図1は、本発明の第1の実施の一形態である人工呼吸器20を示すブロック図である。人工呼吸器20は、自発呼吸動作が低下または停止している患者21の肺に酸素を含む気体を供給し、患者21の肺の換気動作を支援する。
人工呼吸器20は、人工呼吸器本体20aと、装着部材20bとを含んで構成される。人工呼吸器本体20aは、ポンプ22と、本体吸気管路23と、本体呼気管路25と、呼気弁26とを含む。ポンプ22は、酸素を含む気体を患者に供給する供給手段である。本体吸気管路23は、ポンプ22から吐出された気体を患者の肺に導くための管路である。本体呼気管路25は、患者が吐出する気体を予め定める排出場所24に導くための管路である。呼気弁26は、本体呼気管路25に介在されて本体呼気管路25の開閉を行う。ポンプ22および呼気弁26は、患者の肺の換気動作に応じて動作する。なお本体吸気管路23と本体呼気管路25とをまとめて、各本体管路23,25と称する場合がある。
装着部材20bは、外部吸気管路27と、外部呼気管路28とを含む。外部吸気管路27は、本体吸気管路23と患者の肺とを接続するための管路である。また外部呼気管路28は、本体呼気管路25と患者の肺とを接続するための管路である。なお外部吸気管路27と外部呼気管路28とをまとめて、各外部管路27,28と称する場合がある。
各外部管路27,28は、可撓性を有する細管によって実現され、たとえば合成樹脂製のチューブによって実現される。また外部吸気管路27と外部呼気管路28とは、患者側に設けられるYピースによって合流して、合流路29を形成する。Yピースは、人工呼吸用マスクに接続されることによって、患者の気道に気体を供給する。またYピースは、気管チューブに接続されることによって、患者の肺に気体を供給する。このように人工呼吸器20は、本体吸気管路23と外部吸気管路27とによって吸気管路が構成され、本体呼気管路25と外部呼気管路28とによって呼気管路が構成される。
人工呼吸器20は、患者の肺に気体を供給する吸気期間においては、ポンプ22から気体を本体吸気管路23に吐出するとともに、呼気弁26によって本体呼気管路25を閉じる。また患者から気体を吐出させる呼気期間においては、人工呼吸器の外部の場所33からポンプ22の内部空間に気体を吸引するとともに、呼気弁26によって本体呼気管路25を開く。
人工呼吸器20は、このような吸気期間動作と呼気期間動作とを交互に繰り返して、患者の肺の換気動作を支援する。また人工呼吸器20は、ポンプ22および呼気弁26を制御する制御手段を有してもよい。
また人工呼吸器本体20aは、人工呼吸器本体20aの外部の予め定める吸入場所33からポンプ22に空気を導くための空気供給管路34が形成される。空気供給管路34は、ポンプ22と吸入場所33とを連通する。また空気供給管路34には、ポンプ22から吸入場所33に気体が逆流することを防ぐ吸入側逆止弁35が介在される。また人工呼吸器本体20aは、ポンプ22に酸素を導くための酸素供給管路36が形成される。酸素供給管路36は、ポンプ22と酸素貯留場所37とを連通する。酸素供給管路36には、酸素をポンプ22に供給する供給量を調整するための調整弁38が設けられる。
ポンプ22は、呼気期間にあたって空気供給管路34を通過する空気と酸素供給管路36を通過する酸素とを混合して吸引する。また吸気期間にあたって吸引した混合気体を本体吸気管路23に吐出する。また人工呼吸器本体20aは、本体吸気管路23と吸入場所33とを連通する導入管路40を含む。導入管路40には、患者側から吸入場所側に気体が逆流することを防止する吸入側逆止弁41が設けられる。これによってポンプ22が停止した場合であっても、患者は、吸入場所33から気体を吸引することができる。
本体吸気管路23には、患者側からポンプ側に気体が逆流することを防止するポンプ側逆止弁39が介在される。また本体呼気管路25には、排気場所側から患者側に気体が逆流することを防止する排気側逆止弁42が設けられる。排気側逆止弁42は、呼気弁27よりも患者側に設けられる。
本発明の人工呼吸器本体20aは、本体吸気管路23と本体呼気管路25とを連通する連通管路44と、連通管路44に介在されて連通管路44を開閉する開閉手段とをさらに含む。開閉手段は、通常状態では、連通管路44を閉じる。また開閉手段は、各外部管路27,28のいずれかが閉塞すると連通管路44を開く。なお管路を開くとは、管路の一端部から他端部まで管路内の空間が連通する連通状態をいう。また管路を閉じるとは、管路の一端部から他端まで管路内の空間が連通することなく閉鎖する閉鎖状態をいう。
第1の実施の形態では、開閉手段は、ばね式チェック弁45によって実現される。ばね式チェック弁45は、連通管路44を通過して本体呼気管路25から本体吸気管路23に気体が流れることを防止する逆止弁である。またばね式チェック弁45は、本体吸気管路23を流れる吸気気体の圧力が、本体呼気管路25を流れる呼気気体の圧力よりも予め定める動作圧力以上高くなると連通管路44を開く。
連通管路44は、ばね式チェック弁45が介在されることによって、ばね式チェック弁45よりも本体吸気管路側となる上流側部分44aと、ばね式チェック弁45よりも本体呼気管路側となる下流部分44bとに分けられる。連通管路44のうち上流側部分44aは、一端部が本体吸気管路23に接続され、他端部がばね式チェック弁45に接続される。また連通管路44のうち下流側部部分44bは、一端部がばね式チェック弁45に接続され、他端部が本体呼気管路25に接続される。
連通管路44は、本体吸気管路23のうち、ポンプ側逆止弁39よりも患者側部分60に接続される。また連通管路44は、本体呼気管路25のうち、排気側逆止弁42よりも患者側部分61に接続される。連通管路44は、可及的に患者側に設けられることが好ましい。すなわち連通管路44は、本体吸気管路23のうちの気体が流れる方向の下流側端部と、本体呼気管路25のうちの気体が流れる方向の上流側端部とを連結することが好ましい。
図2は、本発明の実施の一形態のばね式チェック弁45を示す断面図である。ばね式チェック弁45は、本体呼気管路25側から本体吸気管路23側に向かうばね力を弁部材46に与えて、弁部材46によって連通管路44を塞ぐチェック弁である。
ばね式チェック弁45は、弁箱47と、弁部材46と、ばね体48とを含んで構成される。弁箱47は、内部空間となる弁室49が形成される。また弁箱47には、弁室49から外方に開放する気体導入孔53および気体排出孔54が形成される。気体導入孔53が形成される部分は、連通管路44のうち上流側部分44aに接続され、気体排出孔54が形成される部分は、連通管路44のうち下流側部分44bに接続される。
弁部材46は、弁室49内で、予め定める移動軸線51に沿って往復変位可能に設けられる。また弁箱47には、気体導入孔53側であって弁部材46に臨む弁座50が形成される。弁座50には、弁孔52が形成され、弁孔52は、気体導入孔53と連通する。ばね体48は、移動方向一方A1であって弁部材46が気体導入孔53に向かう方向にばね力を与え、弁部材46を弁座50に接触させる。ばね体48は、たとえば圧縮コイルばねによって実現される。ばね体48によって弁部材46が弁座50に当接すると、弁孔52が塞がれる。また弁部材46の移動軸線51に垂直な最大断面積は、弁孔52の移動軸線51に垂直な面積よりも大きく形成される。
本体吸気管路23を流れる吸気気体の圧力が、本体呼気管路25を流れる呼気気体の圧力よりも大きくなり、その圧力差が予め定める圧力差を超えた場合、弁部材46は、ばね体48のばね力に抗して移動方向他方A2に変位する。これによって弁部材46が弁座52から離反し、弁孔52と気体排出孔54とが連通する。そして連通管路44の上流側部分44aから下流側部分44bに気体が流れる。すなわち連通管路44が開かれる。
また吸気気体と呼気気体との圧力差が、予め定める圧力差を超えない場合には、連通管路44は閉じられる。言い換えると、連通管路44を介して、本体呼気管路25から本体吸気管路23に気体が流れることが阻止される。
連通管路44が開かれるために必要な圧力差は、ばね体48のばね力によって設定される。この圧力差は、少なくとも本体吸気管路23から外部吸気管路27、合流路29、外部呼気管路28、本体呼気管路25を順に気体が流れる場合の管路の圧力損失よりも大きくなるように設定される。これによって各外部管路27,28が、閉塞していない場合に、連通管路44が開いてしまうといった誤動作を防止することができる。たとえば吸気気体と呼気気体との圧力差、すなわちばね式チェック弁45によって連通管路44が開く動作圧力は、たとえば10cmH20に設定される。
図3は、通常状態の気体の流れを示す人工呼吸器20の空気回路である。通常状態、すなわち外部吸気管路27および外部呼気管路28が閉塞していない状態において、吸気期間の気体の流れは、図3の白矢印で示される。ポンプ22から吐出された気体は、本体吸気管路23および外部吸気管路27を順に通過して、患者23の肺に供給される。このとき、呼気弁26によって本体呼気管路25が閉じられているので、本体吸気管路23と、呼気弁26よりも患者側の本体呼気管路25とは、ほぼ同じ圧力となる。したがって連通管路44が開くことがなく、ポンプ22から供給されて酸素を多く含む気体が、本体呼気管路25および外部呼気管路28に流れることがない。
また通常状態において呼気期間の気体の流れは、図3の黒矢印で示される。呼気弁26によって本体呼気管路25が開かれる。患者から吐出された気体は、外部呼気管路28および本体呼気管路25を順に通過して、排出場所24に導かれる。またポンプ22は、呼気期間において、空気供給管路34から空気を吸引するとともに酸素供給管路36から酸素を吸引して、吸引した気体をポンプ内に貯留する。
このように通常状態では、連通管路は閉じられている。したがって各吸気管路23,27には、ポンプ22から供給される気体で満たされ、患者が吐出した気体が進入することがない。また各呼気管路25,28には、患者が吐出した気体で満たされ、ポンプ22から供給される気体が直接進入することがない。これによって患者自身が吐出して二酸化炭素を多く含む気体を、患者が再び吸引することを防ぐことができる。
図4は、外部吸気管路27が閉塞した場合の気体の流れを示す人工呼吸器20の空気回路である。人工呼吸器20は、外部吸気管路27が閉塞しても、ポンプ22および呼気弁27について、通常状態と同様に動作する。吸気期間の気体の流れは、図4の白矢印で示される。ポンプ22から吐出された気体は、外部吸気管路27が閉塞しているので、本体吸気管路23に留まる。そして本体吸気管路27を流れる吸気気体の圧力が本体呼気管路圧力25を流れる呼気気体の圧力よりも高くなる。そしてその圧力差がばね式チェック弁45の動作圧力より大きくなると、弁部材46が変位して連通管路44が開く。
これによってポンプ22から吐出される気体は、本体吸気管路23、連通管路44、本体呼気管路25および外部呼気管路28を順に通過して、患者23の肺に供給される。また呼気期間の気体の流れは、図4の黒矢印で示され、患者から吐出された気体は、通常状態と同様に流れて、排出場所24に排出される。このように外部吸気管路27が閉塞した場合であっても、ポンプ22から供給される気体を、連通管路44によって迂回させることによって、患者の肺の換気動作を支援することができる。
なお、ポンプ22から供給する気体の容量は、患者の肺から本体呼気管路25と連通管路44とが連結される部分までの管路内の空間に満たされる気体の容量よりも、大きく設定されることが好ましい。これによって各呼気管路25,28に、患者が以前に吐出した気体が残留していても、残留している気体の容量よりも多くの気体を患者に供給することができ、患者自身が吐出した気体のみを、患者が吸引しつづける状態を回避することができる。
たとえば患者の肺から、本体呼気管路25と連通管路44とが連結される部分までの各呼気管路内の空間の気体の容量が200ccである場合、ポンプ22から供給される気体の容量が500ccに設定されることで、300ccの酸素を多く含む気体を患者に供給することができる。
図5は、外部呼気管路28が閉塞した場合の気体の流れを示す人工呼吸器20の空気回路図である。人工呼吸器20は、外部呼気管路28が閉塞しても、ポンプ22および呼気弁27について、通常状態と同様に動作する。この場合、吸気期間の気体の流れは図5の白矢印で示される。ポンプ22から吐出される気体は、通常状態と同様に流れて、患者の肺に供給される。
また呼気期間の気体の流れは、図5の黒矢印で示され、患者から吐出された気体は、外部呼気管路28が閉塞しているので、合流管路29から外部吸気管路27および本体吸気管路23に溜まる。そして本体吸気管路27を流れる吸気気体の圧力が本体呼気管路圧力25を流れる呼気気体の圧力よりも高くなる。そしてその圧力差がばね式チェック弁45の動作圧力よりも大きくなると、弁部材46が変位して連通管路44が開く。これによって患者から吐出された気体は、外部吸気管路27、本体吸気管路23、連通管路44および本体呼気管路25を順に通過して、排気場所に導かれる。
この場合、患者は、呼気期間にばね式チェック弁45の動作圧力相当の背圧を受けるが、ばね式チェック弁45の動作圧力を可及的に小さくすることによって患者の負担を軽減できる。また後述する報知手段73によって、各外部管路27,28の閉塞状態を報知することで、医療従事者は、各外部管路27,28の閉塞状態を知り、各外部管路27,28を正常に復旧することができる。このようにして各外部管路27,28を正常状態に復旧することによって、患者の負担を軽減できる。
このように外部呼気管路28が閉塞した場合であっても、患者から吐出される気体を、連通管路44によって迂回させることによって、患者の肺の換気動作を支援することができる。なお前述と同様に、ポンプ22から患者に供給する気体の容量は、患者の肺から本体吸気管路23と連通管路44とが連通される部分までの管路内の空間に満たされる気体の容量よりも、大きく設定されることが好ましい。
以上のように本発明の第1の実施の形態に従えば、連通管路44が設けられることによって、各外部管路27,28のいずれかが閉塞した場合であっても、気体の流れを迂回させることによって患者の肺の換気作業を継続して実行することができる。これによって万が一、各外部管路27,28のいずれかが閉塞した状態で、患者が自発呼吸を停止した場合であっても、患者の肺を換気することができる。
また通常状態では、本体吸気管路27と本体呼気管路28との圧力差が小さく、連通管路44が開くことがない。したがって通常状態では、外部呼気管路28には、ポンプ22から供給される気体が直接流れることがない。また外部吸気管路27には、患者から吐出される気体が直接流れることがない。また患者が気体を吐出した排出場所24から気体を吸引することがない。これによって通常状態では、患者から吐出されて二酸化酸素を多く含む気体を、患者が再び吸引することを防ぐことができ、患者の負担を低減することができる。また通常状態と異常状態とで、ポンプ22および呼気弁26の制御を変更する必要がなく、信頼性を向上することができる。
連通管路44は、本体吸気管路23のうち気体が流れる方向の下流側の端部と、本体呼気管路25のうち気体が流れる方向の上流側の端部とを連通する。これによって各外部管路27,28のいずれかが閉塞した場合であっても、患者が吐出した気体を、患者が再び吸引する気体の容量を可及的に小さくすることができ、ポンプ22から供給される気体をより多く患者に供給することができる。
また各本体管路23,25に、吸気気体および呼気気体の状態を検出する各検出手段40,43,91〜95が設けられる場合、それらの各検出手段40,43,91〜95が気体の状態を検出する位置とほぼ同じか、その位置よりも患者側の位置で、連通管路44が各本体管路23,25に接続されることが好ましい。これによって異常状態であっても、各検出手段40,43,91〜95によって、気体の状態を精度よく検出することができる。
たとえば本体吸気管路23に吸気気体の流量を検出する流量検出手段91が設けられる場合、流量を検出する位置よりも、患者側の本体吸気管路23に連通管路44が接続されることによって、連通管路44に流れる気体の有無にかかわらず、正確な吸気気体の流量を検出することができる。
図1に示すように、たとえば各検出手段は、圧力検出手段40,41のほか、吸気気体および呼気気体の流量を検出する流量検出手段91,92、吸気気体の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ93、吸気気体の温度を検出する吸気温度センサ94、呼気気体の温度を検出する呼気温度センサ95などがある。
また連通管路44を開閉する開閉手段をばね式チェック弁45によって実現することによって、各外部管路27,28の閉塞状態を判断する閉塞状態検知手段を別途設ける必要がなく、管路閉塞時に連通管路44を開くことができる。また連通管路44を開閉するために弁部材46を変位駆動する手段を別途設ける必要がない。また正常状態となった場合に、復帰動作を行う必要がない。したがって単純な構成によって開閉手段を実現することができ、安価に実現することができる。また構成を単純化することで故障を防止することができ、信頼性を向上することができる。
さらに各外部管路27,28に含まれる気体の容積よりも大きい体積の気体を、ポンプ22から供給することによって、異常状態であっても、酸素を多く含む気体を患者に供給することができ、患者の負担をさらに小さくすることができる。また各外部管路23,25のいずれかが閉塞した場合には、外部呼気管路内の空間に満たされる気体の容量よりも大きくなるように、ポンプ22から供給する気体の容量を増やしてもよい。これによって患者自身が吐出した気体のみを、患者が吸引しつづける状態を回避することができる。
また各外部管路23,25のいずれかが閉塞した場合には、調整弁38によって酸素供給径路36からポンプ22に供給される酸素量を増やしてもよい。これによって患者が吐出した気体の一部を、再び吸引した場合であっても、患者の肺に供給される酸素濃度を予め定める値に保つことができる。
図6は、第2の実施の形態の人工呼吸器120の電気的構成を示すブロック図である。第2の実施の形態の人工呼吸器120は、図1に示す構成とともに本体吸気管路23を流れる吸気気体および本体呼気管路25を流れる呼気気体のそれぞれの圧力または吸気基体と呼気気体との圧力差を検出して、各外部管路27,28の閉塞状態を判断する。第2の実施の形態の人工呼吸器120は、第1の実施の形態の人工呼吸器20の構成のほか、吸気圧力検出手段70と、呼気圧力検出手段71と、閉塞状態検知手段72と、報知手段73とをさらに含む。したがって前述する第1の実施の形態の人工呼吸器20と同様の構成については、説明を省略する。
また図1に示すように、本体吸気管路23には、本体吸気管路23を流れる気体の圧力を検出するための吸気圧力検出孔40が形成される。吸気圧力検出孔40は、ポンプ側逆止弁39よりも患者側に形成される。また本体呼気管路25には、本体呼気管路25を流れる気体の圧力を検出するための呼気圧力検出孔43が形成される。呼気圧力検出孔43は、排気側逆止弁42よりも患者側に形成される。
吸気圧力検出手段70は、吸気圧力検出孔40から導かれる気体から、本体吸気管路23を流れる吸気気体の圧力である吸気圧力を検出する。呼気圧力検出手段71は、呼気圧力検出孔43から導かれる気体から、本体呼気管路25を流れる呼気気体の圧力である呼気圧力を検出する。各圧力検出手段70,71は、その検出結果を示す信号Pi,Peを閉塞状態検知手段72に与える。
閉塞状態検知手段72は、吸気圧力検出手段70から吸気圧力を示す吸気圧力信号Piと、呼気圧力検出手段71から呼気圧力を示す呼気圧力信号Peとを取得する。閉塞状態検知手段72は、吸気圧力信号Piおよび呼気圧力信号Peに基づいて、吸気圧力から呼気圧力を減算して吸気圧力と呼気圧力との圧力差を求め、その圧力差が予め定める設定圧力差よりも大きいか小さいかを判定する。
閉塞状態検知手段72は、吸気圧力と呼気圧力との圧力差が、予め定める設定圧力差よりも大きい場合には、各外部管路27,28のうちのいずれかが閉塞していることを判断して、閉塞信号を出力する。閉塞信号は、医療従事者によって解除信号が与えられるまで、閉塞信号の出力を継続する。また吸気圧力と呼気圧力との圧力差が、設定圧力差よりも小さい場合には、各外部管路27,28がともに閉塞していないことを判断する。
閉塞状態検知手段72は、閉塞信号を報知手段73に与え、報知手段73は、各外部管路27,28が閉塞していることを報知する。報知手段73は、たとえば音および光の少なくともいずれかを発する。
人工呼吸器120は、前記設定圧力差を任意に設定可能な入力手段74を有してもよい。この場合、医療従事者によって設定圧力差が入力手段74に設定されると、入力手段74は、設定された設定圧力差を閉塞状態検知手段に伝える。また設定圧力差は、ばね式チェック弁45が連通管路44を開くのに必要な、吸気圧力と呼気圧力との圧力差に設定されてもよい。
さらに人工呼吸器120は、検出される圧力差が、吸気期間か呼気期間かのいずれの期間かを示すトリガー信号を生成するトリガー信号生成手段75を有してもよい。トリガー信号生成手段75は、トリガー信号を閉塞状態検知手段72に与える。閉塞状態検知手段72は、トリガー信号に基づいて、吸気期間の前記圧力差が設定圧力差よりも大きくなると、外部吸気管路27が閉塞していることを判断する。また呼気期間の前記圧力差が設定圧力差よりも大きくなると、外部呼気管路28が閉塞していることを判断する。
このようにトリガー信号に基づくことによって、外部吸気管路27と外部呼気管路28とのいずれが閉塞したかを判断することができる。またその判断結果を報知手段73に報知することによって、さらに利便性を向上することができる。
図7は、外部吸気管路27が閉塞した状態における吸気圧力と呼気圧力との圧力差の時間変化と、閉塞信号の時間変化との関係を示すグラフである。図7(1)に吸気圧力と呼気圧力との時間変化を示す。また図7(2)に、吸気圧力と呼気圧力との圧力差の時間変化を示す。また図7(3)に、閉塞信号の時間変化を示す。
通常、吸気期間W1では、吸気圧力および呼気圧力は、時間経過とともにほぼ同様の変化率で上昇する。また呼気期間W2では、吸気圧力および呼気圧力は、ほぼ大気圧程度に低下する。また吸気圧力と呼気圧力とは、吸気管路23,27と呼気管路25,28との圧力損失相当の圧力差がある。
吸気期間W1に外部吸気管路27が閉塞した場合、図7(1)に示すように、吸気期間W1では、外部吸気管路27が閉塞した閉塞発生時刻T1から、呼気圧力に対して吸気圧力が大きくなる。また呼気期間W2では、吸気圧力と呼気圧力とは、正常状態とほぼ同じ変化を示す。
したがって、図7(2)に示すように、吸気圧力と呼気圧力との圧力差は、吸気期間W1において閉塞発生時刻T1から時間経過とともに大きくなり、予め設定される設定圧力差よりも大きくなる。そして呼気期間W2では、圧力差は、予め定める設定圧力差よりも小さくなった後、正常状態とほぼ同じ変化を示す。
図7(3)に示すように、閉塞状態検知手段72は、吸気期間W1において吸気圧力と呼気圧力との圧力差が設定圧力差よりも大きくなる圧力上昇時刻T2に達すると、その時刻T2から閉塞信号の出力を開始する。また閉塞状態検知手段72は、呼気期間W2において吸気圧力と呼気圧力との圧力差が設定圧力差よりも小さくなる圧力下降時刻T3に達しても、閉塞信号の出力を継続する。そして閉塞状態検知手段72は、閉塞状態が解除されたことを示す信号が与えられるまで閉塞信号を出力し続ける。
図8は、外部呼気路28が閉塞した状態における吸気圧力と呼気圧力との圧力差の時間変化と、閉塞信号の時間変化との関係を示すグラフである。図8(1)に吸気圧力と呼気圧力との時間変化を示す。また図8(2)に、吸気圧力と呼気圧力との圧力差の時間変化を示す。また図8(3)に、閉塞信号の時間変化を示す。
吸気期間W1に外部呼気管路28が閉塞した場合、図8(1)に示すように、吸気期間W1では、吸気圧力と呼気圧力とは、正常状態とほぼ同じ変化を示す。また呼気期間W2では、吸気期間W2が開始されてから呼気圧力に対して吸気圧力が大きくなる。
したがって、図8(2)に示すように、吸気圧力と呼気圧力との圧力差は、呼気期間W2において時間経過とともに大きくなり、予め設定される設定圧力差よりも大きくなる。そして吸気期間W1では、圧力差は、予め定める設定圧力差よりも小さくなった後、正常状態とほぼ同じ変化を示す。
図8(3)に示すように、閉塞状態検知手段72は、呼気期間W2において吸気圧力と呼気圧力との圧力差が設定圧力差よりも大きくなる圧力上昇時刻T2に達すると、その時刻T2から閉塞信号の出力を開始する。また閉塞状態検知手段72は、吸気期間W1において吸気圧力と呼気圧力との圧力差が設定圧力差よりも小さくなる圧力下降時刻T3に達しても、閉塞信号の出力を継続する。そして閉塞状態検知手段72は、閉塞状態が解除されたことを示す信号が与えられるまで閉塞信号を出力し続ける。
図9は、第3の実施の形態の人工呼吸器220の電気的構成を示すブロック図である。第3の実施の形態の人工呼吸器220は、図1に示す構成とともに、ばね式チェック弁45の弁部材46の変位状態を検出して、各外部管路27,28の閉塞状態を検知する。第3の実施の形態の人工呼吸器220は、第2の実施の形態の人工呼吸器120と類似した構成を示し、類似した構成については、説明を省略する。
第3の実施の形態の人工呼吸器220は、第2の実施の形態の人工呼吸器120の圧力検出手段70,71に換えて、弁位置検出手段76を有する。弁位置検出手段76は、弁部材46が弁座52から離反したことを検出すると、検出結果を閉塞状態検知手段72に与える。閉塞状態検知手段72は、弁位置検出手段76から弁部材46が弁座52から離反したことを示す信号を受取ると、各外部管路27,28のいずれかが閉塞したことを報知手段73に報知させる。人工呼吸器220は、前述に対応するような入力手段74およびトリガー信号生成手段75を備えていてもよい。これによって第2の実施の形態の人工呼吸器120と同様の効果を得ることができる。
図10は、弁位置検出手段76を備えるばね式チェック弁145を示す断面図である。開閉手段であるばね式チェック弁145は、図2に示すばね式チェック弁45に対応する弁箱47、弁部材46、ばね体48に対応する構成を有する。また弁位置検出手段150は、弁部材46の移動方向の変位量を検出し、たとえばリミットスイッチおよび近接スイッチなどによって実現することができる。
また本発明の人工呼吸器は、第2および第3の実施の形態の人工呼吸器120,220の構成の両方の構成を備えてもよい。これによって圧力差および弁の移動の両方によって、各外部管路27,28のいずれかの閉塞状態を検知することができるので、閉塞状態の検知信頼性を向上することができる。
図11は、第4の実施の形態の人工呼吸器320の電気的構成を示すブロック図である。第4の実施の形態の人工呼吸器320は、第2の実施の形態の人工呼吸器120にさらに弁部材46を移動方向他方B2に変位駆動する弁駆動手段77を有する。移動方向他方B2は、弁部材46が弁座52から離反する方向である。言い換えると開閉手段は、ばね式チェック弁45と弁駆動手段77とを含む。
弁駆動手段77は、閉塞状態検知手段72から各外部管路27,28のいずれかが閉塞していることを示す閉塞信号が与えられると、弁部材46を移動方向他方B2に移動させ、連通管路44を開く。弁駆動手段77は、入力手段74から解除信号が与えられるまで、弁部材46と弁座52とを離反させた状態で保持し、連通管路44の開状態を継続する。
また報知手段73によって各外部管路27,28の閉塞状態を報知することによって、医療従事者は、閉塞状態を知ることができる。閉塞状態を知った医療従事者は、各外部管路27,28を正常な状態に戻す。そして正常状態に戻ったことを入力手段74に入力する。入力手段74は、解除信号を弁駆動手段77に与えることによって、弁駆動手段77は、連通管路44の開状態を解除する。
図12は、弁駆動手段77を示す断面図である。弁駆動手段77は、移動軸線51に沿って移動可能に設けられる押圧棒80と、押圧棒80を移動軸線51に沿って移動させるプランジャ83と、移動方向一方B1であって弁部材46から離反するばね力をプランジャに与えるばね体81と、移動方向他方B2であって弁部材46に近接する電磁力をプランジャ83に与えるコイル84とを含む。すなわち、ばね体81と、プランジャ83と、コイル84とによって電磁ソレノイド82を実現する。
弁駆動手段77は、閉塞状態検知手段72から閉塞信号が与えられると、コイルを通電する。これによって、励磁したプランジャ83が、ばね体81のばね力に抗して移動し、押圧棒80を移動方向他方B2に移動させる。押圧棒80は、弁部材46に当接し、弁部材46を弁座52から離反させる。
弁駆動手段77は、入力手段74から解除信号が与えられると、コイルの通電を解除する。これによって、プランジャ83の励磁が解除される。プランジャ83は、ばね体81のばね力によって移動し、プランジャ83とともに押圧棒80が移動方向一方B1に移動する。押圧棒80が弁部材46から離反して、弁部材46が弁座52に当接する。
以上のように第4の実施の形態の人工呼吸器320では、各外部管路27,28の閉塞が確認されると、弁駆動手段77が、連通管路44を開状態で保持する。これによってばね式チェック弁45のみによって開閉手段が実現される場合に対して、吸気気体と呼気気体との圧力差を必要とすることなく、連通管路44を開いた状態に保つことができる。
これによって本体管路23,25に設けられる圧力検出孔40,43から導かれる気体の圧力から、患者の気道圧力を精度よく推定することができる。また患者が自発呼吸する場合など、気体を連通管路44に流すための圧力差を必要とすることないので、患者の負担を低減することができる。また仮に閉塞状態を検知してから弁駆動手段77が弁部材46を変位駆動するまでに時間がかかる場合や、コイルを通電できない場合であっても、ばね式チェック弁45を有することによって連通管路44の開閉動作が阻害されることがない。
また、閉塞状態検知手段72は、第2の実施の形態の人工呼吸器120に示すように、吸気圧力検出手段70および呼気圧力検出手段71から与えられる信号Pi,Peに基づいて、閉塞信号を弁駆動手段77に与えてもよいが、他に第3の実施の形態の人工呼吸器220に示すように、弁位置検出手段76から与えられる信号に基づいて、閉塞信号を弁駆動手段77に与えてもよい。
図13は、第5の実施の形態の人工呼吸器の開閉手段200を示す断面図である。第4の実施の形態の人工呼吸器は、第4の実施の形態の人工呼吸器320の開閉手段に換えて、ソレノイドによって連通管路44を開閉するオンオフ弁200が設けられる。オンオフ弁200は、弁箱47と、弁部材46と、弁駆動手段201とを含んで構成される。弁箱47および弁部材46は、図2に示すばね式チェック弁45の弁箱47および弁部材46に対応し、対応する符号を付して説明を省略する。
弁駆動手段201は、弁部材46に固定されて弁部材46とともに移動方向Cに移動可能に設けられるプランジャ201と、弁部材46が弁座52に近接する方向である移動方向一方に向かうばね力を、プランジャ201に与えるばね体202と、弁部材46が弁座52から離反する方向である移動方向他方C2に向かう電磁力を、プランジャ201に与えるコイル203とを含む。すなわち、ばね体202と、プランジャ201と、コイル203とによって電磁ソレノイドを実現する。
コイル203を通電状態とすることによって、励磁したプランジャ201が、ばね体202のばね力に抗して移動し、弁部材46が弁座52から離反する。これによって連通管路44が開く。またコイル203の通電状態を解除することによって、プランジャ201の励磁が解除され、ばね体202のばね力によって移動する。弁部材46は、弁座52に着座、すなわち接触し連通管路44が閉じる。
オンオフ弁200は、閉塞状態検知手段72から閉塞信号が与えられると、コイル202を通電状態として連通管路44を開く。またオンオフ弁200は、入力手段74から解除信号が与えられると、コイル202の通電状態を解除して連通管路44を閉じる。このようにチェック弁45に換えてオンオフ弁200によっても、連通管路44を開閉する開閉手段を実現することができる。
なお、上述した本発明の人工呼吸器の構成は、実施の一形態であって発明の範囲内で構成を変更してもよい。たとえば気体を供給する供給手段としてベローズポンプを用いたが、ピストンポンプであってもよい。
また病院などの場合、配管を介して気体貯留源から気体が供給されてもよい。また本発明の人工呼吸器は、一呼吸ごとに一定量の気体を患者に送る従量方式たとえばVCV(
Volume Control Ventilation)方式、呼気期間中に患者の気道圧力を一定に保ち、患者の肺のコンプライアンスに対応した換気量を得る従圧方式たとえばPCV(Pressure
Control Ventilation)方式など、人工呼吸器の制御方法にかかわらず好適に用いることができる。
また開閉手段としてチェック弁およびオンオフ弁を用いたが、連通管路44を開閉する手段であれば、他の手段を用いてもよい。また本実施の形態では閉塞状態検知手段は、吸気気体と呼気気体との圧力差または弁の移動状態に基づいて、各外部管路27,28の閉塞状態を判断したが、吸気気体および呼気気体の流量変化など他の状態に基づいて閉塞状態を判断してもよい。