JP4002446B2 - 穀類の回転式蒸煮装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、原料(特に味噌、醤油、納豆等の製造に用いる丸大豆に代表される穀類)を蒸煮する回転式蒸煮装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
食品業界等で広く使われている蒸煮装置には様々な種類があるが、最も一般的には回転式加圧蒸煮装置(使用する缶体の仕様から通称NK缶と呼ばれる)を例示できる。この蒸煮装置は、原料を収納する缶体により竪型及び横型の2種類に分けることができ、丸大豆の加圧蒸煮(以下、蒸煮と略する)には専ら竪型蒸煮装置が使用される。この丸大豆の蒸煮では、丸大豆から溶出した水溶性蛋白質や糖類からなる粘性の排液(通称アメ)が発生する。この排液は、蒸気を缶体の上から下へ吹き込み、排液を下方へ落として缶体外に排出するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように排液を丸大豆から分離する操作を行うが、原料表面や缶体内面に付着して残留する排液が、缶体を傾倒させて原料を排出する際に、缶体の傾倒に従って流れ出し、缶体の密閉を確保するために開口周縁部に取り付けたシール部材(ゴム、テフロン(登録商標)、アスベスト又は金属製パッキン等)を越えて流れ出ることになる。ここで、開口周縁部とは、通常缶体開口に沿って設けるフランジ上面及びこのフランジ上面近傍の缶体内外面を含めた部位を意味する。前記シール部材は開口周縁部の環状溝に嵌合して取り付けているため、排液、又は排液と共に原料が環状溝にも流れ込み、シール部材による缶体の密閉が確保されなくなる問題が生じる。また、排液は乾燥して固化するので、除去するための清掃が困難になる問題もある。
【0004】
例えば、実開平01-072829号「蒸煮釜」では、缶体内部に原料を受けるさな板を設け、排液(油、エキスと表示)はさな板を通して缶体底部へ落とし込み、下蓋を開いて回収又は排出管により吸い出すようにしている。しかし、原料の排出に際し、少なからず排液も上蓋側から流れ出ることを鑑みると、上述した問題を根本的に解決することにはならない。そこで、缶体から原料又は排液を流し出す際に、缶体の開口周縁部に設けたシール部材又はシール部材を取り付ける環状溝等の構造細部に前記排液又は原料が捉えられて生ずる缶体の密閉性や缶体使用後の清掃等の問題を解決する蒸煮装置の構造について検討した。
【0005】
【課題を解決するための手段】
検討の結果開発したものが、排出口を上部に設け、前記排出口周縁部に蓋を密着させて閉蓋する缶体を回転軸で傾倒自在に軸支してなり、前記缶体内の蒸煮原料を回転により傾倒させた缶体の排出口から排出する回転式蒸煮装置において、蓋周縁部に密着するシール部材を排出口周縁部に設け、このシール部材より内周側で前記排出口周縁部の缶体内面に連続する位置又はこの位置近傍に突条を設けた穀類の回転式蒸煮装置である。「排出口周縁部」とは、排出口としての開口周縁及びこの周縁部に施した加工部分を一体に含む部位を指す。また、「缶体内面に連続する位置」とは、突条内面が缶体内面と連続した面を形成する位置、「缶体内面に連続する位置近傍」とは、突条内面が缶体内面と離隔しながらも殆ど離れていない位置をそれぞれ意味し、通常缶体を閉蓋する蓋周縁部又は排出口周縁部に設けるシール部材よりも内周側(缶体内面寄り)に突条を設ける。この突条は排出口周縁部周方向に全周又は部分的に設ければよい。突条を部分的に設ける場合、傾倒させた缶体の排出口下方、すなわち原料又は排液が通過する排出口周縁部に相当する周方向範囲で突条を設ける。
【0006】
通常、缶体の上部に設ける排出口は原料の供給口を兼ねており、缶体上部に対して部分的に設ける排出口(=マンホール)と缶体上部全面を排出口とするものとがあるが、本発明はいずれにも適用できる。突条は、排出口周縁部の缶体内面に連続する位置又はこの位置近傍に設けるので、排出しようとする原料又は排液は、缶体内面から流れ出て、まず突条に接触する。そして、原料又は排液は突条上縁で液切りされながら排出されるので、排液が排出口周縁部(特に排出口周縁部上面)を流れないのでこの排出口周縁部を汚さずに済み、特に排出口周縁部にシール部材を設けている場合は、シール部材及びシール部材を固着する構造部位(=例えば上記嵌合溝)へ流れ込むことがなくなる。これから、突条の断面形状や排出口周縁部に対する突条の配置関係は、前記液切りの作用を果たすものであれば限定されず、例えば排出口周縁部上面でシール部材の内側に沿って突条を設けてもよいし、蓋と接触しない缶体内面で排出口周縁部上面に近接した位置に突条を設けてもよい。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。図1は本発明を適用した竪型回転式加圧蒸煮装置(竪型NK缶)の側面図、図2は排出口周縁部1を表した図1中A矢視部分拡大断面図、図3は蓋2を開いた状態を表した図2相当断面図であり、図4は缶体3を傾倒させて排液4を流し出す状態を表した図2相当断面図である。本例は、缶体3上部全面を排出口5とする蒸煮装置の例であるが、本発明は缶体に設ける排出口一般、例えばマンホール型の排出口にも本発明が適用可能である。
【0008】
本例の蒸煮装置は、図1に見られるように、缶体3を回転軸6で傾倒自在に軸支している。この缶体3は、上部全面にわたる排出口5を有し、この排出口周縁部1に対して蓋2(正確には蓋周縁部14)を密着させ、缶体3内を閉蓋する。本例では、排出口5は原料の供給口を兼ねているが、排出口と供給口とが別体の場合、本発明は排出口に対して適用する。蒸気は、回転軸6内を通じて缶体3内へ延設した蒸気パイプ7から上方へ向けて突出した蒸気ノズル8より放出する。そして、この蒸気が上方から下方へと流れるように、缶体3内下方に原料を載せるさな板9を架設し、このさな板9下方から缶体3外へ引出すドレインパイプ10により蒸気を回収している。
【0009】
本発明は、図2及び図3に見られるように、排出口周縁部1に適用する。本例にいう排出口周縁部とは、排出口フランジ12を主体として、この排出口フランジ12に設ける嵌合溝13、シール部材11、突条19及びチャックフランジ16を一体に含む部位である。シール部材11は、缶体3の排出口周縁部1の主体となる環状の排出口フランジ12上面へ全周にわたって嵌合溝13を形成し、この嵌合溝13に嵌合することで缶体3に取り付けている。このシール部材11が蓋周縁部14の主体となる環状の蓋フランジ15下面に密着した状態で、各フランジ12,15に設けたチャックフランジ16,17を別途チャック18で拘束し、缶体3内の密閉を実現する。ここで、本例にいう蓋周縁部とは、蓋フランジ15を主体として、この蓋フランジ15に設ける切欠縁20及びチャックフランジ17を一体に含む部位である。
【0010】
突条19は、缶体3内面に連続した直角三角形断面で、前記シール部材11に対して内側に突出し、排出口フランジ12と一体に形成している。この突条19に対して、蓋フランジ15には転写形状断面(直角三角形断面)の切欠縁20を形成し、突条19の存在により蓋2が締まらなくなる問題を回避している。この切欠縁は、突条が蓋の開閉を阻害しない構造であったり、蓋フランジ内周縁が突条を超える内径を有していれば、必要ない。
【0011】
例示した蒸煮装置では、原料は缶体3を直立状態にして投入することができるが、蒸煮原料の排出に際しては、通常缶体3を回転により傾倒させる。このとき、図4に見られるように、単独又は原料と共に排液4が流れ出そうとするが、缶体3内面に連続して設けた突条19により液切りされ、排液4は排出口周縁部1上面、特にシール部材11を越えて排出されることになる。本例の突条19は先端が鋭角(<90度)であり、突条のない従来の排出口周縁部1の先端が直角(=90度)であったことに比べ、液切れが良好である。また、缶体3内面に連続して突条19を形成することで、いわゆる排液4の流れ出し方向を規制して、より遠くへ排液4を排出し、雫はシール部材11を越えた位置から垂れるようにすることができる。
【0012】
このように、本発明における突条は、排液により排出口周縁部が汚れることを防止し、特に排出口周縁部に設けたシール部材を保護することを目的とするから、この目的に反しない範囲で、突条の配置や断面形状を決定できる。上記例示では、図5に見られるように、排出口周縁部1の全周にわたって突条19を形成し、通常の排出方向(図5中矢印参照)のみならず、逆向きに缶体3を傾倒させて排液を流し出す場合でも、突条19による液切れを可能にしている。しかし、例えば缶体3の傾倒方向を限定し、常に同じ個所からしか排液を流し出さないとすれば、図6に見られるように、排液が流れ出す周方向範囲のみ部分的に形成する突条21でもよい。
【0013】
突条の形状も、上記例示のほか様々なものを例示できる。例えば、図7に見られるように、薄板材をまるめた環体を缶体3内面から連続するように排出口フランジ12内面に固着して、排出口フランジ12上面から突出する部位を突条23とすることができる。本発明の突条は、排出口周縁部の缶体内面に連続する位置又はこの位置近傍に設けることから、缶体3内面から見た外面の形状は問わない。例えば、外周面が湾曲した断面の環体を排出口フランジ12内面に固着して突出する部位を突条24としてもよい(図8)。また、厚板材をまるめた環体を缶体3内面から離れた排出口フランジ12上面に固着して突出する部位を突条25としたり(図9)、更には外方へ緩やかに拡開する環体を排出口フランジ12内面に固着して突出する部位を突条26としてもよい(図10)。缶体3内面に連続して緩やかに拡開する環体を用いた場合、排液を緩やかに案内できる。
【0014】
【実施例】
上記例示の竪型回転式加圧蒸煮装置(図1参照)を用い、丸大豆を蒸煮した場合における突条の作用、効果を確認する試験をした。蒸煮装置の仕様は、缶体が内径1,200mmで、丸大豆を一度に240kg処理できる能力を有している。使用する丸大豆240kgは、前日の夕方より水温18℃の浸漬容器で15時間浸漬し、重量538kgにまで膨潤した。この丸大豆は、十分な水切の後缶体へ投入し、缶体下部のドレインパイプを全開にした状態で、缶体上部の蒸気ノズルから蒸気の吹き込み、処理を開始した。処理開始後、ドレインパイプから白い結露水が出た6分後に蒸気が原料中を吹き抜けはじめ、10分間蒸気を吹き抜けさせた後、ドレインパイプを蒸気が少量漏れる程度に閉めてから、缶体内圧力をゲージ圧で0.054MPaまで加圧して、丸大豆を30分蒸煮した。蒸煮終了後、ドレインパイプを開けて脱圧した際、ドレインパイプより粘性の排液(=アメ及び蒸煮液)が蒸気と共に排出された。そして、脱圧終了後、ドレインパイプを閉じて真空ポンプにより吸引した状態で40分間冷却してから、缶体内を大気圧に戻した。蒸煮丸大豆は、温度32℃で、重量465kgであった。
【0015】
蓋を開けて缶体を傾倒させると、蒸煮丸大豆に続き、缶体内面に残存する排液が排出口へ向けて流れ出ようとしていたが、シール部材の内側に設けた突条先端で液切りされ、そのまま下方へ滴り落ちるのみで、およそシール部材に向けて流れ出すことはなかった。当然、排液の固化に伴うシール部材の密閉性の問題は起きず、上記条件での蒸煮を繰り返しても密閉性に変化は見られなかった。また、使用後のシール部材及び周辺の洗浄も容易であったことから、取扱いの簡便性が改善されたと言える。
【0016】
【発明の効果】
本発明により、蒸煮装置の缶体から原料を排出する際に、単独又は原料と共に流れ出す排液が排出口周縁部を汚さなくなり、特にこの排出口周縁部にシール部材を設けた場合は、シール部材やシール部材を取り付ける構造細部(上記嵌合溝等)に流れ込むことを防止できるようになる。この結果、排出口周縁部が汚れて間接的に蓋周縁部に設けたシール部材を汚したり、直接的に排出口周縁部に設けたシール部材に排液が付着することがなくなり、閉蓋時のシール部材による密閉性を永続的に確保できるほか、処理後の清掃等が容易かつ確実にできる効果が得られる。構造的には簡易であり、新製の蒸煮装置のみならず、既製の蒸煮装置に対しても安価かつ容易に適用できる。このように、本発明は高い費用対効果を有し、とりわけ装置が大型化しがちな醸造産業等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した竪型回転式加圧蒸煮装置(竪型NK缶)の側面図である。
【図2】排出口周縁部を表した図1中A矢視部分拡大断面図である。
【図3】蓋を開いた状態を表した図2相当断面図である。
【図4】缶体を傾倒させて排液を流し出す状態を表した図2相当断面図である。
【図5】排出口周縁部全周にわたって形成した突条を表す缶体上部の部分斜視図である。
【図6】排出口周縁部へ部分的に形成した突条を表す缶体上部の部分斜視図である。
【図7】別例の突条を表す缶体の部分拡大断面図である。
【図8】別例の突条を表す缶体の部分拡大断面図である。
【図9】別例の突条を表す缶体の部分拡大断面図である。
【図10】別例の突条を表す缶体の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
1 排出口周縁部
3 缶体
4 排液
5 排出口
11 シール部材
12 排出口フランジ
13 嵌合溝
19 突条
Claims (1)
- 排出口を上部に設け、前記排出口周縁部に蓋を密着させて閉蓋する缶体を回転軸で傾倒自在に軸支してなり、前記缶体内の蒸煮原料を回転により傾倒させた缶体の排出口から排出する回転式蒸煮装置において、蓋周縁部に密着するシール部材を排出口周縁部に設け、該シール部材より内周側で前記排出口周縁部の缶体内面に連続する位置又は該位置近傍に突条を設けたことを特徴とする穀類の回転式蒸煮装置。
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