信号に対して物理層の処理を施し、フレームバッファ14へ送出する。フレームバッファ14は、入力された電気信号を一時的に保持するとともに、発光コントロール回路12が指示すうタイミングにて保持した電気信号を光通信側の物理層LSI9へ送出する。物理層LSI9により物理層の処理がなされ、パルストランス8により電圧値の調節がなされた電気信号は、より対線IF7に接続された電気通信ケーブル2を通じてルータ20Bへ送出される。
一方、消光比検出回路19は、受光部18から入力された光信号に基づいて受信した光信号の消光比を検出し、検出した値を発光コントロール回路12へ出力する。
【0044】
発光コントロール回路12は、消光比に対する基準値を予め記憶しており、受信した光信号の消光比の値を基準値と比較し、受信した光信号の消光比が正常であるか否かを判断する。受信した光信号の消光比の値が正常でないと判断した場合、すなわち受信した光信号が劣化していると判断した場合、送信側の光通信装置10Aに対して消光比の設定変更を要求する情報(要求情報)を送信する。なお、要求情報は発光コントロール回路12にて生成されるが、消光比制御回路15がその要求情報に基づいて発光部16を発光させ、パケットによる光信号として光通信装置10Aへ送信する。
【0045】
送信側の光通信装置10Aにて受信した要求情報は、受光部18にて電気信号に変換され、消光比検出回路19を介して発光コントロール回路12へ入力される。発光コントロール回路12は、消光比の設定変更についての要求情報が入力された場合、消光比制御回路15に指示を与え、送信すべき信号の消光比を調整するようにしている。具体的には、発光部16のレーザダイオードへ供給するバイアス電流、及びバイアス電流に重畳するパルス電流の電流値を制御する。レーザダイオードへ供給するバイアス電流を制御することによって、発光部16の発光レベルを調節することができ、また、供給するパルス電流の電流値を制御することによって、発光部16にて生成される光信号の消光比を調節することができる。
【0046】
一方、受信側の光通信装置10Bから送信側の光通信装置10Aへ光信号を送信するときも同様の手順により消光比の調節を行う。すなわち、送信側の光通信装置10Aは、光信号を受信したときに消光比を検出し、検出した消光比が異常である場合に、消光比の設定変更を要求する情報を受信側の光通信装置10Bへ送信する。そして、受信側の光通信装置10Bが消光比の設定変更に係る要求情報を受信した場合、発光コントロール回路12が消光比制御回路15に指示を与えて、送信する光信号の消光比の調節を行う。
【0047】
なお、前述したように送信する光信号の消光比は、発光部16の近傍の環境温度にも影響をうけるため、温度センサを設置して発光部16の近傍の温度を計測し、計測により得られた温度データを発光コントロール回路12へ入力して、その温度データに基づいて送信する光信号の消光比を制御するようにしてもよい。
【0048】
図3は発光コントロール回路12の内部構成を示すブロック図である。発光コントロール回路12はCPU121を備えており、該CPU121にはバス122を介してROM123、RAM124、フラッシュメモリ125、及びI/Oインタフェース126が接続されている。
【0049】
ROM123には、前述した各ハードウェアを制御するための制御プログラムが格納されており、CPU121が必要に応じてその制御プログラムをRAM124上に展開し、各ハードウェアを制御する。また、RAM124は制御プログラムの実行中に発生する各種のデータを一時的に記憶するとともに、消光比に対する基準値を予め記憶している。
ここで、消光比に対する基準値は、受光部18の受光感度に基づいて設定される値であり、受光部18にて良好に受信できるように光通信装置10Aの製造時、発光コントロール回路12の組込み時、又は光通信装置10Aの初期据付時等において、予め設定されるものである。
【0050】
I/Oインタフェース126は、フレームバッファ14、消光比制御回路15、及び消光比検出回路19へ接続されており、夫々との間にて電気信号の送受信を行う。フラッシュメモリ125は、I/Oインタフェース126を介して外部と送受信する電気信号を一時的に記憶する。例えば、消光比検出回路19が検出した消光比の値を一時的に記憶し、CPU121が、RAMに記憶された基準値と比較する際に利用される。
【0051】
図4は消光比制御回路15及び発光部16の内部構成を示す回路図である。消光比制御回路15のトランジスタ146は、発光部16のレーザダイオード160にバイアス電流を供給する定電流源として機能し、そのエミッタ端子は抵抗器147を介して接地されている。また、トランジスタ153及びトランジスタ154は、それぞれのベース端子に供給される電気信号の論理レベルによってレーザダイオード160に供給するパルス電流を切り替えるスイッチング素子として機能し、トランジスタ151は、前記パルス電流の電流値を決定する定電流源として機能する。トランジスタ151のエミッタ端子は抵抗器152を介して接地されている。
【0052】
トランジスタ151のベース端子に供給される電気信号は、発光コントロール回路12からの指示をDAコンバータ141によりアナログ信号に変換したものであり、発光コントロール回路12の指示に応じて、レーザダイオード160に供給するパルス電流の電流値が調節されるようになっている。
【0053】
また、DAコンバータ141により変換されたアナログ信号は、発光レベルの自動制御をスムーズに行うAPC制御回路142に入力され、トランジスタ146のベース端子に入力される電流値が決定される。すなわち、発光コントロール回路12の指示に応じて、レーザダイオード160に供給するバイアス電流の電流値が調節されるようになっている。
【0054】
更に、レーザダイオード160は、経時変化等の影響により発光パワーの出力が不安定になり、通信品質の劣化を招くことがある。そのため、本実施の形態では、アノード側を抵抗器145を介して接地したフォトダイオード144を設けて、レーザダイオード160による出力光の一部をモニタ光として取り出し、それを比較器143により基準値Vref と比較し、その比較値でもってバイアス電流を調整するようにもしている。
【0055】
図5は光通信装置10A,10Bによる消光比の設定変更についての手順を説明するフローチャートである。まず、受信側の光通信装置10Bが光信号を受信した場合、その光信号の消光比を消光比検出回路19にて検出し(ステップS1)、検出した値が発光コントロール回路12へ出力される。
【0056】
発光コントロール回路12のCPU121は、消光比検出回路19が検出した消光比の値と予めRAM124に記憶させた基準値とを比較することにより、受信した光信号の消光比が正常であるか否かを判定する(ステップS2)。具体的には、受信した光信号の消光比と基準値との間の大小関係に基づいて、消光比が正常であるか否かを判定する。比較の結果、受信した光信号の消光比の値が基準値と等しい場合、又は基準値よりも大きい場合、消光比が正常であると判定して本処理を終了する(S2:YES)。
【0057】
また、比較の結果、受信した光信号の消光比の値が基準値よりも小さい場合、消光比が異常であると判定する(S2:NO)。このとき、発光コントロール回路12のCPU121は、伝送経路において光分散に起因する波形の劣化が生じたと判断して、消光比の設定変更に係る要求情報を生成し、送信側の光通信装置10Aへ送信する(ステップS3)。
【0058】
送信側の光通信装置10Aにて消光比の設定変更に係る要求情報を受信した場合(ステップS4)、発光コントロール回路12のCPU121が、RAM124の記憶内容を変更することによって消光比の設定変更を行う(ステップS5)。そして、消光比の設定が完了した旨の情報(設定変更完了情報)を受信側の光通信装置10Bへ送信する(ステップS6)。
【0059】
消光比の設定変更完了情報を受信側の光通信装置10Bが受信した場合(ステップS7)、消光比の設定に関する一連の処理を終了し、処理をステップS1へ戻す。
【0060】
【発明の効果】
以上、詳述したように、第1発明による場合は、第2光通信装置にて受信した光信号に基づいて消光比を検出し、例えば、検出した消光比の値より得られる消光比情報を第1光通信装置へ送信し、第1光通信装置にて受信した消光比情報に基づいて送信すべき光信号の消光比を制御するようにしている。そのため、第1光通信装置から第2光通信装置へ光信号を伝送する際、光ファイバのような伝送媒体の分散効果により光信号の波形が劣化した場合であっても、第2光通信装置にて受信信号の消光比を検出するようにしているため、波形の劣化に関する情報を得ることができる。また、検出した消光比情報を第1光通信装置へ帰還させ、受信した消光比情報に基づいて送信すべき光信号の消光比を予め調整しておくことによって、波形の劣化に起因する受信感度の低下を防止することが可能となる。
【0061】
第2発明による場合は、第2光通信装置は検出した消光比と予め記憶した基準値とを比較し、検出した消光比が基準値よりも小さい場合に、消光比情報を第1光通信装置へ送信するようにしている。したがって、伝送中に光信号が劣化し、それを受信した光信号の消光比から検出した場合にのみ、その旨の情報を報知することができる。
【0062】
第3発明による場合は、第2光通信装置は消光比情報をパケット信号として第1光通信装置へ送信するため、消光比情報を第2光通信装置から第1光通信装置へ送信するにあたって、特別な配線を別途設ける必要がなく、光信号の伝送媒体を利用して送信可能である。
【0063】
第4発明による場合は、第1光通信装置は受信した消光比情報に基づいて発光手段に供給するバイアス電流及びパルス電流を制御するようにしている。したがって、バイアス電流を制御することにより光信号の伝送損失を補償することができ、また、パルス電流を制御することにより光分散による信号の劣化を補償することができる。
【0064】
第5発明による場合は、外部から消光比情報を受信して、送信する光信号の消光比を制御するようにしている。したがって、受信した消光比情報に基づいて送信すべき光信号の消光比を予め調整しておくことによって、光分散による波形の劣化に起因した受信感度の低下を防止することができる。
【0065】
第6発明による場合は、受信した消光比情報に基づいて発光手段に供給するバイアス電流及びパルス電流を制御するようにしている。したがって、バイアス電流の制御により光信号の伝送損失を補償することができる、また、パルス電流を制御することにより光分散による信号の劣化を補償することができる。
【0066】
第7発明による場合は、受信した光信号の消光比を検出し、消光比情報を外部へ送信する手段を備えているため、光信号が伝送される際、光ファイバのような伝送媒体の分散効果により光信号の波形が劣化した場合であっても、受信信号の消光比を検出するようにしているため、波形の劣化に関する情報を得ることができる。
【0067】
第8発明による場合は、検出した消光比を予め記憶した基準値と比較し、検出した消光比が基準値よりも小さい場合にのみ消光比情報を外部へ送信するようにしている。したがって、伝送中に光信号が劣化し、それを受信した光信号の消光比から検出した場合にのみ、その旨の情報を報知することができる。
【0068】
第9発明による場合は、消光比情報をパケット信号として送信可能であるため、消光比情報を送信するにあたって、特別な配線を別途設ける必要がなく、光信号の伝送媒体を利用して送信可能である等、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光通信システムを利用した通信ネットワークの構成を示す模式図である。
【図2】光通信装置の内部構成を説明するブロック図である。
【図3】発光コントロール回路の内部構成を示すブロック図である。
【図4】消光比制御回路及び発光部の内部構成を示す回路図である。
【図5】光通信装置による消光比の設定変更についての手順を説明するフローチャートである。
【図6】従来の光通信装置を説明するブロック図である。
【図7】従来の光通信装置の動作を説明するグラフである。
【図8】従来の光通信装置の動作を説明するグラフである。
【図9】環境温度が低温から高温へ変化した場合の出力特性の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
10A,10B 光通信装置
11 光トランシーバ
12 発光コントロール回路
13 物理層LSI
14 フレームバッファ
15 消光比制御回路
16 発光部
17 方向性結合器
18 受光部
19 消光比検出回路
20A,20B ルータ
30A,30B 情報処理装置

Claims (9)

  1. 発光手段により生成した光信号を送信する送信手段及び光信号を受信する受信手段を夫々備えた第1及び第2光通信装置を光ファイバケーブルにて接続してなり、該光ファイバケーブルを通じて双方向通信を行う光通信システムにおいて、
    前記第2光通信装置は、受信した光信号の消光比を検出する検出手段と、検出した消光比に関する消光比情報を前記光ファイバケーブルを通じて前記第1光通信装置へ送信する手段とを備え、前記第1光通信装置は、前記第2光通信装置から送信された消光比情報を受信する手段と、受信した消光比情報に基づいて、前記発光手段にて生成すべき光信号の消光比を制御する消光比制御手段とを備えることを特徴とする光通信システム。
  2. 前記第2光通信装置は、受信すべき光信号の消光比に対する基準値を予め記憶する手段と、前記検出手段により検出した消光比と前記基準値とを比較する手段とを備え、前記消光比が前記基準値より小さい場合、消光比情報を前記第1光通信装置へ送信すべくなしてあることを特徴とする請求項1に記載の光通信システム。
  3. 前記第2光通信装置は、検出した消光比に基づいてパケット信号を生成する手段を備え、生成したパケット信号を前記第1光通信装置へ送信すべくなしてあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光通信システム。
  4. 前記第1光通信装置は、前記発光手段を発光させるべくバイアス電流を前記発光手段に供給する手段と、生成すべき光信号に応じたパルス電流を前記バイアス電流に重畳する手段とを備え、前記消光比制御手段は、受信した消光比情報に基づいて、前記発光手段に供給すべきバイアス電流及びパルス電流を制御する手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の光通信システム。
  5. 発光手段により生成した光信号を送信する送信手段及び光信号を受信する受信手段を備え、光ファイバケーブルにより接続された他の光通信装置と双方向通信が可能な光通信装置において、
    前記光ファイバケーブルを通じて前記他の光通信装置から送信された消光比情報を受信する手段と、受信した消光比情報に基づいて、前記発光手段にて生成すべき光信号の消光比を制御する消光比制御手段とを備えることを特徴とする光通信装置。
  6. 前記発光手段を発光させるべくバイアス電流を前記発光手段に供給する手段と、生成すべき光信号に応じたパルス電流を前記バイアス電流に重畳する手段とを備え、前記消光比制御手段は、受信した消光比情報に基づいて、前記発光手段に供給すべきバイアス電流及びパルス電流を制御する手段を備えることを特徴とする請求項5に記載の光通信装置。
  7. 前記受信手段にて受信した光信号の消光比を検出する検出手段と、検出した消光比に関する消光比情報を外部へ送信する手段とを更に備えることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の光通信装置。
  8. 受信すべき光信号の消光比に対する基準値を予め記憶する手段と、前記検出手段により検出した消光比と前記基準値とを比較する手段とを備え、前記消光比が前記基準値より小さい場合、消光比情報を前記光ファイバケーブルを通じて前記他の光通信装置へ送信すべくなしてあることを特徴とする請求項7に記載の光通信装置。
  9. 検出した消光比に基づいてパケット信号を生成する手段を備え、生成したパケット信号を前記光ファイバケーブルを通じて前記他の光通信装置へ送信すべくなしてあることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の光通信装置。
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