JP4013944B2 - 光学装置 - Google Patents

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本発明は、波長の異なる光を回折の対象とする回折格子素子を備え、波長の異なる光を送受する光学装置に関する。
光通信においては、光ファイバ等の光伝送部材を用いて、波長の異なる光を双方向に伝送することが行われている。このような光通信で送受信に用いられる光学装置、すなわち、信号を光に担持させて光伝送部材に送出するとともに、光伝送部材から光を受けて、その光に担持されている信号を検出する光学装置では、送出する光と受ける光に同一の光伝送媒体を共用しながら、光を送出する送出部と光を受ける受光部とを異なる位置に配置する必要がある。そこで、光伝送部材の延長上に光束を分離・結合する分離結合部材を配置して、送出部から分離結合部材までの光路と分離結合部材から受光部までの光路とを分離し、分離結合部材から光伝送部材までの両光束の光路を結合する(一致させる)ようにしている。
通信量の増大をはかるために、光伝送部材によって同じ方向に伝送する光に波長の異なるものを含ませることも行われている。このような光通信の光学装置では、送出部または受光部を複数備えることに加えて、分離結合部材を複数備えるか、あるいは、光伝送部材からの波長の異なる光を分離する機能を単一の分離結合部材にもたせることになる。
分離結合部材としては、入射光を、その波長に応じて、反射しまたは透過させる多層膜フィルタが用いられている。しかし、多層膜フィルタは、作成工程が複雑で作成に時間を要し、コストが高いという問題を有する。
光を用いて記録媒体に情報を記録し記録媒体から情報を読み出す光記録再生装置においても、光通信の光学装置と同様に、光束を分離・結合する必要がある。特開2000−163791号では、波長の異なる光を用いる光記録再生装置の光ヘッドに、分離結合部材として、入射光を、その波長に応じて、異なる角度で回折させる回折格子を用いることが提案されている。
特開2000−163791号公報
回折格子は、凹凸を周期的に配列したものであるため、樹脂成形によって作成することが可能である。したがって、回折格子を備える回折格子素子は、大量生産に適し低コストであるという利点を有する。
回折格子による回折角の波長依存性を利用して、波長の異なる複数の光束を空間的に大きく分離するためには、回折格子の凹凸の周期を小さくする必要がある。また、回折の対象とする光の波長はある程度の幅を有するため、たとえ平行光束を回折格子に入射させても、回折後の光束には広がりが生じる。回折後の光束の広がりは、入射光の波長帯域が広いほど大きくなり、また、回折格子の周期が小さいほど大きくなる。
光通信の装置では、回折後の光束が広がると、送出する光の一部が光伝送部材に入射しなくなったり、光伝送部材からの光の一部が受光部に入射しなくなったりして、送受する信号の正確性が低下する結果となる。これを防止するためには、光伝送部材と分離結合部材との間や、分離結合部材と受光部との間に集光用の光学部材を配置しなければならず、装置の大型化を招く。
光記録再生装置では、回折後の光束が広がると、記録媒体上の微小な範囲に光を収束させることができなくなって記録密度が低下したり、記録媒体からの光の一部が受光部に入射しなくなって読み出し精度が低下したりする。これを防止するためには、分離結合部材と記録媒体との間に配置する可動の対物レンズを大きくしなければならず、装置の大型化を招く上に、対物レンズの応答速度が低下して、処理速度の面で装置の性能が低下する。
また、回折格子の回折効率は、凹凸の周期が小さくなるほど低下する傾向にある。凹凸の周期を小さくしながら高い回折効率を維持する方法として、回折後の光束が入射位置における回折格子の法線よりも入射光束に近くなるリトロー配置が知られている。しかし、光通信の光学装置でリトロー配置を採用すると、光伝送部材と受光部とが空間的に接近するため、両者の配設が容易でなくなる。
さらに、回折格子の凹凸の周期を小さくすると、回折格子に対してp偏光となる偏光成分とs偏光となる偏光成分とで、回折効率の差が大きくなる。光通信では一般に伝送する光として直線偏光が用いられるから、回折格子に対する光の偏光方向を考慮しなければ、送受する光の強度が低下することになって、送受する信号の正確性の低下を招く結果となる。
本発明は、波長の異なる光を回折の対象とする回折格子素子における上記の諸問題を解決することを目的とし、特に、入射する光の偏光方向にかかわらず回折効率が高い回折格子素子を備え、波長帯域の異なる複数の光束を分離または結合する光学装置であって、光の強度低下を抑えることが容易なものを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明では、第1の波長帯域の光束を回折反射し、第1の波長帯域の光束の回折反射先から入射する第1の波長帯域よりも長波長の複数の波長帯域の光束を回折反射して分離する回折格子素子を有する光学装置は、
λ1L < λ1U < λ2L < λ2U < λ3L < λ3U
n2 < n1・sinθ
1/(n1+n1・sinθ) ≦ Λ/λ3U < Λ/λ2L ≦ 1/(n2+n1・sinθ)
1/(n2+n1・sinθ) ≦ Λ/λ1U < Λ/λ1L ≦ 2/(n1+n1・sinθ)
および
Λ/λ3L < 1/(2・n1・sinθ) < Λ/λ2U
の関係を満たすものとする。ここで、n1およびn2はそれぞれ回折格子を挟む媒質のうち光束が通る側に位置する第1の媒質およびその反対側に位置する第2の媒質の屈折率、θは光束の主光線の回折格子への入射角、Λは回折格子の凹凸の周期、λ1Lおよびλ1Uはそれぞれ第1の波長帯域の最短波長および最長波長、λ2Lおよびλ2Uはそれぞれ第1の波長帯域よりも長波長の複数の波長帯域のうち最短のものの最短波長および最長波長、λ3Lおよびλ3Uはそれぞれ第1の波長帯域よりも長波長の複数の波長帯域のうち最長のものの最短波長および最長波長である。
この回折格子素子は、上記の関係を満たすことで、波長帯域の異なるいずれの光束に対しても、偏光方向によらず高い回折効率を示すものとなる。
ここで、回折格子の凹凸が、入射する光束の主光線の入射面に略平行な第1の方向に加えて、第1の方向に対して垂直な第2の方向に周期を有し、第1の方向の周期が前記周期である構成とするとよい。このようにすると、第1の方向に対して傾斜した方向から光束を回折格子に入射させて、第2の方向においても回折を生じさせることが可能である。その結果、分離後の光束間の角度差を大きくすることができる。
また、回折格子の凹凸の第2の方向の周期をΛyと表すとき、
Λ2/λ2L2 ≦ Λy2/λ2L2 < 1/[n12・[1−(sinθ−1.1・λ2L/(n1・Λ))2]]
の関係を満たすようにするとよい。この関係を満たすことで、不要な回折が抑えられ、回折効率が高まる。
回折格子の凹凸の周期の方向に平行な各凹凸の断面が略矩形である構造とするとよい。回折格子の設計が容易になる上、樹脂成形による素子の製造も容易になる。
前記目的を達成するために、本発明ではまた、第1の波長帯域の光束を供給する第1の光学部品と、第1の波長帯域よりも長波長の波長帯域の複数の光束を供給するとともに、第1の光学部品からの第1の波長帯域の光束を受ける第2の光学部品とを備えた光学装置は、回折格子によって、第1の光学部品からの光束を回折反射して第2の光学部品に導き、第2の光学部品からの複数の光束を回折反射して分離するものとする。
この光学装置では、回折格子素子の特徴により、各光束の偏光方向にかかわらず、第1の光学部品からの光束を効率よく第2の光学部品に導き、第2の光学部品からの波長帯域の異なる光束を効率よく分離することができる。
第2の光学部品は光ファイバとすることができる。このようにすると、光通信に適する装置となる。
回折格子に入射する光束または回折格子から出射した光束を集光させる光学部品を備えるようにしてもよい。このようにすると、回折格子に入射する光束を平行光束に近づけたり、回折格子から出射する光束の広がりを抑えたりすることができて、光束を狭い範囲に導くことが可能になり、光の損失を抑え得る装置となる。
本発明によれば、回折格子素子は、波長帯域が異なる光束を回折させるものでありながら、いずれの光束に対しても、偏光方向によらず高い効率で回折を生じさせることができる。したがって、各光束の偏光方向にかかわらず、第1の光学部品からの光束を効率よく第2の光学部品に導き、第2の光学部品からの波長帯域の異なる光束を効率よく分離することができ、回折格子に対する各光束の偏光方向に注意を払う必要のない、使い易い装置となる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
<第1の実施形態>
第1の実施形態の光学装置1の構成を図1に模式的に示す。光学装置1は、光通信における送受信用の装置であり、発光部21、発光制御部22、光ファイバ31、受光部41、信号検出部42、および回折格子素子51を有する。
発光部21は送出する光束LTを発し、発光制御部22は、発光部21の発光を制御して、発光部21が発する光束LTに送信する信号を担持させる。図示しないが、発光部21は、レーザダイオードと集光レンズを備えており、レーザダイオードが発した光を集光レンズによって平行光束として射出する。
光ファイバ31は、送信信号を担持した発光部11からの光束LTを外部に伝送するとともに、受信すべき信号を担持した光束LRを外部から伝送してくる。
受光部41は、光ファイバ31によって伝送されてきた光束LRを受けて、受光量を表す信号を出力し、信号検出部41は、受光部41の出力信号から光束LRに担持されている信号を検出する。光束LTの波長帯域と光束LRの波長帯域は異なり、互いに分離している。光束LTの波長は光束LRの波長よりも短い。
回折格子素子51は、表面に回折格子52(図2参照)を備えており、発光部21からの光束LTを光ファイバ31に導くとともに、光ファイバ31からの光束LRを受光部41に導く。
回折格子52の設定について説明する。ここで、回折格子52の凹凸の周期をΛ、回折格子52の凹凸の高低差をh、回折格子52を挟む2つの媒質のうち、光束LTの入射側に位置する方の屈折率をn1、他方の屈折率をn2、回折格子52への光束の入射角をθ1、回折格子52からの光束の出射角をθ2、より短波長の光束LTの中心波長をλS、より長波長の光束LRの中心波長をλLとする。
回折格子52は式(A1)〜(A3)の関係を満たす。
n2 ≧ n1・sinθ1 ・・・ 式(A1)
Λ/λL ≦ 1/(n1+n1・sinθ1) ・・・ 式(A2)
Λ/λS > 1/(n1+n1・sinθ1)−0.04 ・・・ 式(A3)
これらの関係を満たすことで、回折格子52は、より短波長の光束LTを−1次で回折透過させ、より長波長の光束LRを0次で回折透過させるものとなる。
送出する光束LTの中心波長を1310nm、受ける光束LRの中心波長を1490nmとし、回折格子52に、光束LTを回折格子素子51の内部側から、光束LRを空気側から入射させるようにした設定例における光路を図2に模式的に示し、諸パラメータを表1に示す。なお、光束LT、LRの主光線の入射面は、回折格子52の周期の方向に平行
である。
[表1]
回折格子52
断面形状:矩形
凹凸周期Λ:0.69μm
凹凸高低差h:1.39μm
凸部幅:0.35μm
媒質屈折率:1.5
光束LT
波長(λS):1310nm
周期/波長(Λ/λS):0.53
入射角θ1:60゜
出射角θ2:−42.6゜
s偏光透過回折効率:0.72
光束LR
波長(λL):1490nm
周期/波長(Λ/λL):0.46
入射角θ1:60゜
出射角θ2:35.3゜
p偏光透過率:0.87
s偏光透過率:0.73
平均透過率:0.8
なお、表1において、回折格子52の凸部幅とは、光束LTの入射側(回折格子素子51の内部)に向かって凸部となっている部分の幅である。また、ここでは、光学装置1での使用形態とは逆に、光束LTを光束LRと同じ方向から入射させて、光束LT、LRを分離する場合の値を掲げている。つまり、光学装置1での使用形態においては、光束LTの入射角θ1と出射角θ2は表1の値と逆になる。
上記の設定例(n1=1、θ1=60゜)において、式(A2)、(A3)に含まれる1/(n1+n1・sinθ1)の値が変化したときの回折効率の変化の様子を、図3に示す。なお、1/(1+1・sin60゜)の値は0.536である。図3より判るように、0次の透過光とする光束LRは、その中心波長λLを式(A2)の範囲内にすることで、透過率が高くなり、−1次の透過光とする光束LTは、その中心波長λSを式(A3)の範囲内にすることで、透過率が高くなる。
回折後の光束の広がりは波長帯域の幅に比例するため、本実施形態の光学装置1における回折格子素子51のように、回折格子52がより長波長の光束LRを回折させることなく透過させるようにすることは、光束LRの広がりの防止に有効である。この設定により、受光部41を大きくしなくても、光束LRを全て受光部41に導くことができる。
<第2の実施形態>
本実施形態の光学装置2も光通信用のもので、図1に示した光学装置1と同様の構成であり、発光部21、発光制御部22、光ファイバ31、受光部41、信号検出部42、および回折格子素子51を有する。
光学装置2における回折格子素子51の回折格子52の設定について説明する。ここで、第1の実施形態と同様に、回折格子52の凹凸の周期をΛ、回折格子52の凹凸の高低差をh、回折格子52を挟む2つの媒質のうち、光束LTの入射側に位置する方の屈折率をn1、他方の屈折率をn2、回折格子52への光束の入射角をθ1、回折格子52からの光束の出射角をθ2、より短波長の光束LTの中心波長をλS、より長波長の光束LRの中心波長をλLとする。
回折格子52は式(B1)〜(B3)の関係を満たす。
n2 < n1・sinθ1 ・・・ 式(B1)
Λ/λL ≦ 1/(n1+n1・sinθ1) ・・・ 式(B2)
1/(n1+n1・sinθ1) ≦ Λ/λS ≦ 1/(n2+n1・sinθ1) ・・・ 式(B3)
これらの関係を満たすことで、回折格子52は、より短波長の光束LTを−1次で回折反射し、より長波長の光束LRを0次で回折反射(正反射)するものとなる。
送出する光束LTの中心波長を1310nm、受ける光束LRの中心波長を1490nmとし、回折格子52に光束LT、LRを回折格子素子51の内部側から入射させるようにした設定例における光路を図4に模式的に示し、諸パラメータを表2に示す。なお、光束LT、LRの主光線の入射面は、回折格子52の周期の方向に平行である。
[表2]
回折格子52
断面形状:矩形
凹凸周期Λ:0.585μm
凹凸高低差h:0.42μm
凸部幅:0.293μm
媒質屈折率:1.5
光束LT
波長(λS):1310nm
周期/波長(Λ/λS):0.45
入射角θ1:45゜
出射角θ2:−51.8゜
s偏光反射回折効率:0.85
光束LR
波長(λL):1490nm
周期/波長(Λ/λL):0.39
入射角θ1:45゜
出射角θ2:45゜
p偏光反射率:0.89
s偏光反射率:0.86
平均反射率:0.875
なお、表2において、回折格子52の凸部幅とは、光束LT、LRの入射側(回折格子素子51の内部)に向かって凸部となっている部分の幅である。また、ここでは、光学装置2での使用形態とは逆に、光束LTを光束LRと同じ方向から入射さて、光束LT、LRを分離する場合の値を掲げている。つまり、光学装置2での使用形態においては、光束LTの入射角θ1と出射角θ2は表2の値と逆になる。
0次の反射光とする光束LRは、その中心波長λLを式(B2)の範囲内にすることで、反射率が高くなり、−1次の反射光とする光束LTは、その中心波長λSを式(B3)の範囲内にすることで、反射率が高くなる。なお、1/(1.5+1.5・sin45゜)の値は0.391、1/(1+1.5・sin45゜)の値は0.485である。
回折後の光束の広がりは波長帯域の幅に比例するため、本実施形態の光学装置2における回折格子素子51のように、回折格子52がより長波長の光束LRを回折させることなく反射するようにすることは、光束LRの広がりの防止に有効である。この設定により、受光部41を大きくしなくても、光束LRを全て受光部41に導くことができる。
<第3の実施形態>
本実施形態の光学装置3も光通信用のもので、図1に示した光学装置1と同様の構成であり、発光部21、発光制御部22、光ファイバ31、受光部41、信号検出部42、および回折格子素子51を有する。
光学装置3における回折格子素子51の回折格子52の設定について説明する。ここで、第1の実施形態と同様に、回折格子52の凹凸の周期をΛ、回折格子52の凹凸の高低差をh、回折格子52を挟む2つの媒質のうち、光束LTの入射側に位置する方の屈折率をn1、他方の屈折率をn2、回折格子52への光束の入射角をθ1、回折格子52からの光束の出射角をθ2、より短波長の光束LTの中心波長をλS、より長波長の光束LRの中心波長をλLとする。
回折格子52は式(C1)〜(C3)の関係を満たす。
n2 < n1・sinθ1 ・・・ 式(C1)
1/(n1+n1・sinθ1) ≦ Λ/λL ≦ 1/(n2+n1・sinθ1) ・・・ 式(C2)
1/(n2+n1・sinθ1) ≦ Λ/λS ≦ 2/(n1+n1・sinθ1) ・・・ 式(C3)
これらの関係を満たすことで、回折格子52は、より長波長の光束LRを−1次で回折反射し、より短波長の光束LTを0次で回折反射(正反射)するものとなる。
送出する光束LTの中心波長を1310nm、受ける光束LRの中心波長を1490nmとし、回折格子52に光束LT、LRを回折格子素子51の内部側から入射させるようにした設定例における光路を図5に模式的に示し、諸パラメータを表3−1に示す。なお、光束LT、LRの主光線の入射面は、回折格子52の周期の方向に平行である。
[表3−1]
回折格子52
断面形状:矩形
凹凸周期Λ:0.6μm
凹凸高低差h:0.645μm
凸部幅:0.3μm
媒質屈折率:1.5
光束LT
波長(λS):1310nm
周期/波長(Λ/λS):0.46
入射角θ1:60゜
出射角θ2:60゜
反射率:0.81(−1.83dB)
光束LR
波長(λL):1490nm
周期/波長(Λ/λL):0.40
入射角θ1:60゜
出射角θ2:−52.1゜
p偏光反射回折効率:0.83(−1.63dB)
s偏光反射回折効率:0.87(−1.20dB)
平均反射回折効率:0.85(−1.41dB)
なお、表3−1において、回折格子の凸部幅とは、光束LT、LRの入射側(回折格子素子51の内部)に向かって凸部となっている部分の幅である。また、表3−1には、反射率および反射効率のdB換算値も示している。
−1次の反射光とする光束LRは、その中心波長λLを式(C2)の範囲内にすることで、反射率が高くなり、0次の反射光とする光束LTは、その中心波長λSを式(C3)の範囲内にすることで、反射率が高くなる。なお、1/(1.5+1.5・sin60゜)の値は0.357、1/(1+1.5・sin60゜)の値は0.434、2/(1.5+1.5・sin60゜)の値は0.715である。
波長帯域の幅が同じ場合、光束LRに比べて短波長の光束LTの方が、回折後の広がりが少ない。しかし、波長帯域の幅が広くなれば、より短波長の光束LTであっても、回折後の広がりは大きくなる。このような場合、光束LTを全て光ファイバ31に入射させることが難しくなる。しかしながら、本実施形態の光学装置3の回折格子素子51では、回折格子52が、光束LTに対して0次の回折を生じさせる、つまり、回折を生じさせないようにしているため、光束LTの広がりを招くことがなく、直径がμmオーダーと細い光ファイバ31に光束LTを全て入射させることは容易である。
光束LTの波長帯域が波長λSを中心に±50nmの幅を有するときの光束LTに関するパラメータを表3−2および表3−3に示し、光束LRの波長帯域が波長λLを中心に±10nmの幅を有するときの光束LRに関するパラメータを表3−4および表3−5に示す。他のパラメータは表3−1と同じである。
[表3−2]
光束LT
最短波長(λS−50):1260nm
周期/波長(Λ/(λS−50)):0.48
入射角θ1:60゜
出射角θ2:60゜
反射率:0.85(−1.43dB)
[表3−3]
光束LT
最長波長(λS+50):1360nm
周期/波長(Λ/(λS+50)):0.44
入射角θ1:60゜
出射角θ2:60゜
反射率:0.78(−2.11dB)
[表3−4]
光束LR
最短波長(λL−10):1480nm
周期/波長(Λ/(λL−10)):0.41
入射角θ1:60゜
出射角θ2:−51.1゜
p偏光反射回折効率:0.82(−1.76dB)
s偏光反射回折効率:0.81(−1.80dB)
平均反射回折効率:0.81(−1.78dB)
[表3−5]
光束LR
最長波長(λL+10):1500nm
周期/波長(Λ/(λL+10)):0.40
入射角θ1:60゜
出射角θ2:−53.2゜
p偏光反射回折効率:0.83(−1.62dB)
s偏光反射回折効率:0.91(−0.79dB)
平均反射回折効率:0.87(−1.20dB)
回折格子52は、光束LTに回折を生じさせないため、その波長帯域の最短波長および最長波長でも反射角に変化はなく、また、表3−2、3−3より明らかなように、最短波長および最長波長でも高い反射率となる。
<第4の実施形態>
第4の実施形態の光学装置4の構成を図6に模式的に示す。光学装置4は、第1〜第3の実施形態の光学装置1〜3と同様に送受信用の装置であるが、光ファイバ31を介して、波長帯域の異なる2つの光束LR1、LR2を受ける。このため、前述の発光部21、発光制御部22、光ファイバ31、受光部41、信号検出部42、および回折格子素子51に加えて、受光部43と信号検出部44を有し、回折格子素子51は、送出する光束LTと受ける光束LR1、LR2の、計3光束を回折の対象とする。光束LTが最も短波長、光束LR2が最も長波長、光束LR1が中間の波長である。
光学装置4における回折格子素子51の回折格子52の設定について説明する。
回折格子52の凹凸の周期をΛ、回折格子52の凹凸の高低差をh、回折格子52を挟む2つの媒質のうち、光束LTの入射側に位置する方の屈折率をn1、他方の屈折率をn2、回折格子52への光束の入射角をθ1、回折格子52からの光束の出射角をθ2、最も短波長の光束LTの中心波長をλS、最も長波長の光束LR2の中心波長をλL、中間の波長の光束LR1の中心波長をλMとする。
回折格子52は式(D1)〜(D3)の関係を満たす。
n2 < n1・sinθ1 ・・・ 式(D1)
1/(n1+n1・sinθ1) ≦ Λ/λL ≦ 1/(n2+n1・sinθ1) ・・・ 式(D2)
1/(n1+n1・sinθ1) ≦ Λ/λM ≦ 1/(n2+n1・sinθ1) ・・・ 式(D2')
1/(n2+n1・sinθ1) ≦ Λ/λS ≦ 2/(n1+n1・sinθ1) ・・・ 式(D3)
これらの関係を満たすことで、回折格子52は、最も長波長の光束LR2と中間の波長の光束LR1を−1次で回折反射し、最も短波長の光束LTを0次で回折反射(正反射)するものとなる。
送出する光束LTの中心波長を1310nm、受ける光束LR1、LR2の中心波長をそれぞれ1490nm、1555nmとし、回折格子52に光束LT、LR1、LR2を回折格子素子51の内部側から入射させるようにした設定例における光路を図7に模式的に示し、諸パラメータを表4−1に示す。なお、光束LT、LR1、LR2の主光線の入射面は、回折格子52の周期の方向に平行である。
[表4−1]
回折格子52
断面形状:矩形
凹凸周期Λ:0.629μm
凹凸高低差h:0.645μm
凸部幅:0.239μm
媒質屈折率:1.5
光束LT
波長(λS):1310nm
入射角θ1:51゜
出射角θ2:51゜
反射率:0.76(−2.41dB)
光束LR1
波長(λM):1490nm
入射角θ1:51゜
出射角θ2:−53.3゜
p偏光反射回折効率:0.95(−0.44dB)
s偏光反射回折効率:0.85(−1.45dB)
平均反射回折効率:0.90(−0.93dB)
光束LR2
波長(λM):1555nm
入射角θ1:51゜
出射角θ2:−60.6゜
p偏光反射回折効率:0.76(−2.34dB)
s偏光反射回折効率:0.75(−2.45dB)
平均反射回折効率:0.76(−2.39dB)
なお、表4−1において、回折格子の凸部幅とは、光束LT、LR1、LR2の入射側(回折格子素子51の内部)に向かって凸部となっている部分の幅である。
−1次の反射光とする光束LR1、LR2は、中心波長λM、λLを式(D2')、(D2)の範囲内にすることで、反射率が高くなり、0次の反射光とする光束LTは、中心波長λSを式(D3)の範囲内にすることで、反射率が高くなる。なお、1/(1.5+1.5・sin51゜)の値は0.375、1/(1+1.5・sin51゜)の値は0.462、2/(1.5+1.5・sin51゜)の値は0.750である。
本実施形態においても、第3の実施形態と同様に、回折格子52が、光束LTに対して0次の回折を生じさせる、つまり、回折を生じさせないようにしているため、光束LTの広がりを招くことがなく、細い光ファイバ31に光束LTを全て入射させることは容易である。
光束LTの波長帯域が波長λSを中心に±50nmの幅を有するときの光束LTに関するパラメータを表4−2および表4−3に示し、光束LR1の波長帯域が波長λMを中心に±10nmの幅を有するときの光束LR1に関するパラメータを表4−4および表4−5に示し、光束LR2の波長帯域が波長λLを中心に±5nmの幅を有するときの光束LR2に関するパラメータを表4−6および表4−7に示す。他のパラメータは表4−1と同じである。
[表4−2]
光束LT
最短波長(λS−50):1260nm
入射角θ1:51゜
出射角θ2:51゜
反射率:0.87(−1.26dB)
[表4−3]
光束LT
最長波長(λS+50):1360nm
入射角θ1:51゜
出射角θ2:51゜
反射率:0.74(−2.64dB)
[表4−4]
光束LR1
最短波長(λM−10):1480nm
入射角θ1:51゜
出射角θ2:−52.3゜
p偏光反射回折効率:0.96(−0.33dB)
s偏光反射回折効率:0.84(−1.52dB)
平均反射回折効率:0.90(−0.90dB)
[表4−5]
光束LR1
最長波長(λM+10):1500nm
入射角θ1:51゜
出射角θ2:−54.4゜
p偏光反射回折効率:0.93(−0.60dB)
s偏光反射回折効率:0.85(−1.45dB)
平均反射回折効率:0.89(−1.02dB)
[表4−6]
光束LR2
最短波長(λL−5):1550nm
入射角θ1:51゜
出射角θ2:−60゜
p偏光反射回折効率:0.78(−2.12dB)
s偏光反射回折効率:0.77(−2.30dB)
平均反射回折効率:0.78(−2.21dB)
[表4−7]
光束LR2
最長波長(λL+5):1560nm
入射角θ1:51゜
出射角θ2:−61.2゜
p偏光反射回折効率:0.74(−2.56dB)
s偏光反射回折効率:0.74(−2.62dB)
平均反射回折効率:0.74(−2.59dB)
回折格子52は、光束LTに回折を生じさせないため、その波長帯域の最短波長および最長波長でも反射角に変化はなく、また、表4−2、4−3より明らかなように、最短波長および最長波長でも高い反射率となる。
<第5の実施形態>
本実施形態の光学装置5も光通信用のもので、図1に示した光学装置1と同様の構成であり、発光部21、発光制御部22、光ファイバ31、受光部41、信号検出部42、および回折格子素子51を有する。
光学装置5における回折格子素子51の回折格子52の設定について説明する。ここで、第1の実施形態と同様に、回折格子52の凹凸の周期をΛ、回折格子52の凹凸の高低差をh、回折格子52を挟む2つの媒質のうち、光束LTの入射側に位置する方の屈折率をn1、他方の屈折率をn2、回折格子52への光束の入射角をθ1、回折格子52からの光束の出射角をθ2、より短波長の光束LTの中心波長をλS、より長波長の光束LRの中心波長をλLとする。
回折格子52は式(E1)〜(E3)の関係を満たす。
n2 ≧ n1・sinθ1 ・・・ 式(E1)
Λ/λL ≦ 1/(n2+n1・sinθ1) ・・・ 式(E2)
1/(n2+n1・sinθ1)−0.04 < Λ/λS < 1/(n2+n1・sinθ1)+0.02
・・・ 式(E3)
これらの関係を満たすことで、回折格子52は、より長波長の光束LRを0次で回折透過させ、より短波長の光束LTを0次で回折反射(正反射)するものとなる。
送出する光束LTの中心波長を1310nm、受ける光束LRの中心波長を1490nmとし、回折格子52に光束LT、LRを回折格子素子51の内部側から入射させるようにした設定例における光路を図8に模式的に示し、諸パラメータを表5−1に示す。なお、光束LT、LRの主光線の入射面は、回折格子52の周期の方向に平行である。
[表5−1]
回折格子52
断面形状:矩形
凹凸周期Λ:0.667μm
凹凸高低差h:1.167μm
凸部幅:0.267μm
媒質屈折率:1.5
光束LT
波長(λS):1310nm
周期/波長(Λ/λS):0.509
入射角θ1:36゜
出射角θ2:36゜
反射率:0.71(−2.93dB)
光束LR
波長(λL):1490nm
周期/波長(Λ/λL):0.448
入射角θ1:36゜
出射角θ2:61.8゜
p偏光透過率:0.91(−0.86dB)
s偏光透過率:0.76(−2.34dB)
平均透過率:0.83(−1.57dB)
なお、表5−1において、回折格子の凸部幅とは、光束LT、LRの入射側(回折格子素子51の内部)に向かって凸部となっている部分の幅である。
上記の設定例(n1=1.5、n2=1、θ1=36゜)において、式(E2)、(E3)に含まれる1/(n2+n1・sinθ1)の値が変化したときの回折効率の変化の様子を、図9に示す。なお、1/(1+1.5・sin36゜)の値は0.531である。図9より判るように、0次の透過光とする光束LRは、その中心波長λLを式(E2)の範囲内にすることで、透過率が高くなり、0次の反射光とする光束LTは、その中心波長λSを式(E3)の範囲内にすることで、反射率が高くなる。
光学装置5においては、回折格子52が、光束LT、LRの双方に対して0次の回折を生じさせる、つまり、回折を生じさせないようにしているため、光束LT、LRの広がりを招くことがなく、細い光ファイバ31に光束LTを全て入射させることや、小さな受光部41に光束LRを全て入射させることは容易である。
光束LTの波長帯域が波長λSを中心に±50nmの幅を有するときの光束LTに関するパラメータを表5−2および表5−3に示し、光束LRの波長帯域が波長λLを中心に±10nmの幅を有するときの光束LRに関するパラメータを表5−4および表5−5に示す。他のパラメータは表5−1と同じである。
[表5−2]
光束LT
最短波長(λS−50):1260nm
周期/波長(Λ/(λS−50)):0.529
入射角θ1:36゜
出射角θ2:36゜
反射率:0.85(−1.39dB)
[表5−3]
光束LT
最長波長(λS+50):1360nm
周期/波長(Λ/(λS+50)):0.490
入射角θ1:36゜
出射角θ2:36゜
反射率:0.59(−4.65dB)
[表5−4]
光束LR
最短波長(λL−10):1480nm
周期/波長(Λ/(λL−10)):0.451
入射角θ1:36゜
出射角θ2:61.8゜
p偏光透過率:0.90(−0.92dB)
s偏光透過率:0.76(−2.44dB)
平均透過率:0.83(−1.64dB)
[表5−5]
光束LR
最長波長(λL+10):1500nm
周期/波長(Λ/(λL+10)):0.445
入射角θ1:36゜
出射角θ2:61.8゜
p偏光透過率:0.91(−0.80dB)
s偏光透過率:0.77(−2.25dB)
平均透過率:0.84(−1.50dB)
回折格子52は、光束LT、LRに回折を生じさせないため、それらの波長帯域の最短波長および最長波長でも出射角に変化はなく、また、各々の最短波長および最長波長でも高い反射率や透過率となる。
<第6の実施形態>
第6の実施形態の光学装置6の構成を図10に模式的に示す。光学装置6は、第5の実施形態の光学装置5と同様に送受信用の装置であるが、光ファイバ31を介して、波長帯域の異なる2つの光束LT1、LT2を送出する。このため、前述の発光部21、発光制御部22、光ファイバ31、受光部41、信号検出部42、および回折格子素子51に加えて、発光部23と発光制御部24を有し、回折格子素子51は、送出する光束LT1、LT2と受ける光束LRの、計3光束を回折の対象とする。光束LT1が最も短波長、光束LRが最も長波長、光束LT2が中間の波長である。
光学装置6における回折格子素子51の回折格子52の設定について説明する。ここで回折格子52の凹凸の周期をΛ、回折格子52の凹凸の高低差をh、回折格子52を挟む2つの媒質のうち、光束LT1の入射側に位置する方の屈折率をn1、他方の屈折率をn2、回折格子52への光束の入射角をθ1、回折格子52からの光束の出射角をθ2、最も短波長の光束LT1の中心波長をλS、最も長波長の光束LRの中心波長をλL、中間の波長の光束LT2の中心波長をλMとする。
回折格子52は式(F1)〜(F4)の関係を満たす。
n2 ≧ n1・sinθ1 ・・・ 式(F1)
Λ/λL ≦ 1/(n2+n1・sinθ1) ・・・ 式(F2)
1/(n2+n1・sinθ1)−0.04 < Λ/λM < 1/(n2+n1・sinθ1)+0.02
・・・ 式(F3)
Λ/λS ≧ 1/(n2+n1・sinθ1) ・・・ 式(F4)
このようにすると、回折格子52は、最も長波長の光束LRと最も短波長の光束LT1を0次で回折透過させ、中間の波長の光束LT2を0次で回折反射(正反射)するものと
なる。
<第7の実施形態>
本実施形態の光学装置7は、光ファイバ31を介して波長帯域の異なる2つの光束LR1、LR2を受ける第4の実施形態の光学装置4を修飾したものである。光学装置7における回折格子素子51および光束LR1、LR2の光路を図11に示す。回折格子素子51の回折格子52が設けられていない表面のうち、回折後の光束LR1、LR2が通る部位53は、回折格子52の周期の方向に対して垂直な軸を中心とする円柱状の曲面とされており、光束LR1、LR2に対して凸レンズとして作用する。
光束LR1、LR2は、回折光であるため波長帯域の幅に応じて広がるが、それらが通る部位53にこのように集光機能をもたせることで、光束LR1、LR2を平行光束に近づけるたり、収束光束としたりすることが可能である。したがって、受光部41、43を大きくすることなく、光束LR1、LR3を全て受光部41、43に入射させることができる。また、部位53の曲面形状によって収差を抑えることも可能である。
曲面である部位53の曲率半径を、回折格子52への光束の入射点から部位53までの距離に等しくすれば、部位53は集光機能をもたないことになる。しかし、それでも、部位53が平面である場合のように、屈折によって光束LR1、LR2がさらに広がるのを、防止することができる。
なお、本実施形態では、光束LR1の中心波長λMを1480nm、光束LR2の中心波長λLを1500nmとしている。光束LR1、LR2の入射角θ1は51゜であり、光束LR1の反射角θ2は52.3゜、光束LR2の反射角θ2は54.3゜である。また、図示していないが、送出する光束LTは、中心波長LSが1260nmのとき入射角55.49゜、中心波長LSが1310nmのとき入射角51.8゜、中心波長LSが1360nmのとき入射角48.39゜である。
<第8の実施形態>
本実施形態の光学装置8は、送出する光束LTを−1次で回折反射する第2の実施形態の光学装置2を修飾したものである。光学装置8における回折格子素子51および光束LTの光路を図12に示す。回折格子素子51の回折格子52が設けられていない表面のうち、入射前の光束LTが通る部位54は、回折格子52の周期の方向に対して垂直な軸を中心とする円柱状の曲面とされており、光束LTに対して凸レンズとして作用する。発光部21からの光束LTが発散光である場合でも、このように部位54に集光機能をもたせることで、回折格子52に入射する光束LTを平行光束に近づけることができる。
光学装置8は、回折格子52上の光束LTの入射位置を中心とし、回折格子51に垂直でその周期の方向に平行な平面上に位置する円弧状のレール25を備えている。発光部21はレール25に沿って可動に設定されており、発光部21の位置によって、回折格子52に対する光束LTの入射角は変わる。また、発光部21には温度センサ26が取り付けられており、発光部21の位置は温度センサ26によって検出された温度に応じて制御される。
光束LTを発する発光部21のレーザダイオードの特性は温度によって変動し、そのため、光束LTの波長も温度によって変動する。波長が変動すると、回折格子52による光束LTの回折角も変動し、回折後の光束LTの一部が光ファイバ31に入射しなくなることがある。しかし、このように、回折格子52に対する光束LTの入射角を温度に応じて変えるようにすることで、確実に光束LTを全て光ファイバ31に入射させることができる。
温度センサ26を備えることに代えて、光ファイバ31の端部近傍に複数の光センサ35を備えて、どの光センサ35に光束LTが入射するかに応じて、発光部21の位置を制御するようにしてもよい。その場合、どの光センサ35にも光束LTが入射しないよう発光部21の位置を設定することで、光束LTの全てを光ファイバ31に入射させることができる。
なお、光束LT、LRの波長、回折格子52の設定等は第2の実施形態と同様である。
<第9の実施形態>
本実施形態の光学装置9の回折格子素子11を図13に示す。図13において、(a)は側面図、(b)は平面図である。本実施形態では、回折格子素子11の表面を凸の曲面とし、その曲面上に回折格子52を設けている。回折格子52を曲面上に設けることで、回折格子52が屈折による光学的パワーを有することになり、出射する光束の広がりを抑えることができる。したがって、出射後の光束の広がりを抑える手段を別途備える必要がなくなる。
回折格子52に入射する光束が平行光束でない場合は、回折格子52の凹凸の間隔を一定にせずに次第に変化するようにすることで、あるいは、個々の凸部52aおよび凹部52bを直線とせずに曲線状とすることで、光束の広がりとなる原因となる収差を抑えることができる。
なお、本実施形態のように、曲面上に回折格子52を設ける場合、回折格子52上の任意の位置における接平面Pに回折格子52を投影し、接平面Pに対する入射角をθ1、接平面P上の周期をΛとして、前述の式(A1)〜(A3)から式(F1)〜(F4)までの各組の条件を満たすようにする。これで、上述の各実施形態で述べた効果が得られる。
<第10の実施形態>
第10の実施形態の光学装置10の構成を図14に模式的に示す。光学装置10は、光を用いて記録媒体に情報を記録し記録媒体から情報を読み出す光記録再生装置であり、3つの発光部27、28、29、2つの回折格子素子55、57、および対物レンズ61を有する。回折格子素子55、57はいずれもプリズム状であり、それぞれ1つの表面に回折格子56、58(図15参照)が設けられている。
発光部27、28、29は、記録媒体Mに照射するための波長帯域の異なる光束LT1、LT2、LT3をそれぞれ発する。図示しないが、発光部27〜29は、レーザダイオードと集光レンズを備えており、レーザダイオードが発した光を集光レンズによって平行光束として射出する。
回折格子素子55は、発光部27からの光束LT1と発光部28からの光束LT2を結合する。また、回折格子素子57は、回折格子素子55によって結合された光束LT1、LT2と発光部29からの光束LT3とを結合する。
対物レンズ61は、回折格子素子55によって結合された光束LT1、LT2、LT3を記録媒体M上に収束させる。
回折格子素子55、57の回折格子56、58の設定について説明する。ここで、回折格子56、58の凹凸の周期をΛ、回折格子56、58の凹凸の高低差をh、回折格子56、58を挟む2つの媒質のうち、光束の入射側に位置する方の屈折率をn1、他方の屈折率をn2、回折格子56、58への光束の入射角をθ1、回折格子56、58からの光束の出射角をθ2、光束LT1、LT2、LT3の波長帯域のうち最も短波長のものの中心波長をλS、最も長波長のものの中心波長をλL、中間の波長のものの中心波長をλMとする。なお、ここでは、回折格子56と回折格子58の各パラメータを同じ符号で表しているが、各パラメータ(例えば周期Λ)は、回折格子56と回折格子58とで異なる。
回折格子56、58は式(G1)〜(G4)の関係を満たす。
n2 ≧ n1・sinθ1 ・・・ 式(G1)
Λ/λL ≦ 1/(n2+n1・sinθ1) ・・・ 式(G2)
Λ/λM ≒ 1/(n2+n1・sinθ1) ・・・ 式(G3)
Λ/λS ≧ 1/(n2+n1・sinθ1) ・・・ 式(G4)
これらの関係を満たすことで、回折格子56、58は、光束LT1、LT2、LT3のいずれに対しても、0次の回折を生じさせて、すなわち回折を生じさせずに、透過または反射するものとなる。
光束LT1、LT2、LT3の各波長帯域の中心波長をそれぞれ650nm、780nm、405nmとし、回折格子素子55の回折格子56に、素子55の内部側から光束LT1を入射させ、空気側から光束LT2を入射させ、回折格子素子57の回折格子58に、光束LT1、LT2を空気側から入射させ、光束LT3を素子57の内部側から入射させるようにした設定例における光路を図15に模式的に示し、諸パラメータを表6−1、6−2に示す。この例では、光束LT3の中心波長が最短波長λS、光束LT2の中心波長が最長波長λL、光束LT1の中心波長が中間の波長λMである。
また、回折格子56、58に対して、光束LT1はs偏光、光束LT2はp偏光、光束LT3はs偏光である。なお、図15における両頭の矢印は偏光面が紙面に平行であることを表し、二重の丸印は偏光面が紙面に垂直であることを表している。
[表6−1]
回折格子56
断面形状:矩形
凹凸周期Λ:326nm
凹凸高低差h:571nm
凸部幅:163nm
媒質屈折率:1.5
光束LT1
波長(λM):650nm
周期/波長(Λ/λM):0.502
入射角θ1:38゜
出射角θ2:38゜
s偏光反射率:0.962
光束LT2
波長(λL):780nm
周期/波長(Λ/λL):0.418
入射角θ1:67.4゜
出射角θ2:38゜
p偏光透過率:0.952
[表6−2]
回折格子58
断面形状:矩形
凹凸周期Λ:203nm
凹凸高低差h:571nm
凸部幅:163nm
媒質屈折率:1.5
光束LT1
波長(λM):650nm
周期/波長(Λ/λM):0.312
入射角θ1:67.4゜
出射角θ2:38゜
s偏光透過率:0.74
光束LT2
波長(λL):780nm
周期/波長(Λ/λL):0.260
入射角θ1:67.4゜
出射角θ2:38゜
p偏光透過率:0.944
光束LT3
波長(λS):405nm
周期/波長(Λ/λS):0.501
入射角θ1:38゜
出射角θ2:38゜
s偏光反射率:0.962
表6−1、6−2において、回折格子の凸部幅とは、回折格子素子55、57の内部に向かって凸部となっている部分の幅である。また、回折格子56、58以外の回折格子素子55、57の表面に対する光束LT1、LT2、LT3の入射角は90゜である。回折格子56、58以外の面での透過率を1とすると、回折格子素子55、57を経た後の各光束LT1、LT2、LT3の光量は、経る前の光量に比べて、0.712、0.899、0.962倍となる。なお、1/(1.5+sin38゜)の値は0.520である。
<第11の実施形態>
第11の実施形態の光学装置11は、光通信における送受信用の装置であり、図6に示した第4の実施形態の光学装置4と同様に、光ファイバ31を介して光束LTを送出するとともに、光ファイバ31を介して2つの光束LR1、LR2を受ける。光束LT、LR1、LR2の波長帯域は異なる。
また、回折格子素子51の回折格子52は、互いに垂直な第1の方向と第2の方向に凹凸の周期を有する。図16に回折格子52を模式的に示す。凹凸の周期は第1の方向と第2の方向とで異なり、第1の方向の周期の方が短い。以下、第1の方向の周期を主周期、第2の方向の周期を副周期という。また、主周期をΛx、副周期をΛyとし、主周期方向の凸部52a間の距離をWx、副周期方向の凸部52a間の距離をWyとする。
回折格子52と光束の角度の関係を図17に示す。回折格子52に垂直で主周期の方向に平行な平面と、回折格子52に入射する光束の入射面との成す角φを方位角という。なお、入射角θ1は、入射する光束の主光線と回折格子52の法線との成す角であり、入射面内での角である。
光学装置11では、光束LT、LR1、LR2を、それらの入射面が主周期の方向に対してやや傾くように、回折格子52に入射させる。したがって、光束LT、LR1、LR2の方位角φは0でない。
光学装置11における回折格子素子51の回折格子52の設定について説明する。ここで、回折格子52の凹凸の主周期(Λx)をΛ、回折格子52の凹凸の高低差をh、回折格子52を挟む2つの媒質のうち、光束の入射側に位置する方の屈折率をn1、他方の屈折率をn2、回折格子52への光束の入射角をθ1、回折格子52からの光束の出射角をθ2、光束LT、LR1、LR2の波長帯域のうち、最も短波長の帯域の最短波長、最長波長をそれぞれλ1L、λ1U、最も長波長の帯域の最短波長、最長波長をそれぞれλ3L、λ31U、中間の帯域の最短波長、最長波長をそれぞれλ2L、λ2Uとする。
回折格子52は式(H1)〜(H5)の関係を満たす。
λ1L < λ1U < λ2L < λ2U < λ3L < λ3U ・・・ 式(H1)
n2 < n1・sinθ1 ・・・ 式(H2)
φ≠0 ・・・ 式(H3)
1/[n1・(1−sin2θ1・sin2φ)1/2+n1・sinθ1・cosφ] ≦ Λ/λ3U < Λ/λ2L ≦ 1/[(n22−n12・sin2θ1・sin2φ)1/2+n1・sinθ1・cosφ] ・・・ 式(H4)
1/[(n22−n12・sin2θ1・sin2φ)1/2+n1・sinθ1・cosφ] ≦ Λ/λ1U < Λ/λ1L ≦ 2/[n1・(1−sin2θ1・sin2φ)1/2+n1・sinθ1・cosφ] ・・・ 式(H5)
これらの関係を満たすことで、回折格子52は、送出する光LTを0次で回折反射(正
反射)し、受ける2つの光束LR1、LR2を−1次で回折反射するものとなる。回折格子52と光束LR1、LR2はリトロー配置に近い関係である。
送出する光束LTの中心波長を1310nm、受ける光束LR1、LR2の中心波長をそれぞれ1490nm、1555nmとし、回折格子52に光束LT、LR1、LR2を回折格子素子51の内部側から入射させるようにした設定例における光路を図18に模式的に示し、諸パラメータを表7−1に示す。光束LT、LR1、LR2の方位角φは10゜である。
[表7−1]
回折格子52
断面形状:矩形
凹凸主周期Λx(Λ):0.649μm
凹凸副周期Λy:1.298μm
凹凸高低差h:0.649μm
凸部主周期方向幅Wx:0.389μm
凸部副周期方向幅Wy:0.13μm
媒質屈折率:1.48
光束LT
波長(λS):1310nm
周期/波長(Λx/λS):0.495
方位角φ:10゜
入射角θ1:52.5゜
出射角θ2:52.5゜
反射率:0.77(−1.14dB)
光束LR1
波長(λM):1490nm
周期/波長(Λx/λM):0.436
方位角φ:10゜
入射角θ1:52.5゜
出射角θ2:−49.3゜
p偏光反射回折効率:0.92(−0.35dB)
s偏光反射回折効率:0.95(−0.22dB)
平均反射回折効率:0.94(−0.28dB)
光束LR2
波長(λL):1555nm
周期/波長(Λx/λL):0.417
方位角φ:10゜
入射角θ1:52.5゜
出射角θ2:−55.7゜
p偏光反射回折効率:0.82(−0.85dB)
s偏光反射回折効率:0.90(−0.45dB)
平均反射回折効率:0.86(−0.64dB)
なお、表7−1において、回折格子の凸部幅とは、光束LT、LR1、LR2の入射側(回折格子素子51の内部)に向かって凸部となっている部分の幅である。
波長帯域の幅が100nmのときの光束LTの最短波長(λ1L)、最長波長(λ1U)に関するパラメータを表7−2、7−3に示し、波長帯域の幅が20nmのときの光束LR1の最短波長(λ2L)、最長波長(λ2U)に関するパラメータを表7−4、7−5に示し、波長帯域の幅が10nmのときの光束LR2の最短波長(λ3L)、最長波長(λ3U)に関するパラメータを表7−6、7−7に示す。
[表7−2]
光束LT
最短波長(λ1L):1260nm
周期/波長(Λx/λ1L):0.515
方位角φ:10゜
入射角θ1:52.5゜
出射角θ2:52.5゜
反射率:0.82(−0.86dB)
[表7−3]
光束LT
最長波長(λ1U):1360nm
周期/波長(Λx/λ1U):0.477
方位角φ:10゜
入射角θ1:52.5゜
出射角θ2:52.5゜
反射率:0.72(−1.46dB)
[表7−4]
光束LR1
最短波長(λ2L):1480nm
周期/波長(Λx/λ2L):0.438
方位角φ:10゜
入射角θ1:52.5゜
出射角θ2:−48.4゜
p偏光反射回折効率:0.91(−0.40dB)
s偏光反射回折効率:0.92(−0.35dB)
平均反射回折効率:0.92(−0.37dB)
[表7−5]
光束LR1
最長波長(λ2U):1500nm
周期/波長(Λx/λ2U):0.433
方位角φ:10゜
入射角θ1:52.5゜
出射角θ2:−50.2゜
p偏光反射回折効率:0.93(−0.34dB)
s偏光反射回折効率:0.96(−0.16dB)
平均反射回折効率:0.95(−0.25dB)
[表7−6]
光束LR2
最短波長(λ3L):1550nm
周期/波長(Λx/λ3L):0.419
方位角φ:10゜
入射角θ1:52.5゜
出射角θ2:−55.1゜
p偏光反射回折効率:0.84(−0.77dB)
s偏光反射回折効率:0.92(−0.38dB)
平均反射回折効率:0.88(−0.57dB)
[表7−7]
光束LR2
最長波長(λ3U):1560nm
周期/波長(Λx/λ3U):0.416
方位角φ:10゜
入射角θ1:52.5゜
出射角θ2:−56.2゜
p偏光反射回折効率:0.81(−0.94dB)
s偏光反射回折効率:0.89(−0.52dB)
平均反射回折効率:0.85(−0.72dB)
式(H4)の下限値および上限値、すなわち、次の2式の値はそれぞれ0.381および0.468であり、光束LR1、LR2の周期/波長の値は式(H4)を満たしている。
1/[n1・(1−sin2θ1・sin2φ)1/2+n1・sinθ1・cosφ]
1/[(n22−n12・sin2θ1・sin2φ)1/2+n1・sinθ1・cosφ]
また、式(H5)の下限値および上限値、すなわち次の2式の値はそれぞれ0.468および0.763であり、光束LTの周期/波長の値は式(H5)を満たしている。
1/[(n22−n12・sin2θ1・sin2φ)1/2+n1・sinθ1・cosφ]
2/[n1・(1−sin2θ1・sin2φ)1/2+n1・sinθ1・cosφ]
式(H4)を満たすことで、−1次の回折反射光とする比較的長波長の光束LR1、LR2の回折効率を高くすることができる。また、式(H5)を満たすことで、回折させずに正反射する比較的短波長の光束LTの反射率を高くすることができる。
本実施形態の光学装置では、回折格子52と光束LR1、LR2がリトロー配置に近い関係であるが、方位角φが0でないため、光ファイバ31と受光部41、43(図6)との干渉を低減できて、装置全体の設計が容易である。ただし、方位角φが0〜0.5゜の範囲では光ファイバ31と受光部41、43とが干渉し易くなる。また、方位角φが15゜を超えると、不要な次数の回折光が多くなる。したがって、方位角φは0.5゜以上、15゜以下とするのが好ましい。
比較のために、光束LT、LR1、LR2の方位角φを0゜としたときのパラメータを表8−1〜8−7に示す。
[表8−1]
回折格子
断面形状:矩形
凹凸主周期Λx(Λ):0.649μm
凹凸副周期Λy:1.298μm
凹凸高低差h:0.649μm
凸部主周期方向幅Wx:0.389μm
凸部副周期方向幅Wy:0.13μm
媒質屈折率:1.48
光束LT
波長(λS):1310nm
周期/波長(Λx/λS):0.495
方位角φ:0゜
入射角θ1:52.5゜
出射角θ2:52.5゜
反射率:0.81(−0.90dB)
光束LR1
波長(λM):1490nm
周期/波長(Λx/λM):0.436
方位角φ:0゜
入射角θ1:52.5゜
出射角θ2:−49.3゜
p偏光反射回折効率:0.88(−0.55dB)
s偏光反射回折効率:0.85(−0.71dB)
平均反射回折効率:0.86(−0.63dB)
光束LR2
波長(λL):1555nm
周期/波長(Λx/λL):0.417
方位角φ:0゜
入射角θ1:52.5゜
出射角θ2:−55.7゜
p偏光反射回折効率:0.87(−0.59dB)
s偏光反射回折効率:0.95(−0.23dB)
平均反射回折効率:0.91(−0.41dB)
[表8−2]
光束LT
最短波長(λ1L):1260nm
周期/波長(Λx/λ1L):0.515
方位角φ:0゜
入射角θ1:52.5゜
出射角θ2:52.5゜
反射率:0.88(−0.57dB)
[表8−3]
光束LT
最長波長(λ1U):1360nm
周期/波長(Λx/λ1U):0.477
方位角φ:0゜
入射角θ1:52.5゜
出射角θ2:52.5゜
反射率:0.76(−1.21dB)
[表8−4]
光束LR1
最短波長(λ2L):1480nm
周期/波長(Λx/λ2L):0.438
方位角φ:0゜
入射角θ1:52.5゜
出射角θ2:−48.4゜
p偏光反射回折効率:0.85(−0.70dB)
s偏光反射回折効率:0.79(−1.00dB)
平均反射回折効率:0.82(−0.85dB)
[表8−5]
光束LR1
最長波長(λ2U):1500nm
周期/波長(Λx/λ2U):0.433
方位角φ:0゜
入射角θ1:52.5゜
出射角θ2:−50.2゜
p偏光反射回折効率:0.90(−0.45dB)
s偏光反射回折効率:0.89(−0.50dB)
平均反射回折効率:0.90(−0.48dB)
[表8−6]
光束LR2
最短波長(λ3L):1550nm
周期/波長(Λx/λ3L):0.419
方位角φ:0゜
入射角θ1:52.5゜
出射角θ2:−55.1゜
p偏光反射回折効率:0.88(−0.53dB)
s偏光反射回折効率:0.95(−0.21dB)
平均反射回折効率:0.92(−0.37dB)
[表8−7]
光束LR2
最長波長(λ3U):1560nm
周期/波長(Λx/λ3U):0.416
方位角φ:0゜
入射角θ1:52.5゜
出射角θ2:−56.2゜
p偏光反射回折効率:0.86(−0.64dB)
s偏光反射回折効率:0.94(−0.26dB)
平均反射回折効率:0.90(−0.45dB)
表7−1〜7−7と表8−1〜8−7との比較より、方位角φを10゜としても、方位角φが0゜の場合に匹敵する良好な回折効率が得られることが判る。
回折後の光束と主周期方向との角度についてついて説明する。回折格子52上に投影した回折後の光束の主光線と主周期の方向との成す角をαとし、波長をλとすると、式(J1)、(J2)の関係を満たす必要がある。また、本実施形態のようにリトロー配置に近い場合、式(J3)が成り立つ。
{n1・sinθ1−(λ/Λ)・cosφ}2+{(λ/Λ)・sinφ}2 = (n1・sinθ2)2
・・・ 式(J1)
sinα = λ・sinφ/(n1・Λ・sinθ2) ・・・ 式(J2)
λ/Λ = 2・n1・sinθ1 ・・・ 式(J3)
式(J1)〜(J3)より式(J4)が得られる。式(J4)は、回折後の光束が、方位角φの2倍の角度で主周期の方向から分離することを示している。
sinα ≒ 2・sinφ ・・・ 式(J4)
なお、回折格子52を曲面上に設けることも可能である。その場合、第9の実施形態で説明したように、回折格子52上の任意の位置における接平面Pに回折格子52を投影し、接平面Pに対する入射角をθ1、接平面P上の周期をΛとして、式(H1)〜(H5)の条件を満たすようにする。
また、本実施形態の回折格子は2つの光束R1、R2を受けるものであるが、波長帯域が異なる3つ以上の光束を受けるようにすることも可能である。その場合、受ける光束のうち最も長波長の波長帯域の最長波長をλ3U、2番目に長波長の波長帯域の最短波長をλ2Lとして、式(H4)を満たすようにすればよい。
<第12の実施形態>
第12の実施形態の光学装置12も、光通信における送受信用の装置であり、図6に示した第4の実施形態の光学装置4と同様に、光ファイバ31を介して光束LTを送出するとともに、光ファイバ31を介して2つの光束LR1、LR2を受ける。光束LT、LR1、LR2の波長帯域は異なる。
光学装置12における回折格子素子51の回折格子52の設定について説明する。ここで、回折格子52の凹凸の主周期をΛ、回折格子52の凹凸の高低差をh、回折格子52を挟む2つの媒質のうち、光束の入射側に位置する方の屈折率をn1、他方の屈折率をn2、回折格子52への光束の入射角をθ1、回折格子52からの光束の出射角をθ2、光束LT、LR1、LR2の波長帯域のうち、最も短波長の帯域の最短波長、最長波長をそれぞれλ1L、λ1U、最も長波長の帯域の最短波長、最長波長をそれぞれλ3L、λ31U、中間の帯域の最短波長、最長波長をそれぞれλ2L、λ2Uとする。
回折格子52は式(K1)〜(K5)の関係を満たす。
λ1L < λ1U < λ2L < λ2U < λ3L < λ3U ・・・ 式(K1)
n2 < n1・sinθ1 ・・・ 式(K2)
1/(n1+n1・sinθ1) ≦ Λ/λ3U < Λ/λ2L ≦ 1/(n2+n1・sinθ1)
・・・ 式(K3)
1/(n2+n1・sinθ1) ≦ Λ/λ1U < Λ/λ1L ≦ 2/(n1+n1・sinθ1)
・・・ 式(K4)
Λ/λ3L < 1/(2・n1・sinθ1) < Λ/λ2U ・・・ 式(K5)
これらの関係を満たすことで、回折格子52は、送出する光束LTを0次で回折反射(正反射)し、受ける2つの光束LR1、LR2を−1次で回折反射するものとなる。
送出する光束LTの中心波長を1310nm、受ける光束LR1、LR2の中心波長をそれぞれ1490nm、1555nmとし、回折格子52に光束LT、LR1、LR2を回折格子素子51の内部側から入射させるようにした設定例における光路を図19に模式的に示し、諸パラメータを表9−1に示す。
[表9−1]
回折格子52
断面形状:矩形
凹凸周期Λ:0.645μm
凹凸高低差h:0.709μm
凸部幅:0.451μm
媒質屈折率:1.48
光束LT
波長(λS):1310nm
周期/波長(Λ/λS):0.492
入射角θ1:53゜
出射角θ2:53゜
反射率:0.96(−0.18dB)
光束LR1
波長(λM):1490nm
周期/波長(Λ/λM):0.433
入射角θ1:53゜
出射角θ2:−49.7゜
p偏光反射回折効率:0.81(−0.92dB)
s偏光反射回折効率:0.83(−0.79dB)
平均反射回折効率:0.82(−0.85dB)
p偏光、s偏光回折効率差:0.13dB
光束LR2
波長(λL):1555nm
周期/波長(Λ/λL):0.415
入射角θ1:53゜
出射角θ2:−56.2゜
p偏光反射回折効率:0.88(−0.56dB)
s偏光反射回折効率:0.90(−0.45dB)
平均反射回折効率:0.89(−0.51dB)
p偏光、s偏光回折効率差:0.11dB
なお、表9−1において、回折格子の凸部幅とは、光束LT、LR1、LR2の入射側(回折格子素子51の内部)に向かって凸部となっている部分の幅である。
波長帯域の幅が100nmのときの光束LTの最短波長(λ1L)、最長波長(λ1U)に関するパラメータを表9−2、9−3に示し、波長帯域の幅が20nmのときの光束LR1の最短波長(λ2L)、最長波長(λ2U)に関するパラメータを表9−4、9−5に示し、波長帯域の幅が10nmのときの光束LR2の最短波長(λ3L)、最長波長(λ3U)に関するパラメータを表9−6、9−7に示す。
[表9−2]
光束LT
最短波長(λ1L):1260nm
周期/波長(Λ/λ1L):0.512
入射角θ1:53゜
出射角θ2:53゜
反射率:1.00(−0.01dB)
[表9−3]
光束LT
最長波長(λ1U):1360nm
周期/波長(Λ/λ1U):0.474
入射角θ1:53゜
出射角θ2:53゜
反射率:0.89(−0.49dB)
[表9−4]
光束LR1
最短波長(λ2L):1480nm
周期/波長(Λ/λ2L):0.436
入射角θ1:53゜
出射角θ2:−48.8゜
p偏光反射回折効率:0.76(−1.19dB)
s偏光反射回折効率:0.78(−1.09dB)
平均反射回折効率:0.77(−1.14dB)
p偏光、s偏光回折効率差:0.10dB
[表9−5]
光束LR1
最長波長(λ2U):1500nm
周期/波長(Λ/λ2U):0.430
入射角θ1:53゜
出射角θ2:−50.7゜
p偏光反射回折効率:0.85(−0.73dB)
s偏光反射回折効率:0.88(−0.58dB)
平均反射回折効率:0.86(−0.65dB)
p偏光、s偏光回折効率差:0.15dB
[表9−6]
光束LR2
最短波長(λ3L):1550nm
周期/波長(Λ/λ3L):0.416
入射角θ1:53゜
出射角θ2:−55.7゜
p偏光反射回折効率:0.89(−0.52dB)
s偏光反射回折効率:0.91(−0.41dB)
平均反射回折効率:0.90(−0.47dB)
p偏光、s偏光回折効率差:0.11dB
[表9−7]
光束LR2
最長波長(λ3U):1560nm
周期/波長(Λ/λ3U):0.413
入射角θ1:53゜
出射角θ2:−56.8゜
p偏光反射回折効率:0.87(−0.60dB)
s偏光反射回折効率:0.89(−0.50dB)
平均反射回折効率:0.88(−0.55dB)
p偏光、s偏光回折効率差:0.10dB
式(K3)の下限値および上限値、すなわち、次の2式の値はそれぞれ0.376および0.458であり、光束LR1、LR2の周期/波長の値は式(K3)を満たしている。
1/(n1+n1・sinθ1)
1/(n2+n1・sinθ1)
また、式(K4)の下限値および上限値、すなわち次の2式の値はそれぞれ0.458および0.751であり、光束LTの周期/波長の値は式(K4)を満たしている。
1/(n2+n1・sinθ1)
2/(n1+n1・sinθ1)
さらに、次の式の値は0.423であり、光束LR1、LR2の周期/波長の値は式(K5)を満たしている。
1/(2・n1・sinθ1)
式(K3)を満たすことで、−1次の回折反射光とする比較的長波長の光束LR1、LR2の回折効率を高くすることができる。また、式(K4)を満たすことで、回折させずに正反射する比較的短波長の光束LTの反射率を高くすることができる。さらに、式(K5)を満たすことで、比較的長波長の光束LR1、LR2のp偏光とs偏光の回折効率の差を小さくすることができる。上記の設定では、p偏光とs偏光の回折効率の差は、光束LR1では0.10〜0.15dB、光束LR2では0.10〜0.11dBとなっている。
比較のために、式(K1)〜(K4)を満たすものの、式(K5)を満たさない設定でのパラメータを表10−1〜10−7に示す。
[表10−1]
回折格子
断面形状:矩形
凹凸周期Λ:0.629μm
凹凸高低差h:0.645μm
凸部幅:0.239μm
媒質屈折率:1.5
光束LT
波長(λS):1310nm
周期/波長(Λ/λS):0.480
入射角θ1:51゜
出射角θ2:51゜
反射率:0.76(−1.21dB)
光束LR1
波長(λM):1490nm
周期/波長(Λ/λM):0.422
入射角θ1:51゜
出射角θ2:−53.3゜
p偏光反射回折効率:0.95(−0.22dB)
s偏光反射回折効率:0.85(−0.72dB)
平均反射回折効率:0.90(−0.46dB)
p偏光、s偏光回折効率差:0.51dB
光束LR2
波長(λL):1555nm
周期/波長(Λ/λL):0.405
入射角θ1:51゜
出射角θ2:−60.6゜
p偏光反射回折効率:0.76(−1.17dB)
s偏光反射回折効率:0.75(−1.23dB)
平均反射回折効率:0.76(−1.20dB)
p偏光、s偏光回折効率差:0.06dB
[表10−2]
光束LT
最短波長(λ1L):1260nm
周期/波長(Λ/λ1L):0.499
入射角θ1:51゜
出射角θ2:51゜
反射率:0.87(−0.63dB)
[表10−3]
光束LT
最長波長(λ1U):1360nm
周期/波長(Λ/λ1U):0.463
入射角θ1:51゜
出射角θ2:51゜
反射率:0.74(−1.32dB)
[表10−4]
光束LR1
最短波長(λ2L):1480nm
周期/波長(Λ/λ2L):0.425
入射角θ1:51゜
出射角θ2:−52.3゜
p偏光反射回折効率:0.96(−0.17dB)
s偏光反射回折効率:0.84(−0.76dB)
平均反射回折効率:0.90(−0.45dB)
p偏光、s偏光回折効率差:0.59dB
[表10−5]
光束LR1
最長波長(λ2U):1500nm
周期/波長(Λ/λ2U):0.419
入射角θ1:51゜
出射角θ2:−54.4゜
p偏光反射回折効率:0.93(−0.30dB)
s偏光反射回折効率:0.85(−0.73dB)
平均反射回折効率:0.89(−0.51dB)
p偏光、s偏光回折効率差:0.43dB
[表10−6]
光束LR2
最短波長(λ3L):1550nm
周期/波長(Λ/λ3L):0.406
入射角θ1:51゜
出射角θ2:−60.0゜
p偏光反射回折効率:0.78(−1.06dB)
s偏光反射回折効率:0.77(−1.15dB)
平均反射回折効率:0.78(−1.11dB)
p偏光、s偏光回折効率差:0.09dB
[表10−7]
光束LR2
最長波長(λ3U):1560nm
周期/波長(Λ/λ3U):0.403
入射角θ1:51゜
出射角θ2:−61.2゜
p偏光反射回折効率:0.74(−1.28dB)
s偏光反射回折効率:0.74(−1.31dB)
平均反射回折効率:0.74(−1.30dB)
p偏光、s偏光回折効率差:0.03dB
この設定では、式(K3)の下限値および上限値はそれぞれ0.375および0.462、式(K4)の下限値および上限値は0.462および0.750であり、式(K3)、(K4)は満たす。しかし、1/(2・n1・sinθ)の値は0.429であり、式(K5)は満たさない。
また、p偏光とs偏光の回折効率の差は、光束LR2については0.03〜0.09と小さいものの、光束LR3について0.43〜0.59と大きくなっている。このため、光束LR2を受ける受光部43(図6参照)の受光量が、光束LT3の偏光面の向きに大きく依存することになる。したがって、受光部43の受光量を高く保つためには、装置ごとに光束LT3の偏光面の向きを考慮しなければならず、光ファイバ31と回折格子素子51をはじめとする他の部材との相対配置の設定が難しくなる。
これに対し、表9−1〜9−7に例を示した本実施形態の光学装置12では、前述のように、光束LR1、LR2のいずれについてもp偏光とs偏光の回折効率の差が小さく、受光部42、43の受光量は光束LR1、LR2の偏光面の向きにはあまり依存しない。したがって、光束LR1、LR2の偏光面の向きを考慮しなくても、受光部42、43の受光量を高く保つことができる。
なお、回折格子52を曲面上に設けることも可能である。その場合、第9の実施形態で説明したように、回折格子52上の任意の位置における接平面Pに回折格子52を投影し、接平面Pに対する入射角をθ1、接平面P上の周期をΛとして、式(K1)〜(K5)の条件を満たすようにする。
表9−1〜9−7に示した設定例において、回折格子52の凸部の幅が0.05μm変動した場合の回折効率を表11に示す。表11においては、光束LT、LR1、LR2それそれについて、最短波長、中心波長および最長波長のうち最も回折効率が低い波長での回折効率を掲げている。なお、値はdB換算値である。
[表11]
凸部幅
減少 設計値 増大
0.401μm 0.451μm 0.501μm
光束LT(1310nm波長帯域)
反射率 −1.337 −0.490 −0.095
反射率変動量 −0.847 0.395
光束LR1(1490nm波長帯域)
回折効率 −1.226 −1.136 −2.562
回折効率変動量 −0.090 −1.425
p偏光、s偏光回折効率差 1.851 0.149 3.458
p偏光、s偏光回折効率差変動量 1.702 3.309
光束LR2(1555nm波長帯域)
回折効率 −0.501 −0.552 −1.184
回折効率変動量 0.051 −0.632
p偏光、s偏光回折効率差 0.558 0.113 1.762
p偏光、s偏光回折効率差変動量 0.445 1.649
表11より、凸部の幅が設計値から変動すると、比較的長波長の光束LR1、LR2のp偏光とs偏光の回折効率の差に大きな変動が生じることが判る。しかし、以下に述べるように、凸部の幅の変動による回折効率差の変動は低減することが可能である。
<第13の実施形態>
第13の実施形態の光学装置13は、上記の光学装置12を修飾して、回折格子52の凸部の幅が変動してもp偏光とs偏向の回折効率の差に大きな変動が生じないようにしたものである。光学装置13においては、第11の実施形態の光学装置11の如く、図16に示したように、回折格子52の凹凸に互いに垂直な第1の方向と第2の方向に周期をもたせている。第1の方向の周期Λxは第2の方向の周期Λy以下であり、前者を主周期、後者を副周期という。ただし、光学装置13では、光束LT、LR1、LR3は、副周期の方向に対して垂直な方向から回折格子52に入射させる。したがって、図17に示した方位角φは0゜である。
本実施形態においても、回折格子52は、前述の式(K1)〜(K5)の関係を満たす。ここで、主周期Λxを式(K3)〜(K5)におけるΛとする。
表9−1〜9−7に対応する設定での諸パラメータを表12−1〜12−7に示す。ここでは、主周期Λxと副周期Λyを等しくしている。なお、光束LT、LR1、LR2の光路は図19に示したとおりである。
[表12−1]
回折格子52
断面形状:矩形
凹凸主周期Λx(Λ):0.645μm
凹凸副周期Λy:0.645μm
副周期/主周期(Λy/Λx):1
凹凸高低差h:0.645μm
凸部主周期方向幅Wx:0.387μm
凸部副周期方向幅Wy:0.064μm
媒質屈折率:1.48
光束LT
波長(λS):1310nm
周期/波長(Λx/λS):0.492
入射角θ1:53゜
出射角θ2:53゜
反射率:0.84(−0.77dB)
光束LR1
波長(λM):1490nm
周期/波長(Λx/λM):0.433
入射角θ1:53゜
出射角θ2:−49.7゜
p偏光反射回折効率:0.89(−0.50dB)
s偏光反射回折効率:0.85(−0.68dB)
平均反射回折効率:0.87(−0.59dB)
p偏光、s偏光回折効率差:0.18dB
光束LR2
波長(λL):1555nm
周期/波長(Λx/λL):0.415
入射角θ1:53゜
出射角θ2:−56.2゜
p偏光反射回折効率:0.87(−0.62dB)
s偏光反射回折効率:0.96(−0.20dB)
平均反射回折効率:0.91(−0.40dB)
p偏光、s偏光回折効率差:0.42dB
[表12−2]
光束LT
最短波長(λ1L):1260nm
周期/波長(Λx/λ1L):0.512
入射角θ1:53゜
出射角θ2:53゜
反射率:0.91(−0.40dB)
[表12−3]
光束LT
最長波長(λ1U):1360nm
周期/波長(Λx/λ1U):0.474
入射角θ1:53゜
出射角θ2:53゜
反射率:0.76(−1.19dB)
[表12−4]
光束LR1
最短波長(λ2L):1480nm
周期/波長(Λx/λ2L):0.436
入射角θ1:53゜
出射角θ2:−48.8゜
p偏光反射回折効率:0.86(−0.63dB)
s偏光反射回折効率:0.80(−0.96dB)
平均反射回折効率:0.83(−0.80dB)
p偏光、s偏光回折効率差:0.33dB
[表12−5]
光束LR1
最長波長(λ2U):1500nm
周期/波長(Λx/λ2U):0.430
入射角θ1:53゜
出射角θ2:−50.7゜
p偏光反射回折効率:0.91(−0.42dB)
s偏光反射回折効率:0.90(−0.47dB)
平均反射回折効率:0.90(−0.45dB)
p偏光、s偏光回折効率差:0.05dB
[表12−6]
光束LR2
最短波長(λ3L):1550nm
周期/波長(Λx/λ3L):0.416
入射角θ1:53゜
出射角θ2:−55.7゜
p偏光反射回折効率:0.88(−0.56dB)
s偏光反射回折効率:0.96(−0.17dB)
平均反射回折効率:0.92(−0.36dB)
p偏光、s偏光回折効率差:0.39dB
[表12−7]
光束LR2
最長波長(λ3U):1560nm
周期/波長(Λx/λ3U):0.413
入射角θ1:53゜
出射角θ2:−56.8゜
p偏光反射回折効率:0.85(−0.68dB)
s偏光反射回折効率:0.95(−0.23dB)
平均反射回折効率:0.90(−0.45dB)
p偏光、s偏光回折効率差:0.45dB
この設定では、式(K3)の下限値および上限値はそれぞれ0.376および0.458、式(K4)の下限値および上限値は0.458および0.751であり、式(K3)、(K4)を満たす。また、1/(2・n1・sinθ1)の値は0.423であり、式(K5)も満たす。
表12−1〜12−7に示した設定例において、回折格子52の主周期方向と副周期方向の凸部の幅が0.05μm変動した場合の回折効率を表13−1、13−2に示す。表13−1、13−2においては、光束LT、LR1、LR2それそれについて、最短波長、中心波長および最長波長のうち最も回折効率が低い波長での回折効率を掲げている。なお、値はdB換算値である。
[表13−1]
主周期方向凸部幅
減少 設計値 増大
0.337μm 0.387μm 0.437μm
光束LT(1310nm波長帯域)
反射率 −1.608 −1.188 −0.589
反射率変動量 −0.419 0.599
光束LR1(1490nm波長帯域)
回折効率 −0.724 −0.795 −1.071
回折効率変動量 0.071 −0.276
p偏光、s偏光回折効率差 0.678 0.332 1.052
p偏光、s偏光回折効率差変動量 0.346 0.720
光束LR2(1555nm波長帯域)
回折効率 −0.394 −0.448 −0.663
回折効率変動量 0.054 −0.214
p偏光、s偏光回折効率差 0.458 0.453 0.928
p偏光、s偏光回折効率差変動量 0.004 0.475
[表13−2]
副周期方向凸部幅
減少 設計値 増大
0.014μm 0.064μm 0.114μm
光束LT(1310nm波長帯域)
反射率 −1.556 −1.188 −0.806
反射率変動量 −0.367 0.383
光束LR1(1490nm波長帯域)
回折効率 −0.757 −0.795 −0.937
回折効率変動量 0.038 −0.142
p偏光、s偏光回折効率差 0.754 0.332 0.511
p偏光、s偏光回折効率差変動量 0.422 0.179
光束LR2(1555nm波長帯域)
回折効率 −0.375 −0.448 −0.580
回折効率変動量 0.073 −0.131
p偏光、s偏光回折効率差 0.256 0.453 0.768
p偏光、s偏光回折効率差変動量 −0.198 0.314
回折格子52の凸部の幅の変動量は表11と表13−1、13−2とで同じ(±0.05μm)であるが、本実施形態では比較的長波長の光束LR1、LR2のp偏光とs偏光の回折効率の差の増大が抑えられていることが判る。
回折格子52の副周期Λyと回折光の関係について説明する。光の波長をλ、主周期Λxによって生じる回折の次数をmx、副周期Λyによって生じる回折の次数をmyとすると、
回折次数(mx、my)の回折光が生じる条件は式(M1)で表される。
[(n2/n1)・sinθ1・cosφ+mx・λ/(n2・Λx)]2
[(n2/n1)・sinθ1・cosφ+my・λ/(n2・Λy)]2 ≦ 1 ・・・ 式(M1)
光学装置13では光束LR1、LR2に(−1、0)次つまりmx=−1、my=0の回折を生じさせ、その回折効率を高くする必要があるが、そのためには他の次数の回折を抑えなければならない。ここで、(−1、0)次以外で最も生じやすいのは(−1、±1)次つまりmx=−1、my=±1の回折光である。光束LR1、LR2に(−1、±1)次の回折光が生じないための条件は式(M2)で表される。
[sinθ1−λ2L/(n1・Λx)]2+[λ2L/(n1・Λy)]2 > 1 ・・・ 式(M2)
式(M2)を変形すると式(M3)となる。
Λy2/λ2L2 < 1/[n12・[1−(sinθ1−λ2L/(n1・Λx))2]] ・・・ 式(M3)
ただし、式(M4)を満たせば、光束LR1、LR2に生じる(−1、±1)次の回折光を抑えることが可能である。
Λy2/λ2L2 < 1/[n12・[1−(sinθ1−1.1・λ2L/(n1・Λx))2]]
・・・ 式(M4)
また、回折格子52の作成を容易にするために、副周期Λyは主周期Λx以上とするのがよい。つまり、式(M5)を満たすのが好ましい。
Λx2/λ2L2 ≦ Λy2/λ2L2 ・・・ 式(M5)
式(K1)〜(K5)に加えて式(M4)、(M5)も満たすようにした設定の諸パラメータを表14−1〜14−7に示す。なお、副周期Λyは主周期Λxの2倍である。
[表14−1]
回折格子52
断面形状:矩形
凹凸主周期Λx(Λ):0.649μm
凹凸副周期Λy:1.298μm
副周期/主周期(Λy/Λx):2
凹凸高低差h:0.649μm
凸部主周期方向幅Wx:0.389μm
凸部副周期方向幅Wy:0.130μm
媒質屈折率:1.48
光束LT
波長(λS):1310nm
周期/波長(Λx/λS):0.495
入射角θ1:52.5゜
出射角θ2:52.5゜
反射率:0.81(−0.90dB)
光束LR1
波長(λM):1490nm
周期/波長(Λx/λM):0.436
入射角θ1:52.5゜
出射角θ2:−49.3゜
p偏光反射回折効率:0.88(−0.55dB)
s偏光反射回折効率:0.85(−0.71dB)
平均反射回折効率:0.86(−0.63dB)
p偏光、s偏光回折効率差:0.16dB
光束LR2
波長(λL):1555nm
周期/波長(Λx/λL):0.417
入射角θ1:52.5゜
出射角θ2:−55.7゜
p偏光反射回折効率:0.87(−0.59dB)
s偏光反射回折効率:0.95(−0.23dB)
平均反射回折効率:0.91(−0.41dB)
p偏光、s偏光回折効率差:0.35dB
[表14−2]
光束LT
最短波長(λ1L):1260nm
周期/波長(Λx/λ1L):0.515
入射角θ1:52.5゜
出射角θ2:52.5゜
反射率:0.88(−0.57dB)
[表14−3]
光束LT
最長波長(λ1U):1360nm
周期/波長(Λx/λ1U):0.477
入射角θ1:52.5゜
出射角θ2:52.5゜
反射率:0.76(−1.21dB)
[表14−4]
光束LR1
最短波長(λ2L):1480nm
周期/波長(Λx/λ2L):0.438
入射角θ1:52.5゜
出射角θ2:−48.4゜
p偏光反射回折効率:0.85(−0.70dB)
s偏光反射回折効率:0.79(−1.00dB)
平均反射回折効率:0.82(−0.85dB)
p偏光、s偏光回折効率差:0.30dB
[表14−5]
光束LR1
最長波長(λ2U):1500nm
周期/波長(Λx/λ2U):0.433
入射角θ1:52.5゜
出射角θ2:−50.2゜
p偏光反射回折効率:0.90(−0.45dB)
s偏光反射回折効率:0.89(−0.50dB)
平均反射回折効率:0.90(−0.48dB)
p偏光、s偏光回折効率差:0.05dB
[表14−6]
光束LR2
最短波長(λ3L):1550nm
周期/波長(Λx/λ3L):0.419
入射角θ1:52.5゜
出射角θ2:−55.1゜
p偏光反射回折効率:0.88(−0.53dB)
s偏光反射回折効率:0.95(−0.21dB)
平均反射回折効率:0.92(−0.37dB)
p偏光、s偏光回折効率差:0.33dB
[表14−7]
光束LR2
最長波長(λ3U):1560nm
周期/波長(Λx/λ3U):0.416
入射角θ1:52.5゜
出射角θ2:−56.2゜
p偏光反射回折効率:0.86(−0.64dB)
s偏光反射回折効率:0.94(−0.26dB)
平均反射回折効率:0.90(−0.45dB)
p偏光、s偏光回折効率差:0.38dB
この設定例では、式(K3)の下限値および上限値はそれぞれ0.377および0.460、式(K4)の下限値および上限値は0.460および0.754である。また、式(K5)中の
1/(2・n1・sinθ1)の値は0.426である。なお、式(M3)の上限値に相当する副周期Λyは1.338μmである。
表14−1〜14−7に示した設定例において、回折格子52の主周期方向と副周期方向の凸部の幅が0.05μm変動した場合の回折効率を表15−1、15−2に示す。表15−1、15−2においては、光束LT、LR1、LR2それそれについて、最短波長、中心波長および最長波長のうち最も回折効率が低い波長での回折効率を掲げている。なお、値はdB換算値である。
[表15−1]
主周期方向凸部幅
減少 設計値 増大
0.339μm 0.389μm 0.439μm
光束LT(1310nm波長帯域)
反射率 −1.685 −1.208 −0.597
反射率変動量 −0.477 0.611
光束LR1(1490nm波長帯域)
回折効率 −0.796 −0.848 −1.125
回折効率変動量 0.052 −0.276
p偏光、s偏光回折効率差 0.808 0.300 1.155
p偏光、s偏光回折効率差変動量 0.508 0.855
光束LR2(1555nm波長帯域)
回折効率 −0.370 −0.449 −0.649
回折効率変動量 0.079 −0.200
p偏光、s偏光回折効率差 0.340 0.382 0.898
p偏光、s偏光回折効率差変動量 −0.042 0.515
[表15−2]
副周期方向凸部幅
減少 設計値 増大
0.080μm 0.130μm 0.180μm
光束LT(1310nm波長帯域)
反射率 −1.388 −1.208 −1.103
反射率変動量 −0.180 0.105
光束LR1(1490nm波長帯域)
回折効率 −0.803 −0.848 −0.933
回折効率変動量 0.045 −0.085
p偏光、s偏光回折効率差 0.808 0.300 0.327
p偏光、s偏光回折効率差変動量 0.508 0.027
光束LR2(1555nm波長帯域)
回折効率 −0.370 −0.449 −0.522
回折効率変動量 0.079 −0.073
p偏光、s偏光回折効率差 0.340 0.382 0.579
p偏光、s偏光回折効率差変動量 −0.042 0.197
表13−1、13−2と表15−1、15−2の比較より、副周期Λyを主周期Λxよりも大きくすることにより、凸部の幅の変動による光束LR1、LR2のp偏光とs偏向の回折効率の差の増大が、より良好に抑えられることが判る。
第1の実施形態の光学装置の構成を模式的に示す図。 第1の実施形態の光学装置の回折格子の一設定例における光路を模式的に示す図。 第1の実施形態の光学装置の回折格子におけるパラメータの変化と回折効率の変化の関係を示す図。 第2の実施形態の光学装置の回折格子の一設定例における光路を模式的に示す図。 第3の実施形態の光学装置の回折格子の一設定例における光路を模式的に示す図。 第4の実施形態の光学装置の構成を模式的に示す図。 第4の実施形態の光学装置の回折格子の一設定例における光路を模式的に示す図。 第5の実施形態の光学装置の回折格子の一設定例における光路を模式的に示す図。 第5の実施形態の光学装置の回折格子におけるパラメータの変化と回折効率の変化の関係を示す図。 第6の実施形態の光学装置の構成を模式的に示す図。 第7の実施形態の光学装置の要部を模式的に示す図。 第8の実施形態の光学装置の要部を模式的に示す図。 第9の実施形態の光学装置の回折格子素子を模式的に示す側面図(a)および平面図(b)。 第10の実施形態の光学装置の構成を模式的に示す図。 第10の実施形態の光学装置の回折格子の一設定例における光路を模式的に示す図。 第11の実施形態の光学装置の回折格子を模式的に示す平面図。 第11の実施形態の光学装置の回折格子と光束の角度との関係を模式的に示す斜視図。 第11の実施形態の光学装置の回折格子の一設定例における光路を模式的に示す図。 第12の実施形態の光学装置の回折格子の一設定例における光路を模式的に示す図。
符号の説明
1〜13 光学装置
21、23 発光部
22、24 発光制御部
25 円弧状レール
26 温度センサ
27、28、29 発光部
31 光ファイバ
35 光センサ
41、43 受光部
42、44 信号検出部
51 回折格子素子
52 回折格子
52a 回折格子凸部
52b 回折格子凹部
53、54 凸部
55、57 回折格子素子
56、58 回折格子
61 対物レンズ

Claims (7)

  1. 第1の波長帯域の光束を回折反射し、第1の波長帯域の光束の回折反射先から入射する第1の波長帯域よりも長波長の複数の波長帯域の光束を回折反射して分離する回折格子素子を有する光学装置において、
    回折格子を挟む媒質のうち光束が通る側に位置する第1の媒質およびその反対側に位置する第2の媒質の屈折率をそれぞれn1およびn2、光束の主光線の回折格子への入射角をθ、回折格子の凹凸の周期をΛ、第1の波長帯域の最短波長および最長波長をそれぞれλ1Lおよびλ1U、第1の波長帯域よりも長波長の複数の波長帯域のうち最短のものの最短波長および最長波長をそれぞれλ2Lおよびλ2U、第1の波長帯域よりも長波長の複数の波長帯域のうち最長のものの最短波長および最長波長をそれぞれλ3Lおよびλ3Uと表すとき、
    λ1L < λ1U < λ2L < λ2U < λ3L < λ3U
    n2 < n1・sinθ
    1/(n1+n1・sinθ) ≦ Λ/λ3U < Λ/λ2L ≦ 1/(n2+n1・sinθ)
    1/(n2+n1・sinθ) ≦ Λ/λ1U < Λ/λ1L ≦ 2/(n1+n1・sinθ)
    および
    Λ/λ3L < 1/(2・n1・sinθ) < Λ/λ2U
    の関係を満たすことを特徴とする光学装置
  2. 回折格子の凹凸が、入射する光束の主光線の入射面に略平行な第1の方向に加えて、第1の方向に対して垂直な第2の方向に周期を有し、第1の方向の周期が前記周期であることを特徴とする請求項1に記載の光学装置
  3. 回折格子の凹凸の第2の方向の周期をΛyと表すとき、
    Λ/λ2L ≦ Λy/λ2L< 1/[n12・{1−(sinθ−1.1・λ2L/(n1・Λ))}]
    の関係を満たすことを特徴とする請求項2に記載の光学装置
  4. 回折格子の凹凸の周期の方向に平行な各凹凸の断面が略矩形であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の光学装置
  5. 第1の波長帯域の光束を供給する第1の光学部品と、第1の波長帯域よりも長波長の波長帯域の複数の光束を供給するとともに、第1の光学部品からの第1の波長帯域の光束を受ける第2の光学部品とをさらに備え、
    回折格子によって、第1の光学部品からの光束を回折反射して第2の光学部品に導き、第2の光学部品からの複数の光束を回折反射して分離することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の光学装置。
  6. 第2の光学部品が光ファイバであることを特徴とする請求項5に記載の光学装置。
  7. 回折格子に入射する光束または回折格子から出射した光束を集光させる光学部品を備えることを特徴とする請求項5に記載の光学装置。
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