JP3997300B2 - ディスク評価方法及び装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、分光機器を備えたディスク評価装置に関するものであり、ディスクの回転中にディスク内部からの散乱光や発光を分光して、ディスク内の薄膜の温度や光物性を動的に測定する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、光記録の記録密度は急速に上昇しており、2005年頃には、現在のDVDの20倍、更に2010年には200倍の容量を持つ光ディスクが開発されるとの予測がある。このような記録密度を実現する光ディスクの開発が急務となっている。そのような光ディスクの中で、追記型光ディスクと呼ばれるものは、何回でも書き込みや消去が可能なディスクであり、現在はDVD-RAMやCD-RWなどと言った名称で商品化されている。
【0003】
これらの追記型ディスクでは、レーザー光で記録膜に情報を書き込んだり、消去を行っている。つまりレーザー光が照射された部分が熱せられることを利用し、記録膜の結晶性を変化させることにより記録や消去を行っているのである。実際のディスクは、記録膜だけでなく、保護膜や反射膜なども存在し、多層構造をもっている。従って、新規なディスクを開発すると言うことは、これらの薄膜の材質や構造を最適化していくということに他ならない。そのため薄膜の物性を知ることは、新規のディスク開発には不可欠なことである。
【0004】
しかしながら、今までは、物性測定はディスク停止時にしか測定されず、ディスク回転時に膜内の動的な物性をその場観察する方法はなく、せいぜい可能なのは、回転時の反射光や透過光強度を測定する程度であった。特に、読み出し時における各膜内の温度の情報は、耐久性や消去率などの観点から重要な情報であるが、回転中での温度の測定はこれまで不可能であり、唯一コンピューターを使ったシミュレーション(例えば、下記「非特許文献1」参照)が存在するのみであり、実験的に求めることは不可能であった。更に、シミュレーションからの結果は、あくまで推測であり、やはり実際の実験によって求められた値と比較してはじめてシミュレーションは意味を持つといえる。
【0005】
近年、青色レーザーを使った光ディスク技術やスーパーレンズなどの超解像読み出し技術において、ディスクからの透過光や散乱光を分光し、ディスク内部の記録膜や保護膜の動的な光物性を調べる必要が出てきた。このことにより、再生原理の究明や耐久性に関する情報が得られると考えられている。
【0006】
このように、ディスク回転時の分光測定法によって、様々な情報が得られると期待できる。しかしながら、ディスクからの散乱光や発光の強度は非常に微弱なため、構築する集光・分光装置はその微弱光に対応したものでなければならない。
【0007】
【非特許文献1】
Jpn. J. Appl. Phys. 32, pp.5210-5213, 1993
【非特許文献2】
J. Appl. Phys. 82 pp. 4183-4191 1997
【特許文献1】
特開平8−7257
【特許文献2】
特公平6−82098
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、ディスクの信号検出や耐久性を測定しつつ、回転するディスクからの散乱光や発光をその場観察で分光する既存の装置はなかった。そのため、動的なディスク内部での物理、化学現象の解明が遅れていた。散乱光や発光は、非常に微弱であり、それに対応した分光装置を構築しないと、レーザー光源による迷光などのカットする必要のある光に隠れていまい観測不可能となってしまう。
【0009】
そこで本願発明は、既存のディスク評価装置と分光器を組み合わせ、記録、再生実験を行うのと同時に、分光を行い、ディスクへの内部の薄膜の光物性を調べる装置でかつ微弱光観測に対応した装置を提供することにある。このことにより、薄膜内部の温度、薄膜界面での応力、記録マークからの発光等が観察可能となり、高密度光ディスク開発に寄与すると考えられる。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そこで、既存の光ディスク評価装置と分光機器を組み合わせ、上記課題を解決しうることを見出した。すなわち、光ピックアップを備えたディスク評価装置に、分光機器を取り付け、ディスクからの散乱光、透過光、発光を分光する方法及び装置である。静的に分光法を用いて測定する評価装置や実験はある(例えば、上記「特許文献1」及び「特許文献2」参照)が、本願発明のような回転するディスクからの分光を目的とした装置や実験例はなく、また既存の装置ではその場観察はできない。
【0011】
【実施の態様】
本願発明は、光ディスク評価装置と分光機器を組み合わせた新しいディスク評価装置である。すなわち、分光機器を組み合わせる事により、信号検出などの通常のディスク評価以外に、分光の実験が可能であり、かつその実験はディスクが回転中に行えるその場観察的な手法である。
【0012】
一般の光ディスク評価装置は、光ピックアップを備え、光ディスクへの記録や再生の実験を行う装置である。当然のことながら、ディスクを回転させて評価を行う。既存のディスク評価装置では、再生時の反射光強度を測定することだけが可能であり、現在までのディスク開発ではその評価方法だけで十分であった。しかしながら、スーパーレンズ技術を代表とする新しい超高密度光記録ディスクでは、反射光強度を測定するだけではその評価は不十分であり、その再生原理の解明には至らないのが現状である。
【0013】
従って、反射光強度以外の何かしらの物性値を測定する必要があるが、ディスクが回転した状態で何かを測定するということは今まで例はない。回転時には、面ぶれなどディスク自体に細かな振動などが生じるため、ディスクと接触して何かを測定する(例えば、表面形状観察など)は全くの不可能となる。従って、光を使用した非接触な測定方法に限定せざるを得ない。
【0014】
その中で、分光法は、一般的な方法であり、また得られる情報も多く、有用な測定方法である。光ピックアップについているレーザー光源を使うことにより、面ぶれなどの振動が存在しても常にディスク表面にレーザー光がフォーカスされるため、安定した分光測定が可能である。
【0015】
本願発明は、ディスク評価装置と分光機器を組み合わせた新しいディスク評価装置ではあるが、回転体を対象とした試料について同じ装置または方法が適用可能であり、ディスク評価に限定されるものではない。また、レーザー光源、分光機器などの種類にも限定されるものではなく、使用する光源により適切な分光機器や光学系を選択することが可能である。
【0016】
図1に、本願発明の分光機器を備えたディスク評価装置に係わる基本構成図を示す。既存の光ディスク評価装置1(半導体レーザー1’、ミラー3’、レンズ4’などから構成)の上に、対物レンズ2、光学ミラー3,各種フィルター4,レンズ5,分光器6,光検出器7が構築されている。ディスク下部よりレーザー光が照射され、透過光が上部へと抜ける。その透過してきた光を対物レンズ2で集光し、平行光にした後、ミラー3で反射され分光機器の方へと導かれる。レンズ5に入る前に、各種フィルター4を通し、偏光や波長などに関して必要なフィルタリングを行う。その後、レンズ5で集光し分光器内に導いた後、光検出器で検出される。
【0017】
一方、図2は、本願発明に係わる分光機器を備えたディスク評価装置の他の一例である。図1では、透過光を全て集光していたが、透過してくるレーザー光の強度が強すぎ、微弱な散乱光や発光が隠れてしまう。そこで図2に示すように、透過してくる方向に対し、ある角度をもって集光する。これにより透過光が分光機器に入ってくる事は避けられるため、微弱な光の検出も更に高精度で行う事ができる。また、透過光を避ける意味だけでなく、散乱光や発光の光強度分布は測定でき、これも貴重な情報である。
【0018】
また、図3に示すように、ディスク上部で分光するのではなく、下部で分光する方法も反射光に含まれている情報を取るために有効である。また、下部から分光する方法は、ディスクに反射膜がついていてほとんど光が透過してこないディスク試料についても有効である。
【0019】
また、光ファイバーを用いた光学系も有効である。対物レンズで集光した後、その光を光ファイバーに通して直接分光器に入れる。ファイバーに入れる前に各種フィルタリングをすれば光ファイバー内で、光の持つ情報(偏光成分など)が失われても問題はない。光ファイバーを使うことにより、分光器や光検出器の位置などは自由に決定できるため、装置としての利便性は向上するものと考えられる。実際の実験系構築では光ファイバーを使用している。
【0020】
このように分光した結果、どのような事がわかるのか具体的にラマン散乱現象を例にとって説明する。ラマン散乱光は、ある物質にレーザー光を入射させると、その波長とは異なった光が放射される現象である。その光は、物質や温度などにより波長位置や強度が異なってくる。ラマン散乱ピークは、入射したレーザー光波長より、長波長側と短波長側に対照的に現れる。長波長側をストークス散乱、短波長側をアンチストークス散乱と呼ばれている。この2つの強度比は、物質によらず、その物質の温度によって決定されることがわかっている(Introduction to Solid State Physics, C, Kittel著)。このことを利用して、回転しているディスク内の薄膜の温度をその場観察できるのである。
【0021】
【実施例】
回転するディスクからのラマン散乱光を測定し、薄膜内の温度を測定した。ここでは光ファイバーを用いた光学系を構築し、かつ分光器と光検出器が一体となった機器を使用した。
【0022】
ディスク基板に、シリコンを1ミクロンの厚さに堆積させ、試料とした。半導体レーザーの波長は635nm、出力は3mW、ディスクの回転スピードは6m/sである。シリコンの520cm-1のピークを観察した。
【0023】
図4が分光した結果である。±550cm-1近辺に観測されているのがストークス、アンチストークス側のピークである。中心のピークは取りきれていないレーザー光源の光である。
【0024】
図5は、入射するレーザー光の強度を変え、ラマン散乱を観測し、ストークス、アンチストークスのピークの比をとったグラフである。実践は、exp(-hν/kBT)で表される理論値である。ここでh:プランク定数、ν:ラマン散乱ピークの振動数、 kB:ボルツマン定数、T :温度である。レーザー出力を3,4,5mWと変化させ比をとっている。各比の値と理論値と比較し、そこから温度を算出する。図5から、3mW:100℃、4mW:150℃、5mW:400℃となることがわかる。
【0025】
【発明の効果】
以上のように、本願発明は、分光機器を備えた光ディスク評価装置を提供するものであり、これによりディスク回転中という動的な場合でも、ディスクからの散乱光や発光を分光できる事が可能となった。分光が可能になったことにより、ディスク上の薄膜の温度や結晶構造に関する情報を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 分光機器を備えた光ディスク評価装置の基本装置の概略図。
【図2】 集光角度を変え、レーザー透過光の影響を取り除く配置図。
【図3】 レーザー入射側から、集光する実験配置図。
【図4】 ディスク表面上のシリコンからとったラマン散乱ピーク。
【図5】 入射レーザーの出力を変えてストークス、アンチストークスの比をとった実験値(○)と、その比の理論曲線(実践)。
【符号の説明】
1・・光ピックアップ
1‘・・半導体レーザー
2‘・・レーザー光
3‘・・ミラー
4‘・・集光レンズ
2・・対物レンズ
3・・ミラー
4・・各種フィルター
5・・集光レンズ
6・・分光器
7・・光検出器
8・・ディスク試料

Claims (6)

  1. 光ディスクに光を照射し、該ディスクからの光を受光することにより該ディスクの状態を検知する光ピックアップ部を有する光ディスク評価装置において、該装置は、該ディスクからの光を分光する分光機器を備え、該ディスク内の薄膜の温度を解析することを特徴とする光ディスク評価装置。
  2. 上記光ピックアップ部は、レーザー光源、上記ディスクからの反射光を検出する検出器、入射光と反射光を分ける光学系、常にレーザー光の焦点をディスク表面に合わせる自動焦点合わせ機構及びディスク溝を追従する追従機構とを有することを特徴とした請求項1記載の光ディスク評価装置。
  3. 上記分光機器は、光を集光する対物レンズ、光を分光器に導く光学系、各種フィルター、分光のための分光器及び分光後の光を検出する光検出部を備えていることを特徴とする請求項1記載の光ディスク評価装置。
  4. 上記光ピックアップ部の上記レーザー光源を分光のための光源として使用することを特徴とした請求項2に記載の光ディスク評価装置。
  5. 上記ディスク回転時においても、上記ディスク内からの光を分光可能であるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の光ディスク評価装置。
  6. 光ディスクに光を照射し、該ディスクからの光を受光することにより該ディスクの状態を評価する光ディスク評価方法において、該ディスクからの光を分光し、該ディスク内の薄膜の温度を解析することを特徴とする光ディスク評価方法。
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