JP4034236B2 - 特定変換係数優先符号化装置、特定変換係数優先符号化復号システム及び特定変換係数優先符号化方法 - Google Patents
特定変換係数優先符号化装置、特定変換係数優先符号化復号システム及び特定変換係数優先符号化方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明はタイル化した画像の伝送において、高画質を保ちつつ伝送量を抑える画像符号化装置、システム、方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在インターネットを中心に静止画像符号化アルゴリズムJPEGが広く普及しているが、一方でさらなる性能改善、機能付加の要求を背景として、1997年より次世代静止画像符号化標準化JPEG2000プロジェクトがISOとITU−Tの合同機関によりスタートした。2000年12月には同JPEG2000アルゴリズムの基本方式を定めたパート1(ISO/IEC 15444−1)が、2001年11月には拡張方式を定めたパート2(ISO/IEC 15444−2)が完成した。
JPEG2000では、画像をウェーブレット変換によりウェーブレット変換係数に変換し、変換係数の絶対値を自然2進数で表現したときのビットプレーンを上位プレーンから順にコンテクストモデリングを使った算術符号化によりエントロピ符号化する。これにより、JPEG2000は優れた圧縮性能を有するだけでなく、従来のJPEGにない様々な機能を提供する。
【0003】
例えば、空間的に特定の領域ROI(Region Of Interest)を優先的に(高画質に)符号化するROI符号化という手法が規定されている。この手法では、指定された特定の画像領域に対応する各サブバンドの変換係数をシフトアップした上で、変換係数を上位ビットプレーンからエントロピ符号化する。これにより、指定された領域に対応する変換係数が先に符号化され、途中のビットプレーンで符号化を終了した場合に、他の領域に対応する変換係数に比べてより高精度に符号化されることになる。
JPEG2000の符号化アルゴリズムでは、入力画像をタイルと呼ばれる複数の矩形小ブロックに分割し、各タイルを独立に処理することが可能である。しかし、符号化レートを低くしていくと、タイル境界における僅かな画質の差がタイル状の歪みとして検知され、滑らかさが損なわれた画像になってしまう。
【0004】
そのため、従来の画像符号化方式では、このようなタイル境界に発生する歪を抑制するため、様々な手法が提案されている。例えば、特許文献1に示された装置/方法においては、ROI符号化を使った方式が示されている。この方法では、図2のように画像信号をタイル分割した上で、タイル内の隣接タイル近傍画素(図13(a)に網掛けで示した部分)をROIとして指定して符号化する。これにより再生画像では、タイル境界付近が高画質に再生され、タイル境界が検知され難くなることが期待できる。
なお、画像領域で図13(a)の網掛け部分のようにROIを指定すると、優先的に符号化される変換係数(画像領域で指定したROI画素を使って算出される変換係数)は、通常、図13(b)の網掛けで示すように、全サブバンドで、しかも空間的に範囲が広くなって分布することになる。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−369202号広報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、タイル分割を使った符号化では符号化レートを低くしていくと、タイル境界における僅かな画質の差がタイル状の歪みとして検知され、滑らかさが損なわれた画像になってしまう。
また、上記従来例に示したタイル歪み低減方法では、タイル内の隣接タイル近傍画素をROIとして指定して符号化するが、画像領域で指定したROI(図13(a)に網掛けで示した部分)に対応する変換係数は、通常、指定された領域の画素を使って生成される変換係数(図13(b)に網掛けで示した部分)となる。そのため、再生画像ではタイル境界近傍の領域に多くの符号量が割り当てられて高画質になるため、タイル境界が目立たなくなる一方、タイル内部に十分な符号量が割り当てられなくなり、タイル内部で画質が劣化するという課題がある。
【0007】
この発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、タイル境界近傍画素に対応する変換係数のうち、特定の変換係数のみを優先的に符号化する変換係数として指定することにより、タイル境界近傍とタイル内部の両方において優れた画質を維持する符号化装置及び方法を得ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る特定変換係数優先符号化装置は、タイル分割し、ウェーブレット変換し、量子化し、エントロピ符号化する符号化装置において、
タイル分割した画像情報をウェーブレット変換した変換係数のうち、タイル境界近傍の特定の変換係数を選択する変換係数選択部と、この選択された特定変換係数を優先符号化するようシフトする変換係数シフト部とを備えて、
このシフト後の対象に対してエントロピ符号化する。
【0009】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下、この発明を順次、各実施の形態に従って説明する。
図1は、この発明の実施の形態1における特定係数優先符号化装置及び方法の構成を示すブロック図である。図1において、符号化器は、入力画像信号を複数のタイルTi(x,y)に分割するタイル分割部100、各タイルの画像信号をウェーブレット変換するウェーブレット変換部101、必要に応じてウェーブレット変換係数を量子化する量子化部102、ROI変換係数選択部からの指示に応じて特定の変換係数をビットシフトする変換係数シフト部103、変換係数をエントロピ符号化するエントロピ符号化部104、及び優先的に符号化されるウェーブレット変換係数を選択するROI変換係数選択部105で構成される。
【0010】
図1のタイル分割部100において、入力画像信号は、重なり合いのない複数のタイルに分割される。図2に、入力画像を4つのタイルに分解する例を示す。以下、i番目のタイルの座標(x,y)の画素値をTi(x,y)(0≦x<x1,0≦y<y1)で表すものとする。
【0011】
次にウェーブレット変換部101において、各タイルをウェーブレット変換する。ウェーブレット変換では、最初に画像信号に対し、垂直(あるいは水平)方向に1次元ウェーブレット変換を施し、低域成分と高域成分に分割した後、両成分に対し水平(あるいは垂直)方向にも1次元ウェーブレット変換を施す。この結果、以下の4つのサブバンドが生成される。
LL成分(水平方向低周波成分、垂直方向高周波成分)
HL成分(水平方向高周波成分、垂直方向低周波成分)
LH成分(水平方向低周波成分、垂直方向高周波成分)
HH成分(水平方向高周波成分、垂直方向高周波成分)
【0012】
更に、LL成分を再帰的に4バンドに分割する処理を、所定の回数だけ繰り返す。以後、4バンドへの分割をN回行った後の各バンドの変換係数をそれぞれ、aN,LL(x,y)、aN,HL(x,y)、aN,LH(x,y)、aN,HH(x,y)と表記し、Nを分割レベルと呼ぶこととする。
図3は、N=3とした場合の、タイルのウェーブレット変換を示す図である。ウェーブレット変換のフィルタは、例えば静止画像符号化標準JPEG2000(ISO/IEC 15444−1)で使用されているものなど任意のフィルタが使用可能である。ここでは、JPEG2000に使用されている以下の式(1)、式(2)で示されるフィルタを使用する場合を例にとって説明する。
【0013】
【数1】
【0014】
ここで、u(n)はタイルの画像信号あるいは変換係数LL度成分の水平方向に並んだサンプル値、あるいは垂直方向に並んだサンプル値を表す。v(2n)が低域成分、v(2n+1)が高域成分である。
【0015】
次に、必要に応じて量子化部102において、変換係数の量子化を行う。本実施の形態では、量子化は行わないもの(量子化ステップサイズΔ=1)として説明を行う。
ROI変換係数選択部105においては、タイル分割部100からのタイル分割情報に応じて、優先的に符号化するウェーブレット変換係数(以降、ROI変換係数と呼ぶ。また、ROI変換係数以外の変換係数を非ROI変換係数と呼ぶ)を決定し、各変換係数がROI変換係数か否かを示すビットで構成されたビットマップ(以後、変換係数マスクデータと呼ぶ)を作成する。ここで、サブバンドの変換係数aN,LL(x,y)、aN,HL(x,y)、aN,LH(x,y)、aN,HH(x,y)とそれぞれに対する変換係数マスクデータをMN,LL(x,y)、MN,HL(x,y)、MN,LH(x,y)、MN,HH(x,y)と表記する。MN,・・(x,y)=1の場合、aN,・・(x,y)はROI変換係数、MN,・・(x,y)=0の場合、aN,・・(x,y)は非ROI変換係数となる。また、以下の説明中、aN,・・(x,y)、MN,・・(x,y)のx座標あるいはy座標が定義域を超えた場合は全て、aN,・・(x,y)=0、MN,・・(x,y)=0とする。
【0016】
本実施の形態では、各タイルにおける隣接タイル近傍の画素に対応する変換係数のうち、低解像度に属する変換係数をROI変換係数とする。ROI変換係数選択部105では、ROI変換係数決定に際し、最初に、分割レベル0での変換係数マスクデータM0,LL(x,y)(画像領域でのROIを示す)を設定する。これには、隣接タイルに接する画素に対応するマスクデータの値を1にする。つまり、あるタイルTi(x,y)(0≦x<x1,0≦y<y1)において、上下左右でタイルと接している場合、以下のように設定する。
M0,LL(x,0)=1 (0≦x<x1)
M0,HL(x,y1−1)=1 (0≦x<x1)
M0,LH(0,y)=1 (0≦y<y1)
M0,HH(x1−1,y)=1 (0≦y<y1)
上記以外 M0(x,y)=0 式(3)
【0017】
次に、このレベル0での変換係数マスクデータをウェーブレット変換と同様に分割していき、各ウェーブレット変換係数がROIに属すか否かを示す変換係数マスクデータを生成する。図4(a)に分割レベル0での変換係数マスクデータを、また、図4(b)に最終的に決定された変換係数マスクデータの例を示す。このように、従来のように画像領域で指定された特定領域に対応する全分割レベルのタイル境界近傍変換係数を優先符号化するのではなく、ウェーブレット変換係数領域で式(3)のM=1となる領域のみをROI変換係数として指定する。こうすることによって、タイル周辺に過多の符号量が割り当てられることがなくなり、タイル周辺のみでなく、タイル内部での画質も維持ができる。
変換係数マスクデータ生成の手順を図5〜図7のフローチャートを用いて説明する。ここでは、変換係数マスクデータ初期値で指定された画素を使って生成される変換係数のうち、分割レベルがあるレベルNR=3以上の解像度に属する変換係数のみをROI変換係数とする例を示す。NLはウェーブレット変換の分割レベル数、x1,y1はタイルの水平、垂直方向のサイズを示し、式(1)、式(2)で定義されるフィルタを使うものとする。
【0018】
図5の処理ROI_COEFFでは、分割レベル数levの変換係数を順に分割していき、分割レベルNL=3でのROI変換係数を決定するまでの処理を行う。
まず、ステップ501で分割レベルの初期値を設定する。ステップ502のCREATE_MASKでは、分割レベルlevの変換係数マスクデータMlev,LLを分割して、次の分割レベルlev+1の変換係数マスクデータを生成する。ただし、この時点では、各サブバンドの変換係数マスクデータが交互に並んでいるので、ステップ503のDEINTERLEAVEで並べ替えて、それぞれのサブバンドの変換係数マスクデータMlev+1,LL、Mlev+1,HL、Mlev+1,LH、Mlev+1,HHを生成する。ステップ504では、次のレベルの変換係数マスクデータのサイズをx1,y1に設定する。以上の処理をウェーブレット変換の分割レベル数NLまで繰り返す。
【0019】
ステップ502CREATE_MASKの詳細を図6に示す。この処理では、現在の分割レベルlevでのROI変換係数と空間的に同じ位置にある変換係数だけでなく、分割レベルlevでのROI変換係数を使って生成される全ての変換係数を、次の分割レベルlev+1でのROI変換係数の候補とする。図8に式(1)、式(2)で定義されるフィルタを使った場合の一次元の変換を例に取って示す。この図において、分割レベルlevにおいて、LL成分の変換係数u0〜u13のうち、u4〜u9がROI変換係数である。この変換係数をウェーブレット変換して、分割レベルlev+1の変換係数v0〜v13が生成される。ただし、v2i(i=0,1,2...)が低域成分、v2i+1(i=0,1,2...)が高域成分である。ここで、分割レベルlevのu4〜u9と分割レベルlev+1のv4〜v9が空間的に同一位置の変換係数となるが、ウェーブレット逆変換を考えればわかるように、v4〜v9の外側の変換係数v3,v10,v11も、u4〜u9を使って生成される。そこで、分割レベルlev+1では、変換係数v3〜v11がROI変換係数の候補となる。
【0020】
CREATE_MASKでは、ステップ601〜612で垂直方向にMlev,LLを分解する。ステップ602では、該当する座標の変換係数が低域成分か高域成分かを判断する。低域成分の場合にはステップ603により、ROI変換係数となる領域を拡張し、高域成分の場合にはステップ604により、拡張された変換係数マスクデータをメモリp(y)に一時的に蓄える。ステップ602〜606を垂直方向の全ての変換係数に対して施した後、ステップ607〜610ではメモリp(y)に蓄えられた変換係数マスクデータをMlev,LLにコピーする。フローチャート内で、演算子“|”は、ビット和(OR)、“%”は割り算での余りを表す。ステップ613〜624では水平方向に、垂直方向と同様の処理を行ってMlev,LLを分解する。
【0021】
CREATE_MASKが終了した段階では、図12(a)に示すように、分割レベルlev+1のROI変換係数のLL,HL,LH,HH各成分がMlev,LL(x,y)に交互に配置された状態なので、図7のDEINTERLEAVEによりそれらを分解し、図12(b)に示すように、分割レベルlev+1でのLL,HL,LH,HH成分の変換係数マスクデータを生成する。ステップ701〜706でLL成分の変換係数マスクデータを生成、ステップ710〜717でHL成分の変換係数マスクデータを生成、ステップ720〜727でLH成分の変換係数マスクデータを生成、ステップ730〜737でHH成分の変換係数マスクデータを生成する。ただし、HL,LH,HH成分については、分割レベルが予め決められたある値NR以下の場合には、ROI変換係数は全て削除するものとする。そこで、HL,LH,HH成分では、ステップ711,721,731で分割レベルがNR以上か否かを判断し、分割レベルがNRに満たない分割レベルでは、変換係数マスクデータを0とする。
【0022】
ここで、再度図1に戻り、符号化ブロック図を説明する。変換係数シフト部103では、変換係数マスクデータを参照し、標準符号化方式JPEG2000に規定されているMax−shift ROI符号化の手法を適用する。これには、非ROI変換係数の最大の絶対値Cmaxを検出し、Cmaxを自然2進表現した時のビット数、
【0023】
【数2】
【0024】
だけROI変換係数をシフトアップする。つまり変換係数マスクデータM(x,y)に応じて、以下の処理を実行する。
if M(x,y)=1 a’(x,y)=a(x,y)・2S
else a’(x,y)=a(x,y) 式(5)
【0025】
エントロピ符号化部104では、変換係数の絶対値を自然2進で表現したビットプレーンを、ROI変換係数、非ROI変換係数を区別せずに上位ビットプレーンから順にエントロピ符号化する。エントロピ符号化は、例えば静止画像符号化標準JPEG2000(ISO/IEC 15444−1)で使用されているエントロピ符号化などビットプレーン毎に符号化する方式ならば任意の方式が使用可能である。
ROI変換係数は、シフトアップされているので、非ROI変換係数よりも先に符号化され、途中のビットプレーンまでの符号を伝送した場合、復号側では非ROI変換係数よりも高精度に再現することができる。これにより、タイル境界近傍の画像が高精度に復号され、タイル歪みが低減される。更に本実施の形態では、タイル境界近傍に対応する変換係数であっても高域成分については、タイル歪み低減への寄与度が小さいと考えられるため、非ROI変換係数として符号化している。これにより、タイル境界近傍への不必要な符号量割り当てが抑えられ、タイル境界から遠い領域にも符号量が割り当てられて、全体として高い画質の再生画像が得られる。
【0026】
なお、上記手法では、ROI変換係数の位置情報は伝送する必要はない。受信側では、再生した変換係数の絶対値がシフトビット数から定まる定数2Sより大きいか小さいかでROI変換係数か否かを判断できるからである。ただし、ROI変換係数のシフトビット数Sは付加情報として伝送するする必要がある。これは、符号データのヘッダ情報として伝送するなど、復号側でシフトビット数を知ることができればいかなる手法で伝送しても構わない。
【0027】
図9は、本符号化装置に対する復号装置の構成を示すブロック図である。図において、伝送されてきた符号化データを、エントロピ復号部204で復号し、得られた変換係数と伝送されてきたシフトビット数情報Sとによりシフトされた変換係数についてはシフトダウンする変換係数シフトダウン部203を備え、元に戻された変換係数を逆量子化部202で逆量子化する。更に、その出力をウェーブレット逆変換部201でタイル別の画像情報とし、タイル合成部200で画面としての画像信号を得る。
以上の説明では、ROI変換係数を最低解像度に属する変換係数だけに制限したが、最低解像度とその次のレベルの解像度だけに制限する、最低解像度の全てのサブバンドとその次のレベルの解像度のHL成分、LH成分だけに制限するなど、任意の解像度、サブバンドに属する変換係数をROI変換係数とすることが可能である。
【0028】
実施の形態2.
以下に、この発明の実施の形態2による符号化装置及び方法の構成を説明する。実施の形態1では、ROI変換係数は、タイル境界画素に対応する変換係数のうち特定の解像度に存在するように制限したが、実施の形態2では、サブバンドに応じてその制限を変化させた例を示す。図10に実施の形態2による、変換係数マスクデータの例を示す。タイル境界画素に対応する変換係数のうち、低域成分に大きな影響を与える、HL成分のサブバンド上端、下端領域、LH成分のサブバンド左端、右端領域、LL成分の上端、下端、左端、右端領域の変換係数をROI変換係数とする。
【0029】
符号化装置あるいは方法の構成、処理は、ROI変換係数選択部105に以下の処理が追加される点を除いて、実施の形態1と同一なので、相違点のみを説明する。
実施の形態2では、図7のROI変換係数が存在する解像度を制限するパラメータNRをNR=1として、処理DEINTERLEAVE終了時点では全ての解像度でROI変換係数を残しておく。そしてこの後、HL成分Mlev,HL(x,y)については、0〜x1−1のいずれかのx座標でMlev,HL(x,y)=0となれば、0〜x1−1の全ての座標でMlev,HL(x,y)=0とする水平方向の処理をy=0からy=y1−1までの全てで行う(x1,y1はサブバンドの水平、垂直方向のサイズである)。LH成分Mlev,LH(x,y)については、0〜y1−1のいずれかのy座標でMlev,LH(x,y)=0となれば、0〜y1−1の全ての座標でMlev,LH(x,y)=0とする垂直方向の処理をx=0からx=x1−1までの全てで行う。HH成分Mlev,HH(x,y)については、全てMlev,HH(x,y)=0とする。
【0030】
上記方法により、タイル境界近傍の画像が高精度に復号され、タイル歪みが低減される。更に本実施の形態では、サブバンドに応じてROI変換係数を制限することにより、タイル境界近傍への不必要な符号量割り当てが抑えられ、タイル境界から遠い領域にも符号量が割り当てられるため、全体として高い画質の再生画像が得られる。
実施の形態2では、ROI変換係数が存在する解像度を制限するパラメータNRを1として解像度の制限を設けなかったが、特定の解像度成分のみにROI変換係数を設定することも可能である。
【0031】
実施の形態3.
以下に、この発明の実施の形態3による符号化装置及び方法の構成を説明する。実施の形態3では、ROI変換係数は、各サブバンドにおいて、隣接するタイルのサブバンドに接する変換係数とする。図11に実施の形態3による、変換係数マスクデータの例を示す。
符号化装置あるいは方法の構成、処理は、図5のCREATE_MASK、DEINTERLEAVEを除いて、実施の形態1と同一なので、相違点のみを説明する。実施の形態3では、CREATE_MASK、DEINTERLEAVEに代わり、図12に示すように、各サブバンドの変換係数マスクデータを以下のように設定する。
MN,LL(x,0)=1 (0≦x<x1)
MN,HL(x,y1−1)=1 (0≦x<x1)
MN,LH(0,y)=1 (0≦y<y1)
MN,HH(x1−1,y)=1 (0≦y<y1)
上記以外 M0(x,y)=0
(x1,y1は各サブバンドにおける水平、垂直方向のサイズ)
ただし、現タイルの
上に隣接サブバンドが存在しなければ、
MN,LL(x,0)=0 (0≦x<x1)
下に隣接サブバンドが存在しなければ、
MN,HL(x,y1−1)=0 (0≦x<x1)
左に隣接サブバンドが存在しなければ、
MN,LH(0,y)=0 (0≦y<y1)
右に隣接サブバンドが存在しなければ、
MN,HH(x1−1,y)=0 (0≦y<y1)
とする。
【0032】
上記方法により、タイル境界近傍の画像が高精度に復号され、タイル歪みが低減される。更に本実施の形態では、ROI変換係数をタイル境界に接する変換係数だけに制限することにより、タイル境界近傍への不必要な符号量割り当てが抑えられ、タイル境界から遠い領域にも符号量が割り当てられるため、全体として高い画質の再生画像が得られる。
実施の形態3では、ROI変換係数が存在する解像度を制限しなかったが、実施の形態1と同様に、特定の解像度成分のみのタイル境界に接する変換係数だけにROI変換係数を設定することも可能である。
【0033】
なお、上記各実施の形態においては、符号化装置は図1に示される各要素がハードウェアであるとして説明したが、これら各要素は同等の機能を持つ汎用の計算機とプログラムで構成されるソフトウェア要素であってもよい。即ち、タイル分割部100、ウェーブレット変換部101、量子化部102、エントロピ符号化部104の従来と同等機能を持つ各要素は、既に従来からソフトウェアによる方法が知られている。同様に、ROI変換係数選択方法として、図5ないし図7のフローで示されるソフトウェアプログラムで得られることは明らかであるし、変換係数シフト方法も単に桁上げするだけなので、その方法は容易である。
【0034】
【発明の効果】
以上のようにこの発明によれば、ウェーブレット変換の特徴に着目して特定の変換係数を優先的に符号化するようにしたので、限られた符号化情報でタイル化した画像に対しても、そのタイル隣接部のみでなく、タイル内部も優れた画質を維持できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1における特定係数優先符号化装置の構成を示すブロック図である。
【図2】 タイル分割を説明する図である。
【図3】 タイルのウェーブレット変換を示す図である。
【図4】 実施の形態1における変換係数マスクデータの例を示す図である。
【図5】 実施の形態1におけるROI変換係数選択部(選択方法)の動作フローを示す図である。
【図6】 実施の形態1におけるROI変換係数選択部(選択方法)の動作フローを示す図である。
【図7】 実施の形態1におけるROI変換係数選択部(選択方法)の動作フローを示す図である。
【図8】 実施の形態1における分割レベル増加によるROI係数生成を説明する図である。
【図9】 実施の形態1における特定係数優先復号装置の構成を示すブロック図である。
【図10】 実施の形態2における変換係数マスクデータの例を示す図である。
【図11】 実施の形態3における変換係数マスクデータの例を示す図である。
【図12】 実施の形態3におけるDEINTERLEAVE処理を説明する図である。
【図13】 従来の空間情報と変換係数の対応配置関係を示す図である。
【符号の説明】
100 タイル分割部、101 ウェーブレット変換部、102 量子化部、103 変換係数シフト部、104 エントロピ符号化部、105 ROI変換係数選択部、200 タイル合成部、201 ウェーブレット逆変換部、2022 逆量子化部、203 変換係数シフトダウン部、204 エントロピ復号部、502 CREATE_MASKステップ、503 DEINTERLEAVEステップ。
Claims (12)
- タイル分割し、ウェーブレット変換し、エントロピ符号化する符号化装置において、
上記タイル分割した画像情報をウェーブレット変換した変換係数のうち、該ウェーブレット変換で得られるサブバンド中の所定のサブバンド、のタイル境界近傍にある変換係数のみを特定変換係数として選択する変換係数選択部と、
上記選択された特定変換係数を優先符号化するようシフトする変換係数シフト部とを備えて、
上記シフト後の変換係数に対してエントロピ符号化することを特徴とする特定変換係数優先符号化装置。 - 変換係数シフト部は、特定変換係数として選択された係数以外の変換係数の最大絶対値を2進数で表現した場合の桁数をS(Sは自然数)とした場合、特定変換係数をSビット優先符号化されるようシフトすることを特徴とする請求項1記載の特定変換係数優先符号化装置。
- 変換係数選択部は、タイル分割レベルの最低解像度レベルにおける各サブバンドの上下左右の境界に配置された変換係数のみを特定変換係数として選択することを特徴とする請求項1記載の特定変換係数優先符号化装置。
- 変換係数選択部は、タイル境界近傍の変換係数のうち、水平方向高周波、垂直方向高周波のサブバンドでは上下左右の境界に配置された変換係数を、水平方向高周波、垂直方向低周波のサブバンドでは上下の境界に配置された変換係数を、水平方向低周波、垂直方向高周波のサブバンドでは左右の境界に配置された変換係数を、特定変換係数として選択することを特徴とする請求項1記載の特定変換係数優先符号化装置。
- タイル分割し、ウェーブレット変換し、エントロピ符号化する符号化装置と、該符号化装置に対応する復号装置で構成されるシステムにおいて、
上記タイル分割した画像情報をウェーブレット変換した変換係数のうち、該ウェーブレット変換で得られるサブバンド中の所定のサブバンド、のタイル境界近傍にある変換係数のみを特定変換係数として選択する変換係数選択部と、上記選択された特定変換係数を優先符号化するようシフトする変換係数シフト部とを備えて、上記シフト後の変換係数に対してエントロピ符号化し、該エントロピ符号化したデータに優先符号化のシフト情報を付加して送信する符号化装置と、
上記符号化装置から受信した符号化データをエントロピ復号したものを、上記優先符号化のシフト情報に基づいてシフトを戻す変換係数シフトダウン部を備えて、ウェーブレット逆変換し、タイル合成する復号装置、とで構成されることを特徴とする特定変換係数優先符号化復号システム。 - 符号化装置の変換係数シフト部は、特定変換係数として選択された係数以外の変換係数の最大絶対値を2進数で表現した場合の桁数をS(Sは自然数)とした場合、特定変換係数をSビット優先符号化し、かつ符号化装置は該シフト桁数Sを送信し、
復号装置の変換係数シフトダウン部は上記送られたシフト桁数Sを用いてシフトダウンすることを特徴とする請求項5記載の特定変換係数優先符号化復号システム。 - 符号化装置の変換係数選択部は、タイル分割レベルの最低解像度レベルにおける各サブバンドの上下左右の境界に配置された変換係数のみを特定変換係数として選択することを特徴とする請求項5記載の特定変換係数優先符号化復号システム。
- 符号化装置の変換係数選択部は、タイル境界近傍の変換係数のうち、水平方向高周波、垂直方向高周波のサブバンドでは上下左右の境界に配置された変換係数を、水平方向高周波、垂直方向低周波のサブバンドでは上下の境界に配置された変換係数を、水平方向低周波、垂直方向高周波のサブバンドでは左右の境界に配置された変換係数を、特定変換係数として選択することを特徴とする請求項5記載の特定変換係数優先符号化復号システム。
- タイル分割し、ウェーブレット変換し、エントロピ符号化する符号化方法において、
上記タイル分割した画像情報をウェーブレット変換した変換係数のうち、該ウェーブレット変換で得られるサブバンド中の所定のサブバンド、のタイル境界近傍にある変換係数のみを特定変換係数として選択する変換係数選択ステップと、
上記選択された特定変換係数を優先符号化するようシフトする変換係数シフトステップと、
上記シフト後の変換係数に対してエントロピ符号化するエントロピ符号化ステップ、とを備えたことを特徴とする特定変換係数優先符号化方法。 - 変換係数シフトステップは、特定変換係数として選択された係数以外の変換係数の最大絶対値を2進数で表現した場合の桁数をS(Sは自然数)とした場合、特定変換係数をSビット優先符号化されるようシフトするようにしたことを特徴とする請求項9記載の特定変換係数優先符号化方法。
- 変換係数選択ステップは、タイル分割レベルの最低解像度レベルにおける各サブバンドの上下左右の境界に配置された変換係数のみを特定変換係数として選択することを特徴とする請求項9記載の特定変換係数優先符号化方法。
- 変換係数選択ステップは、タイル境界近傍の変換係数のうち、水平方向高周波、垂直方向高周波のサブバンドでは上下左右の境界に配置された変換係数を、水平方向高周波、垂直方向低周波のサブバンドでは上下の境界に配置された変換係数を、水平方向低周波、垂直方向高周波のサブバンドでは左右の境界に配置された変換係数を、特定変換係数として選択することを特徴とする請求項9記載の特定変換係数優先符号化方法。
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