JP4017281B2 - 太陽電池及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非晶質又は微結晶のpin構造の太陽電池及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の太陽電池は、半導体層のi型の薄い発電層で光を有効に利用するため、その光入射側をテクスチャ構造とし、光の波長程度の微小な凹凸による光の散乱を利用して発電層における光の吸収量を増大することが行われている。
【0003】
具体的には、例えばガラス基板タイプの非晶質の太陽電池であれば、ガラス基板の光入射側と反対の面にSnO2等の透明電極膜を形成し、形成時の成膜条件を調整することにより作製された微小で尖った凹凸形状(ピラミッド形状)のその膜面上に、非晶質pin構造の半導体層を形成し、そのi型の発電層を微小凹凸形状の薄膜とし、この薄膜内での光の散乱により、発電層に光を閉じ込め、発電層における光の吸収量を増大している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来のこの種の太陽電池の場合、半導体層はその大半を占めるi型の発電層が急峻に尖った微小凹凸形状の薄膜で形成されるため、つぎに説明するように変換効率が却って低下する問題点がある。
【0005】
すなわち、前述のガラス基板タイプの太陽電池の場合、その透明電極膜及び半導体層の接合部分の概略構成は、半導体層をその発電層で代表すると、図5に示すようになり、同図の1´はSnO2の透明電極膜、2´はpin構造の半導体層の発電層である。
【0006】
そして、図5のように透明電極膜1´が急峻に尖った微小凹凸形状であると、この膜面上に形成される半導体層の発電層2´も急峻な微小凹凸形状になる。
【0007】
なお、図5では上側が光入射側であるが、製造時はガラス基板上に透明電極膜1´,半導体層が順に積層され、図5の上下を逆にした状態で形成され、発電層2´の図5の上方に突出している「山」の部分が微小凹凸形状の凹部A´であり、下方に凹んでいる「谷」の部分が凸部B´である。
【0008】
そして、凹部A´はその急峻に凹んだ先端部分に欠陥が生じ易く、凸部B´は急峻に突出した先端部分が薄くなってリークが発生し易いため、発電層2´での変換効率が低下する。
【0009】
また、凹部A´,凸部B´の先端部分に電界が集中し、発電層2´の他の部分の電界強度が弱くなり、この点からも発電層2´での変換効率が低下する。
そして、微結晶の太陽電池の場合にも同様の問題点が生じる。
【0010】
本発明は、この種の太陽電池の発電層の膜形状に起因した前記の変換効率の低下を防止することを課題とし、変換効率が向上した非晶質又は微結晶のこの種の太陽電池及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するため、本発明の太陽電池は、平坦面を有するガラス基板と、前記ガラス基板上に、表面に凹凸形状を有して形成された透明電極膜と、前記透明電極膜の前記表面に形成された、p層、発電層及びn層を含み凹凸形状を有する非晶質又は微結晶の半導体層と、前記半導体層上に形成された裏面電極膜と、を備え、前記透明電極膜の表面の凹凸形状の凸部及び凹部が曲面形状にせしめられることにより、前記発電層の凹凸の平均高さが1000Å以上3000Å以下とされ、且つ前記発電層の凸部及び凹部の曲率半径が、当該発電層の凹凸の平均高さの20%以上50%以下とされたことを特徴とするものである。
【0012】
そして、図5に対応する図1の本発明の太陽電池の概略構成図に示すように、例えば透明電極膜1上の発電層2の凹部Aが曲面形状であれば、その先端部分は欠陥が発生しにくくなる。
【0013】
また、発電層2の凸部Bが曲面形状であれば、その先端部分の膜厚が均一になって薄くならず、リークが発生しにくくなる。
【0014】
さらに、凹部A,凸部Bが曲面形状になると、それらの先端部分の電界集中が緩和され、発電層2の他の部分の電界強度が弱くなったりしない。
【0015】
したがって、発電層の凹凸が曲面形状で丸味をおびていれば、その膜形状に起因した変換効率の低下が防止され、従来より変換効率が向上する。
【0017】
つぎに、本発明の太陽電池の製造方法は、平坦面を有するガラス基板上に、凹凸形状の表面を有する透明電極膜を形成する工程と、前記透明電極膜の前記表面に、化学的エッチング処理及びプラズマ処理を施すことにより、前記表面の凹凸形状の凸部及び凹部を曲面形状にする工程と、前記凸部及び凹部が曲面形状とされた前記透明電極膜の表面上に、p層、発電層及びn層を含む非晶質又は微結晶の半導体層を形成する工程と、前記半導体層上に、裏面電極膜を形成する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
したがって、発電層が微小凹凸形状であってその凹凸が曲面形状で丸味をおびるように形成され、テクスチャ構造化に伴う発電層の薄膜形状に起因した変換効率の低下が防止され、変換効率が向上した非晶質又は微結晶のガラス基板タイプ又は金属基板タイプの太陽電池を製造することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、図2ないし図4を参照して説明する。
(1形態)
ガラス基板タイプの非晶質の太陽電池及びその製造方法に適用した本発明の実施の1形態につき、図2及び図3を参照して説明する。
図2は光入射側を上側にして太陽電池の要部の構成を示したものであり、製造時は図2の上下を逆にした状態で形成される。
【0020】
そして、図中の1はガラス基板上に形成された膜厚8000ÅのSnO2の透明電極膜、3は透明電極膜1上に形成されたpin構造のアモルファスシリコン(a−Si)の半導体層であり、膜厚100Åのp型a−SiCのp層4,膜厚3000Åのa−SiGeの発電層(i層)2,膜厚2000Åのn型a−Siのn層5からなる。
【0021】
6は半導体層3上に形成された膜厚4000Åの裏面電極膜であり、ZnO/Agの2層構造である。
【0022】
そして、この図2の太陽電池は微小凹凸形状の薄膜で形成された発電層2において、図5の凹部A´に相当する凹部A,図5の凸部B´に相当する凸部Bがいずれも曲面形状であって丸味をおびている。
【0023】
つぎに、図2の太陽電池の製造方法について説明する。
まず、ガラス基板の光入射側の面と反対側の面上に熱CVD法で透明電極膜1を形成し、その表面(光入射側からみると裏面)に酸又はアルカリの溶液のエッチングなどに基づく従来と同様のテクスチャ処理を施し、その表面を、最初は、先端部分が尖った平均高さ約2000Åの急峻な微小凹凸形状にする。
【0024】
つぎに、この急峻な微小凹凸形状の透明電極膜1の膜面に、塩酸溶液に約0.5〜5分浸して主に凸部Bの先端部分を曲面形状にする塩酸処理(化学的エッチング処理)と、アルゴンプラズマに約1〜10分曝して主に凹部Aの先端部分を曲面形状にするプラズマ処理とを、塩酸処理,プラズマ処理の順又はその逆の順に施す。
【0025】
さらに、これらの処理により透明電極膜1の膜面の微小凹凸形成が適当な曲面形状になった後、プラズマCVD法による半導体層3の形成に移行する。
【0026】
そして、a−Siにボロンをドープしてp層4を形成した後、a−SiGeの発電層2を形成し、その後、a−Siにリンをドープしてn層5を形成する。
【0027】
このとき、p層4,発電層2,n層5の薄膜は、透明電極膜1の微小凹凸形状になる。
【0028】
したがって、発電層2はその凹部A及び凸部Bが曲面形状になってそれらの先端部分が丸味をおびる。
【0029】
そして、n層5の形成後、この層5の上にスパッタ法でZnO/Agの裏面電極膜6を形成して図2の構造のガラス基板タイプの太陽電池を製造する。
【0030】
つぎに、発電層2の微小凹凸形状と太陽電池の変換効率との関係について説明する。
まず、発電層2の微小凹凸の曲率半径及び平均高さを説明する。
図3に示すように、形成した発電層2の凹部A,凸部Bの先端部分の曲面形状に合った円イ,ロ(2次元)又は球(3次元)の半径rA,rBを微小凹凸の曲率半径とする。
【0031】
また、発電層2の微小凹凸の高さを、曲面形状にする前の元の高さを用いて客観的に把握するため、図3の円イ,ロが凹部A,凸部Bの曲面形状に接する2点pとp´,qとq´を求め、それらの接線の交点tA,tBを求め、交点tA,tBの距離hを元の凹凸の高さとし、この高さの平均を発電層2の微小凹凸の平均高さとする。
【0032】
なお、円イ,ロの外挿や距離hの計測は、例えば、発電層2を電子顕微鏡で観察し、そのモニタ画面での図3の作図から行う。
【0033】
一方、実験によると、透明電極膜1に塩酸処理,プラズマ処理を全く施さなければ、p層4と発電層2との界面及び発電層2とn層5との界面の急峻な微小凹凸の平均高さは2000Åであった。
【0034】
この太陽電池の透明電極膜1を塩酸溶液に約0.5〜5分浸すと、発電層2の凹部Aが曲面形状になり、その後、アルゴンプラズマに約1〜10分間曝すと、発電層2の凸部Bも曲面形状になることが確かめられた。
【0035】
そして、凹部A,凸部Bの曲面形状は塩酸処理,プラズマ処理の時間によって変化し、両処理の時間(合計時間)を0〜12分の間で種々に変えて太陽電池を製造し、その変換効率(%)を測定したところ、発電層2の微小凹凸の曲率半径の,その平均高さに対する割合(%)と、太陽電池の変換効率(%)との関係は、つぎの表1に示すようになった。
【0036】
【表1】
【0037】
この表1から明らかなように、発電層2の微小凹凸の曲率半径がその平均高さ(2000Å)の20%以上50%以下のときに、太陽電池の変換効率が向上する。
【0038】
また、発電層2の微小凹凸の曲率半径をその平均高さの30%に保ちながら発電層2の微小凹凸の平均高さを300〜5000Åの範囲で変えて太陽電池を製造し、これらの太陽電池(本発明の太陽電池)と、同じ平均高さの急峻な微小凹凸の従来電池とにつき、変換効率を測定して比較したところ、つぎの表2の結果が得られた。
【0039】
【表2】
【0040】
この表2から明らかなように、微小凹凸の平均高さが1000Å以上3000Å以下のときに、凹部A,凸部Bを曲面形状にすることで太陽電池の変換効率が向上する。
【0041】
すなわち、プラズマ処理を施すと、発電層2の微小凹凸の主に凹部Aの先端部分が丸味をおびた形状になり、この凹部Aでの結晶性や膜間の接合状態が改善されて向上し、欠陥の発生が少なくなる。
【0042】
また、塩酸処理を施すと、発電層2の微小凹凸の主に凸部Bの先端部分が角を落として丸味をおびた形状になり、この凸部Bでのリークの発生が防止される。
【0043】
さらに、凹部A,凸部Bの先端部分が丸味をおびると、それらの部分への電界の集中が緩和され、発電層2の他の部分の電界強度が弱くなることもない。
【0044】
したがって、発電層2の微小凹凸を曲面形状とし、凹部A,凸部Bの先端部分を共に丸味をおびた形状にすると、凹部Aでの欠陥の発生が防止され、同時に、凸部Bでのリークの発生が防止され、しかも、凹部A,凸部Bの先端部分の電界の集中が緩和され、この結果、発電層2の形状因子(F.F.)が向上して太陽電池の変換効率が向上する。
【0045】
そして、発電層2の微小凹凸の平均高さが1000Å以上4000Å以下のときに、凹部A及び凸部Bを曲面形状にして効果があることが、実験によって確かめられた。
【0046】
また、微小凹凸による発電層2の薄膜内の光閉じ込めの効果をを損なわないようにするため、微小凹凸の曲率半径はその平均高さの20%以上50%以下であることが望ましい。
【0047】
このことは、表1において微小凹凸形状の曲率半径が50%より大きいときの発電効率が低下することからも明らかであり、発電層2の微小凹凸の曲率半径が50%より大きくなると、その表面が平坦に近くなって光散乱効果が減少するからである。
【0048】
ところで、前記の化学的エッチング処理及びプラズマ処理の時間は溶液やガスの種類,量等の種々の条件で異なるのは勿論である。
【0049】
また、化学的エッチングの酸の溶液は塩酸以外の硫酸やフッ酸等の溶液であってもよく、プラズマ処理のガスはアルゴンガス以外のクリプトン、キセノンなどの希ガスであってもよい。
【0050】
そして、前記1形態にあっては化学的エッチング処理とプラズマ処理との両方を施したが、いずれか一方を施して凹部A,凸部Bのいずれか一方を曲面形状にして丸味をつけるようにしても効果が得られるのは勿論である。
【0051】
(参考形態)
つぎに、金属基板タイプの微結晶の太陽電池及びその製造方法に適用した本発明の参考形態につき、図4を参照して説明する。
図4は図1と同様に上側を光入射側にした太陽電池の構成図であり、7は金属基板としてのステンレス基板の上に蒸着により形成された膜厚1μmのアルミニウムの金属膜である。
【0052】
8は金属膜7の膜上にスパッタ法で形成された膜厚2000Åの裏面電極膜であり、ITO/Ag/ZnOの3層構造である。
【0053】
9は裏面電極膜8の膜上にプラズマCVD法で形成されたpin構造の微結晶の半導体層であり、下から順の膜厚500Åのリンをドープして形成されたn型微結晶シリコンのn層10,膜厚1μmの微結晶シリコンの発電層(i層)11,膜厚100Åのボロンをドープして形成されてp型微結晶シリコンのp層12からなる。
【0054】
13はp層12の上にスパッタ法で形成された膜厚700ÅのITO膜からなる表面電極膜である。
【0055】
そして、この太陽電池の製造に際しては、金属膜7の表面を水酸化カリウムの溶液に5分浸して化学的エッチング処理し、テクスチャ処理に基づく微小凹凸形状の凸凸の先端部分を曲面形状にして丸味をつけた後、裏面電極膜8及び半導体層9の各層10,11,12を順に形成する。
【0056】
このとき、発電層11の薄膜の凸部C,凹部Dが共に曲面形状になってそれらの先端部分が丸味をおび、前記実施の1形態と同様の効果が得られる。
【0057】
なお、金属膜7を水酸化カリウムの溶液に浸さないで形成した場合は、その膜面のテクスチャ処理の微小凹凸形状に基づき、発電層11は凹部Dが急峻な凹凸形状になる。
【0058】
また、水酸カリウムの溶液に浸す時間を0.3分〜5分の間で徐々に変えて形成した太陽電池(本発明の太陽電池)と、この溶液に浸すことなく形成した従来電池とにつき、発電層11の微小凹凸の平均高さと変換効率との関係を比較したところ、つぎの表3が得られた。
【0059】
【表3】
【0060】
この表3からも明らかなように、発電層11の微小凹凸の平均高さが1000Å以上3000Å以下であれば、曲面形状にすることによって変換効率が向上する。
【0061】
そして、本発明はガラス基板タイプ、金属基板タイプの非晶質又は非結晶質の種々の太陽電池及びその製造方法に適用することができ、その際、化学的エッチング処理の酸やアルカリの溶液,プラズマ処理のガスの種類や量及び処理時間等は、条件に応じて適当に設定すればよい。
【0062】
【発明の効果】
本発明は以下の効果を奏する。
まず、本発明の太陽電池にあっては、微小凹凸形状の薄膜で形成された発電層2,11の凹凸が曲面形状であって丸味をおびているため、その凹部の先端部分での欠陥が少なく、凸部の先端部分でのリークも少なく、しかも、それらの先端部分の電界の集中が防止されて発電層2,11の他の部分の電界強度が弱くなることもない。
【0063】
したがって、発電層2,11のテクスチャ構造化に伴う微小凹凸形状に起因した変換効率の低下が防止され、変換効率が向上した非晶質又は微結晶の太陽電池を提供することができる。
【0064】
つぎに、本発明の太陽電池の製造方法によると、発電層2,11が微小凹凸形状であってその凹凸が曲面形状で丸味をおびるように形成され、テクスチャ構造化に伴う発電層2,11の薄膜形状に起因した変換効率の低下が防止され、変換効率が向上した非晶質又は微結晶のこの種の太陽電池を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の太陽電池の一部の概略構成図である。
【図2】 本発明の実施の1形態の太陽電池の構成図である。
【図3】 図2の太陽電池の微小凹凸の曲率半径,平均高さの説明図である。
【図4】 本発明の参考形態の太陽電池の概略図である。
【図5】 従来電池の一部概略構成図である。
【符号の説明】
1 透明導電膜
2,11 発電層(i層)
3,9 半導体層
6,8 裏面電極膜
7 金属膜
Claims (2)
- 平坦面を有するガラス基板と、
前記ガラス基板上に、表面に凹凸形状を有して形成された透明電極膜と、
前記透明電極膜の前記表面に形成された、p層、発電層及びn層を含み凹凸形状を有する非晶質又は微結晶の半導体層と、
前記半導体層上に形成された裏面電極膜と、
を備え、
前記透明電極膜の表面の凹凸形状の凸部及び凹部が曲面形状にせしめられることにより、前記発電層の凹凸の平均高さが1000Å以上3000Å以下とされ、且つ前記発電層の凸部及び凹部の曲率半径が、当該発電層の凹凸の平均高さの20%以上50%以下とされたことを特徴とする太陽電池。 - 平坦面を有するガラス基板上に、凹凸形状の表面を有する透明電極膜を形成する工程と、
前記透明電極膜の前記表面に、化学的エッチング処理及びプラズマ処理を施すことにより、前記表面の凹凸形状の凸部及び凹部を曲面形状にする工程と、
前記凸部及び凹部が曲面形状とされた前記透明電極膜の表面上に、p層、発電層及びn層を含む非晶質又は微結晶の半導体層を形成する工程と、
前記半導体層上に、裏面電極膜を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする太陽電池の製造方法。
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