JP3999113B2 - 成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ケナフ繊維などの細片状の木質材料をバインダによって結合させて成る成形体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
バインダ樹脂によって結合されているチップ状や繊維状などの木質材料より成る成形体は、例えば、建築物や自動車等の内装材として用いることができる。このような成形体は、例えば、繊維状に加工した木質材料を積層してマット状に形成し、適宜、ニードルパンチングや圧締によって仮成形した後、液状のバインダを付与して、加熱状態でプレス成形することによって製造できる。ここで、マット状の成形材料にバインダを付与する方法には、浸漬、塗布、スプレーなど種々の方法があり、バインダがマットの内部まで浸透するように種々の工夫が成されている。例えば、塗布やスプレーなど所定方向からの供給では、供給方向の反対側から吸引することが提案されている。スプレーと吸引とが組み合わされた液剤の付与方法としては、例えば、耐水性向上のための熱硬化性樹脂を繊維板の一面側からスプレー散布するとともに他方側からエアを吸引する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−323809号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
近年、特に車両においては軽量化が推進されており、強度や剛性などはそのままで軽量な内装材が求められている。木質材料をバインダで結合させた成形体では、木質材料の目付を小さくするとともに、より少ないバインダで木質材料どうしを確実に結合することで、軽量で強度等のある成形体となる。しかし、浸漬による付与方法ではバインダの量が過剰になりがちである。また、スプレーではむらができやすいため、より少量のバインダを添加しようとすると、バインダが不足する部分ができるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明では、より少量の液剤を良好に分散させることが可能な成形体の製造方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明では、細片状材料が集合して成る成形材料に、液剤を貯留する空隙部分を備え、この空隙部分で液剤を保持させた保持部材を隣接させて、保持部材中の液剤を成形材料に向けて気流を吹き流すことにより移動させて成形材料に供給する液剤付与工程と、液剤を付与した成形材料を加熱加圧して成形体を形成する成形体形成工程とを備える、成形体の製造方法を提供する。
この方法では、保持部材に液剤を保持させるため、成形材料の厚みや目付に関係なく、単位面積当たりに付与する液剤の量を決定できる。また、保持部材の各部位が保持する液剤を、保持部材に隣接する成形材料の各面に対して確実に付与できる。したがって、成形材料に好ましくないむらを発生させることを抑制して、成形材料全体に液剤を付与することができる。
また、液剤付与工程で、液剤を成形材料まで移送する気流を供給すると、成形材料の内部まで液剤を良好に移動させることができる。
【0007】
また、液剤付与工程で、成形材料に向けて気流を吹き流すことにより、液剤を分散または溶解可能な成分を成形材料に供給すると、液剤の流動性を向上させて、液剤を成形材料に良好に移動させることができる。
また、保持部材は、繊維交絡部材であると、より多くの液剤を保持できるとともに、気流や圧縮などによって液剤を移動可能に保持でき、液剤を成形材料に良好に移動させることができる。
【0008】
また、本発明では、上記いずれかの製造方法であって、液剤はバインダであり、シート状又はマット状の保持部材を成形材料に積層した状態でバインダを固化させる工程を備えると、保持部材を成形材料のバインダによって結合させて、積層成形体を成形することができる。
【0009】
また、上記各発明によれば、細片状材料が集合された基材と、シート状の繊維交絡部材とが積層一体化されており、繊維交絡部材は、基材の細片状材料を結合するバインダによって基材に一体化されており、かつ当該バインダを基材におけるより高密度で含有している成形体を提供することもできる。
この成形体では、基材の細片状材料どうしを結合させるバインダによって繊維交絡部材が基材に一体化されており、より少ない種類の材料で積層成形体が形成されている。また、繊維交絡部材の剛性や強度がバインダによって補強されており、成形体の強度が向上されている。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1に示す成形体1は、加圧成形によって所定の形状に成形される成形用ボードであり、細片状材料よりなる基材2と、基材2の両側に積層状に一体化された表層材4とを備えている。
基材2は、細片状材料がバインダによって結合されて形成されている。細片状材料は、チップ状、繊維状、薄片状であり、集合状態で結合されて成形体となる大きさの種々の形状の材料を選択することができる。具体的には、互いに引っ掛かりやすい繊維状や薄片状が好ましい。細片状材料は、ガラス等の無機材料、ウレタン、ナイロンなど熱硬化性樹脂材料、熱可塑性エラストマー材料、あるいは、ポリエステル、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂材料や木質材料などから構成でき、これらの1種または2種以上の混合体であっても良い。資源の有効利用の点からは、非石油資源よりなる木質材料が好ましく、木材などの木本類や綿、ケナフ、麻、イネなどの草本類、サトウキビのバガスやパルプ、おが屑など他の用途において廃棄される材料を用いることができる。ケナフ、サイザル麻など1年草がより好ましく、これらのコア(維管束部分)を所定の長さに切断して得られる筒状材料や開繊によって得られる繊維材料が好ましい。図1の基材2は、ケナフの繊維材料を用いている。
【0011】
細片状材料は、バインダによって互いに結合されている。バインダは、細片状材料に接合できる種々の材料であり、例えば、フェノール樹脂やエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂や、ポリエチレンテレフタレート、脂肪族ポリエステルなどのエステル類、また、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンを使用することができる。資源の有効利用の点からは、非石油資源由来の脂肪族ポリエステル、例えば、ポリカプロラクトンやポリアルキレンサクシネート、ポリアルキレンアジペート、ポリ乳酸などのヒドロキシカルボン酸脂肪族ポリエステルが好ましい。ポリ乳酸は、非石油資源に由来するものの入手が容易であり、水系の液剤に調製できるため、より好ましい。
なお、非石油資源としての化学変性デンプン類や、エステル化セルロース類などの、いわゆる生分解性樹脂やこれらを利用して得られる材料をバインダに用いることも好ましい。
【0012】
基材2は、この他、防腐剤、防水剤、着色剤、充填剤など、種々の副資材を含有していても良い。例えば、バインダとしてポリ乳酸を用いてタルク、クレーなどの無機フィラーを含有していると、ポリ乳酸の結晶化を促進でき、耐熱性や剛性を向上させることができ、好ましい。
【0013】
表層材4は、基材2中のバインダと同一の材料によって基材2に一体化されている。表層材4は、液状物(液剤)を保持しやすい材質とされており、例えば、不織布や織布、編布、スポンジなど、液剤を貯留できる空隙部分を多く備えている部材によって形成されていることが好ましい。具体的には、繊維交絡材が好ましく、例えば、水流交絡型の不織布(スパンレース)は嵩高く、液剤をより多く吸収できるため、好ましい。また、一面に植毛が施されている部材や、基材2側に液剤を保持しやすい材料、例えば、ポリオレフィンの発泡材を有し、表面に、フィルムや合皮など、液剤を保持しにくい部材を有する積層材でも良い。
表層材4は、バインダ樹脂が浸入している空隙部分を備えており、基材2よりもバインダ樹脂の密度が大きくなっている。
【0014】
成形体1では、バインダ樹脂によって、表層材4が基材2に確実に一体化されている。また、バインダ樹脂が表層材4により多い密度で存在するため、基材2に対して表層材4がより硬質である。このため、基材2は、表層材4によって保護されている。また、表層材4を基材2の両側に備える成形体1は、ダンボール構造状になっており、曲げ剛性、曲げ強度が向上されている。
【0015】
次に、本発明の一実施形態に係わる成形体の製造方法で、成形体1を製造する方法について、図2〜7を参照して説明する。
まず、上述した細片状材料を所定の形状に集合させて成形材料12(図6,7参照)を形成する。例えば、繊維材料では、エアレイ、カード、フリースなど公知の開繊工程を用いて積層させ、圧締ローラやニードルパンチングなどの絡締によって所定の形状に保持させることができる。また、粉状や薄片状の材料では、型枠などに充填することで、所定の形状に集合した状態に安定化できる。
【0016】
液剤付与工程では、液剤を保持している保持部材を用意する。
まず、液剤20(図2〜5参照)を調製する。液剤20は、成形材料に付与する成分、例えば、バインダや架橋剤、防水剤、着色剤、充填剤、防腐剤などを1種以上含有する。液剤20は、上述の材料が液状の場合はそのままでも良いし、溶液または分散液(懸濁液、乳化液、コロイド溶液など)であっても良い。溶媒または分散媒は、細片状材料や保持部材と馴染みやすい種類を選択することが好ましい。また、水系であると製造環境の悪化を抑制でき、好ましい。例えば、バインダとしてのポリ乳酸を含む液剤20は、ポリ乳酸を塩化メチレンやアセトンに溶解させた溶液や、分散安定化剤としてポリビニルアルコールと、カチオン性高分子化合物またはアニオン性高分子化合物とを含む水分散液とすることができる。
【0017】
保持部材14(図2〜7参照)は、液剤20を保持可能なシート部材であり、液剤20を貯留できる空隙部分を備える部材である。保持部材14は、表層材4として利用できる上述の部材の他、表層材4としては利用されない多孔質材や不織布、例えば、無機繊維材料よりなる不織布などを利用することができる。例えば、ポリプロピレンをはじめとするポリオレフィン、ポリエステル、綿、レーヨンなどの材料の1種以上からなる繊維材料の不織布を、好適に用いることができる。また、多孔質材としては、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートをはじめとするポリエステル、またポリウレタンなどの発泡材を用いることができる。保持部材14は、液剤20を保持しやすい性質(親油性、親水性など)を備えることが好ましい。例えば、液剤20が水系分散液の場合、親水性、吸水性の大きい、綿、レーヨンなどの繊維材料が好ましい。
【0018】
保持部材14への液剤20の供給は、スプレー、含浸、塗布など公知の種々の方法で行うことができる。例えば、図2に示すように、保持部材14に対して等間隔に配置された吹き出し口34から液剤20をスプレーしても良い。均等に液剤20を付与するためには、図3に示すドクターナイフコートや、図4に示すグラビアコート、ロールコートなどの接触式の塗布方法を用いることが好ましい。また、多量の液剤を供給する場合や、保持部材が多孔質材の場合は、図5に示すように、保持部材14を液剤槽36に浸漬させて含浸させることが好ましい。
【0019】
液剤付与工程では、図6に示すように、液剤20を保持した保持部材14を成形材料12に隣接させて、液剤を成形材料12に移動させる。ここで、成形材料に隣接とは、液剤を成形材料に付与できる距離に配置することであり、直に接する場合に限定されず、所定の隙間を空けて配置される場合も含む。保持部材14は、成形材料の少なくとも1面に隣接させれば良いが、液剤をより均一に付与するためには、複数面で隣接させることが好ましい。図6に示すように成形材料12がマット状、シート状などの場合、1組の保持部材14で成形材料12を挟むように配置することが好ましい。
【0020】
液剤の移動は、典型的には、気流による吹き流しによって行う。好ましくは、圧縮による浸出に先だって、気流によって移動させる。液剤の移動は、液剤の粘性が低下する温度で行うことにより、液剤をスムーズに流動させることができ、好ましい。また、成形材料12中の空隙部分には、液剤(バインダ等の成分のみを含む)を溶解または分散可能な成分を供給しておくと、液剤を良好に成形材料まで移動させることができる。気流による液剤の移動では、成形材料12を圧縮しないで、空隙部分を保った状態で液剤を移動させることができ、液剤が貯留および移動可能な部分を確保でき、好ましい。液剤の溶媒または分散媒の蒸気を含む気流を用いることが、より好ましい。
【0021】
図6に示す実施形態では、気流供給手段としての金型30内に、成形材料12と保持部材14とを配置して、液剤を付与する。金型30は、マット状の成形材料12と保持部材14とを合わせた厚みにほぼ等しい幅のキャビティを有しており、キャビティ面にガス噴出用の複数の穴32が等間隔で形成されている。
金型30内に、成形材料12と保持部材14とを隣接させて配置した後、金型30の穴32から水蒸気を含むガスを噴出させることにより、保持部材14から成形材料12に向かう気流を形成することができる。この気流により、保持部材14に保持されている液剤は成形材料12側に移動する。気流は水蒸気を含んでいるため、液剤は気流中により安定に存在でき、良好に移動する。
【0022】
さらに、金型30の穴32から噴出するガスは100℃付近またはそれ以上の温度であるため、液剤が加熱されて粘性が低下する。これにより、液剤はより速やかに成形材料12まで移動する。また、気流は、繊維材料よりなる成形材料12の内部を通って、厚み方向に抜ける。このため、成形材料12の内部まで液剤を付与できるとともに、気流によって成形材料12の内部の面方向に液剤を良好に分散させることができる。
【0023】
その後、成形材料12を、単独で、または保持部材14と共に、あるいは、他のシート部材と共に、加圧成形して、成形体1を成形する。本実施形態では、図7に示すように、液剤付与工程で積層状に隣接させた一対の保持部材14とともに成形材料12を板状に加圧する。加圧成形は、バインダとして用いるポリ乳酸を軟化または溶融する温度で行うことが好ましい。これにより、成形材料12の細片状材料どうしが結合した、所定の厚みの成形体1を成形できる。
【0024】
加圧成形時に、保持部材14を成形材料12に隣接させておくことにより、成形圧力によって保持部材14内の液剤を成形材料12側に浸出させて移動させることができる。また、気流による液剤付与工程で成形材料12内に配置された液剤は、成形材料中で均一な圧力を受けることにより、より均一な分布となるように移動することが期待される。
【0025】
バインダの固化工程、冷間プレスや、加圧後の冷却時に、保持部材14を成形材料12に隣接させておくことにより、保持部材14をバインダによって成形材料12に一体化できる。これにより、図1に示すような積層された成形体1が得られる。一方、保持部材14をバインダが固化するより前に成形材料12から分離させることにより、細片状材料よりなる成形体(図1の基材2のみ)を成形することができる。
【0026】
本実施形態の製造方法では、保持部材に液剤を保持させてから、成形材料に移動させることによって付与するため、成形材料の形状や空隙部分の量による影響を少なくして、種々の量の液剤を付与できる。また、加圧成形の圧力を用いて保持部材を成形材料に圧接することにより、保持部材から成形材料により確実に液剤を移動させることができる。
特に、気流にバインダなどの液剤が溶解または分散できる成分を含ませることによって、良好に液剤を成形材料まで移動させることができる。また、より少量の液剤を用いて良好に分散状態に配置できる。特に、液剤自体の粘性を低下させるために加熱した状態で、液剤が溶解または分散できる成分を含む気流によって液剤を移動させることにより、より少ない液剤を成形材料中に良好に分散させて付与できる。
また、この製造方法では、保持部材に液剤を保持させて成形材料12に移動させるため、保持部材、すなわち図1に示す成形体1の表層材4におけるバインダ密度を、容易に基材2における密度より高くすることができる。したがって、基材2により良好にバインダが分散されており、表層材4におけるバインダ密度が基材2よりも高い成形体を簡単に製造することができる。
【0027】
図1に示す成形体1は、成形用ボードであり、バインダ樹脂を軟化(溶融を含む)させて所定の形状に加圧成形できる。このようにして得られる加圧成形体は、表層材4に、より多くのバインダ樹脂が含まれているため、基材2内の密度(比重)が小さくてもより大きな剛性、強度などを備える成形体1となる。このため、基材2内の比重、すなわち細片状材料の量および/またはバインダ樹脂の量が低減されることによって軽量化されていて、かつ剛性や強度などが良好な加圧成形体とすることができる。また、表層材4には、バインダ樹脂によって、または、液剤に含有される他の副資材によって、耐水性、耐熱性、鏡面など、種々の性質が付与されていても良い。また、表層材4となる保持部材14として、予め模様や色などの意匠を備える意匠材を選択しておくことで、意匠用の表皮材を備える積層成形体を得ることができる。
また、成形体1を加熱して、バインダ樹脂を軟化させることにより、表層材4を分離することも可能であり、基材2のみ、または基材2に他のシート部材を積層して、加圧成形して、種々の成形体を得ることもできる。例えば、フィルムや表皮材を積層して加圧成形することで、建築物や車両の内装材を得ることができる。
【0028】
本発明に係る製造方法では、細片状材料の量(目付)や液剤(バインダ)の量を種々に変更して成形体を製造することができる。例えば、目付300〜700g/m2のケナフ繊維材料よりなる基材2と、目付30〜50g/m2のポリエステル製の不織布よりなる保持部材14と、バインダとしてのポリ乳酸を含む水分散体(固形分40%)とを用意して、この水分散体を各保持部材14に50〜250wet・g/m2(固形分量20〜100g/m2)の範囲で添加して、上述した方法によって種々の成形体を得ることができる。本実施形態の方法では、成形体1の全重量に対して10%〜30%のバインダ固形分(液剤の固形分)を用いて、良好に成形体1を成形できる。また、表層材4と基材2との界面部分では、バインダが30〜50%とされていることが好ましい。
【0029】
なお、気流による液剤の移動や加圧成形機による圧縮の後、成形用マットへの成形を行わず、そのまま所定形状の成形体に成形しても良いことは、言うまでもない。
【0030】
【実施例】
ポリ乳酸を水に分散させて、固形分40%の水分散体に調製して液剤とした。次に、ニードルパンチ(水流パンチでも可)によって成形した目付50g/m2のポリエステル製の不織布を保持部材として、ドクターナイフ式で固形分が50g/m2となるように水分散体125wet・g/m2を塗布した。
次に、ケナフから採取した繊維材料をカード、エアレイ、フリースによって開繊して積層し、ニードルパンチによって交絡して得た目付200g/m2のマット状の成形材料の両面に保持部材を配置して、厚みを保持したままスチームを噴出可能な金型内にセットして、保持部材の両面から交互に片面各30秒ずつ約80℃のスチームをかけて、保持部材中の液剤を成形材料に均一に付与した。
その後、保持部材と成形材料とを隣接して配置したまま、220〜230℃に加熱された金型を有する熱プレスにセットして約90秒圧縮し、ポリ乳酸の膜を形成する。
その後、保持部材と成形材料とを冷却プレスして、ポリ乳酸を固化し、脱型することによって板状の予備成形体を得た。
得られた予備成形体を、コンタクトヒータで220〜230℃に加熱し、ポリ乳酸を溶融させた後、コールドプレス(20℃,常温)にセットして所定の立体形状に加圧成形して、成形体を得た。
【0031】
この成形体について、曲げ弾性勾配(荷重撓み曲線の最初の直線部の傾斜)を測定した。ところ、15〜20N/cmであった。
なお、曲げ弾性勾配の測定は、50mm×150mmの長方形状の成形体を、各短辺から、それぞれ25mmの位置で、先端断面形状がR=3.2mmの円弧に形成されている板状部材によって支持し、上側から50mm/minの速度で、先端断面形状がR=3.2mmの円弧に形成されている板状部材を接触させて、荷重撓み曲線を測定し、撓み初めの直線部の傾斜を算出したところ15〜20N/cmであった。
【0032】
また、ケナフ繊維材料よりなる目付280g/m2のマット状の成形材料に、ポリ乳酸の水分散体(固形分40%)300wet・g/m2を、固形分120g/m2となるようにスプレーにより塗布したものについて、同様の温度で予備成形し、さらに予備成形体を同様にして加圧成形して目付400g/m2の成形体を得た。この成形体について、同様に曲げ弾性勾配を測定したところ5N/cmであった。
さらに、ケナフ繊維材料よりなる目付160g/m2のマット状の成形材料に上述と同様のポリ乳酸の水分散液(固形分40%)100wet・g/m2を固形分が40g/m2となるようにスプレーで塗布して、上述と同様に、予備成形および加圧成形をして成形体を得た。次に、ポリエステル製の目付20g/m2の不織布をポリエステルを主成分とする目付80g/m2のホットメルトフィルムによって成形体の両面に溶着して、目付400g/m2の積層成形体を得た。この成形体について、同様に曲げ弾性勾配を測定したところ10〜12N/cmであった。
【0033】
上記3つの成形体は、いずれも全体として目付400g/m2であるが、本発明の製造方法によって成形した成形体が、最も曲げにくいことが明らかとなった。このことから、かかる成形体は、より軽量にしても、曲げに強い成形体であることがわかった。
【0034】
【発明の効果】
本発明では、より少量の液剤を良好に分散させることが可能な成形体の製造方法を提供することにより、より少ない資源を用いて、より軽量化された成形体を製造することができる。
また、本発明では、バインダが良好に分散されている成形体を提供することにより、より少ないバインダを用いた軽量な成形体で、曲げ等の性能等の悪化が抑制されている成形体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態に係わる成形体の斜視図である。
【図2】 保持部材への液剤供給方法の一実施形態の模式図である。
【図3】 保持部材への液剤供給方法の別の実施形態の模式図である。
【図4】 保持部材への液剤供給方法の別の実施形態の模式図である。
【図5】 保持部材への液剤供給方法の別の実施形態の模式図である。
【図6】 液剤付与工程を示す模式図である。
【図7】 加圧成形工程を示す模式図である。
【符号の説明】
1 成形体
2 基材
4 表層材
12 成形材料
14 保持部材
20 液剤
30 金型
32 穴
34 吹き出し口
36 液剤槽
Claims (4)
- 細片状材料が集合して成る成形材料に、液剤を貯留する空隙部分を備え、この空隙部分で液剤を保持させた保持部材を隣接させて、保持部材中の液剤を成形材料に向けて気流を吹き流すことにより移動させて成形材料に供給する液剤付与工程と、
液剤を付与した成形材料を加熱加圧して成形体を形成する成形体形成工程とを備える、成形体の製造方法。 - 液剤付与工程で、成形材料に向けて気流を吹き流すことにより、液剤を分散または溶解可能な成分を成形材料に供給する、請求項1に記載の成形体の製造方法。
- 保持部材は、繊維交絡部材である、請求項1又は2に記載の成形体の製造方法。
- 液剤はバインダであり、シート状又はマット状の保持部材を成形材料に積層した状態でバインダを固化させる工程を備える、請求項1から3のいずれかに記載の成形体の製造方法。
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