JP4044305B2 - 鉄基高剛性材料およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い剛性と共に高い靭性が要求される機械構造用部品等に用いられる鉄基高剛性材料、およびその製造方法に関するものであり、殊にヤング率が210GPa以上の高剛性を有すると共に、鉄基合金中に分散させる化合物の均一化を達成し、特性の更なる改善を図った鉄基高剛性材料およびその様な鉄基高剛性材料を製造する為の有用な方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
機械構造用部材は、建築物や輸送機器、各種機械等の構造物を維持する為に用いられるものであるが、こうした機械構造用部材の素材としては、従来から鉄鋼材料が汎用されている。上記機械構造用部材に要求される重要な特性としては、剛性および靭性が挙げられる。こうした剛性や靭性が高い材料を使用することによって、構造物の機械的強さを更に高くし、信頼性の高い構造物を得ることができる。また、剛性や靭性が高い材料を構造物に用いることは、それだけ使用する材料を少なくすることができるので、例えば自動車や鉄道等の輸送用車両に用いることによって輸送車両の軽量化が達成され、その結果として、燃費向上による省エネルギー化や、材料の節約による省資源化を図ることができる。
【0003】
上記の様な機械構造用部材に用いられる鉄鋼材料は、各種合金成分の添加や組織の改善によってその特性の改善が試みられてきた。これらの方法によって、鉄鋼材料の靭性については飛躍的に改善されたと言えるが、剛性に関する限りでは期待するほど改善されていないのが実状である。こうした現象が生じる理由としては、剛性は材料が固有している物理的な値であることから、上記の様な方法では剛性の向上(即ち、ヤング率の向上)は困難であると考えられる。
【0004】
一方、上記の様な鉄鋼材料は、現状ではヤング率が200GPa程度の剛性を発揮するものであるが、近年では、例えば自動車のエンジン部品に使用されることも含めて、ヤング率が少なくとも210GPa以上である様な高剛性が望まれている。また、こうした特性を発揮させることによって、輸送車両の軽量化を始めとして、機械的強度を更に高めることによって、より信頼性の高い構造物が実現できるものと期待される。
【0005】
こうしたことから、鉄鋼材料の剛性を高める為に種々の研究がなされ、また数多くの提案がなされている。こうした技術として、例えば特開平2−239504号、同7−188874号、同7−252609号等には、粉末冶金法を適用し、鉄や鉄合金中に高剛性の化合物粒子を分散させることによって鉄鋼材料の高剛性化を図った技術が提案されている。しかしながら、これらの技術は基本的に粉末冶金法を適用するものであるので、その工程の複雑さからコストが高くなるという問題があった。また、粉末冶金法で製造した材料では、マトリックス中に酸素が多量に混入し易く、この混入酸素によって靭性が却って低下するという問題がある。
【0006】
一方、粉末冶金法よりも比較的安価な製造プロセスである溶解法によって、上記の様な高剛性鉄鋼材料を実現する方法も提案されている。こうした技術として、例えば特開平4−325641号には、炭素鋼や合金鋼の溶湯に高剛性の化合物粉末を分散させて鋳造する方法が開示されている。しかしながら、こうした方法では、分散させる化合物粒子の調達の観点からコスト高となるばかりか、上記の様な化合物を溶湯に添加した場合には、化合物粒子の濡れ性が悪いことから該化合物粒子が溶湯中で凝集し易く、希望する靭性が得られにくいという問題がある。
【0007】
本発明者らも、上記の様な高剛性鉄鋼材料について、かねてより様々な角度から研究を重ねており、その研究の一環として、特開平10−68048号の様な技術も提案している。この技術は、前記化合物を構成する元素を溶湯中に個別に添加し、化合物粒子を溶湯中で反応生成させることによって、鉄鋼材料中の化合物をできるだけ微細均一に分散させたものである。
【0008】
こうした技術の開発によって、化合物粒子が凝集することが防止され、一応の効果が発揮されたのである。しかしながら、この技術によっても化合物粒子が粗大化して均一分散化が不十分な場合もあり、ときとして加工性、被削性および靭性が劣化することがあった。特に、化合物粒子を溶湯中で反応生成させる為には、溶湯温度を非常に高くする必要があり、鋳造温度も高くなることから粗大な化合物が生じ易く、また凝固までに時間がかかるので分散化合物が不均一になり易い。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこうした状況の下になされたものであって、その目的は、分散化合物の微細均一化を達成することによって、ヤング率が210GPa以上の高剛性を有すると共に、優れた靭性を安定して発揮することのできる鉄基高剛性材料、およびその様な鉄基高剛性材料を製造する為の有用な方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成し得た本発明の鉄基高剛性材料とは、鉄基金属中に鉄よりも剛性の高い化合物を分散した鉄基高剛性材料において、前記化合物は周期律表第IVa族またはVa族金属の硼化物、炭化物、窒化物またはそれらの複合化合物であって、前記鉄基金属と前記化合物との擬2元状態図において液相線温度が最低となる組成における前記化合物の体積分率をX(%)としたとき、前記鉄基高剛性材料中に占める前記化合物の体積分率が(X−5)〜(X+3)(%)の範囲内にあると共に、該化合物のうち粒径が8μm以下のものが全化合物中に占める割合が体積分率で80%以上であり、且つ前記鉄基高剛性材料中の酸素濃度が50ppm以下であると共に、10個以上の試験片によって行なう常温シャルピー衝撃試験の測定値の平均が110J/cm2以上で、前記測定値の最も低い値が前記平均値の50%以上である点に要旨を有するものである。
【0011】
本発明の鉄基高剛性材料においては、Siの含有量を[Si]、Alの含有量を[Al]としたとき、これらが下記(1)式を満足するものであることが好ましい。
0.3%≦[Si]+0.5×[Al]≦6% …(1)
【0012】
上記の様な本発明の鉄基高剛性材料を製造するに当たっては、鉄基金属の溶湯中に、前記化合物を構成する元素を添加し、鋳造温度を前記擬2元状態図における(液相温度+20℃)〜(液相温度+150℃)として鋳造する様にすれば良い。また、この製造方法を実施するに当たっては、金型または水冷鋳型を用いて鋳造することが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、上記目的を達成することのできる鉄基高剛性材料の実現を目指して様々な角度から検討した。その結果、基本的に溶解法を適用し、鉄よりも剛性の高い分散化合物として周期律表第IVa族またはVa族金属の硼化物、炭化物、窒化物またはそれらの複合化合物を選び、この分散化合物と鉄基金属との組成が擬2元共晶組成付近となる様にすれば、分散化合物の微細均一化を達成でき、ヤング率が210GPa以上の高剛性を有すると共に、優れた靭性を安定して発揮することのできる鉄基高剛性材料が実現できることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
本発明の鉄基高剛性材料は、分散化合物と鉄基金属との組成が擬2元共晶組成付近となる様にしたものであるが、こうした組成とすることによって、マトリックスとなる鉄素地と分散化合物が同時に晶出するので、下記(1)〜(4)に示す様な利点がある。
(1)亜共晶の組成の場合には、化合物が初晶マトリックスから排除されるので均一分散が困難になるが、共晶ではそれを防ぐことができる。また過共晶の場合には、化合物が初晶となって粗大化し易くなり、材料特性(靭性や被削性)が悪くなるが、共晶であればそれを防ぐことができる。
(2)マトリックスと化合物が同時に晶出するので、化合物を微細に分散させることができる。
(3)鋳込み温度(鋳造温度)を低くできるので、化合物が粗大化し難い。
(4)固−液相線温度が近いので鋳造時の凝固が速くなり、凝固過程での化合物の粗大化を防止でき、該化合物が均一分散した組織が得られ易くなる。
【0015】
本発明において、「分散化合物と鉄基金属との組成が擬2元共晶組成付近」とは、具体的には「前記鉄基金属と前記化合物との擬2元状態図において液相線温度が最低となる組成における前記化合物の体積分率をX(%)としたとき、前記鉄基高剛性材料中に占める前記化合物の体積分率が(X−5)〜(X+3)(%)の範囲内にある様な組成」である。尚、上記液相線温度は、鉄基高剛性材料を完全に液化し、その後約5℃/分で冷却させた際の示差熱ピークを解析(測定時の雰囲気はArガス)することによって求めることができる。
【0016】
上記体積分率が(X−5)%未満となる様な組成では、亜共晶組成としての特性が顕在化して、化合物の均一分散化が困難になるばかりか、化合物の分散量が不足することによって剛性の向上効果が発揮されなくなる。一方、上記体積分率が(X+3)%を超える様な組成では、過共晶組成として特性が顕在化して化合物が粗大化し、材料特性が劣化することになる。
【0017】
本発明で用いる分散化合物は、鉄よりも剛性の高い化合物として、周期律表第IVa族またはVa族金属(Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta等)の硼化物、炭化物、窒化物またはそれらの複合化合物が選ばれる。これらの化合物のうち、単独の元素を含む化合物(周期律表第IVa族またはVa族金属を1種含む以外は他の合金元素を含有しない化合物)を鉄に添加した場合における鉄−化合物の擬2元状態図において、液相線温度が最低となる条件(以下、「共晶点」と呼ぶことがある)での成分組成(C,B含有量、金属含有量)および体積分率(共晶Vf0)、並びにその体積分率(共晶Vf0)を中心に体積分率が(共晶Vf0−5)%、(共晶Vf0+3)%での成分組成および体積分率(Vf-5,Vf+3)の例を下記表1に示す。
【0018】
尚、鉄基金属中にCr,Mo,Si,Mn,Ni等の合金元素を含む場合や分散化合物が2種以上となる場合は、下記体積分率(共晶Vf0,Vf-5,およびVf+3)は若干ずれることになるが、例えば合金化した鉄を母材とする場合には、その母材と化合物の擬2元状態図で液相線温度が最低となる条件の化合物体積分率(Vf0)を中心に、体積分率が(共晶Vf0−5)%〜(共晶Vf0+3)%の範囲となる組成を考慮すれば良い。
【0019】
【表1】
【0020】
本発明の鉄基高剛性材料は、化合物を微細に分散させることができるが、具体的には粒径8μm以下のものの全化合物中に占める割合が、体積分率で80%以上とすることができる。即ち、分散化合物の殆どを粒径が8μm以下の微細なものにすることができる。粒径が8μm以下の微細な化合物の体積分率が80%未満になると(即ち、粒径が8μmを超えるものの体積分率が20%を超えると)、鉄基高度剛性材料の被削性が劣化することになる。この化合物の粒径は鋳造温度や体積分率を適切に調整することによって、その粒径をより微細にすることができるが、好ましくは粒径が5μm以下(より好ましくは粒径が2μm以下)の化合物の体積分率が80%以上となる様にするのが良い。
【0021】
また本発明の鉄基高剛性材料は、基本的に溶解法を適用して製造されるものであるので、その鉄基高剛性材料中の酸素濃度を50ppm以下とすることができ、これによって靭性も優れたものとすることができる。これに対して、粉末法によって得られた材料では、その製造原理からして酸素濃度が100ppm程度のものとなる。尚、本発明の鉄基高剛性材料における酸素濃度は、好ましくは30ppm以下、より好ましくは10ppm以下とするのが良い。
【0022】
更に、本発明の鉄基高剛性材料では、前述の如く化合物が均一分散した組織が得られ易くなり、その結果としてばらつきの少ない良好な靭性を発揮するものとなるが、具体的には「10個以上の試験片によって行なう常温シャルピー衝撃試験の測定値の平均が110J/cm2以上で、前記測定値の最も低い値が前記平均値の50%以上である」という要件を満足するものとなる。
【0023】
本発明の鉄基高剛性材料では、分散化合物を微細均一に分散させる為に、分散化合物と鉄基金属との組成が擬2元共晶組成付近となる様にすると共に、後述する製造条件で製造するものである。しかしながら、分散化合物を決めると共晶点がほぼ決まり、それに応じて分散できる化合物量もほぼ一定の値となって、化合物分散量を更に増やして剛性をそれ以上向上させることができないという事態が生じる。そこで、本発明者らは、化合物の分散量を更に増加させて剛性をより一層向上させるという観点から更に検討を重ねた。
【0024】
その結果、SiやAlを前記(1)式を満足する様に含有させれば、共晶点を化合物の高濃度側にシフトすることができ、これによって微細均一分散を維持しつつ、化合物分散量を更に増大させて剛性を効果的に向上させ得ることが判明したのである。こうした効果を発揮させる為には、前記(1)式に示す様に、[Si]+0.5×[Al]の値が少なくとも0.3%以上とするのが良いが、あまり過剰になって6%を超えると、塑性加工を施される材料では塑性加工ができなくなる。こうした加工性を考慮すれば、[Si]+0.5×[Al]の値は、3%以下であることがより好ましく、更に好ましくは2%以下である。尚、前記(1)式において、Al含有量[Al]に0.5倍の係数を掛けたのは、共晶点高濃度化の効果がAlはSiに比べてほぼ半分であったので、0.5という係数を設定したものである。
【0025】
上記の様に、(1)式を満足する様に、SiやAlを含有させることによって、共晶点が化合物の高濃度側にシフトする理由については、次の様に考えることができる。本発明では周期律表第IVa族またはVa族金属の化合物を共晶組成で溶製することによって化合物を均一微細に分散させて高剛性化を達成するものであるが、この化合物とマトリックス金属の共晶組成は周期律表第IVa族またはVa族金属の活量を低下させれば高濃度側にシフトすることになる。そして、SiやAlは、周期律表第IVa族またはVa族金属の活量を低減させる元素であるので、これらを所定量含有させることによって、共晶点が化合物の高濃度側にシフトしたものと考えられる。
【0026】
上記の様な特性を発揮する本発明の鉄基高剛性材料を製造するに当たっては、鉄基金属の溶湯中に、前記化合物を構成する元素を添加し、鋳造温度を前記擬2元状態図における(液相温度+20℃)〜(液相温度+150℃)として鋳造する様にすれば良い。分散させる化合物を微細にするには、基本的には鋳込み温度(鋳造温度)はできるだけ低いことが好ましいのであるが、この鋳造温度が前記擬2元状態図における(液相温度+20℃)未満になると、工業的に温度の不均一等が生じて化合物の一部凝固が起こり、鋳造が困難になる。一方、鋳造温度が(液相温度+150℃)を超えると、化合物が凝固するのに時間がかかり、化合物を微細にすることが困難になる。
【0027】
上記の様な製造工程によって分散化合物の微細化が達成されるのであるが、凝固速度が速くなると(例えば、1℃/秒以上)、化合物のより微細分散が可能になる。こうした観点からして、上記の様な製造方法を実施するに当たっては、金型または水冷鋳型を用いて鋳造することが好ましい。
【0028】
尚、本発明の鉄基高剛性材料の素材となる鉄基金属としては、通常程度の不純物を含む鉄の他、構造部材に用いられている炭素鋼、低合金鋼等を用いることができる。こうした炭素鋼、低合金鋼としては、例えば機械構造用炭素鋼(例えば、S−C材等)、ニッケルクロム鋼(例えば、SNC材等)、ニッケルモリブデン鋼(例えば、SNCM材等)、クロム鋼(例えば、SCr材等)、クロムモリブデン鋼(例えば、SCM材等)、マンガン鋼(例えば、SMn材等)、マンガンクロム鋼(例えば、SMnC材等)、バネ鋼(例えば、SUP材等)、高炭素クロム鋼(例えば、SUJ材等)等が非限定的に挙げられる。上記の様な鉄、炭素鋼、低合金鋼を鉄素地(マトリックス)として用い、上記の様な化合物を鉄基金属中に分散させることによって、これら鉄基金属が持つ特性に加えて、高い剛性を備えた鉄基高剛性材料が実現できたのである。
【0029】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0030】
【実施例】
鉄または鉄合金の溶湯に、周期律表第IVa族またはVa族の元素を含む化合物(硼化物、炭化物または窒化物)を構成する元素を添加し、最終の化学成分組成を下記表2に示す各種の鉄基高剛性材料を製造した。このとき、製造条件等を変えることによって、同一の化学成分組成でも様々な特性の各種鉄基高剛性材料とした(後記表3、4)。このとき、化合物を構成する元素を溶湯中に個別に添加し、化合物粒子を溶湯中で反応生成させる方法(前記特開平10−68048号に示した方法)についても実施した(後記表3、4のNo.39〜42)。
【0031】
【表2】
【0032】
得られた各鉄基高剛性材料について、成分組成(上記表1に示した種類)、化合物粒子の種類、化合物の体積分率Vf、共晶Vf0、酸素濃度、ヤング率、8μm以下の粒子の占める割合等を下記表3に示す。尚、上記体積分率Vfは、金属組織の断面観察において全化合物の面積率を求め、体積率として評価したものである。また、粒径については、化合物の最長の長さを化合物の粒径とした。更に、上記ヤング率については、上記材料から引張試験片を加工し、この引張試験片に歪ゲージを貼り付け、引張試験によって測定した応力−歪み曲線によって求めた。
【0033】
【表3】
【0034】
また上記各鉄基高剛性材料について、その特性(平均衝撃値、最小衝撃値、被削性)を調査した。上記平均衝撃値は、上記材料から衝撃試験片を加工し、常温でシャルピー衝撃試験を10回行ない、その平均値を求めたものである。また、被削性については、一定の切削条件で、要求される工具寿命にあたる時間で切削を行ない、その後切削工具の逃げ面摩耗量(工具摩耗)を目視し、下記の基準によって評価した。
◎:工具摩耗量も小さく、要求される工具寿命を超過しても問題なく切削を継続可能
○:要求される工具寿命は満足するが、工具摩耗量は上記◎のものと比較して大きく、継続した切削は難しい
×:要求される工具寿命を満足できない(要求される工具寿命にあたる切削時間前に欠けが発生するなどで、それ以上の切削が不能)
これらの結果を、製造条件(鋳造温度、液相線との温度差、鋳型の種類)と共に、下記表4に示す。
【0035】
【表4】
【0036】
これらの結果から明らかな様に、本発明で規定する要件を満足する実施例のものは、化合物を分散させていないマトリックスだけの鋼材のヤング率が約200GPaであるのに対して、ヤング率が210GPa以上の高剛性を有すると共に、優れた靭性を安定して発揮できることが分かる。これに対して、本発明で規定する要件のいずれかを欠く比較例のものでは、いずれかの特性が劣化している。尚、No.39〜42のものは、本発明者らが先に提案した方法によって製造したものであり、平均衝撃値(即ち、靭性)は比較的高い値が得られているのであるが、そのばらつきの点で本発明の実施例に及ばないものとなっている。
【0037】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されており、分散化合物の微細均一化を達成することによって、ヤング率が210GPa以上の高剛性を有すると共に、優れた靭性を安定して発揮することのできる鉄基高剛性材料が実現できた。
Claims (4)
- 鉄基金属中に鉄よりも剛性の高い化合物を分散した鉄基高剛性材料において、前記化合物は周期律表第IVa族またはVa族金属の硼化物、炭化物、窒化物またはそれらの複合化合物であって、前記鉄基金属と前記化合物との擬2元状態図において液相線温度が最低となる組成における前記化合物の体積分率をX(%)としたとき、前記鉄基高剛性材料中に占める前記化合物の体積分率が(X−5)〜(X+3)(%)の範囲内にあると共に、該化合物のうち粒径が8μm以下のものが全化合物中に占める割合が体積分率で80%以上であり、且つ前記鉄基高剛性材料中の酸素濃度が50ppm以下であると共に、10個以上の試験片によって行なう常温シャルピー衝撃試験の測定値の平均が110J/cm2以上で、前記測定値の最も低い値が前記平均値の50%以上であることを特徴とする鉄基高剛性材料。
- Siの含有量を[Si](質量%の意味、以下同じ)、Alの含有量を[Al]としたとき、これらが下記(1)式を満足するものである請求項1に記載の鉄基高剛性材料。
0.3%≦[Si]+0.5×[Al]≦6% …(1) - 請求項1または2に記載の鉄基高剛性材料を製造するに当たり、鉄基金属の溶湯中に、前記化合物を構成する元素を添加し、鋳造温度を前記擬2元状態図における(液相温度+20℃)〜(液相温度+150℃)として鋳造することを特徴とする鉄基高剛性材料の製造方法。
- 金型または水冷鋳型を用いて鋳造する請求項3に記載の製造方法。
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