JP4015508B2 - 表面処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、構造部材に残留する応力を低減する際に用いることのできる表面処理方法に関し、特にワイヤ束を材料の表面に衝突させることによって当該材料の表面の応力状態を改変する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
構造部材の表面応力状態を改変し、あるいは高硬度化する手法としては、ピーニング技術がよく知られている。その中でも、ショットピーニングは代表的なピーニング技術として多用されている。ところが、ショットピーニングは所定の硬度を有する砥粒を処理対象物に高速度で衝突させるため、粉塵を発生させるとともに、その砥粒を回収する必要がある。用途によっては、砥粒の回収が困難な場合もあり、かつ砥粒の残留を望まない場合がある。
ショットピーニングを適用できない用途に対する技術として、ワイヤ束を材料の表面に衝突させるワイヤピーニング法が知られている。ワイヤピーニングについては、例えば、特公昭38−1445号公報、特開昭54−142688号公報、特開昭60−127928号公報および特開平6−155172号公報に開示されている。
【0003】
特開平6−155172号公報は、原子炉の炉内構造機器や一次系機器における溶接部近傍へのワイヤピーニングの適用を開示している。原子炉の炉内構造機器や一次系機器は、使用中に、その溶接部近傍において粒界割れ型の応力腐食割れ(SCC)が発生するおそれがある。溶接による引張残留応力はこのSCCの発生に大きく影響を与えることから、特開平6−155172号公報ではこの溶接部分の引張残留応力を圧縮応力に改変するための手段としてワイヤピーニングを用いている。特に、特開平6−155172号公報では、処理対象物に対して最適強度のピーニングを施すために、ワイヤの直径を2mm以下とすることを提案している。
【0004】
【特許文献1】
特公昭38−1445号公報(第1頁、第1図)
【特許文献2】
特開昭54−142688号公報(第2頁、第1図、第2図)
【特許文献3】
特開昭60−127928号公報(第1頁、第1図)
【特許文献4】
特開平6−155172号公報(第1頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等も、ワイヤピーニングを用いた引張残留応力の圧縮応力への改変に関する検討を行った。その結果、諸条件を調整することにより、ワイヤピーニングによってSCCの発生を十分に抑制することができることを確認した。ところが、ワイヤピーニングを施した後に処理対象物の耐食性を観察したところ、処理対象物を構成する材料としては予期せぬ腐食が発生することが確認された。つまり、ワイヤピーニングを施すことによって耐食性の劣化を招くことがあることを知見した。
そこで本発明は、処理対象物の耐食性の劣化を防止することのできる表面処理方法の提供を課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者はワイヤピーニングを施すことによる耐食性の劣化の原因について検討した。その結果、腐食した部位に処理対象物とは異なる微小粒が付着していることを確認した。その微小粒について調査したところ、ワイヤピーニング装置を構成するワイヤと同一材質であることから、ピーニング時に処理対象物に衝突したワイヤの先端が衝突の衝撃によって剥離し、その剥離片が処理対象物に付着したものと考えられる。そして、ワイヤを構成する材料が処理対象物よりも耐食性が劣っていたために、付着した微小粒が腐食し、耐食性に優れるはずの処理対象物も、微小粒の腐食に引きずられて腐食が発生したのである。
【0007】
そこで本発明は、ピーニング装置に用いるワイヤを耐食性の優れる材料で構成することを提案する。すなわち本発明の表面処理方法は、処理対象物に複数のワイヤの先端部を繰り返し衝突させ、ワイヤが繰り返し衝突された処理対象物の所定部位の応力状態を改変する表面処理方法であって、処理対象物を構成する材料と同等以上の耐食性を有する非磁性金属材料でワイヤを構成し、所定の条件で処理対象物に複数のワイヤの先端部を繰り返し衝突させた後に、処理対象物に渦流探傷検査を行うことを特徴する。
【0008】
本発明の表面処理方法によれば、処理対象物に複数のワイヤの先端部を繰り返し衝突させるので、処理対象物の所定部位の応力状態を改変することができる。例えば、処理対象物の所定部位を引張応力から圧縮応力に改変することができるし、あるいは引張応力を消滅させることもできる。応力状態の改変は、ワイヤを繰り返し衝突させる諸条件によって調整することができる。また、ワイヤの径も応力状態の改変に影響を与えるが、1〜5mmの範囲で選択すればよい。
【0009】
また本発明の表面処理方法は、処理対象物を構成する材料と同等以上の耐食性を有する材料でワイヤを構成するので、繰り返し衝突によってワイヤの一部が処理対象物に付着しても、処理対象物の耐食性を低下させることはない。ここで、同等以上、であるから、耐食性が処理対象物と同等の材料をワイヤとして用いることができる。この典型例として、ワイヤを処理対象物と実質的に同一の材料で構成することが掲げられる。処理対象物と同一の材料であれば、処理対象物に付着したとしても、当該部位に実質的な変化が生じないからである。なお、実質的にとは、化学組成が完全に一致することを意味しない。ステンレス鋼であれば、同じJISの規格範囲内の化学組成を有していれば、それらは実質的に同一の材料ということができる。
【0010】
本発明の表面処理方法は、ワイヤの処理対象物への繰り返し衝突が終了した後には、当該部位について渦流探傷検査(Eddy Current Test)を行う。当該部位にき裂等が生じていないかを非破壊検査の一種である渦流探傷検査で確認するためである。このとき、ワイヤが磁性材料で構成されていると、後述するように、検査結果に擬似信号が発生するおそれがある。そこで、渦流探傷検査を行うことを前提とする本発明は、ワイヤを非磁性金属材料で構成する。
【0011】
本発明の表面処理方法は、処理対象物が液体中、例えば水中に配設されている場合にも適用することができる。例えば、原子炉の炉内構造、配管内部が該当する。この場合、ワイヤを繰り返し衝突している周囲に吸引力を作用させることが望ましい。ワイヤの繰り返し衝突によって、処理対象物表面からスケール等の塵埃が発生する。これら塵埃を放置しておくことが望ましくない場合、あるいは当該部位を遠隔操作によるカメラで監視する場合に塵埃が当該部位を隠してしまう場合がある。そこで、ワイヤを繰り返し衝突している周囲に吸引力を作用させることにより、塵埃を除去しようというものである。塵埃とともに液体(典型的には水)も吸引されるが、塵埃をフィルタ等で取り除いた後の水は再利用することができる。
【0012】
本発明の表面処理方法において、13重量%以上のCrを含有する耐食性合金でワイヤを構成すれば、ワイヤの先端部を繰り返し衝突させた際に処理対象物にワイヤからの剥離物が付着しても、剥離物自体の耐食性が高いために、後に処理対象物の耐食性を劣化させることがない。
【0013】
本発明において、前記ワイヤを構成する耐食性合金としては、オーステナイト系ステンレス鋼またはNi基超合金を用いるのが望ましい。
13重量%以上のCrを含有する耐食性合金は、Fe基合金、Ni基合金およびCo合金を含む。Fe基合金は、さらに、ステンレス鋼とFe基の超合金に分類することができる。Fe基合金の中では、コスト的な点を考慮すると、ステンレス鋼が望ましい。
ステンレス鋼はまた、オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼およびマルテンサイト系ステンレス鋼に分類することができる。この中では、オーステナイト系ステンレス鋼が最も耐食性に優れていることから、本発明ではオーステナイト系ステンレス鋼をワイヤの構成材料として用いるのが望ましい。オーステナイト系ステンレス鋼としては、公知のJIS SUS304(Cr:18〜20重量%)、316(Cr:16〜18重量%)等を用いることができる。
Fe基超合金としては、JIS NCF800(Cr:21重量%)、825(Cr:21重量%)等のFe基超合金を用いることができる。
Ni基合金としては、JIS NCF600(Cr:16重量%)、NCF690(Cr:29重量%)、NCF750(Cr:15重量%)等のNi基超合金を用いることができる。
【0014】
本発明にかかるワイヤとして、以上のように13重量%以上を含有する耐食性合金を用いるが、この耐食性合金は非磁性材料であることを前提とする。ワイヤを繰り返し衝突させた後に、当該箇所の検査として渦流探傷検査を行うことを考慮するためである。つまり、ワイヤを繰り返し衝突させた後に、ワイヤの一部が処理対象物に付着することは前述のとおりであるが、この付着物が磁性体であると、それが原因となって探傷結果に擬似信号が発生することが危惧されるためである。
上述したオーステナイト系ステンレス鋼であるSUS 304、316は非磁性材料であるが、マルテンサイト系ステンレス鋼であるSUS 420J1およびフェライト系ステンレス鋼であるSUS 430は磁性を有している。したがって、渦流探傷検査を行うことを考慮すると、SUS 420J1およびSUS 430は本発明のワイヤ材としては適さない。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の表面処理方法に用いることのできるピーニング装置1を示す断面図である。
ピーニング装置1は、コンプレッサ20から送られる作動用エアによって駆動するエアシリンダタイプの装置である。
図1に示すように、ピーニング装置1は、ケーシング2を有し、このケーシング2には作動用エアが流入する流入口21aを備えた上シール21と上シール21から所定の間隔を隔てる下シール22とが配設されている。図1に示すように、下シール22には後述するピストン4が摺動するピストン保持孔22aが穿孔されている。ケーシング2には、下シール22から所定の間隔を隔ててワイヤガイド6が配設されている。ワイヤガイド6には、後述するピーニングワイヤ5が挿入されるガイド孔6aがピーニングワイヤ5に対応して穿孔されている。
【0016】
ケーシング2、上シール21および下シール22によって形成される空間内には、シリンダ3が配設されている。ケーシング2とシリンダ3との間には、図1に示すように、所定の間隙が設けてある。シリンダ3内には、シリンダ3内を摺動しながら昇降するピストン4が配設されている。
ピストン4には、その鉛直方向に延設される第1のエア流通路41と、第1のエア流通路41に連通しかつ水平方向に延設される第2のエア流通路42が設けてある。
【0017】
ピストン4の下方には、複数のピーニングワイヤ5が配設されている。ピーニングワイヤ5は、ケーシング2の下部に配設されたワイヤガイド6により水平方向の移動が拘束されるが、鉛直方向への移動は可能である。ピーニングワイヤ5は、フェライト系ステンレス鋼であるSUS430製で直径が3mmの棒状部材である。このピーニングワイヤ5は、冷間引き抜き加工が施されたものであり、ばね鋼ということができる。
【0018】
次に、ピーニング装置1の動作について図1および図2に基づいて説明する。なお、ピーニング装置1は、水中に配設されている処理対象物10に対してピーニング処理を施すものである。
図1はピストン4が最下端まで下降してピーニングワイヤ5を押圧することにより処理対象物10にピーニング処理を施した状態を示している。図2はピストン4が最上端まで上昇した状態を示している。図2の状態では、ピーニングワイヤ5は処理対象物10に単に接触しているだけで実質的には作用していない。なお、本発明においては、このような事象をも繰り返し衝突の概念に含むものとする。
【0019】
図1の状態では、ピストン4の第2のエア流通路42が下シール22によって閉塞されている。したがって、コンプレッサ20から供給される作動用エアはケーシング2とシリンダ3との間を通り、ピストン4を下方から押圧する。そのために、ピストン4はシリンダ3内を上昇する。
ピストン4がシリンダ3内を上昇し続けると、図2に示すように、ピストン4の第2のエア流通路42はケーシング2内の空間と連通する。そうすると、コンプレッサ20から供給される作動用エアは、ケーシング2とシリンダ3との間を通過した後に、第2のエア流通路42に流入する。第2のエア流通路42と第1のエア流通路41とは連通しているから、第2のエア流通路42に流入した作動用エアはシリンダ3とピストン4との間に形成される空間内に流入する。当該空間内に流入した作動用エアは、その瞬間からピストン4を下方に押圧する。そのため、ピストン4は降下してピーニングワイヤ5を打撃する。その状態が、図1に示される状態である。
以上のように、ピーニング装置1は、コンプレッサ20からの作動用エアの供給を受けている期間中、図1の状態と図2の状態とを繰り返すことにより、ピーニングワイヤ5に打撃力を繰り返し付与する。ピーニングワイヤ5は、この打撃力によって、処理対象物10に繰り返して衝突して、処理対象物10の表面における応力状態を改変する。このとき、処理対象物10の表面を硬化させることもできる。
【0020】
処理対象物10は、JIS SUS316を溶接した部材であり、図1および図2中の符号11で示す部分が溶接ビード部を示している。溶接ビード部11の溶接線は、図1および図2の奥行き方向に延設しているものとする。
ピーニング装置1に作動用エアを供給してピストン4を数百Hzで駆動しつつ、溶接線方向に約20mm/minで移動してピーニング処理することにより、溶接ビード部11の応力状態を改変した。なお、ピーニング処理前の溶接ビード部11には、溶接時に生じた引張り応力が残留している。ピーニング処理後の溶接ビード部11の応力状態を観察した結果の一例を図3に示す。図3に示すように、表面からおよそ3mmまでの深さの範囲では圧縮応力が付与されている一方、およそ3mmを超える深さでは引張応力が付与されている。上述したように、溶接ビード部11には引張残留応力が存在していたが、本発明によるピーニング処理によって、表面から所定の深さまでは圧縮応力に改変することができた。
【0021】
以上説明したピーニング処理を施すことにより、溶接ビード部11の表面近傍を押し伸ばすような塑性歪が導入され、溶接ビード部11の表面近傍を引張残留応力から圧縮残留応力に改変させることができる。その結果、SCCの発生を抑制することができる。
また、ピーニングワイヤ5が耐食性に優れるSUS430から構成されているため、ピーニングワイヤ5の一部が剥離して溶接ビード部11表面に付着したとしても、その部分から腐食が発生することはない。また、ピーニングワイヤ5は、冷間引抜が施されて強度が向上されたばね鋼であるため、溶接ビード部11に繰り返し衝突したとしても、ピーニングワイヤ5の損傷を小さくできる。さらに、ピーニングワイヤ5は可撓性を有しているため、表面が複雑な形状をなしている溶接ビード部11に対するピーニング処理時にその形状に応じて撓むことにより、ピーニング処理を効果的に行うことができる。
【0022】
以上の実施の形態では、ピーニングワイヤ5としてSUS430を用いた例について述べたが、オーステナイト系ステンレス鋼であるSUS316、Ni基超合金であるNCF690によって構成されたピーニングワイヤ5によっても同様のピーニング効果を得ることができることを確認した。
ピーニングワイヤ5をSUS316、NCF690で構成した例について、ピーニング処理後に、渦流探傷検査を実施したところ、検査過程で擬似信号を観察することはなかった。このように、ピーニングワイヤ5として常磁性体(非磁性体)であるSUS316、NCF690を用いると、ピーニング処理面に当該材料が付着したとしても渦流探傷検査における擬似信号の発生要因とならず、非破壊検査の精度を向上することができる。
【0023】
次に、本発明の表面処理方法に用いることのできる他のピーニング装置50について説明する。
図4にピーニング装置50を示している。ピーニング装置50がピーニング装置1と異なる点は、吸引ノズル60を備えている点である。他の構成はピーニング装置1と同様であるため、ピーニング装置1と同様の構成部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0024】
ピーニング装置50は2基の吸引ノズル60を備えている。吸引ノズル60は2基に限定されるものではなく、1基または3基以上配設することもできる。吸引ノズル60には、吸引管61を介して吸引ポンプ62が接続されている。さらに、吸引ポンプ62には吸引管63を介して浄化装置64が接続されている。浄化装置64は、例えば図示しないフィルタを備え、このフィルタで吸引ノズル60から吸引された水とそれに含まれていた異物を分離する。異物が除去され浄化された水は吸引管65を介して循環させることができる。
【0025】
コンプレッサ20から作動用エアを供給してピーニング処理を実施している期間中、吸引ポンプ62を作動させて、吸引ノズル60によってピーニング処理が実施されている周囲の水を吸引する。ピーニングワイヤ5が溶接ビード部11に繰り返し衝突する際に、溶接ビード部11およびその周囲の表面に存在するスケール等の塵埃が浮遊して、水を汚してしまう。また、ピーニング処理を遠隔操作で行う場合には当該部位をカメラで撮影しながら操作を行うが、水質の悪化は当該部位の明瞭な撮影を困難にし、円滑な遠隔操作の妨げとなる。吸引ノズル60による水の吸引は、この浮遊する塵埃を取り除いて水の水質悪化を防止するとともに、円滑な遠隔操作を確保することができる。
【0026】
ピーニング装置50によれば、以上のような水質悪化を防止することができるとともに、ピーニング装置1と同様に、溶接ビード部11の表面近傍を引張応力から圧縮応力に改変させることができる。その結果、SCCの発生を抑制することができる。また、ピーニングワイヤ5が耐食性に優れるSUS430から構成されているため、ピーニングワイヤ5の一部が剥離して溶接ビード部11表面に付着したとしても、その部分から腐食が発生することはない。また、ピーニングワイヤ5は、冷間引抜が施されて強度が向上されたばね鋼であるため、溶接ビード部11に繰り返し衝突したとしても、その損傷を小さくできる。さらに、ピーニングワイヤ5は可撓性を有しているため、表面が複雑な形状をなしている溶接ビード部11に対するピーニング処理時にその形状に応じて撓むことにより、ピーニング処理を効果的に行うことができる。
【0027】
上では、比較的幅の狭い溶接ビード部11にピーニング処理を施す例について説明したが、こでは溶接ビード部11および溶接による熱影響部の幅が広い場合のピーニング処理について説明する。
【0028】
図5は、ピーニング装置1(または50でもよい)を用いて幅広の溶接ビード部11およびその周囲の熱影響部11aにピーニング処理を施す様子を示している。溶接ビード部11のみならず、熱影響部11aにも溶接に伴う引張応力が残留しているため、ピーニング処理はこの熱影響部11aに対しても施す必要がある。一方で、溶接ビード部11および熱影響部11aの幅がピーニング装置1に比べて大きい場合、1度の施工でピーニング処理を完了することができない。
【0029】
そこで図5に示すように、熱影響部11aからピーニング処理を開始して溶接線方向にピーニング装置1を移動させる(図中、1回目)。溶接線の長さL分だけピーニング装置1を移動した後に、溶接線と直角方向にピーニング装置1を移動させた後に、再度溶接線方向にピーニング装置1を移動させてピーニング処理を行う(図中、2回目)。この処理を複数回(図では4回)繰り返すことにより、溶接ビード部11および熱影響部11aに対する全てのピーニング処理を完了する。
ここで、このピーニング処理において、先行するピーニング処理(例えば、1回目)により処理が施された領域と後続するピーニング処理(例えば、2回目)により処理が施された領域とが重なるように溶接線と直角方向への移動を行う。ピーニング処理が施されない領域が生ずるのを防止するためである。
【0030】
図5では溶接線方向にピーニング装置1を移動しつつピーニング処理を行う方法について示したが、図6に示すように溶接線と直角方向にピーニング装置を移動しつつピーニング処理を行うこともできる。ただし、図6に示す方法に比べて図5に示す方法の方がピーニング装置1を折り返す回数が少ないため合計の処理時間を短くできる利点がある。
また、図5,6では平板状の処理対象物について説明したが、例えば、配管同士を突き合わせ溶接した処理対象物の場合には、配管内ピーニング装置1を螺旋状に移動させつつピーニング処理を施すこともできる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択し、あるいは他の構成に適宜変更することが可能である。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、耐食性の高い合金でワイヤを構成しているので、ピーニング処理を行った際に処理対象物にワイヤからの剥離物が付着しても、剥離物自体の耐食性が高いために、後に処理対象物の耐食性を劣化させることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の表面処理方法に用いることのできるピーニング装置の構成を示す断面図であり、ピストン下降時を示している。
【図2】 本発明の表面処理方法に用いることのできるピーニング装置の構成を示す断面図であり、ピストン上昇時を示している。
【図3】 ピーニング処理を施した後の応力状態を示す図である。
【図4】 本発明の表面処理方法に用いることのできる他のピーニング装置の構成を示す断面図である。
【図5】 ピーニング施工方法の他の例を示す図である。
【図6】 ピーニング施工方法の他の例を示す図である。
【符号の説明】
1,50…ピーニング装置、2…ケーシング、3…シリンダ、4…ピストン、5…ピーニングワイヤ、6…ワイヤガイド、6a…ガイド孔、21…上シール、21a…流入口、22…下シール、22a…ピストン保持孔、41…第1のエア流通路、42…第2のエア流通路、60…吸引ノズル、61,63,65…吸引管、62…吸引ポンプ、64…浄化装置

Claims (5)

  1. 処理対象物に複数のワイヤの先端部を繰り返し衝突させ、
    前記ワイヤが繰り返し衝突された前記処理対象物の所定部位の応力状態を改変する表面処理方法であって、
    前記処理対象物を構成する材料と同等以上の耐食性を有する非磁性金属材料で前記ワイヤを構成し、
    所定の条件で前記処理対象物に複数の前記ワイヤの先端部を繰り返し衝突させた後に、前記処理対象物に渦流探傷検査を行うことを特徴とする表面処理方法。
  2. 前記ワイヤを前記処理対象物と実質的に同一の材料で構成することを特徴とする請求項に記載の表面処理方法。
  3. 前記処理対象物が液体中に配設されており、前記ワイヤを繰り返し衝突している周囲に吸引力を作用させることを特徴とする請求項またはに記載の表面処理方法。
  4. 前記非磁性金属材料が、Crを13重量%以上含む耐食性合金であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表面処理方法。
  5. 前記耐食性合金が、オーステナイト系ステンレス鋼またはNi基超合金であることを特徴とする請求項4に記載の表面処理方法。
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