JP3998036B2 - 生体侵襲反応低減方法、物質改質装置及び空気調和機 - Google Patents
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Description
大気中の浮遊粒子のうち直径10μm以下のものは、浮遊粒子状物質(SPM:Suspended Particulate Matters)と呼ばれている。
抗原と同時投与することで「抗体産生を増強する現象」が、「アジュバント効果」と呼ばれるものである。アジュバント効果のメカニズムとしては、アジュバント物質が体内のTh1/Th2バランスをTh2優位に傾けている、ということがいわれている。以下に、このアジュバント効果に関して考えられる機構について説明する。
森田 寛、永倉 俊和、宮地 良樹、岡本 美孝編、「アレルギーナビゲーター」、第1版、株式会社メディカルレビュー社、2001年5月15日、p.132−133 Andre Nel、大気汚染関連性の疾病:粒子の影響(Air Pollution-Related Illness: Effects of Particles)、Science、2005年、308巻、pp804−806 Brown DM, Wilson MR, MacNee W, Stone V, Donaldson K.、超微細ポリスチレン粒子のサイズに依存した炎症誘発効果:表面積の役割と超微細ポリスチレン粒子の増強された活性における酸化ストレス(Size-dependent proinflammatory effectsof ultrafine polystyrene particles: a role for surface area and oxidative stress in the enhanced activity of ultrafines.)、Toxicol Appl Pharmacol.、2001年、175巻、3号、pp191−199 Cassee FR, Muijser H, Duistermaat E, Freijer JJ, Geerse KB, Marijnissen JC, Arts JH.、肺における粒子サイズに依存した全沈着量がラットにおける塩化カドミウムエアロゾルの吸入毒性を決定する。複数パスの線量測定モデルの適用(Particle size-dependent total mass deposition in lungs determines inhalation toxicity of cadmium chloride aerosols in rats. Application of a multiple path dosimetry model.)、Arch Toxicol.、2002年、76巻、5−6号、pp277−286 Ken-ichiro Inoue, Hirohisa Takano, Rie Yanagisawa, Miho Sakurai,Takamichi Ichinose, Kaori Sadakane and Toshikazu Yoshikawa、マウスにおける抗原関連性の気道炎症に対するナノ微粒子の影響(Effects of nano particles on antigen-related airway inflammation in mice)、Respiratory Research、2005年、6巻、1号、pp106−117
請求項1,2に記載の発明によれば、ナノ構造を有する物質を、線又は針状の正極と面状の負極との間で発生させたストリーマ放電により発生して正極と負極の間から拡散した活性種と接触させることにより、ナノ構造を有する物質のナノ構造を消失させてこのような物質の生体侵襲反応を低減することができる。なお、「ナノ構造を有する物質」とは、ナノサイズの微細な構造(ナノ構造)を有する物質であって、ナノサイズの微細な物質の他、物質表面にナノサイズの微細な構造(ナノ構造)を有する物質を含む。「ナノ構造」とは、ナノサイズの微細な構造であって、物質表面の凹凸を形成するナノサイズの微細な構造を含む。「ナノ構造を消失させる」とは、ナノ構造を有する物質におけるナノサイズの微細な構造について、ナノ構造の凹凸を緩和させることをいう。
本発明は、プラズマ放電により発生する活性種でナノ構造を有する物質のナノ構造を消失させることにより、ナノ構造を有する物質の生体侵襲反応を低減することを特徴とする。すなわち、プラズマ放電により、反応性の高い活性種(高速電子、イオン、ラジカル、その他の励起分子等)を発生させ、ナノ構造を有する物質を、上記活性種と通気接触させることで、ナノ構造を有する物質のナノサイズの微細な構造(ナノ構造)を消失させる。そして、ナノ構造を消失させることにより、ナノサイズの微細な構造に起因する生体侵襲反応を低減する。例えば、アジュバント物質を、上記活性種と通気接触させることで、アジュバント物質のナノ構造を消失させることにより不活性化し、アジュバント効果を抑制する。効果的にナノ構造を有する物質のナノ構造を消失させるためには、プラズマ放電の正極と負極の間から拡散した活性種が、ナノ構造を有する物質と接触するような構成とする。
本実施形態の物質改質装置は、箱形のケーシング本体を備え、このケーシング本体には、被処理ガスを導入するための空気吸込口と、被処理ガスが流出する空気吐出口が形成されている。さらに、上記ケーシング本体には、被処理ガスを流通させるためのファンと、上記被処理ガスの流通経路と、プラズマ放電手段としての放電装置20が設けられている。
図1は、本実施形態の物質改質装置の放電装置20の概略構成を示す断面図である。
この放電装置20は、低温プラズマを生成するための放電電極21及び対向電極22を備えている。放電電極21は、放電基板21aと、この放電基板21aにほぼ直交するように固定された複数の放電端21b(正極)とから構成されている。放電基板21aは、面直角方向に空気が通過する多数の開口部を有している。本実施形態において、放電端21bは針状の形態となっている。放電端21bは、線状の形態であってもよく、また、線又は針状の放電端21bを平板状に薄くしてもよい。上記放電電極21の放電端21bに対峙する対向電極22(負極)は、板状(面状)であり、面直角方向に空気が通過する多数の開口部を有している。放電電極21は、放電基板21aが対向電極22とほぼ平行で、放電端21bが対向電極22とほぼ直角になるように配置されている。
ストリーマ放電時には、放電電極21から対向電極22に向かってリーダーと呼ばれる微小アークが発生する。リーダーの先端部分では、強い電位勾配によって空気が電子と荷電粒子とに電離している。そして、荷電粒子が対向電極22側まで到達すると、一回の放電が終了する。
次に、この物質改質装置の運転動作について説明する。
この物質改質装置に通電すると、ファンが起動され、空気(被処理ガス)が、空気吸引口より吸引され、流通経路に導入される。
以上、本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
○ 上記実施形態では、ナノ構造を有する物質の生体侵襲反応を低減するためにナノ構造を有する物質のナノ構造を消失させる物質改質装置について説明した。この物質改質装置は、アジュバント物質のナノ構造を消失させることにより不活性化して、アジュバント物質のアジュバント効果を抑制してアレルギーを予防することにより、アレルギー予防装置として機能した。このようなアレルギー予防装置として機能する物質改質装置は、アジュバント物質を不活性化するとともにアレルゲンを除去することによりアレルギーを予防するものであってもよい。上述のとおり、アレルギーは、アレルゲンによって引き起こされるものであるため、アジュバント物質を不活性化するとともにアレルゲンを除去できれば、より効果的にアレルギーを予防できる。
例えば、上記物質改質装置に、さらに、アレルゲン除去手段としてイオン化部と集塵フィルタ(静電フィルタ)とを備える。
<実施例1>
以下、前記実施形態を具体化した実施例(プラズマ放電によるアジュバント効果抑制実験)及び比較例について説明する。このアジュバント効果抑制実験では、プラズマ放電のうち、上述したストリーマ放電を用いた。
実験には、図2に示す実験装置30を使用した。この実験装置30内には、図1に示す上述の放電装置20が備えられており、上方に放電電極21が、放電基板21aがほぼ水平となり放電端21bが下方向を向くように設置され、これに対峙して下方に対向電極22がほぼ水平になるよう設置されている。実験装置30の上部には送風装置31が設けられており、この送風装置31から空気が実験装置30内に押し込められる。実験装置30内に入った空気は、実験装置30内の放電装置20を通って、実験装置30の下側から押し出される。この実験装置30を、透明アクリル製のチャンバー内で運転した。
本アジュバント効果抑制実験では、アジュバント物質として水酸化アルミニウムゲルの乾燥粉末を用いた。この水酸化アルミニウムゲルの乾燥粉末を入れたシャーレ35を実験装置30に設置してストリーマ放電を16時間行った。このストリーマ放電は、電圧5.4kV、電流5.5μAとなるようにして行った。
免疫動物として、5週齢のメスのBDF1系マウスを用いた。また、アレルゲンとして、卵白アルブミン(OVA)を用いた。
(免疫測定)
さらに2週間後に採血し、血清中の総IgE量をELISA法で測定した。このELISA法では、BD社製のOptEIAキットを使用した。以下に、プロトコルを示す。
ellとなるように添加し、室温で1時間静置した。その後プレートをPBS−Tで1回洗浄した。
ディーゼル排気粒子(DEP)にストリーマ放電によりストリーマを照射し、DEPがもつアジュバント効果が低減することを検証した。
本アジュバント効果抑制実験では、アジュバント物質としてDEPを用いた。このDEPを入れたシャーレ35を実験装置30に設置してストリーマ放電を16時間行った。このストリーマ放電は、電圧5.4kV、電流5.5μAとなるようにして行った。
免疫動物として、5週齢のメスのBDF1系マウス(日本クレア社製)を用いた。アレルゲンとして、卵白アルブミン(OVA)(コスモバイオ社製)を用いた。また、アジュバント物質としては、上述のようにDEP(国立環境研究所より分与)を用いた。
上記の全採血を行った後、血清中の総IgE量をELISA法で測定した。このELISA法による測定は、BD社製のOptEIAキットを使用し、上記実施例1に示しているプロトコルにより行った。
上述のようにストリーマ処理を行う前後において、ディーゼル排気粒子(DEP)の走査電子顕微鏡写真を撮影した。これを図5(未処理DEP)、図6(ストリーマ処理後のDEP)に示す。図5の未処理DEPにおいて観察されるDEPの表面の凹凸を形成する微細な構造(ナノ構造)が、図6のストリーマ処理後のDEPでは消失していることが分かる。すなわち、ストリーマ処理後のDEPでは、ナノサイズの微細な構造による凹凸が緩和されており、ナノ構造が消失している。
対向電極22の放電電極21側の面に直接ディーゼル排気粒子(DEP)を置いてストリーマ放電(15分間)を行った場合について、処理後の走査電子顕微鏡写真を撮影した。これを図7に示す。この場合、DEPは、破裂した状態となっており、処理前よりも微細な構造を有している。対向電極22の放電電極21側の面にDEPを置いた場合、このDEPに高エネルギーの高速電子が直接あたる状態となる。このように高エネルギーの高速電子が直接あたることにより、DEPが破裂し、ナノ構造が消失するどころか、さらに微細な構造となった。
Claims (4)
- ナノ構造を有する粒子状物質の生体侵襲反応を低減する生体侵襲反応低減方法であって、
線又は針状の正極と面状の負極との間で発生させたストリーマ放電により発生する10eV以上の電子温度を有する活性種により励起されて二次的に発生する活性種が、前記正極と前記負極の間から拡散した状態で、二次的な活性種に直接放電でナノ構造が消失しない粒子状物質を接触させることにより、前記粒子状物質のナノ構造を消失させて前記粒子状物質の生体侵襲反応を低減することを特徴とする生体侵襲反応低減方法。 - 前記ナノ構造を有する粒子状物質は、被処理ガス中のナノ粒子であり、前記正極と前記負極の間から拡散した二次的な活性種と通気接触させることを特徴とする請求項1に記載の生体侵襲反応低減方法。
- 被処理ガス中のナノ構造を有する粒子状物質の生体侵襲反応を低減するためにナノ構造を有する粒子状物質を改質する物質改質装置であって、
線又は針状の正極と面状の負極とを備え、
前記正極と前記負極との間で発生させたストリーマ放電により発生する10eV以上の電子温度を有する活性種により励起されて二次的に発生する活性種が、前記正極と前記負極の間から拡散した状態で、二次的な活性種に被処理ガス中の直接放電でナノ構造が消失しない粒子状物質を接触させることにより、前記粒子状物質のナノ構造を消失させることを特徴とする物質改質装置。 - 請求項3に記載の物質改質装置を備えたことを特徴とする空気調和機。
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