JP4029646B2 - 熱間押出製管方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ユジーン・セジュルネ法により継目無管を熱間押出製造する際に適したマンドレルを用いた熱間押出製管方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ユジーン・セジュルネ法により継目無管を熱間押出製造する場合、マンドレルは、先端を除くいわゆる有効部については長手方向で断面形状の変化がないものが一般的であった。このようなマンドレルを使用した場合、ダイス前方に押し出された被加工材の外径は、トップ端部を除いた部分からボトム端部にかけて徐々に増大することが知られている。
【0003】
そこで、特開昭59−24518号では、マンドレルの有効部における断面形状を長手方向で異ならせ、押出管の断面寸法を長手方向で調整する熱間押出製管方法が開示されており、その中で押出管ボトム部の外径径大化を阻止するために、マンドレルを径小部と径大部の2段構造にする技術が開示されている。
【0004】
また、特公平7−47173号には、トップ端部を除いた部分からボトム端部にかけて徐々に外径が増大する現象を抑制するために、金属材料よりなるマンドレル本体の先端部に、該マンドレル本体よりも外径熱膨張が小さく、かつ、その外径がマンドレル本体よりも0.5〜3%大きい外径を有するマンドレルを使用する熱間押出製管方法が開示されている。
【0005】
また、特開平6−106233号には、トップ端部を除いた部分からボトム端部にかけて徐々に外径が増大する現象を抑制するために、マンドレル後端側に向けて徐々に縮径したテーパマンドレルを使用する熱間押出製管方法が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特開昭59−24518号で開示された熱間押出製管方法では、自然収縮がマンドレルによって阻害されるボトム部のみ外径の径大化を阻止することが可能であり、トップ端部を除いた部分からボトム端部にかけて徐々に外径が増大する現象に対しては効果がない。
【0007】
また、前記特公平7−47173号で開示された熱間押出製管方法では、外径の増大は抑制できるものの、マンドレル先端の径大部は被加工材と常に接触して拡管を促するために、被加工材からの吸熱及び摩擦熱で温度が上昇し、径大部の破壊や剥離が生じ易いという問題がある。
【0008】
また、ユジーン・セジュルネ法では、押出製管完了から次の押出製管開始の間に金属材料部の硬度を確保するためにマンドレルを冷却するが、その際、前記したように被加工材からの吸熱及び摩擦熱で温度が上昇した径大部では、熱疲労及び熱衝撃による破壊が生じ易くなるという問題もある。
【0009】
また、前記特開平6−106233号で開示された熱間押出製管方法でも、マンドレルの熱膨張により外径の増大化は依然として発生する。なお、マンドレルを熱膨張が小さな材質で構成した場合は、特公平7−47173号の問題と同様、マンドレルの破壊が生じ易くなるという問題がある。
【0010】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、トップ端部を除いた部分からボトム端部にかけての外径増大を抑制可能なマンドレルを用いてマンドレルの破壊や剥離の問題が一切発生しない熱間押出方法を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明に係る熱間押出方法は、少なくともアップセット時にアップセットされた被加工材が接触する部分より後方の部分を、押出終了時点でマンドレル前方に押し出された管が軸方向で等径化されるように、d2≦d1−96/Lを満足するよう、後端側に向けて徐々に外径を増大させるマンドレルを使用することとしている。なお、d2はアップセット時、被加工材押出先端に位置するマンドレルの外径(mm)、d1はアップセット時、被加工材押出後端に位置するマンドレルの外径(mm)、Lは被加工材アップセット時の長さ(mm)である。
【0012】
そして、上記の本発明に係る熱間押出方法を実施することで、アップセット時に被加工材と接触するため局所的に温度が上昇し、熱膨張量が最も大きいマンドレル先端近傍は順次成形される押出管の内径が大きくなるために拡管作用が生じないようになる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明者等は、有効部の断面形状に変化がないマンドレルを用い、ユジーン・セジュルネ法により熱間で押出された継目無管のトップからボトムにかけて外径と肉厚を測定した。その結果を図1に示すが、本発明者等は、この測定結果より、以下の知見を得ることができた。
【0014】
▲1▼ 外径はトップからボトムにかけて漸増すること。
▲2▼ ボトム端部は急激に外径が増大すること。
▲3▼ ボトム端部以外の箇所で局所的に外径が大きくなる部分があること。
▲4▼ 肉厚はトップからボトムにかけてほぼ一定であること。
【0015】
また、本発明者等は熱間押出直後のマンドレル温度を測定した。その結果を図2に示すが、この図2より、以下の知見を得た。
▲5▼ アップセット時、被加工材先端と接触する部位は他の部分の温度と比較し、著しく高温になっていること。
【0016】
本発明者等は、上記▲1▼〜▲5▼の知見により、▲1▼〜▲3▼の外径変動は以下の挙動により発生することを解明した。
▲1▼の外径漸増は、アップセット時、局所的に温度が上昇するマンドレル先端近傍の被加工材接触部(図3中にAで示す部分)が、熱膨張により他の箇所と比較し径大となるため、被加工材がダイスおよびマンドレルで成形された後に該当部(図3中にBで示す部分)で拡管作用が生じ、さらに、押出管からの吸熱と摩擦熱によりアップセット部のマンドレル温度が上昇することで、押出が進行するに従い拡管量が増大するために発生するものである。図3は、この挙動を模式的に示した図であり、図中の1はマンドレル、2はダイス、3はコンテナ、4は被加工材、5はダイホルダーを示す。
【0017】
また、▲2▼の現象は、押出完了後、局所的に熱膨張により径大となっているマンドレルを引き抜く際に拘束が生じ、押出管バルジ変形となり発生するものである。図4は、この挙動を模式的に示した図であり、図4中の6はダミーブロックを示す。
【0018】
また、▲3▼の現象は、押出中、マンドレルの熱膨張部では拡管作用が発生すると同時に、内面潤滑剤及び被加工材のスケールをボトム側に蓄積する現象が生じるので、前記拡管作用は前記蓄積物7を介して行われるようになり、マンドレル熱膨張部の温度は低下し、膨張量が減少すると同時に蓄積物7がマンドレル先端方向に排出されるために発生するものである。図5は、この挙動を模式的に示した図である。
【0019】
本発明者等は、上記知見より、▲1▼から▲3▼の外径変動を抑制する問題を解決するためには、マンドレルのアップセット時に被加工材と接触する領域において、マンドレルの後端側から先端側にかけて外径を小さくし、アップセット時に局所的に温度が上昇するマンドレル先端近傍のアップセット時被加工材接触部を、熱膨張により径大化しても拡管作用が生じないよう径小化すればよいことを見出した。
【0020】
本発明に係る熱間押出方法に使用するマンドレルは、上記の知見に基づいてなされたものであり、加熱された中空の被加工材を内部に装入するコンテナと、このコンテナの前方に位置するダイスと、このダイスに前記被加工材を貫通して挿通されたマンドレルとの間に形成される環状の間隙より被加工材を前方に押し出して金属管となす熱間押出製管方法に使用する前記マンドレルにおいて、少なくともアップセット時にアップセットされた被加工材が接触する部分より後方の部分を、押出終了時点でマンドレル前方に押し出された管が軸方向で等径化されるように、後端側に向けて徐々に外径を増大させたものである。
【0021】
そして、発明者等は、前記のマンドレルの形状について、前記▲1▼から▲3▼の外径変動が生じない条件を調査した結果、前記形状は被加工材アップセット直後の長さにより決定されることを知見した。
【0022】
図6は押出直前(アップセット直後)の被加工材4と本発明に係るマンドレル1を示す図であり、押出前の被加工材4の長さをL、押出直前に被加工材4の後端と接触する箇所Dl のマンドレル直径をdl 、押出直前に被加工材4の前端と接触する箇所D2 のマンドレル直径をd2 とした場合、d2 ≦dl −96/Lの条件を満足する形状であれば、上記▲1▼から▲3▼の外径変動が生じないことが判明した。
【0023】
その際、D1からD2までのマンドレル直径に関しては、常に先端側を小径にし、D2より先端のマンドレル直径については、常に先端側が同値若しくは小径にする必要がある。但し、押出管の先端平均肉厚は、後端平均肉厚より(d1−d2)/2だけ厚くなるので押出管の肉厚公差をもとにd2を決定することは言うまでもない。これが本発明に係る熱間押出方法に使用するマンドレルである。
【0024】
そして、上記のマンドレルを用いて熱間押出を行うと、アップセット時に局所的に温度が上昇し、熱膨張量が最も大きいマンドレル先端近傍の被加工材接触部は順次成形される押出管の内径が大きくなるために拡管作用が生じない結果、(1)のような外径変動は生じず、従って、(2)(3)のような外径変動も生じないことになる。これが本発明に係る熱間押出製管方法である。
【0025】
【実施例】
以下、本発明の効果を確認するために行った実施結果について説明する。
下記表1に示す条件で熱間押出を行う際に、表2のAからFに示す6種類のマンドレルを使用した。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
図7は、表1の条件のもとでAからFの各マンドレルを使用した場合の押出管外径分布を示したものである。全長が等径のマンドレルAを使用した押出管(図7の□印)は、全長に亘って外径が増大し、特にボトム管端は急激に外径が増大している。
【0029】
また、後部に径大部を付与したマンドレルBを使用した押出管(図7の▲印)は、ボトム管端の急激な外径増大は抑制されているが、トップからミドルの外径増大は抑制されていない。
【0030】
また、先端に径大テーパを付与したマンドレルCを使用した押出管(図7の○印)は、前記のマンドレルAを適用した押出管と同様、全長に亘って外径が増大し、特にボトム管端は急激に外径が増大している。
【0031】
これに対して、本発明の実施例であるマンドレルD及びマンドレルEは、d2 ≦dl −96/Lの条件を満たしており、その押出管(マンドレルDを使用したもの:図7の■印、マンドレルEを使用したもの:図7の●印)は共にトップからミドルの外径増大及びボトム管端の急激な外径増大が抑制されている。
【0032】
一方、マンドレルFは、後端側に向けて徐々に外径を増大させてはいるものの、本発明の必須要件であるd2 ≦dl −96/Lの条件を満たしていないので、その押出管(図7中の×印)のトップからミドルの外径増大及びボトム管端の急激な外径増大が抑制されておらず、むしろ後部に径大部を付与したマンドレルBを使用した押出管(図7の▲印)よりも悪い結果であった。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、押出管に発生するトップからミドルへの外径増大及びボトム管端の急激な外径増大を抑制することができ、押出管の寸法精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】有効部の断面形状に変化がないマンドレルを用いて製管した押出管の外径と肉厚の変動を示した図である。
【図2】有効部の断面形状に変化がないマンドレルを用いて製管した直後の当該マンドレルの表面温度分布を示した図である。
【図3】アップセット時、マンドレルが被加工材と接触する箇所が熱膨張により拡管作用が発生することを模式的に示した図である。
【図4】押出完了後、マンドレルを引き抜く時にマンドレルが局所的に熱膨張していることにより、押出管がバルジ変形することを模式的に示した図である。
【図5】内面潤滑剤及び被加工材のスケールがマンドレルの局所的に熱膨張した箇所に蓄積・通過し、押出管が局所的に径大化する現象を模式的に示した図である。
【図6】 本発明方法に使用するマンドレルと、被加工材の関係を模式的に示した図である。
【図7】本発明方法の実施効果を示す押出管の外径分布図である。
【符号の説明】
1 マンドレル
2 ダイス
3 コンテナ
4 被加工材
Claims (1)
- 加熱された中空の被加工材を内部に装入するコンテナと、このコンテナの前方に位置するダイスと、このダイスに前記被加工材を貫通して挿通されたマンドレルとの間に形成される環状の間隙より被加工材を前方に押し出して金属管となす熱間押出製管方法において、
少なくともアップセット時にアップセットされた被加工材が接触する部分より後方の部分を、押出終了時点でマンドレル前方に押し出された管が軸方向で等径化されるように、下記式を満足するよう、後端側に向けて徐々に外径を増大させたマンドレルを使用することを特徴とする熱間押出製管方法。
d2≦d1−96/L
但し、d2:アップセット時、被加工材押出先端に位置するマンドレルの外径(mm)
d1:アップセット時、被加工材押出後端に位置するマンドレルの外径(mm)
L:被加工材アップセット時の長さ(mm)
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