JP4046626B2 - 飛翔体誘導装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、飛来する弾道飛翔体(BM:Ballistic Missile)を大気圏外で迎撃する迎撃飛翔体の誘導装置に関するものであり、特に、終末期最終段階における最終機動により10数cm程度の命中精度で迎撃飛翔体を弾道飛翔体に直撃させるための飛翔体誘導装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の飛翔体誘導装置は、目視線方向検出装置が迎撃飛翔体に搭載され、画像センサで弾道飛翔体(目標飛翔体)の熱を検出することにより、迎撃飛翔体からBMへの方向を検出する。目視線方向時間変化率計算装置は、検出された目視線方向(迎撃飛翔体からBMの見える方向、目視方向)時刻歴に基づいて、Kalmanフィルタ等のフィルタリングにより、その時間変化率を算出する。誘導信号計算装置は、目視線方向時間変化率に基づいて横加速度(例えば比例航法による誘導信号)を算出して噴射指令として出力する。サイドスラスタは、噴射指令による横加速度を発生し、迎撃飛翔体の軌道を弾道飛翔体との会合経路に乗せることにより、迎撃飛翔体をBMに命中させる(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
【非特許文献1】
American Institute of Aeronautics and Astronautics刊、Tactical and Strategic Missile Guidance 第2版、p.25、p.181
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の飛翔体誘導装置は以上のように、飛来するBMを検出するために、迎撃飛翔体に固定された画像センサでBMの熱を検出する。しかし、目視線方向検出装置で用いられている画像センサは、運用上必要とされる光学系画角に対し、現在の技術水準では充分な画素数、すなわち角度分解能を達成できておらず、画像センサで検出されたBMへの目視線方向は、画角分解能特性により階段状の時間変化をする。フィルタ処理では、画角分解能特性を観測誤差としてモデル化できないため目視線方向時間変化率(微分)の計算は困難であった。
例えば、フィルタ処理後も出力信号に大きな振動が残り、上下/左右方向の対向するサイドスラスタを無駄に噴いて軌道が波打ったり、逆に振動を強く抑えるために噴射指令の時間遅れが大きくなったりしてスラスタ噴射のタイミングが遅くなったりすることで、迎撃飛翔体の命中誤差が増大するという欠点があり、命中誤差を10数cm程度にすることは困難であるという問題点があった。
【0005】
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、目視線方向が画像センサの画角分解能特性により階段状に時間変化する場合でも、10数cm程度の命中誤差を達成することのできる飛翔体誘導装置を得ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る飛翔体誘導装置は、目標飛翔体に迎撃飛翔体を命中させるために迎撃飛翔体を誘導するものであって、画像センサを有し、画像センサによる目標飛翔体の撮像画像に基づいて、目標飛翔体の目視方向を検出し、画像センサの画角分解能特性により階段状に時間変化する目視方向検出値として所定時間毎に出力する目視方向検出装置と、目標飛翔体と迎撃飛翔体との相対速度、および迎撃飛翔体が目標飛翔体に命中するまでの残り時間を所定時間毎に出力する速度・時間出力装置と、あらかじめ格納された目視方向の観測モデルおよび目標飛翔体と無誘導を仮定した迎撃飛翔体との会合時刻において予想される命中誤差であるZEMの観測モデルを用いて、相対速度および残り時間に基づいて所定時間毎の目視方向計算値およびZEM計算値を計算するとともに、目視方向検出値および目視方向計算値に基づいて画角分解能特性に合致するZEMの範囲であるZEM可能領域を計算するZEM可能領域計算装置と、ZEM可能領域の中から誘導に用いるためのZEM代表点を計算するZEM代表点計算装置と、ZEM代表点に対応した相対速度および残り時間に基づいて、ZEM代表点をゼロとするサイドスラスタ噴射量を計算するサイドスラスタ噴射量計算装置と、迎撃飛翔体に搭載され、サイドスラスタ噴射量に応じて噴射を行うサイドスラスタとを備える。
ZEM可能領域計算装置は、所定時間毎の目視方向計算値と目視方向検出値とを比較し、目視方向計算値と目視方向検出値との偏差が所定範囲内の場合に、目視方向計算値に対応するZEM計算値がZEM可能領域に含まれると判定し、ZEM代表点計算装置は、ZEM可能領域に含まれるZEM計算値の平均値または中間値をZEM代表点とするものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下、図面を参照しながら、この発明の実施の形態1について詳細に説明する。図1はこの発明の実施の形態1の飛翔体誘導装置を示すブロック構成図である。
図1において、本発明の実施の形態1による飛翔体誘導装置は、画像センサを備えた目視線方向検出装置(目視方向検出装置)1が迎撃飛翔体12に搭載され、所定時間の間、迎撃飛翔体12から見たBM11への目視線方向を検出する。
速度・時間出力装置6は、BM11と迎撃飛翔体12との相対速度と、迎撃飛翔体12が弾道飛翔体11に命中するまでの残り時間とを出力する。
ZEM可能領域計算装置2は、目視線方向検出装置1で検出された目視線方向の時刻歴から目視線方向検出装置1の画像センサの画角分解能特性に合致するZEMの範囲(ZEM可能領域)を計算する。
ここで、ZEM(Zero−Effort−Miss)とは、ある時点から誘導を行わない場合に予想される命中誤差を示す。
【0008】
次に、ZEM代表点計算装置3は、ZEM可能領域の中から誘導に用いるための代表点を1点抽出する。サイドスラスタ噴射量計算装置4は、ZEM代表点計算後の誘導によりそのZEMを相殺し、ZEMをゼロとするようなサイドスラスタ噴射量を決定する。サイドスラスタ5は、サイドスラスタ噴射量計算装置4からの噴射指令に応じた量の噴射を行うことにより、迎撃飛翔体12の飛翔経路を変更させ、迎撃飛翔体12をBM11に命中させる。
【0009】
図2から図4は、この発明の実施の形態1の飛翔体誘導装置を示すブロック構成図である。
図2のように、前述の図1の構成の他に、迎撃飛翔体12にピッチ・ヨー姿勢角時間変化率を検出する姿勢角時間変化率検出装置7をさらに備えて、迎撃飛翔体12の姿勢角の時間変化率を検出してもよい。この場合、ZEM可能領域計算装置2では目視線方向検出装置1で検出された目視線方向時刻歴および姿勢角時間変化率に基づいて、目視線方向検出装置1の画角分解能特性に合致するZEM可能領域を計算する。
また、図3のように、図1における飛翔体誘導装置に、ZEM初期推定計算装置8を備えてZEMの初期推定値を決定してもよい。この場合、ZEM可能領域を計算する際の初期値としてZEMの初期推定値を用い、ZEM可能領域の最初の目安を決める。
また、図4のように、姿勢各時間変化率検出装置6を備えた図3における飛翔体誘導装置に、さらにZEM初期推定計算装置8を備えてもよい。
【0010】
図5は迎撃飛翔体の運用状況を示す説明図であり、図6は迎撃飛翔体12のシーケンスを示す説明図であり、図7は迎撃飛翔体12とBM11との会合状況を示す説明図であり、図8は終末期後半における迎撃飛翔体12とBM11との距離とZEMとを示す関係図である。
図5において、迎撃飛翔体12の飛翔段階は、初期、中期、終末期およびBM11と会合するエンドゲームに分かれている。
図6において、通常、迎撃飛翔体12は、初中期および終末期前半における誘導によりBM11への概略会合コースに乗っている。初中期では慣性誘導や地上からの指令誘導などが行われ、終末期では迎撃飛翔体12に搭載されたセンサによる追尾誘導が行われる。なお、概略会合コースとは、近接信管を用いる空対空飛翔体の許容命中誤差が10m程度のコースを意味する。
【0011】
図7(a)は、終末期の後半からエンドゲームまでの最終起動期間におけるある最終起動時刻における迎撃飛翔体12とBM11との会合状況を示す。また、図7(b)は、会合時刻における迎撃飛翔体12とBM11との会合状況を示す。
図7(a)において、迎撃飛翔体12はBM11との概略会合コース13に乗っており、最終起動時刻においてサイドスラスタ5を噴射させる。接近速度方向は概略迎撃飛翔体12からBM11の方向となり、接近速度方向に直交する方向を接近速度直交方向とする。サイドスラスタ5を噴射させることにより、接近速度直交方向への加速度を発生させて迎撃飛翔体12をBM11との会合コース14に誘導し、命中誤差を含んだ範囲の会合点15でBM11と会合させる。なお、会合コース14とは、命中誤差が10数cm程度のコースを意味する。
【0012】
図7(b)および図8において、迎撃飛翔体12とBM11との接近速度方向に直交する接近速度法平面を想定する。この接近速度法平面に、両者の基準点(例えば、各飛翔体の航法系の基準点や重心等)が含まれた時刻を会合時刻とし、会合時刻あるいは予想会合時刻においては、特にこの接近速度法平面をMissPlane(略してMP)16という。MP16内での両者の基準点間の距離を命中誤差という。
【0013】
図9は終末期後半における目視線方向時間歴の変化を示す説明図である。
図8および図9に示すように、BM11と迎撃飛翔体12とが近づく(相対距離が小さくなる)に従って、目視線方向の値(LOS角)は大きくなる。しかし、目視線方向検出装置1で検出される目視線方向の時間歴は、前述のように画像センサの画角分解能特性により階段状に時間変化する。
本発明による飛翔体誘導装置は、画像センサの画角分解能特性情報を積極的に用いることにより、画角分解能特性により階段状に時間変化する目視線方向時刻歴からZEM可能領域を求める。さらに、ZEM可能領域の中からZEMの代表点を選択し、ZEM代表点選択後の誘導により、そのZEMを相殺し、ZEMをゼロとするようなサイドスラスタ噴射量を決定するように構成する。
【0014】
次に、図1〜図3の全ての装置を備えた図4に示される飛翔体誘導装置の動作について詳細に説明する。
まず、目視線方向検出装置1の画角分解能特性を考慮した目視線方向観測モデルおよび目視線方向観測値の計算手順について説明する。
以下は、BM11と迎撃飛翔体12とが概略会合コース13にある場合に適用される。
BM11と迎撃飛翔体12との接近速度Vcは一定であり、接近速度方向の距離は、接近速度Vcと会合までの残り時間tgo(time−to−go)との積で表され、誘導による変化は、接近速度直交方向にのみ現れるものとする。
目視線方向検出装置1の画像センサは、画素が平面内に碁盤の目のように配置されているCCDのようなものを想定する。また、目標となるBM11は、その画素面上に点として結像されると想定する。
迎撃飛翔体12はロール角速度が充分小さくなるように制御されており、ピッチ系とヨー系を分離して考えることにする。ここでは、例えば目視線方向検出装置1の固定座標系でのピッチ目視線方向を観測値とする。
【0015】
まず、目視線方向検出装置1の画素による量子化が無い場合の像を考える。
会合までの残り時間tgo,iにおけるピッチ目視線方向観測値θiは、以下の式(1)のように表すことができ、この式(1)を目視線方向観測モデルと呼ぶ。
【数1】
【0016】
式(1)において、ωは目視線方向検出装置1の固定座標系のピッチ角速度、ZEMは誘導を行わなかった場合の会合時のBM11と迎撃飛翔体12との距離、VcはBM11と迎撃飛翔体12との相対接近速度、θ0はZEMがゼロである場合の会合時のピッチ目視線方向である。
添字i(i=1,...,Nobs)は何回目の観測であるかを示す。
残り時間tgoの値が大きい遠方時においては、ZEMの寄与は小さく、かつ概略会合コース13にあるため、慣性系で目視線方向はほぼ一定方向となり、ピッチ目視線方向観測値θiは一定値θ0と目視線方向検出装置1の固定座標系回転角の和とで近似することが出来る。
残り時間tgoの値が小さくなり、BM11と迎撃飛翔体12とが接近するにつれてZEMの寄与は大きくなり、図8に示すように、ピッチ目視線方向観測値(LOS角)θiは、θi−1、θi、θi+1のように、会合が近づくに従って急激に大きくなる。図9を参照しても同様に、会合が近づく、すなわち両者の相対距離が短くなるに従って、LOS角が急激に大きくなっている。
【0017】
一方、目視線方向検出装置1の画像センサで得られた画素による量子化を考慮すると、ピッチ目視線方向観測値θiは量子化されたピッチ目視線方向観測値
【数2】
となる。量子化の関数
【数3】
を用いて量子化を考慮した目視線方向観測モデルは、以下の式(2)のように表すことができる。
【数4】
【0018】
次に、ZEM初期推定値、ZEM可能領域、およびZEM代表点の計算手順について説明する。
式(2)の目視線方向観測モデルにおいて、目視線方向検出装置1の固定座標系のピッチ角速度ωは、目視線方向検出装置1の固定座標系に取り付けられた姿勢角時間変化率検出装置(レートジャイロ等)6で計測可能である。また、速度・時間出力装置6から出力されるBM11と迎撃飛翔体12との相対接近速度Vcおよび残り時間tgo,iは、地上レーダーの追尾処理によるBM11および迎撃飛翔体12の航跡等から推定可能な概略既知情報である。したがって、誘導を行わなかった場合の会合時のBM11と迎撃飛翔体12との間の距離ZEMと、ZEMがゼロである場合の会合時のピッチ目視線方向θ0とが推定すべき未知パラメータとなる。
【0019】
以上の概略既知情報および目視線方向検出装置1の画像センサから得られる量子化されたピッチ目視線方向の観測値
【数5】
の時刻歴に基づいて、未知パラメータであるZEMを(副次的にθ0も)精度良く推定することができる。
なお、目視線方向検出装置1による観測時間は1秒に満たず、かつ観測中はサイドスラスタ5を噴射しないと想定しているので、目視線方向検出装置1の固定座標系のピッチ角速度ωは観測中一定値であると仮定する。
また、推定方式については、搭載を考慮して出来るだけ簡便な方式を用いる。
【0020】
基本的な考え方としては、ピッチ目視線方向θ0およびZEMの概略の初期推定値を求め、その初期推定値を基準値として未知パラメータを離散的に探索する。探索においては、目視線方向観測モデルに代入して得られた計算観測値と実観測値とが、目視線方向検出装置1の画角分解能特性を考慮した上で一致する候補解(可能解)か否かを調べるという手順を取る。この候補解(可能解)の集合をZEM可能領域と呼ぶ。
【0021】
まず、ZEM初期推定計算装置8において、ピッチ目視線方向θ0の初期推定値
【数6】
は、例えば1回目の実観測値
【数7】
を用いて、以下の式(3)により計算される。
【数8】
この近似式は、1回目の観測ではtgo,1が比較的大きく、既に述べたようにZEMの寄与が比較的小さいという考えによるものであり、式(2)から式(3)が得られる。
【0022】
次に、ZEMの初期推定値
【数9】
の算出では、ピッチ目視線方向の実観測値
【数10】
の時刻歴と、ピッチ目視線方向の初期推定値
【数11】
および未知パラメータZEMから、式(2)の目視線方向観測モデルに基づいて計算される計算観測値
【数12】
の時刻歴との2乗誤差の和Errを定義する。2乗誤差の和Errは、以下の式(4)のように表すことができる。
【数13】
【0023】
この2乗誤差の和を最小値とするZEMを初期推定値
【数14】
とする。
すなわち、以下の式(5)から、式(6)のように、ZEMの初期推定値が決定される。
【0024】
【数15】
【0025】
ZEM可能領域計算装置2は、以上のようにして得られたピッチ目視線方向の初期推定値
【数16】
と、ZEMの初期推定値
【数17】
を探索の基準値として、基準値の周辺の適当な2次元領域に渡って離散的に探索を行う。
【0026】
探索においては、式(2)の量子化を考慮した目視線方向観測モデルに基づいて計算される量子化された計算観測値
【数18】
の時刻歴と、実観測値
【数19】
の時刻歴とが、全観測範囲に対して、画素の分解能(画角分解能)のレベルで一致するか否かを判定する。判定の結果、画素の分解能のレベルで一致した値の集合を、ZEM可能領域とする。ZEM可能領域の判定には、ピッチ目視線方向の初期推定値
【数20】
と、ZEMの初期推定値
【数21】
とを用いて、以下の式(7)によって判定を行う。
【0027】
【数22】
式(7)において、εは例えば半画素に対応する視野角を選べば良い。
【数23】
式(8)において、FOVとpixelsは、それぞれピッチ方向の画角と画素数とを示す。
【0028】
初期推定値を初期値として、初期推定値の周辺のピッチ目視線およびZEMの値を離散的に当てはめていく。式(7)の不等式に当てはめていった結果、式(7)の不等式を満たすピッチ目視線方向
【数24】
と、ZEM
【数25】
との各組み合わせを、未知パラメータの候補解
【数26】
、
【数27】
とする。前述のようにこの候補解の集合をZEM可能領域とする。
ここで添字j(j=1,...,Ncandidate)は何番目の候補解であるかを表す。
【0029】
最後に、ZEM代表点計算装置3における推定値の決定には幾つかの考え方があるが、ここでは、式(9)および式(10)のように、候補解の平均値を推定値として用いることにする。なお、候補解の中間値を推定値としてもよい。
【数28】
【0030】
以上のようにして得られた推定値
【数29】
、
【数30】
をZEM代表点とする。
【0031】
次に、典型的な会合ケースについて計算した結果を示す。
図10は目視線方向時刻歴の真値と実観測値とを示す説明図であり、図11はZEM初期推定値/ZEM可能領域/ZEM代表点/ZEM真値を示す説明図である。
ここで、BM11と迎撃飛翔体12との接近速度Vcは6[km/sec]、観測時刻tgoは、0.35〜0.25[sec]の間に、5[msec]間隔で合計21回行われた。目視線方向検出装置1の固定座標系のピッチ角速度ωは、+1[deg/sec]とした。ピッチ目視線方向θ0とZEMとの真値は、それぞれ+12[mrad]、+0.567[m]とした。また、画角分解能は約0.01[deg]とした。
以上のような条件でZEM代表点を算出すると、真値と比べてZEM代表点が0.1[m]以下の誤差で推定できていることが分かる。
【0032】
ZEM代表点が計算されると、サイドスラスタ噴射量計算装置4は、代表点として推定されたZEMを相殺する、すなわちZEMがゼロとなるように飛翔経路を変更するためのサイドスラスタ噴射量を計算し、噴射指令として出力する。
サイドスラスタ5は、サイドスラスタ噴射量計算装置4からの噴射指令に基づいてサイドスラスタを噴射し、迎撃飛翔体12を経路変更させてBM11に命中させる。
【0033】
このように、目視線方向検出装置1の画角分解能特性を陽に考慮したので、目視線方向時刻歴が画角分解能特性により階段状に変化する場合であっても、従来例のフィルタリングによる場合に起こる目視線方向時間変化率の不十分な平滑化や時間遅れが生じず、サイドスラスタ5の無駄噴きや軌道の波打ちを防ぐことができ、命中誤差の増大を防ぐことができる。
また、ZEM可能領域計算において、目視線方向検出装置1の画角分解能特性とともに迎撃飛翔体12のピッチ・ヨー姿勢角時間変化率を陽に考慮したので、目視線方向観測中の迎撃飛翔体12のピッチ・ヨー姿勢角時間変化の影響を受けることなくZEM可能領域が計算でき、命中誤差の増大を防ぐことができる。
また、目視線方向時刻歴のうちの1点または複数点からZEMの初期推定値を選択し、ZEM可能領域を計算する際の初期値としてZEMの初期推定値を用いるようにしたので、初期値を基準にして計算することができ、ZEM可能領域存在範囲の検索を効率的に計算でき、演算時間の短縮や搭載計算機の負荷を軽減することができる。演算時間の短縮によって会合までの残余時間を長くすることができ、一定のZEMに対してスラスタ噴射レベルの低減、あるいは、より大きなZEMの相殺が可能となる。
【0034】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、画像センサによるBM11の撮像画像に基づいて、迎撃飛翔体12の目視方向を検出し、画像センサの画角分解能特性により階段状に時間変化する目視方向検出値として所定時間毎に出力する目視線方向検出装置1と、BM11と迎撃飛翔体12との相対速度、命中するまでの残り時間を所定時間毎に出力する速度・時間出力装置6と、観測モデルを用いて、相対速度および残り時間に基づいて所定時間毎の目視方向計算値およびZEM計算値を計算するとともに、所定時間毎の目視方向計算値と目視方向検出値とを比較して、目視方向計算値と目視方向検出値との偏差が所定範囲内の場合に、目視方向計算値に対応するZEM計算値がZEM可能領域に含まれると判定するZEM可能領域計算装置2と、ZEM可能領域に含まれるZEM計算値の平均値または中間値を、誘導に用いるためのZEM代表点として計算するZEM代表点計算装置3と、ZEM代表点に対応した相対距離および残り時間に基づいて、ZEM代表点をゼロとするサイドスラスタ噴射量を計算するサイドスラスタ噴射量計算装置4と、サイドスラスタ噴射量に応じて噴射を行うサイドスラスタ5とを備えたので、目視線方向時刻歴が画角分解能特性により階段状に変化する場合であっても、目視線方向時間変化率の不十分な平滑化や時間遅れが生じず、サイドスラスタ5の無駄噴きや軌道の波打ちを防ぐことができ、命中誤差の増大を防ぐことのできる飛翔体誘導装置が得られる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1の飛翔体誘導装置を示すブロック構成図である。
【図2】 この発明の実施の形態1の飛翔体誘導装置を示すブロック構成図である。
【図3】 この発明の実施の形態1の飛翔体誘導装置を示すブロック構成図である。
【図4】 この発明の実施の形態1の飛翔体誘導装置を示すブロック構成図である。
【図5】 迎撃飛翔体の運用状況を示す説明図である。
【図6】 迎撃飛翔体のシーケンスを示す説明図である。
【図7】 迎撃飛翔体とBMとの会合状況を示す説明図である。
【図8】 終末期後半における迎撃飛翔体とBMとの距離と命中誤差(ZEM)とを示す関係図である。
【図9】 終末期後半における目視線方向時間歴の変化を示す説明図である。
【図10】 目視線方向時刻歴の真値と実観測値とを示す説明図である。
【図11】 ZEM初期推定値/ZEM可能領域/ZEM代表点/ZEM真値を示す説明図である。
【符号の説明】
1 目視線方向検出装置、2 ZEM可能領域計算装置、3 ZEM代表点計算装置、4 サイドスラスタ噴射量計算装置、5 サイドスラスタ、6 速度・時間出力装置、7 姿勢角時間変化率検出装置、8 ZEM初期推定計算装置、11 弾道飛翔体(BM)、12 迎撃飛翔体、13 概略会合コース、14 会合コース、15 会合点。
Claims (3)
- 目標飛翔体に迎撃飛翔体を命中させるために前記迎撃飛翔体を誘導する飛翔体誘導装置であって、
画像センサを有し、前記画像センサによる前記目標飛翔体の撮像画像に基づいて、前記目標飛翔体の目視方向を検出し、前記画像センサの画角分解能特性により階段状に時間変化する目視方向検出値として所定時間毎に出力する目視方向検出装置と、
前記目標飛翔体と前記迎撃飛翔体との相対速度、および前記迎撃飛翔体が前記目標飛翔体に命中するまでの残り時間を前記所定時間毎に出力する速度・時間出力装置と、
あらかじめ格納された目視方向の観測モデルおよび前記目標飛翔体と無誘導を仮定した前記迎撃飛翔体との会合時刻において予想される命中誤差であるZEMの観測モデルを用いて、前記相対速度および前記残り時間に基づいて前記所定時間毎の目視方向計算値およびZEM計算値を計算するとともに、前記目視方向検出値および前記目視方向計算値に基づいて前記画角分解能特性に合致する前記ZEMの範囲であるZEM可能領域を計算するZEM可能領域計算装置と、
前記ZEM可能領域の中から前記誘導に用いるためのZEM代表点を計算するZEM代表点計算装置と、
前記ZEM代表点に対応した相対速度および残り時間に基づいて、前記ZEM代表点をゼロとするサイドスラスタ噴射量を計算するサイドスラスタ噴射量計算装置と、
前記迎撃飛翔体に搭載され、前記サイドスラスタ噴射量に応じて噴射を行うサイドスラスタと
を備え、
前記ZEM可能領域計算装置は、前記所定時間毎の前記目視方向計算値と前記目視方向検出値とを比較し、前記目視方向計算値と前記目視方向検出値との偏差が所定範囲内の場合に、前記目視方向計算値に対応するZEM計算値が前記ZEM可能領域に含まれると判定し、
前記ZEM代表点計算装置は、前記ZEM可能領域に含まれるZEM計算値の平均値または中間値を前記ZEM代表点とすることを特徴とする飛翔体誘導装置。 - 前記迎撃飛翔体の姿勢角の時間変化率を検出する姿勢角時間変化率検出装置を備え、
前記ZEM可能領域計算装置は、前記姿勢角の時間変化率に応じた観測モデルを用いて、前記目視方向計算値および前記ZEM計算値を計算することを特徴とする請求項1に記載の飛翔体誘導装置。 - 前記目視方向検出値の中の少なくとも1点に基づいて、前記目視方向検出値と前記目視方向計算値との偏差を最小にする前記ZEMの初期推定値を計算する初期推定計算装置を備え、
前記ZEM可能領域計算装置は、前記初期推定値を初期値として前記ZEM計算値を選択することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の飛翔体誘導装置。
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