以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図8Aを参照して本発明の好適な実施の形態のリソグラフィーシステム又は露光装置におけるグローバルアライメントで使用するアライメントマーク(位置検出用マーク)の一例を説明する。アライメントマークは、基板等の物体の位置を検出するためマークである。この実施の形態のアライメントマークFXYは、グローバルアライメントにおいてX方向の計測とY方向の計測を同時に行うことができよるように構成されている。
グローバルアライメントでは、図8Aに示されるウインドウX内のX方向計測用のマークFXを高倍率のスコープ(高倍率検出系又は高倍率観察系)で観察する。それと同時にウインドウY内のY方向計測用のマークFYを高倍率検出系で観察し、これにより高い分解能でアライメントマークFXYのX、Y方向の位置(座標)を検出する。
次に、図1及び図4を参照しながら、本発明の好適な実施の形態のグローバルアライメントを説明する。不図示の搬送機構によりウエハが図1に示すリソグラフィーシステムに供給される。そうすると、ウエハの外周位置とオリフラ(オリエンテーション・フラット)又はノッチと呼ばれる方向特定部(図4のN)の位置とに基づいて、メカニカルアライメント装置MAは、ウエハの大まかな位置を決定する。
次に、ウエハは、不図示のウエハ供給装置によってウエハステージSTGに搭載されたチャックCH上に載置され、その後、グローバルアライメントが行われてウエハWの位置及び各露光ショットの位置が正確に求められる。この実施の形態のグローバルアライメントでは、高い倍率のスコープを用いてウエハW上の複数のグローバルアライメントマークFXY1〜FXY4におけるX方向の計測マークFX1〜FX4及びY方向の計測マークFY1〜FY4を計測する。そして、基準位置からウエハWのX,Y方向のずれ及び回転成分、並びに、ショット配列の倍率成分を求める。
次に、図8Aに示されるアライメントマークFXYを、低倍率系及び高倍率系で同時に観察することができるアライメントスコープについて説明する。図1に示すウエハアライメント用の顕微鏡すなわちアライメントスコープSCは、低倍率系及び高倍率系でアライメントマークを同時に観察し、アライメントマークの位置を検出することができるように構成されている。
アライメントマークの照明光は、アライメントマーク照明光源LiからスコープSC内に導光され、ハーフミラーM1(又は偏光ビームスプリッタ)を通り、ウエハW上のアライメントマーク(例えば、図4のマークFXY1)を照明する。ウエハWからの反射光は、ハーフミラーM1,M2を通って、高倍率検出センサ(例えば、光電変換素子)S2に至る。同様に、ウエハWからの反射光は、ハーフミラーM1,M2を通り低倍率検出センサ(例えば、光電変換素子)S1にも至る。センサS1、S2で撮像された画像は、処理装置Pに提供され、この処理装置Pが所定の処理を実行することによりアライメントマークの位置が算出される。
アライメントマークの位置の計算は、低倍率系と高倍率系の2種類のセンサS1、S2のそれぞれについて行われる。低倍率系検出センサS1で光電変換された電気信号(画像信号)は、AD変換器AD1でアナログ信号からデジタル信号に変換された後、画像データとして画像メモリMEM1に記憶される。そして、演算器COM1は、メモリMEM1内の画像データに対してパターンマッチング処理等を実行しながらアライメントマークFXY(FX,FY)をサーチする。
パターンマッチング用のテンプレートは、図2Bに例示的に示されるように、例えば、8本の縦線と8本の横線からなる2次元パターンにより構成されうる。テンプレートマッチングでは、テンプレートと厳密に同一形状のマークだけでなく、標準的なマークに対して線幅等が異なるマークも検出できるように、マッチング処理のアルゴリズムが構成されている。すなわち、マークの検出アルゴリズムは、低倍率の視野内にテンプレートと線幅やマーク段差等の構造が異なるもののそれと類似した形状(検出すべき特徴部分が共通している形状)のマークが存在していても検出することができる。
また、2つのテンプレートを備え、例えば図2Bに示すような縦8本横8本の線を有することを共通の特徴とするマークと、縦6本横6本の線を有することを共通の特徴とするマーク(不図示)との2種類に分類されるマークをそれぞれ検出することもできる。更に、複数のテンプレートを備えて、その個数に対応する数の種類に分類されるマークをそれぞれ検出することもできる。
なお、アライメントマークの検出には、テンプレートマッチング或いはパターンマッチングの他、種々の方法を適用することができる。
高倍率系と低倍率系の反射光の違いに関しては、センサS1、S2における蓄積時間をそれぞれ調整することなどの方法により、共通の照明光源Liを使用することができる。
次に、図8A及び図8Bを参照して、高倍率系(M1,M2,S2)と低倍率系(M1,S1)とを同時に使用するマーク観察の原理を説明する。図8Aは、高倍率系(M1,M2,S2)の観察可能視野HFを例示的に示している。X方向用のパターンFX、Y方向用のパターンFYは、いずれもウインドウX、Yに対するずれが殆ど許されていない。
図8Bは、低倍率系(M1,S1)の観察可能視野MFを例示的に示している。低倍率系の視野MFは、高倍率系の視野HFより広い視野を有している。高倍率系、低倍率系で同時に観察を行いつつ、演算装置COM1は、低倍率系によるアライメントマークの観察結果に基づき、微小移動量dx,dyを算出する。当該微小移動量dx,dyは、ターゲットアライメントマークP1を高倍率系の視野HF内に入れるためにウエハWを移動させるべき移動量である。
次に、本発明の好適な実施の形態として、図2A及び図2Bに示すアライメントマークと図1に示すアライメントスコープSCを用いた高速なウエハアライメントを説明する。ハーフミラーM2を透過した光は、高倍率系のセンサS2に導光され、アライメントマークFXYの像をセンサS2の撮像面上に結像する。さらに、ハーフミラーM2で反射された光は、低倍率系のセンサS1に導光され、アライメントマークFXYの像を光電変換素子S1の撮像面上に結像する。
ここで、センサS1,S2にアライメントマークFXYの像を同時に結像させて、アライメントマークFXYを同時に観察することが好ましい。この理由を以下に説明する。低倍率系で求められる図8Bに示すずれ量dx,dyが許容範囲内であれば、高倍率系センサS2上には正確な位置計測が可能なアライメントマークFXYの像が結像していることになる。したがって、高倍率系センサS2を使ったアライメントマークFXYの位置検出結果は有効である。
許容範囲とは、図8Aに示す例では、ウインドウX、ウインドウYにそれぞれX方向用のパターンFX(8本の線で構成されるパターン)、Y方向用のパターン(8本の線で構成されるパターン)FYが入っていると判断されるずれ量である。したがって、低倍率系で求められたずれ量dx,dyが許容範囲内であれば最も高速に高倍率系での正しい検出結果(マークの位置)を得ることができる。逆に、低倍率系で求められたずれ量dx,dyが許容範囲外であれば、dx,dyだけステージSTGを微動させた後、高倍率系でマーク位置を再度検出すればよい。
次に、図2Aを参照しながら、低倍率系の視野MF内に同一又は類似の形状(検出すべき特徴部分が共通の形状)の複数のアライメントマークが存在する場合のマーク識別方法について説明する。ここでは、今回のリソグラフィー工程(今回の露光工程)において検出すべきアライメントマーク(すなわち、ターゲットアライメントマーク又は目標とするアライメントマーク)がP1であるものとして説明する。
今回のリソグラフィー工程の前のリソグラフィー工程においても、アライメントが実施されているとする(例えば、今回の露光工程が2回目以降の露光工程である)。例えば、L1,M1,N1,O1といった、古い工程で形成及び使用された同一形状のアライメントマークが今回のターゲットアライメントマークP1に隣接して配置されている場合である。或いは、L1,M1,N1,O1,P1は、アライメントマーク構造の最適化のために、それぞれ線幅と凹凸が異なるが類似形状(すなわち、検出すべき特徴部分が共通の形状)のマークである場合もありうる。
この実施の形態では、低倍率系の視野MFの中から今回のターゲットアライメントマークP1だけを探し出して、上記dx,dy(高倍率系で観察するための移動量)を求める。そのため、図2Bに示すように、アライメントマークFXYを高倍率で計測する上で影響が無い領域に、補助パターンCPa,CPb,CPc,CPdの全部又は一部を付加するか、又は、付加しないことで、ターゲットアライメントマークの識別を可能にしている。例えば、アライメントマークP1には、補助パターンを付加せず、アライメントマークO1には、右上に小型の正方形を付加する。
このように、アライメントマークL1,M1,N1,O1,P1の形成領域内のうち高倍率計測に影響の無い領域に、アライメントマークL1,M1,N1,O1,P1を相互に識別するための補助パターンを追加する。ここで、補助パターンは、デバイスパターン(例えば、回路パターン)を形成するチップ領域以外の領域、典型的にはチップ領域とチップ領域の間に形成することが好ましい。
なお、デバイスパターンの特徴部分(例えば、抽出可能な特徴を有する部分)との相対的な位置関係に基づいてターゲットアライメントマークを識別することも可能である。しかし、この場合、一般的にアライメントマークよりも相当に複雑なパターンを補助パターンとして検出する必要があり演算処理の負担が大きい。
また、この場合、補助パターンは、必然的に製造すべきデバイスのパターンの一部であるので、ターゲットアライメントマークの判定のためのテンプレートは、製造すべき個々のデバイスのパターンに依存する。
更に、この場合、例えば一群のアライメントマークの周辺のデバイスパターンが一様であって何ら特徴部分がないパターンである場合や周期的なパターンである場合などにおいては、補助パターンを決定することができない。すなわち、チップ領域のパターンを補助パターンとして使用することには多大な制約があり、好ましくない。
したがって、上記のように、補助パターンは、チップ領域以外の領域に意図的に形成することが好ましい。すなわち、補助パターンは、位置検出のためのマーク又はパターンの形成が許容されている領域にチップ領域内のパターンとして必然的に形成されるのでなく、アライメントマークの識別を主たる目的として形成することが好ましい。
次に、図2A及び図2Bを参照しながら、補助パターンを利用した複数のアライメントマークの判別方法について説明する。低倍率系(M1,S1)の視野MFの中に図2Aに示すような状態でアライメントマークが存在すると、低倍率用の演算器COM1によって5個のアライメントマークの位置がそれぞれ検出される。制御装置MCは、5箇所の検出位置のそれぞれについて、図2Bに示される補助パターンCPa,CPb,CPc,CPdの有無を判断する。
補助パターンの有無は、補助パターンを形成するための領域を対象として、例えば、テンプレートマッチングを実施すること、又は、コントラスト変化をヒストグラムなどによって分析する方法などによって判断することができる。この実施の形態では、補助パターンを形成するための領域はアライメントマークを形成するために定義された矩形領域の4隅である。
アライメントマークの中心Cから各補助パターンまでの距離は等距離でもよいし、互いに異なる距離でもよい。図2Bでは、中心Cを原点(基準位置)と仮定した時の補助パターンCPaの座標を(Xa,Ya)、補助パターンCPbの座標を(-Xb,Yb)、補助パターンCPcの座標を(Xc,-Yc)、補助パターンCPdの座標を(-Xd,-Yd)としている。このような座標情報は、露光処理に先立って、制御装置MCの内部メモリに読み込まれる。
この例では、各補助パターンが正方形であるが、補助パターンの形状は、正方形以外の形状(例えば、長方形、円形、多角形、模様、数字、記号、文字等)であってもよい。また、センサS1の視野MF内で観察可能であれば、アライメントマークと各補助パターンとの距離は特に制限されず、近くであっても遠くであってもよい。
制御装置MCは、露光処理に先立って、上記の座標情報の他、次の表1に示される情報を内部メモリ(例えば、RAM)に読み込み、その情報に基づいてターゲットアライメントマーク(ここでは、P1)を判別することができる。
ターゲットアライメントマークP1を識別するには、5箇所のアライメントマークの中から補助パターンの組み合わせが上の表1のP1に割り当られた組み合わせに一致するアライメントマークを探せばよい。この例のように、4箇所にそれぞれ補助パターンが存在するか否かによってターゲットアライメントマークを判別する場合、最大で16個のアライメントマークの中からターゲットアライメントマークを判別することができる。
次いで、図6及び図7を参照しながら本発明の好適な実施の形態のリソグラフィーシステム又は露光装置におけるグローバルアライメントの手順を説明する。なお、図6及び図7のフローチャートに示す処理は、制御装置MCによって制御される。
グローバルアライメントの概略的な手順は、図6のステップS101〜S107に示されている。
まず、ステップS101において、制御装置MCは、ステージ制御装置STCに指令を出して、アライメントスコープSCの視野内に図4のアライメントマークFXY1が入るようにウエハステージSTGを移動させる。ここで、典型的には、ステージ制御装置STCは、ステージ位置計測装置(例えば、レーザー干渉計)LPから提供されるステージSTGの位置情報を考慮しながらステージSTGを目標位置に移動させる。
なお、図4中のFXY1〜FXY4は、それぞれ図8Aに示すようなパターンで構成されているものとする。また、図2Aに示すように(図4では省略)、ターゲットアライメントマークFXY1〜FXY4(図2Aでは、P1)の各周囲には、検出すべき特徴部分がこれらと共通している1又は複数のアライメントマーク(図2Aでは、L1,M1,N1,O1)が存在する。
次いで、ステップS102において、制御装置MCは、処理装置P、アライメントスコープSC、照明光源Liに指令を出して、アライメントマークFXY1のFX1、FY1の位置を検出させる。FX1、FY1の位置(すなわち、アライメントマークのX方向及びY方向の位置)の検出は、FX1、FY1を観察することにより行われる。検出結果は、処理装置Pから制御装置MCに送られる。処理装置Pはアライメントマークの位置を検出する検出部として機能する。
ここで、ステップS102(及び後述のステップS104)における処理手順をそのフローチャートである図7を参照しながら具体的に説明する。ここでは、高倍率センサS2がX方向の位置計測のためのX計測高倍率センサと、Y方向の位置計測のためのY計測高倍率センサとで構成されているものとして説明する。この場合、X計測高倍率センサ及びY計測高倍率センサは、例えばラインセンサ等を含んで構成されうる。なお、高倍率センサS2は、例えばX方向計測用のマークFX1(FX)及びY方向計測用のマークFY1(FY)を同時に撮像するエリアセンサを含んで構成されてもよい。
この実施の形態では、ステップS110とステップS111とステップS112とを同時に行う。ステップS110では、高倍率センサS2によるX方向計測用のマークFX1(FX)の高倍率撮像を行う。ステップS111では、Y方向計測用のマークFY1(FY)の高倍率撮像を行う。ステップS112では、低倍率センサS1による低倍率撮像行う。なお、これらの撮像は、必ずしも同時に実施する必要はないが、同時に実施した方が全体的な処理時間を短縮することができる。
更に、この実施の形態では、撮像結果に基づいて、ステップS113とステップS114とステップS115とを並行して実施する。ステップS113では、高倍率でのマークFXの位置算出を行い、ステップS114では、マークFYの位置算出を行う。ステップS115では、低倍率でのターゲットアライメントマークFXY1(図8AのFXY)、それ以外のアライメントマーク及び補助パターンの位置の算出を行う。なお、高倍率でのマークFX及びFYの位置算出は、演算装置COM2により実施され、低倍率でのアライメントマークFXY1の位置算出は、演算装置COM1により実施される。
高倍率で撮像した画像には、ターゲットアライメントマークFXY1の画像が含まれない可能性がある。その場合には、ステップS113、ステップS114では、誤った位置(座標)がターゲットアライメントマークの位置として算出されるか、又は、位置の算出自体ができない。このような位置検出の失敗の原因は、例えば、メカニカルアライメント装置MAによるアライメントの不良等である。一方、低倍率系の視野MFは、このような誤差を許容するように設計されているので、ターゲットアライメントマークを撮像することができる。
ステップS115では、低倍率系(M1,S1)の視野MF内の全てのアライメントマークL1,M1,N1,O1,P1(ターゲットアライメントマークはP1)及び補助パターンCPa,CPb,CPc,CPdについて、X方向及びY方向の位置が算出される。
ステップS115に次いで、ステップS116では、制御装置MCは、ステップS115の算出結果及び表1に示す情報(制御装置MCに予め読み込まれた情報)に基づいて、複数のアライメントマークの中からターゲットアライメントマークP1を識別する。制御装置MCは、複数のアライメントマークの中からターゲットアライメントマークを識別する識別部として機能する。
ステップS116に次いで、ステップS117において、制御装置MCは、図8Bに示すように、ターゲットアライメントマークP1を高倍率センサS2の視野HFに移動させるためのウエハWの移動量(Fine計測用ずらし量)dx,dyを算出する。制御装置MCは、ターゲットアライメントマークの位置を算出する算出部としても機能する。
次いで、ステップS118において、制御装置MCは、ステップS117で算出した移動量dx,dyが許容範囲内であるか否かを判断する。ここで、許容範囲とは、ウエハWを移動させなくても高倍率センサS2を使ってターゲットアライメントマークP1の位置を検出することができるような位置ずれ量の範囲である。
判断の結果、移動量dx,dyが許容範囲であれば、制御装置MCは、そのまま処理をステップS124に進める。そして、制御装置MCは、ステップS113及びステップS114で算出したマークFX1の位置及びマークFY1の位置をターゲットアライメントマークFXY1(P1)のX方向及びY方向の位置として決定する。そして、制御装置MCは、ステップS103に進むる(メインルーチンに戻る)。
一方、判断の結果、移動量dx,dyが許容範囲外であれば、制御装置MCは、ステップS119において、ステージ制御装置STCに指令を出して、ウエハステージSTG(すなわち、ウエハW)を、ずれ量dx,dyを修正するように、微小移動させる。これにより、複数のアライメントマークのうちターゲットアライメントマークP1が高倍率センサS2の視野内に入る。
次いで、制御装置MCは、ステップS120、ステップS121において、高倍率センサS2によるX方向計測用のマークFX1(FX)の高倍率撮像及びY方向計測用のマークFY1(FY)の高倍率撮像を、好ましくは同時に、実施する。
次いで、制御装置MCは、ステップS122、ステップS123において、マークFXの位置算出及びマークFYの位置算出を並行して実施する。これにより、ターゲットアライメントマークFXY1のX方向及びY方向の位置が正確に算出(検出)される。
以上のように、この実施の形態では、アライメントマークを高倍率及び低倍率で同時に撮像することができるように構成されたアライメントスコープSCを設ける。これによりウエハWを停止させた状態で高倍率及び低倍率での撮像を好適には同時に実施する。そして、高倍率での撮像結果に基づいてアライメントマークの位置を検出するとともに、低倍率での撮像結果に基づいてターゲットアライメントマークを識別しその位置(及び位置ずれ量)を検出する。ただし、位置が検出されたアライメントマークは、ターゲットアライメントマークであるか否かは不明である。
ターゲットアライメントマークの位置に基づいて、高倍率で位置が検出されたアライメントマークがターゲットアライメントマークであるか否かを判定する。そして、高倍率で位置が検出されたアライメントマークがターゲットアライメントマークである場合には、高倍率での位置検出結果をターゲットアライメントマークの位置検出結果をして使用する。そうでない場合には、識別されたターゲットアライメントマークを高倍率で観察可能な位置にウエハWを移動させて、そのターゲットアライメントマークの位置を高倍率で検出する。
これにより、最初からターゲットアライメントマークが高倍率センサS2の視野HF内に入っており、最初からターゲットアライメントマークの位置が検出された場合には、1回の位置検出動作によりターゲットアライメントマークの位置を検出することができる。したがって、この実施の形態によれば、グローバルアライメントを高速化することができる。
更に、図6に戻って説明を続ける。ステップS102においてアライメントマークFXY1の位置が算出される。その後、制御装置MCは、ステージ制御装置STCに指令を出して、アライメントスコープSCの視野内に図4のアライメントマークFXY2が入るようにウエハステージSTGを移動させる。そして、制御装置MCは、アライメントマークFXY2について、ステップS102(図7)と同様の処理を実施することにより、アライメントマークFXY2のX方向及びY方向の位置を算出する。
2つのアライメントマークFXY1,FXY2の位置が検出されると、チャックCH上のウエハWの位置を概略的に求めることができる。そこで、この実施の形態では、アライメントマークFXY1,FXY2の位置検出結果に基づいて、他のアライメントマークFXY3(FX3,FY3),FXY4(FX4,FY4)を高倍率センサS2の視野HF内に移動させるための目標位置を算出する。
ここで、アライメントマークFXY3(FX3,FY3),FXY4(FX4,FY4)の目標位置は、例えば、次のようにして算出することができる。まず、2つのアライメントマークFXY1,FXY2のX方向及びY方向の位置に基づいて、X方向ずれ量(ShiftX),Y方向ずれ量(Shift Y)、回転成分θ、ウエハ倍率成分Magを求める。Shift X,Shift Y及びθは、ウエハWがチャックCHに載置された際のずれ量であり、メカニカルアライメントのオフセットである。Magは、ウエハW上のショットパターンの伸び量である。
これらの量が大きいと、第3、第4のアライメントマークFXY3、FXY4の設計上の位置に基づいて、それらをアライメントスコープSCの真下に移動させても、それらはアライメントスコープSCの高倍率系(M1,M2,S2)の視野内に入らない。
そこで、θ、Mag、ShiftX,Shift Yの量に基づいて、ウエハのショットレイアウトとステージ座標系とのずれを計算する。すなわち、ウエハW上の格子をステージSTGの格子に合わせる際の微小補正量を求める。この微小補正量によりアライメントマークFXY3(FX3,FY3),FXY4(FX4,FY4)の目標位置を補正する。そのことにより、低倍率センサS1を使うことなく、FXY3(FX3,FY3),FXY4(FX4,FY4)を高倍率センサS2の視野HF内に移動させることができる。
なお、θ成分の補正(例えば、チャックCH又はステージSTGによりウエハWを回転させる)を行うことによりθ成分のずれがない状態で第3、第4アライメントマークFXY3、FXY4を観察することができる。しかし、この場合、回転動作を伴うので全体的な処理時間が長くな。そこで、θ成分の補正を行わない方が処理時間の観点で有利である。
制御装置MCは、ステップS106において、アライメントマークFXY3(FX3,FY3)を上記の補正された目標位置にしたがってアライメントスコープSCの直下に移動させて、その位置を高倍率センサS2を用いて検出する。制御装置MCは、ステップS107において、アライメントマークFXY4(FX4,FY4)を上記の補正された目標位置にしたがってアライメントスコープSCの直下に移動させて、そのの位置を用いて検出する。これによりグローバルアライメントが完了する。
なお、図1に示す構成例は、オフアクシスアライメント方式のリソグラフィーシステム又は露光装置であるが、低倍率及び高倍率でアライメントマークを同時に観察することが可能であれば、あらゆるアライメント方式を採用することができる。すなわち、本発明は、例えば、投影光学系LENSを通してアライメントマークを観察するTTLアライメント方式や、レチクルRを通してアライメントマークを観察するTTRアライメント方式にも適用することができる。
また、グローバルアライメントにおいて検出すべきアライメントマークの個数や、低倍率系の視野に入りうるアライメントマークの個数は特に限定されない。
また、視野内に入る複数のアライメントマークの中からターゲットアライメントマークを識別する方法は、上記のような低倍率系と高倍率系での同時観察が可能なリソグラフーシステム或いは露光装置に適用することが好ましい。しかし、低倍率系での観察結果に基づいて高倍率系でアライメントマークを観察するタイプにも適用することができる。具体的には、本発明は、低倍率系でアライメントマークを観察してターゲットアライメントマークを識別及び位置検出する(S112、S115、S116)。そして、ずらし量dx、dyを算出し(S117)、ステージSTGをdx,dyだけ移動させる(S119)。そして、高倍率系でターゲットアライメントマークの位置を検出(S120,S121,S121,S122)するようなシーケンシャルな処理にも適用することができる。
この場合、シーケンシャルな処理の実行により、グローバルアライメントに要する時間は長くなる。しかし、低倍率及び高倍率での同時計測ができないような従来のようなハードウエア構成であっても、視野内に複数のアライメントマークが存在する場合にその中からターゲットアライメントマークを識別することができる。
アライメントマークを識別するための補助パターンは、図2Bに示す例に限定されず、アライメントマークを識別することができる限り、あらゆる形状、配置を採用することができる。例えば、図2Cに示すように、アライメントマークごとに異なる補助パターン(識別マーク)を使用することもできるし、図2Dに示すのように、アライメントマークを形成するために定義された領域DAの外側に補助パターン(識別マーク)IPを配置し得る。その場合、低倍率の視野内に存在する複数のアライメントマークの位置を算出する。その後に、それぞれの位置(例えば、中心位置)から予め定められた位置関係にある補助パターンIPの形状を各補助パターン用のテンプレートを使ったテンプレートマッチングなどの画像処理によって検出する。それにより、ターゲットアライメントマークを識別することができる。
更に、図2Eのように、X方向計測用マークFX及びY方向計測用マークFYからなるアライメントマークFXYにおいて、各アライメントマークの一部を他のアライメントマークと異なる態様かつ計測に影響しないよう変形させる。これによりアライメントマークを識別することも可能である。この場合、変形した部分(図2Eにおいては、突出した部分)が補助パターンであると言える。識別の方法としては、該当する部分の長さ等の寸法を計るなど、様々な方法を適用可能である。
[第2の実施の形態]
同一視野内の複数のアライメントマークからターゲットアライメントマークを識別する他の実施の形態を説明する。なお、基本的なハードウエア構成、アライメントマーク及び計測のフローは、第1の実施の形態と同様であるので、ここではそれらの説明を省略し、相違点のみ説明する。
図3Aに示すように、ターゲットアライメントマークP1が低倍率センサS1の視野MFから外れている場合、該ターゲットアライメントマークP1の位置検出は、通常は不可能である。しかし、ターゲットアライメントマークP1以外のアライメントマークL1,M1,N1が視野MF内に存在する。アライメントマークP1とアライメントマークL1,M1,N1のそれぞれとの位置関係が既知であるとする。そうすれば、ステップS117において、Fine用ずらし量dx,dy或いはアライメントマークP1の位置の算出が可能である。
例えば、アライメントマークL1をその補助パターンによって識別でき、その位置が検出できたとすると、アライメントマークL1とターゲットアライメントマークP1とのX、Y方向の相対距離は、Kx,Kyである。視野MF内で検出されたアライメントマークL1の視野中心FCからのずれ量がMX,MYであったとすると、高倍率系によるFine計測のためにステージSTGを移動させるべき量dx,dyは、dx=Mx+Kx,dy=My+Kyの式によって算出される。
このようにターゲットアライメントマークが視野内にない場合やターゲットアライメントマークを識別できない場合であっても、その周辺のアライメントマークを識別しその位置を検出することができるとする。そうすれば、それとターゲットマークとの既知の位置関係に基づいて、ターゲットマークの位置を算出し、そのターゲットマークを高倍率系の視野HFに移動させて高倍率で位置を検出することができる。
[第3の実施の形態]
同一視野内の複数のアライメントマークからターゲットマークを識別する他の実施の形態を説明する。なお、基本的なハードウエア構成、アライメントマーク及び計測のフローは、第1の実施の形態と同様なので、それらについての詳細は省略し、相違点のみを説明する。
通常、ウエハはロット単位で処理されることが多く、各ロットは同一の製造装置で処理される。メカニカルアライメントの再現性が高いとする。1枚目のウエハについて算出されたShift X, Shift Y及びθは、メカニカルアライメントのオフセットである。そうすると、2枚目のウエハは予めShift X, Shift Y、θだけずらしてステージSTG上にウエハを置くことによって、メカニカルアライメントのオフセット誤差は0に近づく。
よって、同一視野内に複数のアライメントマークが観察されても、ターゲットアライメントマークは視野の中心で撮像されることになる。そこで、図3Bに示されるように、視野MF内でアライメントマークを探すためのサーチ範囲SAを視野MFの中心付近に限定し、そのサーチ範囲SA外のアライメントマークを探さないようにすることが好ましい。ただし、サーチ範囲SAは、高倍率の視野HFより大き目であって、かつ、許容するメカニカルアライメント誤差の範囲内で必ずターゲットアライメントマークを観察できる範囲とする。これにより、ターゲットマークを探すための画像処理に要する時間が短縮される。
勿論、メカニカルアライメント精度及び再現性が高く、Shift X、Shift Yの量が高倍率での検出の際の許容範囲内に入るのであれば、低倍率系でのターゲットアライメントマークの位置検出及びそれに基づくウエハの移動は省略することができる。
[第4の実施の形態]
同一視野内のアライメントマークからターゲットアライメントマークを識別する他の実施の形態を説明する。第1〜第3の実施の形態では、ターゲットアライメントマークに補助パターンを付加し、補助パターンを利用してターゲットアライメントマークを判別する。第4の実施の形態は、補助パターンを利用することなく、視野内に存在する複数のアライメントマークからターゲットアライメントマークを判別する方法を提供する。なお、基本的なハードウエア構成、アライメントマーク及び計測のフローは、第1の実施の形態と同様なので、それらについての詳細は省略し、相違点のみを説明する。
図3Cに示す例では、ターゲットアライメントマークP1とそれ以外の複数のアライメントマークL1,M1,N1,O1が低倍率の視野MF内に存在する。ここで、図3Cに示す例では、アライメントマーク間の距離が視野MF内で相互に相違するように、それぞれのアライメントマークの位置が決定されている。すなわち、図3Cに示す例では、SPX1,SPX2,SPY1,SPY2,SPY3を相互に異なる長さとして設計している。
複数のアライメントマークのうち少なくとも一部の間の距離が検出されればターゲットアライメントマークの位置を算出することができる。例えば、視野MF内で2つ以上のアライメントマークの位置を検出することができれば、ステップS116において、それらの相対的な位置関係に基づいてそれらのアライメントマークを識別する。ステップS117において、識別したアライメントマークとターゲットアライメントマークとの既知の位置関係に基づいてターゲットアライメントマークの位置(及び必要な移動量dx,dy)を検出することができる。
このようにしてターゲットアライメントマーク(例えば、P1)の位置が検出されると、そのターゲットアライメントマークを高倍率で観察するために必要な移動量dx,dyを算出する。そして、その移動量にしたがってステージSTGを移動させてそのターゲットアライメントマークを高倍率で観察して位置を検出することができる。
[第5の実施の形態]
同一視野内の複数のアライメントマークからターゲットマークを識別する他の実施の形態を説明する。第5の実施の形態は、補助パターンを用いることなく、かつ、複数のアライメントマーク間の距離を異ならせることなく、視野内に存在する複数のアライメントマークの中からターゲットマークを識別する方法を説明する。なお、基本的なハードウエア構成、アライメントマーク及び計測のフローは、第1の実施の形態と同様なので、それらについての詳細は省略し、相違点のみを説明する。
本実施の形態では、図3Dに示すように、アライメントマークL1〜Q1の少なくとも一部が観察視野内(MF内)に存在する場合、観察視野MF内で検出されるアライメントマークの位置と個数に基づいて、ターゲットアライメントマークの位置を検出する。以下、アライメントマークL1〜Q1のうち、ターゲットアライメントマークをP1として説明する。
まず、図3Dに示すように、ターゲットアライメントマークP1を含めて全てのアライメントマークL1〜Q1が視野MF内に存在する場合について考える。この場合は、アライメントマークL1〜Q1の集合体におけるターゲットアライメントマークP1の既知の位置(ここでは、第2行の第2列)に基づいて、ターゲットアライメントマークP1を識別するとともに、その位置を検出することができる。
次に、視野MF内において全てのアライメントマークのうち一部のアライメントマークのみが検出される場合も含め、図3Eを参照しながらターゲットマークを推定(決定)する方法を述べる。ここでは、視野MFの左下の頂点を座標系の原点(0,0)として説明する。この場合、視野MFは、座標件の第1象現である。
また、視野MFのx方向のサイズをAx、y方向のサイズをAyとし、アライメントマークのx方向の間隔をMx、y方向の間隔をMyとする。また、アライメントマークは、Nx(列数)×Ny(行数)個が2次元に配列されており、次の条件を満たすものとする。
Ax>Mx*(Nx−1)
Ay>My*(Ny−1)
ここでは、2次元に配列されたアライメントマーク群の先頭をアライメントマーク群の左下のアライメントマークと定義する。そして、視野MF内で検出された複数のアライメントマーク座標を(Xij,Yij){i=1,2,・・・,k、j=1,2,・・・,l、k≦Nx、l≦Ny}とする。
以下、上記の定義の下で、ターゲットマークの位置(座標)及びターゲットマークへの移動量(ずれ量)を決定する方法を述べる。なお、以下では、一例として、Y方向におけるアライメントマークの検出個数(視野内で位置を検出することができた個数)と位置(座標)に基づいてターゲットマークP1を識別する方法を説明する。
視野MF内において検出することができたアライメントマークの個数がl(<Ny)である場合は、y方向に並んでいるNy個のアライメントマークの上部又は下部が視野MFからはみ出している。なお、l=Nyである場合には、y方向へのアライメントマークのはみ出しはない。
最初に、アライメントマーク群が視野MF内において上方、下方のいずれの方向に移動しているかを判定する。この判定は、例えば次の方法で行うことができる。まず、検出できたアライメントマークについて、y方向における平均位置Meanyを求める。
次いで、Meanyと視野MFの中心Ayc=Ay/2とを比較し、Meany>Aycならば上方へ移動、Meany<Aycならば下方に、視野MF内においてアライメントマーク群が移動していると判断される。
次いで、アライメントマーク群の先頭座標を計算する。前述のように、ここでは、先頭座標は、y方向の最も下側、x方向の最も左側のアライメントマークの座標とする。上記の比較結果からアライメントマーク群が視野MF内において上方へ移動している判断されたとする。そうすると、先頭のアライメントマークの位置Topyは、検出されたアライメントマーク位置のうちy座標が最小のアライメントマーク位置Miny=Min(y1j{j=1,2,・・・,l})である。
一方、アライメントマーク群が視野MF内において下方に移動している判断されたならば、先頭のアライメントマークは視野MFからはみ出している可能性がある。検出されたアライメントマーク位置の中でy座標が最大のアライメントマークMaxy=Max(y1j{j=1,2,・・・,l})は、アライメントマーク群の左上隅のアライメントマークの位置である。よって、Maxy−My*(Ny−1)で計算される座標が先頭のアライメントマークの位置である。x方向に関しても同様の演算で先頭のアライメントマーク位置を決定し、アライメントマーク群の左下隅にある先頭アライメントマークの座標を決定することができる。
以上を整理すると、次の条件式にしたがって先頭のアライメントマークの座標を決定することができる。
If(Meanx≧Axc)
Topx=Min(xi1{i=1,2,・・・,k})
If(Meanx<Axc)
Topx=Max(xi1{i=1,2,・・・,k})−Mx*(Nx−1)
If(Meany≧Ayc)
Topy=Min(y1j{j=1,2,・・・,l})
If(Meany<Ayc)
Topy=Max(y1j{j=1,2,・・・,l})−My*(Ny−1)
次いで、先頭のアライメントマーク座標(Topx,Topy)に基づいてターゲットマーク座標を推定する。ターゲットアライメントマークと先頭アライメントマークの相対距離(Tdx,Tdy)は既知である。よって、次の演算によってターゲットアライメントマーク座標(Tx,Ty)の位置が算出される。
Tx=Topx+Tdx
Ty=Topy+Tdy
最後に、次の式にしたがって、視野MF中心からターゲットアライメントマークまでの距離を求め、ターゲットアライメントマークの中心を高倍率系の視野HFの中心で観察するために必要なステージSTGの移動量(dx,dy)を算出する。
dx=Ax/2−Tx
dy=Ay/2−Ty
極端な場合、アライメントマークが視野MF内において1個だけ検出された場合でも、アライメントマーク群がどちらの方向に移動したかを判断し、視野MF内に存在しないターゲットアライメントマークの座標及び必要なステージ移動量を決定することができる。もちろん全てのアライメントマークの位置が検出された場合も、上記の方法にしたがって、ターゲットアライメントマークの座標及び必要なステージ移動量を決定することができる。
具体的に、図3Eの例について説明する。図3Eの例では、Nx=2,Ny=3である。6個のアライメントマーク群は視野MF内において右下方向に移動している。位置を検出することができるアライメントマークはL1,O1であり、ターゲットアライメントマークはP1とする。検出できたアライメントマークの座標の平均値Meanx,Meanyを視野中心Axc,Ayc比較すると、Meanx>Axc,Meany<Aycである。
Meanx>Axcであるので、検出できているアライメントマークのx座標の最小値Minxを選択し、Topx=Minxとする。
また、Meany>Aycであるので、検出できているアライメントマークのy座標の最大値を選択し、Topy=Maxy−My*(3−1)とする。
6個のアライメントマーク群の先頭のアライメントマークとターゲットアライメントマークP1との距離Tdx,Tdyは既知なので、ターゲットアライメントマークP1の座標(Tx,Ty)を次式にしたがって計算することができる。
Tx=Topx+Tdx
Ty=Top+Tdy
そして、ターゲットアライメントマークP1を視野MF(及びHF)の視野中心へ移動させるための移動距離を次式にしたがって計算することができる。
dx=Ax/2・Tx
dy=Ay/2・Ty
このように、視野内においてターゲットマークを特定できない場合であっても、検出されたアライメントマークの位置と個数から全体のアライメントマークの個数及びアライメントマーク群におけるターゲットアライメントマークの相対位置が既知であるとする。そうすれば、ターゲットマークの位置を検出することができ、高倍率での検出するためにステージSTGを移動させる際の移動量dx,dyを算出することができる。この移動量にしたがってステージSTGを移動させることにより、高倍率系の視野HF内にターゲットアライメントマークを移動させ、その位置を高倍率で検出することができる。
以上のように、本実施の形態によれば、視野MF内において検出されたアライメントマークの個数と位置に基づいて、ステップS117において、ターゲットアライメントマークの位置を検出する。すなわち、アライメントマークの集合体におけるターゲットアライメントマークの既知に相対位置を考慮して、ターゲットアライメントマークの位置を検出する。そして、そのターゲットアライメントマークを高倍率で観察するために必要な移動量dx,dyを算出し、その移動量にしたがってステージSTGを移動させてそのターゲットアライメントマークを高倍率で観察して位置を検出することができる。
[第6の実施の形態]
上記のようなアライメントマークを識別するための補助パターンは、典型的には、レチクルRに形成されたパターンをウエハ上に転写することによって形成することができる。この実施の形態では、レチクル以外による補助パターンの転写方法を提供する。
図2Aに示すように、半導体製造の各工程毎にアライメントマーク及び補助パターンをレチクルRに描画し、そのレチクルRを用いてアライメントマーク及び補助パターンをウエハに露光することは、レチクルデザインの制約になる。そこで、露光装置の機能を利用して補助パターンをウエハに転写することが好ましい。この場合、レチクルRに描画すべきマーク或いはパターンは、アライメントマーク(及びデバイスパターン)のみである。
図5Aは、本発明の好適な実施の形態の露光装置の概略構成を示す図である。なお、図1と共通する構成要素には、共通の符号が付されている。また、図5Aでは、アライメントスコープSC、処理装置P、照明光源Li、メカニカルアライメント装置MAが作図の簡略化のために省略されている。
グローバルアライメントが終了すると、露光装置は、ステップアンドスキャン露光、あるいはステップアンドリピート露光を行って、レチクルR上のパターンをウエハW上に転写する。その際、幾つかのアライメントマークFXYも同時に転写される。その後、露光装置は、アライメントマークFXYの定義領域内又はその周囲に補助パターンを付加する工程を実施する。
図5Aに示されるレチクルR面に置かれている基準プレートPLには、図5Bのように補助パターン形成用のパターンLM,MM,NM,OMが予め形成されている。そして、マスキングブレードMSを駆動することにより、照明系ILからの露光光が基準プレートPLの特定の領域にだけ照射されるようにする。レチクルR及び基準プレートPLを載置されたレチクルステージ(マスクを保持する保持部)RSTGは、位置検出装置(例えば、干渉計)によってその位置が正確に測定されながら、不図示のリニアモータによって駆動される。そして、基準プレートPL上の該当するパターンが露光用の領域内に移動させられる。ウエハWが載置されたステージ(物体を保持する保持部)STGは、ウエハW上のアライメントマークを形成すべき位置がブレードMSを通過した露光光による露光領域に一致するようにウエハWを移動させる。
例えば、図2Aに示すアライメントマークO1及びその補助パターンを形成する例を説明する。まず、デバイスパターンを投影露光する際に、デバイスパターンと共にアライメントマークO1に対応するパターン(これらは、共にレチクルRに形成されている)をウエハWに転写する。
次いで、アライメントマークO1を識別するための補助パターンを形成するための基準プレートPL上のパターンOMをウエハWの所定位置(ここでは、アライメントパターンO1の定義領域内)に転写する。その際、図5Cに示されるように、ブレードMSは基準プレートPLの領域OMだけを照明するように位置が制御される。
アライメントマークL1,M1,N1,P1用の補助パターンも同様に、対応するデバイスパターン及びアライメントマークL1,M1,N1,P1をそれそれ転写する都度、その後に、マスクパターンLM,MM,NMをそれぞれ転写すればよい。
更に、基準プレートPL上に複数種類の補助パターン用のマスクパターンを準備する代わりに、補助パターン用のマスクパターンを1つだけ準備する。そして、アライメントマークの中心を基準として図2Bに示されるCPa,CPb,CPc,CPdの位置に、そのマスクパターンを転写してもよい。これは、例えば、ブレードMSを図5BのマスクパターンOMの領域だけを照明するように位置決めし、CPa,CPb,CPc,CPdの位置にマスクパターンOMが転写されるように、ウエハステージSTGの位置を制御すればよい。
補助パターン用のマスクパターンは、図5Bに示す形状に限定されず、例えば、図2C、図2Dに例示的に示すように、四角形、十字形、♯形状の補助パターンを転写することができるように構成されてもよい。或いは、補助パターン用のマスクパターンは、図2Eに例示的に示すようにアライメントマークの一部を延長させて、延長部分を補助パターンとするように構成されてもよい。
これらの補助パターンの転写動作は、リソグラフィーシステムのジョブの設定によって制御することができる。ジョブには、アライメントマークの露光の際、その後又は前に、どのタイプの補助パターンを転写するかが設定され、その設定に基づいて、ブレードMS、ウエハステージSTGの駆動位置が制御装置MCによって制御されうる。
[デバイス製造方法]
以下、上記の実施の形態により例示的に説明された本発明の露光装置の適用例としてデバイス製造方法を説明する。
図9は、半導体デバイスの全体的な製造プロセスのフローを示す図である。ステップ1(回路設計)では半導体デバイスの回路設計を行なう。ステップ2(マスク作製)では設計した回路パターンに基づいてマスクを作製する。一方、ステップ3(ウエハ製造)ではシリコン等の材料を用いてウエハを製造する。
ステップ4(ウエハプロセス)は前工程と呼ばれ、上記のマスクとウエハを用いて、リソグラフィー技術によってウエハ上に実際の回路を形成する。次のステップ5(組み立て)は後工程と呼ばれ、ステップ4によって作製されたウエハを用いて半導体チップ化する工程であり、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)、パッケージング工程(チップ封入)等の組立て工程を含む。
ステップ6(検査)ではステップ5で作製された半導体デバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行なう。こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、これを出荷(ステップ7)する。
図10は、上記ウエハプロセスの詳細なフローを示す図である。ステップ11(酸化)ではウエハの表面を酸化させる。ステップ12(CVD)ではウエハ表面に絶縁膜を成膜する。ステップ13(電極形成)ではウエハ上に電極を蒸着によって形成する。ステップ14(イオン打込み)ではウエハにイオンを打ち込む。ステップ15(レジスト処理)ではウエハに感光剤を塗布する。
ステップ16(露光)では上記の露光装置によって回路パターン(デバイスパターン)をウエハに転写する。この際、回路パターンとともにチップ領域間又はスクライブラインに、アライメントマーク(位置検出用マーク)及び補助パターンが転写される。ここで、補助パターンは、露光装置に備えられた補助パターン用マスクを使ってウエハに転写されてもよい。
ステップ17(現像)では露光したウエハを現像する。ステップ18(エッチング)では現像したレジスト像以外の部分を削り取る。ステップ19(レジスト剥離)ではエッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。これらのステップを繰り返し行なうことによって、ウエハ上に多重に回路パターンを形成する。
以上のように、本発明の好適な実施の形態によれば、複数のアライメントマーク(位置検出用マーク)の中から目的とするアライメントマークを識別し、及び/又は、その位置を検出することができる。ここで、目的とするアライメントマークは、例えば、補助マークを利用して識別することができる。補助マークは、位置検出のためのマーク又はパターンの形成が許容されている領域、例えば、チップ領域とチップ領域の間の領域であることが好ましい。補助マークは、例えば、原版をウエハに投影することにより、デバイスパターン及びアライメントマークと共にウエハに転写されてもよいし、露光装置に設けられた補助パターン用のマスクを使ってウエハに転写されてもよい。後者によれば、マスク又はレチクル等の原版を作成する際に補助パターンを形成する必要がなく、原版作製時の制約が軽減される。
目的とするアライメントマークは、複数のアライメントマーク間の距離を異ならせ、観察時にアライメントマーク間の距離を検出することによっても識別することができる。目的とするアライメントマークがアライメントスコープ等の観察装置の視野内に入っていない場合、アライメントマーク間の距離に基づいて複数のアライメントマークのいずれかを識別するとともにその位置を検出する。そうすることができれば、その位置に対して相対的な位置が既知である、目標とするアライメントマークの位置を検出することができる。
或いは、目的とするアライメントマークは、観察される複数のアライメントマークの集合体の配置に基づいて識別することもできる。すなわち、集合体中における、目的とするアライメントマークの位置は既知であるので、集合体の観察が可能であれば、目的とするアライメントマークを識別し、その位置を検出することができる。
或いは、目的とするアライメントマークの位置は、観察系の視野内に存在するアライメントマークの位置を検出し、位置が検出された位置検出マークの個数と該視野内における検出位置に基づいて算出することもできる。
このようなアライメントマークの識別方法は、グローバルアライメントの他、ダイバイダイアライメントにも適用することができる。
更に、アライメントマークを高倍率系と低倍率形で同時に観察し、低倍率系での観察結果が、高倍率系の視野内に目的とするアライメントマークが観察可能な状態で入っていることを示しているとする。その場合には、高倍率系による一回目の位置検出結果を採用する。そうでない場合には、低倍率系による観察結果に基づいてウエハ又は高倍率系を移動させ、高倍率系の視野内に目的とするアライメントマークを入れてその位置を高精度に検出することが好ましい。これにより、グローバルアライメント等のアライメントを高速化し、高いスループットを達成することができる。