JP4015234B2 - レーザービーム直接描画装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体ウェハー、半導体(ASIC)、半導体マスク、ハードディスクドライブ用薄膜ヘッド、液晶ディスプレイ、マイクロマシンおよび光導波路などを微細加工する際に、フォトレジストを塗布した基板上にマスクレスで数ミクロン線幅のパターンを直接描画するためのレーザービーム直接描画装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エレクトロニクス、オプトエレクトロニクス、メカトロニクスなどの分野では、微細加工プロセスによる集積化技術の開発が重要課題となっている。この種の微細加工プロセスによってサブミクロンオーダの半導体デバイス用フォトマスクを作成する装置として、電子ビーム装置が従来から用いられている。ところが、電子ビーム装置は、真空チャンバを必要とし、しかも大容量の電源装置を必要とする結果、装置の大型化、高価格化を招いている。加えて、真空中で描画を行う必要上、描画面積が小さく、かつ保守点検が煩雑であるという欠点もある。また、実際に半導体ウェハー上にパターンを形成するためには、フォトマスクを作成した上に、更にステッパ露光装置などによってパターンの転写露光を行わなければならないため、作業に長時間が必要とされるという欠点もある。
【0003】
このため、近年では、描画精度はやや低下するものの、大気中での動作が可能で、しかも、操作性に優れ、比較的安価で、描画面積が大きいという特徴を有し、線幅が数ミクロンオーダのパターンをマスクレスで比較的容易に直接描画可能なレーザービーム直接描画装置が、電子ビーム装置に代わって用いられ始めている。図13は、レーザービーム直接描画装置81(以下、「描画装置81」という)の構成を示している。同図に示すように、描画装置81は、パターニングの際に各種制御を実行するパーソナルコンピュータ(以下、「パソコン」ともいう)82と、例えば波長が441.6nmで光出力10mWCWのヘリウム・カドミウムレーザー光(以下、「レーザー光」ともいう)を出力するヘリウム・カドミウムレーザー83と、ヘリウム・カドミウムレーザー83用の電源84と、レーザー光を減衰させるためのNDフィルタ85と、レーザー光を強度変調するための音響光学変調器(AOM)86と、ビームエクスパンダ87と、光路を変えるためのミラー88〜92と、対物レンズ93と、Xステージ95およびYステージ96を有する基板移動機構94と、パソコン82から出力される制御データをディジタル−アナログ変換するD/A変換部101と、D/A変換部101から出力されるアナログ電圧に応じたレーザー光強度に維持されるように音響光学変調器86を制御するドライバ102と、Xステージ95およびYステージ96を駆動するための駆動信号を出力するドライバ103とを備えている。
【0004】
この描画装置81では、パターニング対象の基板がYステージ95に装着されると、パソコン82は、図外のカメラによって撮影した画像データに基づく画像認識手法によって、基板に付されているマーカを位置検出する。次いで、パソコン2は、検出したマーカの位置データと、予め入力されている描画パターンデータとに基づいて、Yステージ95およびXステージ96を移動させるための移動データを生成する。この後、パソコン2が、ドライバ102を介して音響光学変調器86の出力光量を制御することにより、両ヘリウム・カドミウムレーザー83から出力されたレーザー光は、NDフィルタ85によって減衰された後、音響光学変調器86によって所定光量になるように光量制御される。一方、音響光学変調器86から出力されたレーザー光は、ミラー88によって反射された後、ビームエクスパンダ87によってビーム径を拡大させられる。この後、レーザー光は、ミラー89〜92によって反射された後に対物レンズ93まで導かれ、対物レンズ93によって集光された後、基板上に塗布されたフォトレジストを照射することにより感光させる。この場合、描画装置81は、生成した移動データに従い両ステージ95,96をXおよびY方向に移動制御する。この結果、レーザー光によって所定の軌跡が描かれることにより、パターニングが行われる。次いで、パターニングを終了した基板をYステージ95から取り外し、次の基板を装着した後に、上記したマーカ位置検出、移動データの生成およびパターニングを繰り返す。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、この従来の描画装置81には、以下の問題点がある。
第1に、従来の描画装置81では、数多くの基板をパターニングする場合には、各基板毎にYステージ95への着脱を繰り返さなければならない。このため、従来の描画装置81には、基板着脱工程が高コスト化しているという問題点がある。
第2に、描画装置81では、基板に対して実際にパターニングする際に、基板に付されたマーカの位置検出を行い、検出した位置データと描画パターンデータとに基づいて両ステージ95,96の移動データを生成している。したがって、基板にマーカを付す精度が低い場合や、基板への装着精度が低い場合には、作成された描画パターンが基板毎にばらつくため、従来の描画装置81には、大量の基板に対して、均一な描画パターンを描くことが困難であるという問題点がある。一方、基板に高精度でマーカを印刷することも考えられるが、かかる場合には、マーカ印刷作業に手間がかかり、基板製造コストが高騰するという他の問題点が発生する。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、基板着脱工程における製造コストを低減すると共に高精度描画が可能なレーザービーム直接描画装置を提供することを主目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく請求項1記載のレーザービーム直接描画装置は、描画対象の基板に対してレーザー光を照射可能なレーザー光照射部と、基板を搭載可能に構成され搭載されている基板を互いに直交するX方向およびY方向に移動可能な基板移動機構と、基板上に塗布されたフォトレジスト上に所定のパターンを描画するために描画パターンデータに基づいて基板移動機構の移動を制御する移動制御部と、基板移動機構に固定可能に構成され、かつ所定平面における予め規定した複数の保持位置に基板をそれぞれ固定することにより複数の基板を保持可能な基板保持具と、保持されている複数の基板の少なくとも1枚における基準位置に対応する基準位置データを検出する基準位置データ検出手段とを備え、移動制御部は、検出された基準位置データおよび描画パターンデータに基づいて基板移動機構の移動を制御するレーザービーム直接描画装置であって、描画パターンデータは基準位置に対する相対的な位置データとして形成され、基準位置データ検出手段は、保持されている基板に対して検査用レーザー光を照射可能な検査用レーザー照射部を備え、基板移動機構によって基板保持具を移動させつつ少なくとも1枚の基板のX方向における両端部間を検査用レーザー光で照射した際に、基板による反射光に基づいて基板のX方向における両端部の中心位置に対応する位置データを検出すると共に、X方向の中心位置を含む基板のY方向における両端部間を検査用レーザー光で照射した際に、反射光に基づいて基板のY方向における両端部の中心位置に対応する位置データを検出し、かつ検出した両位置データに基づいて基準位置データを検出することを特徴とする。
【0008】
このレーザービーム直接描画装置では、複数の基板が保持された基板保持具を基板移動機構に固定すると、基準位置データ検出手段が、パターニング対象基板の基準位置に対応する基準位置データを検出する。具体的には、基準位置データ検出手段は、保持されている基板に対して検査用レーザー光を照射可能な検査用レーザー照射部を備え、基板移動機構によって基板保持具を移動させつつ少なくとも1枚の基板のX方向における両端部間を検査用レーザー光で照射した際に、この基板による反射光に基づいて基板のX方向における両端部の中心位置に対応する位置データを検出すると共に、このX方向の中心位置を含む基板のY方向における両端部間を検査用レーザー光で照射した際に、反射光に基づいて基板のY方向における両端部の中心位置に対応する位置データを検出し、かつ検出したこれらの両位置データに基づいて基準位置データを検出する。次いで、移動制御手段は、検出された基準位置データと描画パターンデータとに基づいて、基板移動機構の移動を制御する。この場合、描画パターンデータは各基板における基準位置に対する相対的な位置データとして形成されているため、各基板には、常に、基準位置を基準とする同一パターンが描画される。
【0009】
また、このレーザービーム直接描画装置では、基準位置データ検出手段が、パターニング対象基板に照射した検査用レーザー光の反射光に基づいて、この基板の基準位置に対応する基準位置データを生成し、次いで、移動制御部が、この生成した基準位置データおよび描画パターンデータに基づいて、基板移動機構を移動させるべき移動データを生成する。このように、煩雑な画像処理を行うことなく、簡易かつ高精度で基板移動機構を移動させるための移動データを生成することが可能となる。
【0010】
請求項2記載のレーザービーム直接描画装置は、請求項1記載のレーザービーム直接描画装置において、基板保治具には、基板を装着可能な孔部が複数形成され、基準位置データ検出手段は、複数の孔部のうちの1つに装着された特定の基板に対する基準位置データを検出し、移動制御部は、特定の基板が装着された孔部と他の孔部との相対的な位置関係、特定の基板の基準位置データ、および描画パターンデータに基づいて基板移動機構の移 動を制御することを特徴とする。
【0011】
このレーザービーム直接描画装置によれば、基板保持具の基板保持位置を高精度で形成しておくことにより、例えば、特定の基板の中心位置を基準位置とし、その特定基板の保持位置と他の基板の保持位置との相対的な位置関係、特定基板の基準位置データ、および描画パターンデータに基づいてパターニングすることも可能となる。この場合には、基準位置データの検出処理を1回行うだけでよく、この処理に要する時間を短縮することが可能となる。一方、基板保持位置が高精度でない場合には、各基板の中心位置などをそれぞれ基準位置として基板移動機構の移動を制御することもできる。これにより、基板保持具に保持されている基板を連続してパターニングすることが可能となるため、基板移動機構への基板の着脱コストを低減することが可能となる。さらに、各基板の中心位置を基準位置とすることにより、各基板について同一パターンを高精度で描画することが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るレーザービーム直接描画装置の好適な実施の形態について説明する。
【0013】
図1に示すように、レーザービーム直接描画装置1(以下、「描画装置1」ともいう)は、本発明における移動制御部に相当しパターニングの際に各種処理を実行するパソコン2、本発明におけるレーザー光照射部の一部を構成するSHGレーザー(Secondary harmonic generation レーザー)3、ドライバ4、音響光学変調器5、ドライバ6、レンズ7、光ファイバ8、レンズ9、赤色半導体レーザー10、ドライバ11、レンズ12、1/2波長板13、偏光ビームスプリッタ14、ビームスプリッタ15、ミラー16,17、SHGレーザ3と共に本発明におけるレーザー光照射部を構成する対物レンズ18、基板移動機構19、D/A変換部24、フォトダイオード25、増幅回路26、二素子型フォトダイオード27、増幅回路28a,28b,29、A/D変換部30、ドライバ31を備えて構成されている。
【0014】
次に、各構成要素について具体的に説明する。
【0015】
SHGレーザー3は、例えば波長が473nmの青色レーザー光R1を出力するものであって、図2に示すように、波長が809nmの赤外線レーザー光R2を出力する励起光源としての赤外線半導体レーザー41と共振器45とを備えており、共振器45は、809nmの波長を吸収して946nmの赤外線R3を励起する光学結晶42と、光学結晶42から出力された赤外線R3の第2高調波を発生する第2高調波発生素子43と、946nmの赤外線R3を全反射すると共に473nmの青色レーザー光R1を全透過させるためのコーティングが凹面部に施された波長選択性の出力ミラー44とを備えて構成されている。このSHGレーザー3では、光学結晶42が、赤外線半導体レーザー41から出力された赤外線R2を吸収すると共に、異なる波長の赤外線R3を第2高調波発生素子43に出力する。一方、第2高調波発生素子43は、出力ミラー44に対して、赤外線R3と赤外線R3の第2高調波である青色レーザー光R1とを出力する。ここで、出力ミラー44が赤外線R3を全反射することにより、赤外線R3は、光学結晶42における赤外線半導体レーザ41側の端面と出力ミラー44の凹面部との間で構成される光共振器で増幅される。この場合、青色レーザー光R1は、赤外線R3の増幅に応じて徐々に高レベルとなり、所定のしきい値を超えたときに出力ミラー44から放射される。なお、赤外線半導体レーザ41と光学結晶42との間に集光レンズを配設し、赤外線半導体レーザ41から出力される赤外線ビームを集光するのが効率向上の点から好ましい。ドライバ4は、SHGレーザー3におけるレーザー光の出力レベル制御や、温度コントロールを実行する。
【0016】
音響光学変調器5は、SHGレーザー3から出力されるレーザー光の光強度を制御するためのものであって、D/A変換部24およびドライバ6を介して入力されるパソコン2からの制御信号に基づいて、レーザー光に対して光強度変調することにより1次回折光を出力する。レンズ7は、音響光学変調器5から出力されたレーザー光を集光して光ファイバ8内に入射させる。
【0017】
光ファイバ8は、石英系のマルチモード型光ファイバであって、入射されたレーザー光をレンズ9まで導光する。レンズ9は、レーザー光を平行光に変換した後、偏光ビームスプリッタ14に出力する。
【0018】
赤色半導体レーザー10は、パソコン2と共に本発明における基準位置データ検出手段を構成し、例えば波長が650nmの赤色レーザー光を出力する。この赤色半導体レーザ10から出力される赤色レーザー光は、後述する自動焦点合わせ処理や、基板基準位置の検出処理の際に用いられる。ドライバ11は、赤色半導体レーザー10の出力レベル制御や、温度コントロールを実行する。1/2波長板13は、レンズ12によって平行光に変換された赤色レーザー光の偏波面を調整することにより、偏光ビームスプリッタ14によって赤外線レーザー光が全反射されるように制御する。なお、1/2波長板13の代わりに1/4波長板を用いることもできる。
【0019】
偏光ビームスプリッタ14は、青色レーザー光の一部をフォトダイオード25側に反射すると共に大部分をビームスプリッタ15側に透過し、かつ、赤色半導体レーザー10から出力された赤色レーザー光をビームスプリッタ15側に反射させる。ビームスプリッタ15は、両レーザー光をミラー16側に透過させると共に、基板表面で反射された赤色レーザー光を二素子型フォトダイオード27側に反射させる。
【0020】
対物レンズ18は、ミラー16,17によって導光されて入力した青色レーザー光を集光し、集光した青色レーザー光を基板移動機構19上に搭載されている基板に照射する。なお、この描画装置1では、開口数(NA)が0.65で、倍率40倍のタイプのものが用いられている。また、対物レンズ18は、青色レーザー光と焦点合わせ用の赤色レーザー光を集光させているが、両レーザー光の波長の違いによる焦点位置のずれを防止するためにアクロマティックレンズによって構成されている。
【0021】
基板移動機構19は、本発明における基板移動機構に相当するものであって、図外のステッピングモータがそれぞれ内部に配設されたZステージ21、Yステージ22およびXステージ23を備えている。ここで、Zステージ21は、図3に示す基板ホルダ51を固定取付け可能に構成されており、パターニングの際には、パソコン2の制御に従ってステッピングモータが駆動させられることにより、基板ホルダ51に搭載された基板のフォトレジスト面に対物レンズ18の焦点が位置するように上下動させられる。なお、基板ホルダ51は、特に限定されないが、材料としてステンレスが用いられており、面精度±1μmで研磨加工が施されている。また、基板ホルダ51は、予め規定した10箇所の基板保持位置に長方形状の孔部52,52・・が形成されており、この孔部52に基板をはめ込むことにより、例えばサイズが5×30×0.5mmの基板を高位置精度で10枚装着できるように構成されている。このため、10枚の基板の連続的なパターニングが可能となっている。Yステージ22およびXステージ23は、それぞれ、パソコン2の制御によってステッピングモータが駆動させられることにより、基板ホルダ51を図3に示すX方向およびY方向に移動させる。ドライバ31は、パソコン2から出力される位置データに基づいて各ステージ21〜23内のステッピングモータを駆動すると共に、各ステージ21〜23の端部検出信号をパソコン2に出力する。
【0022】
フォトダイオード25は、偏光ビームスプリッタ14によって反射されて入力した青色レーザー光を光電変換することによりレベル制御用信号を生成する。増幅回路26は、入力したレベル制御用信号を増幅した後、A/D変換部30を介してパソコン2に出力する。この場合、パソコン2は、入力したレベル制御用信号の値が所定値になるように、D/A変換部24およびドライバ6を介して音響光学変調器5に制御信号を出力する。これにより、青色レーザー光の光量を一定値に制御するためのフィードバックループが形成される結果、描画光量は常に安定に維持される。
【0023】
二素子型フォトダイオード27は、ビームスプリッタ15によって反射された赤色レーザー光をそれぞれ光電変換し1パッケージ内に近接配置された2つのフォトダイオード27a,27bで構成されている。増幅回路28a,28bは、フォトダイオード27a,27bによって光電変換された電圧信号を増幅し、増幅回路29は、両増幅回路28a,28bからそれぞれ出力された電圧信号を差動増幅してA/D変換部30に出力する。A/D変換部30は、増幅回路28a,28bによって増幅された電圧信号、増幅回路26によって増幅されたレベル制御用信号、および増幅回路29から出力された差動増幅信号をアナログ−ディジタル変換し、変換したディジタルデータをパソコン2に出力する。
【0024】
次いで、上記した自動焦点合わせ機構の動作原理について、図4から6を参照して説明する。
【0025】
この描画装置1では、赤色半導体レーザー10から出力された赤色レーザー光R4が、対物レンズ18の光軸を外れた所定部位32を介して基板ホルダ51に装着されている基板に照射されるようになっている。また、二素子型フォトダイオード27は、図4に示すように、対物レンズ18の焦点面a0 に基板表面PSが位置しているときに、基板表面PSによって反射される赤色レーザー光R4が図5(b)に示すように両フォトダイオード27a,27bに対して均等に入射するように配置されている。このため、基板表面PSが焦点面a0 よりも上方の位置a1 に位置する場合には、図5(a)に示すように、赤色レーザー光R4の反射光は、大部分がフォトダイオード27aに入射し、フォトダイオード27bには、殆ど入射しない。一方、基板表面PSが焦点面a0 よりも下方の位置a2 に位置する場合には、図5(c)に示すように、赤色レーザー光R4の反射光は、大部分がフォトダイオード27bに入射し、フォトダイオード27aには、殆ど入射しない。つまり、赤色レーザー光R4を対物レンズ18の光軸から若干ずらして入射すると、その反射光は焦点面a0 に対する基板表面PSのずれに応じて二素子型フォトダイオード27の中心からずれて入射し、出力電圧差となって現れる。この場合の基板表面PSの位置と、それに対する増幅器回路29の差動増幅信号の電圧値との関係を図6に示す。なお、同図では、Zステージ21上の基板ホルダ51に基板を装着し、基板表面PSが焦点面a0 に対して−250μm〜+250μmの範囲に位置するように0.5μm刻みでステップ移動させたときにおける差動増幅信号の出力電圧特性を示している。この場合、増幅回路29の差動増幅信号電圧の最大絶対値を値1に規格化した相対電圧を表しており、Zステージ21の位置が焦点面a0 に対して下方位置にあるときには、増幅器回路29からマイナス電圧が出力され、上方にあるときには、プラス電圧が出力される。このため、パソコン2は、下記の手順に従って自動焦点合わせ処理を実行する。
【0026】
パソコン2は、入力されている描画パターンデータに基づき、Yステージ22,Xステージ23を駆動させ所定のパターンをパターニングする際、リアルタイムで増幅器回路29の差動増幅信号の電圧値を監視する。この際、焦点面a0 に対する基板表面PSの位置ずれに応じて、図6に示した差動増幅信号が増幅器回路29から出力される。パソコン2は、この差動増幅信号の値に基づいて、この値がマイナス電圧のときは上方に、プラス電圧のときは下方に位置するように、ドライバ31を介してZステージ21の上下動を制御する。なお、同図において、焦点面a0 に対して±50μm以上離間する位置では差動増幅信号の値がほぼ零になる。このため、パソコン2は、増幅回路28a,28bの増幅信号を監視して±のピーク電圧を併せて検出することにより、焦点面a0 の位置を正確に検出することができる。この結果、対物レンズ18の焦点面a0 に基板表面PSを位置させるように、自動的に焦点合わせが行われ、これにより、均一なパターン幅の描画パターンを高精度で描くことができる。
【0027】
次に、図7を参照して、パターニング処理の全体的な動作について具体的に説明する。
【0028】
図外の電源スイッチが投入されると、パソコン2が各部の初期化を実行する(ステップ61)。次いで、パターニングの準備を行う(ステップ62)。ここでは、オペレータが、基板ホルダ51に基板を固定した後に基板ホルダ51をZステージ21に固定する。また、パソコン2は、ドライバ4を起動することにより、SHGレーザー3を作動させる。次に、パターニング条件の設定処理を行う(ステップ63)。
【0029】
この設定処理では、パソコン2は、オペレータによって指定されたパターン線幅でパターニングするためのパターニング条件、つまりSHGレーザー3の描画光強度、並びにYステージ22およびXステージ23の移動速度(つまり、描画速度)を、オペレータとの対話形式によって設定する。具体的には、この処理では、最初に、オペレータが、所望するパターン線幅をパソコン2のキーボード2aによって指定する。なお、パターニングの際には、基板が、所定のフォトレジスト膜厚および反射率で既に作成されているため、これらの値もパターン線幅と併せて、オペレータによって入力される。次いで、パソコン2は、指定されたパターン線幅の描画を可能にするために、フォトレジストの膜厚、基板の反射率、描画光強度、描画速度の4つのパラメータを説明変数とし、パターン線幅を目的変数とする重回帰分析式に従って描画光強度および描画速度を演算する。
【0030】
この場合、一般的に、パターン線幅を目的変数yとし、フォトレジスト膜厚、基板の反射率、描画光強度および描画速度をそれぞれ説明変数x1 〜x4 とする重回帰分析式は、下記の(1)式で表される。
y=α0 +α1 ・x1 +α2 ・x2 +α3 ・x3 +α4 ・x4 ・・・・(1)式
ここで、α0 は、青色レーザー光の波長と対物レンズ18の開口数(例えばNA=0.65)および倍率(例えば40倍)とから定まる定数を意味する。
【0031】
この描画装置1では、上記(1)式における定数α0 および係数α1 〜α4 が以下のようにして予め求められてパソコン2内の内部メモリに予め記憶されている。すなわち、まず、使用する青色レーザー光の波長を一定(λ=473nm)とし、対物レンズ18の仕様も一定(NA=0.65、倍率40倍)とする。また、例えば、下記の表1に示すように、フォトレジスト膜厚、基板の反射率、描画光強度および描画速度の4つのパラメータの設定可能な範囲を実際のパターニングに合致する範囲に定める。そして、その範囲内で各パラメータの値を変化させることにより、パターン線幅に及ぼす影響について複数の基板を用いて実験を行う。これにより、その実験結果から上記定数α0 および係数(α1 〜α4 )が求められる結果、表1の例では、上記(1)式は、下記の(2)式で具体的に表される。
y=22.87−4.97・x1 +0.07・x2 +0.01・x3
−29.01・x4 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)式
【0032】
【表1】
【0033】
このため、パソコン2は、上記の(2)式を充足する描画光強度および描画速度を重回帰分析法に従って演算し、演算結果をCRT2bに表示する。この際、(2)式を充足する描画光強度および描画速度の組み合わせが複数存在するため、パソコン2は、オペレータによって任意の組が選択されたときに、最終的な各値を決定する。次いで、パソコン2は、決定した描画光強度および描画速度に設定されるように、音響光学変調器5と、Yステージ22およびXステージ23の移動速度を制御する。この結果、パターン線幅、フォトレジスト膜厚および基板反射率が指定されたときには、描画装置1内のパターニング条件が自動的に設定されるため、オペレータは迅速かつ極めて容易にパターニングを開始することができる。
【0034】
次に、実際のパターニングが開始される。最初に、パソコン2は、基板ホルダ51に取り付けられた複数基板のうちの所定の1枚におけるほぼ中心位置に対物レンズ18の光軸が一致するように、ドライバ31を介して駆動することによりYステージ22およびXステージ23を移動させる(ステップ64)。次いで、パソコン2は、前述した手順で焦点位置合わせを実行する(ステップ65)。
【0035】
次に、パソコン2は、基板基準位置の検出処理を実行する(ステップ66)。この検出処理では、パターニングの際に描画パターンデータと相俟ってYステージ22およびXステージ23の移動を制御するための移動データを生成する。具体的に、図8に示すLiNbO3基板を使用した光導波路基板53をパターニングする場合を例に挙げて説明する。まず、パソコン2は、光導波路基板53の中心位置54についての絶対的な位置データを検出するために、赤色半導体レーザー10の赤色レーザー光が1枚目の光導波路基板53のほぼ中央位置(中心位置54の近傍位置)を照射するように、Yステージ22およびXステージ23を移動させる。次いで、その状態で、光導波路基板53の基準位置検出を開始する。
【0036】
パソコン2は、最初に、その位置から、赤色レーザー光が光導波路基板53の基板面から外れる位置まで、+X方向にXステージ23を移動させる。この状態では、赤色レーザー光は、図9の位置71を照射する。次に、その位置71から、赤色レーザー光が基板面から外れる位置まで、−X方向に0.1μmステップずつXステージ23を移動させる。この間においては、赤色レーザー光が、位置71から位置74までを連続的に照射する結果、増幅回路28a(または28b)は、位置72から位置73までを照射したときに、図10(a)の座標x1 〜x2 までの間において所定電圧の増幅信号を出力する。この際、パソコン2は、位置72と位置73の中心位置を光導波路基板53におけるX座標基準位置とする。次いで、パソコン2は、Y座標基準位置を同様にして検出する。この場合には、位置75から位置78までを赤色レーザー光によって照射すれば、増幅回路28a(または28b)は、位置76から位置77までを照射したときに、同図(b)の座標y1 〜y2 までの間において所定電圧の増幅信号を出力する。この場合、パソコン2は、位置76と位置77の中心位置を光導波路基板53のY座標基準位置とする。これにより、パソコン2は、X座標基準位置とY座標基準位置とに基づいて、中心位置54に対応する基準位置データを生成する。
【0037】
次に、パソコン2は、生成した基準位置データおよび描画パターンデータに基づいて、その描画パターンを描画する際にX座標基準位置とY座標基準位置とに基づく基準位置を基準としてXステージ23およびYステージ22を移動させるべき移動データを生成する。つまり、描画パターンデータを各光導波路基板53の基準位置に対する相対的な位置データとして形成しておくことにより、移動データは、基準位置を基準として両ステージ22,23を移動させるデータとして生成される。これにより、各光導波路基板53には、常に、基準位置を基準とする同一パターンが描画されることになる。なお、基板ホルダ51における孔部52の位置を高精度で形成すれば、特定の光導波路基板53の中心位置54を基準位置とし、その特定基板の孔部52と他の光導波路基板53の孔部52との相対的な位置関係、特定の基板の基準位置データ、および描画パターンデータに基づいてパターニングすることもできる。この場合には、基準位置データの検出処理を1回行うだけでよく、この処理に要する時間を短縮することができる。
【0038】
次いで、パソコン2は、生成した移動データに基づいて、Yステージ22およびXステージ23を移動させることによりパターニングを開始する(ステップ67)。この際には、対物レンズ18によって集光された青色レーザー光が、基板上のフォトレジストを照射することにより露光させる。次に、パソコン2は、指定枚数、つまり基板ホルダ51に装着されている枚数のパターニングが完了したか否かを判別し(ステップ68)、完了していないと判別したときには、上記したステップ64〜67を繰り返し実行し、完了したと判別したときには、X,Y,Zステージ21,22,23を初期位置に移動して(ステップ69)、この処理を終了する。
【0039】
以上のように、この描画装置1によれば、描画光源をSHGレーザー3で構成した結果、気体レーザー光を使用する場合と比較して、レーザー自体が長期間に亘って動作可能なため、描画光源の交換回数を激減させることができ、低ランニングコスト化および装置の小型化を図ることができる。
【0040】
また、自動焦点合わせ機構を採用したことにより、均一なパターン線幅のパターンを高精度で描画することができる。図11に、自動焦点合わせ機構を作動させたときの描画光強度および描画速度とパターン線幅の関係を示し、図12に、自動焦点合わせ機構が非作動のときの描画光強度および描画速度とパターン線幅の関係を示す。両図によれば、自動焦点合わせ機構を作動させている時には、非作動のときと比較して、パターン線幅のばらつきが押さえられ、常に最小線幅が得られるように動作し、しかも描画速度が異なってもほぼ一定のパターン線幅で描画されていることが確認できる。
【0041】
さらに、各基板の基準位置を検出し、検出した基準位置データと描画パターンデータとに基づいて生成した移動データに従ってYステージ22およびXステージ23の移動を制御することにより、基板ホルダ51に保持されている複数の基板を連続してパターニングすることができるためZステージ21への基板の着脱コストを低減することができる。また、基板ホルダ51に装着されている各基板の中心位置を基準位置とすることにより、各基板について同一パターンを高精度で描画することができる。
【0042】
また、重回帰分析法に従って描画パラメータが演算されると共に自動的に条件設定される結果、迅速にパターニングを開始することができる。なお、描画パラメータとしての説明変数(x1 〜x4 )が互いに異なる5つの試料について、実際にパターニングした後に現像し、各試料についての予測パターン線幅と、実測したパターン線幅との比較表を表2に示す。この場合、試料作成の際には、200℃、30分間でガラス基板の脱水ベークを施し、冷却した後、ポジ型フォトレジストをスピンナーで回転塗布することによりレジスト膜厚を所定厚にした。この場合、試料基板としては、シリコン、ガラス、LiNbO3等の比較的反射率の低い基板や、金属蒸着された比較的反射率の高い基板など、反射率が異なる種々のタイプの基板を用いた。次いで、基板にプリベークを施し、直線パターンを描画して現像を行い、走査型電子顕微鏡(SEM)によって直線パターン線幅測定を行った。この結果、予測値と実測値とは極めて近似しており、重回帰分析法に従ってパターン線幅を演算することの妥当性が理解できる。
【0043】
【表2】
【0044】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されない。例えば、本実施形態において示したレーザー光の波長や、対物レンズ18の開口数および倍率、基板サイズなどは、この実施形態に限定されず、適宜変更が可能である。
【0045】
【発明の効果】
以上のように、請求項1記載のレーザービーム直接描画装置によれば、基板移動機構によって基板保持具を移動させつつ少なくとも1枚の基板のX方向における両端部間を検査用レーザー光で照射した際に、この基板による反射光に基づいて基板のX方向における両端部の中心位置に対応する位置データを検出すると共に、このX方向の中心位置を含む基板のY方向における両端部間を検査用レーザー光で照射した際に、反射光に基づいて基板のY方向における両端部の中心位置に対応する位置データを検出し、かつ検出したこれらの両位置データに基づいて基準位置データを検出する基準位置データ検出手段を備え、移動制御部は、検出された基準位置データ、および基準位置に対する相対的な位置データとして形成されている描画パターンデータに基づいて基板移動機構の移動を制御することにより、基板保持具に保持されている基板を連続してパターニングすることができ、これにより、基板移動機構への基板の着脱コストを低減することができる。さらに、各基板の中心位置を基準位置とすることにより、各基板について同一パターンを高精度で描画することもできる。
【0046】
また、基準位置データ検出手段が、検査用レーザー光の照射によって検出した両位置データに基づいて基準位置データを検出することにより、煩雑な画像処理を行うことなく、簡易かつ高精度で基板移動機構を移動させるためのデータを生成することができる。
【0047】
また、請求項2記載のレーザービーム直接描画装置によれば、基板保持具の基板保持位置を高精度で形成しておくことにより、例えば、特定の基板の中心位置を基準位置とし、その特定基板の保持位置と他の基板の保持位置との相対的な位置関係、特定基板の基準位置データ、および描画パターンデータに基づいてパターニングすることも可能となる。この場合には、基準位置データの検出処理を1回行うだけでよく、この処理に要する時間を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係るレーザービーム直接描画装置の構成図である。
【図2】 SHGレーザーの構成図である。
【図3】 (a)は基板ホルダの平面図、(b)は基板取付用の孔部の拡大図である。
【図4】 自動焦点合わせ機構の動作原理を説明するための動作原理図である。
【図5】 (a)は基板表面が焦点面の上方に位置しているときにおける二素子型フォトダイオードへの反射光の入射状態を示す説明図、(b)は基板表面が焦点面に位置しているときにおける二素子型フォトダイオードへの反射光の入射状態を示す説明図、(c)は基板表面が焦点面の下方に位置しているときにおける二素子型フォトダイオードへの反射光の入射状態を示す説明図である。
【図6】 焦点面に対して上下方向に基板表面を移動させたときに増幅器回路から出力される差動増幅信号の電圧値と、基板表面位置との関係図である。
【図7】 パターニング処理のフローチャートである。
【図8】 光導波路基板の平面図である。
【図9】 基板の基準位置データの検出処理を説明するための説明図である。
【図10】 (a)は基板のX座標方向に対する増幅器回路の差動増幅信号電圧の関係を示す電圧特性図、(b)は基板のY座標方向に対する増幅器回路の差動増幅信号電圧の関係を示す電圧特性図である。
【図11】 自動焦点合わせ機構を作動させたときの描画光強度および描画速度とパターン線幅との関係図である。
【図12】 自動焦点合わせ機構が非作動のときの描画光強度および描画速度とパターン線幅との関係図である。
【図13】 従来のレーザービーム直接描画装置の構成図である。
【符号の説明】
1 レーザービーム直接描画装置
2 パソコン
3 SHGレーザー
10 赤色半導体レーザー
18 対物レンズ
19 基板移動機構
21 Zステージ
51 基板ホルダ
Claims (2)
- 描画対象の基板に対してレーザー光を照射可能なレーザー光照射部と、前記基板を搭載可能に構成され当該搭載されている基板を互いに直交するX方向およびY方向に移動可能な基板移動機構と、前記基板上に塗布されたフォトレジスト上に所定のパターンを描画するために描画パターンデータに基づいて前記基板移動機構の移動を制御する移動制御部と、前記基板移動機構に固定可能に構成され、かつ所定平面における予め規定した複数の保持位置に前記基板をそれぞれ固定することにより複数の基板を保持可能な基板保持具と、前記保持されている複数の基板の少なくとも1枚における基準位置に対応する基準位置データを検出する基準位置データ検出手段とを備え、前記移動制御部は、前記検出された基準位置データおよび前記描画パターンデータに基づいて前記基板移動機構の移動を制御するレーザービーム直接描画装置であって、
前記描画パターンデータは前記基準位置に対する相対的な位置データとして形成され、
前記基準位置データ検出手段は、前記保持されている基板に対して検査用レーザー光を照射可能な検査用レーザー照射部を備え、前記基板移動機構によって前記基板保持具を移動させつつ前記少なくとも1枚の基板の前記X方向における両端部間を前記検査用レーザー光で照射した際に、当該基板による反射光に基づいて当該基板のX方向における前記両端部の中心位置に対応する位置データを検出すると共に、当該X方向の中心位置を含む当該基板の前記Y方向における両端部間を前記検査用レーザー光で照射した際に、前記反射光に基づいて当該基板の当該Y方向における前記両端部の中心位置に対応する位置データを検出し、かつ当該検出した両位置データに基づいて前記基準位置データを検出することを特徴とするレーザービーム直接描画装置。 - 前記基板保治具には、前記基板を装着可能な孔部が複数形成され、
前記基準位置データ検出手段は、前記複数の孔部のうちの1つに装着された特定の前記基板に対する前記基準位置データを検出し、
前記移動制御部は、前記特定の基板が装着された前記孔部と他の前記孔部との相対的な位置関係、前記特定の基板の前記基準位置データ、および前記描画パターンデータに基づいて前記基板移動機構の移動を制御することを特徴とする請求項1記載のレーザービーム直接描画装置。
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