JP4028938B2 - 磁気伝達手段 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、雄側部材と雌側部材との磁石材の磁力によって一方の運動を他方へ伝達する磁気伝達手段に関し、特に雄側部材と雌側部材との磁石材にN極着磁帯及びS極着磁帯を任意に着磁することができる磁気伝達手段に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気伝達手段の一例としては、螺旋状のN極及びS極着磁帯を備えた雄磁気ネジと雌磁気ネジとが互いに吸引し合う磁力を利用して、雄磁気ネジ側から雌磁気ネジ側へ或いは逆へ動力を伝達する磁気ネジが挙げられる。
かかる磁気ネジを含む磁気伝達手段は、その動きに機械的剛性がないので衝突時の安全性に優れること、接触部分のない構成とすることができるので機械的摩擦を排除できて部材の摩耗や摩耗粉の発生あるいは伝達損失や騒音発生がないこと、バックラッシュが少ないこと、ストロークの自由度が大きいこと、更に被駆動部を動力部の振動から遮断できること等、機械的送り機構にない種々の長所を有している。そのため、磁気伝達手段を各種分野で利用することが期待されている。
【0003】
そして、磁気ネジの従来例としては次のようなものが挙げられる。
図6に示す第1従来例の雄磁気ネジ51は、円柱形状のロッド部材52にN極及びS極に着磁されたそれぞれ1本づつの帯状磁石材53、54が平行に一定の傾きをもって螺旋状に巻き付けられ、接着剤でロッド部材51に一体に固着されたものである。
また、図7に示す第2従来例の磁気ネジは、雄磁気ネジ61及び雌磁気ネジ66とも短尺な管状磁石材62、67を使用し、雄磁気ネジ61はロッド部材63に、雌磁気ネジ66はスライダ68の貫通孔68A内に管状磁石材62、67を軸方向に順にそれぞれはめ込む。そして、雄磁気ネジ61は管状磁石材62の外周面に、雌磁気ネジ66は管状磁石67の内周面にN極着磁帯とS極着磁帯とを交互に位置するよう螺旋状に着磁したものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような従来の磁気ネジは、次のような問題があった。先ず、図6に示す第1従来例の磁気ネジは、予めN極及びS極に着磁された帯状磁石材53、54で構成されているため、巻き付けによるズレが生じやすくピッチ精度が出しにくいために絶対精度がでないといった問題があった。特に、一旦ずれてしまうとその後の修正ができないので、ずれたまま巻き付けられることになり、更にズレが生じた場合にはズレ量が累積されることになる。
また、帯状磁石材53、54が一旦巻き付けられると、その幅及び巻き付け角度によってピッチが決定されてしまい変更することができなかった。更には、帯状磁石材53、54はロッド部材52に接着材などで接着されるが、その後に使用中にかかる遠心力によって巻き付けの緩みや戻りが生じ、雌磁気ネジの着磁帯とのズレや、近接して配設されている雌磁気ネジとに接触してしまうなどの問題があった。
【0005】
一方、第2従来例の磁気ネジは、管状磁石材62、67の径が一義的に決まってしまうので、前記第1従来例のもののように任意の径のロッド部材に対して自由に雄磁気ネジを形成することなどができなかった。
また、従来例1及び従来例2の磁気ネジとも、帯状磁石材53、54及び複数個の管状磁石材62、67を接着するために時間を要していたために製造が面倒であった。
【0006】
そこで本発明は、正確なピッチの着磁帯からなる製造が容易な磁気伝達手段を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1にかかる磁気伝達手段は、雄側部材と雌側部材との両方の磁石材に着磁されたN極着磁帯及びS極着磁帯に作用する磁力によって、一方の運動を他方へ伝達するものであって、前記雄側部材が、1本の帯状磁石材をロッド部材の外周に螺旋状に巻き付けることによって見かけ上の円筒形状磁石を形成し、その円筒形状磁石の外周面に任意にN極着磁帯及びS極着磁帯を着磁したものであること、前記円筒形状磁石の外表面に収縮チューブを被せたものであることを特徴とする。
よって、1本の帯状磁石材を巻き付ける作業は簡単に行うことができ、その巻き付け段階では着磁されていないため、巻き付けによるピッチ精度への影響はなく、その後の着磁作業によって帯状磁石材からなる見かけ上の円筒形状磁石に着磁するので、正確なピッチの着磁帯からなる磁気伝達手段の製造が容易となる。
【0008】
また、帯状磁石材を巻き付けて形成した円筒形状磁石が、使用中の高速回転によって緩んだり戻ったりすることなく、適正な磁気伝達手段の使用が可能となる。
【0009】
【0010】
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、本発明にかかる磁気伝達手段の一実施の形態について図面を参照して具体的に説明する。磁気伝達手段の一例としては、前述した従来例のように磁気ネジを挙げることができる。この磁気ネジの応用例としては、例えば図1に示すような搬送装置がある。これは、雄磁気ネジ1が、不図示の駆動モータに対して回転可能に連結され、その雄磁気ネジ1と平行なスライドレール2上をスライド可能なスライダ3の貫通孔3A内に円筒形状のジャケット部材4が嵌装され、そのジャケット部材4内に雌磁気ネジ5が設けられている。
そして、この搬送装置では、雄磁気ネジ1に回転が与えられれば、雌磁気ネジ5との磁力によってスライダ3に推進力が働いてスライドレール2上を直進運動する。
【0012】
次に、この搬送装置で利用される雄磁気ネジ1は以下のようにして構成されている。図2は、雄磁気ネジ1の構造を示した図である。雄磁気ネジ1は、図示するようにロッド部材11に1本の帯状磁石材12が螺旋状に巻き付けられる。この帯状磁石材12は、この段階ではまだ着磁されたものではない。帯状磁石材12をロッド部材11に巻き付ける場合には、軸方向に隣り合う位置の帯状磁石材12同士に隙間が空かないように緊密に巻き付けることが好ましい。
【0013】
そして、ロッド部材11に帯状磁石材12が一様に巻き付けられた後には、その帯状磁石12にN極着磁帯及びS極着磁帯の螺旋着磁が施される。ところで、ロッド部材11に巻き付けられた帯状磁石材12は、そのロッド部材11に被せられた1本の円筒形状磁石として見ることができる。そのため、N極着磁帯及びS極着磁帯は、巻き付けられた帯状磁石材12の螺旋状態とは無関係に着磁することができる。
そこで、図3に示すように、帯状磁石材12が巻かれてできた見かけ上の円筒形状磁石13には、着磁装置によって破線で示すN極着磁帯14NとS極着磁帯14Sとが螺旋着磁されて雄磁気ネジ1が製造される。なお、帯状磁石材12は、ロッド部材11に巻かれただけでは使用中の高速回転によって緩んだり戻ったりしてしまうため、外周を収縮チューブ18で固定して円筒形状磁石13の円筒形状が保たれるようにする。
【0014】
次に図1の雌磁気ネジ5は、図示しないが前述した雄磁気ネジ1と同様の帯状磁石材12を円柱状の巻付棒に巻き付けて円筒形状磁石を形成し、その表面或いはジャケット部材4内面に接着剤を付け、円筒形状磁石をジャケット部材4内に挿入して固着させた後に棒部材を抜き取る。すると、図4に示したスライダ2の断面のように、ジャケット4内には帯状磁石材12からなる円筒形状磁石31が形成される。
そして、この円筒形状磁石31の内面には、前記雄磁気ネジ1の場合と同様に、着磁装置によって破線で示すN極着磁帯32N及びS極着磁帯32Sが螺旋状に着磁されて雌磁気ネジ5が製造される。
【0015】
よって、以上のような構成をなす雄磁気ネジ1及び雌磁気ネジ5からなる磁気伝達手段である磁気ネジは、1本の帯状磁石材12を巻き付けて形成するため、その巻き付け作業が簡単で、効率よく行うことができる。
また、1本の帯状磁石材12であるため、軸方向に隙間なく巻き付けることも容易に行うことができる。更に、帯状磁石材12は巻き付ける段階で着磁されていないため、巻き付け作業によって磁気ネジのピッチ精度に影響を与えることがなく、その後に形成された円筒形状磁石13、31に螺旋着磁を施すため、磁気ネジのピッチ精度の正確さを得ることができる。
また、帯状磁石材12を使用するため、ロッド部材11やジャケット部材4の径寸法に影響されることなく雄磁気ネジ1及び雌磁気ネジ5を形成することができる。
更に、雄磁気ネジ1では、帯状磁石材12を巻いて形成した円筒形状磁石13に収縮チューブ18を被せたので、高速で回転する場合にでも帯状磁石材12が緩んだり戻ったりすることなく適切に使用することができる。
【0016】
また、帯状磁石材12を使った円筒形状磁石13、31は、ロッド部材11及びジャケット部材4によって補強されるので機械的強度が確保され、その磁石材料としては優れるが材質的に脆いフェライト系や希土類系の材料を使用することができる。
そして、ロッド部材11及びジャケット部材を高透磁性の材料で構成すれば、薄い帯状磁石材12からなる円筒形状磁石13、31の強い磁力を更に有効に利用することができる。
【0017】
なお、本発明にかかる磁気伝達手段は、前記実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
前記実施の形態では、磁気伝達手段として磁気ネジを例に挙げて説明したが、例えば磁気伝達手段には、図5に示しような磁気カップリングなども含まれる。この磁気カップリングは、前記実施の形態と同様にして帯状磁石材12から形成した円筒形状磁石に対して軸方向のストレート着磁を施したもので、雄磁気カップリング48と雌磁気カップリング49とからなるものである。
【0018】
【発明の効果】
本発明は、雄側部材と雌側部材との両方の磁石材に着磁されたN極着磁帯及びS極着磁帯に作用する磁力によって、一方の運動を他方へ伝達するものであって、前記雄側部材が、1本の帯状磁石材をロッド部材の外周に螺旋状に巻き付けることによって見かけ上の円筒形状磁石を形成し、その円筒形状磁石の外周面に任意にN極着磁帯及びS極着磁帯を着磁し、円筒形状磁石の外表面に収縮チューブを被せた構成としたので、正確なピッチの着磁帯からなる製造が容易で、円筒形状磁石が、使用中の高速回転によって緩んだり戻ったりすることがない磁気伝達手段を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかる磁気伝達手段を備える搬送装置の斜視図である。
【図2】 雄磁気ネジ1の構造を示した図である。
【図3】 雄磁気ネジ1を示す図である。
【図4】 雌磁気ネジ5を含むスライダ2の断面図である。
【図5】 本発明にかかる磁気伝達手段をなす磁気カップリングを示した図である。
【図6】 第1従来例の雄磁気ネジ51を示す図である。
【図7】 第2従来例の磁気ネジを示す図である。
【符号の説明】
1 雄磁気ネジ
4 ジャケット部材
5 雌磁気ネジ
11 ロッド部材
12 帯状磁石材
13 円筒形状磁石
18 収縮チューブ
31 円筒形状磁石
14N、32N N極着磁帯
14S、32S S極着磁帯
Claims (1)
- 雄側部材と雌側部材との両方の磁石材に着磁されたN極着磁帯及びS極着磁帯に作用する磁力によって、一方の運動を他方へ伝達する磁気伝達手段において、
前記雄側部材が、1本の帯状磁石材をロッド部材の外周に螺旋状に巻き付けることによって見かけ上の円筒形状磁石を形成し、その円筒形状磁石の外周面に任意にN極着磁帯及びS極着磁帯を着磁したものであること、
前記円筒形状磁石の外表面に収縮チューブを被せたものであることを特徴とする磁気伝達手段。
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