JP4015449B2 - 高分子アクチュエータを用いた表示装置 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は高分子アクチュエータを用いた表示装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
ある種の高分子材料は、これに電圧を印加したり電流を流すことによって変形することから、アクチュエータとして利用することが試みられている。たとえば、特開２００１−２５８２７５には、イオン性物質を含有する非導電性高分子に電圧を印加すると変形する駆動原理による高分子アクチュエータが開示されている。この高分子アクチュエータは、非導電性高分子を電解質溶液に浸漬し、膨潤させてイオン性物質を含有させた後、乾燥させて短冊状等に形成することができる。
このイオン性物質を含有する非導電性高分子材料は、短冊状に形成した両面に電極を設けて電圧を印加すると、電極から高分子材料へ電荷が注入され、注入された電荷同士の静電反発によって高分子材料が伸長するとともに、注入された電荷の拡散が遅いことから、高分子材料中に不均一または非対称に電荷が分布して高分子材料が屈曲変形を示す。
【０００３】
このような高分子材料に電圧を印加して高分子材料が屈曲変形を起こす駆動原理を利用すれば、高分子材料を好適なアクチュエータとして利用することが可能である。高分子材料は非導電性高分子であることからで電圧印加時に流れる電流は小さく、ジュール熱によるエネルギー損失が少ないという利点がある。また、この高分子材料は空気中で使用できるという利点があり、高分子膜を貼り合わせたりせずに単体で屈曲変形を起こすことができる点で有効である。
【０００４】
なお、電圧を印加して屈曲変形を生じさせることができる高分子材料として、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ナイロン６、ポリビニルアルコール、ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル等の各種の非導電性材料が使用できることが報告されている（たとえば、特開２００１−２５８２７５公報）。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
上述した高分子アクチュエータは、小型の薄い短冊状に形成し、両面に金等を蒸着あるいはスパッタリングして電極を形成し、電極間に電圧を印加することによって屈曲変形させることができる。高分子アクチュエータは、高分子材料に印加する電圧の大きさを変えることによって屈曲の変形量を可変にすることができ、電圧の印加方向（正負の向き）を変えることによって屈曲方向を逆方向とすることができる。
また、この高分子アクチュエータは大きな駆動力を発生することには向かないが、電圧のＯＮ−ＯＦＦに対する応答性にすぐれていることからこの応答性を有効に利用することが可能であり、また、高分子材料を透明体に形成することによって光を透過させるアクチュエータとして利用することが可能である。
【０００６】
上述した高分子アクチュエータは、種々の特徴を有しており、本発明者は、これらの特性を備えた高分子アクチュエータの好適な利用方法について検討し、本発明に想到したものである。すなわち、本発明は、上述した高分子アクチュエータの特性を効果的に利用して、さまざまな表示を可能とし、種々の用途に利用可能な高分子アクチュエータを用いた表示装置を提供しようとするものである。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するため次の構成を備える。
すなわち、複数個のセルが一端側を開口して支持板に取り付けられ、前記各々のセルに、透光性を有する高分子材料を用いて短冊状に形成された透光部の基端部に透光部を挟む配置に電極を設けて形成され、該電極間に電圧を印加することにより前記透光部の先端側が屈曲変形する高分子アクチュエータが配置された表示装置であって、前記高分子アクチュエータを、前記透光部の基端部を前記支持板の厚さ方向に挿通するとともに該透光部の先端側を可動として前記支持板に設け、前記各々のセルの開口部に光の拡散板を設けるとともに、セルごとに拡散板と前記透光部との中間に単色カラーフィルターを組み合わせたカラーフィルターを設け、前記透光部の電極に印加する電圧を制御し、透光部を屈曲させて透光部の基端面から入射した光を前記カラーフィルターの任意の単色カラーフィルターに向けて導く電圧制御部とを備えることを特徴とする。
【０００８】
また、前記支持板の後面に前記高分子アクチュエータの透光部に光を入射させる光源を設けたことを特徴とする。
また、前記各々のセルに、単一の高分子アクチュエータが設けられ、透光部の先端部の移動方向に複数の単色カラーフィルタが配置されていることを特徴とする。
また、前記各々のセルに設けられたカラーフィルタが、赤、黒、緑、青の単色カラーフィルターを組み合わせたものであることを特徴とする。
また、前記各々のセルに、複数の透光部を備えた高分子アクチュエータが設けられ、各々の透光部の先端部の移動方向に複数の単色カラーフィルターが配置されていることを特徴とする。
【０００９】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付図面とともに詳細に説明する。図１は本発明に係る高分子アクチュエータを用いた表示装置の内部構成を示す説明図である。
本実施形態の表示装置は、表示装置の前面に設けた表示部に任意の文字、図形等をドット表示により表示できるように形成したものである。図１で、１０が表示部の１ドット単位となるセルである。１１はセル１０の一端側の開口部に取り付けた拡散板である。拡散板１１はセル１０内で光を均一に拡散させ、セル１０を所定の色に表示させる作用を有する。
図２に表示装置の表示部を正面方向から見た状態を示す。本実施形態の表示装置では、表示部に多数個のセル１０がアレイ状に整列して配置され、各セル１０の色表示を制御することによって、表示部に所要の文字、図形、模様等が表示可能となっている。
【００１０】
図１で１２は各々の拡散板１１の背面に、拡散板１１の後面から若干離間して配置したカラーフィルターである。カラーフィルター１２は各々の拡散板１１の一つ一つに対応して、赤、黒、緑、青の４色の単色カラーフィルター１２ａ、１２ｂ、１２ｃ、１２ｄを１ユニットとして形成されている。
【００１１】
１４は隣接する拡散板１１を仕切るセル壁である。セル壁１４は光を透過しない材料を用いて円筒状に形成した部材であり、前記拡散板１１はセル壁１４の前端側の開口部を閉止して取り付けられ、前記カラーフィルター１２はセル壁１４の内側にセル壁１４を仕切るようにして取り付けられている。
図３に、セル壁１４にカラーフィルター１２を取り付けた状態をセル壁１４の正面方向から見た状態を示す。１４ａはカラーフィルター１２の外周縁を支持し、セル壁１４を仕切るように設けた遮光部材からなる仕切り板である。
【００１２】
図１において、１６はセル１０ごとにセル壁１４内でカラーフィルター１２の後部側に配置した高分子アクチュエータであり、１８は高分子アクチュエータ１６を支持する支持板である。
高分子アクチュエータ１６の透光部１６ａは非導電性の高分子材料を短冊状に形成したもので、透光部１６ａの基端側の厚さ方向の両面にそれぞれ電極２０ａ、２０ｂが設けられている。本実施形態においては、透光部１６ａの基端側の両面に絶縁体２２ａ、２２ｂを被着し、この絶縁体２２ａ、２２ｂの表面と透光部１６ａの外面にかけて金を蒸着して電極２０ａ、２０ｂを形成し、電極２０ａ、２０ｂの端部が透光部１６ａの中途位置で高分子材料の外面に接するように設けている。
【００１３】
高分子アクチュエータ１６の作用部の本体となる透光部１６ａは対向する外面に電極を形成し、電極間に電圧を印加することによって先端側が屈曲変形する。透光部１６ａの外面に形成する電極は、短冊状に形成した透光部１６ａの対向する２つの外面全体に金の蒸着等によって電極を形成しても良いし、透光部１６ａの基端部の対向位置にのみ電極を形成してもよい。
【００１４】
支持板１８の本体は電気的絶縁性を有し光を透過しない基板２４によって形成される。セル壁１４は基板２４に基端が固定されて支持板１８に支持されている。高分子アクチュエータ１６は、透光部１６ａの基端を基板２４を貫通させて支持し、電極２０ａ、２０ｂは基板２４に埋設されている。
各々の高分子アクチュエータ１６の電極２０ａ、２０ｂには高分子アクチュエータ１６に印加する電圧を制御するための電圧制御部と電気的に接続する配線パターンが接続されている。
図１では、高分子アクチュエータ１６の電極２０ａ、２０ｂに電圧を印加することによって、透光部１６ａの先端側が屈曲する様子を説明的に示している。高分子アクチュエータ１６は透光部１６ａが屈曲可能となるよう、カラーフィルター１２との間に一定の間隔をあけて配置する。
【００１５】
２６は支持板１８の後面に接するようにして配置した光源である。この光源２６は高分子アクチュエータ１６の透光部１６ａの基端面から透光部１６ａに光を入射させ、高分子アクチュエータ１６の透光部１６ａを光ガイドとしてカラーフィルター１２の特定の単色カラーフィルター１２ａ、１２ｂ、１２ｃ、１２ｄに光を導くことを目的としている。したがって、光源２６は各高分子アクチュエータ１６に対して均一な光源となっていることが望ましく、たとえば、光源２６を平面的に均一に発光する平面発光体によって形成したり、光源２６が均一な照度となるよう表示装置の外枠部にバックライトを設けたり、高分子アクチュエータ１６の各々の基端側の端面に各々光源を配置したりすることによって光源２６とすることができる。
なお、光源２６は白色光としてもよいし、特定の色（波長）の光源を使用してもよい。
【００１６】
本実施形態の表示装置は、高分子アクチュエータ１６の透光部１６ａを光ガイドとしてカラーフィルター１２の特定の単色カラーフィルターから光を放射させるから、高分子アクチュエータ１６の透光部１６ａは電圧を印加することによって屈曲する特性を有するとともに、光透過性を備えている必要がある。
このような機能を備えた高分子アクチュエータ１６の高分子材料としては、たとえばポリウレタンを使用するすることができる。すなわち、プレポリマー法によって形成したポリウレタン膜を０．１重量モル濃度で酢酸ナトリウムを含むメタノール／アセトン＝４０／６０混合溶媒に１５時間浸漬した後、乾燥させてアクチュエータ用の高分子材料とする。アクチュエータ用の高分子材料は適宜サイズに形成することができ、たとえば、膜厚０．２ｍｍ、幅０．５ｍｍ、長さ１ｃｍ程度の短冊状に形成した高分子材料をアクチュエータの透光部１６ａとして使用することができる。
【００１７】
また、透光部１６ａとして使用する高分子材料としては、ポリメタクリル酸メチル（ＰＭＡ）が透明性が高いこと、応答性にすぐれていることから有効に使用できる。ポリメタクリル酸メチル（ＰＭＡ）は可塑剤が比較的少ないものであっても変形できるという特徴があり、本実施形態の表示装置のように、大きな変形を必要としないものに対しては有効に利用することが可能である。
【００１８】
なお、高分子アクチュエータ１６の透光部１６ａを光ガイドとして使用する際に、光ガイド特性を良好にするため、透光部１６ａが最大に屈曲した際（実施形態では赤あるいは青の単位カラーフィルターに向けて屈曲する場合）に、透光部１６ａの界面で透光部１６ａに入射した光が全反射する角度となるように透光部１６ａの屈曲角度範囲を設定するとよい。透光部１６ａに入射した光を界面で全反射させるため、透光部１６ａの外面に全反射用のコーティングを施してもよい。
【００１９】
高分子アクチュエータ１６は電圧制御部により各高分子アクチュエータ１６の電極２０ａ、２０ｂに印加する電圧を制御することによって、透光部１６ａを屈曲させて、表示部に配置されているドットごとに、赤、黒、緑、青の単位カラーフィルターの特定の単位カラーフィルターに光をガイドさせ、単位カラーフィルターから光を放射させることによって、ドットの拡散板１１から外部に放射される光（色）を選択することができる。
本実施形態の高分子アクチュエータを用いた表示装置では、各ドットの色を赤、黒、緑、青から任意に選択することができ、これらの色選択によって表示部にさまざまな図形等をカラー表示することができる。１ドット単位で赤、黒、緑、青から色を選択できることから、多様な色表示が可能になる。
【００２０】
また、高分子アクチュエータを用いた表示装置に用いる高分子アクチュエータのサイズは適宜選択可能であり、ドットの大きさを数ｍｍ程度の大きさから０．２ｍｍ程度の微小な大きさにまで形成することが可能である。ドットをきわめて微小な大きさとすることにより、文字、図形等を詳細に表示することが可能であり、適宜カラー表示とすることができる。
高分子アクチュエータに印加する電圧は高分子アクチュエータ（透光部）の圧さに依存し、高分子アクチュエータの厚さが薄い場合には印加する電圧は小さくなる。
【００２１】
また、上述した実施形態では１ドット内に４色の単位カラーフィルターを設けてドットごとに４色表示可能としたが、各ドットを単色表示とし、単色表示のドットをグループ化してカラー表示することも可能である。図４に、ドットを単色表示する例として、赤の単色カラーフィルター１２ａと黒の単色カラーフィルター１２ｂ、緑の単色カラーフィルター１２ｃと黒の単色カラーフィルター１２ｂ、青の単色カラーフィルター１２ｄと黒の単色カラーフィルター１２ｂをドットに設けた例を示す。この場合、各ドットに装着される高分子アクチュエータ１６は、赤あるいは黒、緑あるいは黒、青あるいは黒のどちらかに一方に屈曲するように制御され、各ドットを黒以外で単一色が表示されるように制御する。これら赤、緑、青を１グループとして表示部にドットを表示することによって、表示部にカラー表示することができる。
【００２２】
また、上記実施形態では１ドット内で表示される色は、赤、黒、緑、青のいずれかであるが、１ドット内を任意の色で表示することも可能である。図５は１ドット内を任意のカラー表示とする例で、赤、青、緑の単色カラーフィルター１２ａ、１２ｄ、１２ｃとこれに黒のカラーフィルター１２ｂを並置した状態を示す。１ドット内をカラー表示する場合は、赤、青、緑の単色カラーフィルターごとに上述した高分子アクチュエータ（３個）を配置し、各々の高分子アクチュエータを赤あるいは黒、青あるいは黒、緑あるいは黒のどちらかの単色カラーフィルターの位置に屈曲させることによって、１ドット内で３色を組み合わせてカラー表示することができる。
【００２３】
以上のように、高分子アクチュエータを用いて構成した表示装置は、高分子アクチュエータの応答性がすぐれることから、文字、図形等の動画風に表示することも容易に可能となる。また、高分子アクチュエータ１６は電極２０ａ、２０ｂに電圧を印加して屈曲変形させるが、きわめて耐久性が高いという利点があり、高分子アクチュエータ１６の透光部１６ａが非導電性材からなることから、ジュール熱によるエネルギー損失が小さく表示体として好適に使用することができる等の特徴がある。
【００２４】
また、上記実施形態では光源２６として、平面発光体等を利用しているが、光源２６に太陽光等の自然光を利用することも可能である。たとえば、住宅の窓に上述した表示装置を取り付け、高分子アクチュエータを駆動制御することによって、窓に射し込む太陽光を利用して表示部に種々の図形、模様等を表示させることができる。高分子アクチュエータの制御方法によっては、図形等を表示させる他、室内に入射する太陽光を遮光したり、太陽光の強さを弱めたりするといったように制御して利用することも可能である。
【００２５】
【発明の効果】
本発明に係る高分子アクチュエータを用いた表示装置は、上述したように、高分子アクチュエータの機能を有効に利用して、いろいろな図形、模様等を表示する装置として好適に使用することができる。高分子アクチュエータは微小サイズに形成することができ、詳細な表示装置として利用できる他、太陽光等の自然光を光源として遮光等にも利用できる等、さまざまな用途に応用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係る高分子アクチュエータを用いた表示装置の主要部の構成を示す説明図である。
【図２】高分子アクチュエータの表示装置の表示部の構成を示す正面図である。
【図３】セル内のカラーフィルターの配置を示す説明図である。
【図４】セル内のカラーフィルタの他の配置例を示す説明図である。
【図５】セル内のカラーフィルタのさらに他の配置例を示す説明図である。
【符号の説明】
１０ セル
１１ 拡散板
１２ カラーフィルター
１２ａ、１２ｂ、１２ｃ、１２ｄ 単色カラーフィルター
１４ セル壁
１６ 高分子アクチュエータ
１６ａ 透光部
１８ 支持板
２０ａ、２０ｂ 電極
２２ａ、２２ｂ 絶縁体
２４ 基板
２６ 光源

Claims (5)

1. 複数個のセルが一端側を開口して支持板に取り付けられ、
   前記各々のセルに、透光性を有する高分子材料を用いて短冊状に形成された透光部の基端部に透光部を挟む配置に電極を設けて形成され、該電極間に電圧を印加することにより前記透光部の先端側が屈曲変形する高分子アクチュエータが配置された表示装置であって、
   前記高分子アクチュエータを、前記透光部の基端部を前記支持板の厚さ方向に挿通するとともに該透光部の先端側を可動として前記支持板に設け、
   前記各々のセルの開口部に光の拡散板を設けるとともに、セルごとに拡散板と前記透光部との中間に単色カラーフィルターを組み合わせたカラーフィルターを設け、
   前記透光部の電極に印加する電圧を制御し、透光部を屈曲させて透光部の基端面から入射した光を前記カラーフィルターの任意の単色カラーフィルターに向けて導く電圧制御部とを備えることを特徴とする高分子アクチュエータを用いた表示装置。
2. 支持板の後面に前記高分子アクチュエータの透光部に光を入射させる光源を設けたことを特徴とする請求項１記載の高分子アクチュエータを用いた表示装置。
3. 各々のセルに、単一の高分子アクチュエータが設けられ、透光部の先端部の移動方向に複数の単色カラーフィルタが配置されていることを特徴とする請求項１または２記載の高分子アクチュエータを用いた表示装置。
4. 各々のセルに設けられたカラーフィルタが、赤、黒、緑、青の単色カラーフィルターを組み合わせたものであることを特徴とする請求項１、２または３記載の高分子アクチュエータを用いた表示装置。
5. 各々のセルに、複数の透光部を備えた高分子アクチュエータが設けられ、各々の透光部の先端部の移動方向に複数の単色カラーフィルターが配置されていることを特徴とする請求項１記載の高分子アクチュエータを用いた表示装置。

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