JP4035597B2 - ポリアミン−ポリフェノールハイブリッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリアミン−ポリフェノールハイブリッド及びその製造方法に関するものである。詳しくは抗酸化剤、生体適合性材料、ドラッグキャリヤー、抗菌材料、消臭剤等に有用なポリアミン−ポリフェノールハイブリッド及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、植物に含まれるカテキン、エピガロカテキンガレート、クエルセチン、ヘスペリジン、ルチン等のポリフェノール類に抗酸化性や殺菌作用があることが知られている。さらに抗ガン作用、抗炎症作用、紫外線吸収作用、毛細血管の強化、血圧上昇抑制、血圧降下作用、記憶力向上、肝機能向上、脂肪吸収抑制、ストレス抑制、女性ホルモンバランス調整、抗腫瘍作用、突然変異抑制、血中コレステロール抑制、整腸作用等の効果も知られており、生医学分野への応用が期待されている。これらポリフェノールを高分子と結合させることにより、細胞での滞在時間が低分子ポリフェノールよりも延長し、これら生化学活性が増大することが期待される。
【0003】
例えば、ポリアクリルアミドあるいはポリメタクリルアクリルアミドにカテキン等のポリフェノールを結合させたポリマー及びその製造方法が知られている(特開平8−27226)。
【0004】
【課題を解決するための課題】
しかし、ポリフェノール類を高分子に共有結合させたハイブリッド材料はほとんど知られていない。上述のポリアクリルアミドにカテキン等のポリフェノールを結合させたポリマーは、ポリアクリルアミドあるいはポリメタクリルアクリルアミドに限定される手法であり、しかもポリマー(またはモノマー)とポリフェノールを結合させるためにポリマーまたはモノマーに特殊な誘導化が必要であるため、一般性が欠如しているという問題がある。
【0005】
天然に存在するポリフェノール類には水溶性で分子量1万以上のものも知られているが、その構造は明らかではない。一方、生化学活性が詳細に調べられているカテキン、エピガロカテキンガレート、ルチンといった低分子量ポリフェノールを既存の幅広い高分子に導入して高分子化する技術開発が望まれていた。
【0006】
そこで、本発明の目的は、広く一般性を有するポリアミン−ポリフェノールハイブリッド及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリアミン−ポリフェノールハイブリッド及びその製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明のポリアミン−ポリフェノールハイブリッドは、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、クエルセチン、ヘスペリジン、タンニン酸、テアフラビン、プロシアニジン、ロイコアントシアニジン及びルチンからなる群から選択される少なくとも一種のポリフェノールが、側鎖に一級アミノ基を有するポリアミンのアミノ基と結合していることを特徴とする。
本発明のポリアミン−ポリフェノールハイブリッドの好ましい実施態様において、
【化5】
[式中、Rは、カテキン、エピカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、クエルセチン、プロシアニジン、ロイコアントシアニジン及びルチンからなる群から選択される少なくとも一種のポリフェノールから3 , 4 - ジヒドロキシフェニル基を除いた一価の基を示す]のポリフェノールが、
【化6】
又は、
【化7】
又は、
【化8】
の少なくともいずれか1つの構造で、側鎖に一級アミノ基を有するポリアミンのアミノ基と結合していることを特徴とする。
【0009】
本発明のポリアミン−ポリフェノールハイブリッドの好ましい実施態様において、ポリアミンがポリアリルアミン、ポリリシン及びポリアミドアミンデンドリマーからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする。
【0010】
本発明のポリアミン−ポリフェノールハイブリッドの好ましい実施態様において、ポリアミンの分子量が500〜10,000,000であることを特徴とする。
【0011】
本発明のポリアミン−ポリフェノールハイブリッドの好ましい実施態様において、ポリフェノールがフェノール性水酸基を四つ以上有するフェノール類であることを特徴とする。
【0013】
本発明のポリアミン−ポリフェノールハイブリッドの製造方法は、チロシナーゼ又はラッカーゼの存在下、側鎖に一級アミノ基を有するポリアミンと、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、クエルセチン、ヘスペリジン、タンニン酸、テアフラビン、プロシアニジン、ロイコアントシアニジン及びルチンからなる群から選択される少なくとも一種のポリフェノールとを反応させることを特徴とする。
本発明のポリアミン−ポリフェノールハイブリッドの製造方法の好ましい実施態様において、チロシナーゼ又はラッカーゼの存在下、側鎖に一級アミノ基を有するポリアミンと、前記[化1]のポリフェノールとを反応させることを特徴とする。
【0014】
本発明の好ましい実施態様において、ポリアミンがポリアリルアミン、ポリリシン及びポリアミドアミンデンドリマーからなる群から選択される少なくともであることを特徴とする。
【0015】
本発明の好ましい実施態様において、ポリアミンの分子量が500〜10,000,000であることを特徴とする。
【0016】
本発明の好ましい実施態様において、ポリフェノールがフェノール性水酸基を四つ以上有するフェノール類であることを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明のポリアミン−ポリフェノールハイブリッドは、
【化9】
のポリフェノールが、
【化10】
又は、
【化11】
又は、
【化12】
の少なくともいずれか1つの構造でポリアミンと結合している。すなわち、ポリフェノールとポリアミンは、[化2〜4]で示すいずれか1つの構造を有する。ポリフェノールとポリアミンとは、[化2]の構造のみ、[化3]の構造のみ、[化4]の構造のみで結合していても良く、[化2〜4]の構造をいずれか1つを含んでいれば良い。[化2〜4]の種々の組み合わせによる結合構造により、ポリアミンとポリフェノールとがハイブリッドを形成してもよい。要するに、[化2]、[化3]、又は[化4]の少なくともいずれか1つの構造でハイブリッドを形成していればよく、[化2]、[化3]及び[化4]の構造をすべて含んでも良く、[化2]と[化3]との組み合わせ、[化2]と[化4]との組み合わせ、[化3]と[化4]との組み合わせで形成されていても良い。
【0021】
本発明のハイブリッドを構成するポリアミンは、特に制限されるものではない。ポリフェノールと酵素の反応によって生じるキノン中間体に対する高い反応性という観点から、一級および/または二級アミノ基を含むポリマーが好ましい。また、これらアミノ基はポリマー主鎖、側鎖、末端いずれに導入されていても良い。ポリアミンの具体例として、分岐ポリエチレンイミン、線状ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリリシン、タンパク質、ゼラチン、コラーゲン、キトサン、キチン部分加水分解物、ポリアミドアミンデンドリマー、ポリプロピレンイミンデンドリマー等が挙げられる。
【0022】
上述のポリアミンの分子量は特に制限されるものではないが、500以上10,000,000以下が好ましく、より好ましくは500以上、5,000,000以下である。
【0023】
また、ポリフェノールは、特に制限されるものではない。ハイブリッドの生医学分野での応用に必要な水溶性付与という観点から、フェノール性水酸基を四つ以上含む化合物が好ましい。また、生成ハイブリッドへの高い抗酸化性付与という観点から、ポリフェノールは、フラボノイド骨格を有すること好ましい。ポリフェノールの具体例としては、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、クエルセチン、ヘスペリジン、タンニン酸、テアフラビン、プロシアニジン、ロイコアントシアニジン、ルチン等が挙げられる。これらは単独あるいは混合物として使用され、ポリアミン1グラムに対して、1mg〜30グラムの範囲で用いることが望ましい。
【0024】
次に、本発明のポリアミン−ポリフェノールハイブリッドの製造方法について、説明する。本発明のハイブリッドの製造方法は、酵素触媒の存在下、ポリアミンとポリフェノールとを反応させる。反応は以下の通りである。
【0025】
【化13】
酵素触媒とは、酵素を利用した触媒を意味する。酵素とは生体における化学反応の触媒をいい、本発明においては、これらの酵素を触媒に利用する。酵素触媒としては、例えば、酸化酵素、加水分解酵素、転移酵素、脱離酵素、異性化酵素等を例示することができる。ポリフェノール類の酸化触媒機能という観点から、触媒としては、好ましくは、酸化酵素である。
【0026】
本発明で使用される酸化酵素は、フェノール類の酸化を起こすのに十分な酸化能を有するものであればよく、特に制限はない。具体例としては、チロシナーゼ(EC 1.14.18.1)、フェノラーゼ、ラッカーゼ、ビリルビンオキシダーゼが挙げられる。これらの酸化酵素は種々の起源のものが使用でき、特に制限はないが、例えば植物由来、細菌由来、坦子菌類由来の酸化酵素を挙げることができる。
【0027】
上記酸化酵素の中で、チロシナーゼが特にマッシュルーム由来のチロシナーゼは酸化能が高く、しかも量産されて比較的安価であり、好ましく使用することができる。
【0028】
酵素量はポリアミン1gに対して1ユニット〜1、000,000ユニット、好ましくは3ユニット〜500,000ユニット、さらに好ましくは5ユニット〜200,000ユニットである。
【0029】
重合に用いる溶媒としては、ポリアミンとポリフェノールと酵素触媒が共に溶解するものが好ましく、水または有機溶媒と水の混合溶媒が挙げられる。水は蒸留水や脱イオン水でもよいが、水の代わりに緩衝液を用いてもよい。緩衝液を用いる場合はpH2〜12の範囲が望ましい。緩衝液の種類としては、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、炭酸緩衝液等が望ましいが、これらに限定されるものではない。
【0030】
混合溶媒を用いる場合の有機溶媒は水と相溶する溶媒がより好ましい。水と相溶する有機溶媒として、メタノール、エタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ニトロメタン、ニトロベンゼン、ピリジン、1,4−ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。これらは単独あるいは混合物として使用される。また、有機溶媒−水の混合比はポリアミンとポリフェノールと酵素触媒が共に溶解する任意の量を用いることができる。好ましくは0.01:99.99〜90:10、特に好ましくは1:99〜80:20の範囲が望ましい。
【0031】
反応温度は、酵素触媒が不活性化しない温度が望ましい。好ましくは−20〜100℃の範囲であり、より好ましくは0〜60℃の範囲である。反応温度が高い場合は、一般に酵素は失活するが、混合溶媒系によっては酵素を安定化するので、その場合は高い反応温度も採用可能となる。
【0032】
本発明によって得られるポリアミン−ポリフェノールハイブリッドのポリフェノール含有量は、原料ポリアミンのアミノ基に対して0.01モル%〜100モル%の範囲であるが、好ましくは0.05〜100モル%、より好ましくは0.1〜100モル%である。
【0033】
なお、本発明の製造方法に用いるポリアミン、ポリフェノールについては、上述の本発明のポリアミン−ポリフェノールハイブリッドについて説明したものを用いることができる。
【0034】
本発明において得られるポリアミン−ポリフェノールハイブリッドは、生化学機能の知られたポリフェノール類をポリマーに導入したものである。ポリフェノールの高分子化により生体内での滞在時間が延長できることから、抗酸化剤、生体適合性材料、ドラッグキャリヤー、抗菌材料剤、化粧品素材等の各種用途に幅広く使用できる。
【0035】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
50ミリリットルナスフラスコに、1.7グラムの30%分岐ポリエチレンイミン(分子量70,000)水溶液を取り、5ミリリットルの蒸留水を加えて室温で攪拌した。6規定塩酸を用いて、該溶液のpHを7.5に調整した後、0.17グラムのカテキンを溶解させたメタノール溶液5ミリリットルを加えた。1000ユニットのマッシュルームチロシナーゼを溶解させた水溶液100マイクロニットルを加えて反応を開始させた。反応中は反応液を緩やかに攪拌した。48時間後、反応液を分子量2万のカットオフ膜を用いた限外濾過により未反応のカテキンや塩類を除去し、凍結乾燥によりポリマーを単離し、ポリエチレンイミン−カテキンハイブリッドを0.56グラム得た(ハイブリッド−1)。NMR、UV−可視スペクトル分析によりカテキンユニットの導入が確認された。また、化2〜4の構造が、例えばAdvances in Insect Physiology, Vol.21, 179 (1988)に記載されているようにカテコールやドーパから得られるキノン誘導体とアミンの反応で観測されるものであるため、これらの文献を参照して前記カテキンユニットの導入を確認した。得られたハイブリッドの理化学的性質を以下に示す。
1H NMR(DMSO-d6, ppm) 2.5-4.2 (br, NCH2CH2N), 6.1-7.1 (br, Ar)
【0036】
図1は、ポリアミン−カテキンハイブリッドのUV特性を示す。図1中、PEI−カテキンがハイブリッド−1のUV特性を示す。280nmのピークは芳香族に見られるπ−π*遷移によるものであり、カテキンの吸収と比べて拡がっていることから、[化2〜4]の構造が示唆される。
【0037】
また、元素分析によりカテキン導入を求めたところ、導入量はポリエチレンイミンの全アミノ基に対して2.3モル%であった。
【0038】
比較例1
実施例1の操作において、チロシナーゼを使用しないで反応を行ったところ、原料が未反応で回収された。
【0039】
実施例2
カテキンを0.34グラム用いた以外は実施例−1と同様の実験を行った。得られた試料は0.59グラムであった(ハイブリッド−2)。元素分析より求めたカテキン導入量は2.7モル%であった。
【0040】
実施例3
カテキンを0.67グラム用いた以外は実施例1と同様の実験を行った。得られた試料は0.44グラムであった。元素分析より求めたカテキン導入量は7.7モル%であった。
【0041】
実施例4
10%ポリアミドアミンデンドリマー(第4世代)メタノール溶液 3.0グラム
カテキン 0.087グラム
蒸留水 10ミリリットル
メタノール 3ミリリットル
チロシナーゼ 2000ユニット
を用いて実施例−1と同様の操作を行った。尚、反応液のpHは8に調整した。反応後、カットオフ分子量500の透析膜を用い、未反応のカテキンや塩類を除去し、凍結乾燥によりポリマーを単離し、デンドリマー−カテキンハイブリッドを0.40グラム得た(ハイブリッド−3)。元素分析より求めたカテキン導入量(デンドリマーの表面の一級アミノ基に対する)は17モル%であった。図1は、ポリアミン−カテキンハイブリッドのUV特性を示し、図1中、デンドリマー−カテキンがハイブリッド−3のUV特性を示す。得られたハイブリッドの理化学的性質を以下に示す。
【0042】
1H NMR(DMSO-d6, ppm) 2.0-3.5 (br, NCH2CH2N、NCH2CH2C(=O)), 6.1-7.7 (br, Ar、NH)、7.9-8.8 (br, Ar、NH2 +)
UV(λmax(蒸留水))280nm([化2〜4]の構造由来の芳香族由来のπ−π*遷移)、435nm([化3、4]の構造由来の芳香族由来のn−π*遷移)
【0043】
実施例5
反応液のpHを7に調整した以外は、実施例4と同様の操作を行ったところ、デンドリマー−カテキンハイブリッドを0.31グラム得た(ハイブリッド−4)。元素分析より求めたカテキン導入量(デンドリマーの表面の一級アミノ基に対する)は11モル%であった。
【0044】
実施例6
酵素触媒としてチロシナーゼの代わりに微生物ラッカーゼを5ユニット用いた以外は、実施例4と同様の操作を行ったところ、デンドリマー−カテキンハイブリッドを0.36グラム得た(ハイブリッド−5)。元素分析より求めたカテキン導入量(デンドリマーの表面の一級アミノ基に対する)は15モル%であった。
【0045】
実施例7
20%ポリアリルアミン(分子量100,000)水溶液 2.85グラム
カテキン 0.145グラム
蒸留水 7.7ミリリットル
メタノール 5ミリリットル
を用いて調整した溶液に6規定 塩酸を用いて、該溶液のpHを8に調整した。2000ユニットのマッシュルームチロシナーゼを溶解させた水溶液100マイクロニットルを加えて反応を開始させた。24時間後、反応液を分子量1万のカットオフ膜を用いた限外濾過により未反応のカテキンや塩類を除去し、凍結乾燥によりポリマーを単離し、ポリアリルアミン−カテキンハイブリッドを0.93グラム得た。元素分析より求めたカテキン導入量は3.5モル%であった。図1は、ポリアミン−カテキンハイブリッドのUV特性を示し、図1中、PAA−カテキンがハイブリッド−1のUV特性を示す。得られたハイブリッドの理化学的性質を以下に示す。
【0046】
1H NMR(D2O, ppm) 0.8-2.0 (br, CH2CH), 2.6-3.1 (br, CH2CH), 6.1-7.1 (br, Ar)
UV(λmax(蒸留水))280nm([化2〜4]の構造由来の芳香族由来のπ−π*遷移)、435nm([化3、4]の構造由来の芳香族由来のn−π*遷移)。
【0047】
実施例8
pHを7に調整した以外は実施例−7と同様の実験を行った。得られた試料は1.0グラムであった。元素分析により求めたカテキン導入量は1.5%であった。
UV(λmax(蒸留水))280nm、435nm。
【0048】
実施例9
チロシナーゼの代わりに、微生物由来のラッカーゼ2ユニットを用いた以外は実施例−7と同様の実験を行った。得られた試料は0.78グラムであった。元素分析により求めたカテキン導入量は4.1%であった。
UV(λmax(蒸留水))280nm、435nm。
【0049】
実施例10
次に、ポリアミンとして、ゼラチン(コラーゲン)を用いてハイブリッドを作製した。具体的には、
コラーゲン(PA−100、ニッピ製) 1.0グラム
カテキン 0.058グラム
pH7リン酸緩衝液 30ミリリットル
メタノール 5ミリリットル
チロシナーゼ 2000ユニット
を用いて実施例−1と同様の操作を行った。反応後、カットオフ分子量500の透析膜を用い、未反応のカテキンや塩類を除去し、凍結乾燥によりポリマーを単離し、ゼラチン−カテキンハイブリッドを0.93グラム得た。元素分析より求めたカテキン導入量は1.7モル%であった。図1は、ポリアミン−カテキンハイブリッドのUV特性を示し、図1中、ゼラチン−カテキンが本実施例で得られたハイブリッドのUV特性を示す。
UV(λmax(蒸留水))280nm、400nm。
【0050】
実施例11
次に、ポリフェノールとして変性ルチンを用いて、同様の試験を行なった。具体的には、
30%分岐ポリエチレンイミン(分子量70,000)水溶液 1.7グラム変性ルチン(G−ルチン、東洋精糖製、[化14]と[化15]の混合物(93:7モル%)) 0.44グラム
【化14】
【化15】
チロシナーゼ 1000ユニット
蒸留水 10ミリリットル
を用いて実施例1と同様の操作を行った。48時間反応を行った。得られた試料は0.85グラムであった(ハイブリッド−6)。図2は、蒸留水中でのポリアミン−ルチンハイブリッドのUV特性を示す図である。図2中、PEI―ルチンが、ハイブリッドのUV特性を示す。280nmの吸収は[化2〜4]の構造由来の芳香族由来のπ−π*遷移に帰属されるものであり、400nmの吸収は[化3、4]の構造由来の芳香族由来のn−π*遷移によるものである。特に後者はハイブリッド化物に特有のピークである。
【0051】
元素分析より求めたG−ルチン導入量は4.2モル%であった。得られたハイブリッドの測定結果を以下に示す。
1H NMR(D2O, ppm) 0.8-2.0 (br, CH2CH), 2.6-3.1 (br, CH2CH), 3.1-3.8 (糖部位のCH, CH2), 6.7-6.9 (br, Ar), 7.0-7.5 (br, Ar)
【0052】
実施例12
変性ルチンを0.87グラム用いた以外は実施例11と同様の実験を行った。得られた試料は0.57グラムであった(ハイブリッド−7)。元素分析より求めたG−ルチン導入量は4.5モル%であった。
【0053】
実施例13
変性ルチンを1.74グラム用いた以外は実施例4と同様の実験を行った。得られた試料は0.65グラムであった(ハイブリッド−8)。元素分析より求めたG−ルチン導入量は8.2モル%であった。
【0054】
実施例14
ポリアリルアミン(分子量60,000)水溶液 0.5グラム
変性ルチン 0.20グラム
蒸留水 10ミリリットル
を用いて調整した溶液に1規定 水酸化ナトリウムを用いて、該溶液のpHを7に調整した。1000ユニットのマッシュルームチロシナーゼを溶解させた水溶液100マイクロニットルを加えて反応を開始させた。上記以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた試料は0.52グラムであった。元素分析より求めたG−ルチン導入量は1.3モル%であった。図2は、ポリアミン−ルチンハイブリッドのUV特性を示す図である。図2中のPAA−ルチンのUV特性が、ハイブリッドの特性を示す。280、360nmの吸収は[化2〜4]の構造由来の芳香族由来のπ−π*遷移に帰属されるものである。当該ハイブリッドのNMRの測定結果を以下に示す。
【0055】
1H NMR(D2O, ppm) 0.8-2.0 (br, CH2CH), 2.6-3.1 (br, CH2CH), 3.1-3.8 (糖部位のCH, CH2), 6.7-6.9 (br, Ar), 7.0-7.5 (br, Ar)
【0056】
実施例15
変性ルチンを0.40グラム用いた以外は実施例7と同様の実験を行った。得られた試料は0.43グラムであった。元素分析より求めたG−ルチン導入量は2.0モル%であった。
【0057】
実施例16
変性ルチンを0.80グラム用いた以外は実施例7と同様の実験を行った。得られた試料は0.55グラムであった。元素分析より求めたG−ルチン導入量は3.0モル%であった。
【0058】
実施例17
次に、ゼラチン(コラーゲン)−ルチンのハイブリッドの作製を試みた。具体的には、
コラーゲン(PA−100、ニッピ製) 1.0グラム
変性ルチン 1.0グラム
チロシナーゼ 3000ユニット
リン酸緩衝溶液(pH 7.4) 10ミリリットル
を用いて実施例1と同様の操作を行った。反応終了後、反応溶液をメタノールに投じ、目的合成物を単離した。得られた試料は1.65グラムであった(ハイブリッド−9)。元素分析より求めたG−ルチン導入量は10.1モル%であった。図2は、蒸留水中でのポリアミン−ルチンハイブリッドのUV特性を示し、図2中、ゼラチン―ルチンが、ハイブリッド−9のUV特性を示す。
【0059】
実施例18
キチン部分加水分解物(加水分解率80mol%) 1.0グラム
変性ルチン 0.64グラム
チロシナーゼ 30000ユニット
蒸留水 100ミリリットル
を用いて調整したけん濁溶液に6規定 塩酸を用いて、pH2の均一溶液を調整した。この該溶液に1N水酸化ナトリウムを加え、pH6の溶液を調整した。3000ユニットのマッシュルームチロシナーゼを溶解させた水溶液100マイクロニットルを加えて反応を開始させた。反応終了後、1N水酸化ナトリウムを用いて反応溶液のpHを7にし、目的化合物を沈殿させた。上記以外は実施例−1と同様の操作を行った。得られた試料は1.13グラムであった。元素分析より求めたG−ルチン導入量は10.5モル%であった。
【0060】
スーパーオキシド消去能(SOD様活性)の検討
キサンチン/キサンチンノキシダーゼ系で発生させたスーパーオキシドをハイブリッド抗酸化剤により消去させ、その効果を評価した。評価系中に酸化型のチトクロームCを加えると、発生したスーパーオキシドにより酸化型のチトクロームCが還元され、その際に550nmにおける吸光度が上昇する。この原理を利用して、SOD様活性を測定した。具体的には石英セルに3ミリリットルのリン酸緩衝溶液、キサンチン(1ミリグラム/ml)100マイクロリットル、チトクロームC(3.9ミリグラム/ml)100マイクロリットル、所定濃度のポリアミン−ポリフェノールハイブリッド100マイクロリットルを加え、均一溶液を調製した。この溶液にキサンチンノキシダーゼ(0.6ミリグラム/ml)100マイクロリットルを加えた後、550nmの吸光度変化を経時的に測定した。抗酸化性(%)は以下の式より求めた。
【数1】
【0061】
(比較試験例−1)ポリフェノールを導入していないポリアミン類の抗酸化性を評価した。ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、コラーゲン及びキチン部分加水分解物の抗酸化性は全て5%以下であった。
【0062】
(比較試験例−2)比較として、ハイブリッド化原料のカテキン、G−ルチンの抗酸化性を評価した。
【0063】
図3にポリアミン−カテキンハイブリッド、図4にポリアミン−G−ルチンハイブリッドの濃度と抗酸化性の相関結果を示す。全てのポリアミン−ポリフェノールハイブリッドに優れたSOD様活性が見られ、原料のカテキン、ルチンと同等以上の抗酸化性を示した。
【0064】
【発明の効果】
本発明では、ポリアミンとポリフェノールの反応を酸化酵素触媒存在下に行うことにより、ポリアミン−ポリフェノールハイブリッドが製造された。このようにして得られたポリアミン−ポリフェノールハイブリッドはポリフェノールの高分子化による抗酸化機能が向上し、生分解性材料、生体適合性材料、ドラッグキャリヤー、抗菌材料、酸化防止剤、化粧品素材等の用途に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、ポリアミン−カテキンハイブリッドのUV特性を示す。
【図2】 図2は、蒸留水中でのポリアミン−ルチンハイブリッドのUV特性を示す。
【図3】 図3は、ポリアミン−カテキンハイブリッドの濃度と抗酸化性の相関結果を示す。
【図4】 図4は、ポリアミン−G−ルチンハイブリッドの濃度と抗酸化性の相関結果を示す。
Claims (10)
- カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、クエルセチン、ヘスペリジン、タンニン酸、テアフラビン、プロシアニジン、ロイコアントシアニジン及びルチンからなる群から選択される少なくとも一種のポリフェノールが、側鎖に一級アミノ基を有するポリアミンのアミノ基と結合していることを特徴とするポリアミン−ポリフェノールハイブリッド。
- ポリアミンがポリアリルアミン、ポリリシン及びポリアミドアミンデンドリマーからなる群から選択される少なくとも一種である請求項2記載のポリアミン−ポリフェノールハイブリッド。
- ポリアミンの分子量が500〜10,000,000である請求項1〜3項のいずれか1項に記載のポリアミン−ポリフェノールハイブリッド。
- ポリフェノールがフェノール性水酸基を四つ以上有するフェノール類である請求項1〜4項のいずれか1項に記載のポリアミノ−ポリフェノールハイブリッド。
- チロシナーゼ又はラッカーゼの存在下、側鎖に一級アミノ基を有するポリアミンと、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、クエルセチン、ヘスペリジン、タンニン酸、テアフラビン、プロシアニジン、ロイコアントシアニジン及びルチンからなる群から選択される少なくとも一種のポリフェノールとを反応させることを特徴とする請求項1記載のポリアミン−ポリフェノールハイブリッドの製造方法。
- チロシナーゼ又はラッカーゼの存在下、側鎖に一級アミノ基を有するポリアミンと、前記[化1]のポリフェノールとを反応させることを特徴とする請求項6記載のポリアミン−ポリフェノールハイブリッドの製造方法。
- ポリアミンがポリアリルアミン、ポリリシン及びポリアミドアミンデンドリマーからなる群から選択される少なくとも一種である請求項6又は7に記載の方法。
- ポリアミンの分子量が500〜10,000,000である請求項6〜8項のいずれか1項に記載の方法。
- ポリフェノールがフェノール性水酸基を四つ以上有するフェノール類である請求項6〜9項のいずれか1項に記載の方法。
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