(前提事項)
本発明の各実施形態を説明するに当たっての前提事項について説明する。
通常、フォトマスクは縮小投影型の露光機で使用されるため、マスク上のパターン寸法を議論する場合には縮小倍率を考慮しなければならない。しかし、以下の各実施形態を説明する際には、混乱を避けるため、形成しようとする所望のパターン(例えばレジストパターン)と対応させてマスク上のパターン寸法を説明する場合、特に断らない限り縮小倍率で該寸法を換算した値を用いている。具体的には、M分の1縮小投影システムにおいて、幅M×100nmのマスクパターンによって幅100nmのレジストパターンを形成した場合にも、マスクパターン幅及びレジストパターン幅は共に100nmであると表現する。
また、本発明の各実施形態においては、特に断らない限り、M及びNAは露光機の縮小投影光学系の縮小倍率及び開口数をそれぞれ表し、λは露光光の波長を表すものとする。
また、パターン形成については、レジストの非感光領域がレジストパターンとなるポジ型レジストプロセスを想定して説明する。尚、ポジ型レジストプロセスに代えてネガ型レジストプロセスを用いる場合、ネガ型レジストプロセスにおいては、レジストの非感光領域が除去されるので、ポジ型レジストプロセスにおけるレジストパターンをスペースパターンと読み替えればよい。
また、フォトマスクとしては透過型マスクを前提として説明する。尚、透過型マスクに代えて反射型マスクを前提とする場合、反射型マスクにおいては、透過型マスクの透過領域及び遮光領域がそれぞれ反射領域及び非反射領域となるので、透過型マスクの透過現象を反射現象と読み替えればよい。具体的は、透過型マスクの透光部又は透過性領域を反射部又は反射領域と読み替え、遮光部を非反射部と読み替えればよい。さらに、透過型マスクにおける光を部分的に透過する領域は光を部分的に反射する領域と読み替えればよく、透過率は反射率と読み替えればよい。
(輪郭強調法)
まず、本発明を実現する上で本願発明者が考案した、フォトマスクによる解像度向上方法、具体的には孤立スペースパターンの解像度を向上させるための「輪郭強調法」について説明する。
以下、ポジ型レジストプロセスによりスペースパターンを形成する場合を例として説明する。尚、「輪郭強調法」は、ポジ型レジストプロセスにおける微小スペースパターンであれば、その形状に関わらず全く同様に成り立つ原理である。また、「輪郭強調法」は、ネガ型レジストプロセスを用いる場合にも、ポジ型レジストプロセスにおける微小スペースパターン(レジスト除去パターン)を微小パターン(レジストパターン)と置き換えて考えれば全く同様に適用できる。
図1(a)〜(g)は、スペースパターンを形成するための露光において光の転写像のコントラストを強調するための原理を説明する図である。
図1(a)は、露光光に対して所定の透過率を持つ半遮光部により、スペースパターンと対応する開口部(つまり透光部)が囲まれてなるフォトマスクの平面図であり、図1(b)は、図1(a)に示すフォトマスクを透過した光における線分ABと対応する振幅強度を示している。
図1(c)は、図1(a)に示す開口部の周辺領域に位相シフターが配置され且つその他の領域に完全遮光部が配置されてなるフォトマスクの平面図であり、図1(d)は、図1(c)に示すフォトマスクを透過した光における線分ABと対応する振幅強度を示している。ここで、図1(d)に示す光の振幅強度は、該光が位相シフターを透過したものであるため、図1(b)に示す光の振幅強度に対して反対位相の関係にある。
図1(e)は、露光光に対して所定の透過率を持つ半遮光部により、スペースパターンと対応する開口部及びその周辺領域に配置された位相シフターが囲まれてなるフォトマスクの平面図であり、図1(f)及び(g)は、図1(e)に示すフォトマスクを透過した光における線分ABと対応する振幅強度及び光強度(光の振幅強度の2乗)を示している。図1(e)に示すフォトマスクは、図1(a)に示すフォトマスクにおける開口部の周辺領域に位相シフターが配置されたフォトマスクである。ここで、図1(e)に示すフォトマスクは、「輪郭強調法」を実現する本発明のフォトマスク(以下、輪郭強調マスクと称する)の一例である。
尚、図1(a)又は(e)に示すフォトマスクにおいて、半遮光部を透過する光と、開口部を透過する光とは同位相(具体的には位相差が(ー30+360×n)度以上で且つ(30+360×n)度以下(但しnは整数))である。また、図1(e)に示すフォトマスクにおいて、位相シフターを透過する光と、開口部を透過する光とは反対位相(具体的には位相差が(150+360×n)度以上で且つ(210+360×n)度以下(但しnは整数))である。
図1(e)に示す輪郭強調マスクを透過した光の転写像が強調される原理は次の通りである。すなわち、図1(e)に示すフォトマスクの構造は、図1(a)及び(c)のそれぞれに示すフォトマスクを重ね合わせた構造になっている。従って、図1(b)、(d)、(f)に示すように、図1(e)に示すフォトマスクを透過した光の振幅強度は、図1(a)及び(c)のそれぞれに示すフォトマスクを透過した光の振幅強度を重ね合わせたような分布になっている。ここで、図1(f)から分かるように、図1(e)に示すフォトマスクにおいて、開口部の周辺に配置された位相シフターを透過した光は、開口部及び半遮光部のそれぞれを透過した光の一部を打ち消すことができる。従って、図1(e)に示すフォトマスクにおいて、位相シフターを透過する光の強度を、開口部周辺の光が打ち消されるように調整すれば、図1(g)に示すように、光強度分布において、開口部周辺と対応する光強度がほぼ0に近い値まで減少した暗部の形成が可能となる。
また、図1(e)に示すフォトマスクにおいて、位相シフターを透過する光は、開口部周辺の光を強く打ち消す一方、開口部中央付近の光を弱く打ち消す。その結果、図1(g)に示すように、図1(e)に示すフォトマスクを透過した光における、開口部中央から開口部周辺に向けて変化する光強度分布のプロファイルの傾きが増大するという効果も得られる。従って、図1(e)に示すフォトマスクを透過した光の強度分布はシャープなプロファイルを有するようになるので、コントラストの高い像が形成される。
以上が本発明における光学像(光強度の像(イメージ))を強調する原理である。すなわち、低透過率の半遮光部で形成されたマスクにおける開口部の輪郭に沿って位相シフターを配置することにより、図1(a)に示すフォトマスクによって形成される光強度像の中に、開口部の輪郭線と対応する非常に強い暗部を形成することが可能となる。これによって、開口部の光強度と開口部周辺の光強度との間でコントラストが強調された光強度分布を形成できる。本明細書においては、このような原理によってイメージ強調を行なう方法を「輪郭強調法」と称すると共に、この原理を実現するフォトマスクを「輪郭強調マスク」と称する。
ところで、従来のハーフトーン位相シフターの原理(図32(a)〜(g)参照)と比較すると、輪郭強調法は、光強度分布において開口部周辺に暗部が発生するメカニズムの点で異なっている。図1(f)と図32(f)との比較から分かるように、従来のハーフトーン位相シフターでは、振幅強度分布における暗部は位相境界によって形成される。しかし、輪郭強調法では、振幅強度分布における暗部は、同じ位相での振幅強度の大きさの周期変化によって実現されている。また、従来のハーフトーン位相シフターにおける位相境界による暗部は、斜入射露光によっては十分に強調されないので、従来のハーフトーン位相シフターは、低干渉度の小さな光源を用いた露光と組み合わせる必要があった。しかし、輪郭強調法における同位相での振幅強度の周期変化によって実現される暗部は、通常の透光部と遮光部とが周期的に配置された通常のパターンによって生成される暗部と同等であるため、輪郭強調法と斜入射露光とを組み合わせることにより光強度分布のコントラストを強調することができる。すなわち、輪郭強調法の効果は射入射露光との組み合わせによって、より顕著に発揮される。
尚、輪郭強調マスクにおいては、パターン形成時におけるレジスト膜の膜減り防止、又はレジスト感度の最適化等の観点から、半遮光部の透過率の最大値を15%程度にしておくことが好ましい。すなわち、輪郭強調マスクにおいて、半遮光部の透過率は15%程度以下であることが好ましい。また、半遮光部には光を部分的に透過させる性質が必要であり、実質的に光を透過させる効果を十分に得ようとすると、半遮光部の透過率は、少なくとも3%以上であることが好ましく、できれば6%以上であることが好ましい。従って、輪郭強調マスクにおける半遮光部の透過率の最適な範囲は、6%以上で且つ15%以下の範囲であると言える。
また、前記の輪郭強調法について、半遮光部に囲まれた透光部(開口部)と半遮光部との境界に位相シフターが配置された構造を前提として説明したが、位相シフターは必ずしも該境界に位置する必要はない。すなわち、輪郭強調法の原理により、透光部を透過した光と干渉可能な距離に位相シフターが配置されていれば、透光部周辺を透過した光を打ち消すことが可能になる。従って、半遮光部中に設けられた開口部に対して、例えば矩形状の開口部の各辺から離れた位置に、該各辺と平行なパターンとして位相シフターを配置してもよい。但し、輪郭強調法を効果的に利用するためには、位相シフターは、開口部からの距離が光の干渉が生じる距離である0.5×λ/NA以下の位置に配置されることが好ましい。また、透光部を囲む位相シフターの外側に、十分な幅(λ/NA以上の幅)を持つ半遮光部が設けられていれば、その半遮光部の外側に完全遮光部が設けられていてもよい。
以下、前述の輪郭強調法の原理に基づくマスクによって所望のパターンを実現する各実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係るフォトマスクについて図面を参照しながら説明する。
図2(a)は第1の実施形態に係るフォトマスクの平面図である(但し、透過性基板については斜視図的に示している(以下同様))。本実施形態のフォトマスクは微細なコンタクトパターンを形成するためのものである。
図2(a)に示すように、透過性基板100の上には、十分に広い領域を覆うように半遮光部101が形成されている。また、半遮光部101における、露光によりウェハ上に形成しようとする所望のコンタクトパターンと対応する位置には、透光部102となる開口パターンが設けられている。また、透光部102の周辺には、半遮光部101を挟んで、位相シフター103となる補助パターンが、例えば方形状の透光部102の各辺と平行に設けられている。すなわち、位相シフター103が透光部102を囲むように設けられている。
ここで、半遮光部101は部分的に光を透過させるが、半遮光部101を透過する光と透光部102を透過する光とは同位相の関係(具体的には両者の位相差が(−30+360×n)度以上で且つ(30+360×n)度以下(但しnは整数)となる関係)にある。また、半遮光部101の透過率は、レジストを感光させない程度の低透過率であることが望ましく、具体的には、半遮光部101の透過率は15%以下である。一方、半遮光部101に遮光部102と異なる特性を持たせるために、半遮光部101の透過率は最低でも3%以上であることが好ましく、6%以上であることがより好ましい。特に、コンタクトホール形成においては、半遮光部101の最適な透過率は9%前後である。
一方、位相シフター103は光を透過させるが、位相シフター103を透過する光と、透光部102を透過する光とは反対位相の関係(具体的には両者の位相差が(150+360×n)度以上で且つ(210+360×n)度以下(但しnは整数)となる関係)にある。尚、本実施形態を含め、後述する全ての実施形態では特に断らないかぎり、位相シフターは透光部(透過性基板)と同程度の透過率を有するものとして扱うが、位相シフターの透過率は特に限定されるものではない。但し、位相シフターにおける、反対位相の光を透過させるという特性を利用するためには、位相シフターの透過率は少なくとも半遮光部の透過率よりも大きいことが好ましい。また、輪郭強調法の原理を効率的に実現するためには、位相シフターの透過率は50%以上であることが好ましい。
また、図2(a)に示すフォトマスクを用いた光学システムにおける露光波長及び開口数をλ及びNAとすると、微小コンタクトホール形成を行なう上で最も好ましい構成は、後述するように、透光部102を挟んで対となる位相シフター103同士の中心線間の距離が0.8×λ/NAとなる構成である。言い換えれば、位相シフター103の中心線が透光部102の中心から0.4×λ/NA離れるように位相シフター103が配置されていることが最適である。また、位相シフター103の透過率を透光部102の透過率と同じに設定する場合、位相シフター103の幅を0.15×λ/NAに設定することが最適である。
尚、後述する全ての実施形態においても、半遮光部、透光部、位相シフター(補助パターン)のそれぞれについて、上記の説明が成り立つものとする。
以下、上記のように構成されたフォトマスクが、微細コンタクトホール形成、特に0.4×λ/NA以下の寸法を持つパターンの形成において優れたパターン形成特性を有することをシミュレーション結果に基づいて説明する。
シミュレーションでは、図2(a)に示すフォトマスクにおいて、透光部102の形状は一辺がWの正方形であるとし、位相シフター103は幅dの矩形パターンであるとし、さらに、位相シフター103の中心線は透光部102の中心から距離PW離れた位置に配置されているものとする。すなわち、透光部102を挟んで対となる位相シフター103同士の中心線間の距離は2×PWである。また、バックグランドである半遮光部101の透過率を9%として、種々のW、PW、dの組み合わせについて光強度シミュレーションを行なった。ここで、シミュレーションにおける光学計算の露光条件は、露光波長λが193nm、開口数NAが0.7である。また、照明条件として、外径の干渉度が0.8、内径の干渉度が0.53となる2/3輪帯照明を用いた。
図2(b)は、図2(a)に示すフォトマスクに対して露光を行なったときにウェハ上(図2(a)の線分ABと対応する位置)に形成される光強度分布を示している。図2(b)に示す光強度分布は、透光部102の中心と対応する位置にピークが形成されたプロファイルを持つ。このとき、透光部102の中心と対応するレジストを感光させるためには、ピーク強度Ioは所定値以上である必要がある。レジストを感光させるために必要となるピーク強度Ioはレジスト材料に依存するが、寸法が0.4×λ/NA以下の微小コンタクトホール形成に必要となるピーク強度Ioは0.25程度であることが経験的に得られている。尚、本明細書においては、特に断らない限り、光強度を露光光の光強度を1としたときの相対光強度で表す。
図3(a)は、図2(a)に示すフォトマスクにおいてピーク強度Ioが0.25となるW、PW、dの組み合わせをシミュレーションによって求めた結果を示している。具体的には、図3(a)において、透光部102を挟んで対となる位相シフター103同士の中心線間の距離(以下、単にシフター中心線間距離と称する)2×PWに対して、ピーク強度Ioが0.25となる透光部102の寸法Wをプロットした結果を示している。また、図3(a)においては、位相シフター103の幅dが20nm、30nm、40nm、50nm、60nmのそれぞれである場合における2×PWとWとの関係を示している。すなわち、図3(a)のグラフに示すPW、W、dの全ての組み合わせによって、ピーク強度Ioが0.25となる光強度分布が形成される。また、これらの組み合わせの中で、焦点深度や露光マージンが最大となるものが、優れたパターン形成特性を有するマスク構成となる。
図3(b)は、図3(a)のグラフに示すPW、W、dの組み合わせを持つマスクパターンを用いて、寸法100nmのコンタクトホールの形成を行なった場合における焦点深度のシミュレーション結果を示している。図3(b)においては、横軸に2×PWをとり、dをパラメータとして焦点深度の値を縦軸にプロットした結果を示している。図3(b)に示すように、全てのdの値に対して、2×PWが0.8×λ/NA程度(=約220nm)付近の値となるときに焦点深度が最大となっている。ここで、焦点深度とは、目標寸法100nmのコンタクトホールの形成における寸法変動が目標寸法の10%以内に収まるフォーカス位置の範囲の幅を表すものである。
同様に、図3(c)は、図3(a)のグラフに示すPW、W、dの組み合わせを持つマスクパターンを用いて、寸法100nmのコンタクトホールの形成を行なった場合における露光マージンのシミュレーション結果を示している。図3(c)においては、横軸に2×PWをとり、dをパラメータとして露光マージンの値を縦軸にプロットした結果を示している。図3(c)に示すように、dの値に関係なく、2×PWが0.8×λ/NA程度(=約220nm)付近の値となるときに露光マージンが最大となっている。ここで、露光マージンとは、目標寸法100nmのコンタクトホールの形成における寸法変動が目標寸法の10%以内に収まる露光量の範囲の幅の、寸法100nmのコンタクトホールを実現する露光量の値に対する比を%表示したものである。
すなわち、図2(a)に示すフォトマスクにおいては、位相シフターの幅dがどのような値を持っていようと、微細コンタクトパターンを形成するための焦点深度の最適化を行なえば、シフター中心線間距離2×PWは0.8×λ/NA程度になる。また、露光マージンの最適化を行なっても、シフター中心線間距離2×PWは0.8×λ/NA程度になる。ここで、シフター中心線間距離2×PWの最適値が位相シフター幅dに依存しないということは、該最適値が位相シフターの透過率にも依存しないということを意味する。
尚、中心線間距離2×PWが0.8×λ/NAとなる位相シフターにおいて、焦点深度及び露光マージンがともに大きな値となるのは、位相シフター幅dが0.15×λ/NA程度(40nm)であるときである。以上の結果から、透光部102を挟んで対となるように位相シフター103を配置し、その位相シフター103の幅を0.15×λ/NAとし且つシフター中心線間距離を0.8×λ/NAとしたマスク構成が微細コンタクトホール形成に優れていることが分かる。
また、最適な構成は上記の構成であるが、図3(b)及び(c)のグラフを詳細に見ると、位相シフター幅dについては0.05×λ/NA以上で且つ0.2×λ/NA以下であれば、高い焦点深度と高い露光マージンとが得られることが分かる。また、シフター中心線間距離については0.6×λ/NA以上で且つλ/NA以下(位相シフターの中心線と透光部の中心との間の距離については0.3×λ/NA以上で且つ0.5×λ/NA以下)であれば、高い焦点深度と高い露光マージンとが得られることが分かる。また、焦点深度及び露光マージンとして、それぞれ特に極大値に近い値を得ようとすると、位相シフター幅については0.1×λ/NA以上で且つ0.15×λ/NA以下である構成が好ましい。また、シフター中心線間距離については0.73×λ/NA以上で且つ0.87×λ/NA以下(位相シフターの中心線と透光部の中心との間の距離については0.365×λ/NA以上で且つ0.435×λ/NA以下)である構成が好ましい。
ところで、図3(b)及び(c)に示す結果は、開口数NAが0.7である場合の1例に過ぎないが、開口数NAが0.6及び0.8のそれぞれである場合に同様のシミュレーションを行なった結果を図4(a)〜(d)に示す。ここで、図4(a)及び(b)はNA=0.6の場合の結果であって、両図に示すように、2×PWが0.8×λ/NA程度(約250nm)付近であるときに、焦点深度も露光マージンも最大値となっている。また、図4(c)及び(d)はNA=0.8の場合の結果であって、両図に示すように、2×PWが0.8×λ/NA程度(約190nm)付近であるときに、焦点深度も露光マージンも最大値となっている。すなわち、前述の最適なマスク構成は開口数NAの値に依存するものではない。
また、図3(b)及び(c)に示す結果は、半遮光部の透過率が9%である場合のものであったが、半遮光部の透過率が6%である場合に同様のシミュレーションを行なった結果を図4(e)及び(f)に示す。図4(e)及び(f)に示すように、半遮光部の透過率が9%の場合と同様に、2×PWが0.8×λ/NA程度(約250nm)付近であるときに、焦点深度も露光マージンも最大値となっている。すなわち、前述の最適なマスク構成は半遮光部の透過率に依存するものではない。
以上に述べたように、露光波長をλ、露光システムにおける開口数をNAとした場合、半遮光部に透光部となる開口部を設け、該開口部を囲む位相シフターの幅dを0.15×λ/NAとし、且つ該位相シフターをその中心線が透光部の中心から0.4×λ/NA離れるように配置した構成により、焦点深度及び露光マージンが共に最大となる微細コンタクトパターン形成を可能とするフォトマスクが実現される。但し、本実施形態では位相シフターの透過率が透光部の透過率と同じであることを前提として、位相シフター幅dの最適値を0.15×λ/NAとしたが、位相シフターの透過率が透光部の透過率と異なる場合、つまり位相シフター(補助パターン)の透光部に対する実効的な相対透過率が1ではない場合、同等の透過性が実現されるように、相対透過率に応じて位相シフター幅を変化させればよい。すなわち、例えば相対透過率をTとすれば、位相シフター幅dを(0.15×λ)/(NA×T0.5 )に設定することが最適である。但し、透光部の中心からの位相シフターの中心線までの距離の最適値は、位相シフターの透過率や幅に関係なく0.4×λ/NAである。
また、位相シフター幅dは(0.05×λ)/(NA×T0.5 )以上で且つ(0.2×λ)/(NA×T0.5 )以下であることが好ましく、(0.1×λ)/(NA×T0.5 )以上で且つ(0.15×λ)/(NA×T0.5 )以下であることがより好ましい。
このように、本実施形態において、輪郭強調法に基づき補助パターンとして配置される位相シフターの最適位置(中心線の最適位置)は、透光部の中心からみて露光光の波長λ以下の値となる。従って、透光部の中心から波長λ以上離れた位置に補助パターンを作成する必要があった従来例とは異なり、輪郭強調法の利用により、密に配置された透光部(コンタクトパターンと対応)同士の間にも補助パターンを配置できることが分かる。
すなわち、本実施形態によると、透光部102を透過する光と、位相シフター103つまり補助パターンを透過する光との相互干渉により、透光部102と補助パターンとの間の光強度分布のコントラストを強調できる。また、このコントラスト強調効果は、例えばポジ型レジストプロセスにおいて斜入射露光を用いて、透光部102と対応する微細な孤立スペースパターンを形成する場合にも得られる。従って、斜入射露光により、孤立スペースパターンと孤立ラインパターン又は密集パターンとを同時に微細化することができる。さらに、複雑且つ微細なスペースパターン同士が互いに近接する状況においても、所望の寸法を持つパターンの形成を良好に行なうことができる。
尚、本実施形態では、図2(a)に示すように、透光部102を方形状とし、透光部102の周辺に矩形状(ライン状パターン)の位相シフター103を透光部102の各辺に平行に形成した。しかし、位相シフター103の形状として、図5(a)に示すように、透光部102全体を囲む閉ループ状を用いてもよい。この場合も、透光部102を挟んで対となる位相シフター部分同士の中心線間距離(以下、位相シフター部分同士の中心線間距離もシフター中心線間距離と称する)2×PWと、位相シフター幅dとが、上記のパターン形成特性に優れた構成であればよい。
また、本実施形態において、透光部102は必ずしも方形状である必要はなく、例えば図5(b)又は(c)に示すように、多角形や円形の透光部102を用いてもよい。また、透光部102を囲む位相シフター103も透光部102の相似形である必要はなく、シフター中心線間距離が上記の構成でありさえすればよい。また、位相シフター103を複数個に分けて配置する場合にも、例えば図5(c)に示すように、各位相シフター103を透光部102の各辺に平行に配置する必要はなく、この場合も、シフター中心線間距離が上記の構成となるように、各位相シフター103が透光部102を囲んでいればよい。尚、透光部102と位相シフター103との間には半遮光部101が介在していることが望ましいが、シフター中心線間距離が上記の構成となっているのであれば、例えば図5(d)に示すように、透光部102と位相シフター103とが接していてもよい。但し、以上に説明した、どのタイプのマスク構成であっても、位相シフター103となる補助パターンの中心線が透光部102の中心から0.4×λ/NA離れて位置する構成が最適であるので、微小コンタクトパターン形成に好ましい透光部102は常に一辺が0.8×λ/NAの方形よりも小さいものとなる。
次に、本実施形態のフォトマスクの断面構造について説明する。図6(a)〜(d)はそれぞれ、図2(a)におけるAB線の断面構成のバリエーションを示している。すなわち、図6(a)〜(d)に示すように、透光部102と、遮光パターンである半遮光部101と、補助パターンである位相シフター103とからなる平面構成を持つフォトマスクの断面構成としては4つの基本タイプがある。以下、図6(a)〜(d)に示す基本タイプのフォトマスクの構造について説明する。
まず、図6(a)に示すタイプのフォトマスクにおいては、例えば石英よりなる透過性基板100上に、透光部102との間で露光光に対して反対位相の位相差(つまり(150+360×n)度以上で且つ(210+360×n)度以下(但しnは整数)の位相差)を生じる第1の位相シフト膜104が形成されている。以下、反対位相の位相差を生じるとは、(150+360×n)度以上で且つ(210+360×n)度以下(但しnは整数)の位相差を生じることを意味するものとする。また、第1の位相シフト膜104の上に、第1の位相シフト膜104との間で反対位相の位相差を生じる第2の位相シフト膜105が形成されている。ここで、第1及び第2の位相シフト膜104及び105における透光部形成領域にはそれぞれ開口部が設けられていると共に、第2の位相シフト膜105における位相シフター形成領域には開口部が設けられている。これによって、第2の位相シフト膜105と第1の位相シフト膜104との積層構造よりなる半遮光部101が形成されると共に、第1の位相シフト膜104の単層構造よりなる位相シフター103が形成される。また、透過性基板100の露出部分によって透光部102が形成される。
次に、図6(b)に示すタイプのフォトマスクにおいては、例えば石英よりなる透過性基板100の上に、透光部102との間で露光光に対して同位相の位相差(つまり(ー30+360×n)度以上で且つ(30+360×n)度以下(但しnは整数)の位相差)を生じる半遮光膜106が形成されている。以下、同位相の位相差を生じるとは、(−30+360×n)度以上で且つ(30+360×n)度以下(但しnは整数)の位相差を生じることを意味するものとする。ここで、半遮光膜106における透光部形成領域及び位相シフター形成領域のそれぞれに開口部が設けられている。また、透過性基板100における位相シフター形成領域は、透光部102との間で露光光に対して反対位相の位相差を生じる厚さだけ掘り下げられている。これにより、透過性基板100の掘り込み部100aよりなる位相シフター103が形成される。すなわち、図6(b)に示すタイプのフォトマスクにおいては、石英上に形成されており且つ透光部102との間でほとんど位相差を生じない半遮光膜106を加工することにより、該半遮光膜106の形成領域によって半遮光部101が形成され、半遮光膜106の開口部が設けられ且つ透過性基板100の掘り込み部100aが設けられた領域によって位相シフター103が形成され、半遮光膜106のその他の開口部(つまり透過性基板100の露出部分)によって透光部102が形成されている。
次に、図6(c)に示すタイプのフォトマスクにおいては、例えば石英よりなる透過性基板100の上に、透光部102を基準として露光光の位相をほとんど変化させない薄膜107が形成されている。すなわち、図6(c)に示すタイプのフォトマスクは、図6(b)に示すタイプのフォトマスクのうち特別なものである。具体的には、例えば厚さ30nm以下の金属薄膜を使用することにより、透光部102に対して、(ー30+360×n)度以上で且つ(30+360×n)度以下(但しnは整数)の位相差を生じ且つ15%以下の透過率を持つ薄膜107を実現することができる。ここで、薄膜107における透光部形成領域及び位相シフター形成領域のそれぞれに開口部が設けられている。また、透過性基板100における位相シフター形成領域は、透光部102との間で露光光に対して反対位相の位相差を生じる厚さだけ掘り下げられている。これにより、図6(b)に示すタイプのフォトマスクと同様に、透過性基板100の掘り込み部100aよりなる位相シフター103が形成される。
ところで、図6(a)又は(b)に示すタイプのフォトマスクにおいては、反対位相の位相差を生じる位相シフト膜の膜厚や、同位相の位相差を生じる半遮光膜の膜厚は、位相調整のために数百nm程度必要である。それに対して、図6(c)に示すタイプのフォトマスクにおいては、高々数十nm程度の厚さの薄膜107を用いるため、マスク加工のためのパターニングにおける微細加工が容易となる。ここで、薄膜107として使用できる金属材料としては、例えば、Cr(クロム)、Ta(タンタル)、Zr(ジルコニュウム)、Mo(モリブデン)及びTi(チタン)等の金属並びにそれらの合金がある。また、具体的な合金としては、Ta−cr合金、Zr−Si合金、Mo−Si合金及びTi−Si合金等がある。図6(c)に示すタイプのフォトマスクによると、加工対象となる膜が薄膜107であるため、マスク加工における微細加工が容易となるので、輪郭強調法を実現するために透光部102と位相シフター103との間に非常に微細なパターンを設ける必要がある場合、図6(c)に示すタイプのフォトマスクは特に優れたマスクとなる。
最後に、図6(d)に示すタイプのフォトマスクにおいては、例えば石英よりなる透過性基板100の上に、位相シフター103との間で露光光に対して反対位相の位相差を生じる位相シフト膜108が形成されている。ここで、位相シフト膜108における透光部形成領域及び位相シフター形成領域のそれぞれに開口部が設けられている。また、透光部102を透過する光の位相と半遮光部101を透過する光の位相とを同じにするために、透過性基板100における透光部形成領域は、位相シフター103との間で反対位相の位相差を生じる厚さだけ掘り下げられている。つまり、図6(d)に示すタイプのフォトマスクにおいては、透過性基板100となる石英と、反対位相の位相差を生じる位相シフト膜108とをそれぞれ加工することにより、位相シフト膜108の形成領域によって半遮光部101が形成され、位相シフト膜108の開口部が設けられ且つ透過性基板100の掘り込み部100aが設けられた領域によって透光部102が形成され、単に位相シフト膜108の開口部(つまり透過性基板100の露出部分)が設けられた領域によって位相シフター103が形成されている。図6(d)に示すタイプのフォトマスクによると、マスク上で微小パターンとなる位相シフター103が位相シフト膜108の単純な開口部であり、比較的広い開口部である透光部102が石英のエッチング領域である。このため、石英エッチングにおける深さ制御等が容易となるので、図6(c)に示すタイプのフォトマスクは、輪郭強調法を実現するマスク構造として特に優れたものである。
尚、図6(a)〜(d)において、半遮光膜及び位相シフト膜等を単層膜として図示したが、それぞれの膜が多層膜として構成されていてもよいことは言うまでもない。
(第1の実施形態の変形例)
以下、本発明の第1の実施形態の変形例に係るフォトマスクについて図面を参照しながら説明する。
図7(a)は第1の実施形態の変形例に係るフォトマスクの平面図である。本変形例のフォトマスクは微細なスペースパターンを形成するためのものである。すなわち、本変形例が第1の実施形態と異なっている点は、所望のパターンがコンタクトホールパターンではなく、ライン状の微細なスペースパターンであることである。尚、本明細書において、ライン状パターンとは、パターンの長辺方向が光学的に十分長いパターンを意味しており、具体的には長辺方向の長さが2×λ/NA以上のパターンを意味している。
図7(a)に示すように、透過性基板100の上には、図2(a)に示す第1の実施形態に係るフォトマスクと同様に、十分に広い領域を覆うように半遮光部101が形成されている。また、半遮光部101における、露光によりウェハ上に形成しようとする所望のスペースパターンと対応する位置には、透光部102となる開口パターンが設けられている。また、透光部102の周辺には、半遮光部101を挟んで、位相シフター103となる補助パターンが、例えばライン状の透光部102の各長辺と平行に設けられている。すなわち、位相シフター103が透光部102を挟むように設けられている。ここで、本変形例の半遮光部101の透過率は例えば6%であるとする。すなわち、ライン状のスペースパターンを形成する場合、コンタクトホールパターンを形成する場合と比べて、透光部102を透過する光が多くなるので、半遮光部101の好ましい透過率は、コンタクトホールパターンを形成する場合と比べて低い値となり、6%程度の透過率が最適な透過率となる。
図7(a)に示すフォトマスクを用いた光学システムにおける露光波長及び開口数をλ及びNAとすると、微小スペースパターン形成を行なう上で最も好ましい構成は、後述するように、透光部102を挟んで対となる位相シフター103同士の中心線間の距離が0.65×λ/NAとなる構成である。言い換えれば、位相シフター103の中心線が透光部102の中心から0.325×λ/NA離れるように位相シフター103が配置されていることが最適である。また、位相シフター103の透過率を透光部102の透過率と同じに設定する場合、位相シフター103の幅を0.10×λ/NAに設定することが最適である。
以下、上記のように構成されたフォトマスクが、微細スペースパターン形成、特に0.4×λ/NA以下の幅を持つライン状のスペースパターンの形成において優れたパターン形成特性を有することを、第1の実施形態と同様に、シミュレーション結果に基づいて説明する。
シミュレーションでは、図7(a)に示すフォトマスクにおいて、透光部102は幅がWのライン状パターンであるとし、透光部102の各長辺に対して平行な位相シフター103は幅dの矩形パターン(ライン状パターン)であるとし、さらに、位相シフター103の中心線は透光部102の中心から距離PW離れた位置に配置されているものとする。すなわち、透光部102を挟んで対となる位相シフター103同士の中心線間の距離は2×PWである。また、バックグランドである半遮光部101の透過率を6%として、種々のW、PW、dの組み合わせについて光強度シミュレーションを行なった。ここで、シミュレーションにおける光学計算の露光条件は、露光波長λが193nm、開口数NAが0.7である。また、照明条件として、外径の干渉度が0.8、内径の干渉度が0.53となる2/3輪帯照明を用いた。
図7(b)は、図7(a)に示すフォトマスクに対して露光を行なったときにウェハ上(図7(a)の線分ABと対応する位置)に形成される光強度分布を示している。図7(b)に示す光強度分布は、透光部102の中心と対応する位置にピークが形成されたプロファイルを持つ。このとき、透光部102の中心と対応するレジストを感光させるためには、ピーク強度Ioは所定値以上である必要がある。レジストを感光させるために必要となるピーク強度Ioはレジスト材料に依存するが、幅が0.4×λ/NA以下の微小スペースパターン形成に必要となるピーク強度Ioは0.25程度であることが経験的に得られている。
本変形例のフォトマスクに対して、第1の実施形態における図3(a)〜(c)と同様の解析を行なった結果を図8(a)〜(c)に示す。
すなわち、図8(a)は、図7(a)に示すフォトマスクにおいてピーク強度Ioが0.25となるW、PW、dの組み合わせをシミュレーションによって求めた結果を示している。具体的には、図8(a)において、シフター中心線間距離2×PWに対して、ピーク強度Ioが0.25となる透光部102の幅Wをプロットした結果を示している。また、図3(a)においては、位相シフター103の幅dが20nm、30nm、40nm、50nmのそれぞれである場合における2×PWとWとの関係を示している。すなわち、図3(a)のグラフに示すPW、W、dの全ての組み合わせによって、ピーク強度Ioが0.25となる光強度分布が形成される。また、これらの組み合わせの中で、焦点深度や露光マージンが最大となるものが、優れたパターン形成特性を有するマスク構成となる。
図8(b)は、図8(a)のグラフに示すPW、W、dの組み合わせを持つフォトマスクを用いて、幅100nmのスペースパターンの形成を行なった場合における焦点深度のシミュレーション結果を示している。図8(b)においては、横軸に2×PWをとり、dをパラメータとして焦点深度の値を縦軸にプロットした結果を示している。
同様に、図8(c)は、図8(a)のグラフに示すPW、W、dの組み合わせを持つマスクパターンを用いて、幅100nmのスペースパターンの形成を行なった場合における露光マージンのシミュレーション結果を示している。図8(c)においては、横軸に2×PWをとり、dをパラメータとして露光マージンの値を縦軸にプロットした結果を示している。
図8(b)及び(c)に示すように、位相シフター幅dの値に関係なく、シフター中心線間距離である2×PWが0.65×λ/NA程度(=約180nm)付近の値となるときに焦点深度及び露光マージンが共にほぼ最大となっている。ここで、シフター中心線間距離2×PWの最適値が位相シフター幅dに依存しないということは、該最適値が位相シフターの透過率にも依存しないということを意味する。
また、中心線間距離2×PWが0.65×λ/NA程度となる位相シフターにおいて、焦点深度及び露光マージンがともに十分に高い値となるのは、位相シフター幅dが0.10×λ/NA程度(30nm)であるときである。
以上の結果から、透光部102を挟んで対となるように位相シフター103を配置し、その位相シフター103の幅を0.10×λ/NAとし、且つシフター中心線間距離を0.65×λ/NAとしたマスク構成が微細スペースパターン形成に優れていることが分かる。尚、本変形例が第1の実施形態と違っている点は、本変形例においては透光部102の形状がライン状となったため、光の干渉効果が大きくなり、それによって位相シフター103の最適位置が透光部102の中心に近づいていることである。
また、最適な構成は上記の構成であるが、図8(b)及び(c)のグラフを詳細に見ると、第1の実施形態と同様に、位相シフター幅については0.05×λ/NA以上で且つ0.2×λ/NA以下であれば、高い焦点深度と高い露光マージンとが得られることが分かる。また、シフター中心線間距離については0.5×λ/NA以上で且つ0.9×λ/NA以下(位相シフターの中心線と透光部の中心との間の距離については0.25×λ/NA以上で且つ0.45×λ/NA以下)であれば、高い焦点深度と高い露光マージンとが得られることが分かる。また、焦点深度及び露光マージンとして、それぞれ特に極大値に近い値を得ようとすると、位相シフター幅については0.1×λ/NA以上で且つ0.15×λ/NA以下である構成が好ましい。また、シフター中心線間距離については0.55×λ/NA以上で且つ0.85×λ/NA以下(位相シフターの中心線と透光部の中心との間の距離については0.275×λ/NA以上で且つ0.425×λ/NA以下)である構成が好ましい。
尚、図8(b)及び(c)に示す結果は、開口数NAが0.7である場合の1例に過ぎないが、開口数NAが0.6及び0.8のそれぞれである場合に同様のシミュレーションを行なった結果、前述の最適なマスク構成は開口数NAの値に依存しないことを確認した。
また、本変形例では位相シフターの透過率が透光部の透過率と同じであることを前提として、位相シフター幅dの最適値を0.10×λ/NAとしたが、位相シフターの透過率が透光部の透過率と異なる場合、つまり位相シフター(補助パターン)の透光部に対する実効的な相対透過率が1ではない場合、同等の透過性が実現されるように、相対透過率に応じて位相シフター幅を変化させればよい。すなわち、例えば相対透過率をTとすれば、位相シフター幅dを(0.10×λ)/(NA×T0.5 )に設定することが好ましい。但し、透光部の中心からの位相シフターの中心線までの距離の最適値は、位相シフターの透過率や幅に関係なく0.325×λ/NAである。
また、位相シフター幅dは(0.05×λ)/(NA×T0.5 )以上で且つ(0.2×λ)/(NA×T0.5 )以下であることが好ましく、(0.1×λ)/(NA×T0.5 )以上で且つ(0.15×λ)/(NA×T0.5 )以下であることがより好ましい。
このように、本変形例において、輪郭強調法に基づき補助パターンとして配置される位相シフターの最適位置(中心線の最適位置)は、透光部の中心からみて露光光の波長λ以下の値となる。従って、透光部の中心から波長λ以上離れた位置に補助パターンを作成する必要があった従来例とは異なり、輪郭強調法の利用により、密に配置された透光部(スペースパターンと対応)同士の間にも補助パターンを配置できることが分かる。
すなわち、本変形例によると、透光部102を透過する光と、位相シフター103つまり補助パターンを透過する光との相互干渉により、透光部102と補助パターンとの間の光強度分布のコントラストを強調できる。また、このコントラスト強調効果は、例えばポジ型レジストプロセスにおいて斜入射露光を用いて、透光部102と対応する微細な孤立スペースパターンを形成する場合にも得られる。従って、斜入射露光により、孤立スペースパターンと孤立ラインパターン又は密集パターンとを同時に微細化することができる。さらに、複雑且つ微細なスペースパターン同士が互いに近接する状況においても、所望の寸法を持つパターンの形成を良好に行なうことができる。
尚、本変形例において、位相シフター103を透光部102に対して平行に配置した。しかし、必ずしも位相シフター103を透光部102に対して完全に平行に配置する必要はない。すなわち、所望のパターンが例えば単純な矩形パターンであっても、フォトマスク上においては、該所望のパターンを得るための透光部のパターン幅を微小な長さ単位で変化させたりする場合がある。このような場合、透光部の輪郭の変化に完全に追従するように位相シフターを設ける必要はない。すなわち、位相シフター103は透光部102に対して概略平行に配置されていればよい。但し、シフター中心線間距離、つまり透光部102を挟んで対となる位相シフター103同士の中心線間の距離の最適値が0.65×λ/NAであるため、微小スペースパターン形成に好ましい透光部102は常に幅が0.65×λ/NAよりも小さいラインパターンとなる。
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係るフォトマスクについて図面を参照しながら説明する。
図9は、第2の実施形態に係るフォトマスクの平面図である。本実施形態のフォトマスクは複数の微細なコンタクトパターンを同時に形成するためのものである。
図9に示すように、透過性基板200の上には、十分に広い領域を覆うように半遮光部201が形成されている。また、半遮光部201における、露光によりウェハ上に形成しようとする所望のコンタクトパターン(複数)と対応する位置には、透光部202、透光部対203及び204、並びに透光部対205及び206のそれぞれとなる開口パターンが設けられている。ここで、透光部202は、孤立して配置されるコンタクトパターンと対応する開口パターンであり、透光部203及び205はそれぞれ、近接する他のコンタクトパターンが存在するコンタクトパターンと対応する開口パターンである。また、透光部202の周辺には、半遮光部201を挟んで、位相シフター207となる補助パターンが、例えば方形状の透光部202の各辺と平行に該透光部202を囲むように設けられている。同様に、各透光部203〜206の周辺にはそれぞれ、半遮光部201を挟んで、位相シフター208〜211となる補助パターンが、例えば方形状の各透光部203〜206の各辺と平行に該各透光部203〜206を囲むように設けられている。
尚、透光部202の周辺の位相シフター207は、孤立配置されたコンタクトパターンの形成に優れたマスク構成となるように配置されているものとし、位相シフター207の幅をd0とする。
また、透光部203には他の透光部204が近接している。このとき、透光部203の周辺の位相シフター208及び透光部204の周辺の位相シフター209のそれぞれのうち、透光部203と透光部204とによって挟まれた領域に存在する位相シフターを位相シフター208a及び位相シフター209aとする。また、透光部205には他の透光部206が近接している。このとき、透光部205の周辺の位相シフター210及び透光部206の周辺の位相シフター211のそれぞれのうち、透光部205と透光部206とによって挟まれた領域に存在する位相シフターを位相シフター210a及び位相シフター211aとする。
本実施形態の特徴は、位相シフター208a及び209aの幅をそれぞれd1及びd2とし、位相シフター208a及び209aのそれぞれの中心線間同士の距離をG1としたときに、G1が0.5×λ/NA以下となる条件において、(d1+d2)<2×d0となるマスク構成を持つことである。すなわち、d1=d2とすると、d1<d0、d2<d0である。ここで、透光部203を囲む位相シフター208のうち、近接する他の透光部204が存在しない側に配置された位相シフター208bの幅はd0に設定されている。
また、本実施形態の特徴は、位相シフター210a及び211aの幅をそれぞれd3及びd4とし、位相シフター210a及び211aのそれぞれの中心線間同士の距離をG2としたときに、G2<G1<0.5×λ/NAの条件において、(d3+d4)<(d1+d2)<2×d0となるマスク構成を持つことである。すなわち、d3=d4、d1=d2とすると、dd3=d4<d1=d2<d0である。ここで、透光部205を囲む位相シフター210のうち、近接する他の透光部206が存在しない側に配置された位相シフター210bの幅はd0に設定されている。
すなわち、本実施形態では、ある透光部の周辺を囲む位相シフターと、他の透光部の周辺を囲む位相シフターとの間の関係において、両透光部の位相シフター同士が所定の寸法以下の間隔で隣り合って近接する場合には、各位相シフターの幅を、所定の寸法以下の間隔で隣り合って近接する位相シフターが存在しない位相シフターの幅よりも小さくする。このとき、所定の寸法以下の間隔で隣り合って近接する位相シフターのそれぞれの幅を、位相シフター同士の間の距離(近接距離)に比例させることが好ましい。或いは、図9の場合において、位相シフター208aの幅d1(又は位相シフター209aの幅d2)と、位相シフター210aの幅d3(又は位相シフター211aの幅d4)との差を、距離G1と距離G2との差に比例させることが好ましい。
本実施形態によると、各透光部を透過する光と、その周辺の位相シフターつまり補助パターンを透過する光との相互干渉により、透光部と補助パターンとの間の光強度分布のコントラストを強調できる。また、このコントラスト強調効果は、例えばポジ型レジストプロセスにおいて斜入射露光を用いて、透光部と対応する微細な孤立スペースパターンを形成する場合にも得られる。従って、斜入射露光により、孤立スペースパターンと孤立ラインパターン又は密集パターンとを同時に微細化することができる。さらに、複雑且つ微細なスペースパターン同士が互いに近接する状況においても、所望の寸法を持つパターンの形成を良好に行なうことができる。
以下、本実施形態のフォトマスクによって、孤立配置のコンタクトホールと密集配置のコンタクトホールとを良好に形成できることをシミュレーション結果に基づいて詳述する。
図10(a)は、本実施形態の効果を確認するためのシミュレーションに用いたフォトマスクの平面図である。図10(a)に示すように、透過性基板250の上には、十分に広い領域を覆うように半遮光部251が形成されている。また、半遮光部251における、露光によりウェハ上に形成しようとする所望のコンタクトパターン(複数)と対応する位置には、一辺がWの正方形状を有する複数の透光部252が互いに隣り合うように設けられている。また、各透光部252に対して、各透光部252の中心からPW0の距離に中心線が位置するように位相シフター(補助パターン)253が配置されている。ここで、各位相シフター253は、幅d、長さtの矩形状を持つ。また、互いに隣り合う透光部252同士の間において互いに隣り合って近接する位相シフター253のそれぞれの中心線間の距離(以下、隣接シフター間距離)をGとする。
図10(b)は、図10(a)に示すフォトマスクに対して露光を行なうことによって形成される光強度分布のプロファイルを示している。尚、図10(b)において、透光部252の中心での光強度をIpで表し、隣り合う透光部252同士の間の中間位置での光強度をIsで表し、透光部252の周辺で光強度が最小となる位置での光強度をIbで表す。ここで、隣り合う透光部252同士の間の中間位置は、隣り合う位相シフター253同士の間の中間位置である。また、光強度シミュレーションの条件は、露光波長λが193nm、開口数NAが0.65である。また、照明条件として、外径の干渉度が0.8、内径の干渉度が0.53となる2/3輪帯照明を用いた。また、半遮光部201の透過率は6%とした。
また、図10(a)に示すフォトマスクにおいては、各コンタクトパターンが孤立状態でも良好に形成されるように、位相シフター253の幅dを0.15×λ/NA程度(約44nm)に設定し、位相シフター253の透光部252に対する位置PW0を0.4×λ/NA程度(約120nm)に設定する。また、コンタクトホールサイズを所望のサイズである100nmに調整するために、透光部252の寸法Wと位相シフター253の長さtとをそれぞれ160nmに設定した。以上に説明した、パターンを孤立状態で良好に形成できるマスク構成において、前記の光強度Ib及びIsの隣接シフター間距離Gに対する依存性を計算した結果を図11(a)のグラフに示す。但し、図11(a)において、Gの値はλ/NAにより規格化されている。
図11(a)に示すように、Gが0.5×λ/NAよりも大きい場合、Ibは十分に低い値となっている。すなわち、コントラストの高い光強度分布が実現されており、それによって良好なパターン形成が可能なフォトマスクが実現されている。しかし、Gが0.5×λ/NA以下になると、Ibの値が大きくなっている。すなわち、コンタクトパターン形成において、隣り合う2つのコンタクトパターン同士の間で十分な遮光性が実現されていないため、コントラストの低下が生じている。この場合、良好なパターン形成を行なうことはできない。
上記の現象は、所望の密集コンタクトホールにおいて、コンタクトホール同士の間隔が狭いことに起因して、マスク上における位相シフター同士の間の半遮光部の幅が狭くなり、その結果、該半遮光部を十分な光が透過しなくなったことによって生じるものである。以下、この現象について詳しく解説する。
開口パターン(透光部)と半遮光部とはそれぞれ正の位相の光を透過させる領域である一方、位相シフターは負の位相の光を透過させる領域である。また、暗部(透光部周辺)の光強度Ibは、開口パターン及び半遮光部を透過した正の位相の光を、位相シフターを透過した負の位相の光が打ち消すことによって形成されている。この暗部の光強度Ibは、正負それぞれの位相の光のバランスが保たれることによって十分に小さな値となる。具体的には、隣接シフター間距離Gが十分に大きいと、半遮光部を透過する光の量が十分になるので、光強度Isは、半遮光部の透過率と対応する強度になる。しかし、隣接シフター間距離Gがλ/NA以下になると、それに伴って位相シフター同士の間の半遮光部の領域が減少するので、半遮光部を透過する光の量も減少する。このことは、図11(a)のグラフにおけるIsの値が、Gがλ/NA以下になるところで減少することから分かる。すなわち、隣り合う位相シフター同士の間に十分に広い半遮光部が存在する状態でバランスが保たれていた、正負それぞれの位相の光同士の関係において、半遮光部の領域が減少することによって負の位相の光が過剰となる。この負の位相の光が過剰になるに従って、光強度Ibも増加し、その結果、光強度分布におけるコントラストが低下する。
よって、上記の現象を防止するためには、位相シフター間の半遮光部の領域が減少するのに伴って、位相シフターを透過する光を減少させればよい。それを実現する方法の1つは、位相シフターの幅を減少させることである。
本願発明者はシミュレーション結果を詳細に解析することにより、次のような知見を得た。すなわち、隣接シフター間距離Gが十分に大きい場合に良好なパターン形成を実現できる位相シフター幅dをd0とすると、Gが0.5×λ/NA以下となる場合にはd=d0×(0.5+G)/(λ/NA)に設定することによって、密集コンタクトホールについても良好なパターン形成が可能となる。
図11(b)は、図10(b)と対応するシミュレーション結果であって、図10(a)に示すフォトマスクにおける線分ABと対応する位置に形成される光強度分布を示している。尚、図11(b)においては、G=0.3×(λ/NA)の場合における、位相シフター幅dを孤立状態のコンタクトパターンの形成において最適な寸法であるd0(0.15×λ/NA程度(約44nm))に設定したときの光強度分布のシミュレーション結果と、位相シフター幅dをd=0.8×d0に従って減少させたときの光強度分布のシミュレーション結果とをそれぞれ示している。図11(b)に示すように、位相シフター幅dを減少させることによって、コントラストの高い光強度分布が得られている。
また、図11(c)も、図10(b)と対応するシミュレーション結果であって、図10(a)に示すフォトマスクにおける線分ABと対応する位置に形成される光強度分布を示している。尚、図11(c)においては、隣接シフター間距離Gがさらに狭くなったG=0.2×(λ/NA)の場合における、位相シフター幅dをd0に設定したときの光強度分布のシミュレーション結果と、位相シフター幅dをd=0.7×d0に従って減少させたときの光強度分布のシミュレーション結果とをそれぞれ示している。図11(c)に示すように、隣接シフター間距離Gの減少に合わせて位相シフター幅dを減少させることによって、コントラストの高い光強度分布を実現できるフォトマスクが得られる。
以上のことから、輪郭強調法に基づいて位相シフター(補助パターン)を配置する場合において、隣り合う透光部同士の間に各透光部と対応する位相シフターが互いに平行に半遮光部を挟んで隣接シフター間距離が0.5×λ/NA以下になるように配置される場合、各位相シフターの幅を隣接シフター間距離に比例して小さくすることが好ましいことが分かる。
ところで、図12(a)に示すように、微細コンタクトパターンを形成するための開口パターン(透光部252)の中心から位相シフター253の中心線までの典型的な距離(最適値)PW0は0.4×λ/NAであった(第1の実施形態参照)。従って、隣接シフター間距離Gが0.5×λ/NA以下になるのは、言い換えると、隣接シフター間に配置された位相シフター253の幅dを細くすることが好ましいのは、図12(b)に示すように、隣り合うコンタクトホール同士と対応する透光部252同士の中心間の所望の距離P(=2×PW0+G)が1.3×λ/NA以下となるような密集ホールの場合である。
よって、上記のようなマスク構成においては、図13(a)に示すように、隣り合う透光部252(開口パターン)のそれぞれの中心間の距離Pが1.3×λ/NA以下である場合における該各透光部252に挟まれた領域に配置される位相シフター253の幅をdとし、該領域以外の他の領域(距離Pが1.3×λ/NA以下ではない領域)に配置される位相シフター253の幅をd0としたときに、d<d0に設定する。但し、位相シフター253の長さは、配置位置に関わらずtである。
ところで、図13(a)において、近接する透光部(開口パターン)252同士によって挟まれた領域の位相シフター253の幅を減少させるのは、該位相シフター253によって発生する負の位相の光を減少させるためである。よって、開口パターン間の位相シフター253については、その幅d1がd1<2×d0を満たすのであれば、図13(a)のような2つの位相シフター253ではなく、図13(b)のような1つの位相シフター253にまとめてもよい。
また、図13(a)においては、隣り合う開口パターンによって挟まれた位相シフター253の幅を減少させた。しかし、これに代えて、図13(c)に示すように、位相シフター253の長さを減少させてもよい。すなわち、開口パターン間の2つの位相シフター253のそれぞれの幅及び長さをd2及びt2とすると、t2×d2<t×d0に設定すればよい。
さらに、図14(a)に示すように、隣り合う開口パターンによって挟まれた位相シフター253を1つにまとめると共に、該位相シフター253の幅及び長さをそれぞれd3及びt3として、該位相シフター253の面積であるd3×t3を2×t×d0よりも小さく設定してもよい。
また、図14(b)に示すように、開口パターン間の位相シフター253の面積を2×t×d0よりも小さくする限りにおいて、位相シフター253の形状として、任意のパターン形状を用いてもよい。図14(b)においては、開口パターン間に位相シフター253として2つの矩形パターンを、それぞれが開口パターン(透光部252)が並ぶ方向に延びるように配置した様子を示している。この場合、各位相シフター253の幅及び長さをd4及びt4とすると、t4×d4<t×d0に設定すればよい。尚、図14(b)において、位相シフター253として2つの矩形パターンを並べた。しかし、これに代えて、開口パターン間における位相シフター253の総面積が2×d0×tよりも小さい限りにおいて、3つ又は4つ以上の矩形パターンを並べてもよい。また、図13(b)、図14(a)及び図14(b)においては、開口パターン間の位相シフター253の面積(図14(b)の場合は合計面積)を、一対の透光部252のそれぞれと対応するように2等分すれば、その2等分された面積は、開口パターン間以外に位置する位相シフター253の面積t×d0よりも小さくなる。
以上に説明したように、本実施形態において、密集したコンタクトパターンを形成する場合、密集コンタクトホールと対応する透光部同士の間に位置する位相シフターを透過する反対位相の光が減少するように位相シフターを変形させることにより、良好なパターン形成が可能なフォトマスクを実現できる。
尚、本実施形態においても、フォトマスクの断面構造として、例えば第1の実施形態における図6(a)〜(d)に示す断面構造を用いることができる。
(第2の実施形態の変形例)
以下、本発明の第2の実施形態の変形例に係るフォトマスクについて図面を参照しながら説明する。
図15は、第2の実施形態の変形例に係るフォトマスクの平面図である。本変形例のフォトマスクは、複数の微細なライン状スペースパターンを同時に形成するためのものである。すなわち、本変形例が第2の実施形態と異なっている点は、所望のパターンがコンタクトホールパターンではなく、ライン状の微細なスペースパターンであることである。
図15に示すように、透過性基板270の上には、十分に広い領域を覆うように半遮光部271が形成されている。また、半遮光部201における、露光によりウェハ上に形成しようとする所望のスペースパターン(複数)と対応する位置には、透光部272、透光部対273及び274、並びに透光部対275及び276のそれぞれとなる開口パターンが設けられている。ここで、透光部272は、孤立して配置されるスペースパターンと対応する開口パターンであり、透光部273及び275はそれぞれ、近接する他のスペースパターンが存在するスペースパターンと対応する開口パターンである。また、透光部272の周辺には、半遮光部271を挟んで、位相シフター277となる補助パターンが、ライン状の透光部272の各長辺と平行に設けられている。同様に、各透光部273〜276の周辺にはそれぞれ、半遮光部271を挟んで、位相シフター278〜281となる補助パターンが、ライン状の各透光部273〜276の各長辺と平行に設けられている。
尚、透光部272の周辺の位相シフター277は、孤立配置された微細スペースパターンの形成に優れたマスク構成となるように配置されているものとし、位相シフター277の幅をd0とする。
また、透光部273には他の透光部274が近接している。このとき、透光部273の周辺の位相シフター278及び透光部274の周辺の位相シフター279のそれぞれのうち、透光部273と透光部274とによって挟まれた領域に存在する位相シフターを位相シフター278a及び位相シフター279aとする。また、透光部275には他の透光部276が近接している。このとき、透光部275の周辺の位相シフター280及び透光部276の周辺の位相シフター281のそれぞれのうち、透光部275と透光部276とによって挟まれた領域に存在する位相シフターを位相シフター280a及び位相シフター281aとする。
本変形例の特徴は、位相シフター278a及び279aの幅をそれぞれd1及びd2とし、位相シフター278a及び279aのそれぞれの中心線間同士の距離をG1としたときに、第2の実施形態と同様に、G1が0.5×λ/NA以下となる条件において(d1+d2)<2×d0となるマスク構成を持つことである。すなわち、d1=d2とすると、d1<d0、d2<d0である。ここで、透光部273を囲む位相シフター278のうち、近接する他の透光部274が存在しない側に配置された位相シフター278bの幅は第2の実施形態と同様にd0に設定されている。
また、本変形例の特徴は、位相シフター280a及び281aの幅をそれぞれd3及びd4とし、位相シフター280a及び281aのそれぞれの中心線間同士の距離をG2としたときに、第2の実施形態と同様に、G2<G1<0.5×λ/NAの条件において、(d3+d4)<(d1+d2)<2×d0となるマスク構成を持つことである。すなわち、d3=d4、d1=d2とすると、d3=d4<d1=d2<d0である。ここで、透光部275を囲む位相シフター810のうち、近接する他の透光部276が存在しない側に配置された位相シフター280bの幅はd0に設定されている。
すなわち、本変形例では、第2の実施形態と同様に、ある透光部の周辺を囲む位相シフターと、他の透光部の周辺を囲む位相シフターとの間の関係において、両透光部の位相シフター同士が所定の寸法以下の間隔で隣り合って近接する場合には、各位相シフターの幅を、所定の寸法以下の間隔で隣り合って近接する位相シフターが存在しない位相シフターの幅よりも小さくする。このとき、所定の寸法以下の間隔で隣り合って近接する位相シフターのそれぞれの幅を、位相シフター同士の間の距離(近接距離)に比例させることが好ましい。或いは、図15の場合において、位相シフター278aの幅d1(又は位相シフター279aの幅d2)と、位相シフター280aの幅d3(又は位相シフター281aの幅d4)との差を、距離G1と距離G2との差に比例させることが好ましい。
本変形例によると、第2の実施形態と同様に、各透光部を透過する光と、その周辺の位相シフターつまり補助パターンを透過する光との相互干渉により、透光部と補助パターンとの間の光強度分布のコントラストを強調できる。また、このコントラスト強調効果は、例えばポジ型レジストプロセスにおいて斜入射露光を用いて、透光部と対応する微細な孤立スペースパターンを形成する場合にも得られる。従って、斜入射露光により、孤立スペースパターンと孤立ラインパターン又は密集パターンとを同時に微細化することができる。さらに、複雑且つ微細なスペースパターン同士が互いに近接する状況においても、所望の寸法を持つパターンの形成を良好に行なうことができる。
よって、本変形例においても、隣り合う開口パターン(透光部)に挟まれるように一対の位相シフターが近接して配置される場合であって隣接シフター間距離Gが0.5×λ/NAよりも小さくなる場合、第2の実施形態と同様にGに比例させて位相シフター幅を減少させることにより、密集したスペースパターンの形成においても高コントラストの光強度分布の形成を可能とするフォトマスクを実現できる。
尚、以上の説明において、ライン状の各透光部がそれぞれ独立したパターンであることを前提として説明してきた。しかし、本変形例は、着目している領域において上記のような構成が実現されている限り、ライン状の各透光部が独立パターンでなくてもよい。言い換えると、各透光部が、着目している領域以外の他の領域において互いに接続されている同一のパターンを構成していてもよい。
ところで、微細スペースパターンを形成するための開口パターン(透光部)の中心から位相シフターの中心線までの典型的な距離(最適値)PW0は0.325×λ/NAであった(第1の実施形態の変形例参照)。従って、隣接シフター間距離Gが0.5×λ/NA以下になるのは、言い換えると、隣接シフター間に配置された位相シフターの幅dを細くすることが好ましいのは、隣り合うスペースパターン同士と対応する透光部同士の中心間の所望の距離P(=2×PW0+G)が1.15×λ/NA以下となるような密集パターンの場合である。
よって、上記のようなマスク構成においては、図16(a)に示すように、隣り合う透光部292(開口パターン)のそれぞれの中心間の距離Pが1.15×λ/NA以下である場合における該各透光部292に挟まれた領域に配置される位相シフター293の幅をdとし、該領域以外の他の領域(距離Pが1.15×λ/NA以下ではない領域)に配置される位相シフター293の幅をd0としたときに、d<d0に設定する。
ところで、図16(a)において、近接する透光部(開口パターン)292同士によって挟まれた領域の位相シフター293の幅を減少させるのは、該位相シフター293によって発生する負の位相の光を減少させるためである。よって、開口パターン間の位相シフター293については、その幅d1がd1<2×d0を満たすのであれば、図16(a)のような2つの位相シフター293ではなく、図16(b)のような1つの位相シフター293にまとめてもよい。
また、図16(a)においては、隣り合う開口パターンによって挟まれた位相シフター293の幅を減少させた。しかし、これに代えて、図16(c)に示すように、開口パターン間に挟まれた位相シフター293を複数のパターンに分離することによって、位相シフター293の面積(透光部292となる開口パターンの延びる方向における単位長さ当たりの面積)を減少させてもよい。すなわち、開口パターン間に挟まれた位相シフター293を幅d2、長さtの複数のパターンに分割すると共に、該複数のパターンを開口パターンの延びる方向に沿って配置周期Tで配置するものとして、d2×t/Tを2×d0よりも小さく設定すればよい。但し、Tは(λ/NA)/2以下であることが好ましい。なぜなら、露光システムにおける解像限界((λ/NA)/2)以下の周期Tで位相シフター293を分割した場合、位相シフター293の透過光は該位相シフター293の面積減少分に比例して減少する一方、光強度分布形状において位相シフター293の分割形状の影響が現れないからである。
尚、図16(a)〜(c)において、透過性基板290の上に、十分に広い領域を覆うように半遮光部291が形成されており、該半遮光部291における、露光によりウェハ上に形成しようとする所望のスペースパターン(複数)と対応する位置に、ライン状を有する一対の透光部292が互いに隣り合うように設けられているものとする。
また、図16(b)及び図16(c)においては、開口パターン間の位相シフター293の面積(図16(c)の場合は合計面積)を、一対の透光部292のそれぞれと対応するように2等分すれば、その2等分された面積は、開口パターン間以外に位置する位相シフター293の面積(透光部292となる開口パターンの延びる方向における単位長さ当たりの面積)よりも小さくなる。
以上に説明したように、本変形例において、密集したスペースパターンを形成する場合、密集スペースパターンと対応する透光部同士の間に位置する位相シフターを透過する反対位相の光が減少するように位相シフターを変形させることにより、良好なパターン形成が可能なフォトマスクを実現できる。
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態に係るフォトマスクについて図面を参照しながら説明する。
図17は、第3の実施形態に係るフォトマスクの平面図である。本実施形態のフォトマスクは複数の微細なコンタクトパターンを同時に形成するためのものである。
図17に示すように、透過性基板300の上には、十分に広い領域を覆うように半遮光部301が形成されている。また、半遮光部301における、露光によりウェハ上に形成しようとする所望のコンタクトパターン(複数)と対応する位置には、透光部302、透光部対303及び304、並びに透光部対305及び306のそれぞれとなる開口パターンが設けられている。ここで、透光部302は、孤立して配置されるコンタクトパターンと対応する開口パターンであり、透光部303及び305はそれぞれ、近接する他のコンタクトパターンが存在するコンタクトパターンと対応する開口パターンである。また、透光部302の周辺には、半遮光部301を挟んで、位相シフター307となる補助パターンが、例えば方形状の透光部302の各辺と平行に該透光部302を囲むように設けられている。同様に、各透光部303〜306の周辺にはそれぞれ、半遮光部301を挟んで、位相シフター308〜311となる補助パターンが、例えば方形状の各透光部303〜306の各辺と平行に該各透光部303〜306を囲むように設けられている。
尚、透光部302の周辺の位相シフター307は、孤立配置されたコンタクトパターンの形成に優れたマスク構成となるように配置されているものとする。このとき、位相シフター307の幅はd0であり、位相シフター307の中心線と透光部302の中心との間の距離はPW0であるとする。
また、透光部303は、一の方向において他の透光部304と近接している一方、他の方向において他の透光部とは近接していない。ここで、一の方向における透光部303の周辺の位相シフター308を位相シフター308aとし、他の方向における透光部303の周辺の位相シフター308を位相シフター308bとする。また、透光部305は、一の方向において他の透光部306と近接している一方、他の方向において他の透光部とは近接していない。このとき、一の方向における透光部305の周辺の位相シフター310を位相シフター310aとし、他の方向における透光部305の周辺の位相シフター310を位相シフター310bとする。
本実施形態の特徴は、透光部303の中心と透光部304の中心との間の距離P1が1.3×λ/NA程度であるとき、位相シフター308aの中心から透光部303の中心までの距離PW1について、PW1>PW0となるように設定することである。ここで、位相シフター308bの中心から透光部303の中心までの距離を上記PW0に設定する。
また、本実施形態の特徴は、透光部305の中心と透光部306の中心との間の距離P2が1.0×λ/NA程度であるとき、位相シフター310aの中心から透光部305の中心までの距離PW2について、PW2<PW0となるように設定することである。ここで、位相シフター310bの中心から透光部305の中心までの距離を上記PW0に設定する。
すなわち、本実施形態では、開口パターン(透光部)の中心から見た位相シフター(補助パターン)の配置位置において、該開口パターンに近接する他の開口パターンが存在する場合、孤立した微細コンタクトホール形成にとって好ましい位相シフターの位置を、開口パターン同士の距離(近接距離)に応じて変化させる。
本実施形態によると、各透光部を透過する光と、その周辺の位相シフターつまり補助パターンを透過する光との相互干渉により、透光部と補助パターンとの間の光強度分布のコントラストを強調できる。また、このコントラスト強調効果は、例えばポジ型レジストプロセスにおいて斜入射露光を用いて、透光部と対応する微細な孤立スペースパターンを形成する場合にも得られる。従って、斜入射露光により、孤立スペースパターンと孤立ラインパターン又は密集パターンとを同時に微細化することができる。さらに、複雑且つ微細なスペースパターン同士が互いに近接する状況においても、所望の寸法を持つパターンの形成を良好に行なうことができる。
以下、本実施形態のフォトマスクによって、孤立配置のコンタクトホールと密集配置のコンタクトホールとを良好に形成できることをシミュレーション結果に基づいて詳述する。
尚、本実施形態の効果を確認するためのシミュレーションに用いたフォトマスクの平面構成は、図10(a)に示すフォトマスク(第2の実施形態参照)と同様である。すなわち、図10(a)に示すように、透過性基板250の上には、十分に広い領域を覆うように半遮光部251が形成されている。また、半遮光部251における、露光によりウェハ上に形成しようとする所望のコンタクトパターン(複数)と対応する位置には、一辺がWの正方形状を有する複数の透光部252が互いに隣り合うように設けられている。また、各透光部252に対して、各透光部252の中心からPW0の距離に中心線が位置するように位相シフター(補助パターン)253が配置されている。ここで、各位相シフター253は、幅d、長さtの矩形状を持つ。また、互いに隣り合う透光部252同士の間において互いに隣り合って近接する位相シフター253のそれぞれの中心線間の距離(隣接シフター間距離)をGとする。
図10(b)は、図10(a)に示すフォトマスクに対して露光を行なうことによって形成される光強度分布のプロファイルを示している。尚、図10(b)において、透光部252の中心での光強度をIpで表し、隣り合う透光部252同士の間の中間位置での光強度をIsで表し、透光部252の周辺で光強度が最小となる位置での光強度をIbで表す。ここで、隣り合う透光部252同士の間の中間位置は、隣り合う位相シフター253同士の間の中間位置である。また、光強度シミュレーションの条件は、露光波長λが193nm、開口数NAが0.65である。また、照明条件として、外径の干渉度が0.8、内径の干渉度が0.53となる2/3輪帯照明を用いた。また、半遮光部201の透過率は6%とした。
また、図10(a)に示すフォトマスクにおいては、各コンタクトパターンが孤立状態でも良好に形成されるように、位相シフター253の幅dを0.15×λ/NA程度(約44nm)に設定し、位相シフター253の透光部252に対する位置PW0を0.4×λ/NA程度(約120nm)に設定する。また、コンタクトホールサイズを所望のサイズである100nmに調整するために、透光部252の寸法Wと位相シフター253の長さtとをそれぞれ160nmに設定した。以上に説明したマスク構成において、開口パターン(透光部252)のそれぞれの中心間の距離P(=G+2×PW0)が変化したときに、図10(b)に示す光強度Ip(透光部252の中心での光強度)がどのように変化するかを計算した結果を図18(a)のグラフに示す。但し、図18(a)において、Pの値はλ/NAにより規格化されている。
図18(a)に示すように、開口中心間距離Pが1.5×λ/NA以下になると、光強度Ipは急激に低下して、P=1.3×λ/NA付近でIpは極小値となる。また、Pが1.3×λ/NA以下になると、光強度Ipの値は急激に増加し始め、P=λ/NA付近において、光強度Ipは、透光部252が孤立状態(つまりPが無限大)である場合の値よりも高い値を有するようになる。
ところで、第2の実施形態でも説明したように、開口パターン(透光部)同士が近接してくると、開口パターン間の領域において隣り合う位相シフター間における半遮光部の領域が減少するので、フォトマスクを透過する正の位相の光が減少する。また、開口パターンの中心の光強度ピーク(Ip)を形成するのは正の位相の光であるため、前述のように正の位相の光が減少すると、光強度Ipの値は減少する。さらに、このような現象が顕著となるのは隣接シフター間距離G=0.5×λ/NAのときであるので(第2の実施形態参照)、互いに近接する開口パターンのそれぞれの中心間の距離(以下、近接開口中心間距離と称する)P=G+2×PW0=0.5×λ/NA+2×0.4×λ/NA=1.3×λ/NAで前述の現象が顕著になる。
また、一の透光部に他の透光部が近接している場合、他の透光部を透過する正の位相の光によって、フォトマスクを透過する正の位相の光が再び増加することになる。ここで、他の透光部からの影響が顕著になるのは、一の透光部の中心と他の透光部の中心との間の距離(つまり近接開口中心間距離)Pがλ/NAとなるときである。
以上に説明したように、開口中心間距離Pが1.3×λ/NAの近傍である場合には透光部中心の光強度Ipは減少する一方、Pがλ/NAの近傍である場合には透光部中心の光強度Ipは増加する。尚、Ipの減少はコントラストの低下をもたらし、それによって良好なパターン形成が阻害される。また、Ipの増加はコンタクトホールサイズの増加を招くので、微細コンタクトパターン形成が阻害される。
図18(b)は、図10(b)と対応するシミュレーション結果であって、図10(a)に示すフォトマスクにおける線分ABと対応する位置に形成される光強度分布を示している。尚、図18(b)においては、開口中心間距離Pが450nm(1.5×λ/NA程度)、390nm(1.3×λ/NA程度)、300nm(1.0×λ/NA程度)のそれぞれである場合における光強度分布のプロファイルのシミュレーション結果を示している。図18(b)に示すように、開口中心間距離Pが異なると、つまり開口パターン同士の近接状態が異なると、各開口パターンの中心部と対応する光強度分布のプロファイルが一致しなくなるため、微細コンタクトパターンを一様に形成することができなくなる。
それに対して、本願発明者は、詳細なシミュレーションを行なった結果、開口パターンの中心から見た位相シフターの位置を開口中心間距離Pに応じて変化させることにより、開口パターン中心部と対応する光強度プロファイルを開口中心間距離Pに依存せずに一様にすることが可能であることを見出した。具体的には、各開口中心間距離Pに対して、開口パターン中心部と対応する光強度プロファイルを一様にする位相シフターの配置位置をPW(P)と表すと、ΔPW(P)=(PW(P)−PW0)/PW0(つまりPW(P)=PW0+ΔPW(P)×PW0)で定義されるΔPW(P)は、図18(c)に示すグラフのように表される。すなわち、各開口中心間距離Pに対して最適な位相シフター配置位置PW(P)は、P=1.3×λ/NAの近傍では、コンタクトパターンが孤立状態で良好に形成される位相シフター配置位置PW0と比べて10%程度大きくなるように設定されることが好ましい。また、PW(P)は、P=λ/NAの近傍では、PW0と比べて10%程度小さくなるように設定されることが好ましい。
図18(d)も、図10(b)と対応するシミュレーション結果であって、図10(a)に示すフォトマスクにおける線分ABと対応する位置に形成される光強度分布を示している。尚、図18(d)においては、開口中心間距離Pが450nm(1.5×λ/NA程度)、390nm(1.3×λ/NA程度)、300nm(1.0×λ/NA程度)のそれぞれである場合において図18(c)のグラフに示す位置に位相シフターが配置されたフォトマスクを用いた場合における光強度分布のプロファイルのシミュレーション結果を示している。図18(d)に示すように、図18(c)のグラフに示す位置に位相シフターを配置することによって、前述の全てのPの値について、開口パターン中心部と対応する光強度分布のプロファイルを一致させることができる。
以上に説明した検討結果から、互いに近接する複数の開口パターンが存在する状況においては、開口パターン(透光部)の周辺に配置される位相シフターにおける透光部中心から見た配置位置PWは、開口中心間距離Pに応じて下記のように設定されることが好ましい。
まず、開口中心間距離Pが1.3×λ/NAの近傍である場合、具体的には1.15×λ/NA<P<1.45×λ/NAである場合、一の開口パターンの周辺における他の開口パターンが近接している側に配置される位相シフターの開口パターン中心から見た配置位置をPW1とし、一の開口パターンの周辺における他の開口パターンが近接していない側に配置される位相シフターの開口パターン中心から見た配置位置をPW0とすると、PW1はPW0よりも大きいことが好ましく、PW1がPW0と比べて5%以上大きいことがより好ましい。
次に、開口中心間距離Pがλ/NAの近傍である場合、具体的には0.85×λ/NA<P<1.15×λ/NAである場合、一の開口パターンの周辺における他の開口パターンが近接している側に配置される位相シフターの開口パターン中心から見た配置位置をPW2とし、一の開口パターンの周辺における他の開口パターンが近接していない側に配置される位相シフターの開口パターン中心から見た配置位置をPW0とすると、PW2はPW0よりも小さいことが好ましく、PW2がPW0と比べて5%以上小さいことがより好ましい。
以上に説明したように、本実施形態によると、密集したコンタクトパターンを形成する場合、密集コンタクトホール間の位置と対応する位相シフターの配置位置(つまり位相シフターにおける透光部中心からの距離)を、コンタクトパターンの近接距離(つまり開口中心間距離P)に応じて変化させる。このため、任意の密集度のコンタクトパターンの形成においても一様な光強度分布のプロファイルを形成できるフォトマスクを実現できる。従って、任意に配置された微細なコンタクトホールパターンの形成を良好に行なうことができる。
尚、本実施形態においても、フォトマスクの断面構造として、例えば第1の実施形態における図6(a)〜(d)に示す断面構造を用いることができる。
(第3の実施形態の変形例)
以下、本発明の第3の実施形態の変形例に係るフォトマスクについて図面を参照しながら説明する。
図19は、第3の実施形態の変形例に係るフォトマスクの平面図である。本変形例のフォトマスクは、複数の微細なライン状スペースパターンを同時に形成するためのものである。すなわち、本変形例が第3の実施形態と異なっている点は、所望のパターンがコンタクトホールパターンではなく、ライン状の微細なスペースパターンであることである。
図19に示すように、透過性基板350の上には、十分に広い領域を覆うように半遮光部351が形成されている。また、半遮光部351における、露光によりウェハ上に形成しようとする所望のスペースパターン(複数)と対応する位置には、透光部352、透光部対353及び354、並びに透光部対355及び356のそれぞれとなる開口パターンが設けられている。ここで、透光部352は、孤立して配置されるスペースパターンと対応する開口パターンであり、透光部353及び355はそれぞれ、近接する他のスペースパターンが存在するスペースパターンと対応する開口パターンである。また、透光部352の周辺には、半遮光部351を挟んで、位相シフター357となる補助パターンが、ライン状の透光部352の各長辺と平行に設けられている。同様に、各透光部353〜356の周辺にはそれぞれ、半遮光部351を挟んで、位相シフター358〜361となる補助パターンが、ライン状の各透光部353〜356の各長辺と平行に設けられている。
尚、透光部352の周辺の位相シフター357は、孤立配置されたスペースパターンの形成に優れたマスク構成となるように配置されているものとする。このとき、位相シフター357の幅はd0であり、位相シフター357の中心線と透光部352の中心との間の距離はPG0であるとする。
また、透光部353は、一の方向において他の透光部354と近接している一方、他の方向において他の透光部とは近接していない。ここで、一の方向における透光部353の周辺の位相シフター358を位相シフター358aとし、他の方向における透光部353の周辺の位相シフター358を位相シフター358bとする。また、透光部355は、一の方向において他の透光部356と近接している一方、他の方向において他の透光部とは近接していない。このとき、一の方向における透光部355の周辺の位相シフター360を位相シフター360aとし、他の方向における透光部355の周辺の位相シフター360を位相シフター360bとする。
本変形例の特徴は、透光部353の中心と透光部354の中心との間の距離P1が1.15×λ/NA程度であるとき、位相シフター358aの中心から透光部353の中心までの距離PG1について、PG1>PG0となるように設定することである。ここで、位相シフター358bの中心から透光部353の中心までの距離を上記PG0に設定する。
また、本変形例の特徴は、透光部355の中心と透光部356の中心との間の距離P2が0.85×λ/NA程度であるとき、位相シフター360aの中心から透光部355の中心までの距離PG2について、PG2<PG0となるように設定することである。ここで、位相シフター360bの中心から透光部355の中心までの距離を上記PG0に設定する。
すなわち、本変形例では、開口パターン(透光部)の中心から見た位相シフター(補助パターン)の配置位置において、該開口パターンに近接する他の開口パターンが存在する場合、孤立した微細なスペースパターン形成にとって好ましい位相シフターの位置を、第3の実施形態と同様に、開口パターン同士の距離(近接開口中心間距離)に応じて変化させる。
本変形例によると、各透光部を透過する光と、その周辺の位相シフターつまり補助パターンを透過する光との相互干渉により、透光部と補助パターンとの間の光強度分布のコントラストを強調できる。また、このコントラスト強調効果は、例えばポジ型レジストプロセスにおいて斜入射露光を用いて、透光部と対応する微細な孤立スペースパターンを形成する場合にも得られる。従って、斜入射露光により、孤立スペースパターンと孤立ラインパターン又は密集パターンとを同時に微細化することができる。さらに、複雑且つ微細なスペースパターン同士が互いに近接する状況においても、所望の寸法を持つパターンの形成を良好に行なうことができる。
尚、本変形例においても、第3の実施形態と同様に、開口パターン(透光部)の中心部と対応する光強度分布のプロファイルが、該開口パターンに近接する他の開口パターンの影響を受けて近接開口中心間距離に応じて変化する。但し、本変形例では、開口パターンがコンタクトパターンではなくライン状のスペースパターンと対応するため、近接開口中心間距離と光強度分布のプロファイルとの関係は第3の実施形態と異なるものになる。
図20(a)は、開口パターン(透光部)の中心での光強度(Ip)における開口中心間距離(P)への依存性を、第3の実施形態の図18(a)と同様の計算によって求めた結果を示している。但し、図20(a)において、Pの値はλ/NAにより規格化されている。
図20(a)に示すように、第3の実施形態とは異なり、開口中心間距離Pが1.15×λ/NAの近傍で光強度Ipは極小値となる。また、P=0.85×λ/NAの近傍で、光強度Ipは、透光部が孤立状態(つまりPが無限大)である場合の値よりも高い値を有するようになる。すなわち、開口中心間距離Pが異なると、つまり開口パターン同士の近接状態が異なると、各開口パターンの中心部と対応する光強度分布のプロファイルが一致しなくなるため、微細コンタクトパターンを一様に形成することができなくなる。
それに対して、本願発明者は、開口パターンの中心から見た位相シフターの位置を開口中心間距離Pに応じて変化させることにより、開口パターン中心部と対応する光強度プロファイルを開口中心間距離Pに依存せずに一様にすることが可能であることを見出した。具体的には、各開口中心間距離Pに対して、開口パターン中心部と対応する光強度プロファイルを一様にする位相シフターの配置位置をPW(P)と表すと、ΔPW(P)=(PW(P)−PW0)/PW0(つまりPW(P)=PW0+ΔPW(P)×PW0)で定義されるΔPW(P)は、図20(b)に示すグラフのように表される。すなわち、各開口中心間距離Pに対して最適な位相シフター配置位置PW(P)は、P=1.15×λ/NAの近傍では、スペースパターンが孤立状態で良好に形成される位相シフター配置位置PW0と比べて10%程度大きくなるように設定されることが好ましい。また、PW(P)は、P=0.85×λ/NAの近傍では、PW0と比べて10%程度小さくなるように設定されることが好ましい。
以上に説明した検討結果から、互いに近接する複数のライン状の開口パターンが存在する状況においては、開口パターン(透光部)の周辺に配置される位相シフターにおける透光部中心から見た配置位置PWは、開口中心間距離Pに応じて下記のように設定されることが好ましい。
まず、開口中心間距離Pが1.15×λ/NAの近傍である場合、具体的には1.0×λ/NA<P<1.3×λ/NAである場合、一の開口パターンの周辺における他の開口パターンが近接している側に配置される位相シフターの開口パターン中心から見た配置位置をPG1とし、一の開口パターンの周辺における他の開口パターンが近接していない側に配置される位相シフターの開口パターン中心から見た配置位置をPG0とすると、PG1はPG0よりも大きいことが好ましく、PG1がPG0と比べて5%以上大きいことがより好ましい。
次に、開口中心間距離Pが0.85×λ/NAの近傍である場合、具体的には0.7×λ/NA<P<1.0×λ/NAである場合、一の開口パターンの周辺における他の開口パターンが近接している側に配置される位相シフターの開口パターン中心から見た配置位置をPG2とし、一の開口パターンの周辺における他の開口パターンが近接していない側に配置される位相シフターの開口パターン中心から見た配置位置をPG0とすると、PG2はPG0よりも小さいことが好ましく、PG2がPG0と比べて5%以上小さいことがより好ましい。
以上に説明したように、本変形例によると、密集したスペースパターンを形成する場合、密集スペースパターン間の位置と対応する位相シフターの配置位置(つまり位相シフターにおける透光部中心からの距離)を、スペースパターンの近接距離(つまり開口中心間距離P)に応じて変化させる。このため、任意の密集度のスペースパターンの形成においても一様な光強度分布のプロファイルを形成できるフォトマスクを実現できる。従って、任意に配置された微細なスペースパターンの形成を良好に行なうことができる。
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態に係るフォトマスクについて図面を参照しながら説明する。
図21(a)は第4の実施形態に係るフォトマスクの平面図である。本実施形態のフォトマスクは微細なライン状のスペースパターンを形成するためのものである。
図21(a)に示すように、透過性基板400の上には、十分に広い領域を覆うように半遮光部401が形成されている。また、半遮光部401における、露光によりウェハ上に形成しようとする所望のスペースパターンと対応する位置には、透光部402となるライン状の開口パターンが設けられている。また、透光部402の周辺には、半遮光部401を挟んで、位相シフター403及び404となる補助パターンが透光部402を囲むように設けられている。具体的には、一対の位相シフター403が、透光部402を挟むように透光部402の長辺方向(ライン方向)に沿って透光部402に平行に配置されていると共に、一対の位相シフター404が、透光部402を挟むように透光部402の短辺方向に沿って透光部402に平行に配置されている。
ここで、一対の位相シフター403は、孤立して配置されるスペースパターンの形成に優れたマスク構成となるように、透光部402を挟んで位相シフター403同士の間隔(正確には位相シフター403の中心線同士の間隔)がPW0×2になるように配置されている。
本実施形態の特徴は、透光部402のライン方向において、位相シフター403が透光部402よりも短いこと、言い換えると、透光部402の長辺方向の端部(ライン端部)が位相シフター403のライン端部よりも突き出していることである。尚、透光部402のライン端部と向かい合う位相シフター404の長さは、透光部402の幅(ライン幅)と比べて長くても短くてもよい。
第4の実施形態によると、前述の第1〜第3の実施形態の効果に加えて次の様な効果が得られる。すなわち、一般に、開口パターン(透光部)によるライン状パターンの形成においては、ライン端部における光透過量が低下するので、露光後に形成されるパターンにおけるライン端部が後退し、その結果、ライン長さが減少するという問題が発生する。それに対して、本実施形態においては、開口パターンのライン端部を囲む位相シフターを除去することにより、開口パターンを透過する光の量を増加させることができるので、露光後に形成されるパターン(以下、転写パターンと称する)におけるライン端部の後退を防止することができる。
図21(b)は、図21(a)に示すフォトマスクにおいて透光部402のライン端が位相シフター403のライン端よりも突き出た寸法をZとし、Z=0及びZ=100nmのそれぞれの場合におけるパターン形成シミュレーションを行なった結果を示している。尚、図21(b)の横軸において、目盛りが0の位置が透光部402(開口パターン)の端部と対応する。また、図21(b)においては、Z=100nmとしたときのパターン形状を実線を用いて示していると共に、Z=0nmとしたときのパターン形状を点線を用いて示している。図21(b)に示すように、開口パターンに平行に配置される位相シフターのうち、開口パターンのライン端部近傍に配置されている部分を除去することにより、転写パターン(レジストパターン)におけるライン端部の後退を防止できる。
以下、転写パターンにおけるライン端部の後退を防止するための、開口パターンのライン端周辺における位相シフターを除去する領域を、シミュレーションによって定量化した結果について説明する。
図22(a)は、前記のシミュレーションに用いたフォトマスクの平面構成を示している。尚、図22(a)において、図21(a)と同一の構成要素には同一の符号を付すことにより説明を省略する。
図22(a)に示すように、ライン端部において互いに向かい合う、幅Lの一対のライン状透光部(開口パターン)402のそれぞれに対して、透光部402を挟むように透光部402のライン方向に沿って幅dの一対の位相シフター403が配置されている。このとき、透光部402を挟んだ位相シフター403の中心線同士の間の距離を2×PWとする。また、透光部402のライン端部周辺における位相シフター403が除去されている寸法をZとする。
図22(b)は、図22(a)に示すフォトマスクに対して露光を行なった場合に形成されるパターン形状を示している。図22(b)において、一対の透光部402と対応する一対の転写パターン(レジストパターン)のライン端部同士の間隔をVとする。
図22(c)は、図22(a)に示すフォトマスクにおいてL=110nm、2×PW=180nm、d=30nmとして、種々のZ(以下、シフター除去寸法と称する)に対して、転写パターンにおけるライン端部間の寸法(以下、パターン寸法と称する)Vを光強度シミュレーションによって計算した結果を示している。ここで、光強度シミュレーションにおける露光条件は、露光波長λが193nm、開口数NAが0.7である。また、照明条件として、外径の干渉度が0.8、内径の干渉度が0.53となる2/3輪帯照明を用いた。また、半遮光部401の透過率を6%とした。尚、図22(c)においては、シフター除去寸法Zを横軸に示すと共にZをλ/NAによって規格している。また、図22(c)において、パターン寸法Vを縦軸に示している。
図22(c)に示すように、Z=0ではパターン寸法Vは160nm程度である一方、Zが増加するに伴ってパターン寸法Vは減少する。すなわち、転写パターンにおけるライン端部の後退量が減少している。このとき、Zの値が0.1×λ/NAを越えると、パターン寸法Vはほぼ120nmとなって、それ以下には減少しない。また、Zの値が0.03×λ/NAであるときにパターン寸法Vが140nm程度まで減少していることから、Zが0.03×λ/NA程度である場合にも本実施形態の効果が得られることが分かる。
従って、本実施形態において、転写パターンにおけるライン端の後退を防止するためには、ライン状の開口パターンのライン端部が、開口パターンに平行に配置された位相シフターと比べて所定の寸法以上突き出たマスク構成を用いることが望ましい。具体的には、所定の寸法は0.1×λ/NA程度であることが好ましいが、所定の寸法が0.03×λ/NA程度であっても効果は得られる。
すなわち、ライン状の開口パターンのライン端部は位相シフターと比べて0.03×λ/NA程度以上突き出ていることが好ましい。但し、輪郭強調法の原理を有効に利用するためには、開口パターンのライン端部の突き出し寸法(Z)は0.5×λ/NA程度以下であることが好ましい。なぜなら、輪郭強調法の原理を得るためには、開口パターンから、光の干渉距離となる0.5×λ/NA程度以下の距離に位相シフターが配置されることが好ましいので、開口パターンのライン端部の突き出し寸法、つまり位相シフターが開口パターンに平行に配置されてない領域の寸法は0.5×λ/NA以下であることが好ましいからである。
以上に説明したように、本実施形態によると、ライン状のスペースパターンを形成する際に、ライン状の開口パターンとその周辺に配置される位相シフターとの関係において、開口パターンのライン端部が、ライン方向に沿って開口パターンに平行に配置される位相シフターのライン端部よりも突き出た構成を用いることによって、ライン状のスペースパターンにおけるライン端部の後退を防止できる。
尚、本実施形態においても、フォトマスクの断面構造として、例えば第1の実施形態における図6(a)〜(d)に示す断面構造を用いることができる。
(第4の実施形態の変形例)
以下、本発明の第4の実施形態の変形例に係るフォトマスクについて図面を参照しながら説明する。
図23(a)は第4の実施形態の変形例に係るフォトマスクの平面図である。本変形例のフォトマスクは微細なライン状のスペースパターンを形成するためのものである。
図23(a)に示すように、透過性基板400の上には、十分に広い領域を覆うように半遮光部401が形成されている。また、半遮光部401における、露光によりウェハ上に形成しようとする所望のスペースパターンと対応する位置には、透光部402となるライン状の開口パターンが設けられている。また、透光部402の周辺には、半遮光部401を挟んで、位相シフター403及び404となる補助パターンが透光部402を囲むように設けられている。具体的には、一対の位相シフター403が、透光部402を挟むように透光部402の長辺方向(ライン方向)に沿って透光部402に平行に配置されていると共に、一対の位相シフター404が、透光部402を挟むように透光部402の短辺方向に沿って透光部402に平行に配置されている。
本変形例の特徴は、ライン方向に延びる位相シフター403が、透光部402のライン中央部(正確には後述するライン端部以外の部分)に平行に配置された位相シフター403aと、透光部402のライン端部(正確にはライン端からの距離Zが0.1×λ/NA以内である部分)に平行に配置された位相シフター403bとから構成されていることである。ここで、透光部402のライン中央部を挟む一対の位相シフター403aは、孤立して配置されるスペースパターンの形成に優れたマスク構成となるように、透光部402を挟んで位相シフター403a同士の間隔(正確には位相シフター403aの中心線同士の間隔)がPW0×2になるように配置されている。一方、透光部402のライン端部を挟む一対の位相シフター403bは、透光部402を挟んで位相シフター403b同士の間隔(正確には位相シフター403bの中心線同士の間隔)がPWZ×2になるように配置されている。尚、PWZ×2>PW0×2である。また、透光部402のライン端部と向かい合う位相シフター404の長さは、透光部402の幅(ライン幅)と比べて長くても短くてもよい。
ところで、第4の実施形態では、位相シフター403における透光部402のライン端部を囲む部分を除去することによって、透光部402を透過する光の量を増加させた(図21(a)参照)。それに対して、本変形例では、位相シフター403における透光部402のライン端部を囲む部分、つまり位相シフター403bを透光部402(開口パターン)から遠ざけることによって、開口パターンを透過する光の量を増加させ、それにより転写パターンにおけるライン端部の後退を防止する。
すなわち、本変形例によって、第4の実施形態と同様の効果が得られる。
図23(b)は、図23(a)に示すフォトマスクに対して露光を行なうことにより形成されるレジストパターンの形状をシミュレーションを用いて求めた結果を示している。尚、図23(b)の横軸において、目盛りが0の位置が透光部402(開口パターン)の端部と対応する。また、図23(b)においては、PWZ=PW0としたときの(つまり位相シフター403bを透光部402から遠ざけないときの)パターン形状を点線を用いて示していると共に、PWZ=1.2×PW0としたときの(つまり位相シフター403bを透光部402から遠ざけたときの)パターン形状を実線を用いて示している。尚、位相シフター403bの長さZは0.1×λ/NA(約270nm)である。図23(b)に示すように、開口パターンに平行に配置される位相シフターのうち、開口パターンのライン端部近傍に配置されている部分を開口パターンから遠ざけて配置することにより、転写パターン(レジストパターン)におけるライン端部の後退を防止できる。
以下、転写パターンにおけるライン端部の後退を防止するための、開口パターンのライン端周辺における位相シフターを開口パターンから遠ざける領域を、シミュレーションによって定量化した結果について説明する。
図24(a)は、前記のシミュレーションに用いたフォトマスクの平面構成を示している。尚、図24(a)において、図23(a)と同一の構成要素には同一の符号を付すことにより説明を省略する。また、図24(a)に示すフォトマスクは、開口パターン(透光部)402におけるライン端から寸法Zまでの部分に対して平行に位相シフター403bが配置されている点を除いて、第4の実施形態における図22(a)に示すフォトマスクと同様の構成を持つ。
ここで、透光部402のライン端部を挟む一対の位相シフター403bの中心線同士の間隔を2×PWZとする。また、透光部402のライン中央部を挟む一対の位相シフター403aの中心線同士の間隔を2×PWとする。
図24(b)は、図24(a)に示すフォトマスクに対して露光を行なった場合に形成されるパターン形状を示している。図24(b)において、一対の透光部402と対応する一対の転写パターン(レジストパターン)のライン端部同士の間隔をVとする。
図24(c)は、図24(a)に示すフォトマスクにおいてL=110nm、2×PW=180nm、d=30nm、Z=270nmとして、種々の2×PWZ(以下、シフター間隔と称する)に対して、転写パターンにおけるライン端部間の寸法(パターン寸法)Vを光強度シミュレーションによって計算した結果を示している。ここで、光強度シミュレーションにおける露光条件は、露光波長λが193nm、開口数NAが0.7である。また、照明条件として、外径の干渉度が0.8、内径の干渉度が0.53となる2/3輪帯照明を用いた。また、半遮光部401の透過率を6%とした。尚、図24(c)においては、シフター間隔2×PWZの増分である2×(PWZ−PW)をλ/NAによって規格して横軸に示すと共に、パターン寸法Vを縦軸に示している。
図24(c)に示すように、2×(PWZ−PW)=0ではパターン寸法Vは160nm程度ある一方、2×(PWZ−PW)が増加するに伴ってパターン寸法Vは減少する。すなわち、転写パターンにおけるライン端部の後退量が減少している。このとき、2×(PWZ−PW)の値が0.1×λ/NAを越えると、パターン寸法Vはほぼ120nmとなって、それ以下には減少しない。また、2×(PWZ−PW)の値が0.03×λ/NAであるときにパターン寸法Vが140nm程度まで減少していることから、2×(PWZ−PW)が0.03×λ/NA程度である場合にも本変形例の効果が得られることが分かる。
従って、本変形例において、転写パターンにおけるライン端の後退を防止するためには、ライン状の開口パターンのライン端部に対して平行に配置された一対の位相シフター同士の間隔(2×PWZ)が、開口パターンのライン中央部に対して平行に配置された一対の位相シフター同士の間隔(2×PW)と比べて所定の寸法以上大きいマスク構成を用いることが望ましい。具体的には、所定の寸法は0.1×λ/NA程度であることが好ましいが、所定の寸法が0.03×λ/NA程度であっても効果は得られる。
すなわち、2×(PWZ−PW)は0.03×λ/NA程度以上であることが好ましい。但し、輪郭強調法の原理を有効に利用するためには、PWZ−L/2は0.5×λ/NA程度以下であることが好ましい。なぜなら、輪郭強調法の原理を得るためには、開口パターンから、光の干渉距離となる0.5×λ/NA以下の距離に位相シフターが配置されることが好ましいので、PWZ−L/2、つまり位相シフターを開口パターンから遠ざける距離は0.5×λ/NA以下であることが好ましいからである。
尚、本変形例において、寸法Z(位相シフター403bの長さ)は、第4の実施形態の寸法Zと同様に、0.03×λ/NA程度以上で且つ0.5×λ/NA程度以下であることが好ましい。
(第5の実施形態)
以下、本発明の第5の実施形態に係るパターン形成方法、具体的には第1〜第4の実施形態(又は各実施形態の変形例)のいずれかに係るフォトマスク(以下、本発明のフォトマスクと称する)を用いたパターン形成方法について図面を参照しながら説明する。
図25(a)〜(d)は第5の実施形態に係るパターン形成方法の各工程を示す断面図である。
まず、図25(a)に示すように、基板500上に、例えば金属膜又は絶縁膜等の被加工膜501を形成した後、図25(b)に示すように、被加工膜501の上に、例えばポジ型のレジスト膜502を形成する。
次に、図25(c)に示すように、本発明のフォトマスク、例えば図2(a)に示す第1の実施形態に係るフォトマスク(より詳しくは図6(c)に示す断面構造を持つフォトマスク)を介して露光光503をレジスト膜502に対して照射する。これにより、該フォトマスクを透過した露光光503によってレジスト膜502が露光される。
尚、図25(c)に示す工程で用いるフォトマスクの透過性基板100上には、半遮光部となる半遮光膜(薄膜)107が形成されており、該半遮光膜107には、露光により転写されるコンタクトパターンと対応する開口部が設けられている。さらに、該開口部の周辺の半遮光膜107には、位相シフター形成領域と対応する他の開口部が設けられていると共に、該他の開口部の下側(図面では上側)の透過性基板100を掘り下げることによって、補助パターンとなる位相シフターが設けられている。
本実施形態では、図25(c)に示す露光工程で、斜入射露光用光源を用いてレジスト膜502に対して露光を行なう。このとき、低い透過率を有する半遮光部が遮光パターンとして用いられているため、レジスト膜502の全体が弱いエネルギーで露光される。しかし、図25(c)に示すように、後の現像工程においてレジストが溶解するに足りる露光エネルギーが照射されるのは、コンタクトパターンつまりフォトマスクの開口部(透光部)と対応するレジスト膜502の潜像部分502aのみである。
次に、図25(d)に示すように、レジスト膜502に対して現像を行なって潜像部分502aを除去することにより、微細なコンタクトパターンを有するレジストパターン504を形成する。
第5の実施形態によると、本発明のフォトマスク(具体的には第1の実施形態に係るフォトマスク)を用いたパターン形成方法であるため、第1の実施形態と同様の効果が得られる。具体的には、レジストが塗布された基板(ウェハ)に対して本発明のフォトマスクを介して斜入射露光を行なう際に、焦点深度及び露光マージンが最大化されるようにフォトマスク上に位相シフターが配置されているため、焦点深度及び露光マージンの高い微細コンタクトパターン形成が可能となる。
尚、第5の実施形態において、第1の実施形態に係るフォトマスクを用いたが、これに代えて、第2〜第4の実施形態のいずれかに係るフォトマスクを用いた場合にも、各実施形態と同様の効果が得られる。
また、第5の実施形態において、ポジ型レジストプロセスを用いたが、これに代えて、ネガ型レジストプロセスを用いても、同様の効果が得られる。
また、第5の実施形態において、図25(c)に示す露光光を照射する工程では斜入射照明法(斜入射露光法)を用いることが好ましい。このようにすると、パターン形成における露光マージン及びフォーカスマージンが向上する。言い換えると、デフォーカス特性に優れた微細パターン形成が可能となる。
また、本明細書において、斜入射露光光源とは、図26(a)に示すような通常露光光源に対して、垂直入射成分が取り除かれた、図26(b)〜(d)に示すような光源のことを意味する。代表的な斜入射露光光源としては、図26(b)に示す輪帯露光光源及び図26(c)に示す四重極露光光源がある。ここで、コンタクトパターンを形成する場合には輪帯露光光源を用いることが好ましい。また、ライン状のスペースパターンを形成する場合には四重極露光光源を用いることが好ましい。さらに、コンタクトパターン及びライン状のスペースパターンの両方を形成する場合には、図26(d)に示す輪帯−四重極混成型露光光源を用いることが望ましい。この輪帯−四重極混成型露光光源の特徴は、光源中心(通常露光光源の中心)を原点としてXY座標を想定したときに、光源中心とXY軸上の光源部分とを取り除くことにより四重極露光光源の特徴を有すると共に、光源の外形として円形を採用することにより輪帯露光光源の特徴をも有することである。
また、輪帯露光光源つまり輪帯照明を用いる場合、その外径が0.7よりも大きい光源を用いることが好ましい。ここで、縮小投影露光システムにおける照明半径を、開口数NAにより規格化した単位を用いて示すものとする。これは、通常照明(通常露光光源)における干渉度に相当する値である。以下、前述の、外径が0.7よりも大きい光源を用いることが好ましい理由について詳細に説明する。
図27(a)〜(e)は、本発明のフォトマスクを用いた露光の特性の、輪帯照明の径に対する依存性をシミュレーションにより求めた結果を説明するための図である。
図27(a)は、前記のシミュレーションに用いたマスクの平面構成を示している。図27(a)に示すように、透過性基板510の上には、十分に広い領域を覆うように半遮光部511が形成されている。また、半遮光部511における、露光によりウェハ上に形成しようとする所望のコンタクトパターンと対応する位置には、透光部512となる開口パターンが設けられている。また、透光部512の周辺には、半遮光部511を挟んで、位相シフター513となる補助パターンが、例えば方形状の透光部512の各辺と平行に設けられている。
ここで、透光部512の寸法Wを130nmとし、位相シフター513の幅dを40nmとし、透光部512を挟む一対の位相シフター513同士の間隔PGを220nmとする。また、シミュレーションにおける露光条件については、露光波長λを193nmとし、開口数NAを0.70とした。すなわち、照明システムにおいて最適なフォトマスクが構成されるように各種設定を行なった。
図27(b)は、図27(a)に示すフォトマスクによる露光に用いる輪帯照明(輪帯露光光源)を示している。図27(b)に示すように、輪帯照明の内径をS1で表し、外径をS2で表すものとする。但し、S1及びS2については、NAによって規格化された値を用いて表すものとする。
図27(c)は、図27(b)に示す輪帯照明を用いて図27(a)に示すフォトマスクに対して露光を行なったときにウェハ上(図27(a)の線分AA’と対応する位置)に形成される光強度分布を示している。図27(c)に示すように、図27(a)に示すフォトマスクの開口部(透光部512)と対応する位置における光強度のピーク値をIoとする。このIoが大きい程、コントラストの高い光学像が形成されることになる。
図27(d)は、図27(b)に示す輪帯照明において(S2−S1)を0.01に固定し且つ(S1+S2)/2を0.4から0.95まで変化させた場合におけるIoの値をシミュレーションにより求めた結果をプロットしたグラフである。図27(d)に示すように、本発明のフォトマスクにおいては、輪帯照明における照明領域(光源領域)が照明系(光源)の中心から離れた位置に分布している程、コントラストが高くなることが分かる。
図27(e)は、図27(b)に示す輪帯照明において(S2−S1)を0.01に固定し且つ(S1+S2)/2を0.4から0.95まで変化させながら、図27(a)に示すフォトマスクを用いて寸法100nmのコンタクトホールパターンを形成した場合における焦点深度(DOF)の値をシミュレーションにより求めた結果をプロットしたグラフである。図27(e)に示すように、本発明のフォトマスクにおいては、輪帯照明における照明領域が照明系の中心から0.7よりも遠く離れた位置に分布しているときに、焦点深度が最大になることが分かる。
すなわち、図27(d)及び(e)の2つのグラフに示す結果から、高いコントラストと高い焦点深度とを同時に得るためには、輪帯照明における照明領域が、照明系の中心から0.7よりも遠く離れた領域を含有していることが好ましいことが分かる。
(第6の実施形態)
以下、本発明の第6の実施形態に係るマスクデータ作成方法について図面を参照しながら説明する。本実施形態は、第1〜第4の実施形態に係るフォトマスク(以下、本発明のフォトマスクと称する)のマスクデータ作成を行なうものでもある。
ここで、具体的なマスクデータ作成方法のフローについての説明を行なう前に、本発明のフォトマスクによって高精度なパターン寸法制御を実現するための条件について説明を行なう。
本発明のフォトマスクにおいては、露光後に形成されるパターンの寸法、つまりCD(Critical Dimension)は、位相シフター(補助パターン)及び透光部の両方に依存して決まる。しかし、透光部又は位相シフターのどちらかが固定されると、実現可能なパターン寸法は限定される。
以下、図28に示すフォトマスクを例として説明を行なう。図28に示すように、透過性基板600の上には、十分に広い領域を覆うように半遮光部601が形成されている。また、半遮光部601における、露光によりウェハ上に形成しようとする所望のコンタクトパターンと対応する位置には、透光部602となる開口パターンが設けられている。また、透光部602の周辺には、半遮光部601を挟んで、位相シフター603となる補助パターンが、例えば方形状の透光部602の各辺と平行に設けられている。ここで、透光部602の幅をWとする。また、本実施形態では、透光部602を囲む位相シフター603のうち、透光部602を挟んで対となる位相シフター603を輪郭シフターと称すると共に、輪郭シフター同士の間隔(内幅)を輪郭シフターの内径PGと定義する。
このようなフォトマスクにおいてPG=PGCに固定されると、該フォトマスクによって実現可能な最大CDが決定する。このフォトマスクにおいて、CDはWに比例して変化する一方、WはPGCよりも大きくならない。従って、W=PGCとなるときのCDが実現可能な最大CDとなる。ここで、輪郭シフターの内径PGが決定した段階で決まるCDの最大値を許容最大CD値と呼ぶ。
また、逆に、前記のフォトマスクにおいてW=WCに固定されると、該フォトマスクによって実現可能な最小CDが決定する。このフォトマスクにおいて、CDはPGに比例して変化する一方、PGはWCよりも小さくならない。従って、PG=WCとなるときのCDが実現可能な最小CDとなる。ここで、Wが決定した段階で決まるCDの最小値を許容最小CD値と呼ぶ。
以上のことから、本実施形態では、第1段階として、所望のCDに対して最大許容CDが所望のCDよりも大きくなるようにPGを決定し、その後、パターン同士の間の正確な近接関係等を考慮して、所望のCDを実現するWを高精度で算出するものとする。これによって、高精度なパターン寸法制御を実現できるマスクデータ作成方法が実現される。
以下、本実施形態のマスクデータ作成方法のフローについて詳細に説明する。
図29は、本実施形態のマスクデータ作成方法の基本フローを示す図である。また、図30(a)〜(c)及び図31(a)、(b)はそれぞれ、本実施形態のマスクデータ作成方法の各工程における具体的なマスクパターン作成例を示す図である。
図30(a)は、本発明のフォトマスクによって形成しようとする所望のパターン、具体的には、本発明のフォトマスクの透光部(開口部)と対応する設計パターンの一例を示している。すなわち、図30(a)に示すパターン701〜703が、本発明のフォトマスクを用いた露光においてレジストを感光させたい領域に相当するパターンである。
尚、本実施形態でパターン形成について説明する場合、特に断らない限り、ポジ型レジストプロセスの使用を前提として説明を行なう。すなわち、現像によりレジスト感光領域が除去され且つレジスト非感光領域がレジストパターンとして残存することを想定して説明を行なう。従って、ポジ型レジストプロセスに代えてネガ型レジストプロセスを使用する場合には、レジスト感光領域がレジストパターンとして残存し且つレジスト非感光領域が除去されること以外は同様に考えればよい。
まず、ステップS1において、図30(a)に示す所望のパターン701〜703を、マスクデータ作成に用いるコンピュータに入力する。このとき、マスクパターンを構成する位相シフター及び半遮光部のそれぞれの透過率を設定しておく。
次に、ステップS2において、露光条件、並びに上記の位相シフター及び半遮光部の透過率等のマスクパラメータに基づき、所望の各パターン701〜703に対して必要となる輪郭シフターの内径を見積もる。ここで、各輪郭シフターの内径は、各パターン(つまりレジストにおける所望の感光領域)同士の近接関係(以下、パターン近接関係と称する)を考慮して各パターン毎に設定されることが望ましい。しかし、輪郭シフターの内径と対応して決まる許容最大CD値が所望のCDよりも大きくなることが必要条件であるので、一例として、所望のCDを一律に拡大することによって輪郭シフターの内径を設定してもよい。但し、前記の拡大量としては、パターン近接関係によって変化するCD値以上の値が必要となる。
次に、ステップS3において、輪郭シフターを生成する。ここで、輪郭シフターの内径PGは、ステップS2で決定されたものである。また、このとき、各輪郭シフターの幅をパターン近接関係に応じて変化させることが望ましいが、パターン形成特性におけるマージンが許容範囲となるのであれば、該幅を一律の寸法に設定してもよい。但し、隣り合うパターンのそれぞれと対応する輪郭シフター(つまり位相シフター)同士の間隔が、マスク加工特性における許容値以下まで小さくなる場合、該各輪郭シフター同士を結合することによって1つの位相シフターを生成してもよい。すなわち、例えば図30(b)に示すように、所望のパターン701〜703に対応して、輪郭シフター711〜714を生成する。ここで、輪郭シフター711〜713はそれぞれ、所望のパターン701〜703と対応する固有の輪郭シフターである。また、輪郭シフター714は、所望のパターン702及び703のそれぞれと対応する輪郭シフター同士を結合した結果として発生したものである。言い換えると、輪郭シフター714は、所望のパターン702及び703の両方に共有される輪郭シフターである。
次に、ステップS4において、本発明のフォトマスクを用いて露光を行なったときに、フォトマスクの開口パターン(透光部)と対応して、所望の寸法を持つパターンが形成されるように、マスクパターンの寸法調整を行なう処理(つまりOPC処理)の準備を行なう。本実施形態では、既にステップS3までに位相シフター(輪郭シフター)が決定されているので、OPC処理では、透光部の寸法のみを調整することにより、所望のCDを実現できるフォトマスクデータの作成を行なう。そのため、例えば図30(c)に示すように、ステップS3で作成した輪郭シフター711〜714の内側に、透光部となる開口パターン721〜723を設定すると共に、該開口パターン721〜723をCD調整パターンに設定する。ここで、所望のパターン701〜703を、目的とするターゲットパターンとして設定しておく。また、輪郭シフター711〜714はCD調整のためには変形されないが、マスク上に存在するパターンとして、さらに、CD予測において参照するための参照パターンとして定義される。
次に、ステップS5において、図31(a)に示すように、フォトマスクのバックグランドに、つまり開口パターン721〜723及び輪郭シフター711〜714の外側に、開口パターン721〜723を基準として露光光を同位相で且つ部分的に透過させる半遮光部750を設定する。尚、輪郭シフター711〜714は、開口パターン721〜723を基準として露光光を反対位相で透過させる位相シフターとして設定される。
次に、ステップS6、ステップS7及びステップS8において、OPC処理(例えばモデルベースOPC処理)を行なう。具体的には、ステップS6において、光学原理及びレジスト現像特性並びに必要であればエッチング特性等を考慮したシミュレーションによって、本発明のフォトマスクにより形成されるレジストパターンの寸法(正確にはレジスト感光領域の寸法)を予測する。続いて、ステップS7において、予測されたパターンの寸法が所望のターゲットパターンの寸法と一致しているかどうかを調べる。一致しない場合、ステップS8において、パターンの予測寸法と所望の寸法との差に基づきCD調整パターンを変形させ、それによってマスクパターンの変形を行なう。
ここで、本実施形態の特徴は、ステップS3で所望のCDを実現できる輪郭シフターを予め決定しておき、ステップS4で設定されたCD調整パターンのみをステップS6〜S8で変化させることにより、所望の寸法を持つパターンを形成できるマスクパターンを実現することである。すなわち、ステップS6〜S8を、パターンの予測寸法と所望の寸法とが一致するまで繰り返すことにより、最終的にステップS9において、所望の寸法を持つパターンを形成できるマスクパターンを出力する。図31(b)は、ステップS9で出力されたマスクパターンの一例を示している。
以上に説明した、第6の実施形態に係るマスクデータ作成方法により作成されたマスクパターンを備えた本発明のフォトマスクを用いて、レジストが塗布されたウェハに対して露光を行なうと、開口パターンを透過した光のコントラストが、開口パターンの周辺に配置された輪郭シフターにより強調される。このため、開口パターンと対応するレジスト領域に微小なスペースパターンを形成できる。
また、第6の実施形態によると、所望のCDを確実に実現できる輪郭強調マスクを作成できるので、微小なスペースパターンを所望の寸法通りに精度良く形成できる。
ところで、本実施形態のステップS2では、輪郭シフターの内径を、所望のCDを一律に拡大することによって設定する場合を例として説明した。しかし、第3の実施形態で説明したように、良好なパターン形成特性を得るためには、パターン近接関係に応じて、開口パターンの中心から位相シフターまでの距離を変化させることが好ましい。具体的には、第3の実施形態では、好ましい位相シフターの配置位置を、開口パターン中心から位相シフターの中心線までの距離として定義した。従って、本実施形態においては、この距離に基づいて輪郭シフターの内径を算出することにより、より微細パターン形成特性に優れたフォトマスクのマスクパターンデータ作成を行なうことができる。
また、本実施形態のステップS3では、各所望のパターンと対応する各輪郭シフターの幅を一律の寸法に設定した。しかし、第2の実施形態で説明したように、パターン近接関係に応じて、輪郭シフターの幅を変化させた方がより好ましい。具体的には、本実施形態においても、第2の実施形態で説明したように、互いに隣り合う輪郭シフター同士の間隔に応じて輪郭シフターつまり位相シフターの幅を変化させることによって、より微細パターン形成特性に優れたフォトマスクのマスクパターンデータ作成を行なうことができる。
尚、第6の実施形態において、輪郭シフターの内径を決定してから位相シフター幅を決定したが、これに代えて、先に位相シフター幅を決定してから輪郭シフターの内径を決定してもよい。
また、第6の実施形態において、透過型のフォトマスクを想定して説明を行なった。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば透過率を反射率と読み替える等して、露光光の透過現象を全て反射現象に置き換えて考えれば、反射型マスクについても本発明は成り立つものである。