JP4000708B2 - 酵素固定化電極を用いる物質の測定方法 - Google Patents

酵素固定化電極を用いる物質の測定方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、試料中の物質の量を酵素固定化電極を用いて測定する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
試料中の物質の量を測定する方法としては、測定対象物質を基質とする酵素を用いて、分光学的に測定する方法、光電子倍増管を使用する方法、電極を用いて電気化学的に測定する方法、放射性同位元素を使用する方法等が分析分野において使用されている。なかでも、分光学的測定法は、測定手技、方法の容易さから広く用いられているが、測定に際し、設備や装置のある場所でしか測定できない問題がある。同様の問題は光電子倍増管を使用する方法、放射性同位元素を用いる方法にもあてはまる。
【0003】
これらに対し電極を用いる電気化学的測定方法は、機器が極めてコンパクトで持ち運びが可能であるため、測定する場所を選ばない特徴を有する。近年、このような電気化学的測定方法に使用される電極の一種として、酵素センサーまたは酵素電極とよばれる酵素固定化電極が開発されており、糖尿病患者の家庭における血糖コントロール等に利用されるようになってきている。ところが現状の酵素固定化電極は、試料中に含まれる還元物質による干渉を受ける、あるいは酵素の失活により繰り返し使用することができない、電極が安定するまでに長時間を要する等の問題がある。
【0004】
現在、小型簡易センサーに応用されている方法は、過酸化水素の酸化電流を測定する方法である。この方法は、電極が正電位の時、H2 2 →2H+ +O2 +2eの反応が生じ、電子が電極に取り込まれることを利用しており、例えば白金電極を用いて、500〜700mVで過酸化水素より生じる酸化電流を測定するものである。しかし、電極電位が高くなると多くの物質の酸化電流が出現するので、基底電流が大きくなり測定には好ましくない。これらの影響は、分画分子量の小さい透析膜で被覆しても完全に阻止することはできない。
【0005】
他の方法として、過酸化水素の還元電流を測定する方法も考えられる。これは、電極が負電位の場合、H2 2 +2H+ +2e→2H2 Oの反応が生じ電子が電極より放出される反応を利用するものである。しかし、通常の白金や炭素電極では、過酸化水素の還元電流は、酸素の還元電流が出現する電位よりわずかに正の電位で出現するので、その測定には溶存酸素の除去が必要である。従って、溶存酸素を必要とする酸化酵素を作用させながら過酸化水素の還元電流を測定することは測定範囲、測定感度の低下をもたらす。
【0006】
分光光学的測定方法において、広く利用されている過酸化水素を検出する手段としては、パーオキシダーゼ、4−アミノアンチピリン等のカップラー、およびフェノール等の還元性色原体を共存させることによってキノンイミン色素を生成させ、その生成量を吸光度として測定する方法が挙げられる。この方法によれば、酸化酵素を用いて過酸化水素を生成させる場合、生成した過酸化水素と吸光度との間には良好な相関関係が認められる。しかし、脱水素酵素と電子伝達物質とを用いて生成させた過酸化水素を、酸化酵素を用いて生成させた過酸化水素を測定するのと同様の方法で吸光度測定すると、生成した過酸化水素に比例した測定感度が得られない問題が指摘されている。この原因としては、電子受容体と還元性色素がパーオキシダーゼ存在下、直接電子のやり取りを行うため、過酸化水素が生成されなくなり、十分な発色が得られなくなるためと考えられている。同様の問題は、パーオキシダーゼを固定化した電極を用いてその還元電流を測定する方法にも生じる。
【0007】
この問題を解決する手段として、特許第2045908号には第一段階目の反応で過酸化水素を生成させ、第二段階目の反応で発色反応を行う方法が記載されている。しかしながら、この方法は、過酸化水素の生成が完全に終了した後、発色反応を行う必要があるため、反応時間のコントロールが困難であり、手技の問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上のことから、酵素固定化電極を用いて試料中の物質の量を過酸化水素に変換して電気化学的に測定する方法において、過酸化水素の酸化電流を測定する方法では、溶存酸素、共存物質の影響を受けるので、電流が安定して測定可能になるまで長時間を要し、また測定範囲および測定感度が低下するという問題があり、さらに測定の際の電極電位により電極に固定化された酵素は失活しやすく、電極を繰り返して使用することが困難であるという問題があった。一方、過酸化水素の還元電流を測定する方法においては、測定の際は溶存酸素を除去する必要があり、また、脱水素酵素と電子伝達物質とを用いて試料中の物質より過酸化水素を生成させる場合は、過酸化水素を定量的に生成させることが困難であるため、試料中の物質の量に比例した還元電流が得られないか、または試料中の物質より過酸化水素を生成させながらその還元電流を測定することができない等の問題があった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記問題点を解決するために鋭意検討した結果、試料中の物質より過酸化水素を生成させ、電子メディエーターを含有し、かつ酵素が固定化された電極端子を有する電極であって、該過酸化水素がセルロースアセテート膜またはポリカーボネート膜を透過して該酵素と接触するように該膜が形成されている電極を用いて、該過酸化水素から生じる還元電流を測定する場合、試料中の物質を再現性良く測定でき、かつ様々な物質の測定に応用できること、さらにセルロースアセテート膜またはポリカーボネート膜を用いることによって、通常の透析膜を使用した場合と比較して高感度で測定できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は以下の通りである:
[1]試料中に含まれる物質より過酸化水素を生成させ、該過酸化水素を、電子メディエーターを含有し、かつ酵素が固定化された電極端子を有する電極であって、該過酸化水素がセルロースアセテート膜またはポリカーボネート膜を透過して該酵素と接触するように該膜が形成されている電極を用いて測定することを特徴とする物質の測定方法。
[2]上記セルロースアセテート膜またはポリカーボネート膜が、荷電処理を施されている[1]記載の物質の測定方法。
[3]上記試料中に含まれる物質より過酸化水素を生成させる方法が、試料中に含まれる物質に、脱水素酵素、該酵素の補酵素および電子伝達物質を作用させるか、または試料中に含まれる脱水素酵素に、該酵素の基質および補酵素、および電子伝達物質を作用させる方法である[1]または[2]記載の物質の測定方法。
[4]上記脱水素酵素が、ニコチンアミドアデニンジヌクレオシド、ニコチンアミドアデニンジヌクレオシドリン酸およびピロロキノリンキノンからなる群より選ばれる補酵素の存在下で作用する酵素、またはトリプトファントリプトフィルキノン酵素である[3]記載の物質の測定方法。
[5]上記電子伝達物質が、フェナジンメトサルフェート、1−メトキシ−5−フェナジンメトサルフェート、メルドラブルーおよびチオニンからなる群より選ばれる物質である[3]記載の物質の測定方法。
[6]上記酵素がパーオキシダーゼである[1]または[2]記載の物質の測定方法。
[7]上記電子メディエーターが、メタロセン類またはビピリジン錯体である[1]または[2]記載の物質の測定方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の物質の測定方法に使用される電極は、電子メディエーターを含有し、かつ酵素が固定化された電極端子を有する電極であって、試料中の物質より生成した過酸化水素がセルロースアセテート膜またはポリカーボネート膜を透過して該酵素と接触するように該膜が形成されている電極である。「該過酸化水素がセルロースアセテート膜またはポリカーボネート膜を透過して該酵素と接触するように該膜が形成されている」とは、試料中に含まれる物質より生成した過酸化水素が、セルロースアセテート膜またはポリカーボネート膜を透過して、過酸化水素の測定に関与する電極端子の固定化された酵素と接触して測定が行われるように該膜が形成されていることを意味する。過酸化水素がセルロースアセテート膜またはポリカーボネート膜を透過して電極端子に固定化された酵素と接触するように該膜が形成されていることによって、測定に悪影響を及ぼす試料中の共存物質が酵素に接触する機会が低減されるので、その影響を抑えることができる。また、セルロースアセテート膜またはポリカーボネート膜は、過酸化水素の膜透過速度が通常の透析膜より速いので、通常の透析膜を用いた場合に比較して高感度で測定することができる。また、上記電極は、過酸化水素がセルロースアセテート膜またはポリカーボネート膜を透過して電極端子に固定化された酵素と接触するように該膜が形成されている限り、どのような形態のものでもよいが、例えば、電極全体がセルロースアセテート膜またはポリカーボネート膜で覆われたもの、電極の試料と接触する部分がセルロースアセテート膜またはポリカーボネート膜で被覆されたもの、電極端子の酵素が固定化された部分がセルロースアセテート膜またはポリカーボネート膜で被覆されたもの等が挙げられる。好適には電極端子の酵素が固定化された部分がセルロースアセテート膜またはポリカーボネート膜で被覆されたものが挙げられる。
【0012】
上記電極に使用されるセルロースアセテート膜またはポリカーボネート膜の種類としては、特に限定されないが、好ましくは荷電処理を施されているものが挙げられる。荷電処理を施されることによって上記膜にイオン性が付与される。上記膜の荷電処理の方法としては、好ましくはナフィオン(登録商標)を膜に蒸着させる方法であるナフィオン(登録商標)修飾が挙げられる。ナフィオン(登録商標)修飾の方法は、特に限定されないが、例えば、ナフィオン(登録商標)のエタノール溶液(1%(w/v))に上記膜を常温、常圧下において、少なくとも1時間以上浸漬し、次いで溶媒を常温にて除去することにより行うことができる。また、ナフィオン(登録商標)修飾の程度は、特に限定されないが、ナフィオン(登録商標)修飾された膜の厚さが5〜6μm程度であることが好ましい。
【0013】
上記膜の分画分子量としては、特に限定されないが、好適には500以下であり、またその下限も特に限定されないが100が好ましい。
【0014】
上記電極の電極端子としては、カーボンペースト電極端子、パーフルオロカーボン(PFC)電極端子等が挙げられ、好ましくはカーボンペースト電極端子が挙げられる。
【0015】
上記電極端子は、酵素が固定化されたものであれば、その形状、酵素の固定化方法等は特に限定されない。また、電極端子に固定化される酵素は、過酸化水素を還元する作用を有する酵素であり、例えばパーオキシダーゼ等が挙げられる。また、それらの種類、由来(供給源)等は特に限定されないが、例えば植物(例えば西洋ワサビ、ピーナッツ等)、ならびにこれらの遺伝子を大腸菌その他の微生物に組み込ませた遺伝子組み換え法により製造されたものおよび遺伝子的に性質を改変したもの等から由来するものが挙げられる。
【0016】
上記電極端子は、構成成分として電子メディエーターを含む。「電子メディエーター」とは、電子を受け渡す反応に関与するが、その物質自体は変化しない物質であって、測定感度を高めるために電極端子に含有される物質である。上記電極端子に使用される電子メディエーターとしては、上記のような物質である限り特に限定されないが、例えばメタロセン類(例えばフェロセンまたはフェロセン類似体等)、およびオスミウム、ルテニウム、コバルト、ニッケル等の金属とビピリジンとから形成されるビピリジン錯体(例えばコバルト(III)ビピリジン錯体およびニッケル(II)ビピリジン錯体等)等が挙げられる。好適には、フェロセンまたはフェロセン類似体(例えばモノカルボキシレートフェロセン、ヒドロキシフェロセン、ジメチルアミノメチルフェロセン、1,1’−ジカルボキシレートフェロセン等)が挙げられ、特に好適にはヒドロキシフェロセンが挙げられる。また、この電子メディエーターは、上記電極端子に全構成成分の0.5〜10重量%、好適には1〜5重量%含有される。
【0017】
本発明の方法に使用される電極は、電極端子に固定化した酵素の作用により過酸化水素を還元し、その際に生じる還元電流を測定するものである。この電極は、従来の酸化電流を測定する電極より低電位(例えば−200mV〜200mV、好適には−50mV〜150mV)で測定を行うため、共存物質の影響をほとんど受けずに測定でき、また基底電流が一定となる時間も短いので、短時間で測定可能となる。さらに、この電極は繰り返して使用することができる。
【0018】
以下、図面を参照して上記電極の具体例の一つを説明する。
【0019】
図1は電極の試料側の末端付近の模式図である。図1において、電極中の電極端子10の試料側の末端には酵素11が固定化され、さらに試料中の物質より生成した過酸化水素がセルロースアセテート膜12を透過して該酵素11と接触するように、電極の試料側の末端全体がセルロースアセテート膜12に覆われる。さらに、該セルロースアセテート膜12を該末端全体に保持するために、該末端全体に該セルロースアセテート膜12を覆うようにナイロンネット13が被せられる。さらに、過酸化水素を含めて試料中の物質が該セルロースアセテート膜12を透過せずに酵素11と接触することを生じさせる電極の外壁15とセルロースアセテート膜12との間の隙間を無くすために、該外壁15と該セルロースアセテート膜12および該ナイロンネット13との接触部分を密着させるようにパラフィルム14が該接触部分全体を覆って巻き付けられる。このように電極が構成されることによって、過酸化水素はセルロースアセテート膜12を透過してのみ酵素11と接触する。
【0020】
本発明の物質の測定方法は、試料中に含まれる物質より過酸化水素を生成させ、該過酸化水素を、上記の電極を用いて測定する方法である。本発明において試料中の物質より過酸化水素を生成させる方法としては、特に限定されず、公知の方法が使用できるが、好適には脱水素酵素(E)、基質(S)、補酵素(N)および電子伝達物質(M)を用いる方法が挙げられる。この方法は、NおよびMの存在下にEとSとを反応させるものであり、EとSとNによる脱水素反応によって還元型Nが生成し、還元型NよりMに非酵素的反応により電子が受け渡され、その結果還元されたMが溶存酸素と反応して過酸化水素が生成するものである。この方法の具体例として、Sとしてグルコース、Eとしてグルコースデヒドロゲナーゼ、NとしてNAD、Mとして1−メトキシ−5−フェナジンメトサルフェートを用いる場合を説明すると、まず、NAD存在下でグルコースにグルコースデヒドロゲナーゼが作用するとグルコースが酸化されてNADHが生成し、次いで生成したNADHより1−メトキシ−5−フェナジンメトサルフェートに非酵素的反応により電子が受け渡され、NADHはNADに酸化され、還元された1−メトキシ−5−フェナジンメトサルフェートと溶存酸素が反応し、H2 2 が発生する。
【0021】
上記方法に用いられる補酵素としては、好ましくはニコチンアミドアデニンジヌクレオシド(NAD)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオシドリン酸(NADP)、ピロロキノリンキノン(PQQ)、トリプトファントリプトフィルキノン(TTQ)等が挙げられる。
【0022】
上記方法に用いられる脱水素酵素としては、好ましくはNAD、NADPまたはPQQの存在下で作用する酵素(例えば、グルコースデヒドロゲナーゼ、グリセロールデヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、3α−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、ソルビトールデヒドロゲナーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ等)、およびTTQ酵素等が挙げられる。
【0023】
上記方法に用いられる基質としては、好ましくはグルコース、グリセロール、ピルビン酸、イソクエン酸、胆汁酸、グルコース−6−リン酸、ソルビトール、Asn−Tyr−Asp、Asn−Tyr−Glu等が挙げられる。
【0024】
上記方法において、好ましくは脱水素反応が生じることが公知である脱水素酵素、基質、補酵素の組み合わせが使用される。このような組み合わせの例としては以下のものが挙げられる:
(1)補酵素をNADまたはNADPとした場合の脱水素酵素と基質との組み合わせ
グルコースデヒドロゲナーゼとグルコース、
グリセロールデヒドロゲナーゼとグリセロール、
乳酸デヒドロゲナーゼとピルビン酸、
イソクエン酸デヒドロゲナーゼとイソクエン酸、
3α−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼと胆汁酸、
グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼとグルコース−6−リン酸等;
(2)補酵素をPQQとした場合の脱水素酵素と基質との組み合わせ
グルコースデヒドロゲナーゼとグルコース、
ソルビトールデヒドロゲナーゼとソルビトール、
ピルビン酸デヒドロゲナーゼとピルビン酸等;
(3)TTQ酵素とその基質との組み合わせ
TTQ酵素とAsn−Tyr−Asp、
TTQ酵素とAsn−Tyr−Glu等。
なおこれらはあくまで例示に過ぎず、反応機構が同様である他の補酵素、脱水素酵素および基質の組合わせにおいても適用できる。
【0025】
上記方法に使用される電子伝達物質としては、還元型の補酵素(NADH、NADPH、PQQH2 等)を(O1 )酸化し、過酸化水素を誘導させる作用を有する物質であれば特に限定されないが、例えば、フェナジンメトサルフェート(PMS)、1−メトキシ−5−フェナジンメトサルフェート、メルドラブルーおよびチオニン等が挙げられ、好適には1−メトキシ−5−フェナジンメトサルフェートが挙げられる。
【0026】
本発明の物質の測定方法が対象とする試料としては、生体由来の成分(例えば、血液、体液、血清、尿等)、環境試料(地下水、河川水、海水)、またはそれらの希釈物等が挙げられるが、これらに限定されない。また、対象物質としては、公知の手段によって過酸化水素を生成させることができる物質である。このような物質としては、代謝物(尿酸、クレアチン等)、脱水素酵素の基質(例えば、グルコース、グリセロール、ピルビン酸、イソクエン酸、胆汁酸、グルコース−6−リン酸、ソルビトール、Asn−Tyr−Asp、Asn−Tyr−Glu等)、脱水素酵素(例えば、グルコースデヒドロゲナーゼ、グリセロールデヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、3α−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、ソルビトールデヒドロゲナーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、TTQ酵素等)等が挙げられる。なおこれらはあくまでも例示にすぎず、他の物質も測定対象物質となり得る。
【0027】
好ましい本発明の物質の測定方法において、測定対象が物質(基質)である場合、試料を脱水素酵素、補酵素、電子伝達物質と20〜37℃にて2〜30min反応させた後、電極を反応溶液に浸漬させ、得られる電流値を測定し、次いで既知濃度の過酸化水素溶液を測定した際の電流値と比較することによって試料中の物質の濃度を測定することができる。また、測定対象物が酵素である場合、試料を該酵素の基質、補酵素、電子伝達物質と20〜37℃にて2〜30min反応させると同時に電極を反応溶液に浸漬させ、経時的に得られる電流値を測定することによって試料中の酵素活性を測定することができる。
【0028】
以下、図面を参照して本発明の物質の測定方法の一例を具体的に説明する。
【0029】
図2は、本発明の方法を使用する測定機器の一例の模式図である。図2において、まず試料26を電極槽22に投入し、次いで試料中の測定対象物質から過酸化水素を生成させるための試薬を電極槽22内の試料26に添加した後、攪拌装置25を作動させることによって反応を開始させる(過酸化水素を生成させる)。次いで、作用電極20を反応液に浸すことによって、生成した過酸化水素から得られる還元電流をポテンシオスタット23を用いて検出し、記録計24にて電流値を測定する。
【0030】
【実施例】
以下、本発明を実施例をもって詳細に説明する。
【0031】
実施例1および2
フェロセン、液体パラフィン、グラファイト粉末を1:5:10の重量比で混合したものをカーボンペースト(CP)電極端子の容器に詰め、試料側の末端の表面を滑らかにした後、該末端に2μlのパーオキシダーゼ溶液(10mg/ml)を載せ、風乾させた後、ナフィオン(登録商標)修飾されたセルロースアセテート膜を被覆して作製した(図1参照)。以下の実験には同様の調製法にて作製した電極を使用した。
【0032】
pH7.0のTris緩衝液に、PMS12μM、NADH3μMとなるようにこれらを添加し、この溶液を電極槽に投入した。次いで、上記のように作製したパーオキシダーゼ−フェロセン電極の試料側の末端にa)ナフィオン(登録商標)修飾されたセルロースアセテート膜(実施例1)またはb)ナフィオン(登録商標)修飾されたポリカーボネート膜(実施例2)をそれぞれ被覆した電極を用いて、60mVにて電流−時間曲線を調べた(図3中A、B)。また、過酸化水素を3μMとなるように上記緩衝液に添加して同様に測定を行った(図3中a、b)。その結果、NADHを用いた場合と、過酸化水素を用いた場合とは同じ電流値が計測された(図3参照)。
【0033】
実施例3 イソクエン酸脱水素酵素の測定
Figure 0004000708
ICDHを1U/l、2U/lまたは10U/lとなるように試薬に添加し、ナフィオン(登録商標)修飾されたセルロースアセテート膜を試料側の末端に有するパーオキシダーゼ−フェロセン電極を用いて、37℃、0.1Vにてそれぞれについて測定を行った。その結果、ICDH濃度に比例した電流値が、酵素反応の進行と共に得られた(図4参照)。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、試料中の物質より過酸化水素を生成させ、該過酸化水素を、電子メディエーターを含有し、かつ酵素が固定化された電極端子を有する電極であって、該過酸化水素がセルロースアセテート膜またはポリカーボネート膜を透過して該酵素と接触するように該膜が形成されている電極を用いて過酸化水素の還元電流を測定することによって、共存物質の影響をほとんど受けることなく、短時間で、かつ通常の透析膜を使用した場合と比較して高感度で試料中の物質を測定することができる。また、本発明の方法において使用される電極は、繰り返して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の方法に使用される電極の構造の一例を示す図である。
【図2】図2は本発明の方法における測定機器全体の一例を示す図である。
【図3】図3は実施例1および2の結果を示す時間−電流グラフである。
【図4】図4は実施例3の結果を示す時間−電流グラフである。
【符号の説明】
10 電極端子
11 酵素
12 セルロースアセテート膜
13 ナイロンネット
14 パラフィルム
15 外壁
20 作用電極
21 照合電極
22 電極槽
23 ポテンシオスタット
24 記録計
25 攪拌装置
26 試料

Claims (6)

  1. 試料中に含まれる物質に、脱水素酵素、該脱水素酵素の補酵素および電子伝達物質を作用させるか、または試料中に含まれる脱水素酵素に、該脱水素酵素の基質および補酵素、および電子伝達物質を作用させることによって過酸化水素を生成させ、生成した過酸化水素を、電子メディエーターを含有し、かつ酵素が固定化された電極端子を有する電極であって、該過酸化水素がセルロースアセテート膜またはポリカーボネート膜を透過して該酵素と接触するように該膜が形成されている電極を用いて測定することを特徴とする物質の測定方法。
  2. 前記セルロースアセテート膜またはポリカーボネート膜が、荷電処理を施されている請求項1記載の物質の測定方法。
  3. 前記脱水素酵素が、ニコチンアミドアデニンジヌクレオシド、ニコチンアミドアデニンジヌクレオシドリン酸およびピロロキノリンキノンからなる群より選ばれる補酵素の存在下で作用する酵素、またはトリプトファントリプトフィルキノン酵素である請求項1または2記載の物質の測定方法。
  4. 前記電子伝達物質が、フェナジンメトサルフェート、1−メトキシ−5−フェナジンメトサルフェート、メルドラブルーおよびチオニンからなる群より選ばれる物質である請求項1〜3いずれかに記載の物質の測定方法。
  5. 前記固定化された酵素がパーオキシダーゼである請求項1〜4いずれかに記載の物質の測定方法。
  6. 前記電子メディエーターが、メタロセン類またはビピリジン錯体である請求項1〜5いずれかに記載の物質の測定方法。
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