JP4015710B2 - 新規擬似糖脂質 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、新規な擬似糖脂質に関し、詳しくは、エンドグリコセラミダーゼの基質、発色基質となり得る擬似糖脂質を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、糖脂質が細胞の分化・増殖を制御する機能分子の1つであるとの認識が定着しつつある。このような認識は、糖脂質組成が空間的及び時間的に細胞の分化とともに変化し、また、外部から加えられた糖脂質によって分化が誘導されるなどの実験結果によるものである。このような研究の中で、従来にないアプローチを可能にしてきたのが、エンドグリコセラミダーゼ(EC 3.2.1.123:以下、「EGCase」ということがある。)の発見である。
【0003】
EGCaseは、糖脂質に作用して、その糖鎖とセラミド間を加水分解する酵素(エンド型糖脂質分解酵素)である。この酵素の糖鎖構造に対する基質特異性については、比較的詳しく観察されているが、セラミド部分に関する基質特異性及び構造要求性については明らかにされていない。これは、▲1▼一般に、同一糖鎖を有する糖脂質分子であっても、セラミド部分の構成成分は、脂肪酸及びスフィンゴシンの違いによって著しい分子多様性を示すこと、▲2▼スフィンゴ糖脂質は高価、かつ、希少であること、及び、▲3▼セラミドの化学修飾が困難であること、によるものである。
【0004】
EGCaseは微生物から発見されたものであり(Ito, M. & Yamagata, T. (1986) J. Biol. Chem., 261(30), 14278-14282)、今までロドコッカス(Rhodococcus sp.)、コリネバクテリウム(Corynebacterium sp.)、環形動物(ヒル、ミミズ)などでは存在が知られているが、哺乳動物からは未だ見出されていない。EGCaseは、主要な中性スフィンゴ糖脂質及びガングリオシドに作用する酵素であって、哺乳動物における有無あるいは局在部位に興味が持たれている。EGCaseが哺乳動物から見出されていない理由としては、哺乳動物のEGCaseが触媒することが可能な糖脂質を基質に用いて探索されていないこと、及び基質が高価、かつ、希少であるため十分な探索がなされていないことが考えられる。したがって、入手が容易なEGCaseに対する基質や、今まで知られている糖脂質とはEGCaseに対する受容性が異なる糖脂質が存在すれば、他の微生物や環形動物以外の生物種におけるEGCaseの検索が可能になることが期待される。なお、本明細書において受容性とは、酵素によって認識され、かつ酵素の作用を受けることを言う。換言すれば、酵素の基質となることを言う。
【0005】
また、従来EGCaseの酵素反応による糖脂質の加水分解産物の検出は、薄層クロマトグラフィーなどにより行われていたが、多数の試料を分析するには適しているとはいえない。このことも、EGCaseの検索を困難にしている理由の1つであると考えられる。EGCaseに対して受容性を有する発色基質があれば、多数の試料を簡便に分析することが可能になると考えられるが、EGCaseに対する発色基質を指向した化合物は報告されていない。
【0006】
また、糖脂質の生合成に関わる糖転移酵素に関する研究は緒についたばかりであり、糖脂質の発現制御機構を調べるために、個々の糖転移酵素に対する阻害剤が求められている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記観点からなされたものであり、エンドグリコセラミダーゼの基質あるいは糖転移酵素の阻害剤となり得る新規な擬似糖脂質、及び加水分解産物の検出が容易な発色基質を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ガングリオシドを中心とする糖脂質の機能解明に関する研究を行ってきたが、その過程において分子生物学的手法とは異なるアプローチの必要性を認めるに至り、生物学的機能を模倣しうる人工糖脂質の開発を目指してきた。また、そのような人工糖脂質を安価に且つ大量に調製することができるならば、糖鎖生物学、特に糖脂質研究に与える貢献は大きく、多方面への応用が期待できるものである。本発明の掲げる産業上の利用分野もその範疇のひとつである。
【0009】
従来、EGCaseの活性測定には、高価且つ希少な天然由来のスフィンゴ糖脂質が用いられてきた。また、その基質特異性を探る研究においては、両親媒性グリコシドとしては最も簡単な構造を有するn−アルキルグリコシドが主に用いられてきた。それらは、非常に低いもののEGCaseに対し受容性を示したが、合成基質として実用的なものとはいえず、合成基質は皆無であるといえる状態であった。そこで本発明者らは、比較的簡単な構造でありながらも優れた人工基質を大量且つ安価に開発できないものかと考え、本発明に至った。ラクトシルセラミドがほとんど全ての糖脂質の中間体であること、また、EGCase基質としては最小単位の糖鎖構造であることから、ラクトシルセラミド類縁体を指向した人工糖脂質を開発することとした。具体的には、ラクトシルセラミド中に見られるN−アシル基構造が、スフィンゴ糖脂質としての機能発現、他分子との相互作用、物性に重要であろうとの考えから、両親媒性糖脂質のアグリコンにN−アシル構造を導入した新規な擬似糖脂質を開発した。本発明者らの研究から、それら新規擬似糖脂質がEGCaseの優れた基質となることが明らかとなり、また上記概念を発展させて開発した発色基質も高い親和性を有した優れた基質となることが明らかとなり、本発明に至った。当該化合物の高い有用性により、従来煩雑な薄層クロマトグラフィーに依っていた活性検出に簡便な分光学的手法を導入することが可能となり、活性の検出法についてもその問題点を解決することを可能とした。
【0010】
また最近、糖脂質の細胞内輸送を調べるために、セラミド部分を改変して蛍光色素を結合させたセラミドや糖脂質が使われるようになってきた。
細胞に取り込まれたこれらの物質は、そのセラミド部分の構造により細胞内で運ばれる場所が異なることがわかってきた。この事実と、ラクトシルセラミドが殆どの糖脂質の鍵物質であることに発明者らは着目して、脂溶性部分を改変したグルコシドを合成することに想到した。細胞に取り込まれ、ゴルジをターゲットとする最適な構造の疎水性鎖をラクトースに付けることができれば、ゴルジで糖脂質転移酵素の受容体として機能することが考えられる。ゴルジで糖脂質転移酵素の受容体として働いても、その疎水性の構造により、その先輸送されるためのベシクルに安定に包まれないかもしれないし、あるいは無事に細胞膜まで運ばれてもそこで膜上に安定に発現できないかもしれない。つまり、それまでの糖脂質の発現が狂うことが予想されるので、糖脂質生合成を乱すことで、上記のような物質は糖脂質の機能を調べる試薬として使うことができることが期待できる。一方で、ゴルジに運ぶのに最適化された構造を持つラクトシドがそこで糖転移酵素のよい基質となるならば、ラクトシドの水酸基そのものか、あるいはその近傍を修飾することにより、特定の糖転移酵素の受容体として働くことを阻害する阻害剤となる可能性もある。
【0011】
上記のような観点から、本発明者らは擬似糖脂質に関する研究を行い、その結果、エンドグリコセラミダーゼの基質となり得る新規な擬似糖脂質を得ることに成功し、本発明に至った。
【0012】
すなわち本発明は、下記一般式(1)で表される擬似糖脂質である。
【0013】
【化13】
R1−Z−R2−NHCO−R3 ・・・・ (1)
但し、式(1)中、R1は単糖数2〜10の糖残基を、Zは酸素原子または硫黄原子を、R2は低級アルキレン基または置換されていてもよいフェニレン基をそれぞれ示し、また、R3は−(CH2)n−CH3(nは2〜28の整数を表す。)を表す。
【0014】
また本発明は、上記一般式(1)で表される擬似糖脂質をエンドグリコセラミダーゼに作用させ、前記擬似糖脂質の分解の程度を測定するエンドグリコセラミダーゼの活性の測定法を提供する。
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
<1>本発明の擬似糖脂質
本発明の擬似糖脂質は、上記一般式(1)で表される化合物である。ここで式(1)中のR1は、単糖数2〜10の糖残基を表すが、本発明においてR1は、下記一般式(3)から一般式(9)で表される糖残基から選ばれることが好ましい。
【0016】
【化14】
Galβ1−4Glcβ1− ・・・・(3)
但し、式(3)中、Galはガラクトース残基を、Glcはグルコース残基を表す。
【0017】
【化15】
R4−Galβ1−4Glcβ1− ・・・・(4)
但し、式(4)中、R4は単糖数1〜8の糖残基を、Galはガラクトース残基を、Glcはグルコース残基を表す。なお、この場合は、ガングリオ系列、ラクト・ネオラクト系列、グロボ系列のそれぞれ糖残基、フコース含有糖残基がより好ましい。
【0018】
【化16】
Manβ1−4Glcβ1− ・・・・(5)
但し、式(5)中、Manはマンノース残基を、Glcはグルコース残基を表す。
【0019】
【化17】
R4−Manβ1−4Glcβ1− ・・・・(6)
但し、式(6)中、R4は単糖数1〜8の糖残基を、Manはマンノース残基を、Glcはグルコース残基を表す。なお、この場合は、後述の化25で示されるマンノース含有糖残基がより好ましい。
【0020】
【化18】
Galα1−4Galβ1− ・・・・(7)
但し、式(7)中、Galはガラクトース残基を表す。
【0021】
【化19】
R4−Galα1−4Galβ1− ・・・・(8)
但し、式(8)中、R4は単糖数1〜8の糖残基を、Galはガラクトース残基を表す。なお、この場合はガラ系列の糖残基がより好ましい。
【0022】
【化20】
R4−Galβ1−6Galβ1− ・・・・(9)
但し、式(9)中、R4は単糖数1〜8の糖残基を、Galはガラクトース残基を表す。なお、この場合はガラ系列の糖残基がより好ましい。
【0023】
また、上記一般式(4)で表される糖残基のうちより好ましいガングリオ系列、ラクト・ネオラクト系列、グロボ系列の糖残基、フコース含有糖残基の具体例(但し、ラクト・ネオラクト系列の糖残基の具体例には一般式(3)の糖残基を含む)、及び一般式(5)と(6)で表されるマンノース含有糖脂質の糖残基のうちより好ましい糖残基の具体例、並びに一般式(8)、(9)で表される糖残基のうちより好ましいガラ系列の糖残基の具体例(但し、ガラ系列の糖残基の具体例には一般式(7)の糖残基を含む)を挙げると下記式の通りである。なお、下記式中で、NeuAcはアセチルノイラミン酸残基を、GalNAcはN−アセチルガラクトサミン残基を、Fucはフコース残基を表し、Gal、Glc及びManは上記と同じである。
【0024】
1)ガングリオ系列の糖残基
【0025】
【化21】
NeuAcα2-8NeuAcα2-3Galβ1-3GalNAcβ1-4(NeuAcα2-3)Galβ1-4Glcβ1-
NeuAcα2-3Galβ1-3GalNAcβ1-4(NeuAcα2-8NeuAcα2-3)Galβ1-4Glcβ1-
NeuAcα2-3Galβ1-3GalNAcβ1-4(NeuAcα2-3)Galβ1-4Glcβ1-
Galβ1-3GalNAcβ1-4(NeuAcα2-3)Galβ1-4Glcβ1-
Galβ1-3GalNAcβ1-4Galβ1-4Glcβ1-
GalNAcβ1-4Galβ1-4Glcβ1-
GalNAcβ1-4(NeuAcα2-3)Galβ1-4Glcβ1-
NeuAcα2-3Galβ1-4Glcβ1-
2)ラクト・ネオラクト系列の糖残基
【0026】
【化22】
Galβ1-4Glcβ1-
NeuAcα2-3Galβ1-4GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glcβ1-
GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glcβ1-
Galβ1-4GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glcβ1-
Galβ1-3GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glcβ1-
NeuAcα2-3Galβ1-4GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glcβ1-
3)グロボ系列の糖残基
【0027】
【化23】
Galα1-4Galβ1-4Glcβ1-
Galα1-3Galβ1-4Glcβ1-
GalNAcβ1-3Galα1-4Galβ1-4Glcβ1-
GalNAcβ1-3Galα1-3Galβ1-4Glcβ1-
GalNAcα1-3GalNAcβ1-3Galα1-4Galβ1-4Glcβ1-
Galα1-3Galα1-3Galα1-4Galβ1-4Glcβ1-
Galβ1-3GalNAcβ1-3Galα1-4Galβ1-4Glcβ1-
4)フコース含有糖残基
【0028】
【化24】
Fucα1-3GalNAcα1-3(Fucα1-2)Galβ1-4Glcβ1-
5)マンノース含有糖残基
【0029】
【化25】
GlcNAcβ1-2Manα1-3Manβ1-4Glcβ1-
Manα1-3Manβ1-4Glcβ1-
Manβ1-4Glcβ1-
6)ガラ系列の糖残基
【0030】
【化26】
Galβ1-6Galβ1-6Galβ1-
Galα1-4Galβ1-
GalNAcα1-3GalNAcβ1-3Galα1-4Galβ1-
また、一般式(1)においてR2は、低級アルキレン基または置換されていてもよいフェニレン基等を表すが、本発明においてR2は、炭素数2〜6の低級アルキレン基、例えば−CH2−CH2−で示されるエチレン基または下記式(2)で表される基であることが好ましい。また、R2は擬似糖脂質がEGCaseに対する受容性に大きな影響を及ぼさない限り、他の発色性の基、例えば4−メチルウンベリフェリル誘導体基等に置換することが可能である。
【0031】
【化27】
【0032】
また、上記一般式(1)において、R3は−(CH2)n−CH3(nは2〜28の整数を表す。)を表すが、nは6〜18の整数がさらに好ましく、6〜14の整数が特に好ましい。また、擬似糖脂質がEGCaseとの親和性に大きな影響を及ぼさない限り、R3は置換基や二重結合を有していても差し支えない。
【0033】
更に、本発明の一般式(1)で表される擬似糖脂質は、下記一般式(10)で表されるN−アシル−アミノエチル−ラクトシド(以下、「アルキルアミドラクトシド」ともいう)、一般式(11)で表されるN−アシル−アミノエチル−チオラクトシド(以下、「アルキルアミドチオラクトシド」ともいう)及び一般式(12)で表される2−N−アシル−アミノ−4−ニトロフェニル−ラクトシドが特に好ましい。
【0034】
【化28】
【0035】
但し、式(10)中、kは6〜18の整数を表す。
【0036】
【化29】
【0037】
但し、式(11)中、kは6〜18の整数を表す。
【0038】
【化30】
【0039】
但し、式(12)中、kは6〜18の整数を表す。
上記のような擬似糖脂質は、本発明によりはじめて得られたものであり、EGCaseに対する基質となる。これらの擬似糖脂質は、各種酵素に対する受容性が従来知られている合成糖脂質であるアルキルラクトシドと異なるので、新規なEGCaseの検索に使用できることが期待できる。
【0040】
上記擬似糖脂質の中で、N−アシル−アミノエチル−チオラクトシドは、EGCaseの種類によっては基質として使用できる一方、EGCaseの種類によっては阻害剤として使用できることも期待される。
【0041】
さらに、2−N−アシル−アミノ−4−ニトロフェニル−ラクトシドは、加水分解産物の検出を分光学的に簡便に行うことができる発色基質として使用することができる。
【0042】
<2>本発明の擬似糖脂質の製造方法
上記のような本発明の擬似糖脂質は、一般的なグリコシドの製造方法、例えば、グリコシドを形成する糖残基とアグリコンとなる化合物を縮合反応させる方法等によって、製造することができる。この方法で本発明の擬似糖脂質を製造するには、アグリコンとなる化合物として上記一般式(1)のアグリコン部分に示されるような、分子中にアミド結合を有する化合物(HZ−R2−NHCO−R3)を用いればよい。
【0043】
また、擬似糖脂質は、既知の方法でβ体又はα体を選択的に製造することや、β体からα体に変換することや、β体及びα体の混合物を既知の方法で分別することが可能である(第4版 実験化学講座26 有機合成VIII, 丸善, p267〜330、Can.J.Chem.57(1979), p2085)。
【0044】
本発明の擬似糖脂質を製造するには、あるいは、はじめに糖とアミノ基を有するアグリコンを縮合反応させてアミノ基を有するグリコシド(R1−Z−R2−NH2)を製造し、このグリコシドのアミノ基に炭素数4〜30の直鎖脂肪酸(R3−COOH)またはその反応性誘導体を酸アミド結合させる方法をとってもよい。
【0045】
これらの製造方法においては、必要に応じて糖の水酸基をアセチル基等で保護した後、上記糖とアグリコンを縮合反応させ、必要に応じて更にグリコシドのアグリコンを酸アミド化合物とした後に、糖部分の脱保護を行い水酸基に戻すことが行われる。
【0046】
本発明の擬似糖脂質の製造方法を具体的に説明すると、一般式(1)においてR2が低級アルキレン基、Zが酸素原子である擬似糖脂質すなわちN−アシル−アミノアルキル−O−グリコシドを製造する場合には、まず、糖の水酸基をアセチル基等で保護した後、これに9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)アミノアルキルアルコール(アルキル部分は炭素数2〜6)をトリメチルシリルトリフラート(TMSTf)等を触媒として縮合反応させてN−Fmoc−アミノアルキル−O−アセチルグリコシドとする。次いで、これを脱Fmoc化し、得られたアミノアルキル−O−アセチルグリコシドに炭素数4〜30の直鎖脂肪酸の酸ハロゲン化物をアミド結合させてN−アシル−アミノアルキル−O−アセチルグリコシド(アシル部分の炭素数は4〜30)とし、最後にこれにナトリウムアルコキシド等を加えて脱アセチル化すれば、目的のN−アシル−アミノアルキル−O−グリコシドが得られる。
【0047】
同様に一般式(1)においてR2が低級アルキレン基、Zが硫黄原子である擬似糖脂質すなわちN−アシル−アミノアルキル−チオグリコシドを製造する場合には、上記9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)アミノアルキルアルコールの代わりに9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)アミノアルキルチオールを用いればよい。
【0048】
また、一般式(1)においてR2が置換されていてもよいフェニレン基、Zが酸素原子である擬似糖脂質すなわちN−アシル−アミノフェニル−O−グリコシド(フェニル部分はニトロ基等で置換されていてもよい。以下、同様)を製造する場合には、まず、糖の水酸基をアセチル基等で保護した後、更に糖の1位に臭素を導入する。これに、N−アシル−アミノフェノール(アシル部分の炭素数は4〜30)のナトリウム塩を反応させ、N−アシル−アミノフェニル−O−アセチルグリコシドとし、最後にこれにナトリウムアルコキシド等を加えて脱アセチル化すれば、目的のN−アシル−アミノフェニル−O−グリコシドが得られる。
【0049】
同様に、一般式(1)においてR2が置換されていてもよいフェニレン基、Zが硫黄原子である擬似糖脂質すなわちN−アシル−アミノフェニル−チオグリコシド(フェニル部分はニトロ基等で置換されていてもよい。以下、同様)を製造する場合には、上記N−アシル−アミノフェノールをN−アシル−アミノベンゼンチオールに代えて反応を行えばよい。
【0050】
更に、本発明の擬似糖脂質のより具体的な製造方法を、上記一般式(10)、(11)及び(12)で表される擬似糖脂質を例にして以下に説明する。
【0051】
〔1〕N−アシル−アミノエチル−O−ラクトシドの製造
N−アシル−アミノエチル−O−ラクトシドの製造方法を化31に基づいて説明する。
【0052】
【化31】
【0053】
但し、化31中Rは、−(CH2)k−CH3(kは6〜18の整数)を表す。
まず、アミノエタノール(化合物(13))と9−フルオレニルメチルスクシンイミジルカーボネート(Fmoc−OSu)をジクロロメタン中で反応させ(反応i)9−フルオレニルメトキシカルボニルアミノエタノール(化合物(14))を得る。
【0054】
次に、無水酢酸にラクトースと酢酸カリウムの混合物を加えて反応させて得られたアセチルラクトース(化合物(15))と上記化合物(14)をジクロロメタンに溶解し必要に応じてモレキュラーシーブスを加え密栓して室温で一夜程度撹拌し、これにトリメチルシリルトリフラート(TMSTf)を加えて室温で、2〜3時間撹拌する(反応ii)。得られた反応液を冷飽和炭酸水素ナトリウム水溶液中に注ぎ入れ、更にこれにクロロホルムを加えて反応生成物であるN−(Fmoc)−アミノエチル−ヘプタ−O−アセチル−O−β−ラクトシド(化合物(16))を抽出後、炭酸水素ナトリウム水溶液、蒸留水で洗浄する。クロロホルム層を取り出し減圧濃縮して上記化合物(16)を含む黄色シロップを得る。
【0055】
この黄色シロップをモルホリンに溶かし、室温で20〜30分程度撹拌して黄色シロップ中の化合物(16)の脱Fmoc化を行う(反応iii)。その後、この溶液にトルエンを加え更にこれを減圧濃縮した後、反応生成物であるアミノエチル−ヘプタ−O−アセチル−O−β−ラクトシド(化合物(17))をクロロホルム中に抽出し、これを水洗した後濃縮して化合物(17)を含有する淡黄色シロップを得る。
【0056】
更に上記淡黄色シロップをピリジンに溶解させ、炭素数が8〜20の直鎖脂肪酸の酸塩化物のいずれか1種を加えて室温で一晩撹拌して反応させる(反応iv)。反応液を冷水に注ぎ込みクロロホルムで、N−アシル−アミノエチル−ヘプタ−O−アセチル−O−β−ラクトシド(化合物(18))を抽出し、これを冷希硫酸、蒸留水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄する。クロロホルム層を脱水処理した後、これを減圧濃縮して化合物(18)を含むシロップを得る。
【0057】
このシロップにナトリウムメトキシドを加え、シロップ中の化合物(18)を脱アセチル化して(反応V)、N−アシル−アミノエチル−O−β−ラクトシド(化合物(19))粗製物を得る。
【0058】
この様にして得られるN−アシル−アミノエチル−O−β−ラクトシドの精製は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール:水=60:25:4)等を用いて通常の方法で行うことができる。
【0059】
〔2〕N−アシル−アミノエチル−チオラクトシドの製造
N−アシル−アミノエチル−チオラクトシドは、上記N−アシル−アミノエチル−O−ラクトシドの製造方法において、アミノエタノールの代わりにシステアミン(HS−(CH2)2−NH2)を用いた以外は全く同様にして製造することができる。
【0060】
〔3〕2−N−アシル−アミノ−4−ニトロフェニル−O−ラクトシドの製造
上記と同様にして得られたアセチルラクトースを酢酸中に溶かし、この溶液を4〜8℃の水浴中に入れ撹拌しながら、これに臭化水素酢酸溶液をゆっくり滴下し、これを3時間撹拌して十分に反応させた後、得られた反応液を冷水中に注ぎ込み、更にこれにクロロホルムを加えてアセトブロモラクトースを抽出する。クロロホルム層を取り出し、これを飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および蒸留水で洗浄した後、これを減圧濃縮してクロロホルムを除去して、シロップ状のアセトブロモラクトース粗製物を得る。
【0061】
2−N−アシル−アミノ−4−ニトロフェノール(HNP)をベンゼンに懸濁し、これにナトリウムメトキシドメタノール溶液を加えて室温で2〜3時間撹拌した後、約4℃で一晩保存する。その後、析出したHNPナトリウム塩の結晶を濾過により取り出し、これを冷メタノールで洗浄した後乾燥する。このHNPナトリウム塩をアセトンに溶かし、この溶液に、上記で得られたアセトブロモラクトースを含むアセトン溶液を加えて1〜3時間撹拌した後、6〜8時間の煮沸還流を行う。得られた反応液に1N塩酸を加えて酸性にした後、濾過により不溶部を除去し得られた濾液を濃縮してシロップを得る。このシロップに含まれる2−N−アシル−アミノ−4−ニトロフェニル−ヘプタ−O−アセチル−O−β−ラクトシドをナトリウムメトキシドを用いて脱アセチル化した後、エタノールにより2−N−アシル−アミノ−4−ニトロフェニル−O−β−ラクトシドを結晶化する。
【0062】
<3>本発明のエンドグリコセラミダーゼの活性測定法
上記本発明の擬似糖脂質を用いることにより、エンドグリコセラミダーゼ活性の測定が可能であり、酵素の作用及び基質特異性を調べることができる。エンドグリコセラミダーゼ活性の測定に用いる擬似糖脂質としては、アルキルアミドグリコシドや発色基質が導入されたアルキルアミドグリコシドが特に好ましい。アルキルアミドグリコシドを用いてのエンドグリコセラミダーゼ活性の測定は、例えば次のような方法で行うことができるが、これに限定されるものではない。
【0063】
まず、アルキルアミドグリコシドとエンドグリコセラミダーゼもしくは該酵素を含む試料とを混合し、エンドグリコセラミダーゼが作用する温度、pHでインキュベーションを行う。インキュベーションの温度、pH等の条件は、エンドグリコセラミダーゼの由来や種類等により当業者が適宜選択しうるものであるが、温度としては37℃付近、pHとしては約5.0〜6.5を例示することができる。インキュベーションは酢酸緩衝液等の緩衝液中で行うことが好ましく、また界面活性剤を共存させることが好ましい。界面活性剤の種類や、その濃度は、当業者が適宜選択しうるものであるが、例えば、0.4%程度のTriton X−100や2.5μg/μL程度のタウロデオキシコール酸ナトリウム等を例示することができる。インキュベーションの時間は、インキュベーションの条件により変更しうるが、30分〜16時間を例示することができる。
【0064】
インキュベーション後の混合溶液を、例えば薄層クロマトグラフィー等に付し、適当な展開溶媒により展開し、オルシノール−硫酸等の糖を発色させる試薬で糖を視覚化することにより検出する。エンドグリコセラミダーゼによりアルキルアミドグリコシドが切断されると(すなわちエンドグリコセラミダーゼがアルキルアミドグリコシドに対して活性を有すると)、糖のクロマトグラフィー上の位置が、切断されていないアルキルアミドグリコシドに比較して異なるので、これによりエンドグリコセラミダーゼ活性を測定することができる。なお、必要に応じてクロマトスキャナーを用いることによりエンドグリコセラミダーゼ活性の定量を行うことができる。
【0065】
また、p−ニトロフェノール等の発色基質を導入したアルキルアミドグリコシドを用いることにより、より簡単にエンドグリコセラミダーゼ活性の測定を行うことができる。上記アルキルアミドグリコシドとエンドグリコセラミダーゼとをインキュベーションする。酵素反応を、0.1Mグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH10.5)等により停止させ、エタノール等により糖を不溶化し、遠心により糖を沈殿させる。これより、上清には、エンドグリコセラミダーゼにより切断された発色基質を含むN−アシル鎖誘導体が含まれる。この上清の発色を分光光度計等により検出することにより、エンドグリコセラミダーゼ活性の定量的な測定が可能である。なお、分光光度計の測定波長は、用いた発色基質により異なるが、例えば、p−ニトロフェノールを発色基質として用いた場合、410nmの吸光度を測定すればよい。
【0066】
【実施例】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。まずはじめに、EGCaseの基質としてのコントロールに用いたn−アルキルラクトシド及びn−オクチルチオラクトシドについて製造例を説明する。
【0067】
【製造例1】
n−アルキルラクトシド
(1)アセチル−D−ラクトースの合成
200mLの無水酢酸にD−ラクトース34gと酢酸カリウム16gの混合物を加え、油浴上140℃に加熱し撹拌しながら1時間反応させた。この時、前記混合物は130℃前後で溶解した。1時間の反応後、反応液を油浴から取り出し冷却してから、反応液の容量が2/3になるまで減圧濃縮を行った。濃縮された反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を中和するまで加え、これに更にクロロホルム400mLを加えてアセチル−D−ラクトースを抽出した。溶液全体を水洗した後、クロロホルム層を取り出してこれを減圧濃縮し、得られた濃縮物を熱エタノールにより結晶化してアセチル−D−ラクトースを得た。収率は84%であった。
【0068】
(2)n−アルキルラクトシドの合成
上記で得られたアセチル−D−ラクトース3.4g(5mmol)をモレキュラーシーブス4Aを含むジクロロメタン40mLに溶かし100mL共栓三角フラスコ中に密閉して1時間撹拌した。これに四塩化スズ0.6mLを加え、更に20mLのジクロロメタンに1−ドデカノール(炭素数12の脂肪族直鎖アルコール)1.35mLを添加した溶液を加え、密閉して室温で5時間撹拌した。その後、反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液中にゆっくり注ぎ入れ、更にこれを水洗した後、有機層のみを取り出して減圧濃縮した。これにより得られたn−ドデシル−ヘプタ−O−アセチル−D−ラクトシドのα体とβ体を乾式カラムクロマトグラフィーによって分離精製した。
【0069】
得られたn−ドデシル−ヘプタ−O−アセチル−D−ラクトシドのα体とβ体を別々にメタノールに懸濁あるいは溶解させ、それぞれの懸濁液(又は溶液)にナトリウムメトキシドを加えて10時間撹拌して、上記化合物を脱アセチル化した。次いで、これらの懸濁液(又は溶液)を撹拌しながら、これに陽イオン交換樹脂ダウエックス(Dowex)50W−X2(H+)を加え、濾過後、それぞれの濾液を減圧濃縮してn−ドデシル−D−ラクトシドのα体及びβ体を得た。
【0070】
また、上記1−ドデカノールの代わりに炭素数4の脂肪族直鎖アルコールを用いた以外は上記と同様の反応を行い、更に、炭素数6、8、10、14、16、18の脂肪族直鎖アルコールについても同様の反応を行い、それぞれのアルコールに対応するn−アルキル−D−ラクトシドのα体、β体をそれぞれ製造した。
【0071】
【製造例2】
n−オクチルチオラクトシド
上記製造例1において、1−ドデカノールを用いる代わりに、n−オクタンチオールを用いた以外は、上記製造例1と同様の反応を行い、n−オクチル−D−チオラクトシドのα体、β体をそれぞれ得た。
【0072】
【実施例1】
N−アシル−アミノエチル−O−β−D−ラクトシド
(1)9−フルオレニルメトキシカルボニルアミノエタノール(Fmoc−AE)の合成
アミノエタノール2mLと9−フルオレニルメチルスクシンイミジルカーボネート(Fmoc−OSu)10gをジクロロメタン100mL中で等モルのトリエチルアミン存在下で室温で2時間反応させた後、反応液を0.1N塩酸水溶液、蒸留水で順次洗浄した。有機層を脱水後、濃縮し目的物を結晶化させて9−フルオレニルメトキシカルボニルアミノエタノールを得た。
【0073】
(2)N−アシル−アミノエチル−O−β−D−ラクトシドの合成
上記製造例1と同様にして得られたアセチル−D−ラクトース6.8g(10mmol)と上記9−フルオレニルメトキシカルボニルアミノエタノール2.83g(10mmol)をジクロロメタン200mLに溶解し、モレキュラーシーブス4Aを約6g加え密栓して一夜室温で撹拌した。更に、これにトリメチルシリルトリフラート(TMSTf)1.8mL(10mmol)を加え3時間室温で撹拌した。得られた反応液を冷飽和炭酸水素ナトリウム水溶液中に注ぎ入れ、これにクロロホルムを加えて反応物を抽出後、炭酸水素ナトリウム水溶液、蒸留水で洗浄した。クロロホルム層を取り出し、これを減圧濃縮して、N−(Fmoc)−アミノエチル−ヘプタ−O−アセチル−O−β−D−ラクトシドを含む黄色シロップを得た。
【0074】
この黄色シロップを精製することなくモルホリン20mLに溶かし、室温で20分間撹拌して黄色シロップ中のN−(Fmoc)−アミノエチル−ヘプタ−O−アセチル−O−β−D−ラクトシドの脱Fmoc化を行った。その後、この溶液にトルエン100mLを加え、これを減圧濃縮後、アミノエチル−ヘプタ−O−アセチル−O−β−D−ラクトシドをクロロホルム中に抽出し、これを水洗後濃縮して淡黄色シロップを得た。この淡黄色シロップをピリジン20mLに溶解させ、これにラウロイルクロリド(炭素数が12の直鎖脂肪酸の酸塩化物)10mmolを加えて一夜室温で撹拌して反応させた。反応液を冷水に注ぎ込み、クロロホルムでN−ラウロイル−アミノエチル−ヘプタ−O−アセチル−O−β−D−ラクトシドを抽出し、これを冷希硫酸(0.2M)、蒸留水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。クロロホルム層を脱水処理した後、これを減圧濃縮し上記化合物を含むシロップを得た。このシロップにナトリウムメトキシドを加え、シロップ中のN−ラウロイル−アミノエチル−ヘプタ−O−アセチル−O−β−D−ラクトシドを脱アセチル化した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール:水=60:25:4)で精製して、N−ラウロイル−アミノエチル−O−β−D−ラクトシドを得た。
【0075】
また、上記ラウロイルクロリドの代わりに、炭素数が8の直鎖脂肪酸の酸塩化物を用いた以外は上記と同様の反応を行い、更に、炭素数16、20の直鎖脂肪酸の酸塩化物についても同様の反応を行い、それぞれの直鎖脂肪酸の酸塩化物に対応するN−アシル−アミノエチル−O−β−D−ラクトシドをそれぞれ製造した。
【0076】
上記で得られた4種類のN−アシル−アミノエチル−O−β−D−ラクトシドについて元素分析を行った。結果を以下に示す。
【0077】
(i)N−オクタノイル−アミノエチル−O−β−D−ラクトシド(炭素数が8の直鎖脂肪酸の酸塩化物を反応させて得られた化合物)
【0078】
【表1】
表1
【0079】
(ii)N−ラウロイル−アミノエチル−O−β−D−ラクトシド(炭素数が12の直鎖脂肪酸の酸塩化物を反応させて得られた化合物)
【0080】
【表2】
表2
【0081】
(iii)N−ヘキサデカノイル−アミノエチル−O−β−D−ラクトシド(炭素数が16の直鎖脂肪酸の酸塩化物を反応させて得られた化合物)
【0082】
【表3】
表3
【0083】
(iv)N−エイコサノイル−アミノエチル−O−β−D−ラクトシド(炭素数が20の直鎖脂肪酸の酸塩化物を反応させて得られた化合物)
【0084】
【表4】
表4
【0085】
また、N−ヘキサデカノイル−アミノエチル−O−β−D−ラクトシドについては、1H−NMRの測定も行った。結果を以下に示す。
δ(270MHz、60℃、DMSO−d6:D2O=95:5)
0.89(t,3H,J 6.2Hz,CH2CH3),
1.22−1.33(m,24H,(CH2)12CH3),
1.52(m,2H,CH2CH2CONH),
2.10(t,2H,J 7.3Hz,CH2CH2CONH),
4.25(d,1H,J 7.6Hz,H−1),
4.25(d,1H,J 7.6Hz,H−1')
【0086】
【実施例2】
N−パルミトイル−アミノエチル−β−D−チオラクトシド上記実施例1においてアミノエタノールの代わりにシステアミンを用い、更にラウロイルクロリド(炭素数が12の直鎖脂肪酸の酸塩化物)10mmolの代わりにパルミトイルクロリド(炭素数が16の直鎖脂肪酸の酸塩化物)10mmolを用いた以外は、上記実施例1と同様に反応を行い、N−パルミトイル−アミノエチル−β−D−チオラクトシドを得た。
【0087】
【実施例3】
2−N−ヘキサデカノイル−アミノ−4−ニトロフェニル−O−β−D−ラクトシド
(1)アセトブロモラクトースの合成
上記製造例1と同様にして得られたアセチル−D−ラクトース3.4gを酢酸50mL中に溶かし、この溶液を20℃の水浴中に入れ撹拌しながら、これに25%臭化水素酢酸溶液3.5mLをゆっくり滴下した。その後これを3時間撹拌して十分に反応させた後、得られた反応液を冷水中に注ぎ込み、更にこれにクロロホルムを加えてアセトブロモ−D−ラクトースを抽出した。クロロホルム層を取り出し、これを飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および蒸留水で洗浄した後、これを減圧濃縮してクロロホルムを除去して、シロップ状のアセトブロモ−D−ラクトース粗製物を得た。
【0088】
(2)2−N−ヘキサデカノイル−アミノ−4−ニトロフェニル−O−β−D−ラクトシドの合成
2−N−ヘキサデカノイル−アミノ−4−ニトロフェノール(HNP)2.0gをベンゼン50mLに懸濁し、これに0.5Mナトリウムメトキシドメタノール溶液を10mL加えて室温で2時間撹拌した後、4℃で一夜保存した。その後、析出したHNPナトリウム塩の結晶を濾過により取り出し、これを冷メタノールで洗浄した後乾燥した。このHNPナトリウム塩1.24gをアセトンに溶かし、この溶液に、上記(1)で得られたアセトブロモラクトース約3mmolを含むアセトン溶液を加えて1時間撹拌した後、6時間の煮沸還流を行った。得られた反応液に1N塩酸を加えて酸性にした後、濾過により不溶部を除去し得られた濾液を濃縮してシロップを得た。このシロップに含まれる2−N−ヘキサデカノイル−アミノ−4−ニトロフェニル−ヘプタ−O−アセチル−O−β−D−ラクトシドをナトリウムメトキシドを用いて脱アセチル化した後、エタノールにより2−N−ヘキサデカノイル−アミノ−4−ニトロフェニル−O−β−D−ラクトシドを結晶化して得た。
【0089】
上記で得られた2−N−ヘキサデカノイル−アミノ−4−ニトロフェニル−O−β−D−ラクトシドについて、元素分析及び1H−NMR測定を行った。結果を以下に示す。
【0090】
【表5】
表5
【0091】
(NMRデータ)
δ(270MHz、60℃、DMSO−d6:D2O=95:5)
0.89(t,3H,J 6.6Hz,CH2CH3),
1.22−1.40(m,24H,(CH2)12CH3),
1.66(m,2H,CH2CH2CONH),
2.48(t,2H,J 7.3Hz,CH2CH2CONH),
7.42(d,1H,J 9.2Hz,フェニル),
7.98(dd,1H,J 9.2Hz,J 2.6Hz,フェニル),
9.09(d,1H,J 2.6Hz,フェニル),
4.32(d,1H,J 7.0Hz,H−1'),
5.08(d,1H,J 7.3Hz,H−1)
【0092】
【実施例4】
擬似糖脂質のEGCaseに対する基質としての評価
上記実施例で得られた擬似糖脂質のEGCaseに対する基質としての評価を行った。EGCaseとしては、ロドコッカス(Rhodococcus sp.)由来のEGCase(生化学工業(株)製)、コリネバクテリウム(Corynebacterium sp.)由来のEGCase(Eur.J.Biochem.205(1992),p729-735,京都大学農学部山本憲二助教授より恵与)、及びヒル(leech)由来のEGCase(ベーリンガーマンハイム社製)を用いた。
【0093】
ロドコッカス由来のEGCaseの酵素反応は50mM酢酸緩衝液(pH5.0、0.4% Triton X−100を含む)中で、コリネバクテリウム(Corynebacterium sp.)由来のEGCaseの酵素反応は10mM酢酸緩衝液(pH6.5、0.1% Triton X−100を含む)中で、及びヒル(leech)由来のEGCaseの酵素反応は、50mM酢酸緩衝液(pH5.0、2.5μg/μlタウロデオキシコール酸ナトリウムを含む)中で行った。
【0094】
アルキルラクトシド、アルキルアミドラクトシド、アルキルアミドチオラクトシド、及びn−オクチルチオラクトシドのEGCaseによる加水分解は、基質1mMに適当量の酵素を加え、37℃で16時間反応させることにより行った。尚、酵素量は、上記条件で反応を行ったとき、すべての種類の基質を完全に加水分解しない量とした。反応後、シリカゲル薄層クロマトグラフィー(HPTLC、メルク社製)により反応生成物の分析を行った。糖の発色にはオルシノール−硫酸を用い、必要に応じてクロマトスキャナー(島津製作所製CS−9000)を用いて定量を行った。結果を図1に示す。図1に示したグラフの横軸は、アルキルラクトシドのアルキル鎖又はアルキルアミドラクトシドのアシル鎖の炭素数を表す。また、横軸のS16は、C16のアルキルアミドチオラクトシドを表す。縦軸は加水分解された基質の割合(%)を示す。
【0095】
微生物由来のEGCaseを用いた場合には、アルキルラクトシドではC10〜C12の鎖長を有するβ−O−ラクトシドが比較的高い加水分解を受けた。一方、アルキルアミドラクトシドでは全般に加水分解反応を受ける割合が非常に高くなり、中でもC12の鎖長を有するラクトシドが最もよく分解された。すなわち、微生物由来のEGCaseでは、その基質認識の際に少なくともセラミド中のN−アシル構造までがその十分な認識に必要であろうことが示唆された。また、加水分解の鎖長依存性にはおそらく、鎖長の短いものでは疎水性が十分でないことが、より長鎖の化合物では溶解性に乏しいことが、各々寄与しているものと考えられる。
【0096】
また、生体中には存在しないためその基質としての有効性が考えられていなかった、アルキル−α−O−ラクトシドもβ体に比べると低いもののEGCaseに対する受容性を示し、遊離ラクトースが確認されたことから、EGCaseの新たな基質特異性が確認された。
【0097】
これに対し、n−ヘキサデカノイル−2−アミノエチルチオラクトシド及びn−オクチルチオラクトシドは、同鎖長のO−ラクトシドがEGCaseに対して受容性を有していたのに比べ、非常に弱くしか加水分解を受けなかったが、同鎖長のアルキルラクトシドよりは高い加水分解率を示した。
【0098】
一方、ヒル由来のEGCaseを用いた場合には、アルキルアミドラクトシドの加水分解率は、アシル鎖がC16及びC20のものについてはアルキルラクトシドよりも低かったが、アシル鎖がC8及びC12のものについてはアルキルラクトシドよりも高かった。また、アルキルアミドチオラクトシドは、ヒル由来のEGCaseに対してほとんど受容性を示さなかった。したがって、アルキルアミドチオラクトシドは、EGCaseの種類によっては基質として使用できるとともに、EGCaseの種類によっては親和性はあるものの、加水分解は受けにくいと考えられることから阻害剤として使用できることも期待できる。
【0099】
このように、ヒル由来の酵素は、微生物由来のEGCaseとは全く異なった基質特異性を示すことが、本発明により初めて明らかとなった。従来は、EGCaseの基質となる糖脂質のアグリコンに必要な構造としては、ただ単にある程度の長さ(C6)の疎水性構造のみでよいと考えられていたが、本発明により、C12程度以上の鎖長が酵素による十分な認識には必要であり、それ以上は長さによって大きな影響がないことが見出された。
【0100】
以上の結果から、EGCaseの基質としては、その疎水性構造中にN−アシル構造を有する化合物が優れていることが明らかとなった。そこで、N−アシル構造を持たせたまま発色基質となる擬似糖脂質が得られることを期待して、2−(N−ヘキサデカノイル)−アミノ−4−ニトロフェニル−O−β−D−ラクトシドを上記のようにして合成し、EGCaseの基質としての評価を行った。また、2−(N−ヘキサデカノイル)−アミノ−4−ニトロフェニル−O−β−D−ラクトシドについて、上記の各酵素に対する親和性を見積もるために、各酵素反応におけるミカエリス定数(Km値)を測定した。酵素反応は、50μl中で37℃で30分行った後に、反応液に0.1Mグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH10.5)を50μl加えて酵素反応を停止させた。これにエタノール100μlを加えた後、16,000rpmで10分間遠心し、上清について波長410nmにおける吸光度を測定した。この吸光度から酵素の触媒量を算出し、酵素反応の初速度とした。結果を表6に示す。また、文献で報告されているガングリオシド(GM1)に対する各種EGCaseのKm値を同時に示す。
【0101】
【表6】
表6
【0102】
表6に示したように、2−(N−ヘキサデカノイル)−アミノ−4−ニトロフェニル−O−β−D−ラクトシドは、用いたすべてのEGCaseに対して、高い受容性を示し、また非常に高い親和性を有することが示唆された。さらに、2−(N−ヘキサデカノイル)−アミノ−4−ニトロフェニル−O−β−D−ラクトシドはEGCaseの酵素反応により加水分解され、p−ニトロフェノール誘導体が遊離して発色し、発色基質として機能し、分光学的手法により簡便にEGCase活性を定量することが可能となった。
【0103】
【発明の効果】
本発明により、EGCaseに対する基質となる新規な擬似糖脂質が得られた。この擬似糖脂質は、各種酵素に対する受容性が従来知られている合成糖脂質であるアルキルラクトシドと異なるので、新規なEGCaseの検索に使用できることが期待できる。また、本発明により得られる発色基質は、加水分解産物の検出を分光学的に簡便に行うことができるので、エンドグリコセラミダーゼの活性測定が容易となる。また、本発明の擬似糖脂質、特に二重結合をアシル基末端に有する擬似糖脂質を、基質としてゲル電気泳動の担体に共有結合させて、酵素の電気泳動を行い基質の分解を測定する方法(Zymography)に使用できることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 各種エンドグリコセラミダーゼに対する擬似糖脂質の受容性を示すグラフ図。グラフの横軸は、アルキルラクトシドのアルキル鎖又はアルキルアミドラクトシドのアシル鎖の炭素数を表す。また、横軸のS16は、C16のアルキルアミドチオラクトシドを表す。縦軸は加水分解された基質の割合(%)を示す。
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