この発明の一実施形態について、図1〜図18を参照して説明する。
この実施形態は、図1に示すような赤外線会議システム10にこの発明を適用したものであり、当該赤外線会議システム10は、主装置としての1台のセンタ装置12と、中継装置としての複数台の送受光装置14,14,…と、それぞれマイクロホン16を備えた複数台の端末装置18,18,…とを、具備する。このうち、センタ装置12は、例えば会議室の隅に設置され、各送受光装置14,14,…は、同会議室の天井または壁面に取り付けられる。そして、各端末装置18,18,…は、同会議室の適宜箇所、例えば各発言者用のテーブル上に、配置される。なお、各端末装置18,18,…には、個別の識別番号が付与されている。
センタ装置12は、複数、例えば4つの入出力端子20,20,…を有しており、これら4つの入出力端子20,20,…のそれぞれに、1台以上の送受光装置14を接続することができる。具体的には、例えば図1において1番上に示される入出力端子20のように、伝送線路としての1本の同軸ケーブル22を介して、1台の送受光装置14を接続することができる。また、図1において上から2番目に示される入出力端子20のように、1台の混合分配器24を用いることで、複数台、詳しくは最大で4台の送受光装置14,14,…を接続することができる。さらに、図1において上から3番目に示される入出力端子20のように、複数台(図1では2台)の混合分配器24,24,…を用いることで、より多くの(5台以上の)送受光装置14,14,…を接続することもできる。そして、図1において1番下に示される入出力端子20のように、送受信装置14が接続されない、いわゆる空き端子が存在してもよい。
なお、混合分配器24は、1つの1次端子26と4つの2次端子28,28,…とを備えており、1次端子26から入力された信号を各2次端子28,28,…に分配し、または各2次端子28,28,…から入力された信号を混合して1次端子26から出力させるものである。このため、1次端子26は、同軸ケーブル22を介してセンタ装置12の入出力端子20に接続され、または別の混合分配器24の2次端子28に接続される。そして、それぞれの2次端子28は、同軸ケーブル22を介して送受光装置14に接続され、或いは別の混合分配器24の1次端子26に接続され、若しくは空き端子とされる。さらに、同軸ケーブル22にはセンタ装置12を供給源とする各送受光装置14,14,…用の駆動電源としての直流電力が重畳されており、混合分配器24は、この直流電力を1次端子26側から各2次端子28,28,…側へと伝送させる機能をも有する。かかる混合分配器24は、例えば天井裏や壁裏に設置される。
ここで、この赤外線会議システム10の全体の動作について簡単に説明する。例えば、今、或る端末装置18によって発言要求が成されたとする。この発言要求は、端末装置18に設けられた図示しない操作パネル上の発言要求スイッチの操作によって行われる。すると、当該端末装置18内において、発言要求が成されたことを表す上り制御データが生成される。この上り制御データには、当該発言要求の要求元を表す識別番号も組み込まれる。そして、この上り制御データは、所定の基準周波数の上りFM信号に変換(周波数変調)され、さらに、この上りFM信号は、波長が870[nm]の赤外線に変換(輝度変調)されて、当該端末装置18から発射される。なお、この赤外線を発射させるために、端末装置18は、送光手段としての後述する赤外線発光ダイオード(LED)30を複数個備えている。
端末装置18から発射された上りの赤外線は、適宜の場所、例えば当該端末装置18の近傍にある送受光装置14に入射される。送受光装置14は、入射された赤外線を電気信号に変換するための受光手段としての後述するフォトダイオード(PD)40を複数個備えており、変換された電気信号に対しさらに同調処理を施す。これによって、上りFM信号が抽出される。抽出された上りFM信号は、同軸ケーブル22を介して、或いはこれに加えて1台以上の混合分配器24を介して、センタ装置12に送られる。
センタ装置12は、送受光装置14から送られてきた上りFM信号を受信し、受信した上りFM信号に復調処理を施す。これによって、上り制御データが再現される。さらに、センタ装置12は、再現された上り制御データを解析して、このたび発言要求が成されたこと、および当該発言要求の要求元である端末装置18を認識する。そして、その端末装置18に対して発言を許可する旨の下り制御データを生成し、さらに、この下り制御データを上述の上りFM信号とは異なる基準周波数の下りFM信号に変換する。この下りFM信号は、同軸ケーブル22を介して、或いはこれに加えて1台以上の混合分配器24を介して、全ての送受光装置14,14,…に送られる。
各送受光装置14,14,…のそれぞれは、後述するように複数個の赤外線発光ダイオード50,50,…を備えており、センタ装置12から送られてくる下りFM信号に従って当該赤外線発光ダイオード50,50,…を発光させる。これによって、波長が870[nm]の赤外線が、各送受光装置14,14,…(赤外線発光ダイオード50,50,…)から発射される。
各送受光装置14,14,…から発射された下りの赤外線は、適宜、各端末装置18,18,…に入射される。それぞれの端末装置18は、入射された赤外線を電気信号に変換するための後述するフォトダイオード60を複数個備えており、これらのフォトダイオード60,60,…によって変換された電気信号はさらに同調処理を施される。これによって、下りFM信号が抽出される。さらに、端末装置18は、抽出された下りFM信号に復調処理を施して、下り制御データを再現する。そして、再現された下り制御データが自身宛に送られてきたものであるか否か、例えば当該下り制御データに自身の識別番号が組み込まれているか否かを、判断する。ここで、自身宛に送られてきた下り制御データを受信した端末装置18のみが、発言を許可され、言わば有効化される。
有効化された端末装置18によって発言が成されると、つまり当該端末装置18のマイクロホン16に音声が入力されると、この音声(音声信号)に基づいて改めて上りFM信号が生成される。なお、この上りFM信号の基準周波数は、下り制御データによって指定される。そして、生成された上りFM信号は、上述したのと同様に、赤外線に変換されて、当該端末装置18から発射される。
端末装置18から発射された上りの赤外線は、上述の如く当該端末装置18の近傍にある送受光装置14に入射される。送受光装置14は、入射された赤外線を電気信号に変換し、さらにこの電気信号に同調処理を施す。これによって、上りFM信号が抽出される。そして、抽出された上りFM信号は、センタ装置12に送信される。
センタ装置12は、送受光装置14から送られてきた上りFM信号を受信し、受信した上りFM信号に復調処理を施して、音声信号を再現する。再現された音声信号は、センタ装置12の図示しない外部出力端子に接続された図示しない外部スピーカに供給される。これによって、発言元の音声が再生される。さらに、センタ装置12は、再現された音声信号に基づいて、改めて下りFM信号を生成する。この下りFM信号は、上述と同様に、各送受光装置14,14,…に送られる。
各送受光装置14,14,…のそれぞれは、センタ装置12から送られてきた下りFM信号の供給に従って、上述の赤外線発光ダイオード50,50,…を発光させる。これによって、各送受光装置14,14,…(赤外線発光ダイオード50,50,…)から赤外線が発射され、この下りの赤外線は、各端末装置18,18,…に入射される。
各送受光装置14,14,…のそれぞれは、入射された赤外線を電気信号に変換し、変換された電気信号に同調処理を施す。これによって、下りFM信号が抽出される。さらに、端末装置18は、抽出された下りFM信号に復調処理を施して、音声信号を再現する。この音声信号は、上述の操作パネルに設けられた図示しないモニタ用スピーカに入力され、これによって発言元の音声が再生される。つまり、それぞれの端末装置18において、当該発言元の音声をモニタすることができる。
なお、この実施形態においては、最大で4台の端末装置18,18,…によって同時に発言可能とされている。つまり、各端末装置18,18,…から送受光装置14,14,…を経てセンタ装置12に至る言わば上り音声チャンネルとして、4つのチャンネルが用意されている。具体的には、図2に示すように、上り音声チャンネルとして、CH1,CH2,CH3およびCH4という4つのチャンネルが用意されており、それぞれの基準周波数(搬送波の周波数)は、7.35[MHz],8.10[MHz],8.55[MHz]および9.15[MHz]とされている。また、これら4つの上り音声チャンネルCH1,CH2,CH3およびCH4の他に、上り制御データ専用の制御用チャンネルCH0も、用意されている。この制御用チャンネルCH0の基準周波数は、6.45[MHz]とされている。
一方、センタ装置12から送受光装置14,14,…を経て各端末装置18,18,…に至る言わば下りチャンネルとしては、2つのチャンネルが用意されている。具体的には、図2に示すように、基準周波数が1.95[MHz]であるチャンネルCH1と、基準周波数が2.25[MHz]であるチャンネルCH2とが、用意されている。このうちチャンネルCH1は、主音声用のチャンネルであり、チャンネルCH2は、副音声用のチャンネルである。通常は、主音声チャンネルCH1が優先的に使用され、副音声チャンネルCH2は、例えば同時通訳音を放送するときに使用される。この同時通訳音は、例えばセンタ装置12の図示しない外部入力端子に接続された図示しない外部マイクロホンから入力される。また、それぞれの端末装置18の上述した操作パネルには、主音声チャンネルCH1および副音声チャンネルCH2のいずれか一方を任意に選択するための図示しないチャンネル選択スイッチが設けられており、このチャンネル選択スイッチによって選択されたチャンネルCH1またはCH2の音声(発言元の音声または同時通訳音)のみが、当該端末装置18側で再生される。
また、下りチャンネルCH1およびCH2のそれぞれは、下り制御データを伝送させるための制御用チャンネルとしても兼用される。具体的には、下り制御データは、下りの音声信号と混合された状態で、当該下りチャンネルCH1またはCH2を介して伝送される。このとき、下り制御データは、周波数が30[kHz]の副搬送波信号(サブキャリア)によって音声信号に重畳される。この下り制御データの変調方式としては、例えばFSK(Frequency Shift Keying)方式が採用される。なお、これらの下りチャンネルCH1およびCH2によって伝送される制御データは、互いに同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
さて、上述したように、それぞれの送受光装置14は、送光手段としての赤外線発光ダイオード50を複数個備えると共に、受光手段としてのフォトダイオード40を複数個備えている。具体的には、図3に示すように、当該送受光装置14を頂点とする概略円錐状の通信エリア80を形成するべく、16個の赤外線発光ダイオード50,50,…と、8個のフォトダイオード40,40,…とを、備えている。
この通信エリア80は、図4(当該通信エリア80を上方から見た図)に示すように、A〜Dという4つのエリア82,82,…から成る。これらのエリア82,82,…は、送受光装置14を中心として90度ずつ異なる方向に形成されており、かつ隙間が生じないように互いにオーバラップしている。かかるエリア82,82,…を形成するために、赤外線発光ダイオード50,50,…は、図5(a)に示すように、当該各エリア82,82,…に対応するA〜Dという4つの組に4個ずつ振り分けられている。そして、フォトダイオード40,40,…もまた、これら4つの組に2個ずつ振り分けられている。
より詳しく説明すると、送受光装置14は、円盤状の基台100を備えており、この基台100の周縁に沿って、12個の赤外線発光ダイオード50,50,…が、等間隔に(30度間隔で)、かつ放射状に配置されている。そして、基台100の中央付近の位置に、残りの4つの赤外線発光ダイオード50,50,…が、当該基台100の円周方向に沿って等間隔に(90度間隔で)、かつ基台100から離れる方向に向くように配置されている。つまり、A〜Dのそれぞれの組毎に、基台100の周縁付近に配置された3個の赤外線発光ダイオード50,50,…と、基台100の中央付近に配置された1個の赤外線発光ダイオード50とが、振り分けられている。なお、図5(b)からも判るように、基台100の周縁付近に配置された赤外線発光ダイオード50,50,…と、基台100の中央付近に配置された赤外線発光ダイオード50,50,…とは、互いに別個の円盤状のプリント配線板102および104上に搭載されている。そして、基台100の周縁付近(プリント配線板102)に配置された赤外線発光ダイオード50,50,…は、水平面に対して或る角度、例えば30度ほど傾けて取り付けられており、基台100の中央付近(プリント配線板104)に配置された赤外線発光ダイオード50,50,…は、それよりも大きめの角度、例えば水平面に対して60度ほど傾けて取り付けられている。このような構成によって、上述の図4に示すA〜Dの4つのエリア82,82,…が形成され、厳密には第2通信領域としての送光エリアが形成される。
これに対して、フォトダイオード40,40,…は、基台100の周縁付近に配置された赤外線発光ダイオード50,50,…と、当該基台100の中央付近に配置された赤外線発光ダイオード50,50,…と、の間のスペースに配置されている。これらのフォトダイオード40,40,…は、上述したようにA〜Dの各組に2個ずつ振り分けられており、それぞれの組毎に振り分けられた2個のフォトダイオード40および40の一方は、上述した上りチャンネルCH0〜CH4の受信周波数帯域(6.45[MHz]〜9.15[MHz])のうちの低域側を担当し、他方は、当該受信周波数帯域の高域側を担当する。そして、それぞれの組毎のフォトダイオード40および40は、各々の受光面42および42を同じ方向(基台100の中心から外方に向かう方向)に向けた状態で、横並びに配置されている。そして、各組間では、各フォトダイオード40,40,…は、それぞれの受光面42,42,…を90度ずつ異なる方向に向けて配置されている。なお、各フォトダイオード40,40,…は、図5(b)からも判るように、赤外線発光ダイオード50,50,…が搭載されたプリント配線板102および104とは別の円盤状のプリント配線板106に搭載されている。そして、これらのフォトダイオード40,40,…は、水平面に対して或る角度、例えば40度ほど傾けて取り付けられている。このような構成によって、図4に示すA〜Dの4つのエリア82,82,…が形成され、厳密には第1通信領域としての受信エリアが形成される。
なお、4つのエリア82,82,…から成る通信エリア80の頂角(図3参照)αは、約120度とされている。また、上述の各プリント配線板102,104および106は、それぞれの中心を基台100の中心に合わせて、当該基台100上に言わば3階構成で配置されている。詳しくは、12個の赤外線発光ダイオード50,50,…が搭載されているプリント配線板102が、基台100に最も近い言わば1階部分に当たる場所に配置されている。そして、フォトダイオード40,40,…が搭載されているプリント配線板106が、2階部分に当たる場所に配置されており、4個の赤外線発光ダイオード50,50,…が搭載されているプリント配線板104が、基台100から最も離れた3階部分に当たる場所に配置されている。これらのプリント配線板102,104および106の直径は、互いに異なり、1階のプリント配線板102の直径が最も大きく、3階のプリント配線板104の直径が最も小さい。そして、これらのプリント配線板102,104および106を覆うように、赤外線透過性材料で形成されたドーム状のカバー108が、基台100に固定される。
一方、それぞれの端末装置18もまた、上述したように送光手段としての赤外線発光ダイオード30を複数個備えると共に、受光手段としてのフォトダイオード60を複数個備えている。具体的には、図6に示すように、当該端末装置18の前方(図6において左側の方向)および上方の2つの通信エリア90および92を形成するべく、12個の赤外線発光ダイオード30,30,…と、6個のフォトダイオード60,60,…とを、備えている。
より詳しく説明すると、端末装置18は、図7に示すように、筺体200内に水平に設置されたプリント配線板202を備えており、このプリント配線板202の前方寄り(図7において左側)の部分に、6個の赤外線発光ダイオード30,30,…が、上方に向けられた状態で、かつ横方向(紙面の表裏方向)に沿って略1列に配置されている。そして、これら6個の赤外線発光ダイオード30,30,…と同様に、3個のフォトダイオード60,60,…が、それぞれの受光面62,62,…を上方に向けた状態で、かつ横方向に沿って略1列に配置されている。さらに、これら6個の赤外線発光ダイオード30,30,…および3個のフォトダイオード60,60,…が設けられている位置よりも後方側(図7において右側)の位置に、端子204を介して別のプリント配線板206が、プリント配線板202に対して垂直に、かつ部品面208を前方に向けた状態で、結合されている。そして、このプリント配線板208の部品面208に、残りの6個の赤外線発光ダイオード30,30,…が、斜め上方に向けられた状態、例えば水平面に対して30度ほど傾けられた状態で、かつ横方向に沿って略1列に配置されている。これと同様に、残りの3つのフォトダイオード60,60,…もまた、当該部品面208に、それぞれの受光面62,62,…を斜め上方に向けた状態、例えば水平面に対して30度ほど傾けた状態で、かつ横方向に沿って略1列に配置されている。
このような構成によって、上述の図6に示すように、前方の通信エリア90と上方の通信エリア92とが形成される。つまり、垂直に置かれたプリント配線板206に搭載された赤外線発光ダイオード30,30,…およびフォトダイオード60,60,…によって、前方の通信エリア90が形成され、水平に置かれたプリント配線板202に搭載された赤外線発光ダイオード30,30,…およびフォトダイオード60,60,…によって、上方の通信エリア92が形成される。さらに、換言すれば、赤外線発光ダイオード30,30,…によって第2通信領域としての送光エリア90および92が形成され、フォトダイオード60,60,…によって第1通信領域としての受光エリア90および92が形成される。なお、前方の通信エリア90の垂直方向における視野角βは、概ね80度〜90度程度とされており、上方の通信エリア92の前後方向に対する視野角γは、概ね30度〜50度とされている。これらの通信エリア90および92が互いにオーバラップすることで、端末装置18の前方から上方をカバーする通信エリア94が形成される。また、筺体200のうち、赤外線発光ダイオード30,30,…およびフォトダイオード60,60,…を覆う部分については、赤外線透過性材料で形成された窓材210によって構成されている。
次に、それぞれの送受光装置14の電気的な構成について、説明する。図8に示すように、送受光装置14は、同軸ケーブル22が接続される端子120を備えている。即ち、この端子120を介して、外部(センタ装置12)から下りFM信号および電源電力としての直流電力が入力されると共に、外部へ上りFM信号が出力される。
このうち、当該端子120を介して外部から入力された直流電力は、交流カット用のローパスフィルタ122を経て、電源回路124に入力される。電源回路124は、入力された直流電力を基に、送受光装置14内の各回路を駆動させるための複数種類(電圧値)の直流電源電圧Vccを生成する。
そして、下りFM信号は、直流カット用のコンデンサ126を介してローパスフィルタ128およびハイパスフィルタ130に入力される。ここで、ローパスフィルタ128のカットオフ周波数は、下りチャンネルCH1およびCH2の上限周波数よりも高く、かつ上りチャンネルCH0〜CH4の下限周波数よりも低い値とされており、例えば2.70[MHz]とされている。これに対して、ハイパスフィルタ130のカットオフ周波数は、ローパスフィルタ128のカットオフ周波数よりも高く、かつ上りチャンネルCH0〜CH4の下限周波数よりも低い値とされており、例えば5.16[MHz]とされている。従って、ローパスフィルタ128に入力された下りFM信号は、当該ローパスフィルタ128を通過して、RF増幅回路132に入力される。一方、ハイパスフィルタ130に入力された下りFM信号は、当該ハイパスフィルタ130を通過することはない。
RF増幅回路132に入力された下りFM信号は、ここで増幅された後、送光回路134に入力される。送光回路134は、上述した赤外線発光ダイオード50,50,…を有しており、RF増幅回路132から入力された下りFM信号に従って当該赤外線発光ダイオード50,50,…を発光させる。つまり、輝度変調する。これによって、波長が870[nm]の赤外線が、赤外線発光ダイオードから50,50,…から発射される。
送受光装置14はまた、受光回路136を備えている。受光回路136は、上述したフォトダイオード40,40,…を有しており、各端末装置18,18,…から送られてくる上りの赤外線を当該フォトダイオード40,40,…によって電気信号に変換すると共に、この電気信号に同調処理を施して上りFM信号を抽出する。抽出された上りFM信号は、RF増幅回路138によって増幅された後、ハイパスフィルタ130およびコンデンサ126を介して端子120へと送られ、当該端子120から外部(センタ装置12)に出力される。
なお、ハイパスフィルタ130から出力された上りFM信号は、ローパスフィルタ128にも入力されるが、上述したように、このローパスフィルタ128のカットオフ周波数は、上りチャンネルCH0〜CH4の下限周波数よりも低い値とされている。従って、このローパスフィルタ128に入力された上りFM信号が、当該ローパスフィルタ128を通過して、言わば下り用のRF増幅回路132に入力されることはない。これらローパスフィルタ128およびハイパスフィルタ130は、いずれも高次(多段)のフィルタであり、かかる高次フィルタを設けることで、下りFM信号と上りFM信号とを明確に分配することができ、例えば200[dB]という高いC/N(Carrier/Noise)比を得ることができる。
ところで、受光回路136が有するフォトダイオード40,40,…は、上述したようにA〜Dの4つの組に2個ずつ振り分けられているが、これらの組毎にフォトダイオード40,40,…の機能を電気的に有効化し、または無効化することができる。このため、受光回路136は、図9に示すような構成とされている。
即ち、受光回路136は、それぞれのフォトダイオード40毎に1つずつ、つまり計8つの光電変換回路150,150,…を有している。これらの光電変換回路150,150,…は、直流電源電圧Vccの供給によって駆動し、この直流電源電圧Vccは、A〜Dのそれぞれの組毎に設けられた受光用電源スイッチ152,152,…を介して当該各光電変換回路150,150,…に供給される。従って、この受光用電源スイッチ152がONされている組の光電変換回路150および150のみが、有効化され、具体的には受光した赤外線から上りFM信号を抽出する。一方、受光用電源スイッチ152がOFFされている組の光電変換回路150および150については、無効化される。有効化された光電変換回路150,150,…によって抽出された上りFM信号は、合成手段としての加算回路154に入力され、詳しくは当該加算回路154を構成する入力用抵抗器156,156,…を介してオペアンプ158の反転入力端子に入力される。このオペアンプ158の反転入力端子は、帰還用抵抗器160を介して当該オペアンプ158の出力端子に接続されており、非反転入力端子は、接地電位(GND)に接続されている。従って、加算回路154(オペアンプ158の出力端子)からは、有効化された光電変換回路150,150,…によって抽出された上りFM信号を合成した信号が出力される。そして、この信号は、受光回路136の出力信号として、図8におけるRF増幅回路138に入力される。
なお、受光用電源スイッチ152,152,…は、手動によりON/OFFされるものであり、例えばディップスイッチによって構成されている。かかる受光用電源スイッチ152,152,…は、例えば上述した基台100内に設けられており、送受光装置14の設置時に設置業者等によって操作される。
ここで、それぞれの光電変換回路150の具体的な構成について、さらに詳しく説明する。即ち、図10に示すように、光電変換回路150を構成するフォトダイオード40のカソード端子は、上述の受光用電源スイッチ152(Vcc)に接続されており、当該フォトダイオード40のアノード端子は、コイル300を介して接地電位に接続されている。つまり、受光用電源スイッチ152がONされると、フォトダイオード40に対して、直流電源電圧Vccが、いわゆる逆バイアス電圧として印加される。なお、フォトダイオード40の近傍には、当該フォトダイオード40のカソード端子と接地電位との間に接続されたバイパス用のコンデンサ302が設けられている。
この構成によれば、フォトダイオード40に直流電源電圧Vccが印加されている(受光用電源スイッチ152がONされている)状態にあるとき、当該フォトダイオード40に赤外線が入射されると、その赤外線の入射強度に応じて、フォトダイオード40のアノード端子の電圧が変化する。ここで、フォトダイオード40は、接合容量を含む容量成分を有しているので、この容量成分とコイル300のインダクタンスとによって、並列共振回路、つまり同調回路304が形成される。この同調回路304の同調周波数(共振周波数)は、当該容量成分の大きさと、コイル300のインダクタンス値とによって、決まる。このうち、容量成分の大きさは、フォトダイオード40の特性によって決まるので、当該同調周波数は、コイル300のインダクタンス値によって決定される。具体的には、それぞれの組毎の2つの光電変換回路150および150の一方が、上述した上りチャンネルCH0〜CH4の受信周波数帯域の低域側に同調するように、そして他方が高域側に同調するように、当該コイル300のインダクタンス値が決定される。
この同調回路304によって抽出された上りFM信号は、カップリング・コンデンサ306を介して、前置増幅回路308に入力され、詳しくは当該前置増幅回路308を構成するNチャネル型のFET(Field Effect Transistor)310のゲート端子に入力される。なお、前置増幅回路308は、FET310と、このFET310のゲート端子および接地電位間に接続されたバイアス用の抵抗器312と、FET310のドレイン端子に一端が接続された電源供給用の抵抗器314と、FET310のソース端子および接地電位間に接続されたソース接地用の抵抗器316と、当該抵抗器316と並列に接続されたバイパス用のコンデンサ318と、で構成されている。また、後述するように、この前置増幅回路308を駆動させるための電源電力は、後段回路であるエミッタフォロア回路320および高周波増幅回路322を介して当該前置増幅回路308に供給される。そして、この電源電力の供給口となる抵抗器314の他端は、バイパス用のコンデンサ324を介して接地電位に接続されている。
前置増幅回路308によって増幅された上りFM信号は、直流カット用のコンデンサ326を介して、エミッタフォロア回路320に入力され、詳しくは当該エミッタフォロア回路320を構成するNPN型のトランジスタ328のベース端子に入力される。エミッタフォロア回路320は、トランジスタ328と、当該トランジスタ328のエミッタ端子に一端が接続されたエミッタ接地用の抵抗器330とから成り、前置増幅回路308から入力された上りFM信号を高入力インピーダンスで受ける。つまり、インピーダンス変換処理を行う。そして、このエミッタフォロア回路320によってインピーダンス変換処理を施された後の上りFM信号は、直流カット用のコンデンサ332を介して、最終段の高周波増幅回路322に入力され、詳しくは当該高周波増幅回路322を構成するNPN型トランジスタ334のベース端子に入力される。
なお、上述の受光用電源スイッチ152がONされているとき、エミッタフォロア回路320の入力端子であるトランジスタ328のベース端子には、直流のバイアス電圧が印加される。具体的には、当該ベース端子は、抵抗器336および338を介して受光用電源スイッチ152(Vcc)に接続されると共に、抵抗器340を介して接地電位に接続されている。また、後述するように、このエミッタフォロア回路354を駆動させるための電源電力は、高周波増幅回路322を介して当該エミッタフォロア回路320に供給される。このため、トランジスタ328のコレクタ端子は、トランジスタ334のエミッタ端子に接続されている。また、当該トランジスタ328のコレクタ端子は、バイパス用のコンデンサ342を介して接地電位にも接続されている。
高周波増幅回路322は、トランジスタ334と、このトランジスタ334のドレイン端子と受光用電源スイッチ152(Vcc)との間に接続された電源供給用の抵抗器344と、を有する。また、この抵抗器344と受光用電源スイッチ152との相互接続点は、バイパス用のコンデンサ346を介して接地電位に接続されている。さらに、上述した3つの抵抗器336,338および340は、トランジスタ334のベース端子に直流バイアス電圧を印加するためのバイアス抵抗器としても機能し、具体的には、抵抗器336および338の相互接続点に当該ベース端子が接続されている。この高周波増幅回路322による増幅処理後の上りFM信号(トランジスタ334のコレクタ端子から出力される信号)が、光電変換回路150の出力信号として、直流カット用のコンデンサ348を介して、図9の加算回路154に入力される。
このように構成された光電変換回路150によれば、受光用電源スイッチ152がONされたとき、図10に点線の矢印350で示すように、直流電源電圧Vccを供給源とする直流電流Idが、高周波増幅回路322,エミッタフォロア回路320および前置増幅回路308を介して、接地電位に流れ込む。従って、これら高周波増幅回路322,エミッタフォロア回路320および前置増幅回路308は、互いに共通の直流電流Idを電源として駆動する。このように3つの増幅回路308,320および322の電源電力を共通化することによって、光電変換回路150全体の消費電力が抑制される。なお、直流電源電圧Vccの電圧値は、例えば+15[V]〜+24[V]程度の比較的に高い値にするのが、望ましい。このようにすれば、駆動電流Idを1[mA]程度に抑えることができる。
また、前置増幅回路150にいわゆる高入力インピーダンス素子であるFET310を採用すると共に、この前置増幅回路150による増幅処理後の上りFM信号を、インピーダンス変換用のエミッタフォロア回路320を介して最終段の高周波増幅回路322に入力することで、特に高周波増幅回路322の増幅率の増大が可能となる。この結果、光電変換回路150全体として、例えば約50[dB]という極めて大きな増幅率を得ることができる。
送光回路134が有する赤外線発光ダイオード50,50,…についても同様に、上述したA〜Dの4つの組毎に当該赤外線発光ダイオード50,50,…の機能を電気的に有効化し、または無効化することができる。このため、送光回路134は、図11に示すような構成とされている。
即ち、送光回路134は、A〜Dのそれぞれの組毎に1つずつ、つまり計4つの輝度変調回路170,170,…を有しており、これら輝度変調回路170,170,…のそれぞれは、4個の赤外線発光ダイオード50,50,…を有している。これらの輝度変調回路170,170,…は、直流電源電圧Vccの供給によって駆動し、当該直流電源電圧Vccは、A〜Dのそれぞれの組毎に設けられた送光用電源スイッチ172,172,…を介して当該各輝度変調回路170,170,…に供給される。従って、この送光用電源スイッチ172がONされている組の輝度変調回路170のみが、有効化され、具体的にはRF増幅回路132から入力された下りFM信号に従ってそれぞれの赤外線発光ダイオード50,50,…を発光させる。一方、送光用電源スイッチ172がOFFされている組の輝度変調回路170については、無効化される。
なお、送光用電源スイッチ172,172,…もまた、受光用電源スイッチ152,152,…と同様に、例えばディップスイッチによって構成されている。そして、これらの送光用電源スイッチ172,172,…は、例えば上述した基台100内に設けられており、送受光装置14の設置時に設置業者等によって操作される。
それぞれの輝度変調回路170は、図12に示すように、オペアンプ360とNチャネル型のFET362と抵抗器364とから成る電圧電流変換回路366を有している。このうちのオペアンプ360の非反転入力端子に、RF増幅回路132による増幅後の下りFM信号が入力される。そして、このオペアンプ360の出力端子は、FET362のゲート端子に接続され、当該オペアンプ360の反転入力端子は、同FET362のソース端子に接続されている。また、このソース端子は、抵抗器364を介して接地電位に接続されている。そして、FET362のドレイン端子に、4個の赤外線発光ダイオード50,50,…が直列に接続されており、詳しくは当該4個の赤外線発光ダイオード50,50,…の直列回路のカソード端子側が接続されている。そして、この赤外線発光ダイオード50,50,…の直列回路のアノード端子側は、上述の送光用電源スイッチ172(Vcc)に接続されると共に、バイパス用のコンデンサ368を介して接地電位に接続されている。
この構成によれば、オペアンプ360の非反転入力端子に入力される下りFM信号の信号レベルに応じた電流Ibが、各赤外線発光ダイオード50,50,…に対して順方向に流れる。そして、この電流Ibが流れることによって、各赤外線発光ダイオード50,50,…が発光し、言わば輝度変調される。これによって、各赤外線発光ダイオード50,50,…から下りFM信号に従う赤外線が発射される。
なお、赤外線発光ダイオード50,50,…は、順方向電圧に対して発光出力が比例しない、いわゆる非線形素子であるので、かかる赤外線発光ダイオード50,50,…を下りFM信号の信号レベルに応じてそのまま発光させると、相互変調積が発生し、赤外線通信に支障を来たす恐れがある。しかしながら、赤外線発光ダイオード50,50,…として、発光出力が順方向電流Ibに比例する、いわゆる線形特性のものを採用すると共に、上述の如く下りFM信号を電圧電流変換回路366によって電流Ibに変換し、この電流Ibを当該赤外線発光ダイオード50,50,…に対して順方向に流せば、当該相互変調積の発生を防止することができ、ひいては快適な赤外線通信を実現することができる。
また、図12の構成では、抵抗器364と並列に、抵抗器370とスイッチ回路372との直列回路が設けられている。このスイッチ回路372は、他の輝度変調回路170,170,…の送光用電源スイッチ172,172,…の動作と連動する。具体的には、他の輝度変調回路170,170,…の送光用電源スイッチ172,172,…のいずれかがOFFされたときに、当該スイッチ回路372がONする。これによって、赤外線発光ダイオード50,50,…に流れる電流Ibが増大し、その分、当該赤外線発光ダイオード50,50,…から発射される赤外線の強度(エネルギ)が増大する。
続いて、それぞれの端末装置18の電気的な構成について、説明する。図13に示すように、端末装置18は、受光回路220を備えている。この受光回路220に、上述のフォトダイオード60,60,…が設けられており、受光回路220は、当該フォトダイオード60,60,…によって変換された電気信号に、同調処理を施して、下りFM信号を抽出する。抽出された下りFM信号は、受信回路22に入力され、ここで中間周波信号に変換され、さらに当該中間周波信号に対して復調処理が施される。これによって、音声信号または下り制御データが再現される。このうち、音声信号は図示しないモニタ用スピーカに入力され、下り制御データは、制御回路224に入力される。
制御回路224は、CPU(Central Processing Unit)を有しており、受信回路222から下り制御データが入力されると、これを解析すると共に、その解析結果に基づいて送信回路226を制御し、例えば上りチャンネルを選択する。また、制御回路224には、上述の操作パネルも接続されており、この操作パネルの操作に応答して、送信回路226または受信回路222を制御する。具体的には、例えば上述したチャンネル選択スイッチが操作されたときは、これに応答して受信回路222による受信チャンネルを制御し、上述の発言要求スイッチが操作されたときは、これに応答して送信回路226の上りチャンネルを選択すると共に、その旨を表す上り制御データを生成して当該送信回路226に入力する。
送信回路226は、制御回路224から入力される制御データ、またはマイクロホン16から入力される音声信号に基づいて、上りFM信号を生成する。そして、この上りFM信号は、送光回路228に入力される。送光回路228は、上述の赤外線発光ダイオード30,30,…を有しており、送信回路226から入力された上りFM信号に基づいて、当該赤外線発光ダイオード30,30,…を発光させ、つまり輝度変調を掛ける。これによって、波長が870[nm]の赤外線が、赤外線発光ダイオードから30,30,…から発射される。なお、この端末装置18を構成する各回路は、図示しないバッテリを電源として、駆動する。
ところで、受光回路220が有するフォトダイオード60,60,…は、上述したように前方の通信エリア90を形成するためのものと、上方の通信エリア92を形成するためのものと、のそれぞれに、3個ずつ振り分けられているが、それぞれの通信エリア90および92毎に各フォトダイオード60,60,…の機能を電気的に有効化し、または無効化することができる。このため、受光回路220は、図14に示すような構成とされている。
即ち、受光回路220は、前方の通信エリア90に対応する光電変換回路400と、上方の通信エリア92に対応する光電変換回路402とを、有している。これらの光電変換回路400および402は、電気的には互いに同じ構成をしているので、このうちの一方、例えば光電変換回路400についてのみ、説明する。
光電変換回路400は(光電変換回路402も同様)、上述のバッテリを電源とする直流電源電圧Vccの供給によって駆動し、この直流電源電圧Vccは、受光用電源スイッチ404を介して当該光電変換回路400に供給される。従って、この受光用電源スイッチ404がONされているときにのみ、光電変換回路400は有効化され、具体的には受光した赤外線から下りFM信号を抽出する。受光用電源スイッチ404がOFFされているときは、当該光電変換回路400は、無効化される。なお、この受光用電源スイッチ404もまた、上述した送受光装置14側の受光用電源スイッチ152,152,…と同様、例えばディップスイッチによって構成されている。ただし、この端末装置18における受光用電源スイッチ404は、例えばこの赤外線会議システム10の運営者等によって操作できるような位置に設けられている。
さて、光電変換回路400を構成する3つのフォトダイオード60,60,…は、互いに並列に接続されており、当該フォトダイオード60,60,…のカソード端子は、上述の受光用電源スイッチ402に接続されている。そして、各フォトダイオード60,60,…のアノード端子は、コイル406を介して接地電位に接続されている。つまり、受光用電源スイッチ404がONされると、各フォトダイオード60,60,…に対して、直流電源電圧Vccが逆バイアス電圧として印加される。なお、フォトダイオード60,60,…のカソード端子と接地電位との間には、バイパス用のコンデンサ408が設けられている。
この構成によれば、各フォトダイオード60,60,…に直流電源電圧Vccが印加されている(受光用電源スイッチ404がONされている)状態にあるとき、当該フォトダイオード60,60,…に赤外線が入射されると、その赤外線の入射強度に応じて、フォトダイオード60,60,…のアノード端子の電圧が変化する。また、上述した図10と同様、各フォトダイオード60,60,…の容量成分と、コイル406のインダクタンスとによって、同調回路410が形成される。この同調回路410の同調周波数は、コイル406のインダクタンス値によって、例えば下りチャンネルCH1およびCH2の受信周波数帯域(1.95[MHz]および2.25[MHz])の中心周波数(2.10[MHz])に設定されている。なお、この同調回路410には、受信周波数帯域における感度を平坦化させるためのいわゆるQダンプ処理が施されており、具体的には、各フォトダイオード60,60,…のアノード端子と接地電位との間に当該Qダンプ処理用の抵抗器412が設けられている。
同調回路410によって抽出された下りFM信号は、カップリング・コンデンサ414を介して、図10における前置増幅回路308と同様の前置増幅回路416に入力される。即ち、この前置増幅回路416は、Nチャネル型のFET418と、このFET418のゲート端子および接地電位間に接続されたバイアス用の抵抗器420と、FET418のドレイン端子と上述の受光用電源スイッチ404との間に接続された電源供給用の抵抗器422と、FET418のソース端子および接地電位間に接続されたソース接地用の抵抗器424と、当該抵抗器424と並列に接続されたバイパス用のコンデンサ426と、で構成されている。そして、この前置増幅回路416によって増幅された下りFM信号は、光電変換回路400の出力信号として、直流カット用のコンデンサ428を介して、合成手段としての加算回路430に入力され、詳しくは当該加算回路430を構成する入力用抵抗器432を介してオペアンプ434の反転入力端子に入力される。
これと同様に、他方の光電変換回路402が有効化されているときには、その出力信号が加算回路430に入力される。従って、加算回路430(オペアンプ434の出力端子)からは、各光電変換回路400および402のうち有効化されたものによって抽出された下りFM信号の合成信号が、出力される。そして、この信号は、受光回路220の出力信号として、図13における受信回路222に入力される。なお、加算回路430は、上述した図9における加算回路154と同様の構成であり、詳しくはオペアンプ434の反転入力端子は、帰還用抵抗器436を介して当該オペアンプ434の出力端子に接続されており、非反転入力端子は、接地電位に接続されている。
送光回路228が有する赤外線発光ダイオード30,30,…についても同様に、それぞれの通信エリア90および92毎に当該発光ダイオード30,30,…の機能を電気的に有効化し、または無効化することができる。このため、送光回路228は、図15に示すような構成とされている。
即ち、送光回路228は、前方の通信エリア90に対応する輝度変調回路450と、上方の通信エリア92に対応する輝度変調回路452とを、有している。これらの輝度変調回路450および452は、電気的には互いに同じ構成をしているので、このうちの一方、例えば輝度変調回路450についてのみ、説明する。
輝度変調回路450は(輝度変調回路452も同様)、光電変換回路400および402と同様、上述のバッテリを電源とする直流電源電圧Vccの供給によって駆動し、この直流電源電圧Vccは、送光用電源スイッチ454を介して当該輝度変調回路450に供給される。従って、この送光用電源スイッチ454がONされているときにのみ、輝度変調回路450は有効化され、具体的には送信回路226から入力された上りFM信号に従ってそれぞれの赤外線発光ダイオード30,30,…を発光させる。送光用電源スイッチ454がOFFされているときは、当該輝度変調回路450は、無効化される。なお、この送光用電源スイッチ454もまた、受光用電源スイッチ404,404,…と同様、例えば運営者によって任意に操作可能なディップスイッチによって構成されている。
さて、輝度変調回路450は、上述の図12に示す送受光装置14側の輝度変調回路170と同様の構成をしており、オペアンプ456とNチャネル型のFET458と抵抗器460とから成る電圧電流変換回路462を有している。即ち、オペアンプ456の非反転入力端子に、送信回路226からの上りFM信号が入力される。そして、このオペアンプ456の出力端子は、FET458のゲート端子に接続され、当該オペアンプ456の反転入力端子は、同FET458のソース端子に接続されている。また、このソース端子は、抵抗器460を介して接地電位に接続されている。そして、FET458のドレイン端子に、6個の赤外線発光ダイオード30,30,…が直列に接続されており、詳しくは当該6個の赤外線発光ダイオード30,30,…の直列回路のカソード端子側が接続されている。そして、赤外線発光ダイオード30,30,…の直列回路のアノード端子側は、送光用電源スイッチ454(Vcc)に接続されると共に、バイパス用のコンデンサ463を介して接地電位に接続されている。
この構成によれば、オペアンプ456の非反転入力端子に入力される上りFM信号の信号レベルに応じた電流Ib’が、各赤外線発光ダイオード30,30,…に対して順方向に流れる。そして、この電流Ib’が流れることによって、各赤外線発光ダイオード30,30,…が発光し、言わば輝度変調される。これによって、各赤外線発光ダイオード30,30,…から上りFM信号に従う赤外線が発射される。
なお、この図15の構成においても、抵抗器460に対して並列に、抵抗器464とスイッチ回路466との直列回路が設けられている。このスイッチ回路466は、他方の輝度変調回路452側の送光用電源スイッチ454の動作と連動する。具体的には、当該他方の輝度変調回路452の送光用電源スイッチ454がOFFされたときに、このスイッチ回路466がONする。これによって、赤外線発光ダイオード30,30,…に流れる電流Ib’が増大し、その分、当該赤外線発光ダイオード30,30,…から発射される赤外線の強度が増大する。
このように、この実施形態における送受光装置14によれば、通信エリア80がA〜Dという4つのエリア82,82,…に分割されている。そして、これら4つのエリア82,82,…のそれぞれにおける赤外線の受光機能を、ディップスイッチ構成の受光用電源スイッチ152,152,…による手動操作によって、任意に有効化し、または無効化することができる。これは、次のような場合に、極めて有効である。
即ち、今、図16に示すように、プラズマディスプレイ装置500が設置されている会議室において、この実施形態の赤外線会議システム10が使用されるとする。そして、全ての送受光装置14,14,…について、上述の受光用電源スイッチ152,152,…がいずれもONされているとする。この場合、プラズマディスプレイ装置500に近い位置にあるいくつかの(図16において左端から1番目および2番目にある)送受光装置14および14が、当該プラズマディスプレイ500から放射される赤外線の影響を受けて、正常な赤外線通信を行えなくなる可能性がある。
そこで、そのような送受光装置14および14については、それぞれ上述した受光用電源スイッチ152の操作によってプラズマディスプレイ装置500が存在する側のエリア82を無効化することで、図17に示すように、当該各送受光装置14および14の通信エリア80および80からプラズマディスプレイ装置500を外すことができる。このようにすれば、プラズマディスプレイ装置500が設置されている環境下においても、その画面から放射される赤外線の影響を受けることなく、正常な赤外線通信を行うことができる。
なお、各エリア82,82,…の無効化は、当該各エリア82,82,…を形成する光電変換回路150,150,…への直流電源電圧Vccの供給を停止することによって実現される。従って、いずれかのエリア82(光電変換回路150および150)が無効化されると、その分、送受光装置14の消費電力が低減され、ひいては赤外線会議システム10全体の消費電力が低減される。
また、このようにいずれかのエリア82における赤外線の受光機能が無効化されると、そのエリア82については通信対象領域外となる。従って、そのようなエリア82に対しては、送受光装置14から下りの赤外線を送光させる必要はない。そこで、そのようなエリア82に対する下りの赤外線の送光を停止させるべく、上述した送光用電源スイッチ172,172,…を操作するのが、望ましい。そして、このようにいずれかのエリア82に対する下りの赤外線の送光を停止させると、上述したように他のエリア82,82,…に対する下りの赤外線の出力強度が増大する。従って、プラズマディスプレイ装置500から放射される赤外線を雑音とすると、これに対する希望の(赤外線通信に使用される)赤外線のS/N(Signal/Noise)比が向上して、当該雑音による影響をより確実に抑制することができる。
これと同様に、端末装置18の通信エリア94も、前方の通信エリア90と、上方の通信エリア92とから成る。そして、これら2つの通信エリア90および92のそれぞれにおける赤外線の受光機能を、ディップスイッチ構成の受光用電源スイッチ404および404による手動操作によって、任意に有効化し、または無効化することができる。
例えば、図18に示すように、それぞれの端末装置18の位置や向きによってはその通信エリア94内にプラズマディスプレイ装置500が入ってしまうような場合でも、上述した受光用電源スイッチ404および404の操作によって、当該プラズマディスプレイ装置500から放射される赤外線による影響を排除することができる。具体的には、図19に示すように、全ての端末装置18,18,…について、上方の通信エリア92,92,…のみを有効化し、前方の通信エリア90,90,…を無効化すれば、当該各端末装置18,18,…の位置や向きに関係なく、プラズマディスプレイ装置500の影響を排除することができる。このことは、各端末装置18,18,…の位置や向きを自由に変更することができることをも、意味する。つまり、プラズマディスプレイ装置500等の雑音源の存在に制限されることなく、各端末装置18,18,…を自由にレイアウトすることができる。従って、端末装置18,18,…が設置される環境(例えば会議室)が変わっても、その環境の変化に容易に対応することができる。
また、通信エリア90および92の無効化は、当該各通信エリア90および92を形成する光電変換回路400および402への直流電源電圧Vccの供給を停止することによって実現されるので、その分、端末装置18の消費電力が低減される。このことは、バッテリを電源として駆動する端末装置18にとって、極めて有効である。
さらに、それぞれの端末装置14においても、各通信エリア90および92のそれぞれに対する上り赤外線の送光を任意に、つまり送光用電源スイッチ454および454による手動操作によって、停止させることができる。そして、いずれか一方の通信エリア90または92に対する上り赤外線の送光が停止されると、他方の通信エリア92または90に対する上り赤外線の出力強度が増大する。従って、その分、上りの赤外線のS/N比が向上して、プラズマディスプレイ装置500から放射される雑音としての赤外線の影響がより低減される。
以上の説明から明らかなように、この実施形態によれば、それぞれの送受光装置14については、受光用電源スイッチ152,152,…による手動操作という極めて簡単な作業によって、プラズマディスプレイ装置500から放射される赤外線の影響を排除することができる。そして、それぞれの端末装置18についても、受光用電源スイッチ404および404による手動操作によって、当該プラズマディスプレイ装置500からの赤外線の影響を排除することができる。このことは、プラズマディスプレイ装置500に限らず、太陽光や放電式照明装置等の各種雑音源による影響を排除する場合も、同様である。
また、送受光装置14については、送光用電源スイッチ172,172,…による手動操作によって、赤外線を送光するエリア82,82,…を制限することができる。そして、このように赤外線を送光するエリア82,82,…が制限されると、残りの(有効な)エリア82,82,…に対する赤外線の出力強度が増大する。端末装置18についても、同様に、送光用電源スイッチ454および454による手動操作によって、赤外線を送光するエリア90および92を制限することができる。そして、赤外線の送光エリア90または92が制限されると、残りの送光エリア92または90に対する赤外線の出力強度が増大する。従って、雑音の影響をより受け難い、快適な赤外線通信を行うことができる。
なお、この実施形態においては、赤外線会議システム10にこの発明を適用する場合について説明したが、これに限らない。例えば、単信の装置にこの発明を適用してもよいし、赤外線を一方的に受光するのみの言わば受光装置にもこの発明を適用することができる。
また、送受光装置14の受光用電源スイッチ152,152,…および送光用電源スイッチ172,172,…の操作を、センタ装置12によって制御できるようにしてもよい。そして、それぞれの端末装置18の受光用電源スイッチ404および404、送光用電源スイッチ454および454についても、センタ装置12側から遠隔操作できるようにしてもよい。
さらに、送受光装置14については、受光用電源スイッチ152,152,…の操作に連動して、送光用電源スイッチ172,172,…がON/OFFされるようにしてもよい。具体的には、いずれかの受光用電源スイッチ152がOFFされてそれに対応するエリア82が無効化されたとき、当該無効化されたエリア82に対応する送光用電源スイッチ172がOFFされるようにしてもよい。
端末装置18についても、同様に、受光用電源スイッチ404および404の操作に連動して、送光用電源スイッチ454および454がON/OFFされるようにしてもよい。つまり、いずれかの受光用電源スイッチ404がOFFされてそれに対応する通信エリア90または92が無効化されたとき、その無効化された通信エリア90または92に対応する送光用電源スイッチ454がOFFされるようにしてもよい。
そして、この実施形態で説明した送受光装置14および端末装置18の構造および回路構成等については、飽くまで一例であって、これによってこの発明が限定されるものでないことは、言うまでもない。