JP4049708B2 - 描画支援装置および描画システム - Google Patents

描画支援装置および描画システム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、コンピュータ等の機器で描画を行なう際において、当該機器と人間との間のインタフェースをとるための構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、コンピュータ上で動作する描画アプリケーションを用いて、機械図面などの工学的な描画にとどまらず、芸術上の描画や彩色が行なわれるようになっている。
【0003】
ここで、描画と彩色は、一般に、手の動きが、紙やキャンバスや、あるいは上述したような電子イメージといった媒体の上に、ペンやブラシやデジタルタブレットといったものによって、創作者の印象等を表現する人間のコミュニケーション上の表現形式の一つであるといえる。
【0004】
このような描画と彩色を、コンピュータ上で実現しようとする場合、一般的な入力装置は、ペンタブレットやマウス、必要に応じてキーボードを組み合わせたものとなる。このような入力装置は、紙やキャンバスに、創作者が手で描画する場合に比べると、その操作が、直感性に欠けてしまう、と言う問題がある。
【0005】
一方で、人間の体の一部の動きを用いて、コンピュータ等への入力装置として用いる試みがある。
【0006】
たとえば、非特許文献1においては、マウスピース上の小さな圧力センサを用いることで、人間の舌の動きにより、カーソルを制御する技術が開示されている。
【0007】
また、非特許文献2においては、口腔内の形状を音源に対する応答を分析するすることでモニターして、人間の口の形状によりパラメータを制御する技術が開示されている。
【0008】
さらに、非特許文献3においては、口腔の外観の幅、高さ等を画像分析により抽出して、機械合成される音の制御を行なう技術が開示されている。
【0009】
【非特許文献1】
C.Salem, S.Zhai, "An Isometric Tongue Pointing Device," Proceedings of CHI '97, pp.538-539,1997
【0010】
【非特許文献2】
N.Orio, "A Gesture Interface Controlled by the Oral Cavity," In Proceedings of the 1997 Internatinal Computer Music,1997
【0011】
【非特許文献3】
M.J.Lyons, and N.Tetsutani, "Facing the Music: A facial Action Controlled Musical Interface," In CHI 2001 Extended Abstracts, ACM Press, pp.309-310, 2001
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような技術では、たとえば、人間がコンピュータ上で描画や彩色を行なう際のマン−マシンインタフェースとして利用するには、特別の熟練を必要としたり、あるいは、描画や彩色の制御を行なうのに十分な精度を得られない等の問題があった。
【0013】
また、描画や彩色を行なう際のインターフェースとして利用するには、視線方向等の人間の動作の範囲を制限してしまい、その操作が窮屈なものとなってしまう、という問題があった。
【0014】
それゆえに、本発明の目的は、描画や彩色を行なう際のマン−マシンインタフェースとして、容易に十分な精度を実現できる描画支援装置および描画システムを提供することである。
【0015】
さらに、本発明の目的は、描画や彩色を行なう際のマン−マシンインタフェースとして、人間の視線等の動作に不自然な制限をかけることがない描画支援装置および描画システムを提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
したがって、この発明の1つの局面に従うと、描画システムにおいて、ユーザから描画パラメータの入力を行なうための描画支援装置であって、ユーザの口領域を撮影するための撮像手段と、描画のための少なくとも線図データの入力を行なうための入力手段と、撮像手段により撮影された画像データから、ユーザの口腔に対応する領域の面積を抽出して、面積に基づいて描画される線図の質を制御するための正規化された線質パラメータを生成して出力する演算処理手段と、線質パラメータに応じて描画された線図を表示するための表示手段とを備える。
好ましくは、入力手段は、面積に基づいて正規化パラメータを算出し、正規化パラメータにゲインをかけた値に基づいて線質パラメータを生成する。
さらに好ましくは、入力手段は、ユーザからの設定指示を受け取り、演算処理手段は、設定指示に応じてゲインの値を設定する。
【0017】
好ましくは、ユーザの頭部に装着される固定具をさらに備え、固定具は、撮像手段の位置を可変に保持するためのアームを含み、演算処理手段は、撮像手段により撮影されたユーザの口領域の画像データを左右反転させて表示手段に表示するための反転手段を含む。
【0018】
好ましくは、演算処理手段は、画像データ中の色情報に基づいて、口腔に対応する領域を抽出する口領域抽出手段と、口領域抽出手段の出力を受けて、正規化された線質パラメータを描画の処理を行なうための描画処理手段に出力する正規化手段とを含む。
【0019】
好ましくは、入力手段は、ユーザからの選択指示を受け取り、演算処理手段は、線図の質として、少なくとも色、太さおよび硬さのうち、選択指示に応じて選択される1つを制御する。
【0020】
この発明の他の局面に従うと、ユーザから与えられる描画指示に基づいて、対応する描画データを生成するための描画処理装置と、ユーザからの描画指示に対応する描画パラメータの入力を行なうための描画支援装置とを備え、描画支援装置は、ユーザの口領域を撮影するための撮像手段と、描画のための少なくとも線図データの入力を行なうための入力手段と、撮像手段により撮影された画像データから、ユーザの口腔に対応する領域の面積を抽出して、面積に基づいて描画される線図の質を制御するための正規化された線質パラメータを生成して描画処理装置に出力する演算処理手段と、線質パラメータに応じて描画処理装置により描画された線図を表示するための表示手段とを含む。
【0021】
【発明の実施の形態】
[ハードウェア構成]
以下、本発明の実施の形態にかかる描画支援装置について説明する。この描画支援装置は、パーソナルコンピュータまたはワークステーション等、コンピュータ上で実行されるソフトウェアにより実現されるものであって、人物の顔の映像から、口の部分のうちの口腔領域(空いた口の領域)を抽出して、描画制御のための信号を生成するものである。
【0022】
図1は、本発明の描画支援装置を用いた描画システム100の構成を示す概略ブロック図である。
【0023】
図1を参照して、この描画システム100は、パーソナルコンピュータなどのコンピュータ110と、コンピュータ110に接続された表示装置としてのディスプレイ108と、同じくコンピュータ110に接続された入力装置としてのペン104およびタブレット106と、ユーザ2の頭に装着されたヘッドセットから伸びたアームによりユーザ2の口付近の画像を取込むためのカメラ(以下、「ヘッドマウントカメラ」と呼ぶ)102と、コンピュータ110からの信号に応じて、描画データを生成し、生成された描画データをコンピュータ110に送り返すことで、対応する画像をディスプレイ108に表示するための描画専用マシン130とを含む。
【0024】
ペン104およびタブレット106は、描画のための少なくとも線図データの入力を行なう入力装置であり、好ましくは、これらを用いて、描画される線の質(たとえば、ペンの大きさ(線の太さ)や硬さ(ペンの硬さの質感)や、線の透明度や色)のうち、いずれの質を描画支援装置により制御するか選択する。
【0025】
また、この実施の形態のシステムでは、カメラ102としては、たとえば、CCD(固体撮像素子)を含むビデオカメラを用いる。
【0026】
なお、図示しないが、コンピュータ110には、CD−ROM(Compact Disc Read-Only Memory )ドライブおよびFD(Flexible Disk )ドライブなど、外部の記録媒体からのデータを取り込むための装置が設けられており、入力装置として、他に、キーボードやマウスが接続されていてもよい。上記線の質は、これらキーボードやマウスによって、ユーザにより選択されることとしてもよい。
【0027】
さらに、図1を参照して、コンピュータ110は、バスBSそれぞれに接続された、CPU(Central Processing Unit )1104と、ROM(Read Only Memory) 1106と、RAM(Random Access Memory)1108と、ハードディスク1110と、カメラ102からの画像を取り込み、入力装置からの信号を受け取り、また描画専用マシン130との間でデータを授受するためのインタフェース部1102とを含んでいる。
【0028】
したがって、描画システム100において描画専用マシン130以外の部分は、描画支援装置、言いかえると、描画の際のユーザ2に対するインターフェース装置として機能する。
【0029】
既に述べたように、描画システム100において描画支援装置として機能する、描画専用マシン130以外の部分の主要部は、ともに、コンピュータハードウェアと、CPU1104により実行されるソフトウェアとにより実現される。一般的にこうしたソフトウェアはCD−ROMや、FD等の記憶媒体に格納されて流通し、CD−ROMドライブまたはFDドライブ等により記憶媒体から読取られてハードディスク1110に一旦格納される。または、当該装置がネットワークに接続されている場合には、ネットワーク上のサーバから一旦ハードディスク1110にコピーされる。そうしてさらにハードディスク1110からRAM1108に読出されてCPU1104により実行される。なお、ネットワーク接続されている場合には、たとえば、ハードディスク1110に格納することなくRAM1108に直接ロードして実行するようにしてもよい。
【0030】
図1に示したコンピュータのハードウェア自体およびその動作原理は一般的なものである。したがって、本発明の最も本質的な部分は、CD−ROMや、ハードディスク1110等の記憶媒体に記憶されたソフトウェアである。
【0031】
なお、最近の一般的傾向として、コンピュータのオペレーティングシステムの一部として様々なプログラムモジュールを用意しておき、アプリケーションプログラムはこれらモジュールを所定の配列で必要な時に呼び出して処理を進める方式が一般的である。そうした場合、当該描画支援装置を実現するためのソフトウェア自体にはそうしたモジュールは含まれず、当該コンピュータでオペレーティングシステムと協働してはじめて描画支援装置が実現することになる。しかし、一般的なプラットフォームを使用する限り、そうしたモジュールまで含ませたソフトウェアを流通させる必要はなく、それらモジュールを含まないソフトウェア自体およびそれらソフトウェアを記録した記録媒体(およびそれらソフトウェアがネットワーク上を流通する場合のデータ信号)が実施の形態を構成すると考えることができる。
【0032】
図2は、本発明に係る描画支援装置の使用状況を説明するための図である。
口領域の画像を獲得するためには、固定された遠方にあるカメラを使うことも可能である。
【0033】
ただし、図1および図2においては、ユーザの頭に装着されたヘッドセットにより支持されるヘッドマウントカメラ102が、口領域の画像を獲得するために用いられる。このことは、カメラ102が撮影した画像から、システム100が頭を検出して追跡するという必要をなくすので、画像処理のタスクの複雑さを低減する。さらに、ユーザ2にとってみれば、固定された遠方にあるカメラを使わなければならない場合に比べて、より動きやすくかつ快適であるという効果もある。
【0034】
ヘッドマウントカメラ102は、一般的なマイクロフォン付きのヘッドセットにおいて、変形可能なアーム先端に装着されたマイクロフォンを、たとえば、USB(Universal Serial Bus)ウェブカメラで置き換えたものである。
【0035】
この変形可能なアームは、ユーザに容易にカメラの位置を調整することを可能とする。本発明において使用されているUSBカメラは、大変小さなものであり、1/5’インチCMOS(Complementary Metal Oxide Silicon)画像センサとUSBインターフェイスが、たとえば、45×18mmの大きさのボード上に1つの回路として組込まれたものである。このようなカメラは、USBポートによって電源供給される。
【0036】
[ソフトウェア構成]
図3は、図1に示した描画システム100上で動作するソフトウェアの構成を説明するための機能ブロック図である。図3においては、コンピュータ110上で動作するソフトウェア1200と、描画専用マシン130上で動作する描画モジュール1300との関係を示している。
【0037】
図3を参照して、ヘッドマウントカメラ102から入力された画像信号は、画像キャプチャ部1202により画像データとして取り込まれ(キャプチャされ)た後、画像反転部1204において、垂直線に対して反転されて表示部108に表示される。このような反転処理により、ユーザ2によって、カメラの位置を直感的に調整することを可能にしている。なお、実際には、キャプチャされた画像データは、表示部108に対応する画像が表示されるとともに、ハードディスク1110の所定の領域に格納されて、その後の演算処理を受けることになる。
【0038】
キャプチャされた画像データは、口領域抽出部1206において、画素(ピクセル)にそれぞれが対応している2値の数値アレイに変換され、この2値の数値アレイは、空いた口の部分(口腔に対応する部分)と他の部分とに分けられる。
【0039】
空いた口の領域の面積は、口腔内の画素数を加算することによって計算される。このような空いた口の領域の面積は、出力正規化部1208により、描画や彩色を制御する信号とするために正規化され、TCP/IPを経由して、描画モジュール1300のようなアプリケーションプログラムに伝送される。
【0040】
図4は、図2に示した描画支援装置の使用状況において、ディスプレイ108に表示されるユーザインターフェイス画面を示す図である。
【0041】
このインターフェイスは、ユーザ2が、アプリケーションの制御のために異なったマッピング方法(Mapping Method)を選択することを可能としている。ただし、発明者らによる実験的結果の示すところでは、線形的なマッピング方法(図4中の「Linear」)がコンピュータ描画のためにはよりよいことが示されている。
【0042】
このユーザインターフェイスでは、カメラの名称(「Capture Devise Selected」の項目)2002や、カメラの画像2004や、抽出された現状の口の領域2010aまたは2010bや、単位時間当りのプログラムサイクル等が示されている。単位時間当りのプログラムサイクルは、イメージ処理のレートを示している。実時間では、これは、画像のフレームレートよりも速い必要がある。
【0043】
[口腔の色分割の処理]
以下では、図3に示した口領域抽出部1206の動作についてさらに説明する。
【0044】
たとえば、顔の動きを認識するためのアルゴリズムに対しては、既に重要な技術の報告がある。但し、本発明においては、口の形状を認識するということがその目的とする作業ではなく、口の形状に基づいて、滑らかで再現性があり、かつユーザ2にとって直感的な操作を可能とするパラメータの抽出を可能とする処理を実現することにある。
【0045】
口領域抽出部1206は、以下に説明するような、色に基づいた分割アルゴリズムを用いることで、画像中の口腔の領域(空いた口の領域)を抽出する。
【0046】
はじめに、口腔の画素を検出するのに適切な入力画像の情報の表現として、赤色成分および輝度I(I=R+G+B;R:赤色信号,G:緑色信号,B:青色信号)とを決定する。輝度は、口腔が通常の照明条件においては影のように見えることから有益な情報を与える。口の内側は、また、相対的に高い赤色成分によって特徴付けられる。
【0047】
本実施の形態の描画支援装置では、特に限定されないが、口腔を分割するための2つの方法を選択的に実行可能なように構成されている。これら2つの方法とは、単純なしきい値を用いる方法と、フィッシャによる分離分析による方法である。
【0048】
ユーザ2は、その経験に基づいて、図4に示したインターフェイス上のチェックボックス2020aまたは2020bをクリックすることで、これらのうちの1つの方法を選択する。
【0049】
(しきい値法)
1番目の単純なしきい値法では、口腔は、以下の条件を満たすものとして分割される。
【0050】
I>Imin, R<Rmax
ここで、値IminおよびRmaxは、輝度Iと赤色信号Rのしきい値である。
【0051】
これらのしきい値は、ユーザ2によって、図4に示したインターフェイス上のスライドバー2030または2032をそれぞれ調整することによって変更される。
【0052】
(フィッシャの分離分析法)
2番目のアプローチは、フィッシャの分離分析を用いるもので、二次元の色空間において、入力画像の口腔と他の領域との間の境界を決定するものである。
【0053】
フィッシャの分離分析法については、文献:R. Duda, and P.hart, "Pattern Classification and Scene Analysis," New York:Wiley, 1973に詳しいので、以下では、フィッシャの分離分析法を用いる場合のモードの動作を簡単に説明する。
【0054】
フィッシャの分離分析を用いる方法には、2つのモードがある。
第1の「トレーニングモード」では、口領域抽出部1206において、分離分析が初期化され、正規化のためのファクタが獲得される。第2の「動作モード」では、口領域抽出部1206は、実時間で口腔の領域を出力するサーバのように動作する。
【0055】
図5は、トレーニングモードにおけるユーザ2の口の位置と、動作モードにおける抽出された口腔の領域とを示す図である。
【0056】
まず、トレーニングモードに入ると、ユーザ2は、カメラ102を動かして、図4の画像2004において、その口腔の領域を図5(a)に示される中央の長方形領域(白い長方形)に位置させる。さらに、ユーザ2は、唇の領域を、図5(a)に示される、上記中央の長方形領域に隣接する2つの長方形領域と重なるように口を動かす。
【0057】
図5(b)は、動作モードにおいて抽出された口腔領域を示す。この画像において、口腔の領域に属するピクセルは、白で表され、口腔領域以外の領域に属するピクセルは、黒で表される。
【0058】
図6は、フィッシャ(Fisher)の分離分析の手続きを示す概念図である。
2つのクラス(口腔の領域および口腔領域以外の領域)の画素からの(R,I)の値χmおよびχsが、フィッシャ分析で用いる分離ベクトルφを計算するために用いられる。サンプル値χmは、口腔の領域のピクセルの値であり、サンプル値χsは、口腔の領域以外の領域のピクセルの値である。
【0059】
口腔と口腔以外の領域の画素の間の境界の位置は、口腔の領域の(R,I)値の分離ベクトルへの射影<φTχm>の平均値μmと標準偏差σmとから決定されるしきい値を用いて判断される。さらに、このしきい値の計算には、口腔以外の領域の(R,I)値の分離ベクトルへの射影<φTχs>の平均値μsも使用される。このしきい値は、重み付けのしきい値βによって調整され得る。
【0060】
すなわち、(平均値μm)>(平均値μs)が成り立てば、しきい値は、(μm−βσm)とされる。一方、(平均値μm)>(平均値μs)が成り立たなければ、しきい値は、(μm+βσm)とされる。
【0061】
なお、値βは、図4においてスライドバー2034によりユーザにより調整される。
【0062】
動作モードにおいては、入力画像における画素の(R,I)値が、口腔であるか口腔でないかを、フィッシャの分離分類処理を行なうソフトウェア上の演算モジュールを用いることで分類する。画像中の各画素は、口腔のものであるか口腔のものでないかについてのラベル付けがされる。ラベル付けされた口腔の画像が、図5(b)に示す画像である。
【0063】
[出力の正規化処理]
続いて、図3に示した出力正規化部1208の処理について説明する。
【0064】
口腔の領域の面積は、口腔に属しているとラベル付けされた画像中の画素の数Mで表現される。このパラメータMの値は、カメラの微小な平行移動や回転に対しては不変なものであり、この結果、カメラの微小な動きや振動に対しては影響を受けない。
【0065】
この領域は、口腔領域の最大値Mmaxおよび最小値Mminによって、以下の式にしたがって正規化パラメータNPに変換される。
【0066】
【数1】
Figure 0004049708
【0067】
この結果、出力されるパラメータNPは(0,1)の領域に含まれる。
ユーザは、トレーニングモードにおいて、最大値Mmaxおよび最小値Mminを入力するものとする。
【0068】
[ゲインの設定]
正規化されたパラメータNPは、ペンを制御するためのパラメータPにマッピングされる。このPは、ペンの大きさや硬さや、透明度や色といったものを制御するのに用いることができる。
【0069】
P/Pmax=gNP
ここで、値Pmaxは、ペンパラメータの最大値である。すなわち、値NPに対して、制御のためのパラメータPは、線型に変化することになり、これが、図4において、ユーザ2がマッピング方法として、線型を選択したことに対応する。
【0070】
値(P/Pmax),NP,およびゲインgは、0と1の間との値をとる次元のないパラメータである。このように正規化されることによって、仕様の異なるシステム間でのパラメータの授受が容易となる。
【0071】
ゲインgが大きくなるにつれて、所定のパラメータPを入力するのにユーザは口を大きく開ける必要はなくなり、システムの負荷も軽減される。
【0072】
しかしながら、ゲインgが大き過ぎると、口の意識しない動きまで増幅されてしまうため、ペンパラメータPの値を制御することが困難になる。ゲインgの値もユーザ2が設定するものとしてよい。
【0073】
[評価結果]
ゲインgの大きさと、制御の正確さとの間の期待されるトレードオフを調査するために、以下のような評価タスクの実験を行なった。これは、「半径制御タスク」と呼ばれる。
【0074】
(半径制御タスクの内容)
このタスクにおいては、実験主体(ユーザ2)は、描画支援装置を用いて、口を開けたり閉めたりすることで、コンピュータディスプレイ上に描かれた円の半径が、それが目標となる正方形に正確に接するまで調節を行なう。
【0075】
図7は、ターゲット半径と制御された円の半径の関係を示す図である。
目標サイズに到達したときには、ユーザは、スペースバーをクリックし、同一の位置を3秒間保持しようとする。その後、ユーザは、次のタスクに対応した試行を順次行なっていく。
【0076】
(実験の手続き)
この実験の独立した変数は、ゲインgと、ターゲットとなる正方形のサイズである。正方形の半分(すなわち、ターゲットとなる半径)は、(5,23,42,62,80)の値をとり、ゲインgは、(0.25,0.5,0.8)の値をとるものとした。
【0077】
ゲインgとターゲットとなる大きさの各組合せは、3回ずつ繰返されたので、全部で45回の試行が行なわれている。
【0078】
このような試行を行なう順番は、各実験主体について、ランダムとした。実験主体は、1280×1024画素の解像度を有する19インチの液晶ディスプレイの前に約60cm離れて座っている。このような実験を行なうには約10分を要した。
【0079】
4人の被験者が実験に参加した。二人は、描画支援装置を用いた経験が以前ある者であり、他の二人は、初めて使用する者である。
【0080】
各試行において、スペースバーを押すことで、制御された円の半径は、コンピュータにその後の3秒間にわたって記録される。
【0081】
以下の式にしたがって、誤差の絶対値の平均E(ターゲットの半径T(x,y)と実際に制御された半径C(x,y)との間の差の絶対値の平均)を、ユーザの制御の正確さを計る指標として計算する。一方、上記3秒間の平均的な位置からの標準偏差σ(x,y)がユーザの制御の精緻さの指標として計算する。
【0082】
【数2】
Figure 0004049708
【0083】
ここで、xおよびyは、ゲインとターゲットのパラメータとのインデックスであり、nは、各ターゲットのテストにおけるサンプル数である。
【0084】
(実験結果)
図8は、平均的な絶対値誤差Eを示しており、各ゲインの値に対するすべてのターゲットの大きさで平均されている。
【0085】
一方、図9は、各ゲインgに対して、ターゲットのサイズにわたって平均された標準偏差σを示す図である。
【0086】
経験のあるユーザおよび経験のないユーザに対する平均値は、それぞれ実線と点線で別々に示されている。
【0087】
図8および図9を参照して、経験のないユーザに対する平均の絶対値誤差および標準偏差は、いずれも大きなものとなっているので、描画支援装置の使用経験が、その動作を向上させることを示している。
【0088】
正確さは、経験者に対しては、ゲインに大きく依存していないが、経験のないユーザに対しては、より低いゲインの方がより高い正確さを示している。
【0089】
精緻さは、ユーザが、固定された値の入力半径をどれぐらいよく維持することができるかを示す指標であるので、経験者および非経験者の双方に対して、より低いゲインの方が、よりよい値(より標準偏差の平均値が小さい値)となっている。
【0090】
これらの結果は、より低いゲインの設定、たとえば、g=0.25というものが、最も高い正確さと入力された半径の制御の精緻さとをもたらすことを示している。
【0091】
口は、多くの人間活動に関わっているものであり、人間自身の感覚運動の制御システムが、微細な動きの制御を可能としているものである。本発明では、簡単な画像分析アルゴリズムにより、口の開いた領域を測定し、このようにして得られた1つのパラメータが、アーティストが彩色したり描画したりする際に、実時間でペンやブラシの大きさや硬さや透明度や色やあるいは他の特性を特定することを可能としている。
【0092】
以上説明したとおり、本発明に係る描画支援装置を用いることで、手と口との協調したジェスチャを用いることで、直感的かつ正確な、デジタル画像の生成におけるパラメータ制御が、容易に可能となる。このような描画支援装置では、人間の体に傷を付けることなく、快適かつ低コストに、ユーザのコンピュータ上での描画の支援を実現できる。
【0093】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0094】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば、手と口との協調したジェスチャを用いることで、直感的かつ正確な、デジタル画像の生成におけるパラメータ制御が、容易に可能となる。
【0095】
あるいは、本発明によれば、人間の体に傷を付けることなく、快適かつ低コストに、ユーザのコンピュータ上での描画の支援を実現できる。
【0096】
あるいは、本発明によれば、描画や彩色を行なう際のマン−マシンインタフェースとして、ユーザの視線等の動作に不自然な制限をかけることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の描画支援装置を用いた描画システム100の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】 本発明に係る描画支援装置の使用状況を説明するための図である。
【図3】 図1に示した描画システム100上で動作するソフトウェアの構成を説明するための機能ブロック図である。
【図4】 描画支援装置の使用状況において、ディスプレイ108に表示されるユーザインターフェイス画面を示す図である。
【図5】 トレーニングモードにおけるユーザ2の口の位置と、動作モードにおける抽出された口腔の領域とを示す図である。
【図6】 フィッシャの分離分析の手続きを示す概念図である。
【図7】 ターゲット半径と制御された円の半径の関係を示す図である。
【図8】 平均的な絶対値誤差Eを示す図である。
【図9】 各ゲインgに対して、ターゲットのサイズにわたって平均された標準偏差σを示す図である。
【符号の説明】
2 ユーザ、100 描画システム、102 ヘッドマウントカメラ、104ペン、106 タブレット、108 ディスプレイ、110 コンピュータ、130 描画専用マシン。

Claims (7)

  1. 描画システムにおいて、ユーザから描画パラメータの入力を行なうための描画支援装置であって、
    前記ユーザの口領域を撮影するための撮像手段と、
    描画のための少なくとも線図データの入力を行なうための入力手段と、
    前記撮像手段により撮影された画像データから、前記ユーザの口腔に対応する領域の面積を抽出して、前記面積に基づいて描画される線図の質を制御するための正規化された線質パラメータを生成して出力する演算処理手段と、
    前記線質パラメータに応じて描画された前記線図を表示するための表示手段とを備える、描画支援装置。
  2. 前記入力手段は、前記面積に基づいて正規化パラメータを算出し、前記正規化パラメータにゲインをかけた値に基づいて前記線質パラメータを生成する、請求項1記載の描画支援装置。
  3. 前記入力手段は、前記ユーザからの設定指示を受け取り、
    前記演算処理手段は、前記設定指示に応じて前記ゲインの値を設定する、請求項2記載の描画支援装置。
  4. 前記ユーザの頭部に装着される固定具をさらに備え、
    前記固定具は、前記撮像手段の位置を可変に保持するためのアームを含み、
    前記演算処理手段は、前記撮像手段により撮影された前記ユーザの口領域の画像データを左右反転させて前記表示手段に表示するための反転手段を含む、請求項1記載の描画支援装置。
  5. 前記演算処理手段は、前記画像データ中の色情報に基づいて、前記口腔に対応する領域を抽出する口領域抽出手段と、
    前記口領域抽出手段の出力を受けて、正規化された前記線質パラメータを前記描画の処理を行なうための描画処理手段に出力する正規化手段とを含む、請求項1記載の描画支援装置。
  6. 前記入力手段は、前記ユーザからの選択指示を受け取り、
    前記演算処理手段は、前記線図の質として、少なくとも色、太さおよび硬さのうち、前記選択指示に応じて選択される1つを制御する、請求項1記載の描画支援装置。
  7. ユーザから与えられる描画指示に基づいて、対応する描画データを生成するための描画処理装置と、
    前記ユーザからの描画指示に対応する描画パラメータの入力を行なうための描画支援装置とを備え、
    前記描画支援装置は、
    前記ユーザの口領域を撮影するための撮像手段と、
    描画のための少なくとも線図データの入力を行なうための入力手段と、
    前記撮像手段により撮影された画像データから、前記ユーザの口腔に対応する領域の面積を抽出して、前記面積に基づいて描画される線図の質を制御するための正規化された線質パラメータを生成して前記描画処理装置に出力する演算処理手段と、
    前記線質パラメータに応じて前記描画処理装置により描画された前記線図を表示するための表示手段とを含む、描画システム。
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