JP4023949B2 - 還元炎形成用バーナー - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、還元炎形成用バーナーに関し、詳しくは、還元性雰囲気を必要とする工業炉や廃棄物処理炉での加熱処理、溶融処理等に使用する還元炎形成用バーナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料と酸化剤とを噴出させて燃焼させるバーナーは、各種工業炉等で多く利用されており、特に、酸化剤として酸素を使用した酸素バーナーは、酸化剤として空気を用いた空気バーナーに比べて高温の火炎が得られることや、排ガス量が少ないことから、例えば、アルミナ等の耐火物の焼成、ガラスやアルミナセメント等の溶融、PCB(ポリ塩化ビフェニール)等の難燃物の焼却、鉄,銅,アルミニウム等の金属の溶融、その他の各種加熱処理に幅広く用いられている。
【0003】
このような通常のバーナーにおける燃焼は、すす(未燃カーボン)の発生を抑制するため、燃料に対する酸素比を1.0以上としているので、火炎中には未反応の酸素が残留することになり、酸化性雰囲気が形成されるのが普通である。
【0004】
一方、酸化されやすい金属や金属酸化物の溶融処理を行う場合は、酸化を抑制するために還元性雰囲気で加熱することが望ましい。酸素バーナーにおいては、燃料に対する酸素比を1.0未満として燃焼させ、火炎中に還元性物質である水素や一酸化炭素を発生させえることにより、還元性雰囲気を形成することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、単に酸素比を1.0未満として燃焼させると、すすが大量に発生することになり、バーナーや炉壁に付着して閉塞等の問題を引き起こしたり、溶融物中にカーボンが混入して溶融物の性状を変化させてしまう不都合が発生したりする。さらに、すすが発生することによって火炎の温度が低下し、溶融や燃焼の処理効率を低下させてしまうことにもなる。
【0006】
また、燃料及び酸化剤に加えて水蒸気や二酸化炭素をバーナーから噴出させることにより、すすの発生を抑制することはできるが、水蒸気や二酸化炭素等の燃焼に寄与しない物質の存在によって火炎温度が低下してしまうため、加熱効率の低下は避けることができない。
【0007】
そこで本発明は、すすの発生を抑制しながら還元性雰囲気を形成することができる還元炎形成用バーナーを提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の還元炎形成用バーナーは、燃料に対する酸素比を1.0未満として燃焼させることにより還元炎を形成するバーナーであって、バーナー中心軸を中心とした円周上に、バーナー中心軸と平行に燃料を噴出する燃料ノズルを円環状に設けるとともに、該燃料ノズルを包囲する同心円上で、かつ、燃料ノズルに対して軸線方向同一位置あるいは燃料ノズルより突出した位置に、バーナー中心軸延長線上に焦点を持つように酸化剤を噴出する酸化剤ノズルを円環状に設けたことを特徴とし、特に、前記酸化剤を、燃料の噴出速度以上の速度で噴出させることを特徴としている。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の還元炎形成用バーナーの一形態例を示す断面図である。この還元炎形成用バーナー10は、バーナー中心軸11を軸線として噴出方向が拡がった円錐台状の燃焼室12に、燃料を噴出する燃料ノズル13と、酸化剤、例えば酸素を噴出する酸化剤ノズル14とを設けたものである。
【0010】
燃料ノズル13は、バーナー中心軸11を中心とした円周上に円環状に設けられており、燃料の噴出方向15は、バーナー中心軸11と平行になるように設定されている。
【0011】
また、酸化剤ノズル14は、燃料ノズル13の外周を包囲するように設けられるものであって、燃料ノズル13に対して同心円上に、すなわち、バーナー中心軸11を中心とし、燃料ノズル13より大径の円周上に円環状に設けられている。酸化剤ノズル14の酸化剤の噴出方向16は、バーナー中心軸11の延長線上に焦点17を持つように内側に向いており、この酸化剤ノズル14から噴出した酸化剤で、燃料ノズル13から噴出した燃料を包み込むことができるように形成されている。
【0012】
なお、バーナー外周には、バーナー10を高温の環境から保護するための水冷ジャケット18が設けられており、この水冷ジャケット18の内周側に、燃料や酸化剤の通路13a,14aが形成されている。
【0013】
このように形成したバーナー10において、燃料ノズル13から噴出した燃料は、酸化剤ノズル14から噴出した酸化剤、例えば酸素と反応して燃焼し、この燃焼による発熱によって高温の領域が形成される。このとき、燃料と酸素との界面では、局所的に完全燃焼が発生して二酸化炭素や水蒸気が生成されるとともに、燃料に対する酸素比が1.0未満に設定されていることから、余剰な燃料から多量のすすが生成される。
【0014】
生成したすすは、酸素あるいは完全燃焼で生成した二酸化炭素や水蒸気と高温状態で接触することによってこれらと反応し、炭素原子2個と1分子の酸素とが反応すれば2分子の一酸化炭素が生成し、炭素原子1個と1分子の二酸化炭素とが反応すれば2分子の一酸化炭素が生成し、炭素原子1個と1分子の水蒸気とが反応すれば一酸化炭素と水素とが1分子ずつ生成する。
【0015】
そして、燃料ノズル13と酸化剤ノズル14とを前述のように配置することにより、酸化剤ノズル14から噴出した酸素で燃料ノズル13から噴出した燃料を包み込む遮蔽層を形成することができる。この遮蔽層は、燃料が酸素と接触することなく単体でバーナー前方の高温領域に飛び出し、熱分解してすすを発生することを防止する。すなわち、この遮蔽層は、燃料と酸素との界面で生成したすすを、そのままバーナー前方に飛び出させることなく、燃料と酸素との界面での局所的な完全燃焼によって生成した二酸化炭素や水蒸気と共に燃焼領域に閉じ込め、これらを燃焼領域で混合して反応させ、前述のように一酸化炭素や水素を生成させる。したがって、このバーナー10での燃焼によって得られる生成ガスは、すすをほとんど含まず、一酸化炭素や水素を含む還元性のものとなる。
【0016】
上述のような燃焼形態は、バーナー径やノズル形状、燃料の種類、酸化剤の酸素濃度、還元性雰囲気の条件(一酸化炭素や水素の含有量、すすの許容量)等に応じて実験等によって最適な状態を選択することによって形成されるものであるが、一般的には、酸化剤ノズル14から噴出する酸化剤の噴出速度を、燃料ノズル13から噴出する燃料の噴出速度よりも高速にすることにより、前記遮蔽層を効果的に作り出すことができる。この燃料の噴出速度に対する酸化剤の噴出速度の比(速度比)は、条件によって異なり、通常は、燃料の噴出速度に対する酸化剤の噴出速度が0.8以上であればすすの発生を抑えることができるが、燃料の噴出速度に対する酸化剤の噴出速度を1.0〜1.4程度にすることが好ましい。但し、速度比を高くし過ぎると、遊離酸素(未反応の酸素)が発生したり、正常な燃焼状態が得られなくなったりすることがある。
【0017】
また、燃料ノズル13を酸化剤ノズル14の近傍に配置することにより、酸化剤ノズル14から噴出する酸素の噴流中に効率よく燃料を吸引することができ、燃焼反応を促進させることができる。さらに、燃料ノズル13及び酸化剤ノズル14は、図1に示すような小通孔で形成する場合は、できるだけ間隔を狭めて円形に近くなるように配置することが好ましい。また、径の異なる管体とスペーサーとを組合わせてノズル13,14を連続したスリットからなるリング状に形成することにより、燃料と酸素とを均等に接触させることができるので、より効果的な燃焼反応を得ることができる。
【0018】
さらに、燃料ノズル13と酸化剤ノズル14とのバーナー軸線方向の位置は、燃料ノズル13が酸化剤ノズル14より前方に突出していると、燃料ノズル13から噴出した燃料が酸化剤の遮蔽層を突き抜け易くなるので、酸化剤ノズル14を前方に位置させておくべきである。したがって、必然的に図1に示すような燃焼室形状になるが、円錐台における広がり角度は任意であり、平面に近くなっていてもよい。
【0019】
また、燃料と酸化剤との量は、燃料の種類によって異なり、燃料中の炭素を一酸化炭素に変換できる酸素量以上で、燃料に対する酸素比が1.0未満であれば、上述の燃焼反応により、すすの少ない還元性雰囲気を形成することはできる。しかし、一般に、酸素比が低い程、一酸化炭素や水素の含有量は増加するが、火炎の温度が下がり、反応が実現し難くなる。したがって、例えば燃料がプロパン(C)の場合は、酸素比を0.3〜0.6の範囲、好ましくは0.45程度に設定することにより、反応を起こすのに十分な火炎の温度と、一酸化炭素や水素の含有量が多い強還元性雰囲気を形成することができる。
【0020】
酸化剤ノズル14における前記焦点17の位置も各種条件によって異なるが、バーナー径(酸化剤ノズル14配置部の径)と同程度の距離、バーナー中心軸に対する角度は45度程度が適切であり、焦点17が遠過ぎる燃焼反応が緩慢になり、焦点17が近過ぎると、酸化剤の噴流同士が激しく衝突する状態になるため、ガス流れに乱れが発生して燃焼が不均一となることがあり、燃焼反応に悪影響を及ぼすことがある。また、燃料の噴出方向は、実質的にバーナー中心軸と平行であればよく、僅かに外方に向いていたり、内方に向いていたりしてもよい。
【0021】
燃料は、LPG,LNG,ブタンのような気体燃料が好適であるが、灯油,重油,軽油等の液体燃料、微粉炭のような固体燃料、あるいはこれらの混合物を使用することができる。また、酸化剤としては、高温領域を効率よく形成できる点から酸素ガスを用いることが最適であるが、酸素濃度80%程度の酸素富化ガスを用いてもよく、炉の運転条件等によっては空気を用いることも可能である。さらに、この還元炎形成用バーナーは、一酸化炭素や水素を必要とする用途にも用いることができる。
【0022】
【実施例】
図1に示す構造の還元炎形成用バーナーを使用した。この還元炎形成用バーナーは、バーナー径(水冷ジャケット内径)が70mmであり、燃焼室の開き角度は約60度である。燃料ノズルは、バーナー中心軸を中心とした直径34mmの円周上に等間隔に8個を設置した。酸化剤ノズルは、噴出方向をバーナー中心軸に対して45度の角度に設定し、バーナー中心軸を中心とした直径53.4mmの円周上に等間隔に24個を設置した。
【0023】
この還元炎形成用バーナー10を、図2に示すようにして実験炉21に設置し、対向面にはサンプリングプローブ22を設けて炉内で生成したガスをサンプリングした。
【0024】
燃料としてはLPGを使用して毎分167リットル(10m/h)で供給し、酸化剤としては純度99.8%の酸素ガスを使用した。そして、両ノズルからの噴出速度を同等とし、ノズル径を変えることにより酸素ガス量を変化させ、酸素比を1.0〜0.4として燃焼させた。各酸素比におけるすすの発生量(すす発生量:投入した燃料中に含まれるカーボンに対するサンプリングで実測された未撚カーボン量を百分率で表わしたもの)と、各酸素比における一酸化炭素及び水素の発生量(CO+H濃度:生成ガス中の一酸化炭素及び水素の合計含有量[%])とを図3に示す。なお、酸素比0.4のときの火炎温度は1988℃であった。
【0025】
実施例2
実施例1と同様の構造の還元炎形成用バーナーを使用し、燃料のLPGに対する酸素比を0.4に固定してノズル径を変えることにより酸素ガスの噴出速度を変化させ、速度比(酸化剤の噴出速度/燃料の噴出速度)を0.4〜1.2として燃焼させた。実施例1と同様にしてすすの発生量と一酸化炭素及び水素の発生量とを測定した。その結果を図4に示す。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の還元炎形成用バーナーによれば、火炎温度の低下を最小限とし、すすの発生を抑えながら高濃度で一酸化炭素や水素を含む還元性雰囲気を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の還元炎形成用バーナーの一形態例を示す断面図である。
【図2】 実施例で使用した実験炉の断面図である。
【図3】 実施例1における酸素比とすすの発生量及び一酸化炭素及び水素の発生量との関係を示す図である。
【図4】 実施例2における酸素比とすすの発生量及び一酸化炭素及び水素の発生量との関係を示す図である。
【符号の説明】
10…還元炎形成用バーナー、11…バーナー中心軸、12…燃焼室、13…燃料ノズル、14…酸化剤ノズル、15…燃料の噴出方向、16…酸化剤の噴出方向、17…焦点、18…水冷ジャケット、21…実験炉、22…サンプリングプローブ

Claims (2)

  1. 燃料に対する酸素比を1.0未満として燃焼させることにより還元炎を形成するバーナーであって、バーナー中心軸を中心とした円周上に、バーナー中心軸と平行に燃料を噴出する燃料ノズルを円環状に設けるとともに、該燃料ノズルを包囲する同心円上で、かつ、燃料ノズルに対して軸線方向同一位置あるいは燃料ノズルより突出した位置に、バーナー中心軸延長線上に焦点を持つように酸化剤を噴出する酸化剤ノズルを円環状に設けたことを特徴とする還元炎形成用バーナー。
  2. 前記酸化剤は、前記燃料の噴出速度以上の速度で噴出することを特徴とする請求項1記載の還元炎形成用バーナー。
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