JP4004625B2 - 大環状ポリエーテルイミドオリゴマーを添加したポリエーテルイミドの調製法 - Google Patents

大環状ポリエーテルイミドオリゴマーを添加したポリエーテルイミドの調製法 Download PDF

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Description

【0001】
発明の背景
本発明はポリエーテルイミドの調製に係わる。
ポリエーテルイミドは特に高温条件に対する抵抗性に特徴のある既知の類の高性能ポリマーである。モノマー試薬からのその調製には少なくとも2つの方法が知られている。第一の方法はクロロ−またはニトロ−置換フタルイミドをジヒドロキシ芳香族化合物の塩と置換反応させ、次いで得られたビスイミドを対応する二無水物に変換し、それからこの二無水物を少なくとも1種のジアミンと反応させる工程を含んでいる。以後「置換−縮合」と呼ぶこの方法は多くの刊行物並びに特許文献に開示されている。
【0002】
以後「直接置換」と呼ぶ第二の方法は処理工程並びに副生物の生成が最小となるのでしばしば有利である。この方法は典型的にはジヒドロキシ芳香族化合物の塩とビス(ハロ−またはニトロ−置換フタルイミド)との反応からなる。この直接置換法も多くの特許文献に開示されている。特に米国特許5,229,482が参照され、これにはジクロロ−またはトリクロロ−芳香族化合物のような極性の低い溶剤中における、使用される比較的に高い反応温度で安定な相間移動触媒の存在下での、直接置換法が開示されている。しばしば好ましいとされるこの特性を持った相間移動触媒はヘキサアルキルグアニジニウムのハライド、特にクロライドおよびブロマイドである。アニソールのようなアルコキシ芳香族化合物を溶剤として使用する類似の直接置換法が1997年2月13日付け米国特許出願08/799886に開示されている。
【0003】
多くの線状ポリマー、特にポリカーボネート、ポリエステルおよびポリエーテルイミドのような縮合ポリマーの形成には種々の割合の大環状オリゴマーの形成が伴うことが知られいてる。これらのオリゴマーは典型的には、生成物の殆どを占める線状ポリマーとは対照的に、2乃至約12の重合度を有しそして、ポリマー鎖中の如何なる芳香族環或いは複素環の存在とは別に、全体で環状形状を呈している分子種を主に含んでいる。
【0004】
また、簡略を期すため以後時々簡単に「オリゴマー」と呼ぶこの大環状ポリエーテルイミドオリゴマーを種々の方法にて高収率で調製することのできることも知られている。例えば、米国特許5,357,029にはジアミンとテトラカルボン酸またはその二無水物との反応により、そして米国特許5,514,813には相間移動触媒の存在下での反応試薬の特定のモル比におけるジヒドロキシ芳香族化合物の塩とビス(ハロ−またはニトロ−置換フタルイミド)との反応により、これらのオリゴマーを調製することが記載されている。前記米国特許5,357,029に更に開示されているように、これらのオリゴマーの重合は好ましくは開始剤としての第一アミンおよび金属またはその水酸化物あるいは塩でよい大環状ポリイミド重合触媒の存在下で行われる。
【0005】
大環状オリゴマーは本質的にはあらゆるポリエーテルイミド中から検出されるが、置換−縮合法によって調製されるポリエーテルイミドには一般に非常に低い割合、最も頻繁には1重量%までの大環状オリゴマーしか含まれていない。このような割合では、大環状オリゴマーは線状ポリマーの特性に殆どまたは全く有害な影響を与えない。
【0006】
しかしながら、線状ポリエーテルイミドを調製する直接置換法は実質的により高い割合のオリゴマーを含んだ生成物を与えることが発見された。10%もの高さそして最も頻繁には約7−8重量%の範囲の割合が典型的である。
線状体を反溶剤により析出させ、この結果可溶部分に主要割合のオリゴマーを含有させるような方法によって線状ポリエーテルイミドからオリゴマーを分離することは可能である。しかし、この観点からこのようなオリゴマーを重合する今までに知られている方法はそのために要求される条件が置換−縮合および直接置換の条件とは異なるので不利である。
【0007】
発明の要約
本発明は、直接置換モノマー反応混合物中に大環状ポリエーテルイミドオリゴマーを混合し、これにより、最初の反応混合物中のオリゴマーの割合が比較的に高くても、オリゴマーをかなり一定のそして比較的に低い割合で有するポリマーを生成することが可能であるとの発見に基づいている。その結果、オリゴマーを直接置換反応にリサイクルでき、得られる生成物中のオリゴマーの割合は添加しなかった場合より高くはならない。
【0008】
従って、本発明は、ジヒドロキシ−置換芳香族炭化水素のアルカリ金属塩少なくとも一種およびビス(ハロ−またはニトロ−置換フタルイミド)少なくとも一種を含んだ反応混合物の成分を反応することにより線状ポリエーテルイミドを含んだポリエーテルイミド組成物を調製する方法において、前記反応混合物中に重合度1乃至約10を有する大環状ポリエーテルイミドオリゴマー少なくとも一種を追加して混合することからなる、方法に係わる。
【0009】
好適な実施の態様では、この大環状ポリエーテルイミドオリゴマー(1種または複数種)は線状ポリエーテルイミドを含む前もって調製された組成物から単離されている。
好適な実施の態様の詳細な記述
本発明に従ってポリエーテルイミドを調製するために使用されるジヒドロキシ−置換芳香族炭化水素のアルカリ金属塩は代表的にはナトリウムおよびカリウム塩である。その入手性および比較的低コストであることからナトリウム塩がしばしば好ましい。
【0010】
適当なジヒドロキシ−置換芳香族炭化水素には式
(I) HO−A1−OH
(上記式中、A1 は二価の芳香族炭化水素基である)を有するものが含まれる。適当なA1 にはm−フェニレン、p−フェニレン、4,4′−ビフェニレン、4,4′−ビ(3,5−ジメチル)フェニレン、2,2−ビス(4−フェニレン)プロパン、並びに米国特許4,217,438中に名称または式で(一般的あるいは特定的に)開示されているジヒドロキシ−置換芳香族炭化水素に対応するもののような類似の基が含まれる。
【0011】
このA1 基は好ましくは式
(II) −A2−Y−A3
を有し、ここに上記式中のA2 およびA3 の各々は単環式の二価の芳香族炭化水素基でありそしてYは1個または2個の原子がA2 をA3 から分離している橋架け炭化水素基である。式II中の自由原子価結合は通常Yに対してA2 およびA3 のメタまたはパラ位にある。A1 が式IIを有する化合物はビスフェノールであり、従って簡略を期すため時々ここでは用語「ビスフェノール」を使用してジヒドロキシ−置換芳香族炭化水素を指すこととするが、しかし、このタイプの非−ビスフェノール型化合物も適宜使用することができることを理解すべきである。
【0012】
上記式IIにおいて、A2 およびA3 基は置換されていないフェニレンまたはその炭化水素−置換誘導体でよく、この置換基(1つ又はそれ以上)の例示にはアルキルおよびアルケニルがある。置換されていないフェニレン基好ましい。A2 およびA3 は共にp−フェニレンであるのが好ましいが、しかし両者が共にo−またはm−フェニレンであったり、あるいはその一方がo−またはm−フェニレンで他方がp−フェニレンであってもよい。
【0013】
橋架け基Yは1個または2個の原子、好ましくは1個の原子がA2 をA3 から分離している基である。このタイプの基の例には、メチレン、シクロヘキシルメチレン、2−[2.2.1]ビシクロヘプチルメチレン、エチレン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデンおよびアダマンチリデンがあり、gem−アルキレン(アルキリデン)基が好ましい。しかし、不飽和の基も含まれる。入手性および本発明の目的に対する特別の適性からすれば、式IIの好ましい基は2,2−ビス(4−フェニレン)プロパン基であり、この基はビスフェノールAから誘導され、Yがイソプロピリデンであり、そしてA2 およびA3 がそれぞれp−フェニレンである。
【0014】
ビスフェノール塩の水和物、例えばビスフェノールA二ナトリウム塩六水和物を使用し、この水和物をポリエーテルイミドを形成する前に脱水することがしばしば有利である。これは水和物をこうして使用すると特に高い分子量のポリエーテルイミドが通常形成されるためである。
ビス(ハロ−またはニトロ−置換フタルイミド)は一般に式
【0015】
【化4】
【0016】
[上記式中、R1 はC6-20の二価芳香族炭化水素またはハロゲン化炭化水素基、C2-20のアルキレンまたはシクロアルキレン基、C2-8 ビス(アルキレン終端)ポリジオルガノシロキサン基あるいは式
【0017】
【化5】
【0018】
(上記式中、Qは
【0019】
【化6】
【0020】
であり、そしてmは0または1である)の二価の基であり、X1 はフルオロ、クロロ、ブロモまたはニトロである]を有する。R1 は最も頻繁にはm−フェニレンまたはp−フェニレンである。殆どの場合、各X1 はフルオロまたはクロロである。
式III の置換芳香族化合物の特に好ましいものの中には1,3−および1,4−ビス[N−(4−フルオロフタルイミド)]ベンゼンおよびこれに対応するクロロ化合物がある。
【0021】
本発明により通常使用される第三の物質は従来芳香族ポリエーテルポリマーの調製に使用されている双性非プロトン溶剤より通常実質的に極性の低い、低極性溶剤である。約150−225℃の範囲の温度を必要とする反応を促進するため、この溶剤は少なくとも約150℃の沸点を有するのが好ましい。このタイプの適当な溶剤にはo−ジクロロベンゼン、ジクロロトルエン、1,2,4−トリクロロベンゼン、ジフェニルスルホンおよびアニソールが含まれる。クロロベンゼンのような同じような極性を有するが沸点がこれらより低い溶剤を超大気圧で使用することができる。
【0022】
同じく一般に使用されるのは相間移動触媒であり、好ましくは約180−225℃の範囲の温度で実質的に安定な相間移動触媒である。この目的には種々のタイプの相間移動触媒を使用することができる。これらには米国特許4,273,712に開示されているタイプの第四ホスホニウム塩、米国特許4,460,778および4,595,760に開示されているタイプのN−アルキル−4−ジアルキルアミノピリジニウム塩、および前述の米国特許5,229,482に開示されているタイプのグアニジニウム塩が含まれる。
【0023】
高温でのその非常な安定性およびポリエーテルイミドを高収率で生成する効果性からみて、好適な相間移動触媒はヘキサアルキルグアニジニウム塩およびα,ω−ビス(ペンタアルキルグアニジニウム)アルカン塩並びにこれらの複素環式類似体である。簡略を期すため、これら両タイプの塩を以後時々「グアニジニウム塩」と呼ぶ。
【0024】
本発明によれば、ジヒドロキシ−置換芳香族炭化水素の塩とビス(ハロ−またはニトロ−置換フタルイミド)とを含む反応混合物は又、大環状ポリエーテルイミドオリゴマー少なくとも1種をも含む。このオリゴマー(1種または複数種)は好ましくは前述のモノマー試薬の反応によって形成される分子構造と同じ分子構造を持った構造単位を含んでいることが好ましいが、しかし、この混合物中に異なる分子構造のオリゴマーを混合することも本発明の範囲に入る。
【0025】
しばしば、最も頻繁には1乃至約10の、好ましくは2乃至約10の、そして最も好ましくは2乃至約5の重合度の異なる大環状ポリエーテルイミドオリゴマーの混合物を使用することが好ましく、これは殆どのオリゴマーの調製法がこのような混合物を与えるためであり、混合物中の個々のオリゴマーを分離することは殆ど意味がない。当業者には明らかであろうが、重合度1のオリゴマーは単一の構造単位からなり全体が環状の構造をしている。
【0026】
このような混合物は当業界に知られている方法により容易に得ることができる。しかし、本発明の特に利点とされるところは、線状ポリエーテルイミドを含む前もって調製された組成物から単離されたオリゴマー混合物を使用することである。従って、直接置換法により前もって調製されたポリマー中に存在する大環状オリゴマーを典型的には線状ポリマーを反溶剤で析出させて線状ポリマーから分離し、オリゴマーに富む溶液の形態で回収することができる。
【0027】
オリゴマーから分離するための線状ポリエーテルイミドの反溶剤による析出は極性の低い溶剤中のポリマー溶液をいずれかの反溶剤と組み合わせることにより達成しうる。適当な反溶剤は簡単な実験で確認できる。その例はメタノール、トルエンおよびアセトニトリルである。トルエンおよびアセトニトリルを使用すると得られる析出物が特に線状ポリマーに富んでおり、従って液体相が特にオリゴマーに富んでいるので、一般にはこれらが好ましい。
【0028】
この確認はポリエーテルイミド15gを含有するアニソール溶液150mlを反溶剤400mlと混和する手順において、メタノール、トルエンおよびアセトニトリルを反溶剤として比較することにより示される。使用したポリエーテルイミドはビスフェノールAの二ナトリウム塩と1,3−ビス[N−(4−クロロフタルイミド)]ベンゼンとの反応により調製されそして重合度2−8を有する大環状ポリエーテルイミドオリゴマー約7.6%含んでいる。固体の物質は濾過により分離しそして溶液は線状高分子量ポリマーおよびオリゴマーの存在を分析した。この結果を表Iに掲げる。
【0029】
ビスフェノール塩と置換芳香族化合物は実質的に等モル量で接触される。分子量を最大にするには、これらの量をできる限り精確に等モルに近づけるべきであるが、しかし一方の試薬または他方の試薬を若干過剰に使用することによって分子量の制御を達成することができる。また、連鎖停止剤としてモノヒドロキシ芳香族化合物あるいはモノハロ−またはニトロ−置換芳香族化合物のような単官能性試薬を使用することも本発明の範囲内である。
【0030】
反応混合物中に加えられる大環状オリゴマーの割合は広い変動を受けられ、これは得られるポリマーの組成がかかる割合に拘わらず本質的に同じになるためである。一般に、添加されるオリゴマーはビスフェノール塩に基づいて約0.5モル%程度の少量あるいは約25モル%もの多量を成すことができる。
反応温度は約125−250℃、好ましくは約130−225℃の範囲である。使用される相間移動触媒の割合はビスフェノール塩に基づいて一般に約0.5−10モル%、好ましくは約1−5モル%である。
【0031】
以下の実施例により本発明を例証する。
実施例1−3
ビスフェノールA二ナトリウム塩六水和物2.9934g(7.87ミリモル)およびo−ジクロロベンゼン60mlの混合物を窒素雰囲気中で環流下に加熱して水和水を蒸留により除去した。次いで、1,3−ビス[N−(4−クロロフタルイミド)]ベンゼン3.44g(7.87ミリモル)および更に10mlのo−ジクロロベンゼンを加えた。加熱を続けて蒸留により10mlのo−ジクロロベンゼンを除去した後、ヘキサエチルグアニジニウムクロライド150mg(0.49ミリモル)および同じ反応物質から調製された各種割合の大環状ポリエーテルイミドオリゴマーを加えた。220℃で4時間加熱を続けた後、サンプルを取り出してゲル透過クロマトグラフィーによって分析した。これらの結果を、大環状オリゴマーを加えなかった対照例と比較して、表IIに掲げる。
【0032】
上記の表IIから、反応混合物中にオリゴマーが混合されたか否かに拘わらず、そしてオリゴマーが混合されるときの反応混合物のオリゴマーの割合に拘わらず、生成物中のオリゴマーの割合が実質的に同じであったことが、明白である。

Claims (10)

  1. ジヒドロキシ−置換芳香族炭化水素のアルカリ金属塩少なくとも一種およびビス(ハロ−またはニトロ−置換フタルイミド)少なくとも一種を含んだ反応混合物の成分を反応することにより線状ポリエーテルイミドを含んだポリエーテルイミド組成物を調製する方法において、前記反応混合物中に重合度1乃至10を有する大環状ポリエーテルイミドオリゴマー少なくとも一種を追加して混合することからなる、方法。
  2. 異なる重合度を有する大環状ポリエーテルイミドオリゴマーの混合物を前記反応混合物中に混合する請求項1記載の方法。
  3. ジヒドロキシ−置換芳香族炭化水素が式
    (I) HO−A1−OH
    を有し、上記式中のA1 が式
    (II) −A2−Y−A3
    を有し、上記式中のA2 およびA3 の各々が単環式の二価の芳香族炭化水素基であり、そしてYが1個または2個の原子がA2 をA3 から分離している橋架け炭化水素基である請求項1記載の方法。
  4. ビス(ハロ−またはニトロ−置換フタルイミド)が式
    [上記式中、R1 はC6-20の二価芳香族炭化水素またはハロゲン化炭化水素基、C2-20のアルキレンまたはシクロアルキレン基、C2-8 ビス(アルキレン終端)ポリジオルガノシロキサン基あるいは式
    (上記式中、Qは
    であり、そしてmは0または1である)の二価の基であり、X1 はフルオロ、クロロ、ブロモまたはニトロである]を有する請求項3記載の方法。
  5. アルカリ金属塩がビスフェノールA二ナトリウム塩でありそしてビス(ハロ−またはニトロ−置換フタルイミド)が1,3−または1,4−ビス[N−(4−クロロフタルイミド)]ベンゼンである請求項4記載の方法。
  6. ビスフェノールA二ナトリウム塩が水和物として使用され、ポリエーテルイミドを形成する前に脱水される請求項5記載の方法。
  7. 線状ポリエーテルイミドを含む前もって調製された組成物から前記大環状ポリエーテルイミドオリゴマーを単離する工程を更に含んでいる請求項2記載の方法。
  8. ジヒドロキシ−置換芳香族炭化水素が式
    (I) HO−A1−OH
    を有し、上記式中のA1 が式
    (II) −A2−Y−A3
    を有し、上記式中のA2 およびA3 の各々が単環式の二価の芳香族炭化水素基であり、そしてYが1個または2個の原子がA2 をA3 から分離している橋架け炭化水素基である請求項7記載の方法。
  9. アルカリ金属塩がビスフェノールA二ナトリウム塩でありそしてビス(ハロ−またはニトロ−置換フタルイミド)が1,3−または1,4−ビス[N−(4−クロロフタルイミド)]ベンゼンである請求項8記載の方法。
  10. ビスフェノールA二ナトリウム塩が水和物として使用され、ポリエーテルイミドを形成する前に脱水される請求項9記載の方法。
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