インクジェットヘッドにより液滴を吹き付けて印刷媒体(紙)に画像を形成し印刷をする方式として、キャリッジ上に複数のインクジェットノズル(吐出口)を有するインクジェット方式の記録ヘッドを往復動自在に設け、このインクジェットヘッドを印刷媒体の用紙(定型サイズ)の幅方向(主走査方向)に移動走査しながら用紙を直交方向(副走査方向)に少しずつ進めて記録するいわゆるシリアルプリント方式と、インクジェット方式の記録ヘッドに用紙の一ライン部分(一行分)に対応するインクジェットノズルをライン状に配列して設け、ヘッドを静止状態に置いて、紙送り方向に走査しながら記録するラインプリント方式とがある。
このうちラインプリント方式のプリンタは高速印刷が可能であり、例えばオンデマンドインクジェットラインプリンタなどに採用されている。そして、シリアルプリント方式では勿論であるが、インクジェットラインプリンタによるインクジェット記録方法でも、複数回に分けて間引いた画像を少しずつ遅れて記録するマルチパス方式のドット記録方法が既に一般に採用されており、用紙上で濃度のむらやインク滲み等による画質の劣化が生じるのを防止して、画像形成時の画質を向上させるためにさらに種々の提案が行なわれている。
濃度のむらや滲み等による画質の劣化が生じる原因として、インクジェットラインプリンタでは記録素子であるインク吐出口(ノズル)からのインク吐出体積(量)や方向は個々のインク吐出口によりばらつきがあるため記録ドットの大きさ、ドットの位置にばらつきが生じる。このようなドット位置のばらつきは、隣接ドット間の距離の不均一となり、近い箇所では濃度が高く、離れている所では低くなり、時には白すじ等が生じて画質の劣化が生じる。また、ドットの大きさのばらつきは隣接ドット間の濃度の違いとなり、それがすじ模様となって認識され画質の劣化を生じる。
このような画質の劣化を防止するドット記録方法として、特許文献1でその従来例(特開平10−138520号公報)として回転ドラムの2回転又は4回転で必要画素のドット記録(印刷)をする方法について説明している。回転ドラムの2回転で印刷する方法では、回転ドラムに装着した用紙に対し印刷すべき主走査方向(各行)の規定数の画素数に対応する数のジェットノズルを主走査方向に配設し、主走査方向には1列置きのノズルで回転ドラムの回転と共に移動する用紙に各行毎に回転ドラムの1回転でドット記録した後、残っている各列間を回転ドラムの2回転目でドット記録して印刷する方法である。
又、回転ドラムの4回転でドット記録する方法は、回転ドラムに装着した用紙にドラムの1回転目では主走査方向(各行方向)に1ドット置きに、かつ副走査方向(各列方向)にも1ドット置きにドット記録し、2回転目で1つ置きのドットの中間に市松模様にドット記録し、3回転目では主走査方向の空白部、4回転目で副走査方向の空白部にドット記録し、回転ドラムの4回転で全画素について記録する記録方法である。このようなドット記録方法は、各ドット記録後に隣接ドットの全てについてドット記録(印刷)するまでの間各インク乾燥時間を遅延できるので、印刷速度を高速化する手段とするよりも、一段の高画質印刷化するのに適合するとされている。
特許文献2では、記録ヘッドを記録素子の並びの方向、即ち主走査方向に移動自在に配置し、記録素子であるジェットノズル吐出口を記録すべき画素の例えば2倍のピッチに設けておき、主走査方向に1ドットずつの間引き間隔にかつ副走査方向にも1ドットずつの間引き間隔で回転ドラムの1回転目でドット記録し、回転ドラムの2回転目では記録ヘッドを1ドットだけ移動させてドット記録し、主走査ラインにおける奇数ラインと偶数ラインとでドットの基本解像度に対する記録設定位置をずらすようにしたドット記録方法を開示している。このドット記録方法では、中間階調を必要とする印刷においてすじ状の濃度むらの発生を有効に低減できるとされている。
一方、特許文献3は、いわゆるシリアルプリント方式のジェットノズルプリンタにおいてマルチパス印字によるドット記録方法を開示している。このドット記録方法では、記録素子のジェットノズル吐出口は記録媒体の用紙の幅方向に移動するキャリッジの走査方向と直交する方向に複数個配列されている。このドット記録方法では、2パス2倍速印字から4パス4倍速印字まで各種マルチパス倍速印字列が示されている。この方法では、第2記録モードの走査速度を第1記録モードの走査速度より速く設定することにより2倍速又は4倍速印字を可能としている。
しかし、前述した特許文献1、2によるドット記録方法は、ドラム回転をベースとし、主走査方向に複数のジェットノズルを配列したマルチパスドット記録方式であるが、主として画質劣化を防止することを重点とし、例えば回転ドラムの2回転又は4回転でパスされた残り画素部分を少しずつ遅れてドット記録を行ない、濃度むらやインクの滲みを防止することを目的とし、例えば2倍速、4倍速の高速でドット記録をし印刷するものではない。
一方、特許文献3は、シリアルプリント方式でのマルチパス印字のドット記録方法について開示しており、例えば主走査方向に2倍速又は4倍速のような高速印字が可能とされている。しかしながら、シリアルプリント方式はキャリッジに保持されているインクジェットノズルヘッドを移動走査させてドット記録させる方法であり、ノズルヘッドには所定数の複数の吐出口が設けられているが、ノズルヘッド長さは紙幅に比して数分の一の限られた長さであるため、吐出口数は複数であるがラインプリンタ程の吐出口を設けることはできない。従って、2倍速又は4倍速で高速印刷化を図っている。
そこで、シリアルプリンタにおけるマルチパスドット記録方法を回転ドラム方式のラインプリンタによるマルチパスドット記録方式に適用することを想定したとしても、シリアルプリンタは回転ドラム方式でないためそのまま適用することはできない。又、特許文献1、2によるラインプリンタの回転ドラムに装着される用紙は1枚のみであり、複数枚の用紙に連続的に効率よくドット記録し、印刷することはできない。
上述したシリアルプリンタにおけるマルチパスドット記録方法を回転ドラム方式のラインプリンタに適用できない理由として、上述したようにシリアルプリンタではノズルヘッドを主走査方向に2倍速又は4倍速の高速で印刷するようにしても、マルチパス方式のパス数を増加させて鮮明な画像を形成しようとすると、ノズルヘッドの走査回数が増大し、これに従ってスループット(用紙1枚当りの印字時間)が非常に長くなる。一方、回転ドラム方式のラインプリンタは印刷物を高速で、大量に印刷することをめざすものであるから、このようなスループットが長くなる方式をそのままでは高速印刷には利用できないこととなる。
スループットの低下を防止するため仮りにシリアルプリンタで、ノズルヘッドのキャリッジの走査速度を上げるとすると、キャリッジ移動は超高速となり、その移動両端部での加、減速度はきわめて大きくなり、大きな加、減速度に耐え得る機械構造が必要となる。その結果装置が大型化し、強度と精度を上げるためには製作費が高くなり、同じ強度、精度であれば耐久性が低下する。又、キャリッジ移動の加減速の領域を必要とするため、実際の画像形成に必要なストロークの両端に画像形成には直接寄与しないストローク域が必要であるが、走査速度を上げて加速度を低くしようとすると、この部分のストロークが著しく大きくなる。
さらに、キャリッジ移動の両端部での加減速の増大に伴って、ノズルヘッド内のインク室からノズルへのスムーズなインクの供給に支障が生じたり、キャリッジが高速で移動し、加減速されるため装置の振動と騒音が大きくなるという不都合も当然予想される。従って、ライン配置されたノズルヘッドを移動させずに、あるいはこのような種々の不都合を生じない程度の低速の移動速度で移動させると共に、副走査方向に2倍速又は4倍速のような高速度でマルチパス方式のドット記録を行なう方法を回転ドラムに装着した複数枚の用紙に対して適用することが考えられるが、このような試みは未だ提案された例はない。
又、このような副走査方向へ複数枚の用紙をドラムに装着し、マルチパス、複数回転でドット記録する装置と大略の構成は共通するが、上記のように高速度でドット記録する方式の他に所定以下の速度でドット記録する装置も考えられる。
特開2001−18374号公報
特開平11−115220号公報
特開平4−366645号公報
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は実施形態のラインドット記録装置の概略構成を示す模式図である。図示のように、ラインドット記録装置Aは、インクジェット方式の多数の吐出口(ノズル)を有するノズルヘッド1と、このノズルヘッド1に近接して回転自在に設けられた回転ドラム2を備えている。
この回転ドラム2に対し、コンベア3aから送られて来る印刷媒体の用紙を揺動グリッパ3bを介して回転ドラム2へ供給する給紙ローラ3cなどから成る給紙手段3と、回転ドラム2に設けられ供給された用紙の先端をくわえ爪4aでドラム周面に装着し、用紙の途中を保持するクランプ4bなどによる装着・保持手段4が設けられ、さらに排出側には排紙ローラ5a、チェーン5b、くわえ爪5cなどから成る排紙手段5が設けられている。6は吸引送りユニット、7は用紙の貯留ケースである。
なお、図1ではノズルヘッド1は図示簡略化のため1つだけ示しているが、実際には図2に示すように、ドラム2の略上半円周に沿って合計10組のノズルヘッド1(1Y 、1M 、1C 、1B )が設けられており、カラー3色の1Y 、1M 、1C のそれぞれは2つずつのノズルヘッドで各1色のユニットとし、黒色用には確実な黒色を確保するため、別途4つのノズルヘッドを設けて黒色としている。又、回転ドラム2は、図示の例では少なくとも規格サイズA3 4枚の用紙を装着できる外周長を有し、かつ各4枚の用紙をドラム周面に装着・保持するための装着・保持手段4もそれぞれ4組設けられている。回転ドラム2は図示しない駆動モータにより所定の回転数かつ一定速度で回転駆動されている。なお、回転速度については後でさらに詳しく説明する。
図3はノズルヘッド1のドラム外周面側下底面を示す図、図4は図3の矢視IV−IVから見た断面図である。図示のように、ノズルヘッド1は、図4の断面に示す断面コ字状の支持フレーム1F の下底板1FBに、2つのノズルユニットを背中合わせに設けた複数(図示の例では7対)ノズルユニット対1Y1〜1Y7を千鳥状にかつ用紙の幅方向(ドラム幅方向)である主走査方向に配列して設け、このノズルヘッド1全体を左右に移動するための移動手段10を有する。
なお、添字Yはノズルヘッド1のうち1Y のヘッドを示し、1M 、1C 、1B では添字はそれぞれM、C、Bとなる。又、「主走査方向」は単に用紙の幅方向を意味し、主走査方向の1つ置きの(間引きした)ノズル吐出口からインクは同時吐出される(主走査方向の複数のノズル吐出口が吐出タイミングを少しずつ遅れて走査されインクを吐出するのではない)。但し、図示の例ではノズル吐出口は1つ置きに吐出するとしたが、ノズルの間引き数は、2つ以上あるいは1つと2つ、2つと3つのように変則的な間引きとすることもできるし、間引き無しの吐出とすることも出来る。
ノズルヘッド1Y 、1M 、1C は、図2に示すように、2つのヘッドを一対にしており、例えば1Y 、1Y の1方のヘッド1Y に設けられているノズルユニット1Y1の2つのユニットはその1つのユニットにつき150dpiの解像度となるノズル吐出口を有し、従ってノズルユニット1Y1では300dpi、2つのヘッド1Y 、1Y の両方で600dpiの解像度(画素密度)のノズル吐出口を有することとなる。この解像度のノズル吐出口は他のノズルユニット1Y2〜1Y7についても全て同様に設けられている。
上記2つのヘッド1Y 、1Y の両方による600dpiの解像度(画素密度)は、1つのヘッド1Y において2つのノズルユニット1Y1を背中合わせに組合わせる際に隣接する2つのドット間ピッチが150dpiとなる間隔(約0.17mm)に各吐出口(ノズル)の記録素子が設けられているものを互いに半ピッチずらして設けることにより300dpiとし、さらに2つのヘッド1Y 、1Y を組合わせる際に各記録素子間ピッチが1/4ピッチ(約40μm)に位置するように組合わせることにより設定している。
各ノズルユニット1Y1の基準周期(周波数)(ノズル吐出によるドット記録の最高速度)は図示の例では9.6kHzであり、回転ドラム2が回転速度11.25rpm(ドラム周速24m/分、ドラム直径D=70cm)で回転したとき、ノズルドットの径40μmが互いに隣接して副走査方向に並ぶ速度を基準速度とし、その4倍の回転速度(45rpm)でドラムは回転駆動され、上記600dpiの解像度となるようにドット記録される。但し、上記基準速度の4倍速は一例として示したものであり、必ずしも4倍速に限定する必要はなく、基準速度以上(1以上の実数m倍)でかつ、少なくともスループットの向上が従来の基準速度の場合に比して実効的に認められる程度に速ければよい。即ち、整数のN倍だけでなく、例えば1.5倍や3.8倍のように基準速度より大きい実数m倍であればよい。
従って、ドラム回転速度(周速)は、基準速度以上であればよいが、特に4倍速のように整数倍値と記す場合は、例えば3.8倍のように実効的に4倍速とみなし得る範囲を便宜上4倍速と呼ぶこととする。4倍速以外の2、3、5、6、7・・・の整数倍速の場合も同様である。しかし、以下の説明では理解し易いように4倍速の場合を中心として具体例について説明する。又、両端のノズルユニット1Y1と1Y7は使用される用紙の最大幅(例えばA3 紙の長辺側長さ)に合わせて設けられ、それより小さい用紙に対しては画像信号の送りを制限して必要幅に対応するノズル吐出口を作動させるようにしている。
ヘッド移動手段10は、ノズルヘッド1(1Y 、1M 、1C 、1B )のそれぞれのヘッドを主走査方向に移動させるようにノズルヘッド1にそれぞれ独立に連結され、固定フレーム11の一方に固定したステッピングモータ10mと、その出力軸を貫通して取付け、出力軸に連結したねじ軸10sをボールねじ継手10T を介して支持フレーム1F に貫設し、ステッピングモータ10mを回転駆動すると支持フレーム1F が主走査方向(及び反対方向)に移動自在となるように構成されている。なお、もう一方の固定フレーム11には支持フレーム1F の端面を検出し、キャリッジ(移動手段10)の移動の原点位置を検出することができるようになっている。10Gは支持フレーム1F に支持されたノズルヘッド1を軸方向へ案内支持する案内ロッドである。
ヘッド移動手段10は、後述するように、用紙に対して複数箇所(N)の所定位置から所定位置へ移動、停止されるが、その移動停止時の加減速度は、図示の例ではそれぞれ0.1G程度であり、その移動距離は、1回の最大移動距離約20mm、全体で約30mmである。又、一方向の動作時間は0.3秒程度、停止して次に動作を開始するまでの時間は約1.3秒である。
給紙手段3は、コンベア3aから送られて来る用紙の端を揺動グリッパ3bでくわえて給紙ローラ3cに送り込み、給紙ローラ3cに設けられたくわえ爪でさらに所定のタイミングで用紙の端をくわえて回転ドラム2へ渡し、さらにドラム2のくわえ爪4aで用紙の端をくわえて回転ドラム2が回転すると用紙がドラム外周から浮き上らないようにクランプ4bで軽く押えて用紙が送られる。クランプ4bは、ドラム外周面に設けられているクランプ4bの押え部材(ドラム幅方向に設けられているが簡略化のため図示省略している)で軽く押えることにより用紙をクランプするようになっている。
給紙手段3のコンベア3aの前方に設けられている吸引送りユニット6は、用紙を貯留する貯留ケース6aから吸引アーム6bにより用紙の先端を吸着し、吸引アーム6bを所定ストローク上昇させた後回転させてコンベア3a上に用紙を引渡すように吸引アーム6bは昇降自在、かつ軸6xを中心に回転できるように設けられている。又、吸引アーム6bは用紙の幅方向に複数本設置され、吸引アーム6bの複数本全体が一斉に昇降し、回転できるようになっている。コンベア3a上に送込まれた用紙はコンベア3aの下流側終端付近に設けられた見当手段3dにより幅方向の位置及び先端部に対し縦方向の位置を揃え、所定のタイミングで揺動グリッパ3bへ送り出される。
排紙手段5は、くわえ爪5cがエンドレス状に掛け回されたチェーン5bに取り付けられて形成され、用紙の端が排紙ローラ5aの所定位置手前まで来ると、必要なタイミングでくわえ爪5cがドラム側のくわえ爪4aを押えてドラムから用紙端を剥し、そのくわえ爪5cで用紙端をくわえて排紙ローラ5aにより矢印の下方へ送られ、2つのローラ間の下方に設けられている貯留ケース7に貯留されるようになっている。
又、図2中の符号12は、支点軸であり、上述した10組のノズルヘッド1を取付けるためのドラム周面に沿って湾曲した形状のウイングフレーム13を回転自在に支持する軸である。ウイングフレーム13はドラム2の真上の位置で左右に2分割して設けられ、支点軸12を支点として両端が跳ね上がるように構成されている。前述した各ノズルヘッド1の支持フレーム1F はそれぞれこのウイングフレームに両端が連結され、固定されている。従って、上記支持軸12とウイングフレーム13はノズルヘッド1の支持手段Tを形成している。
そして、上記記録ヘッドであるノズルヘッド1は位置調整手段Tにより印刷媒体の用紙の厚さに応じて最適の隙間を保持するように回転ドラム2の半径方向に位置調整自在にウイングフレーム13に取付けられている。位置調整手段の具体例として、図12A〜図12Cにその一例を示す。図12Aはウイングフレーム13の外側から位置調整手段Tを見た(但し、右側ウイングフレーム13及び左側ウイングフレーム13の一部のみを示す)図であり、図12Bは各ノズルヘッド1(例えば1Y)の案内ロッド10G の位置で見た部分断面側面図である。図12Aに示すように、位置調整手段Tは調整ノブ(ハンドル)14aの軸端のカサ歯車14bを歯車軸14cに螺合させ、歯車軸14cは湾曲した右側ウイングフレーム13の長さに沿って片側の全ノズルヘッド1(1Y 、1M 、1C )に亘るよう部分的に連結ロッド、ユニバーサルジョイント、ねじ軸15a、歯車15b等を介して各ノズルヘッド1の調整軸15xに回転が伝達されるように、それぞれ互いに接続されている。但し、調整ノブ(ハンドル)14aによる手動調整をモータによる自動調整方式としてもよい。
又、図12Bに示すように、位置調整手段Tは両支持フレーム1F の外側に設けられている固定フレーム11の下端に取付けられている。固定フレーム11の下端に設けられた脚部11aの下方に懸垂部材11bが延長して設けられ、この懸垂部材11bに、図12Cに示すように、上記調整軸15xの端の偏心カム(エキセントリック部材)15が嵌合されている。そして、上述したねじ軸15a、歯車15bを経て調整軸15xに回転が伝達されると、偏心カム15の偏心位相位置によってウイングフレーム13に対し懸垂部材11bが上下方向(図12Bにおける上下方向)に位置がずれる。
この場合、図12B、図12Cに示すように、懸垂部材11b内には異径段状の案内孔の一対が形成されており、ウイングフレーム13から各ノズルヘッド1に対応して突設して設けられた支持板11c上に一対のガイドロッド11dを互いに平行に立設し、この一対のガイドロッド11dを上記一対の案内孔に挿入し、かつ案内孔の大径側に弾性部材のコイルばね11eを挿置している。弾性部材は常に支持板11cに対し懸垂部材11b間を押上げるように圧縮状に挿置され、偏心カム15の位相位置によって懸垂部材11bを支持板11c、即ちウイングフレーム13に対し位置調整自在に構成されている。従って、懸垂部材11bに設けられた固定板11を挿通する案内ロッド10G 、10Gにより支持されているフレーム1F 、1F間のノズルヘッド1に対しても位置調整自在に設けられていることとなる。
又、上記最適の隙間とは、出来る限り少ない隙間とするのが理想的であるが、実際には用紙の厚さ、回転ドラム2の真円度や偏心量の誤差、印刷媒体の回転ドラム表面への各周方向位置での密着度のむら等種々の誤差を考慮すると隙間をゼロとすることはできず、各誤差が生じても支障なくドット記録ができ、複数のインクジェットノズル吐出口を用紙に最も近接して配置するのに適する隙間であり、経験的に定められる量である。図示の例では、例えば大略0.9mm程度に設定しており、その隙間サイズを中心に用紙の厚さに応じて極くわずかに接近、離反の調整が行なえるようになっている。
さらに、上述したドラム2のくわえ爪4aとクランプ4bは、ドラム2の周面へ用紙を密着させる密着手段Mとして設けられている。用紙がドラム周面から少しでも浮き上がるとインクジェットノズル吐出口との隙間が用紙の位置によって異なることとなり、各用紙毎に均質(均一)な画像を印刷できなくなるから、密着手段Mは上述したインクジェットノズル吐出口との隙間を最適に保持するためにも重要な手段である。密着手段Mの他の例としてはドラム内を吸引ポンプで低圧にし、ドラム周面に多数の小孔を設けて用紙を吸引密着させてもよい。その場合、少なくとも用紙枚数4枚(N枚)に対応して内部を同数に区画し、各区画毎に吸引密着できるようにするとよい。
上記の構成とした実施形態のラインドット記録装置Aでは次のようにしてドット記録(印刷)が行なわれる。説明が複雑になるのを避けるため、図1に示すように1つのノズルヘッド1を代表させて以下説明する(前記ノズルユニットとよばれているものは、便宜上ノズルヘッドとして説明する場合もある。)。実際の装置Aでは以下の1つのノズルヘッド1の動作を各色毎の2組及び/又は4組を全体的に連動させてカラー印刷が行なわれる。図5の(a)図では、例えばノズルヘッド1Y7を代表させたとする。図示のように、1つのノズルヘッド1Y7には主走査方向にNo.1〜14〜の複数のインク吐出口(ノズル)が対応する用紙に要求される画素密度に対応して各画素の間隔と同一ピッチで設けられている。
図5の(b)図中の主走査方向の数字1〜14は用紙上のドット記録位置を、副走査方向の数字1〜9は用紙上の副走査方向のドット記録位置を示し、用紙上の四角形の1つが1つのドットを表わしている。従って、この場合1つのノズルヘッド1Y7でドット記録すべき領域が図5の(b)図の主走査方向のアドレスNo.1〜14〜で右方向に広がっているものとし、回転ドラム2の回転により図中の副走査方向と反対方向に用紙が送られて、ドット記録が副走査方向にも行なわれる。
ドット記録の開始時には、(b)図に示す主走査方向のアドレスNo.にノズルヘッド1Y7のノズルNo.が一致して置かれているものとする(基準位置)。又、(b)図中の数字記号は、そのドットを記録するノズル番号とドット記録順を表わしている。例えば、1−1はNo.1のノズルの1回目のドット記録で表示されている位置でその箇所のドット記録が行われたこと、1−2はNo.1のノズルの2回目のドット記録(図示せず)、2−1はNo.2のノズルの1回目のドット記録、2−2はNo.2のノズルの2回目のドット記録(図示せず)がそれぞれ行われたことを示す。
さて、ドット記録の開始時には、(a)図の最上段のキャリッジ位置No.1の位置にノズルヘッド1Y7は置かれており、開始信号の入力によりNo.1、3、5、7、・・・・・(奇数列)のノズル吐出口からインクが一斉に吐出され、No.1−1、3−1、5−1、・・・の各画素がドット記録される。そして、ドラム2の回転により相対的に副走査方向にノズルヘッド1Y7が進み、副走査方向のNo.5のアドレスにノズルヘッド1Y7が位置するタイミングになると、再び上記奇数No.(奇数列)のノズル吐出口からインクが吐出され、ドット記録が行なわれる。
さらに、副走査方向のNo.9、13、17、・・・の各アドレス位置で次々と同じ主走査方向のドット記録が行なわれ、副走査方向に4ドット毎のマルチパスドット記録が行なわれる。このような1回転目のマルチパスドット記録が1枚の用紙の副走査方向の印刷領域全てに行なわれると、次に2回転目のマルチパスドット記録を開始するまでにノズルヘッド1Y7を、(a)図に示すように、主走査方向と反対方向に図示の例では6ドット分移動させたキャリッジ位置No.3へ置く。
キャリッジ位置No.は記録開始時のノズルヘッド1Y7の位置を基準位置としてその位置をNo.1とし、その基準位置から近い順に2、3、4とする。従って、2回目のマルチパスドット記録時には6ドット分移動するため、キャリッジNo.は3となる。2回転目のドット記録時には、図示のように、副走査方向No.1の行では1つずつ間引きされた偶数番目のノズル吐出口、即ちノズル吐出口No.8、10、12、14、・・・の各ノズルで偶数番目のNo.の画素に対して、即ちNo.2、4、6、8、・・・の各画素にドット記録される。
そして、副走査方向に相対的にノズルヘッド1Y7が進むと、No.3の行では1つずつ間引きされた奇数番目のノズル吐出口、即ちノズル吐出口No.7、9、11、13、・・・の各ノズルで奇数番目のNo.の画素に対して、即ちNo.1、3、5、7、・・・の各画素にドット記録され、さらに副走査方向にノズルヘッド1Y7が進むとNo.7、11、・・・の各行で同様にドット記録が行なわれる。その後3回転目のドット記録が開始される前にノズルヘッド1Y7はさらに主走査方向と反対方向に3ドット移動し、キャリッジ位置No.4の位置に置かれる。
1枚目の用紙が3回転目に入ると、副走査方向No.2の行で偶数番目のノズル吐出口、即ちノズル吐出口No.10、12、14、16、・・・の各ノズルでNo.1、3、5、7、・・・の各画素にドット記録される。そして、副走査方向にノズルヘッド1Y7が進むと、No.4の行で奇数番目のノズル吐出口、即ちノズル吐出口No.11、13、15、・・・の各ノズルでNo.2、4、6、8、・・・の各画素にドット記録される。さらに、副走査方向にノズルヘッド1Y7が進むと、No.6の行で偶数番目のノズル吐出口の各ノズルで、No.8の行で奇数番目のノズル吐出口の各ノズルでというように各偶数番目の行毎に偶数と奇数番目のノズル吐出口を交互に1ドット置きにドット記録される。
その後ドラム4回転目のドット記録へ移行する前に、ノズルヘッド1Y7は、今度は主走査方向に戻され、6ドット移動してキャリッジ位置No.2の位置に置かれる。ドラムの4回転目では、副走査方向No.2の行で奇数番目のノズル吐出口、即ちノズル吐出口No.5、7、9、11、・・・の各ノズルでNo.2、4、6、8、・・・・の各画素に、即ち(5−4)、(7−4)、(9−4)、・・・のドットが記録される。
そして、副走査方向にノズルヘッド1Y7が進むと、No.4の行で偶数番目のノズル吐出口、即ちノズル吐出口No.4、6、8、10、・・・の各ノズルでNo.1、3、5、7、・・・の各画素に、即ち(4−4)、(6−4)、(8−4)、・・・のドットが、No.6の行で奇数番目のノズル吐出口、即ちノズル吐出口No.5、7、9、11、・・・の各ノズルでNo.2、4、6、8、・・・の各画素に、即ち(5−4)、(7−4)、(9−4)、・・・のドットがそれぞれ記録される。
以上のように、ノズルヘッド1Y7を主走査方向及び戻り方向に基準位置を含むN箇所(N=4)の位置に移動させる際に、主走査方向の最大移動距離内で(図示の例では9ドット)、隣り合う各位置間(例えばキャリッジ位置No.1とNo.2、No.2とNo.3)の距離が均等となる順序位置(図示の例では3ドットずつ)に移動、停止させ、かつ複数の所定の印刷イメージを形成し得る(印刷イメージ1、2、3、4)距離分移動自在となるようにヘッド移動手段はノズルヘッドに連結されている。但し、隣り合う各位置間の均等距離を3ドットとしたのは説明上の一例であり、この距離の設定は任意であって、例えばノズルヘッドのノズル吐出口の数が多くなれば、その数に応じて5、10、10、・・・ドットのように大きい距離に設定される。
なお、ノズルヘッド1Y7が基準位置であるキャリッジ位置No.1の位置から主走査方向と反対方向へ移動し、所定のドット記録領域から外へ位置したノズル吐出口、例えばキャリッジ位置No.3のノズル吐出口No.1〜6は、2回転目のドット記録時にはインク吐出動作は休止する。キャリッジ位置No.4のノズル吐出口No.1〜9、キャリッジ位置No.2のノズル吐出口No.1〜3も同様である。又、以上の動作をノズルヘッド1Y7〜1Y1で、かつ2つのノズルヘッドユニットで繰り返して1枚の用紙の必要記録領域に1色分のドット記録をし、他の色についても同様な動作を繰り返してカラー印刷が行なわれる。
又、上述したように、キャリッジ位置No.が1→3→4→2と移動する際に、加減速度0.1G程度、移動最大距離約30mm、一方向動作時間0.3秒程度、停止してから再び動作するまでの時間約1.3秒としたが、このような移動、停止の態様は、従来のシリアルプリンタ(例えば特許文献3参照)でキャリッジが用紙の全幅距離を高速、急加減速度で移動するのに対し、この例ではラインヘッドプリンタ形式を基本的に採用し、かつ極めて小さな距離、加減速度、短い作動時間で移動、停止する構成の記録ヘッドを採用したことによるものである。
しかも、上述の移動距離、加減速度、作動時間の設定は、回転ドラム形式で、用紙4枚、ドット記録が4回転、4倍速、4パスのマルチパスによる用紙への印刷動作に対応したものである。従って、上記移動距離、加減速度、作動時間等の設定を、N=4以外の用紙N枚、N回転、基準速度以上の倍速、Nパスの場合について行う場合はNの数値に応じてそれぞれ最適に設定される。
以上が図5に基づいて1枚目の用紙にドット記録される作用であり、図5では全ての各画素に対して4回転分のドット記録が重ねて行なわれた結果を示したのに対し、図6では各回転毎に各画素へのドット記録に使用されたノズル番号と各画素との関係を示している。但し、この図では1回転目の○1は(1−1)、○2は(2−1)、○3は(3−1)、○4は(4−1)、・・・をそれぞれ表わし、2回転目の△7は(7−2)、△8は(8−2)、△9は(9−2)、△10は(10−2)をそれぞれ表わし、3回転目の▽10は(10−3)、▽11は(11−3)、▽12は(12−3)、▽13は(13−3)を、4回転目の□4は(4−4)、□5は(5−4)、□6は(6−4)、□7は(7−4)をそれぞれ表わしている。
図6中のC1 、C3 、C4 、C2 はキャリッジ位置符号を示しており、1枚目ではキャリッジは前述したようにC1 →C3 →C4 →C2 の順に変化していることが分る。又、この図6には2枚目の用紙に対して1枚目の用紙と全く同じイメージ順のドット記録が行なわれることを示している。この場合、同じ画素位置に対応するノズルは異なる番号のノズルが用いられる。例えば、1枚目用紙の1回転目の印刷イメージ番号1は、1行目にノズルNo.1、3・・・、3行目にノズルNo.2、4、・・・が作動して、印刷イメージ番号2は、1行目にノズルNo.8、10・・・、3行目にノズルNo.7、9・・・が作動し、又印刷イメージ番号3、4も同様にしてそれぞれ形成されている。
これに対し、2枚目用紙の1回転目の印刷イメージ番号1は、1行目にノズルNo.7、9・・・、3行目にノズルNo.8、10・・・が作動して、印刷イメージ番号2は、1行目にノズルNo.11、13・・・、3行目にノズルNo.10、12・・・が作動し、又印刷イメージ番号3、4も同様にしてそれぞれ形成されている。従って、1枚目用紙と2枚目用紙の1回転目の印刷イメージ番号は全く同じ(印刷イメージ番号1)であり、かつノズルは異なる番号のノズルであることが分かる。3枚目、4枚目用紙に対しても同様である。
但し、2枚目では1回転目のキャリッジ位置はC3 、2回転目ではC4 、3回転目ではC2 、4回転目ではC1 と変化し、3枚目ではC4 →C2 →C1 →C3 、4枚目ではC2 →C1 →C3 →C4 というように、2枚目以降では印刷開始時のキャリッジ位置が1枚目の1回転毎にキャリッジ位置が変化する順と同じ順で1つずつずれて始まり循環して変化することが分る。なお、上記の説明は1色の代表のノズルヘッドによるものであり、実際には各色のノズルヘッドが同じ動作を少しずつタイミングがずれて行なうから、ノズルは異なる番号のノズルで各用紙毎の印刷の色の重なり方も同じとなり、各用紙毎の印刷の色合いを同じとすることができるのである。
上記実施形態ではヘッド移動手段10により、図5の(a)図に示しているように、ノズルヘッド1(1Y 、1M 、1C 、1B )を主走査方向へ所定の短い距離範囲内で往復動することを前提として説明したが、ヘッド移動手段10を設けずに各ノズルヘッド1Y 、1M 、1C 、1B のそれぞれを複数組のノズルヘッド(図示の例では4組)とし、これにより上記と同じドット記録作用を得ることができる。但し、この場合は、図5の(a)図のように複数組のノズルヘッドを移動した位置に固定するのではなく複数組のノズルヘッドを全てキャリッジ位置No.1と同じ基準位置に、かつ副走査方向に位置を隣接、固定して設けることとなる。従って、図5に示し、説明した例で(b)図に示したドット記録と同じ記録作用となるように複数組のノズルヘッドの異なるジェットノズル吐出口を作用させて同じ記録作用を得ることができる。
上述した4枚の用紙への印刷はドラムに装着し得る最大枚数を予め装着した状態で4パスのマルチパス方式により4回転でドット記録する場合であり、4枚の用紙全ての印刷が終るまで用紙を回転ドラム2に保持したままとし、その後4枚の用紙を取替えて同じ印刷を繰り返すことを前提としている。しかし、実際には1枚目の印刷は2枚目以降の用紙への4回転目の印刷が始まる前に終了しているから、印刷を大量に効率よく連続的に行なう場合は1枚目を排出した後、その位置に次の用紙を供給すれば連続印刷できることとなる。従って、用紙を一定の時間間隔で連続的に供給し、印刷を連続して行なう大量印刷する場合について以下説明する。
回転ドラム2には4つのくわえ爪4aにより4枚の用紙がドラム上に等間隔に装着できるようになっており(但し、常に4枚同時に装着される訳ではない)、図1、図7に示すように、右側の給紙手段3から用紙が給紙される給紙位置にNo.1のくわえ爪、そしてドラムの回転方向(反時計方向)の後方に順にNo.2、No.3、No.4の4つのくわえ爪が設けられており、用紙がNo.3とNo.2の位置の間に来たとき排紙手段5で排紙される。図8はドラム回転位置(位相)に対する給紙順序を説明する図である。図中の(a)→(i)の順に変化し、4枚の用紙が4つの爪No.1〜4に順次装着される。
但し、図2に示す実際の複数のノズルヘッド1について全て説明すると説明が複雑になるため、図8では1つのノズルヘッド1を代表させてドラム中心線上のドラム上方に置いたものとした模式図として示している。従って、以後の説明では図9A、図9Bもこの模式図に対応させて各用紙の供給と印刷順序及び排紙との関係を説明する。
図9A、図9Bには各爪No.での給紙タイミングと印刷、排紙の状態がベースパルスBPを基準タイミング信号として変化する変動状態を擬似タイムチャート図として示している。ベースパルスBPはドラム1/4回転ごとを1パルスとして表わしたものであり、No.1の爪がドラムの右側水平方向の位置にあるときをベースパルス1とし、以後ドラムが1/4回転するたびに1つずつインクリメントする。
図8(a)図は給紙開始状態を示し、1枚目の用紙が給紙手段3から所定のタイミングで送られて来ると爪No.1によりくわえられ、ドラム周面に装着されてドラム2の回転と共に送られる。ベースパルスBPが2になると1枚目の用紙がノズルヘッド1の下を通過し始めて印刷が開始され、上述したドット記録方法により1枚目の用紙の所定領域にドット記録が行なわれる。1枚目の用紙への1回転目の印刷が終り、ベースパルスBPが3になるとその後未だドラム2には2枚目の用紙が装着されていないため、その位置でキャリッジの位置移動が行なわれる。
これは、前述した1枚目の用紙に対する2回目のドット記録ではキャリッジ位置をNo.3に移動させるようにしているためであり、ノズルヘッド1の下に用紙のないタイミングでノズルヘッド1のキャリッジ位置を移動させる必要があるからである。図8の(b)図はノズルヘッド1がキャリッジ位置No.3へ移動開始する際のドラムの状態を示している。さらに、ドラム2が回転を続けてベースパルス4で1回転した後、ベースパルス5でさらに1/4回転したとき、図8の(c)図に示すように、No.1の爪がノズルヘッド1の直前に達し、同時に給紙手段3から2枚目の用紙が供給され、No.2の爪がこの用紙の先端をクランプする。
ドラム2がベースパルス6でさらに1/4回転し、図8の(c)図から(d)図へ移行する間に1枚目の用紙には前述した2回目のドット記録が行なわれ、そのドット記録が終ると爪No.2でくわえられた2枚目の用紙がノズルヘッド1の直前に達する。従って、ベースパルス7でさらにドラム2が1/4回転する間に2枚目の用紙にこの2枚目の用紙に対しては1回転目のドット記録が行なわれて(e)図の状態に進む。
ベースパルス8で(e)図の状態からさらにドラム2が1/4回転すると、爪No.3には未だ3枚目の用紙は装着されていないから、このタイミング中にキャリッジの位置移動が行なわれ、キャリッジNo.は3から4へ移行する。この1/4回転でドラムは最初の爪No.1の基準位置を通って3回転目が始まる。そして、ベースパルス9で1/4回転した後、ベースパルス10でさらに1/4回転する間に1枚目の用紙に3回転目のドット記録が行なわれ、2枚目の用紙はこの用紙にとっては2回転目が始まる。
ベースパルス10で1枚目の用紙に対する3回転目のドット記録が終了し、2枚目の用紙の2回転目が始まる直前の1/4回転進んだ状態を(f)図に示す。図示のように、この時爪No.3では給紙手段3から3枚目の用紙が供給され、その用紙の先端を爪No.3でくわえる。そして、ベースパルス11で2枚目の用紙に、この用紙に対しては2回転目となるドット記録が始まり、3枚目の用紙は1/4回転進み、ノズルヘッド1の直前まで進む。さらに、ベースパルス12で1/4回転進む間に3枚目の用紙への1回転目のドット記録が行なわれる。ドット記録が終了したときの状態を(g)図に示している。
ベースパルス13ではこのパルスによる1/4回転中に爪No.1、2、3のいずれにもドット記録する必要はなく、又4枚目の用紙は未だ爪No.4にくわえられていないから、このタイミングでノズルヘッド1についてキャリッジ位置No.4からNo.2への移動が行なわれる。なお、1枚目の用紙はベースパルス13により4回転目が始まる。ベースパルス14では1枚目の用紙に4回目のドット記録がされ、2枚目の用紙が3回転目に入る。ベースパルス15で2枚目の用紙に3回目のドット記録がなされ、3枚目の用紙が2回転目に入る。
そして、ベースパルス16で1枚目の用紙が排出され、3枚目の用紙に2回転目のドット記録が行なわれ、爪No.4で4枚目の用紙がくわえられる。このベースパルス16での作用の始まりの状態を(h)図に、又ベースパルス16での作用の終りの状態を(i)図に示す。なお(i)図のタイミングでは、次のベースパルス16で4枚目の用紙にドット記録した後ノズルヘッド1の移動を行うため、爪No.1には排紙されたベースパルス16から5パルス先(1+1/4回転後)まで給紙されない。
ベースパルス17では4枚目の用紙の1回転目の印刷が行なわれ、次のベースパルス18でノズルヘッド1の移動が行なわれ、このためキャリッジ位置がNo.2から1へ置かれ、ベースパルス19では2枚目の用紙に4回転目の印刷が行なわれた後、ベースパルス20では3枚目の用紙に3回転目の印刷が行なわれる。以上で爪No.1で装着される1枚目の用紙が装着されるドラム外周位置は基準位置へ戻り、次のベースパルス21で再び給紙が行なわれ、上記のサイクルを繰り返す。
従って、以上のサイクルで行なわれる4枚の用紙に対するキャリッジ位置と、印刷回数と印刷イメージとの関係は次のようになる。
なお、C1 〜C4 はキャリッジ位置No.を示し、Im1〜Im4は印刷イメージNo.の記号を示す。印刷イメージとは、図6に示した、例えば1枚目の1回転毎にドット記録されるドット記録パターンの全体像であり、各回転毎にNo.を付している。
図10A、図10Bにはサイクルの異なる例を示す。この例では、印刷を行なう際のキャリッジ位置番号とその時印刷を行う印刷イメージ番号が同じとなっている。この場合、4枚の用紙に印刷を行う際の印刷イメージでの順番は用紙によって異なるが、その代わり同じ印刷イメージを印刷する時のヘッドのノズルは同じとなる。この場合の各4枚の用紙に対するイメージ番号と対応するノズルの関係を図11に示す。
この図11から分かるように、例えば1枚目の2回転目で画素位置(2−1)(2行−1列の交点)、(2−3)にノズルNo.7、9で、画素位置(4−2)、(4−4)にノズルNo.8、10でドット記録された全体画像が図6におけるイメージ番号3の画像であり、同様に3回転目では画素位置(2−2)、(2−4)、(4−1)、(4−3)にそれぞれノズルNo.11、13、10、12が対応したイメージ番号4の画像、4回転目では通常位置(1−2)、(1−4)、(3−1)、(3−3)にノズルNo.5、7、4、6が対応したイメージ番号2の画像がドット記録されている。
2枚目以降では、例えば2枚目で1枚目のイメージ番号3が1回転目にずれた状態でドット記録され、以後キャリッジ番号と同じ番号のイメージ画像が記録され、3枚目ではさらに1つキャリッジ番号がずれてというようにドット記録されている。以上から、この例では同じ印刷イメージを印刷する時のヘッドノズルは同じノズルが用いられることが分かる。
以上から、各用紙毎の印刷において1つの色について同じノズルを使用するようにした場合も印刷品質を均一に確保できることが分るが、この場合も各色について少しずつタイミングをずらして同じサイクルで各用紙毎の印刷が行なわれるから、ノズルの違いによる色の濃さやドットの位置の変化を同じノズルを使用することにより無くすことができ、各用紙毎の印刷の色合いを同じとして各用紙毎の印刷品質を均一にできるのである。
上記の各実施形態では印刷媒体は、最大規格サイズ(A3 )をN枚(N=4)ドラム外周に装着するとしたが、この印刷媒体をN枚分の長尺紙とすることもできる。この場合は、最大規格サイズ用紙に形成される画像のN枚分の画像を各長尺紙に形成し、その後長尺紙をN枚に切断することにより各用紙に同一品質の画像を形成することができることとしても良いし、長尺紙にあわせた長尺な画像を形成し、上記画像形成後の切断を行わないで長尺な印刷物を得ることも出来る。
なお、上記実施形態では用紙4枚装着回転ドラム、4パスのマルチパス方式、4回転、4倍速による印刷の例を示したが、上記設定数字4は回転速度の設定数字4以外では2以上の整数であればいずれの数字の場合も適用できるから、一般的には設定数字はNと表わされ、Nが2、3、4、5、6、7、・・・のいずれでもよい。但し、実際にはNの値と回転ドラムの直径が現実に適用し得る限界内である。又、Nを2、3・・・と変化させる場合、主走査方向のノズル吐出は、一例としてN=2又は3の場合、N=4の場合と同様に1つ置きの間引き状態で吐出し、N=5の場合4つ置きの間引き状態、これ以降Nの数字が大きくなってもN=5と同じ間引き状態で吐出すればよい。間引きの態様はこれ以外にも種々のものを選択することができる。
又、上記実施形態ではドラムの回転速度の設定倍速数はN=4の場合を中心に説明したが、用紙N枚、Nパスのマルチパス方式、N回転による画像形式のパラメータのそれぞれの設定数Nは、上記のように、2、3、4、5、6、7・・・の整数であっても、設定倍速数はNと同じ整数倍だけでなく、基準速度以上の倍速(実数倍速)であればよい。例えば上記パラメータN=4であっても、基準速度の1.5倍速のように4とは大きく異なる実数倍速とすることもでき、このような実数m(mは1以上の実数)倍速であっても、従来の基準速度で回転する場合に比してスループットの向上(時間が短くなる)が実効的に認められる倍速数であればよい。
さらに、上記各実施形態では回転ドラム2を基準速度以上の高速度で回転させて大量印刷物を印刷する装置について説明したが、回転ドラム2を基準速度以下の回転速度で回転させ、かつその他の用紙枚数N、Nマルチパス、N回転によるドット記録条件、及び一定間隔での連続印刷のための給紙手段3、用紙の装着・保持手段4、排紙手段5を備えたドット記録装置を実施形態として挙げることができる。但し、外観的な構成は先の実施形態と同じであるから、図示は省略する。
この実施形態のラインドット記録装置は、回転ドラム2を基準速度以下で回転駆動するため、これに伴ってノズルヘッド1のインクジェットの吐出口からのインク吐出タイミングである周期速度も同調するように低下させる。この実施形態でもノズルヘッド1はヘッド移動手段10により同様に所定の短い距離だけ移動させてもよいし、このヘッド移動手段10を省略して、上記の移動させる方式の位置に複数のノズルヘッド1のユニットを固定しておき、それぞれのノズルヘッド1を選択して動作させることによりヘッド移動方式と同じ動作が得られるようにしてもよい。なお、この後の方式は先の実施形態にも同様に適用される。
又、給・排紙手段3、5、装着・保持手段4を備えて用紙の給、排紙をする際に、先の実施形態と同様に、給、排紙のタイミングを(1+1/N)回転毎に1回とすることによりドット記録タイミングに調和する一定間隔で連続的に給、排紙を行い、時間効率(1秒当りの印刷枚数、時間的スループット)を低下させずにスムーズな給、排紙により低速度でも効率よく、かつ印刷品質(画質)を向上させることができる。この場合、インクジェットノズルより吐出されたインクドットの印刷媒体への着弾位置精度を上げたり、又、通常の着弾位置から離れた位置に小さな液滴が飛び散ってしまうサテライトの量を少なくする効果を得て印刷品質を上げる為に、上記倍速値を1以下の数値とすることも出来る。