JP4017529B2 - 熱収縮性不織布の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒートエンボスを用いて製造された熱収縮性不織布の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
熱収縮性繊維を含む層と非熱収縮性繊維を含む層とを積層一体化させた後、熱収縮性繊維を含む層を収縮させて製造された不織布が知られている。例えば、熱収縮性繊維を含む層と、非熱収縮性繊維を含む層とを積層し、エンボスロールによって両層を部分的に熱融着させると同時に、熱収縮性繊維を含む層を熱収縮させて製造された、表面に凹凸を有する不織布が提案されている(特許文献1参照)。熱収縮性繊維及び該熱収縮性繊維の熱収縮開始温度よりも融点の低い熱融着繊維を含む層と、非熱収縮性繊維を含む層とを積層し、両層を部分的に熱融着させた後、熱収縮性繊維を含む層を熱収縮させて製造された多皺性不織布も提案されている(特許文献2参照)。
【0003】
これらの不織布においては、熱収縮性繊維を含む層としてウエブ又は不織布が用いられる。しかし、ウエブを用いる場合には、強度が弱いことからウエブが切れ易くなるなど、ハンドリング性に問題がある。また毛羽が発生し易い。一方、不織布を用いる場合には、該不織布として、熱を加えずに製造されたものを用いる必要がある。そのような不織布には、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布、レジンボンド不織布などがある。これらの不織布は製造速度が遅く製造経費が高いという欠点がある。従って、その用途は、比較的高価なパップ材などに限られていた。また、これらの不織布は、低坪量のものを製造することが困難であるという欠点もある。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−3755号公報
【特許文献2】
特開平9−111631号公報
【0005】
従って、本発明は、ハンドリング性に支障のない十分な強度を有し、製造経費が低く、低坪量から高坪量のものまで製造し得る熱収縮性不織布の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、熱収縮可能な状態にある熱収縮性繊維を含み、構成繊維がヒートエンボスによって部分的に熱融着されている熱収縮性不織布の製造方法であって、
前記熱収縮性繊維を含むウエブにテンションを与えた状態下に、該熱収縮性繊維の熱収縮開始温度以上で、熱エンボスロール装置によって該ウエブを部分的に熱融着し、
前記ウエブの前記熱エンボスロール装置の通過時からその後の搬送中において、前記ウエブにおける前記熱収縮性繊維の温度が、該熱収縮性繊維の熱収縮開始温度より低くなるまで該ウエブにテンションを与え続け、
前記熱エンボスロール装置が、凹凸ロールと平滑ロールとからなり、前記ウエブを該平滑ロールに30度以上抱きかけて前記テンションを与える熱収縮性不織布の製造方法を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の熱収縮性不織布は典型的には単層構造のものである。ここでいう単層構造には、構成繊維の交点が未接合状態にある2層以上のウエブを重ね合わせて製造された不織布が含まれる。熱収縮性不織布には熱収縮性繊維が含まれている。この熱収縮性繊維は、不織布製造前は熱収縮可能な状態にあることは勿論のこと、加熱前の不織布中においても熱収縮可能な状態にある。熱収縮可能な状態とは、未だ熱の付与を受けておらず、その後の熱の付与によって収縮が可能であること、及び熱の付与は受けたが、当該熱の付与は収縮が阻止された状態下に行われた為、その後の再度の熱の付与によって収縮が可能であることの双方を意味する。本発明の不織布が2層以上のウエブから構成されている場合には、少なくとも1層のウエブに熱収縮性繊維が含まれていれば良い。
【0009】
熱収縮性繊維としては従来公知のものを特に制限無く用いることができる。例えば、エチレン−プロピレンランダム共重合体を用いることができる。また、エチレン−プロピレンランダム共重合体(EP)を芯成分とし、ポリプロピレン(PP)などの熱融着樹脂を鞘成分とした熱収縮性を示す芯鞘型複合繊維を用いることもできる。
【0010】
特に熱収縮性繊維として潜在捲縮性繊維を用いると、本発明の熱収縮性繊維の熱収縮後に伸縮性が発現することから好ましい。潜在捲縮性繊維は、例えば収縮率の異なる2種類の熱可塑性ポリマー材料を成分とする偏心芯鞘型複合繊維又はサイド・バイ・サイド型複合繊維からなる。その例としては、特開平9−296325号公報や特許2759331号明細書に記載のものが挙げられる。収縮率の異なる2種類の熱可塑性ポリマー材料の例としては、例えばエチレン−プロピレンランダム共重合体とポリプロピレンとの組み合わせが好適に挙げられる。
【0011】
熱収縮性繊維は短繊維のステープルファイバでもよく或いは長繊維のフィラメントでもよい。特に短繊維を用いると、熱収縮後の不織布の風合いが良好になる点から好ましい。短繊維を用いる場合には、その繊維長が5〜100mm、特に30〜60mmであることが、ウエブの形成性(カーディング性)や毛羽立ち防止性の点から好ましい。熱収縮性繊維は、その太さが1〜10dtex、特に1.5〜4dtex程度であることが、不織布の風合い及び地合いが良好になる点から好適である。熱収縮性繊維の熱収縮開始温度TSは例えば90〜110℃とすることができる。熱収縮開始温度TSとは、昇温可能な炉にその繊維を置き、一定速度で昇温したとき、その繊維が実質的に収縮開始した時の実測温度を言う。後述する実施例ではTSが約90℃の繊維を用いた。
【0012】
本発明の熱収縮性不織布には、熱収縮性繊維に加えて他の繊維を含有させても良い。他の繊維としては、例えば熱融着繊維が挙げられる。熱融着繊維が含まれている場合、本発明の熱収縮性不織布における熱融着繊維の量は、不織布の重量に対して10〜70重量%、特に30〜50重量%であり、熱収縮性不織布の量は30〜90重量%、特に50〜70重量%であることが、不織布の強度を向上させながら収縮力を維持させ得る点から好ましい。
【0013】
本発明の熱収縮性不織布に含まれている繊維のうち、熱収縮性繊維以外の繊維は、その融点が、熱収縮性繊維の熱収縮開始温度TSより高いことが、得られる熱収縮性不織布の毛羽立ちが抑えられ、風合いが良好になる点から好ましい。融点とは、示差走査熱量計(DSC)によりポリマーの融解熱測定を行ったときにDSC曲線が最高値を示すときの温度をいう。熱収縮性繊維以外の繊維が多成分系の複合繊維からなる場合、前記融点とは、該複合繊維を構成する樹脂のうちで最も融点の低い樹脂における当該融点をいう。
【0014】
本発明の熱収縮性不織布においては、その構成繊維がヒートエンボスによって部分的に熱融着されている。熱融着によって形成された熱融着部は、熱収縮性繊維の熱収縮開始温度TSよりも高い融点を有する熱融着樹脂の溶融固化によって形成されていることが、得られる熱収縮性不織布の毛羽立ちが抑えられ、風合いが良好になる点から好ましい。熱融着樹脂は、好ましくは、これを含む多成分系の熱収縮性繊維や、該熱収縮性繊維とは別個に配合された熱融着繊維の形態で含まれている。
【0015】
ヒートエンボスは、少なくとも一方が所定温度に加熱可能になっている相対向する一対の圧着部を備え、各圧着部の対向部の一方が所定の凹凸パターンで彫刻されており且つ他方が平滑となっているエンボス装置を用いて行われる。部分的な熱融着のパターンに特に制限はないが、収縮し易さ及び収縮後の不織布の風合いの点から、独立のドット状、例えば独立した円形、三角形、四角形、六角形などのパターンが好ましい。熱融着の面積率に関しては、収縮し易さと収縮後の風合いの点から、熱融着の面積率を高め過ぎると収縮性が損なわれ、一方面積率が低すぎると十分な強度が得られずハンドリング性に劣ってしまう。これらの観点から、熱融着の面積率は5〜40%、特に7〜30%であることが好ましい。個々の熱融着部の面積は0.5〜20mm2、特に0.75〜7.5mm2であることが好ましい。熱融着の温度は、構成繊維同士が十分に熱融着する温度であればよく、一般に、不織布に含まれる熱収縮性繊維の軟化温度以上である。この温度は一般に、熱収縮性繊維の熱収縮開始温度TS以上である。
【0016】
熱収縮性不織布の坪量は本発明において臨界的ではない。逆に、坪量を広範囲に変えられることが本発明の特徴である。熱収縮性不織布の具体的な用途にもよるが、坪量の下限値は7g/m2程度、特に10g/m2程度とすることができる。上限値は100g/m2程度、特に30g/m2程度とすることができる。熱収縮性不織布の厚みも本発明において臨界的ではなく、通常不織布の坪量に応じて変化する。熱収縮性不織布の具体的な用途にもよるが、厚みは0.2〜10mm、特に0.5〜3mm程度となる。
【0017】
用いる熱収縮性繊維の種類や、熱融着の面積率にもよるが、本発明の熱収縮性不織布は、その最大熱収縮率が20〜90%、特に40〜90%程度となっている。最大熱収縮率は、自由な状態下で不織布を最適温度に加熱した時、(収縮前面積−収縮後面積)/収縮前面積×100で定義される。尚、実際に収縮させる時には、必ずしも最高収縮率で収縮させる必要は無く、適当な熱処理条件で収縮させれば良いことは言うまでもない。また熱収縮性不織布は、ヒートエンボスによって形成されているので、その引張強度(JIS L1913.6.3に基づく測定。但し、引張速度300m/min)を高めることができ、ハンドリング性を高めることができる。しかし、強度を高め過ぎると、不織布の収縮性や収縮後の風合いに悪影響を及ぼすおそれがあるので、引張強度は、機械方向(MD)において500〜2000gf/50mm、特に600〜1400gf/50mm程度であることが好ましい。引張強度は、不織布の坪量や熱融着の程度を調整することで調整される。
【0018】
本発明の熱収縮性不織布は種々の用途に使用できる。例えば、本発明の熱収縮性不織布を非熱収縮性の繊維層と積層一体化した後、熱収縮不織布を熱収縮させることで、表面に凹凸を有する不織布を製造できる。また、料理用のシート、布団綿、芯地などとしても用いることができる。更に、熱収縮性繊維として潜在捲縮性繊維を用いた熱収縮性不織布は、使い捨ておむつや生理用ナプキンなどの吸収性物品の各種構成部材、パップ剤の基材シート、各種薬液や洗浄液を保持するためのシートなどとして用いることができる。
【0019】
潜在捲縮性繊維を用いた熱収縮性不織布を、例えば吸収性物品の構成部材として用いた場合には以下の利点がある。体への追従性を高めるために、吸収性物品には、伸縮ゴムを接着剤やヒートシールで不織布に貼り付けた伸縮部材が多数用いられている。この伸縮部材に代えて熱収縮性不織布を用いれば、伸縮ゴムは不要となり、また伸縮ゴムの貼り付けに用いられていた接着剤やヒートシールも不要となるので、吸収性物品を安価に製造できるという利点がある。更に、前記伸縮部材を用いて吸収性物品を製造する場合には、吸収性物品が該伸縮部材の収縮力によって縮んだり反ったりするのを抑える目的で、バキュームコンベアなどの高価な搬送装置を用いる必要があるが、該伸縮部材に代えて熱収縮性不織布を用いればその必要がなくなるという利点もある。
【0020】
本発明の不織布が、潜在捲縮性繊維を用いた熱収縮性不織布である場合、熱収縮後における不織布の伸縮性の程度は、130℃の熱風に風速1.5m/sで30秒間晒して熱収縮させた後の50%伸張時の伸張回復率を尺度としたとき、その値が60%以上、特に70〜95%であることが、十分に高いエラストマー的挙動を発現させる観点から好ましい。伸張回復率は、本発明の不織布の流れ方向及び幅方向において値が異なる場合があるが、少なくとも何れかの方向において測定された伸張回復率の値が前記範囲内であれば、十分なエラストマー的挙動が発現する。
【0021】
伸張回復率は、以下の方法で測定される。ORIENTEC社製の引張圧縮試験機TENSILON「RTA-100」を用い引張モードで測定する。先ず、上述の条件で熱収縮させた後の不織布を50mm×50mmの大きさに裁断し測定片を採取する。測定片を引張圧縮試験機に装着されたエアーチャック間に初期試料長(チャック間距離)30mmでセットし、引張圧縮試験機のロードセル(定格出力5kg)に取り付けられたチャックを100mm/分の速度で上昇させて、測定片を伸張させる。測定片が初期試料長の50%、つまり15mm伸びた時点で、チャックの移動方向を逆転させ、チャックを100mm/分の速度で下降させ、初期試料長の位置まで戻す。この間の操作でロードセルで検出される荷重と、測定片の伸びとの関係をチャートに記録し、このチャートに基づき下記式(1)から伸張回復率(%)を求める。
伸張回復率=回復伸び/最大伸び長さ(=15mm)×100 (1)
ここで、回復伸びは、最大伸び長さ(=15mm)からチャックを下降させて、初めて荷重ゼロを記録したときの、最大伸び長さからのチャック移動距離で定義される。
【0022】
本発明の熱収縮性不織布は、所定温度での加熱によって収縮する。収縮後の不織布の形態は、熱融着のパターンにもよるが、収縮前に比べてやや波打った形態となる。収縮は通常、熱収縮性繊維の構成樹脂の融点以下で始まるので、熱処理条件を適宜調節すれば、収縮後の不織布の風合いを、収縮前に比べて低下しないようにできる。
【0023】
次に、本発明の熱収縮性不織布の好ましい製造方法について説明する。図1には、熱収縮性不織布1を製造するために用いられる好ましい製造装置が示されている。先ず、熱収縮性繊維を含むウエブ2を製造する。ウエブ2の製造方法は、構成繊維が短繊維であるか長繊維であるかによって異なる。構成繊維が短繊維である場合には、カード機を用いて短繊維を交絡させてウエブを製造する。構成繊維が長繊維である場合には、紡糸口金から紡出されたフィラメントを、吸引されているワイヤメッシュ上に直接堆積させてウエブを形成する。形成されたウエブは、一対のロール21,22からなる熱エンボスロール装置20に通され、テンションが与えられた状態下に、熱及び圧力の作用を受けて部分的に熱融着される。熱融着の温度は前述した通り、熱収縮性繊維の熱収縮開始温度TS以上とする。圧力は、不織布の構成樹脂に応じて適宜調整する。例えばポリエチレンテレフタレートを含む場合、圧力は、線圧で表してPETで20〜50kgf/cmであることが好ましい。ポリプロピレンを含む場合には20〜120kgf/cmであることが好ましい。熱エンボスロール装置20としては、所定の凹凸パターンが彫刻された2本の凹凸ロール、又は凹凸ロールと平滑ロールとの組み合わせが用いられる。凹凸ロールと平滑ロールとの組み合わせを用いる場合には、凹凸ロールの温度を、熱収縮性繊維の熱収縮開始温度TS以上(例えば、TS+20℃)に設定しておき、平滑ロールの温度を該熱収縮開始温度TS未満(例えばTS−5℃以下)に設定しておくと、熱収縮性繊維の熱収縮を抑制できることから好ましい。また、ウエブを平滑ロールに巻き付けて搬送させると、該ウエブと凹凸ロールの凸部との接触が減じられるので、熱収縮性繊維の熱収縮を更に抑制できる。
【0024】
ウエブの熱融着を、熱収縮性繊維の熱収縮開始温度以上で行うことから、該熱融着の際に熱収縮性繊維が熱収縮してしまうおそれがある。これを防止するために、本発明においては、ウエブにテンションを与えた状態下に熱エンボスロール装置を通過させ、更に熱エンボスロール装置を通過した時からその後の搬送中においても、ウエブにおける熱収縮性繊維の温度が、該熱収縮性繊維の熱収縮開始温度より低くなるまで該ウエブにテンションを与え続ける。これによって、収縮性を失うことなく熱収縮性繊維の熱収縮が抑制され、不織布製造後においても、該熱収縮性繊維はその熱収縮可能な状態が保たれる。またテンションを与えることで、ウエブがロールへ張り付くことを防止でき、更にウエブが熱融着以外の過剰な熱を受けることが防止できるという利点もある。ウエブに与えるテンションは、機械方向(MD)及び/又は横方向(CD)であることが好ましく、特にMD及びCDの両方向であることが、熱収縮性繊維の熱収縮を効果的に抑制し得る点から好ましい。
【0025】
MDにテンションを与えるには、例えば熱エンボスロール装置20の下流に一対のテンションロール23,24を設けて、テンションロール23,24の速度を熱エンボスロール装置20のロール回転速度に比べて高くすればよい。この場合、ウエブの搬送パスがS字を描くように、ウエブをテンションロール23,24に抱きかけることが、大きなテンションが発生することから好ましい。一方CDにテンションを与えるには、熱エンボスロール装置20を構成する平滑ロール22に大きな抱き角でウエブを抱きかければよい。抱き角は30度以上、特に60〜90度であることが好ましい。図2に示すように、抱き角θは、ウエブ2が平滑ロール22に接し始める位置における法線n1と、平滑ロール22から離れる位置における法線n2とのなす角として定義される。与えるテンションは、熱収縮性繊維が実質的に熱収縮しない程度であればよい。具体的には、MDに与えるテンションは4〜20cN/mm程度であることが、幅縮みを抑制しながらMD方向の収縮を抑える点から好ましい。一方CDに与えるテンションは1〜20cN/mm程度であることが、幅縮みを抑える点から好ましい。
【0026】
また、熱エンボスロール装置20における凹凸ロール21の凹部に断熱材を取り付けると、テンションが緩くても収縮が起こりにくくなり、ウエブ自身が縮もうとする力の反発力を利用してテンションを与えることができるので好ましい。断熱材としては、ナイロンシート、ベークライトシート、ガラス繊維を基材とした無機系積層板〔例えばミオレックス(登録商標)〕、シリコーンゴム又はスポンジ、フッ素系ゴム又はスポンジなどを用いることができる。これらの材料のうち、耐熱性が高く且つ熱伝導性が低いもの、例えば熱伝導率が2W/mK以下、特に0.1W/mK以下のものを用いることが、断熱材の表面の温度が凸部に比べて10℃〜20℃低くなり、収縮が起こりにくくなる点から好ましい。断熱材は、その厚みが1〜3mm程度であることが、同様の理由から好ましい。
【0027】
前記テンションは、ウエブ2が熱エンボスロール装置20を通過した後も引き続き与え続けられる。詳細には、前記テンションは、熱収縮性繊維の温度が、その熱収縮開始温度TSよりも低くなるまで与え続けられる。例えばMDのテンションは、前述したように、テンションロール23,24の速度を熱エンボスロール装置20のロール回転速度に比べて高くすることによって与え続けられる。一方、CDのテンションは、テンションロール23,24に、ウエブ(この段階では既に不織布となっている)を大きな抱き角で抱きかけ、ウエブをCDへ滑りにくくさせ、ウエブ自身が縮もうとする力の反発力を利用してテンションを与えることができ、収縮を抑制できる。この場合、テンションロール23,24とウエブ2との摩擦力が大きくなるような材料から該テンションロールの表面を形成することで、収縮抑制効果を一層大きくすることができる。テンションロールを複数本用いると、CDの収縮を一層抑制する効果が高くなる。テンションロール23,24を冷却しておき、ウエブ2の冷却を促進させると、収縮を更に一層抑制できる。或いは、テンションロール23,24は冷却せず、図1に示すように、テンションロール23,24の下流に冷却ロール25,26を配置し、ウエブをこれらのロールに抱きかけてもよい。更に、延伸フィルムの製造に用いられる各種テンター(例えばピンテンターやクリップテンター)を用いて、CDにテンションを与えることができる。
【0028】
熱収縮性繊維の温度が、その熱収縮開始温度よりも低くなれば、テンションを取り除いても収縮は起こらない。このようにして熱収縮性を有する不織布が得られる。尚、この製造方法で用いられるロール状のエンボス装置は、長尺状の不織布を製造するのに適したものであるが、毎葉の不織布を製造する場合には、斯かるエンボス装置に代えて、板状のエンボス装置を用いてもよい。
【0029】
このようにして得られた不織布には必要に応じて後処理を施してもよい。例えば、不織布の具体的用途に応じて、超音波接着を施したり、熱収縮開始温度未満でエンボス加工を施したり、開孔を形成することができる。
【0030】
【実施例】
以下実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかし、本発明の範囲は斯かる実施例に制限されない。以下の実施例のうち、実施例1は参考例である。
【0031】
〔実施例1〕
潜在捲縮性繊維〔エチレン−プロピレンランダム共重合体(EP)を芯成分とし、ポリプロピレン(PP)を鞘成分とした熱収縮性を示す芯鞘型複合繊維、ダイワ紡績株式会社製、熱収縮開始温度TS90℃〕を原料としてカードウエブを製造した。ウエブの坪量は表1に示す通りである。凹凸ロールと平滑ロールからなる熱エンボスロール装置を用い、このウエブを表1に示す加工速度でヒートエンボス加工した。各ロールの温度及びエンボス率は表1に示す通りであった。平滑ロールへのウエブの抱き角は0度とした。凹凸ロールにおける凹凸のパターンは図3に示す通りである。熱エンボスロール装置の通過時からその後の搬送中において、ウエブにおける潜在捲縮性繊維の温度が、該潜在捲縮性繊維の熱収縮開始温度TSより低くなるまで該ウエブにMDへのテンションを与え続けた。テンションは、熱エンボスロール装置の下流に配置された一対のテンションロールによって与えた。テンションロールの速度は、熱エンボスロール装置におけるロール回転速度よりも高い値に設定しておいた。このようにしてヒートエンボス不織布を得た。得られた不織布の坪量を表1に示す。
【0032】
〔実施例2〕
ウエブを平滑ロールへ60度の抱き角で抱きつけた。更に、表1に示す条件で加工した。これ以外は実施例1と同様にしてヒートエンボス不織布を得た。得られた不織布の坪量を表1に示す。
【0033】
〔参考例1〕
実施例1で用いた繊維と同様の潜在捲縮性繊維を原料としてカードウエブを製造した。ウエブの坪量は表1に示す通りである。このウエブを表1に示す加工速度で水流交絡させてスパンレース不織布を得た。
【0034】
〔参考例2〕
実施例1で用いた繊維と同様の潜在捲縮性繊維を原料として表1に示す坪量を有するカードウエブを製造した。
【0035】
〔性能評価〕
実施例及び参考例で得られた不織布及びウエブについて、MDへの引張強度を測定した。また、以下の方法で収縮率を測定した。更に熱収縮後の不織布及びウエブについて、MD及びCDへの50%伸張時の伸張回復率を測定した。結果を表1に示す。
【0036】
〔収縮率〕
得られた不織布及びウエブを、130℃の熱風に風速1.5m/sで30秒間晒して熱収縮させた。収縮前後の面積に基づき、(収縮前面積−収縮後面積)/収縮前面積×100から収縮率(%)を算出した。なお、上述した伸長回復率は、このようにして得られた熱収縮後の不織布及びウエブについて測定した。
【0037】
【表1】
【0038】
表1に示す結果から明らかなように、実施例のヒートボンド不織布は収縮率が高く、また収縮後に高い伸縮性を発現することが判る。また、実施例の不織布は、ヒートエンボス加工の前後での坪量に殆ど差が無く、ヒートエンボス加工によって熱収縮性繊維が収縮していないことが判る。参考例1のスパンレース不織布も収縮率が高く、収縮後に伸縮性を発現するが、加工速度が遅く生産性が低いことが判る。参考例1のカードウエブは強度が低く実用的でない。
【0039】
【発明の効果】
本発明の熱収縮性不織布は、ハンドリング性に支障のない十分な強度を有するものである。従って原反からの繰り出し性や、搬送装置における搬送性が良好である。
また本発明の熱収縮性不織布は、高速生産が可能で製造経費が低く、また低坪量から高坪量のものまで製造できる。
更に本発明の熱収縮性不織布は、熱収縮後の風合いに優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱収縮性不織布を製造するために用いられる好ましい製造装置を示す模式図である。
【図2】抱き角の測定方法を示す模式図である。
【図3】凹凸ロールにおける凹凸パターンを示す図である。
【符号の説明】
1 熱収縮性不織布
2 ウエブ
Claims (2)
- 熱収縮可能な状態にある熱収縮性繊維を含み、構成繊維がヒートエンボスによって部分的に熱融着されている熱収縮性不織布の製造方法であって、
前記熱収縮性繊維を含むウエブにテンションを与えた状態下に、該熱収縮性繊維の熱収縮開始温度以上で、熱エンボスロール装置によって該ウエブを部分的に熱融着し、
前記ウエブの前記熱エンボスロール装置の通過時からその後の搬送中において、前記ウエブにおける前記熱収縮性繊維の温度が、該熱収縮性繊維の熱収縮開始温度より低くなるまで該ウエブにテンションを与え続け、
前記熱エンボスロール装置が、凹凸ロールと平滑ロールとからなり、前記ウエブを該平滑ロールに30度以上抱きかけて前記テンションを与える熱収縮性不織布の製造方法。 - 前記凹凸ロールとして、該凹凸ロールにおける凹部に断熱材が取り付けられているものを用いる請求項1記載の熱収縮性不織布の製造方法。
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