JP4037723B2 - 熱式流量計 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱式流量計に関し、特に流路内を流れる気体などの被計測流体の流れによる温度分布の変化をフローセンサにより検出し、その温度分布の変化に基づいて流体流量を計測する熱式流量計に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の熱式流量計では、流路内を流れる気体などの被計測流体に対して所定の温度分布をヒータで発生させ、その流体の流れに応じて変化する温度分布を温度センサで検出し、その検出出力から流体の流量を計測している。
図6は熱式流量計の構成例を示す正面図および側面図である。この熱式流量計は、流体の流速に応じた流速信号を検出する検出器2と、この検出器2で検出された流速信号から流体の流量を算出し流量信号として出力する変換器1とから構成されている。
【0003】
検出器2は、円筒形状をなし、上端側が変換器1と接続されている。また、下端側は管3の上部外側から下方向に流路3A内に挿入されて、その先端に配置されたフローセンサ20で、流路3A内の流体の流れに応じて変化する温度分布を検出出力する。
変換器1では、フローセンサ20で検出された温度分布から流体流速を算出し、その流体流速に基づき流路3A内を流れる流体の流量を算出する。
【0004】
温度分布の変化を検出するフローセンサとしては、マイクロマシンニング技術を用いて製造したマイクロフローセンサが多く用いられる。図7は一般的なフローセンサの構成例であり、図7(a)は斜視図、図7(b)はA−A断面図である。
このフローセンサ40は、一辺が2mm以下のシリコンチップなどの基材からなる基台50の表面に、ヒータ61、上流側温度センサ62、下流側温度センサ63、周囲温度センサ64および電極60を、白金などのパターンを用いて薄膜形成し、絶縁膜層52で覆ったものである。
【0005】
ヒータ61は基台50の中央に配置され、その流体の流れ方向に対してヒータ61の上流側に上流側温度センサ62が配置され、反対側の下流側に下流側温度センサ63が配置されている。また、周囲温度センサ64は、基台50の上流側周辺部に配置されている。
基台50の中央部は、異方性エッチングなどの工程により基材の一部が除去されてキャビティ(凹部空間)54が形成されており、ヒータ61、上流側温度センサ62、下流側温度センサ63は基台50から熱的に遮断されたダイヤフラム51上に形成されている。また、ダイヤフラム51には、流体がキャビティ54内にも流通するよう、その厚さ方向に貫通する通気孔53が多数形成されている。
【0006】
フローセンサ40の動作原理は、周囲温度センサ64で計測された流体温度より一定温度、例えば数10℃だけ高くなるようにヒータ61で流体を熱して所定の温度分布を発生させ、その温度分布を上流側温度センサ62および下流側温度センサ63で計測することにより、流体流量を計測するものである。
流体が静止している場合、上流側温度センサ62および下流側温度センサ63で得られる温度分布は対称となるが、流体が流れている場合、その対称性が崩れ、上流側温度センサ62に比べて下流側温度センサ63で得られる温度が高くなる。この温度差をブリッジ回路で検出することにより、流体の熱伝導率などの物性値に基づき流体流速が得られる。
【0007】
なお、上述した従来技術は、出願人が出願時点で知る限りにおいて文献公知ではない。また、出願人は、本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を出願時までに発見するには至らなかった。
【特許文献1】
特開平2−120620号公報(第1−2頁、第2図)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このような熱式流量計では、フローセンサにおいて、基台の上流側周辺部に配置した周囲温度センサで計測された流体温度を基準とし、その流体温度に対して一定温度だけ高くなるようヒータで流体を熱し、その温度分布の変化により流体の流速を検出しているため、より高い精度で流体流量を計測する場合には、この周囲温度センサで流体温度を正確に計測する必要がある。これは、計測した流体温度に誤差が生じれば、その分だけヒータの加熱制御に誤差が生じ、ヒータの周囲に発生する温度分布自体が変化し、これが流体流速による温度分布の変化として検出されるからである。
【0009】
しかしながら、フローセンサは、直射日光や寒気にさらされる配管など、熱的影響を受けやすい屋外の設備に設置されることもある。このような過酷な環境かでは、周囲温度センサが配置された基台に対する外部からの熱的影響に、周囲温度センサで検出される流体温度が左右されるという問題点があった。
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、フローセンサの基台を介した外部からの熱的影響に左右されることなく、流体温度を正確に計測できる熱式流量計を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明にかかる熱式流量計は、基台から熱的に遮断された構造で基台表面に形成されたダイヤフラムと、そのダイヤフラム上に形成されて所定の温度分布を発生させるヒータと、ダイヤフラム上であって、かつヒータの上流側および下流側にそれぞれ形成されて、流体の流速に応じて変化する温度分布を抵抗値の変化として検出する上流側温度センサおよび下流側温度センサとを有するフローセンサを用いて、流路内を流れる被計測流体の温度分布を検出する検出器と、ヒータを駆動して流体を加熱するとともに、上流側温度センサおよび下流側温度センサを駆動して検出された温度分布に基づいて流体の流量を算出する流体流量算出手段と、これら上流側温度センサおよび下流側温度センサの直列接続分の抵抗値に基づき流体の温度を算出する流体温度算出手段とを有する変換器とを備えている。
【0011】
流量計測時に加熱されたヒータからの熱的影響を低減するため、変換器に、上流側温度センサおよび下流側温度センサの抵抗値を検出する際、少なくともその検出の開始から終了までの期間にわたってヒータの駆動を停止するヒータ制御手段を設けてもよく、流速センサの抵抗値を検出する際、少なくともその検出開始より所定のクーリング期間だけ前の時点から検出の終了までの期間にわたってヒータの駆動を停止するヒータ制御手段を設けてもよい。
また、流量計測時に加熱された上流側温度センサおよび下流側温度センサ自体からの熱的影響を低減するため、変換器に、流速センサの抵抗値を検出する際、少なくともその検出の開始より所定のクーリング期間から検出の開始までの期間にわたって上流側温度センサおよび下流側温度センサの駆動を停止するセンサ制御手段を設けてもよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施の形態にかかる熱式流量計の制御系の構成を示すブロック図である。
この熱式流量計は、流路内を流れる被計測流体による温度分布の変化をフローセンサにより検出する検出器2と、このフローセンサで検出された温度分布の変化に基づいて流体の流量を算出し、流量信号16としてコントローラなどの上位装置(図示せず)へ送信する変換器1とから構成されている。なお、機械系の構成については、前述した図6の熱式流量計と同じであり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0014】
検出器2には、前述の図7で説明したフローセンサ40と同等のフローセンサ20が設けられている。このフローセンサ20は、図2に示すように、フローセンサ40と違い、周囲温度センサ64が設けられていない点にある。すなわち本実施の形態では、基台50に設けられた周囲温度センサ64に代えて、ダイヤフラム51上に設けられた上流側温度センサ62や下流側温度センサ63を兼用することにより、被計測流体の温度を測定するようにしている。ここでは、ヒータ61が図1のヒータ20Aに相当し、上流側温度センサ62および下流側温度センサ63が流速センサ20Bに相当する。
【0015】
一方、変換器1には、センサインターフェース部(以下、センサI/F部という)11、記憶部13、演算処理部14、および通信インターフェース部(以下、通信I/F部という)15が設けられている。
センサI/F部11には、ヒータ駆動手段11A、センサ駆動手段11Bおよびセンサ検出手段11Cが設けられている。
ヒータ駆動手段11Aは、演算処理部14からのヒータ制御信号12Aに基づき、フローセンサ20のヒータ20Aに対して電源を供給する回路部である。センサ駆動手段11Bは、演算処理部14からのセンサ制御信号12Bに基づき、フローセンサ20の流速センサ20Bに対して電源を供給する回路部である。センサ検出手段11Cは、流速センサ20Bを用いたブリッジ回路を構成することにより、ヒータ20Aで加熱された流体の温度分布の変化を検出し、その検出出力を流体流速に応じた流速信号12Cとして演算処理部14へ出力する回路部である。
【0016】
記憶部13は、各種データを記憶するメモリなどの記憶装置からなり、流速センサ20Bとして用いられる白金などの金属の抵抗値と温度との関係を示す温度抵抗係数など、演算処理部14での演算処理に用いる各種係数を含む係数データ13Aを予め記憶している。
流速センサ20Bの20℃における基準抵抗値をR20、抵抗温度係数の1次係数をα、抵抗温度係数の2次係数をβとした場合、温度T℃における抵抗値R(T)は、次の式(1)で表される。
R(T)=R20(1+α(T−20)+β(T−20)2)‥‥(1)
したがって、R20が既知であれば、R(T)を計測することにより、温度Tすなわち流体温度を逆算できる。
【0017】
演算処理部14は、CPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路から構成されており、所定のプログラムを読み込んで実行することにより、上記ハードウェア資源と協働させて各種機能手段を実現し、被計測流体の温度および流量を算出する。
通信I/F部15は、演算処理部14で求められた流体流量を流量信号16として、コントローラなどの上位装置へ送信する。
【0018】
演算処理部14の機能手段としては、ヒータ制御手段14A、センサ制御手段14B、流体流量算出手段14C、および流体温度算出手段14Dが設けられている。
ヒータ制御手段14Aは、ヒータ駆動手段11Aに対してヒータ制御信号12Aを出力することによりフローセンサ20のヒータ20Aに対する電源供給を制御する。センサ制御手段14Bは、センサ駆動手段11Bに対してセンサ制御信号12Bを出力することによりフローセンサ20の流速センサ20Bに対する電源供給を制御する。流体流量算出手段14Cは、センサ検出手段11Cからの流速信号12Cに基づき被計測流体の流量を算出する。流体温度算出手段14Dはフローセンサ20の流速センサ20Bから得られた温度信号12Dに基づき被計測流体の温度を算出する。
【0019】
図3にセンサI/F部の回路構成例を示す。
まず、ヒータ駆動手段11Aについて説明する。このヒータ駆動手段11Aには、ヒータ20Aに対する電源電位VCCの供給/停止を制御するPNP形のトランジスタQ1、ヒータ20Aに対する供給電位とヒータ制御信号12Aに基づきトランジスタQ1を制御するオペアンプU1、および抵抗R1,R2が設けられている。
トランジスタQ1のエミッタ端子は電源電位VCCに接続され、同じくコレクタ端子が抵抗R1に接続されている。抵抗R1の他端はヒータ20A(Rh)の端子N1に接続されるとともに、オペアンプU1の非反転入力端子に接続されている。オペアンプU1の反転入力端子にはヒータ制御信号12Aが供給され、その出力端子は抵抗R2を介してトランジスタQ1のベース端子に接続されている。なお、ヒータ20Aの他端は変換器1のGND電位に接続されている。
【0020】
したがって、ヒータ制御信号12AとしてヒータRhの両端電圧を上回る電位が供給された場合、オペアンプU1の出力がLOWレベルとなり、トランジスタQ1がオンしてエミッタ端子とコレクタ端子とが導通状態となる。これにより、電源電位VCCがトランジスタQ1、抵抗R1を介してヒータRhへ供給され、流体が加熱される。
一方、ヒータ制御信号12AとしてヒータRhの両端電圧を下回る電位が供給された場合、オペアンプU1の出力がHIGHレベルとなり、トランジスタQ1がオフしてエミッタ端子とコレクタ端子とが非導通状態となる。これにより、ヒータRhに対する電源電位VCCの供給が停止され、流体の加熱が停止される。
【0021】
次に、センサ駆動手段11Bとセンサ検出手段11Cについて説明する。
センサ駆動手段11Bには、流速センサ20Bに対する電源電位VCCの供給/停止を制御するPNP形のトランジスタQ2、および抵抗R10,R14が設けられている。
トランジスタQ2のエミッタ端子は電源電位VCCに接続され、コレクタ端子が抵抗R14に接続されている。抵抗R14の他端は、流速センサ20B(Ru,Rd)の端子N2に接続されるとともに、センサ検出手段11Cにも接続されている。またこの抵抗R14の他端の電位が温度信号12Dとして演算処理部14へ出力される。またトランジスタQ2のベース端子には抵抗R10を介してセンサ制御信号12Bが供給されている。
【0022】
なお、流速センサ20Bは、上流側温度センサ62(Ru)と下流側温度センサ63(Rd)との直列接続(図2参照)からなり、そのRu側端点に端子N2が設けられ、RuとRbの接続点に端子N3が設けられ、Rd側端点は変換器1側のGND電位に接続されている。
【0023】
また、センサ検出手段11Cには、ヒータ20Aの発熱による温度分布の変化を流速センサ20Bの抵抗値の変化により検出し、流体流速に応じた流速信号12Cとして出力するオペアンプU2と、抵抗R11,R12,R13が設けられている。
オペアンプU2の非反転入力端子は、流速センサ20Bの端子N3に接続されている。同じく反転入力端子は、抵抗R11,R12,R13に接続されている。抵抗R11の他端は、ブリッジ回路への電位が供給される抵抗R14の他端すなわち流速センサ20Bの端子N2に接続されており、その供給電位が温度信号12Dとして演算処理部14へ出力されている。抵抗R12の他端はGND電位に接続されている。オペアンプU2の出力端子は抵抗R13の他端に接続されており、その出力電位が流速信号12Cとして演算処理部14へ出力されている。
【0024】
ここで、流速センサ20BのRu、Rdおよびセンサ検出手段11Cの抵抗R11,R12はブリッジ回路を構成しており、RuとRdの抵抗値の比と、R12とR11の抵抗値の比とが等しくなるよう、抵抗R11,R12の値が設定されている。
したがって、センサ制御信号12BとしてLOWレベルの電位が供給された場合、トランジスタQ2がオンしてエミッタ端子とコレクタ端子とが導通状態となる。これにより、電源電位VCCがトランジスタQ2、抵抗R14を介してブリッジ回路へ供給される。
【0025】
このとき、流体が流れておらず、ヒータ20Aで加熱された流体の温度分布がRu,Rdの位置で等しい場合、RuとRdの抵抗値の比に変化は生じない。したがって、オペアンプU2の非反転入力端子と反転入力端子との間に電位差が生じず、流速信号12Cとして所定の中間電位が出力される。
これに対して、流体に流れがあり、ヒータ20Aで加熱された流体の温度分布が変化して上流側のRuでの温度より、下流側のRdでの温度が高くなった場合、RuとRdの抵抗値の比に変化が生じる。したがって、オペアンプU2の非反転入力端子と反転入力端子との間に電位差が生じ、流速信号12Cとしてその電位差すなわち流体流速に応じた電位が出力される。そして、その流速信号12Cに基づき演算処理部14の流体流量算出手段14Cで流体の流量が算出される。
【0026】
本実施の形態は、このような流量計測に用いる流速センサ20Bが、フローセンサ20(図2参照)の基台50ではなく、基台50から熱的に絶縁されたダイヤフラム51上に形成されていることに着目し、流体の温度により抵抗値が変化する流速センサ20Bの抵抗値を温度信号12Dから検出し、その抵抗値から流体の温度を計測するようにしたものである。
以下、図4および図5を参照して、本実施の形態にかかる熱式流量計の動作について説明する。図4は演算処理部14の処理動作を示すフローチャートである。図5は演算処理部14で入出力される各種信号の変化を示すタイミングチャートである。
【0027】
演算処理部14では、通常、流量計測動作を行っており、所定のタイミング、例えば定期的あるいは必要に応じて温度計測動作を行う。
図5では、時刻T1以前および時刻T3以降に流量計測期間が設けられており、時刻T1から時刻T3の間に温度計測期間が設けられている。
演算処理部14では、ステップ100〜102で構成される待機ループにおいて、各動作タイミングの到来をチェックしており(ステップ100)、例えば時刻T1以前の期間において、流量計測タイミングが到来した場合には(ステップ101:YES)、ステップ110へ移行して流量計測動作を開始する。
【0028】
流量計測動作では、まず、ヒータ制御手段14Aでヒータ制御信号12Aを用いてセンサI/F部11のヒータ駆動手段11Aを制御し、フローセンサ20のヒータ20Aへ加熱用電源を供給する(ステップ110)。また、センサ制御手段14Bでセンサ制御信号12Bを用いてセンサI/F部11のヒータ駆動手段11Aを制御し、流速センサ20Bへ検出動作用電源を供給する(ステップ111)。
【0029】
これにより、ヒータ20Aで流体が加熱され、この温度分布の変化による流速センサ20Bの抵抗値の変化がセンサI/F部11のセンサ検出部11Cで検出され、流体の流速に応じて変化する流速信号12Cが検出出力される(ステップ112)。演算処理部14では、流体流量算出手段14Cにより流速信号12Cから流体流速を求め、その流体流速と流路面積とから流体の流量を算出する(ステップ113)。そして、求められた流体流量を必要に応じて通信I/F部15から上位装置へ流量信号16として送信し(ステップ114)、待機ループへ戻る。
【0030】
その後、時刻T1となり温度計測タイミングが到来した場合には(ステップ102:YES)、ステップ120へ移行して温度計測動作を開始する。
温度計測動作では、まず、ヒータ制御手段14Aでヒータ制御信号12Aを用いてセンサI/F部11のヒータ駆動手段11Aを制御し、フローセンサ20のヒータ20Aへ加熱用電源の供給を停止する(ステップ120)。また、センサ制御手段14Bでセンサ制御信号12Bを用いてセンサI/F部11のヒータ駆動手段11Aを制御し、流速センサ20Bへ検出動作用電源の供給を停止する(ステップ121)。
【0031】
そして、時刻T2までの所定期間だけ、その状態を維持することにより、クーリング期間を設ける(ステップ122)。これにより、計測動作時に加熱されたヒータ20Aおよび流速センサ20Bがほぼ流体温度まで冷やされる。このクーリング期間の長さについては、ヒータ20Aおよび流速センサ20Bの熱容量にもよるが、2mm角以下の大きさのフローセンサ20では、10msもあれば十分である。
【0032】
その後、時刻T2において、センサ制御手段14Bでセンサ制御信号12Bを用いてセンサI/F部11のヒータ駆動手段11Aを制御し、流速センサ20Bへ検出動作用電源の供給を再開する(ステップ123)。
これにより、流速センサ20Bは流体の温度に応じた抵抗値を示すものとなり、その抵抗値に応じた電位vを示す温度信号12Dが、演算処理部14の流体温度算出手段14Dで検出される(ステップ124)。
なお、ヒータ20Aについては、クーリング期間の開始から抵抗値の検出終了時点(時刻T3)までの期間にわたりその駆動を停止し、温度検出への影響を抑止する。
【0033】
流体温度算出手段14Dでは、その温度信号12Dの電位vと流速センサ20Bに供給している電流値とから流速センサ20Bの抵抗値を算出し、その抵抗値と記憶部13の係数データ13Aとから、前述した式(1)を用いて、流体温度を算出する(ステップ125)。その後、待機ループへ戻る。
なお、求められた流体温度は、ヒータ制御のための基準温度や流量算出のための温度パラメータとして用いられる。また、この流体温度を、必要に応じて通信I/F部15から上位装置へ送信してもよい。
【0034】
このように、フローセンサ20の流量計測に用いる流速センサ20B、すなわち基台50と熱的に絶縁されたダイヤフラム51上に形成されている上流側温度センサ62および下流側温度センサ63の抵抗値に基づき、流体の温度を検出するようにしたので、基台の周囲に形成された周囲温度センサで流体温度を計測する場合と比較して、基台を介した外部からの熱的影響に左右されることなく、流体温度を正確に計測できる。これにより、高い精度で流体流量を算出することが可能となる。
また、フローセンサ20として、周囲温度センサを別途形成する必要がなくなり、その周囲温度センサおよび電極の形成に要する製造工程、さらには電極を外部と電気的に接続するためのボンディング工程を省くことができるとともに、フローセンサ20と変換器1との接続配線数を削減でき、結果としてコストダウンを計ることができる。
【0035】
また、温度計測動作の際、流速センサ20Bの抵抗値を検出する直前にクーリング期間を設け、そのクーリング期間の開始から抵抗値の検出終了までの期間にわたり、フローセンサ20のヒータ20Aの駆動を停止するようにしたので、流量計測で加熱されたヒータ20Aをほぼ流体温度まで冷却させた後、流速センサ20Bにより流体温度を計測することができ、ヒータの影響を受けることなく流体温度を正確に測定できる。なお、ヒータ20Aの熱容量が小さくその駆動停止に応じてすぐに冷却される場合には、クーリング期間を設ける必要はなく、少なくとも流速センサ20Bの抵抗値の検出開始から終了までの期間にわたり、ヒータ20Aの駆動を停止すればよい。
【0036】
また、クーリング期間において、ヒータ20Aだけでなく流速センサ20Bの駆動も一時停止して、流量計測時に流量計測用として供給されていた電源により自己加熱された流速センサ20Bを冷却させた後、流速センサ20Bへの電源供給を再開して流体温度を計測するようにしてもよく、自己加熱の影響を最小限に抑えることができ流体温度を正確に測定できる。
なお、以上では、温度計測動作時に、所定の期間についてヒータ20Aさらには流速センサ20Bの駆動を停止する例として、完全に電源供給を停止する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、本発明でいう温度計測時における駆動停止には、流量計測時の電源供給量の一部を停止して電源供給を低減する部分的停止も含まれ、このような部分的停止を行った場合でもヒータ20Aさらには流速センサ20Bからの熱的影響を緩和でき、前述と同様の作用効果が得られる。
【0037】
また、温度計測を行う際、上流側温度センサ62(Ru)と下流側温度センサ63(Rd)との直列接続分の抵抗値に基づき流体温度を算出するようにしたので、比較的高い抵抗値が得られることから、計測される温度の分解能を高くすることができる。
【0038】
なお、温度計測に用いるセンサとしては、上流側温度センサ62(Ru)と下流側温度センサ63(Rd)との直列接続に限定されるものではなく、これらのうちいずれか一方の抵抗値に基づき流体温度を算出するようにしてもよい。例えば、流体の流速にも関係するが、上流側温度センサ62(Ru)のみを用いれば、その下流側に位置するヒータ20Aからの熱的影響を受けにくいため、クーリング期間におけるヒータ20Aの駆動停止を省いたり、あるいはクーリング期間を短縮してもよい。
また、流速センサ20Bに比較して抵抗値は低いものの、ヒータ20Aの抵抗値も流体温度で変化する。したがって、流速センサ20Bに代えて、ヒータ20Aの抵抗値に基づき、流体温度を算出するようにしてもよい。
【0039】
なお、以上では、熱式流量計として、図6に示したような一般的な構成の熱式流量計に本発明を適用した場合を例として説明したが、熱式流量計の構成については、これに限定されるものではなく、前述したように、流路内を流れる気体などの被計測流体の流れによる温度分布の変化をフローセンサにより検出し、その温度分布の変化に基づいて流体流量を計測する熱式流量計、例えばカルマン渦流量計、体積流量計、質量流量計などの熱式流量計についても、前述と同様にして本発明を適用でき、前述と同様の作用効果が得られる。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、検出器により、基台から熱的に遮断された構造で基台表面に形成されたダイヤフラムと、そのダイヤフラム上に形成されて所定の温度分布を発生させるヒータと、ダイヤフラム上であって、かつヒータの上流側および下流側にそれぞれ形成されて、流体の流速に応じて変化する温度分布を抵抗値の変化として検出する上流側温度センサおよび下流側温度センサとを有するフローセンサを用いて、流路内を流れる被計測流体の温度分布を検出し、変換器により、ヒータを駆動して流体を加熱するとともに、上流側温度センサおよび下流側温度センサを駆動して検出された温度分布に基づいて流体の流量を算出し、これら上流側温度センサおよび下流側温度センサの直列接続分の抵抗値に基づき流体の温度を算出するようにしたので、基台の周囲に形成された周囲温度センサで流体温度を計測する場合と比較して、基台を介した外部からの熱的影響に左右されることなく、流体温度を正確に計測できる。これにより、高い精度で流体流量を算出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態にかかる熱式流量計の構成を示すブロック図である。
【図2】 フローセンサの構成例を示す説明図である。
【図3】 センサI/F部の回路構成例である。
【図4】 演算処理部の処理動作を示すフローチャートである。
【図5】 演算処理部の処理動作を示すタイミングチャートである。
【図6】 熱式流量計の構成を示す説明図である。
【図7】 一般的なフローセンサの構成例を示す説明図である。
【符号の説明】
1…変換器、11…センサI/F部、11A…ヒータ駆動手段、11B…センサ駆動手段、11C…センサ検出手段、12A…ヒータ制御信号、12B…センサ制御信号、12C…流速信号、12D…温度信号、13…記憶部、13A…係数データ、14…演算処理部、14A…ヒータ制御手段、14B…センサ制御手段、14C…流体流量算出手段、14D…流体温度算出手段、15…通信I/F部、16…流量信号、2…検出器、20…フローセンサ、20A…ヒータ、20B…流速センサ、3…管、3A…流路、50…基台、51…ダイヤフラム、52…絶縁膜層、53…通気孔、54…キャビティ、60…電極、61…ヒータ、62…上流側温度センサ、63…下流側温度センサ。

Claims (4)

  1. 基台から熱的に遮断された構造で基台表面に形成されたダイヤフラムと、そのダイヤフラム上に形成されて所定の温度分布を発生させるヒータと、前記ダイヤフラム上であって、かつ前記ヒータの上流側および下流側にそれぞれ形成されて、前記流体の流速に応じて変化する前記温度分布を抵抗値の変化として検出する上流側温度センサおよび下流側温度センサとを有するフローセンサを用いて、流路内を流れる被計測流体の温度分布を検出する検出器と、
    前記ヒータを駆動して前記流体を加熱するとともに前記上流側温度センサおよび下流側温度センサを駆動して検出された前記温度分布に基づいて前記流体の流量を算出する流体流量算出手段と、これら上流側温度センサおよび下流側温度センサの直列接続分の抵抗値に基づき前記流体の温度を算出する流体温度算出手段とを有する変換器と
    を備えることを特徴とする熱式流量計。
  2. 請求項1記載の熱式流量計において、
    前記変換器は、前記上流側温度センサおよび下流側温度センサの抵抗値を検出する際、少なくともその検出の開始から終了までの期間にわたって前記ヒータの駆動を停止するヒータ制御手段を有することを特徴とする熱式流量計。
  3. 請求項1記載の熱式流量計において、
    前記変換器は、前記上流側温度センサおよび下流側温度センサの抵抗値を検出する際、少なくともその検出開始より所定のクーリング期間だけ前の時点から前記検出の終了までの期間にわたって前記ヒータの駆動を停止するヒータ制御手段を有することを特徴とする熱式流量計。
  4. 請求項1記載の熱式流量計において、
    前記変換器は、前記上流側温度センサおよび下流側温度センサの抵抗値を検出する際、少なくともその検出の開始より所定のクーリング期間から前記検出の開始までの期間にわたって前記上流側温度センサおよび下流側温度センサの駆動を停止するセンサ制御手段を有することを特徴とする熱式流量計。
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