JP4020725B2 - 省エネルギの冷却システムを有する電子機器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子機器の冷却に関し、特に、例えばノートブック型パーソナル・コンピュータ(PC)のような小型電子機器における省エネルギの冷却システムに関する。
【0002】
【発明の背景】
最近のノートブック型PCにおける処理の高速化に伴って、そのCPU、ハードディスク・ドライブおよびグラフィック・チップ等の発熱性の構成要素で発生する熱量が多くなっている。しかし、通常のヒート・シンク、ヒート・パイプおよび空冷ファンではそのような発熱性の構成要素を充分に冷却することができない。
【0003】
チューブからなる閉ループ系において吸熱部から放熱部へおよび放熱部から吸熱部へと電気モータによって液体冷媒を循環させることによって、CPUを効率的に冷却するノートブック型PCは知られている。
【0004】
武田、他によって1995年9月19日付けで公開された特開平7−243738号公報(A)には、磁気式液体振動ポンプを用いた電子機器冷却装置が記載されている。この冷却装置は、閉ループを形成するチューブの駆動部においてコイル中を流れる励磁電流により形成される外部磁場によって球形磁性体をそのチューブに沿って振動させて、チューブ内の液体冷媒を吸熱部と放熱部の間で往復させ、それによって効率的な冷却が行われる。球形磁性体は、チューブの内径とほぼ同じ外径を有する。代替構成として、この冷却装置は、そのような駆動部を有する分岐チューブを有する閉ループのチューブを具え、閉ループのチューブにおけるその分岐部の前後に2つまたは1つの一方向弁が設けられており、その分岐チューブに沿った球形磁性体の振動によって液体冷媒が循環される。
【0005】
通常の電子機器における強制的冷却は電気エネルギを必要とする。しかし、バッテリを用いる電子機器においては、できるだけ電気エネルギ消費を節減することが望ましい。
【0006】
発明者は、電子機器における効率的な省エネルギの冷却に対するニーズ(必要性)を認識した。
【0007】
本発明の目的は、電子機器において省エネルギの冷却を実現することである。本発明の別の目的は、電子機器において省エネルギの駆動力で流体冷媒を循環させることによる冷却を実現することである。
【0008】
【発明の概要】
発明の1つの特徴(側面)によれば、電子機器は、振動を与える構成要素を内部に有する。電子機器は、吸熱部材と、放熱部材と、その構成要素の振動を受けるエラストマ・バッグと、そのエラストマ・バッグの1つのポートに連結された第1の逆止弁と、そのエラストマ・バッグの別のポートに連結された第2の逆止弁と、その吸熱部材、その第1の逆止弁、そのエラストマ・バッグ、その第2の逆止弁およびその放熱部材を通って流れる冷媒と、を具えている。その構成要素は、記録媒体を機械的に駆動する装置、またはファンである。
【0009】
そのエラストマ・バッグは前記構成要素に接近して配置されている。そのエラストマ・バッグおよびその第1と第2の逆止弁は、その構成要素の振動に伴ってその冷媒をポンピングするよう動作してもよい。
【0010】
その電子機器は、さらに、その放熱部材に連結された貯留タンクを具えている。その貯留タンクは閉じた空気バッグを含んでいてもよい。
【0011】
その電子機器は、さらに、第3と第4の逆止弁に連結されていて第2の構成要素の圧力または振動を受ける第2のエラストマ・バッグを具えていてもよい。
【0012】
本発明によれば、電子機器において、省エネルギの冷却を実現し、省エネルギの駆動力で流体冷媒を循環させることができる。
【0013】
図において、同じ参照番号は同様の要素を示している。
【0014】
【0015】
【発明の好ましい実施形態】
図1は、本発明が適用可能な、例えばノートブック型パーソナル・コンピュータ(PC)およびPDA(Personal Digital Assistance)のような電子機器10を示している。電子機器10は、例えば液晶表示装置(LCD)のような表示装置22を含む表示部筐体20と、キーボード32、ポインティング・デバイス34、充電バッテリ36、スピーカ38、CD/DVDドライブ40、ジョグダイヤル42、冷却ファン、およびプロセッサおよびハードディスク・ドライブ等を収容する主要部筐体30とを具えている。主要部筐体30の上面には、ポインティング・デバイス34の左右両側に手を載せるためのパームレスト44が設けられている。
【0016】
図2は、本発明の実施形態による、図1の電子機器10の表示部筐体20の表示面と主要部筐体30の操作面が180度になるように表示部筐体20を開いたときの表示部筐体20と主要部筐体30の部分的に切欠を有する上面図を例示している。表示部筐体20は、表示装置22の背部に、表示部筐体20の背面パネルから熱を放出し液体冷媒が流通する放熱部材220および221、および放熱部材220と221の間に連結されていて液体冷媒を貯留する貯留(アキュムレータ)タンク210を、内部に含んでいる。タンク210は、液体冷媒用の入口ポートと出口ポート以外から、外部に液体が流出しないようにタイト(気密、水密、機密)な構造を有する。液体冷媒は、例えば不凍液であればよい。放熱部材220および221は折り曲げられたアルミニウム製のチューブであればよい。そのチューブは表示部筐体20の背面のパネルに接触するように配置されている。
【0017】
図2において、主要部筐体30は、キーボード32側の操作面の背部に、例えばCPU、ハードディスク・ドライブおよびグラフィック・チップのような電子機器10の発熱部300に近接して設けられた吸熱部材340、液体冷媒を一方向にのみ流し逆流を防止する逆止弁(チェックバルブ)442および462、および逆止弁442と462の間に連結されたエラストマ・バッグまたはエラストマ・チューブ412を、内部に含んでいる。図において、逆止弁442と462は、JISに従ったシンボルで表されている。図2において、エラストマ・バッグ412は、ポインティング・デバイス34およびパームレスト44の背部に配置されている。ポインティング・デバイス34は、クリックおよび指の押圧力に従って垂直方向に移動し振動する。パームレスト44の面は手の重量を受けたときに垂直方向に少しだけ垂れ下がる。吸熱部材340は、例えば、折り曲げられたアルミニウム製のチューブであればよい。そのチューブは発熱部300に接触するように配置されていることが好ましい。
【0018】
放熱部材220の左下側の出口ポート(開口)は、2つの筐体20と30の間の境界を渡るゴム・チューブ222とチューブ322を介して吸熱部材340の入口ポートに連結されている。吸熱部材340の出口ポートは、チューブ324を介して逆止弁442の入口ポートに連結されている。逆止弁442の出口ポートは、チューブ342を介してエラストマ・バッグ412の入口ポートに連結されている。エラストマ・バッグ412の出口ポートは、チューブ352を介して逆止弁462の入口ポートに連結されている。逆止弁462の出口ポートは、チューブ330とゴム・チューブ224を介して放熱部材221の右下側の入口ポートに連結されている。ゴム・チューブ222と224は、表示部筐体20と主要部筐体30の間の角度に関係なく冷媒の流路を確保するように配置されている。このようにして閉ループの流体回路が形成される。コンポーネント(構成要素)間を連結するチューブ322、324、342、352および330は、外径が約1〜約3mmのプラスチック製または金属製のチューブで、例えば断面が楕円形であればよい。
【0019】
動作を説明すると、ユーザが手をパームレスト44に載せてポインティング・デバイス34を操作すると、エラストマ・バッグ412はその操作に伴う反復的な押圧力および振動を受けて収縮と膨張を繰り返してその中の液体冷媒をポンピングする。エラストマ・バッグ412が繰り返し収縮することによって、その中の液体冷媒は逆止弁462を通って放熱部材221へと徐々に流れそこで熱を放出し貯留タンク210に流入する。エラストマ・バッグ412が繰り返し膨張することによって、タンク210の中の液体冷媒は、放熱部材220で冷却されて吸熱部材340に流入して発熱部300の熱を吸収し、逆止弁442を通ってエラストマ・バッグ412へと徐々に流れて戻って来る。このようにして、液体冷媒は、電子機器10の交流電源またはDCバッテリ36のエネルギまたは電力を消費することなく吸熱部340と放熱部220および221の間を循環して、発熱部300を冷却する。
【0020】
図3Aは、図2および後で説明する図8〜12のエラストマ・バッグまたはエラストマ・チューブ412の上面図を示している。図3Bは、エラストマ・バッグ412の正面図を示している。エラストマ・バッグ412は、ゴムまたは軟性プラスチックでできており、中央部の幅が拡がった概ね楕円体形状を有する。エラストマ・バッグ412は、主に中央部の概ね平坦な面が圧力および振動を受け、反対側の面が支持部材または支持プレート421によって支持されるように、圧力源または振動源に対面するように配置される。図2において、支持プレート421は図を簡単化するために図示されていない。
【0021】
図4Aは、図2の貯留タンク210の斜視図を示している。図4Bは、図4Aの貯留タンク210の4B−4Bを通る垂直平面で切った断面図である。貯留タンク210には、風船のような膨張収縮可能なゴムまたはプラスチック製の空気バッグ212が収容されている。空気バッグ212は、貯留タンク210の上側に設けられていて、電子機器10の配置および角度にかかわらず、液体冷媒216の流通用の入口および出口ポートを塞がないようにグリッド214で係止されている。そのような空気バッグをタンク210の下側にも設けてもよい。空気バッグ212は、エラストマ・バッグ412が収縮することによってタンク210内に液体冷媒216が流入してその量が増えたときに収縮し、逆に、エラストマ・バッグ412が膨張することによってタンク210内の液体冷媒216が流出してその量が減ったときに膨張する。換言すれば、エラストマ・バッグ412は、空気バッグ212の弾性力と協働して収縮し膨張する。
【0022】
図5Aおよび5Bは、逆止弁442および462として用いることができる公知の逆止弁の断面構造および動作を例示している。図5Aおよび5Bの逆止弁は、軸方向に右側に突出する概ね円錐形の膜を有する。図5Aに示されているように、その逆止弁は、流体冷媒が膜の突出する右方向に一方向に流れるのを許容する。しかし、図5Bに示されているように、その逆止弁は、流体冷媒が膜の突出してない逆方向に流れるのを阻止する。
【0023】
図6Aおよび6Bは、逆止弁442および462として用いることができる公知の別の逆止弁の断面構造および動作を例示している。図6Aおよび6Bの逆止弁は、チューブの軸に概ね垂直に配置されていて右方向にのみ開くヒンジ付きの薄板または膜を有する。図6Aに示されているように、その逆止弁は、流体冷媒がその薄板が開く右方向に一方向に流れるのを許容する。しかし、図6Bに示されているように、その逆止弁は、流体冷媒がその薄板が閉じる逆方向に流れるのを阻止する。
【0024】
図7Aおよび7Bは、逆止弁442および462として用いることができる公知のさらに別の逆止弁の断面構造および動作を例示している。図7Aおよび7Bの逆止弁は、左右の2つのチューブの間の空間に球またはボールを閉じ込めたもので、左側のチューブ端部は平坦に切り落とされ円形の端縁を有し、右側のチューブ端部は切り欠きが施された円形状の端縁を有する。図7Aに示されているように、その逆止弁は、流体冷媒がその球が切り欠きのある端縁に接する右方向に一方向に流れるのを許容する。しかし、図7Bに示されているように、その逆止弁は、流体冷媒がその球が円形の端縁に接する逆方向に流れるのを阻止する。
【0025】
図8は、本発明の別の実施形態による、図1の電子機器10の表示部筐体20の表示面と主要部筐体30の操作面が180度になるように表示部筐体20を開いたときの表示部筐体20と主要部筐体30の部分的に切欠を有する上面図を例示している。表示部筐体20は、図2の場合と同様の構成を有し、再び説明することはしない。
【0026】
図8において、主要部筐体30は、キーボード32側の操作面の背部に、発熱部300に近接して設けられた吸熱部材340、液体冷媒を一方向にのみ流す逆止弁444および464、および逆止弁444と464の間に連結されたエラストマ・バッグ414を、内部に含んでいる。図8において、エラストマ・バッグ414は、キーボード32の底部のアルミニウム板およびポインティング・デバイス34の背部に配置されている。図8において、エラストマ・バッグ414の支持プレート421(図2)は図を簡単化するために図示されていない。
【0027】
放熱部材220の出口ポートは、ゴム・チューブ222とチューブ322を介して吸熱部材340の入口ポートに連結されている。吸熱部材340の出口ポートは、チューブ324を介して逆止弁444の入口ポートに連結されている。逆止弁444の出口ポートは、チューブ344を介してエラストマ・バッグ414の入口ポートに連結されている。エラストマ・バッグ414の出口ポートは、チューブ364を介して逆止弁464の入口ポートに連結されている。逆止弁464の出口ポートは、チューブ330とゴム・チューブ224を介して放熱部材221の入口ポートに連結されている。このようにして閉ループの流体回路が形成される。
【0028】
動作を説明すると、ユーザがキーボード32およびポインティング・デバイス34を操作すると、エラストマ・バッグ414はその操作に伴う押圧力および振動を受けて収縮と膨張を繰り返してその中の液体冷媒をポンピングする。エラストマ・バッグ414が繰り返し収縮することによって、その中の液体冷媒は逆止弁464を通って放熱部材221へと徐々に流れそこで放熱し貯留タンク210に流入する。エラストマ・バッグ414が繰り返し膨張することによって、タンク210の中の液体冷媒は、放熱部材220で冷却されて吸熱部340に流入して発熱部300の熱を吸収し、逆止弁444を通ってエラストマ・バッグ414へと徐々に流れて戻って来る。このようにして、液体冷媒は、吸熱部340と放熱部220および221の間を循環する。
【0029】
図9は、本発明のさらに別の実施形態による、図1の電子機器10の表示部筐体20の表示面と主要部筐体30の操作面が180度になるように表示部筐体20を開いたときの表示部筐体20と主要部筐体30の部分的に切欠を有する上面図を例示している。表示部筐体20は、図2の場合と同様の構成を有し、再び説明することはしない。
【0030】
図9において、主要部筐体30は、キーボード32側の面の背部に、発熱部300に近接して設けられた吸熱部材340、液体冷媒を一方向にのみ流す逆止弁446および466、および逆止弁446と466の間に連結されたエラストマ・バッグ416を、内部に含んでいる。図9において、エラストマ・バッグ416は、スピーカ38およびジョグダイヤル42の背部に配置されている。エラストマ・バッグ416は、さらに、冷却ファン46およびCD/DVDドライブ40の上に配置されている。エラストマ・バッグ416はハードディスク・ドライブ48の上に配置されていてもよい。
【0031】
冷却ファン46、CD/DVDドライブ40およびハードディスク・ドライブ48は、その動作時に回転軸の偏心等による振動を伴う。スピーカ38は音声発生時に振動する。エラストマ・バッグ416は、冷却ファン46、CD/DVDドライブ40およびハードディスク・ドライブ48の振動に対して緩衝作用を有し、それによって騒音が低減され、電子機器10内の他の構成要素への振動の伝達が低減される。また、エラストマ・バッグ416は、冷却ファン46、CD/DVDドライブ40およびハードディスク・ドライブ48の発する熱も吸収できる。
【0032】
放熱部材220の出口ポートは、ゴム・チューブ222とチューブ322を介して吸熱部材340の入口ポートに連結されている。吸熱部材340の出口ポートは、チューブ324を介して逆止弁446の入口ポートに連結されている。逆止弁446の出口ポートは、チューブ346を介してエラストマ・バッグ416の入口ポートに連結されている。エラストマ・バッグ416の出口ポートは、チューブ366を介して逆止弁466の入口ポートに連結されている。逆止弁466の出口ポートは、チューブ330とゴム・チューブ224を介して放熱部材221の入口ポートに連結されている。このようにして閉ループの流体回路が形成される。
【0033】
動作を説明すると、スピーカ38から音声を発生させ、ユーザがジョグダイヤル42を操作し、CD/DVDドライブ40が動作し、冷却ファン46およびハードディスク・ドライブ48が動作するとき、エラストマ・バッグ416はその操作および振動に伴う押圧力および振動を受けて収縮と膨張を繰り返してその中の液体冷媒をポンピングする。エラストマ・バッグ416が繰り返し収縮することによって、その中の液体冷媒は逆止弁466を通って放熱部材221へと流れそこで放熱し貯留タンク210に流入する。エラストマ・バッグ416が繰り返し膨張することによって、タンク210の中の液体冷媒は、放熱部材220で冷却されて吸熱部340に流入して発熱部300の熱を吸収し、逆止弁446を通ってエラストマ・バッグ416に戻って来る。このようにして、液体冷媒は、吸熱部340と放熱部220および221の間を循環する。
【0034】
図10は、本発明のさらに別の実施形態による、図1の電子機器10の表示部筐体20の表示面と主要部筐体30の操作面が180度になるように表示部筐体20を開いたときの表示部筐体20と主要部筐体30の部分的に切欠を有する上面図を例示している。表示部筐体20は、図2の場合と同様の構成を有し、再び説明することはしない。
【0035】
図10において、主要部筐体30は、キーボード32側の操作面の背部に、発熱部300に近接して設けられた吸熱部材340、液体冷媒を一方向にのみ流す逆止弁448および468、および逆止弁448と468の間に連結されたエラストマ・バッグ418を、内部に含んでいる。図10において、バッテリ36は、重量物であり、図3Bに示されたように配置されたエラストマ・バッグ418に沿って近接して配置されており、例えばスポンジのような緩衝部材362を介してエラストマ・バッグ418の方向に相対的に可動な形態で主要部筐体30に支持され収容されている。
【0036】
放熱部材220の出口ポートは、ゴム・チューブ222とチューブ322を介して吸熱部材340の入口ポートに連結されている。吸熱部材340の出口ポートは、チューブ324を介して逆止弁448の入口ポートに連結されている。逆止弁448の出口ポートは、チューブ348を介してエラストマ・バッグ418の入口ポートに連結されている。エラストマ・バッグ418の出口ポートは、チューブ368を介して逆止弁468の入口ポートに連結されている。逆止弁468の出口ポートは、チューブ330とゴム・チューブ224を介して放熱部材221の入口ポートに連結されている。このようにして閉ループの流体回路が形成される。
【0037】
動作を説明すると、例えば電車内に持ち込まれた電子機器10が走行中の電車の振動を受けると、バッテリ36は主要部筐体30に対して緩衝部材362の収縮の許容範囲で振動する。バッテリ36が振動すると、エラストマ・バッグ418はその振動を受けて収縮と膨張を繰り返してその中の液体冷媒をポンピングする。エラストマ・バッグ418が繰り返し収縮することによって、その中の液体冷媒は逆止弁468を通って放熱部材221へと徐々に流れそこで放熱し貯留タンク210に流入する。エラストマ・バッグ418が繰り返し膨張することによって、貯留タンク210の中の液体冷媒は、放熱部材220で冷却されて吸熱部340に流入して発熱部300の熱を吸収し、逆止弁448を通ってエラストマ・バッグ418へと徐々に流れて戻って来る。このようにして、電子機器10が走行中の電車において動作している間に、液体冷媒は、吸熱部340と放熱部220および221の間を循環する。
【0038】
図11は、本発明のさらに別の実施形態による、図1の電子機器10の表示部筐体20の表示面と主要部筐体30の操作面が180度になるように表示部筐体20を開いたときの表示部筐体20と主要部筐体30の部分的に切欠を有する上面図を例示している。
【0039】
図11において、表示部筐体20は、表示装置22の背部に、中を液体冷媒が流れる放熱部材20および221、放熱部材20および221に連結されていて液体冷媒を貯留する貯留タンク210、エラストマ・バッグ420、および逆止弁450および470を内部に含んでいる。エラストマ・バッグ420が表示装置22の背部に近接して配置されている。表示装置22は、重量物であり、スポンジのような緩衝部材23を介して振動に対して表示面に垂直方向に即ちエラストマ・バッグ420の方向に可動な形態で表示部筐体20に支持されている。図11において、エラストマ・バッグ420の支持プレート421(図2)は図を簡単化するために図示されていない。
【0040】
主要部筐体30は、キーボード32側の面の背部に、発熱部300に近接して設けられた吸熱部材340を、内部に含んでいる。
【0041】
放熱部材220の出口ポートは、チューブ333を介して逆止弁450の入口ポートに連結されている。逆止弁450の出口ポートは、チューブ350を介してエラストマ・バッグ420の入口ポートに連結されてい。エラストマ・バッグ420の出口ポートは、チューブ360を介して逆止弁470の入口ポートに連結されている。逆止弁470の出口ポートは、チューブ331とゴム・チューブ222を介して吸熱部材340の入口ポートに連結されている。吸熱部材340の出口ポートは、破線で示されたチューブ325とゴム・チューブ224を介して放熱部材221の入口ポートに連結されている。放熱部材221の出口ポートは貯留タンク210の入口ポートに連結されている。貯留タンク210の出口ポートは放熱部材220の入口ポートに連結されている。このようにして閉ループの流体回路が形成される。このようにして、液体冷媒は、電子機器10のエネルギまたは電力を消費することなく吸熱部340と放熱部220および221の間を循環する。
【0042】
動作を説明すると、例えば電車内に持ち込まれた電子機器10が走行中の電車の振動を受けると、表示装置22は表示部筐体20に対して緩衝部材23の収縮の許容範囲で振動する。表示装置22が振動すると、エラストマ・バッグ420はその振動を受けて収縮と膨張を繰り返してその中の液体冷媒をポンピングする。エラストマ・バッグ420が繰り返し収縮することによって、その中の液体冷媒は逆止弁470を通って吸熱部340に流入して発熱部300の熱を吸収し、放熱部材221へと流れそこで放熱し貯留タンク210へと徐々に流入する。エラストマ・バッグ420が繰り返し膨張することによって、タンク210の中の液体冷媒は、放熱部材220で冷却されて逆止弁450を通ってエラストマ・バッグ420へと徐々に流れて戻って来る。このようにして、液体冷媒は、吸熱部340と放熱部220および221の間を循環する。
【0043】
代替構成として、吸熱部材340の出口ポートは、図10の場合と同様に、一点鎖線で示されたチューブ324を介して逆止弁448の入口ポートに連結され、逆止弁448の出口ポートはチューブ348を介してエラストマ・バッグ418の入口ポートに連結され、エラストマ・バッグ418の出口ポートはチューブ368を介して逆止弁468の入口ポートに連結され、逆止弁468の出口ポートはチューブ330を介してゴム・チューブ224に連結されるようにしてもよい。
【0044】
この場合、逆止弁450、エラストマ・バッグ420および逆止弁470の組と、逆止弁448、エラストマ・バッグ418および逆止弁468の組とは、直列に連結されて、液体冷媒は、吸熱部340と放熱部220および221の間を循環する。エラストマ・バッグ418およびエラストマ・バッグ420に適度の復元力を持たせておけば、エラストマ・バッグ418とエラストマ・バッグ420とが交互に膨張と収縮することができるので、貯留タンク210内の空気バッグ212は不要であるかまたはそのサイズが小さくてもよい。
【0045】
図12は、本発明のさらに別の実施形態による、図1の電子機器10の表示部筐体20の表示面と主要部筐体30の操作面が180度になるように表示部筐体20を開いたときの表示部筐体20と主要部筐体30の部分的に切欠を有する上面図を例示している。表示部筐体20および主要部筐体30は、例えばメタノールのような液体燃料が液体冷媒として用いられ、主要部筐体30がさらに燃料電池218を有し、貯留タンク210が燃料電池218の液体燃料を貯蔵することを除いて、図10と同様の構成を有する。この場合、冷媒用の貯留タンクと液体燃料用の貯蔵タンクとを別々に設ける必要がない。燃料電池218は、電子機器10の動作とともに貯留タンク210内の液体燃料を消費し、貯留タンク210内の液体燃料が減少する。液体燃料は完全になくなる前に補給されることが望ましい。図12における諸コンポーネント(構成要素)のその他の動作は図10の場合と同様である。
【0046】
図13は、分岐チューブ324および330によって並列に結合された、図2の直列連結の逆止弁442、エラストマ・バッグ412および逆止弁462からなるポンプ要素と、図8の直列連結の逆止弁444、エラストマ・バッグ414および逆止弁464からなるポンプ要素と、図9の直列連結の逆止弁446、エラストマ・バッグ416および逆止弁466からなるポンプ要素と、図10直列連結の逆止弁448、エラストマ・バッグ418および逆止弁468からなるポンプ要素との組み合わせ(結合)を示している。このような組み合わせを用いることによって、吸熱部340と放熱部220および221の間の液体冷媒の循環が促進される。
【0047】
図2および図8〜13の実施形態において逆止弁の冷媒の流通方向は逆であってもよい。この場合、液体冷媒は逆方向に流れる。
【0048】
以上説明した実施形態は典型例として挙げたに過ぎず、その変形およびバリエーションは当業者にとって明らかであり、当業者であれば本発明の原理および請求の範囲に記載した発明の範囲を逸脱することなく上述の実施形態の種々の変形を行えることは明らかである。
【0049】
(付記1) 圧力が加わるまたは振動を与える構成要素を有する電子機器であって、
吸熱部材と、
放熱部材と、
前記構成要素の圧力または振動を受けるエラストマ・バッグと、
前記エラストマ・バッグの1つのポートに連結された第1の逆止弁と、
前記エラストマ・バッグの別のポートに連結された第2の逆止弁と、
前記吸熱部材、前記第1の逆止弁、前記エラストマ・バッグ、前記第2の逆止弁および前記放熱部材を通って流れる冷媒と、
を具える電子機器。
(付記2) 前記エラストマ・バッグは前記構成要素に近接して配置されていて、前記エラストマ・バッグおよび前記第1と第2の逆止弁は、前記構成要素の圧力および圧力の解放または振動に伴って前記冷媒をポンピングするよう動作するものである、付記1に記載の電子機器。
(付記3) 前記吸熱部材は前記電子機器の第1の筐体に収容され、前記放熱部材は第2の筐体に収容されている、付記1に記載の電子機器。
(付記4) 前記吸熱部材は発熱部に近接して配置されているものである、付記1に記載の電子機器。
(付記5) さらに、前記放熱部材に連結された、前記冷媒を貯留する貯留タンクを具える、付記1に記載の電子機器。
(付記6) 前記貯留タンクは閉じた空気バッグを含むものである、付記5に記載の電子機器。
(付記7) 前記貯留タンクは、入口ポートから流入した冷媒を貯留し出口ポートからタイトに供給するものである、付記5に記載の電子機器。
(付記8) 前記貯留タンクが燃料電池に連結されている、付記5に記載の電子機器。
(付記9) 前記吸熱部材、前記第1と第2の逆止弁および前記エラストマ・バッグを含む流路は閉ループを形成するものである、付記1に記載の電子機器。
(付記10) さらに、第3と第4の逆止弁に連結されていて第2の構成要素の圧力または振動を受ける第2のエラストマ・バッグを具える、付記1に記載の電子機器。
(付記11) 前記第1のエラストマ・バッグは前記第2のエラストマ・バッグと直列に結合されているものである、付記10に記載の電子機器。
(付記12) 前記第1のエラストマ・バッグは前記第2のエラストマ・バッグと並列に結合されているものである、付記10に記載の電子機器。
(付記13) 前記構成要素がハードディスク・ドライブである、付記1に記載の電子機器。
(付記14) 前記構成要素がCDおよび/またはDVDドライブである、付記1に記載の電子機器。
(付記15) 前記構成要素がスピーカである、付記1に記載の電子機器。
(付記16) 前記構成要素がファンである、付記1に記載の電子機器。
(付記17) 前記構成要素がキーボードである、付記1に記載の電子機器。
(付記18) 前記構成要素がジョグダイヤルである、付記1に記載の電子機器。
(付記19) 前記構成要素がポインティング・デバイスである、付記1に記載の電子機器。
(付記20) 前記構成要素がパームレストである、付記1に記載の電子機器。
(付記21) 前記構成要素がバッテリである、付記1に記載の電子機器。
(付記22) 前記構成要素が液晶表示装置である、付記1に記載の電子機器。
(付記23) 前記冷媒が不凍液である、付記1に記載の電子機器。
(付記24) 前記冷媒が燃料電池の液体燃料である、付記1に記載の電子機器。
【0050】
【発明の効果】
本発明は、前述の特徴によって、電子機器において、省エネルギの冷却を実現し、省エネルギの駆動力で流体冷媒を循環させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明が適用可能な、例えばノートブック型パーソナル・コンピュータおよびPDAのような電子機器を示している。
【図2】図2は、本発明の実施形態による、図1の電子機器の表示部筐体の表示面と主要部筐体の操作面を180度開いたときの表示部筐体と主要部筐体の部分的に切欠を有する上面図を例示している。
【図3】図3Aは、図2のエラストマ・バッグまたはエラストマ・チューブの上面図を示している。図3Bは、エラストマ・バッグの正面図を示している。
【図4】図4Aは、図2の貯留タンクの斜視図を示している。図4Bは、図4Aの貯留タンクの4B−4Bを通る垂直平面で切った断面図である。
【図5】図5Aおよび5Bは公知の逆止弁の断面構造および動作を例示している。
【図6】図6Aおよび6Bは公知の別の逆止弁の断面構造および動作を例示している。
【図7】図7Aおよび7Bは公知のさらに別の逆止弁の断面構造および動作を例示している。
【図8】図8は、本発明の別の実施形態による、図1の電子機器の表示部筐体の表示面と主要部筐体の操作面を180度開いたときの表示部筐体と主要部筐体の部分的に切欠を有する上面図を例示している。
【図9】図9は、本発明のさらに別の実施形態による、図1の電子機器の表示部筐体の表示面と主要部筐体の操作面を180度開いたときの表示部筐体20と主要部筐体の部分的に切欠を有する上面図を例示している。
【図10】図10は、本発明のさらに別の実施形態による、図1の電子機器の表示部筐体の表示面と主要部筐体の操作面を180度開いたときの表示部筐体と主要部筐体の部分的に切欠を有する上面図を例示している。
【図11】図11は、本発明のさらに別の実施形態による、図1の電子機器の表示部筐体の表示面と主要部筐体の操作面を180度開いたときの表示部筐体と主要部筐体の部分的に切欠を有する上面図を例示している。
【図12】図12は、本発明のさらに別の実施形態による、図1の電子機器の表示部筐体の表示面と主要部筐体の操作面を180度開いたときの表示部筐体と主要部筐体の部分的に切欠を有する上面図を例示している。
【図13】図13は、分岐チューブによって並列に結合された、図2の直列連結の逆止弁、エラストマ・バッグおよび逆止弁からなるポンプ要素と、図8の直列連結の逆止弁、エラストマ・バッグおよび逆止弁からなるポンプ要素と、図9の直列連結の逆止弁、エラストマ・バッグおよび逆止弁からなるポンプ要素と、図10直列連結の逆止弁、エラストマ・バッグおよび逆止弁からなるポンプ要素との組み合わせ(結合)を示している。
【符号の説明】
20 表示部筐体
22 表示装置
30 主要部筐体
32 キーボード
210 貯留タンク
220、221 放熱部材
300 発熱部
340 吸熱部
412 エラストマ・バッグ
442、462 逆止弁
Claims (5)
- 振動を与える構成要素を内部に有する電子機器であって、
吸熱部材と、
放熱部材と、
前記構成要素の振動を受けるエラストマ・バッグと、
前記エラストマ・バッグの1つのポートに連結された第1の逆止弁と、
前記エラストマ・バッグの別のポートに連結された第2の逆止弁と、
前記吸熱部材、前記第1の逆止弁、前記エラストマ・バッグ、前記第2の逆止弁および前記放熱部材を通って流れる冷媒と、
を具え、
前記構成要素が、記録媒体を機械的に駆動する装置、またはファンであることを特徴とする電子機器。 - 前記エラストマ・バッグは前記構成要素に接近して配置されていて、前記エラストマ・バッグおよび前記第1と第2の逆止弁は、前記構成要素の振動に伴って前記冷媒をポンピングするよう動作するものである、請求項1に記載の電子機器。
- さらに、前記放熱部材に連結された、前記冷媒を貯留する貯留タンクを具える、請求項1に記載の電子機器。
- 前記貯留タンクは閉じた空気バッグを含むものである、請求項3に記載の電子機器。
- さらに、第3と第4の逆止弁に連結されていて別の構成要素の圧力または振動を受ける別のエラストマ・バッグを具える、請求項1に記載の電子機器。
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