JP4006090B2 - 単結晶の直径測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、引き上げ法(チョクラルスキー法)により育成される単結晶の直径を妥当閾値決定法により精度よく、種結晶から直胴部にわたり連続的に測定することが可能な単結晶の直径測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、引き上げ法により育成される単結晶の直径を閾値を利用して測定する方法としては、2値化判定による方法、ピーク位置を検索するピーク判定による方法が挙げられる。これらの方法は、通常、単結晶の直胴部の直径制御に利用され比較的良好な成果を収めている。しかし、近年、安定に且つ精度良く単結晶を製造するため、単結晶の種結晶から直胴部までの直径を連続して測定することが求められている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
単結晶の種結晶から直胴部までの直径を連続して測定する場合、従来の上記測定方法を利用したとしても人手による操作を余儀無くされることが多い。また、2値化判定による方法では、結晶と溶液との間に明確な輝度差がなければならず、しかもその閾値は絶えず一定値でなければならない。一方、実際の引き上げにおいて、ネック部、コーン部及び直胴部においてはそれぞれ凝固点位置のメニスカス形状が異なるためフュージョンリングの明るさが大きく異なる。特にコーン部においてはメニスカスが形成されず、特徴的なフュージョンリングのピークが無くなることもままある。このような条件下において、従来のような一定値の閾値では計測を誤る可能性があるという問題がある。
【0004】
また、上記ピーク位置を検索するピーク判定による方法においては、これは必ずフュージョンリングが存在するという仮定の上に成り立っている。したがって、この方法はフュージョンリングが明確に現れる直胴部の直径を測定するのには向いているものの、その閾値が決定されるには一度直胴部まで引き上げを行って適切な閾値を把握する必要がある。この場合、パラメーターを把握するまで数時間を要し、しかも種結晶部やコーン部では、固液界面のフュージョンリング以外にも結晶をつかむホルダーや結晶の段差が坩堝からの放射光を反射して起きる高輝度部を誤って検出する可能性があるという問題がある。
【0005】
これを図を用いて説明する。図8〜図11は単結晶の種結晶部、コーン部及び直胴部における代表的なラインプロフィールの模式図を示すもので、閾値は150の一定値とする場合である。図8は種結晶引き上げ時のラインプロフィールで、明確なフュージョンリングが現れ、閾値から直径D1 が求められる。図9はフュージョンリングが消失し、且つ輝度が低下したコーン部のラインプロフィールで、閾値150では直径が求められない。図10は結晶の一部に反射光が現れたコーン部のラインプロフィールで、閾値150では誤った径D2 が求められ、正しい直径D3 が求められない。図11は明確なフュージョンリングが現れた直胴部のラインプロフィールで、閾値から直径D4 が求められる。このように、一定閾値では種結晶から直胴部に至までの連続的な測定が不可能であるか、閾値の決定に細心の注意を払って測定する必要がある。しかも、炉の構造が変わったり、引き上げ条件が変わった場合はその都度最適閾値を時間をかけて模索しなければならないという問題がある。
【0006】
したがって、本発明の解決しようとする課題は、引き上げ法(チョクラルスキー法)により育成される単結晶の直径を精度よく、種結晶から直胴部にわたり連続的且つ自動的に測定することが可能な単結晶の直径測定装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる実情において、本発明者は鋭意検討を行った結果、引き上げ法により育成される単結晶の直径を測定する際、測定値を出力する前に該測定値の妥当性を評価し、単結晶の直径は数十秒の範囲で必ず連続するという前提のもとに、過去値との比較において不適切な値は測定結果から除外して、閾値の妥当性の評価をしながら自動的に閾値を変更する妥当閾値決定手段を設ければ上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の請求項1記載の単結晶の直径測定装置は、引き上げ法により育成される単結晶の直径を種結晶から直胴部にわたり連続的に測定する単結晶の直径測定装置において、単結晶の育成部を撮影し映像信号を出力する800nm以上の波長感度を有する2次元CCDカメラと、前記映像信号を2値化して閾値により直径を求める2値化直径算出手段と、前記2値化直径算出手段により求められる直径を当該直径の測定時点から過去十秒以内に測定した過去値との比較で、連続的な値である場合には妥当閾値と決定し、それ以外の値又は測定不能な場合には不適切な閾値とし、直径が不適切値になる前の値と連続的な値となるような閾値を探してこれを変更された妥当閾値と決定する妥当閾値決定手段と、前記妥当閾値により求められる直径を出力するアナログ出力手段と、を有することを特徴とする。これにより、引き上げ法により育成される単結晶の直径を、特にコーン部にまま見られるフュージョンリングが消失し、且つ輝度が低下したラインプロフィールであっても、また、結晶の一部に反射光が現れたラインプロフィールであっても精度よく、種結晶から直胴部にわたり連続的且つ自動的に測定することが可能となる。また、蛍光灯等の外部不要光を検知することがなく、外部光の影響を除去できる。また融液の変動、結晶の揺らぎにも追随できるため、測定精度が更に向上する。
【0009】
また、請求項2記載の単結晶の直径測定装置は、前記妥当閾値決定手段において、前記妥当閾値により求められる測定値を少なくとも平均化処理の計算を行い過去値のデータとすることを特徴とする。これにより、請求項1記載の発明と同様の効果を奏する他、適切な値と判定された値のみ一定時間の平均化処理が行われ、妥当性評価の過去値となる平均値の信頼性が高められる。例えば真円ではない結晶の代表直径は、計測エラーに引きずられることなく、過去値との比較において高い精度で求められる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態における単結晶の直径測定装置20の全体構成図を図1に示す。図1中、1は、単結晶引き上げ装置であり、石英坩堝2の中に入れたシリコン多結晶をヒータ4により加熱溶融して、このシリコン溶融液9の中に引き上げワイヤー6の先端部に支持されたシリコン種結晶を浸漬し、引き上げワイヤー6を回転させながら徐々に引き上げることにより単結晶を育成させて、シリコン単結晶ロッド10を製造する。本発明においては、シリコン単結晶ロッド10の種結晶部10a、コーン部10b、直胴部10cの直径を計測するため、カメラ11を用いて、単結晶引き上げ装置1の斜め上方からシリコン単結晶ロッド10の育成部を撮影し、映像信号を出力する。
【0012】
カメラ11としては、1次元カメラ(ラインセンサー)、2次元カメラなどが使用でき、このうち、種結晶から直胴部までの直径を視野内に納めることのできるレンズを有し、且つ800nm以上の波長感度を有する2次元CCDカメラが好ましい。この場合、800nm以上の波長に感応させるため800nm以下の波長をカットするカラーフィルターを装着すればよい。これにより、蛍光灯等の外部不要光を検知することがなく外部光の影響を除去できると共に、融液の変動、結晶の揺らぎにも追随できるため、ラインセンサーでは達成できない測定精度を得ることができる。また、この2次元CCDカメラの画面分解能は640×480以上の画素を有するものが好ましい。
【0013】
本発明の単結晶の直径測定装置は、更に2値化直径の算出と、妥当閾値の決定との双方を実行するフレームメモリー12と演算用CPU13を有する。すなわち、カメラ11から得られるアナログNTSC又はPAL規格の映像信号はフレームメモリー12(画像処理装置)に送られる。このフレームメモリー12としては分解能8ビット、空間分解能512×480以上のメモリーを有し、更にI/Oアクセス又はダイレクトメモリマップによりCPUとのデータのやりとりができるものが好ましい。
【0014】
演算用CPU13は、妥当閾値の決定において、高速な統計計算を可能にするため、浮動小数点演算機構を備えたプロセッサを用いることが好ましい。また、アナログ出力部14は12Bit 精度以上のアナログ出力とすることが好ましい。また、その型としては、電圧出力型の他、直径制御コントローラ15の種類により、例えば、電流出力型を用いてもよい。
【0015】
次に、図2に示すフローにて、単結晶の直径計算を行う。図中、妥当閾値決定手段は追跡モードONから追跡モードOFFまでをいう。また、記号「y」はYes、記号「n」はNoを示す。なお、説明の便宜上、以下の説明で使用する項目の数字は図2のフロー中の数字に相当するものである。
1.1画面の画像を取得する。
2.次に、2値化直径を2値化直径算出手段により算出する。単結晶の種結晶から直胴部にわたる直径をレンズの視野内に納めることができるようにカメラをセットする。具体的には、図3に示すように、点線内のすべての水平ラインについて直径を測定し、全測定値のうち最も大きな値を測定値D5 とする。2値判定に用いる閾値としては、予め指定された妥当閾値又は後述する閾値変更によって再定義された妥当閾値を用いる。また、適切な測定値が求められない場合は無効値とする。
【0016】
3.追跡モードがONになっているかどうか調べる。追跡モードは閾値を再計算中にチェックされる。追跡モードの段階では前記測定値が正しい値である保証はないため、平均化処理は行われず、標準偏差又は異常値割合などの統計計算のみ行われる。これにより、前回まで正しく測定されていた平均値は維持され、該平均値は後述の適切な閾値との比較に用いられる。本発明において、統計計算は標準偏差、異常値割合、分散等の計算を意味する。
【0017】
4.測定値の妥当性の評価を行う。すなわち、前回値又は過去値の平均値と、得られた値を比較して、大きく異なる値や明らかに異なる値が得られた場合は無効値として破棄する。この無効値は標準偏差又は異常値割合などの統計処理に回され平均化処理は行わない。これにより、過去に正しく測定された直径値の平均の値は破壊されない。
【0018】
5.妥当な測定値と判断されたら、統計処理バッファに測定値を与えて標準偏差又は異常値割合などの統計処理計算と平均化処理計算の双方を行う。統計処理バッファは、現在の閾値が妥当であるかどうかの判定の基となる平均、標準偏差、分散、異常値割合などのデータを求める計算を行うものである。例えば、標準偏差を求めて、バラツキが大きくなった場合は不適切な閾値であると判断したり、測定値に対する平均からの上下限を定めておいてこれから外れる頻度をトレースして閾値の妥当性を判断したりする。
【0019】
6.追跡モードON又は妥当性評価において不適切な閾値と判断されると、該閾値から求められる測定値は平均化処理データの対象とはならず、統計処理用のデータとして標準偏差又は異常値割合計算などの統計計算が行われる。これにより、不適切な閾値により求められる測定値が平均値に取り込まれることはなく、測定精度が向上する。
7.上記平均、標準偏差、分散、異常値割合などを基準に適切不適切を判断するには一定の標本数が必要となる。このため、一定数が統計処理にかけられるまでは、該適切不適切の評価を行わないようにする。
【0020】
8.平均値及び標準偏差又は異常値割合等の統計量から、現在得られた測定値が過去のデータと連続性があり、且つ大きくばらついていないか評価する。シリコン単結晶は数十秒の範囲で必ず連続性があり、且つ滑らかな径変化しか起こしていない。したがって、不連続な値を採る場合は、結晶が切れているか、正しく測定できなくなったときと判断される。
【0021】
9.標準偏差又は異常値割合が妥当であれば、正しく測定できているものとして、追跡モードであればこれをオフにする。
10.上記8で不適切な測定値であると判断された場合、閾値を現在の閾値から予め定められたステップ毎に変更し、適切な閾値を探す。
11.閾値の妥当性を調べるため、データをいったんリセットする。
12.上記10で仮に定めた閾値が平均値を破壊しないよう、追跡モードをONにする。そして、その後、再度新しい閾値で直径測定を試み、測定値が不適切値になる前の値と連続的な測定値となるような閾値を探す。
13.すべての条件が満足され、妥当閾値が決定された場合、そのときの平均値をアナログ出力する。
【0022】
本実施の形態によれば、単結晶の育成部を撮影し映像信号を出力するカメラ11と、フレームメモリ12と、演算用CPU13と、前記妥当閾値により求められる直径を出力するアナログ出力手段14とを有し、フレームメモリ12及び演算用CPU13において、前記映像信号を2値化して閾値により直径を求める2値化直径算出計算、前記2値化直径算出手段により求められる直径を過去値との統計的な比較で、短期的に連続的な値である場合には妥当閾値と決定し、それ以外の値又は測定不能な場合には不適切な閾値とし、直径が不適切値となる前の値と連続的な値となるような閾値を自動的に検出してこれを変更された妥当閾値と決定する妥当閾値決定処理とを実施させるため、引き上げ法により育成される単結晶の直径を、特にコーン部にまま見られるフュージョンリングが消失し、且つ輝度が低下したラインプロフィールであっても、また、結晶の一部に反射光が現れたラインプロフィールであっても精度よく、種結晶から直胴部にわたり連続的且つ自動的に測定することが可能となる。また、前記妥当閾値決定手段において、前記妥当閾値により求められる測定値を少なくとも平均化処理の計算、特に統計処理及び平均化処理の計算を行い過去値のデータとするため、適切な値と判定された値のみ一定時間の平均化処理が行われ、妥当性評価の過去値となる平均値の信頼性が高められる。例えば真円ではない結晶の代表直径は、計測エラーに引きずられることなく、過去値との比較において高い精度で求めることができる。また、カメラ11が、800nm以上の波長感度を有する2次元CCDカメラであるため、蛍光灯等の外部不要光を検知することがなく、外部光の影響を除去できる。また融液の変動、結晶の揺らぎにも追随できるため、測定精度が更に向上する。
【0023】
【実施例】
次に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
実施例
種結晶から直胴部までの直径を視野内に納めることのできるレンズを有する波長を800nm 以上に制限した2次元CCDカメラ、1画素当たり8Bitの深さを持ち、且つ640 ×480 の画面分解能を有する8Bitフレームメモリ、32BitCISC40MHzのペンティアムプロセッサ及び0〜10V出力のアナログ出力部をそれぞれ準備し、直径計算が可能なように接続した。すなわち、図2のフローに示すロジックを組み込んだ単結晶の直径測定装置を用い、6インチシリコン単結晶引き上げ炉内を撮影して、その出力を得た。得られた単結晶のラインプロフィールの模式図(図4〜図6)を参照しつつ説明する。
【0024】
始めに、種結晶が育成された段階で種結晶の直径測定を開始した。この時、閾値が変化しないよう閾値変化ステップ0、開始閾値150として結晶径の測定を始めた。種結晶部は図4に示すように、明確なフュージョンリングが現れ、閾値150で種結晶部の直径は正常に測定できた。種結晶を測定している段階で結晶径の約1/3の周動(結晶の揺らぎ)があったが安定した測定値を示した。次いで、コーン部に移行させたところ、5分程度後に全体の輝度が下がり、計測不能となった。単結晶のラインプロフィールを観察したところ、図5に示すようなフュージョンリングが消失して輝度ピークは閾値150を下回っていた。この時の最大輝度は140程度であった。
【0025】
次に、閾値変化ステップ3に変更したところ、種結晶部では適切な測定が閾値変更なく測定でき、コーン部移行3分後に閾値が不適切となり追跡モードとなった。数回の閾値変更の後、図6に示すように閾値138でコーン部の計測が可能となり安定した。この閾値判定は4分間で完了した。この測定例を図7に示す。図7より、本実施例によれば、種結晶部、コーン部及び直胴部の直径を連続して精度よく測定することができた。
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、引き上げ法により育成される単結晶の直径を精度よく、種結晶から直胴部にわたり連続的且つ自動的に測定することが可能となる。従って、従来のように、人手を煩わすことがなく生産性が向上する。また、製品の歩留りが向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における単結晶の直径測定装置の全体構成図を示す。
【図2】単結晶の直径計算のフローを示す。
【図3】測定される単結晶直径部の平面の概略図を示す。
【図4】本発明の実施の形態における種結晶部のラインプロフィールの1例を示す。
【図5】本発明の実施の形態におけるコーン部のラインプロフィールの1例を示す。
【図6】図5の閾値を変更した状態を示す。
【図7】実施例における単結晶の直径測定例を示す。
【図8】従来の方法による種結晶部のラインプロフィールの1例を示す。
【図9】従来の方法によるコーン部のラインプロフィールの1例を示す。
【図10】従来の方法によるコーン部のラインプロフィールの他の1例を示す。
【図11】従来の方法による直胴部のラインプロフィールの1例を示す。
【符号の説明】
1 単結晶引き上げ装置
2 石英坩堝
4 ヒータ
6 ワイヤー
9 シリコン溶融液
10 シリコン単結晶ロッド
10a 種結晶部
10b コーン部
10c 直胴部
11 カメラ
12 フレームメモリ
13 演算用CPU
14 アナログ出力手段
15 直径制御コントローラ
16 フュージョンリング
20 単結晶の直径測定装置
Claims (2)
- 引き上げ法により育成される単結晶の直径を種結晶から直胴部にわたり連続的に測定する単結晶の直径測定装置において、
単結晶の育成部を撮影し映像信号を出力する800nm以上の波長感度を有する2次元CCDカメラと、前記映像信号を2値化して閾値により直径を求める2値化直径算出手段と、前記2値化直径算出手段により求められる直径を当該直径の測定時点から過去十秒以内に測定した過去値との比較で、連続的な値である場合には妥当閾値と決定し、それ以外の値又は測定不能な場合には不適切な閾値とし、直径が不適切値になる前の値と連続的な値となるような閾値を探してこれを変更された妥当閾値と決定する妥当閾値決定手段と、前記妥当閾値により求められる直径を出力するアナログ出力手段と、を有することを特徴とする単結晶の直径測定装置。 - 前記妥当閾値決定手段において、前記妥当閾値により求められる測定値を少なくとも平均化処理の計算を行い過去値のデータとすることを特徴とする請求項1記載の単結晶の直径測定装置。
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