JP4000764B2 - 真空アーク蒸発装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば自動車部品、機械部品、工具、金型、レンズ、ガラス、半導体基板等の基体の表面に薄膜を形成することに用いられる真空アーク蒸発装置に関し、より具体的には、真空アーク蒸発源で生成したプラズマを磁場によって湾曲させて輸送して、当該プラズマから粗大粒子を除去して導出する磁気フィルタを備える真空アーク蒸発装置において、磁気フィルタの磁場強度を高めてプラズマの輸送効率を高める場合に、真空アーク蒸発源におけるアーク放電の維持が困難になることを防止する手段に関する。
【0002】
【従来の技術】
真空アーク放電によって陰極を蒸発させて陰極物質を含むプラズマを生成する真空アーク蒸発源を用いて、この真空アーク蒸発源で発生させたプラズマ中のイオン(この明細書では正イオンを意味する)を負バイアス電圧等によって基体に引き込んで基体の表面に薄膜を形成する手法は、真空アーク蒸着法またはアーク式イオンプレーティング法と呼ばれており、成膜速度が大きい、膜の密着性が高い等の特長を有している。
【0003】
成膜速度が大きいのは、真空アーク放電を利用して陰極から陰極物質を大量に蒸発させることができるからである。膜の密着性が高いのは、上記プラズマ中のイオンを、負バイアス電圧等による電界によって基体に引き込んで衝突させることができるからである。
【0004】
しかし、真空アーク蒸発源の陰極から蒸発させる陰極物質には、成膜に好ましい微小粒子の他に、例えば直径が数μm〜数十μm程度という粗大粒子(これはドロップレットまたはマクロパーティクルとも呼ばれる)が含まれており、この粗大粒子が基体に飛来して付着してしまい、これが原因で膜表面の平滑性や基体に対する膜の密着性が低下するという問題がある。
【0005】
この粗大粒子の問題を解決する一手段として、図11に示すように、上記のような真空アーク蒸発源20と、それで生成したプラズマ38を磁場によって湾曲させて輸送して粗大粒子を除去して導出する磁気フィルタ50とを組み合わせた真空アーク蒸発装置10aが提案されている。
【0006】
真空アーク蒸発源20は、この例では、陰極ホルダ24に取り付けられた陰極30と、この陰極30の蒸発面32よりも前方(この明細書では陰極物質34の蒸発方向を言う)に配置された円筒状または円環状の陽極36とを有していて、両者30、36間の真空アーク放電によって陰極30を蒸発させて陰極物質(即ち、陰極30を構成する物質。以下同じ)34を含むプラズマ38を生成するものである。
【0007】
陰極30は、成膜しようとする膜の種類に応じた所望の材料(例えばチタン等の金属、TiAl 等の合金、炭素(グラファイト)等)から成る。陽極36は、通常は銅から成る。陰極ホルダ24は、非磁性の金属から成る。
【0008】
この例では陽極36は電気的に接地されており、この陽極36と陰極30との間には、アーク電源44から、陰極30を負極側にして、例えば数十V〜100V程度のアーク放電電圧が印加される。40はトリガ電極、42は絶縁物である。
【0009】
陰極ホルダ24は、この例では、絶縁物26を介して、磁気フィルタ50を構成する輸送管52の一端の蓋をする支持板28に取り付けられている。この陰極ホルダ24の背面部には、磁界によって、アークスポット(アーク放電の陰極点)を陰極30の蒸発面32内に拘束する磁石(例えば永久磁石)22が設けられている。
【0010】
磁気フィルタ50は、この例では、湾曲した輸送管52と、この輸送管52に沿って湾曲した磁場を形成する磁気コイル54と、この磁気コイル54を励磁する直流電源56とを備えている。磁気コイル54は、図示例のような複数のトロイダルコイルでも良いし、輸送管52の外周部に沿って巻かれたソレノイドコイルでも良い。この磁気コイル54が発生する磁力線58の一部を図11中に概略的に示すが、輸送管52の内面にほぼ沿っている。この磁力線58の、陰極300および陽極36付近の様子は図12に示す。
【0011】
輸送管52を湾曲させる角度αは、真空アーク蒸発源20の陰極30の蒸発面32から、成膜室60内の基体64が直線的に見通せない程度にするのが好ましい。より具体的には、例えば90度程度にするのが好ましい。
【0012】
なお、磁気コイル54の近くの部材、例えば輸送管52、支持板28および成膜室60等は、磁気コイル54が作る磁力線58(磁場)を乱さないために、非磁性体で構成している。
【0013】
上記のような真空アーク蒸発源20および磁気フィルタ50を備える真空アーク蒸発装置10aを、この例では、成膜しようとする基体64を保持するホルダ62を収納した成膜室60に、輸送管52の他端(真空アーク蒸発源20とは反対側の端)が基体64に向くように接続しており、これによって膜形成装置を構成している。このような膜形成装置は、真空アーク蒸着装置またはアーク式イオンプレーティング装置とも呼ばれる。輸送管52内は、成膜室60と共に、図示しない真空排気装置によって真空排気される。
【0014】
真空アーク蒸発源20によって生成されたプラズマ38は、磁気フィルタ50中をその磁場に沿って輸送されて磁気フィルタ50の他端部から導出され、成膜室60内の基体64の近傍に導かれる。その際、プラズマ38中に含まれている粗大粒子は、電荷を持たないものは磁場の影響を受けずに直進して輸送管52の内壁に衝突するので、磁気フィルタ50からは導出されず、基体64に到達しない。また、電荷を持つ場合でも、磁場中での螺旋運動の半径(ラーマー半径)が質量に比例して極端に大きくなるため、輸送管52の内壁や当該内壁に突設したフィン(図示省略)等に衝突して消滅(付着)する。その結果、磁気フィルタ50からは、粗大粒子を殆ど含まないプラズマ38が導出され、それが基体64の近傍に導かれる。従って、粗大粒子が基体64に付着することを防止することができる。
【0015】
このとき、基体64に負バイアス電圧を印加する等して、基体64の電位をプラズマ38の電位よりも低く設定しておくことによって、当該電位差によって、前述したようにプラズマ38中のイオンを基体64に引き込んで衝突させることができる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
上記真空アーク蒸発装置10aにおいては、磁気フィルタ50の磁気コイル54が発生する磁場強度(磁束密度)を高くする方が、磁気フィルタ50によるプラズマ38の輸送効率が向上するので、磁気フィルタ50から導出されるプラズマ38の量が多くなり、ひいては基体64に対する成膜速度が向上する。
【0017】
ところが、上記磁場強度を高くすると、それに伴って真空アーク蒸発源20の陰極30および陽極36付近の磁場強度も高くなり、アーク放電によって陰極30から放出された電子37が、図12に示すように、磁気コイル54が発生する磁力線58に強く捕捉されて陽極36の内側の空間を素通りしてしまい、陽極36に到達しにくくなる。磁気コイル54による磁場強度を高くするほど、当該磁気コイル54が発生する多くの磁力線58は陽極36の内側空間を通り抜けるようになるので、電子37は陽極36に入射せずに素通りしやすくなる。このように陰極30から放出された電子37が陽極36に到達しにくくなると、陰極30と陽極36との間のアーク放電の維持が困難になる。即ち、両者30、36間で初期放電が生じにくくなると共に、その後の放電維持も困難になる。
【0018】
このように、従来の真空アーク蒸発装置10aでは、磁気フィルタ50の磁場強度を高めてプラズマ38の輸送効率を高めようとすると、真空アーク蒸発源20でのアーク放電の維持が困難になり、プラズマ38の輸送効率向上と真空アーク蒸発源20でのアーク放電維持とを両立させることが困難であるという課題がある。
【0019】
特に、陰極30が炭素または炭素を主成分とする材料から成る場合には、磁気フィルタ50の磁場強度を高めたときのアーク放電維持は一層困難になる。これは、炭素またはそれを主成分とする材料は元々アーク放電が難しいことに加えて、陰極30からの電子37が上述のように陽極36に到達しにくくなってアーク放電を更に困難にするからである。
【0020】
なお、陰極30が、アーク放電維持の難しい炭素またはそれを主成分とする材料から成る場合は、あるいはその他の材料の場合でも、輸送管52内に例えば不活性ガスや反応性ガス等のガスを導入して陰極30付近のガス圧を敢えて高くすることによって、アーク放電維持を容易にするという方法が考えられるけれども、そのようにすると別の問題が生じる。即ち、アーク放電で生じたガスイオンがプラズマ38中に多量に含まれるようになり、それが成膜に悪影響を及ぼすようになる。例えば、当該ガスイオンが基体64に多量に入射して、基体64の表面に形成される薄膜の膜質が変化したり、膜中の内部応力が増大したり、基体64が不必要に加熱されたりする。
【0021】
そこでこの発明は、真空アーク蒸発源と磁気フィルタとを組み合わせた真空アーク蒸発装置において、磁気フィルタの磁場強度を高めてプラズマの輸送効率を高める場合にでも、ガス導入を行わなくても真空アーク蒸発源においてアーク放電の維持を可能にすることを主たる目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る真空アーク蒸発装置の一つは、前記真空アーク蒸発源の陽極を前記輸送管内に当該輸送管とは別に設けており、かつ前記輸送管内に、前記真空アーク蒸発源の陰極の蒸発面よりも前方であってしかも前記陽極に近接させて、磁性部材を設けたことを特徴としている。
【0023】
このような磁性部材を設けることによって、磁気フィルタが作る磁力線(換言すれば磁束。以下同じ)の内で、真空アーク蒸発源の陰極から陽極付近の磁力線の状態を、アーク放電の維持に都合の良い状態に制御することができる。具体的には、上記のような磁性部材を輸送管内にしかも陽極に近接させて設けることによって、磁気フィルタが作る磁力線の一部が当該磁性部材に引き寄せられるようになるので、陰極から陽極またはその近傍にかけての領域を通る磁力線が増加する。この作用は、磁気フィルタの磁場強度を高めたときにも得られる。
【0024】
上記のような磁力線はアーク放電の維持に有効に作用するものであり、これが増加することによって、アーク放電によって陰極から放出された電子の内で、陽極またはその近傍を通る上記磁力線に捕捉されて陽極に到達するものが増加する。これによって、真空アーク蒸発源における初期放電およびその後の放電維持が容易になり、アーク放電が安定する。
【0025】
その結果、磁気フィルタの磁場強度を高めてプラズマの輸送効率を高める場合にでも、ガス導入を行わなくても真空アーク蒸発源においてアーク放電の維持が可能になるので、プラズマの輸送効率向上とアーク放電維持とを、ガス導入を行わなくても両立させることができる。
【0026】
前記磁性部材の電位は、真空アーク蒸発源の陽極と同電位でも良いし、浮遊電位でも良いし、陽極の電位と陰極の電位との間の中間電位でも良い。
【0027】
前記磁性部材は、それと陰極の蒸発面との間に陽極が位置するように配置するのが好ましい。そのようにすれば、磁性部材が陰極の蒸発面と陽極との間を遮らないので、陰極から放出されて上記磁力線に捕捉された電子が陽極に到達しやすくなる。磁性部材の電位が上記浮遊電位または中間電位の場合は特に、上記のように配置するのが好ましい。
【0028】
前記磁性部材を、真空アーク蒸発源の陽極に取り付けて、当該陽極と同電位にしても良い。
【0029】
真空アーク蒸発源の陽極を磁性体で構成して、当該陽極が前記磁性部材を兼ねるようにしても良い。
【0030】
その他にも様々な実施の形態が採り得るので、それを以下に詳述する。
【0031】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明に係る真空アーク蒸発装置を備える膜形成装置の一例を示す断面図である。図2は、図1中の陰極、陽極および磁性部材を拡大して示す正面図である。図11に示した従来例と同一または相当する部分には同一符号を付し、以下においては当該従来例との相違点を主に説明する。
【0032】
この例の真空アーク蒸発装置10cにおいては、真空アーク蒸発源20の前述したような円筒状または円環状の陽極36の外周部に、円筒状または円環状の磁性部材46を取り付け、当該磁性部材46を陽極36と同電位(具体的にはこの例では接地電位)にしている。
【0033】
陽極36は、前述したように陰極30の蒸発面32よりも前方に配置されているので、その外周部に取り付けた磁性部材46も、蒸発面32よりも前方に位置していることになる。また、磁性部材46を陽極36の外周部に取り付けることによって、当該磁性部材46と陰極30の蒸発面32との間に陽極36が位置するようになる。
【0034】
磁性部材46は、例えば鉄、ニッケル、コバルト、それらを含む合金、フェライト等の強磁性体から成る。より具体的には、磁性部材46として、構造用炭素鋼(例えばSS400)、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼(いずれも磁性ステンレス鋼)、NiFe 、CoPt 等を用いることがで
きる。
【0035】
このような磁性部材46を設けることによって、前述した磁気フィルタ50(より具体的にはその磁気コイル54)が作る磁力線58の内で、真空アーク蒸発源20の陰極30から陽極36付近の磁力線58の状態を、陰極30と陽極36間のアーク放電の維持に都合の良い状態に制御することができる。
【0036】
具体的には、上記のような磁性部材46を陽極36の外周部に取り付けることによって、図3に示す例のように、磁気フィルタ50の磁気コイル54が作る磁力線58の一部が当該磁性部材46に引き寄せられるようになるので、真空アーク蒸発源20の陽極36またはその近傍に向かう磁力線58が、より具体的には真空アーク蒸発源20の陰極30から陽極36またはその近傍を通る磁力線58が増加する。この作用は、磁気フィルタ50の磁場強度を高めたときにも得られる。
【0037】
上記のような磁力線58は、真空アーク蒸発源20におけるアーク放電の維持に有効に作用するものであり、これが増加することによって、アーク放電によって陰極30から放出された電子の内で、陽極36またはその近傍を通る上記磁力線58に捕捉されて陽極36に到達するものが増加する。図3中に、そのような陽極36に到達する電子37を模式的に示す。これによって、真空アーク蒸発源20における初期アーク放電およびその後のアーク放電維持が容易になり、アーク放電が安定する。磁気フィルタ50の磁場強度を高めたときもそうである。
【0038】
その結果、磁気フィルタ50の磁場強度を高めてプラズマ38の輸送効率を高める場合にでも、輸送管52内に不活性ガス等の放電維持用のガス導入を行わなくても、真空アーク蒸発源20においてアーク放電の安定化および維持が可能になるので、磁気フィルタ50におけるプラズマ38の輸送効率向上と、真空アーク蒸発源20におけるアーク放電維持とを、ガス導入を行わなくても両立させることができる。
【0039】
その結果、磁気フィルタ50において粗大粒子を除去しつつ、プラズマ38を高効率で輸送して基体64上に高速で成膜することができるようになると共に、ガス導入に伴う成膜への前述したような悪影響を無くすることができる。しかもこれらを、上記のような磁性部材46を設けるという非常に簡単な構成によって実現することができるので、装置が大がかりにならずに済む。
【0040】
陰極30が炭素から成る、あるいは炭素を主成分とする材料から成る場合は、前述したように従来はアーク放電維持が一層難しいという問題があったけれども、この発明によれば陰極30がそのような炭素系材料の場合にも、ガス導入を行わなくても、強磁場でのアーク放電の維持が可能になるので、効果は一層顕著になる。
【0041】
磁性部材46の電位は、陽極36と同電位でも良いし、浮遊電位でも良いし、陽極36の電位と陰極30の電位との間の中間電位でも良い。磁性部材46は、その電位ではなく、それに磁力線58を引き寄せることによって陽極36に磁力線58を向かわせる作用が重要だからである。他の実施例においても同様である。
【0042】
磁性部材46の電位を陽極36と同電位にするには、図1の例のように磁性部材46を陽極36に取り付けるのが簡単であるが、両者を別に配置して電気的に接続しても良い。磁性部材46を陽極36と同電位にすると、両者間の電気絶縁を行わなくても良いので、絶縁が楽になる。
【0043】
図5は、磁性部材46の電位を浮遊電位にする場合の例である。浮遊電位にする場合は、磁性部材46を陽極36の外周近傍に陽極36から離して配置すれば良い。または、磁性部材46と陽極36との間に絶縁物を介在させても良い。磁性部材46を浮遊電位にすると、磁性部材46にイオン等の荷電粒子が入射しにくくなるので、当該荷電粒子入射による磁性部材46の加熱が少なくて済み、磁性部材46の冷却が楽になる。
【0044】
磁性部材46は、上記例のように陽極36よりも外側(陽極36の半径方向の外側)、または陽極36よりも下流側(陰極物質34の進行方向側)に配置するのが好ましい。換言すれば、磁性部材46は、それと陰極30の蒸発面32との間に陽極36が位置するように配置するのが好ましい。そのようにすれば、磁性部材46が陰極30の蒸発面32と陽極36との間を遮らないので、陰極30から放出されて前述したような磁力線58に捕捉された電子37(図3参照)が陽極36に到達しやすくなる。磁性部材46の電位が上記浮遊電位または中間電位の場合は特に、上記のように配置するのが好ましい。もっとも、磁性部材46が陽極36と同電位の場合は、磁性部材46を電気的には陽極の一部であると見ることができるので、磁性部材46を敢えて上記のように配置しなくても良い。
【0045】
なお、真空アーク蒸発源20には、従来から図4に示す例のように、陰極30の外周に、磁性材料から成る環状のアークスポット拘束板48を設ける場合がある。このアークスポット拘束板48は、より具体的には、陰極30の蒸発面32とほぼ同じ平面上に、当該蒸発面32の周囲を取り囲むように配置されている。このアークスポット拘束板48は、磁性体なので、磁石22から出る磁束を整えて、アークスポットの動きを陰極30の蒸発面32に限定する作用をする。
【0046】
このようなアークスポット拘束板48と上記磁性部材46とを併用しても良い。他の例においても同様である。但し、アークスポット拘束板48と磁性部材46とは、上記のように設けている場所も作用効果も全く別であり、両者は別のものであるので、磁性部材46を設けずにアークスポット拘束板48を設けても、磁性部材46が奏する前述したような作用効果をアークスポット拘束板48が奏することはできない。即ち、アークスポット拘束板48は、上記磁性部材46と違って、陰極30の蒸発面32よりも前方であってしかも陽極36の近傍には設けられていないので、このようなアークスポット拘束板48では、陽極36に向かう磁力線58を増やして強磁場時のアーク放電の維持を可能にする、という作用効果を奏することはできない。
【0047】
陰極30の蒸発面32と、陽極36および磁性部材46との間の距離L1 およびL2 (図5参照)は、あまり小さいとアーク放電の広がりが小さくなり、あまり大きいとアーク放電の維持が困難になるので、例えば30mm〜120mm程度にするのが好ましく、その内でも50mm〜80mm程度にするのがより好ましい。
【0048】
この発明の他の実施の形態を説明すると、陽極36と別に上記のような磁性部材46を設ける代わりに、図6に示す例のように、真空アーク蒸発源20の陽極36を磁性体(より具体的には前述したような強磁性体。以下同じ)で構成して、当該陽極36が前記磁性部材を兼ねるようにしても良い。
【0049】
そのようにすれば、陽極36自身が、磁気コイル54が作る磁力線58を陽極36に引き寄せる作用をするので、陽極36に向かう磁力線58を増やして強磁場時のアーク放電の維持が可能になる。従って、上記例の場合と同様に、磁気フィルタ50の磁場強度を高めてプラズマ38の輸送効率を高める場合にでも、輸送管52内にガス導入を行わなくても真空アーク蒸発源20においてアーク放電の維持が可能になる。
【0050】
陽極36とは別に磁性部材46を設けると、それぞれの目的に都合の良い材質を選択することができる等の利点がある。例えば、陽極36には導電率および熱伝導率の高い銅を用い、磁性部材46には安価で透磁率の高い構造用炭素鋼等を用いることができる。陽極36を強磁性体で構成して磁性部材を兼ねさせると、部品点数が減り構成をより簡素化することができる等の利点がある。後述する他の例においても同様である。
【0051】
上記磁性部材46は、荷電粒子の流入や陰極表面からの輻射熱等によって温度が上昇するので、当該磁性部材46に、それを冷却水等の冷媒によって冷却する冷却機構を設けるのが好ましい。そのようにすることによって、磁性部材46の過大な温度上昇による変形、損傷等を防止することができる。例えば、磁性部材46の外周部に、冷却水が流される冷却パイプを沿わせておけば良い。後述する他の例においても同様である。
【0052】
図6に示した例のように、陽極36を磁性体で構成してそれが磁性部材を兼ねる場合は、当該陽極36に上記のような冷却機構を設けるのが好ましい。そのようにすることによって、陽極36の過大な温度上昇による変形、損傷等を防止することができる。後述する他の例においても同様である。
【0053】
真空アーク蒸発源20は、複数の陰極30を有していても良い。その場合は、例えば、複数個の陰極30に対して共通の前述したような陽極36および磁性部材46を設けても良い。図7は、陰極30が2個の場合の例を示す。陽極36および磁性部材46の平面形状は、図示例のように長円形でも良いし、楕円形等でも良い。陽極36を磁性体で構成して磁性部材を兼ねさせる場合も同様である。
【0054】
上記例はいずれも、真空アーク蒸発源20の陽極36は陰極30の前方を取り囲む形状をしており、この陽極36の外周部または外周近傍に、陰極30の前方を取り囲む形状の磁性部材46を配置したものである。あるいは、そのような形状の陽極36を磁性体で構成して磁性部材を兼ねさせたものである。陰極30の前方を取り囲む形状の例として、平面形状が円形、長円形、楕円形、四角形等をした筒状、環状(板に穴をあけたものも含む)等が挙げられる。
【0055】
陽極36をこのような形状にするのは、陰極30の蒸発面32からの陰極物質34の蒸発およびプラズマ38の導出に際して陽極36が陰に(邪魔に)なりにくく好ましいからである。陽極36がこのような形状の場合は特に、磁気フィルタ50の磁場強度を高くすると、図12に示したように、磁気コイル54が発生する磁力線58は陽極36の内側空間を通り抜けるようになり、それに伴って陰極30から放出された電子37が陽極36に入射せずに素通りしやすくなるので、上記のような磁性部材46を設けたり、あるいは陽極36を磁性体で構成して磁性部材を兼ねさせたりすることによる前記効果は顕著になる。
【0056】
もっとも、真空アーク蒸発源20の陽極36は、例えば図8に示す例のように、陰極30の蒸発面32の正面を避けて当該蒸発面32に沿って(例えば平行に)配置された複数本(図示例では2本)の棒状をしていても良い。このような場合も、陽極36が陰極30の前方を取り囲む上記例の場合と同様に、磁気フィルタ50の磁場強度を高くすると、陰極30から放出された電子が陽極36に入射せずに素通りしやすくなる。
【0057】
このような場合も、陰極30の蒸発面32よりも前方であってしかも各陽極36の近傍に磁性部材46をそれぞれ設ければ良い。例えば図8に示す例のように、磁性部材46を、それと陰極30の蒸発面32との間に陽極36が位置するように、各陽極36の近傍にそれぞれ配置すれば良い。あるいは、磁性部材46を設ける代わりに、各陽極36を磁性体(強磁性体)で構成して磁性部材を兼ねさせても良い。
【0058】
この例の場合も、磁性部材46が、あるいは磁性体で構成した陽極36自身が、磁気フィルタ50の磁気コイル54が作る磁力線58を陽極36またはその近傍に引き寄せる作用をするので、陽極36に向かう磁力線58を増やして強磁場時のアーク放電の維持が可能になる。従って、上記例の場合と同様に、磁気フィルタ50の磁場強度を高めてプラズマ38の輸送効率を高める場合にでも、輸送管52内にガス導入を行わなくても真空アーク蒸発源20においてアーク放電の維持が可能になる。
【0059】
図9に示す例のように、真空アーク蒸発源20の陽極として、1本以上(図示例では1本)の棒状の陽極36を、陰極30の蒸発面32の正面に当該蒸発面32に沿って(例えば平行に)配置しても良い。この場合は、必ずしも磁性部材46を設けたり、陽極36を磁性体で構成しなくても良い。
【0060】
これは、磁気フィルタ50の磁場強度を高くして図12に示したように磁気コイル54が作る磁力線58が蒸発面32の正面をその垂直方向に通るようになっても、当該磁力線58と交差するように上記陽極36が存在することになるので、当該磁力線58に捕捉された電子37が陽極36に到達しやすくなり、アーク放電の維持が可能になるからである。従って、上記各例の場合と同様に、磁気フィルタ50の磁場強度を高めてプラズマ38の輸送効率を高める場合にでも、輸送管52内にガス導入を行わなくても真空アーク蒸発源20においてアーク放電の維持が可能になる。
【0061】
もっとも、図9の例の場合も、図8の例の場合と同様に、磁性部材46を設けたり、陽極36を磁性体(強磁性体)で構成することを併用しても良い。磁性部材46を設ける場合は、それを、陰極30の蒸発面32よりも前方であってしかも各陽極36の近傍に設ければ良い。例えば図9に示す例のように、磁性部材46を、それと陰極30の蒸発面32との間に陽極36が位置するように、陽極36の近傍に配置すれば良い。
【0062】
上記のようにすれば、より多くの磁力線58が陽極36またはその近傍を通るようになって電子37が陽極36により到達しやすくなるので、強磁場時のアーク放電の維持がより容易になる。
【0063】
また、図10に示す例のように、真空アーク蒸発源20の陽極として、1本以上(図示例では1本)の棒状の陽極36を、その一端面35を陰極30の蒸発面32に向けて、当該蒸発面32の正面に配置しても良い。この場合も、必ずしも磁性部材46を設けたり、陽極36を磁性体で構成しなくても良い。陽極36は、必要に応じて、図10に示すようなものよりも長くしても良い。
【0064】
これは、磁気フィルタ50の磁場強度を高くして図12に示したように磁気コイル54が作る磁力線58が蒸発面32の正面をそのほぼ垂直方向に通るようになっても、図10Bに示すように、当該磁力線58に沿って上記陽極36が存在することになるので、当該磁力線58に捕捉された電子37が陽極36に到達しやすくなり、アーク放電の維持が可能になるからである。従って、上記各例の場合と同様に、磁気フィルタ50の磁場強度を高めてプラズマ38の輸送効率を高める場合にでも、輸送管52内にガス導入を行わなくても真空アーク蒸発源20においてアーク放電の維持が可能になる。
【0065】
しかも、陽極36を上記のように配置すると、蒸発面32から放出された電子37の磁場中でのラーマー半径は小さいので、電子37は陽極36に衝突してアーク放電がうまく維持されるのに対して、プラズマ38中のイオンは、重くてそのラーマー半径は電子37のそれよりも遙かに大きいので(例えば、磁場強度にもよるが、1cm以上にもなる)、陽極36に衝突せずに下流側へ輸送される確率が高くなる。従って、図9の例に比べて、プラズマ38の輸送効率が向上する。
【0066】
もちろん、この図10および上記図9のいずれの場合も、陽極36や磁性部材46がプラズマ38の輸送を妨げる割合を小さくするためには、陽極36や磁性部材46を、安定なアーク放電維持を実現できる範囲で、適当に細くする方が好ましい。
【0067】
この図10の例の場合も、図9の例の場合と同様に、磁性部材46を設けたり、陽極36を磁性体(強磁性体)で構成することを併用しても良い。磁性部材46を設ける場合は、それを、陰極30の蒸発面32よりも前方であってしかも各陽極36の近傍に設ければ良い。より具体的には、図10に示す例のように、磁性部材46を、それと陰極30の蒸発面32との間に陽極36が位置するように、陽極36の下流側の近傍に配置すれば良い。
【0068】
上記のようにすれば、より多くの磁力線58が陽極36またはその近傍を通るようになって電子37が陽極36により到達しやすくなるので、強磁場時のアーク放電の維持がより容易になる。
【0069】
図8〜図10に示した例の場合も、磁性部材46の電位や、磁性部材46を陽極36に取り付けるか否か、磁性部材46や陽極36に冷却機構を設けるか否か、等については、これら以前の例の場合と同様である。また、陰極30が炭素またはそれを主成分とする材料から成る場合に効果が一層顕著になることも同様である。
【0070】
なお、磁気フィルタ50においては、磁気コイル54の代わりに、複数の永久磁石を用いて、輸送管52に沿って湾曲した磁場を形成しても良い。その場合は直流電源56は不要である。
【0071】
また、磁気フィルタ50の輸送管52は、電気的に接地しても良いし、接地せずにバイアス電圧を印加するようにしても良い。
【0072】
【実施例】
(実施例1)
図1に示したように磁性部材46を陽極36の外周部に固定した構造の真空アーク蒸発装置10cを備える膜形成装置を用いて成膜試験を行った。そのときの試験条件は以下に示すとおりであり、試験結果を表1に示す。
【0073】
SS400は、構造用炭素鋼の一種である。磁気コイル54の電流は、4個のコイルで同電流とした。また、表中の成膜速度比は、図13に示すように、磁気フィルタを有しないタイプの真空アーク蒸発装置10bを用いたときの成膜速度との比である。比較に用いた距離Dは、磁気フィルタを用いない場合は図13に示すように陰極30の蒸発面32から基体64までの距離とし、磁気フィルタ50を用いた場合は図1等に示すように磁気フィルタ50の出口端から基体64までの距離とし、共に350mmとした。これらは、他の実施例および比較例においても同様である。
【0074】
陰極30:炭素材(直径60mm×長さ30mmの円柱形)
アーク電流:80A
磁気コイル54の電流:表中に示す
成膜室真空度:1×10-3Pa
陽極36:銅材(直径80mm×長さ50mm×厚さ2mmの円筒形)、水冷式
磁性部材46:SS400材(直径84mm×長さ5mm×厚さ2mmの円環状)、陽極電位
輸送管52へのガス導入:行わず
【0075】
【表1】
Figure 0004000764
【0076】
この表1の結果から分かるように、磁気コイル54の電流を10Aから150Aまで大きくして磁気フィルタ50における磁場強度を高めても、全ての磁気コイル電流で真空アーク蒸発源20においてアーク放電維持が可能であった。しかもコイル電流150Aのときに、磁気フィルタ50を用いない場合の1/2という高い成膜速度が得られた。これは、強磁場によって、磁気フィルタ50におけるプラズマ38の輸送効率が高まったからである。
【0077】
(比較例)
比較のために、図11に示した従来の真空アーク蒸発装置10aを備える膜形成装置を用いて成膜試験を行った。この真空アーク蒸発装置10aは磁性部材を有しておらず、それ以外は上記実施例1と同じ試験条件にした。その試験結果を表2に示す。
【0078】
【表2】
Figure 0004000764
【0079】
この表2の結果から分かるように、磁気コイル54の電流が10Aを超えると、真空アーク蒸発源20においてアーク放電を維持することができなくなった。従ってこの比較例で得られる成膜速度比は最大で1/8であり、上記実施例1で得られた最大の成膜速度比(1/2)の1/4(25%)しか得ることができなかった。
【0080】
(実施例2)
図5に示したように磁性部材46を陽極36の外周近傍に配置した構造の真空アーク蒸発装置10cを備える膜形成装置を用いて成膜試験を行った。この実施例2では、磁性部材46は、SS400から成り直径85mm×長さ5mm×厚さ2mmの円環状をしており、陽極36とは電気的には絶縁して当該磁性部材46を浮遊電位にした。それ以外は上記実施例1と同じ試験条件にした。その試験結果を表3に示す。
【0081】
【表3】
Figure 0004000764
【0082】
この表3の結果から分かるように、上記実施例1と同様の結果が得られた。
【0083】
(実施例3)
図6に示したように陽極36を磁性体で構成して当該陽極36が磁性部材を兼ねている真空アーク蒸発装置10cを備える膜形成装置を用いて成膜試験を行った。この実施例3では、陽極36はSS400から成り直径85mm×長さ5mm×厚さ2mmの円環状をしており、水冷式とした。それ以外は上記実施例1と同じ試験条件にした。その結果を表4に示す。
【0084】
【表4】
Figure 0004000764
【0085】
この表4の結果から分かるように、上記実施例1とほぼ同じ結果が得られた。即ち、磁気コイル54の電流を10Aから150Aまで大きくして磁気フィルタ50における磁場強度を高めても、全ての磁気コイル電流で真空アーク蒸発源20においてアーク放電維持が可能であった。しかもコイル電流150Aのときに、磁気フィルタ50を用いない場合の1/3という高い成膜速度が得られた。
【0086】
【発明の効果】
この発明は、上記のとおり構成されているので、次のような効果を奏する。
【0087】
請求項1記載の発明によれば、上記のような磁性部材を輸送管内にしかも陽極に近接させて設けることによって、磁気フィルタが作る磁力線の一部が当該磁性部材に引き寄せられるようになるので、真空アーク蒸発源の陰極から陽極またはその近傍にかけての領域を通る磁力線が増加する。その結果、アーク放電によって陰極から放出された電子の内で、陽極またはその近傍を通る上記磁力線に捕捉されて陽極に到達するものが増加し、それによって、真空アーク蒸発源における初期放電およびその後の放電維持が容易になり、アーク放電が安定する。
【0088】
その結果、磁気フィルタの磁場強度を高めてプラズマの輸送効率を高める場合にでも、ガス導入を行わなくても真空アーク蒸発源においてアーク放電の維持が可能になり、プラズマの輸送効率向上とアーク放電維持とを、ガス導入を行わなくても両立させることができる。
【0089】
その結果、磁気フィルタにおいて粗大粒子を除去しつつ、プラズマを高効率で輸送して基体上に高速で成膜することができるようになると共に、ガス導入に伴う成膜への前述したような悪影響を無くすることができる。しかもこれらを、上記のような磁性部材を設けるという非常に簡単な構成によって実現することができるので、装置が大がかりにならずに済む。
【0090】
請求項2記載の発明によれば、磁性部材が陰極の蒸発面と陽極との間を遮らなくなるので、陰極から放出されて上記磁力線に捕捉された電子が陽極に到達しやすくなり、アーク放電の安定維持により都合が良くなる、という更なる効果を奏する。
【0091】
請求項3記載の発明によれば、陽極自身が、磁気フィルタが作る磁力線を陽極に引き寄せる作用をするので、陽極に向かう磁力線を増やして強磁場時のアーク放電の維持が可能になる。従って、請求項1記載の発明の上記効果と同様の効果を奏することができる。しかも、部品点数が減り、構成をより簡素化することができる。
【0092】
陽極が請求項4記載の発明のような場合、磁性部材がなければ、磁気フィルタが発生する多くの磁力線は陽極の内側空間を通り抜けるようになり、それに伴って陰極から放出された電子が陽極に入射せずに素通りしやすくなるのに対して、上記のような磁性部材を設けることによって、磁力線を陽極またはその近傍に引き寄せることができるので、請求項1記載の発明が奏する上記効果と同様の効果をより顕著に奏することができる。
【0093】
請求項5記載の発明によれば、陽極自身が、磁気フィルタが作る磁力線を陽極に引き寄せる作用をするので、陽極に向かう磁力線を増やして強磁場時のアーク放電の維持が可能になる。従って、請求項4記載の発明の上記効果と同様の効果を奏することができる。しかも、部品点数が減り、構成をより簡素化することができる。
【0094】
陽極が請求項6記載の発明のような場合も、磁性部材がなければ、陽極が陰極の前方を取り囲む場合と同様に、磁気フィルタの磁場強度を高くすると、陰極から放出された電子が陽極に入射せずに素通りしやすくなるのに対して、上記のような磁性部材を設けることによって、磁気フィルタが作る磁力線を陽極またはその近傍に引き寄せる作用をするので、陽極に向かう磁力線を増やして強磁場時のアーク放電の維持が可能になる。従って、請求項1記載の発明が奏する上記効果と同様の効果をより顕著に奏することができる。
【0095】
請求項7記載の発明によれば、陽極自身が、磁気フィルタが作る磁力線を陽極に引き寄せる作用をするので、陽極に向かう磁力線を増やして強磁場時のアーク放電の維持が可能になる。従って、請求項6記載の発明の上記効果と同様の効果を奏することができる。しかも、部品点数が減り、構成をより簡素化することができる。
【0096】
請求項8記載の発明によれば、磁気フィルタの磁場強度を高くしてそれが作る磁力線が陰極の蒸発面の正面をそのほぼ垂直方向に通るようになっても、当該磁力線と交差するように陽極が存在することになるので、当該磁力線に捕捉された電子が陽極に到達しやすくなり、アーク放電の維持が可能になる。従って、上記他の発明の場合と同様に、磁気フィルタの磁場強度を高めてプラズマの輸送効率を高める場合にでも、ガス導入を行わなくても真空アーク蒸発源においてアーク放電の維持が可能になる。
【0097】
請求項9または10に記載の発明によれば、より多くの磁力線が陽極またはその近傍を通るようになって電子が陽極により到達しやすくなるので、強磁場時のアーク放電の維持がより容易になる。
【0098】
請求項11記載の発明によれば、磁気フィルタの磁場強度を高くしてそれが作る磁力線が陰極の蒸発面の正面をそのほぼ垂直方向に通るようになっても、当該磁力線に沿って陽極が存在することになるので、当該磁力線に捕捉された電子が陽極に到達しやすくなり、アーク放電の維持が可能になる。従って、上記他の発明の場合と同様に、磁気フィルタの磁場強度を高めてプラズマの輸送効率を高める場合にでも、ガス導入を行わなくても真空アーク蒸発源においてアーク放電の維持が可能になる。
【0099】
しかも、陽極を上記のように配置すると、磁場中での電子とイオンのラーマー半径の違いから(前者が小、後者が大)、電子は陽極に衝突してアーク放電がうまく維持されるのに対して、プラズマ中のイオンは陽極に衝突せずに下流側へ輸送される確率が高くなるので、請求項8記載の発明に比べてプラズマの輸送効率が向上する。
【0100】
請求項12または13に記載の発明によれば、より多くの磁力線が陽極またはその近傍を通るようになって電子が陽極により到達しやすくなるので、強磁場時のアーク放電の維持がより容易になる。
【0101】
請求項14記載の発明によれば、陽極と磁性部材間の電気絶縁を行わなくても良いので絶縁が楽になる、という更なる効果を奏する。
【0102】
請求項15記載の発明によれば、磁性部材にイオン等の荷電粒子が入射しにくくなるので、当該荷電粒子入射による磁性部材の加熱が少なくて済み磁性部材の冷却が楽になる、という更なる効果を奏する。
【0103】
請求項16記載の発明によれば、陽極が磁性部材の支持体を兼ねることができるので、磁性部材の支持が簡単になる、という更なる効果を奏する。
【0104】
請求項17記載の発明によれば、磁性部材の過大な温度上昇による変形、損傷等を防止することができる、という更なる効果を奏する。
【0105】
請求項18記載の発明によれば、陽極の過大な温度上昇による変形、損傷等を防止することができる、という更なる効果を奏する。
請求項19記載の発明によれば、上記のような磁性部材を陽極近傍に設けることによって、磁気フィルタが作る磁力線の一部が当該磁性部材に引き寄せられるようになるので、真空アーク蒸発源の陰極から陽極またはその近傍にかけての領域を通る磁力線が増加する。その結果、アーク放電によって陰極から放出された電子の内で、陽極またはその近傍を通る上記磁力線に捕捉されて陽極に到達するものが増加し、それによって、真空アーク蒸発源における初期放電およびその後の放電維持が容易になり、アーク放電が安定する。
その結果、磁気フィルタの磁場強度を高めてプラズマの輸送効率を高める場合にでも、ガス導入を行わなくても真空アーク蒸発源においてアーク放電の維持が可能になり、プラズマの輸送効率向上とアーク放電維持とを、ガス導入を行わなくても両立させることができる。
その結果、磁気フィルタにおいて粗大粒子を除去しつつ、プラズマを高効率で輸送して基体上に高速で成膜することができるようになると共に、ガス導入に伴う成膜への前述したような悪影響を無くすることができる。しかもこれらを、上記のような磁性部材を設けるという非常に簡単な構成によって実現することができるので、装置が大がかりにならずに済む。
しかも、請求項19記載の発明によれば、陽極と磁性部材間の電気絶縁を行わなくても良いので絶縁が楽になる、という更なる効果を奏する。請求項20記載の発明によれば、磁性部材にイオン等の荷電粒子が入射しにくくなるので、当該荷電粒子入射による磁性部材の加熱が少なくて済み磁性部材の冷却が楽になる、という更なる効果を奏する。請求項21記載の発明によれば、陽極が磁性部材の支持体を兼ねることができるので、磁性部材の支持が簡単になる、という更なる効果を奏する。請求項22記載の発明によれば、磁性部材の過大な温度上昇による変形、損傷等を防止することができる、という更なる効果を奏する。
陽極が請求項23記載の発明のような場合、磁性部材がなければ、磁気フィルタが発生する多くの磁力線は陽極の内側空間を通り抜けるようになり、それに伴って陰極から放出された電子が陽極に入射せずに素通りしやすくなるのに対して、上記のような磁性部材を設けることによって、磁力線を陽極またはその近傍に引き寄せることができるので、請求項19記載の発明が奏する上記効果と同様の効果をより顕著に奏することができる。
しかも、請求項23記載の発明によれば、陽極と磁性部材間の電気絶縁を行わなくても良いので絶縁が楽になる、という更なる効果を奏する。請求項24記載の発明によれば、磁性部材にイオン等の荷電粒子が入射しにくくなるので、当該荷電粒子入射による磁性部材の加熱が少なくて済み磁性部材の冷却が楽になる、という更なる効果を奏する。請求項25記載の発明によれば、陽極が磁性部材の支持体を兼ねることができるので、磁性部材の支持が簡単になる、という更なる効果を奏する。請求項26記載の発明によれば、磁性部材の過大な温度上昇による変形、損傷等を防止することができる、という更なる効果を奏する。
【0106】
請求項27記載の発明のように、陰極が炭素から成る、あるいは炭素を主成分とする材料から成る場合は、従来はアーク放電維持が一層難しいという問題があったけれども、この発明によれば陰極がそのような炭素系材料の場合にも、ガス導入を行わなくても、強磁場時のアーク放電の維持が可能になるので、効果は一層顕著になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る真空アーク蒸発装置を備える膜形成装置の一例を示す断面図である。
【図2】図1中の陰極、陽極および磁性部材を拡大して示す正面図である。
【図3】図1中の真空アーク蒸発装置の陰極および陽極付近の磁力線の概略を示す図である。
【図4】この発明に係る真空アーク蒸発装置の他の例を部分的に示す断面図である。
【図5】磁性部材の配置の他の例を示す図である。
【図6】この発明に係る真空アーク蒸発装置の更に他の例を部分的に示す断面図である。
【図7】真空アーク蒸発源が陰極を二つ有する場合の陰極、陽極および磁性部材の一例を拡大して示す正面図である。
【図8】真空アーク蒸発源の陽極および磁性部材の他の例を示すものであり、Aは正面図、Bは側面図である。
【図9】真空アーク蒸発源の陽極および磁性部材の他の例を示すものであり、Aは正面図、Bは側面図である。
【図10】真空アーク蒸発源の陽極および磁性部材の他の例を示すものであり、Aは正面図、Bは側面図である。
【図11】従来の真空アーク蒸発装置を備える膜形成装置の一例を示す断面図である。
【図12】図11中の真空アーク蒸発装置の陰極および陽極付近の磁力線の概略を示す図である。
【図13】磁気フィルタを有しない従来の真空アーク蒸発装置を備える膜形成装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
10c 真空アーク蒸発装置
20 真空アーク蒸発源
30 陰極
32 蒸発面
36 陽極
38 プラズマ
46 磁性部材
50 磁気フィルタ
52 輸送管
54 磁気コイル
58 磁力線

Claims (27)

  1. 陰極およびその蒸発面よりも前方に配置された陽極を有していて両者間の真空アーク放電によって陰極を蒸発させて陰極物質を含むプラズマを生成する真空アーク蒸発源と、この真空アーク蒸発源によって生成したプラズマを輸送管内で磁場によって湾曲させて輸送して粗大粒子を除去して導出する磁気フィルタとを備える真空アーク蒸発装置において、前記真空アーク蒸発源の陽極を前記輸送管内に当該輸送管とは別に設けており、かつ前記輸送管内に、前記真空アーク蒸発源の陰極の蒸発面よりも前方であってしかも前記陽極に近接させて、磁性部材を設けたことを特徴とする真空アーク蒸発装置。
  2. 前記磁性部材を、それと陰極の蒸発面との間に前記陽極が位置するように配置している請求項1記載の真空アーク蒸発装置。
  3. 陰極およびその蒸発面よりも前方に配置された陽極を有していて両者間の真空アーク放電によって陰極を蒸発させて陰極物質を含むプラズマを生成する真空アーク蒸発源と、この真空アーク蒸発源によって生成したプラズマを磁場によって湾曲させて輸送して粗大粒子を除去して導出する磁気フィルタとを備える真空アーク蒸発装置において、前記真空アーク蒸発源の陽極を磁性体で構成したことを特徴とする真空アーク蒸発装置。
  4. 陰極およびその蒸発面よりも前方に配置された陽極を有していて両者間の真空アーク放電によって陰極を蒸発させて陰極物質を含むプラズマを生成する真空アーク蒸発源と、この真空アーク蒸発源によって生成したプラズマを輸送管内で磁場によって湾曲させて輸送して粗大粒子を除去して導出する磁気フィルタとを備える真空アーク蒸発装置において、前記真空アーク蒸発源の陽極を前記輸送管内に当該輸送管とは別に設けており、当該陽極は前記真空アーク蒸発源の陰極の前方を取り囲む形状をしており、かつ前記輸送管内であって前記陽極の外周部に近接させて、陰極の前方を取り囲む形状の磁性部材を配置したことを特徴とする真空アーク蒸発装置。
  5. 陰極およびその蒸発面よりも前方に配置された陽極を有していて両者間の真空アーク放電によって陰極を蒸発させて陰極物質を含むプラズマを生成する真空アーク蒸発源と、この真空アーク蒸発源によって生成したプラズマを磁場によって湾曲させて輸送して粗大粒子を除去して導出する磁気フィルタとを備える真空アーク蒸発装置において、前記真空アーク蒸発源の陽極は陰極の前方を取り囲む形状をしており、この陽極を磁性体で構成したことを特徴とする真空アーク蒸発装置。
  6. 陰極およびその蒸発面よりも前方に配置された陽極を有していて両者間の真空アーク放電によって陰極を蒸発させて陰極物質を含むプラズマを生成する真空アーク蒸発源と、この真空アーク蒸発源によって生成したプラズマを磁場によって湾曲させて輸送して粗大粒子を除去して導出する磁気フィルタとを備える真空アーク蒸発装置において、前記真空アーク蒸発源の陽極は、陰極の蒸発面の正面を避けて当該蒸発面に沿って配置された複数本の棒状をしており、かつ磁性部材を、それと陰極の蒸発面との間に前記陽極が位置するように、前記各陽極の近傍にそれぞれ配置していることを特徴とする真空アーク蒸発装置。
  7. 陰極およびその蒸発面よりも前方に配置された陽極を有していて両者間の真空アーク放電によって陰極を蒸発させて陰極物質を含むプラズマを生成する真空アーク蒸発源と、この真空アーク蒸発源によって生成したプラズマを磁場によって湾曲させて輸送して粗大粒子を除去して導出する磁気フィルタとを備える真空アーク蒸発装置において、前記真空アーク蒸発源の陽極は、陰極の蒸発面の正面を避けて当該蒸発面に沿って配置された複数本の棒状をしており、この各陽極を磁性体で構成したことを特徴とする真空アーク蒸発装置。
  8. 陰極およびその蒸発面よりも前方に配置された陽極を有していて両者間の真空アーク放電によって陰極を蒸発させて陰極物質を含むプラズマを生成する真空アーク蒸発源と、この真空アーク蒸発源によって生成したプラズマを磁場によって湾曲させて輸送して粗大粒子を除去して導出する磁気フィルタとを備える真空アーク蒸発装置において、前記真空アーク蒸発源の陽極として、1本以上の棒状の陽極を、陰極の蒸発面の正面に当該蒸発面に沿って配置したことを特徴とする真空アーク蒸発装置。
  9. 磁性部材を、それと前記陰極の蒸発面との間に前記陽極が位置するように、前記各陽極の近傍にそれぞれ配置している請求項8記載の真空アーク蒸発装置。
  10. 前記各陽極を磁性体で構成している請求項8記載の真空アーク蒸発装置。
  11. 陰極およびその蒸発面よりも前方に配置された陽極を有していて両者間の真空アーク放電によって陰極を蒸発させて陰極物質を含むプラズマを生成する真空アーク蒸発源と、この真空アーク蒸発源によって生成したプラズマを磁場によって湾曲させて輸送して粗大粒子を除去して導出する磁気フィルタとを備える真空アーク蒸発装置において、前記真空アーク蒸発源の陽極として、1本以上の棒状の陽極を、その一端面を陰極の蒸発面に向けて当該蒸発面の正面に配置したことを特徴とする真空アーク蒸発装置。
  12. 磁性部材を、それと前記陰極の蒸発面との間に前記陽極が位置するように、前記各陽極の近傍にそれぞれ配置している請求項11記載の真空アーク蒸発装置。
  13. 前記各陽極を磁性体で構成している請求項11記載の真空アーク蒸発装置。
  14. 前記磁性部材の電位が前記陽極と同電位である請求項6、9または12記載の真空アーク蒸発装置。
  15. 前記磁性部材の電位が浮遊電位である請求項6、9または12記載の真空アーク蒸発装置。
  16. 前記真空アーク蒸発源の陽極に前記磁性部材を取り付け、当該磁性部材を陽極と同電位にしている請求項6、9または12記載の真空アーク蒸発装置。
  17. 前記磁性部材に、それを冷媒によって冷却する冷却機構を設けている請求項9または12記載の真空アーク蒸発装置。
  18. 前記陽極に、それを冷媒によって冷却する冷却機構を設けている請求項3、5、7、10または13記載の真空アーク蒸発装置。
  19. 陰極およびその蒸発面よりも前方に配置された陽極を有していて両者間の真空アーク放電によって陰極を蒸発させて陰極物質を含むプラズマを生成する真空アーク蒸発源と、この真空アーク蒸発源によって生成したプラズマを磁場によって湾曲させて輸送して粗大粒子を除去して導出する磁気フィルタとを備える真空アーク蒸発装置において、前記真空アーク蒸発源の陰極の蒸発面よりも前方であってしかも陽極の近傍に磁性部材を設けており、かつ当該磁性部材の電位が前記陽極と同電位であることを特徴とする真空アーク蒸発装置。
  20. 陰極およびその蒸発面よりも前方に配置された陽極を有していて両者間の真空アーク放電によって陰極を蒸発させて陰極物質を含むプラズマを生成する真空アーク蒸発源と、この真空アーク蒸発源によって生成したプラズマを磁場によって湾曲させて輸送して粗大粒子を除去して導出する磁気フィルタとを備える真空アーク蒸発装置において、前記真空アーク蒸発源の陰極の蒸発面よりも前方であってしかも陽極の近傍に磁性部材を設けており、かつ当該磁性部材の電位が浮遊電位であることを特徴とする真空アーク蒸発装置。
  21. 陰極およびその蒸発面よりも前方に配置された陽極を有していて両者間の真空アーク放電によって陰極を蒸発させて陰極物質を含むプラズマを生成する真空アーク蒸発源と、この真空アーク蒸発源によって生成したプラズマを磁場によって湾曲させて輸送して粗大粒子を除去して導出する磁気フィルタとを備える真空アーク蒸発装置において、前記真空アーク蒸発源の陽極に磁性部材を取り付け、当該磁性部材を陽極と同電位にしていることを特徴とする真空アーク蒸発装置。
  22. 陰極およびその蒸発面よりも前方に配置された陽極を有していて両者間の真空アーク放電によって陰極を蒸発させて陰極物質を含むプラズマを生成する真空アーク蒸発源と、この真空アーク蒸発源によって生成したプラズマを磁場によって湾曲させて輸送して粗大粒子を除去して導出する磁気フィルタとを備える真空アーク蒸発装置において、前記真空アーク蒸発源の陰極の蒸発面よりも前方であってしかも陽極の近傍に磁性 部材を設けており、かつ当該磁性部材に、それを冷媒によって冷却する冷却機構を設けていることを特徴とする真空アーク蒸発装置。
  23. 陰極およびその蒸発面よりも前方に配置された陽極を有していて両者間の真空アーク放電によって陰極を蒸発させて陰極物質を含むプラズマを生成する真空アーク蒸発源と、この真空アーク蒸発源によって生成したプラズマを磁場によって湾曲させて輸送して粗大粒子を除去して導出する磁気フィルタとを備える真空アーク蒸発装置において、前記真空アーク蒸発源の陽極は陰極の前方を取り囲む形状をしており、この陽極の外周部または外周近傍に、陰極の前方を取り囲む形状の磁性部材を配置しており、かつ当該磁性部材の電位が前記陽極と同電位であることを特徴とする真空アーク蒸発装置。
  24. 陰極およびその蒸発面よりも前方に配置された陽極を有していて両者間の真空アーク放電によって陰極を蒸発させて陰極物質を含むプラズマを生成する真空アーク蒸発源と、この真空アーク蒸発源によって生成したプラズマを磁場によって湾曲させて輸送して粗大粒子を除去して導出する磁気フィルタとを備える真空アーク蒸発装置において、前記真空アーク蒸発源の陽極は陰極の前方を取り囲む形状をしており、この陽極の外周部または外周近傍に、陰極の前方を取り囲む形状の磁性部材を配置しており、かつ当該磁性部材の電位が浮遊電位であることを特徴とする真空アーク蒸発装置。
  25. 陰極およびその蒸発面よりも前方に配置された陽極を有していて両者間の真空アーク放電によって陰極を蒸発させて陰極物質を含むプラズマを生成する真空アーク蒸発源と、この真空アーク蒸発源によって生成したプラズマを磁場によって湾曲させて輸送して粗大粒子を除去して導出する磁気フィルタとを備える真空アーク蒸発装置において、前記真空アーク蒸発源の陽極は陰極の前方を取り囲む形状をしており、この陽極の外周部に、陰極の前方を取り囲む形状の磁性部材を取り付け、当該磁性部材を陽極と同電位にしていることを特徴とする真空アーク蒸発装置。
  26. 陰極およびその蒸発面よりも前方に配置された陽極を有していて両者間の真空アーク放電によって陰極を蒸発させて陰極物質を含むプラズマを生成する真空アーク蒸発源と、この真空アーク蒸発源によって生成したプラズマを磁場によって湾曲させて輸送して粗大粒子を除去して導出する磁気フィルタとを備える真空アーク蒸発装置において、前記真空アーク蒸発源の陽極は陰極の前方を取り囲む形状をしており、この陽極の外周部または外周近傍に、陰極の前方を取り囲む形状の磁性部材を配置しており、かつ当該磁性部材に、それを冷媒によって冷却する冷却機構を設けていることを特徴とする真空アーク蒸発装置。
  27. 前記陰極は、炭素または炭素を主成分とする材料から成る請求項1ないし26のいずれかに記載の真空アーク蒸発装置。
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