JP3995969B2 - セラミックス成形品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばエンジニアリング・プラスチック成形用の金型、或いはコンピュータ関連の電子部品などに用いられるファインセラミックス成形品等を製造するためのセラミックス成形品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
上述したファインセラミックスを使用した金型等の製造は、従来から、HIP(ホットアイソスタティックプレス)技術を用いた方法が、一般的に行われている。
【0003】
上記HIP技術を用いたファインセラミックスの製造は、図6に示すように7工程を必要とする。具体的には、まず焼結材料と潤滑剤を所定量づつ秤量し、これらを混合して顆粒にし(第1工程)、次に金型を用いて常温でプレスし(第2工程)、次にゴム型を用いて常温でCIP(コールドアイソスタティックプレス)を行い(第3工程)、次に加熱炉を用いて脱脂し(第4工程)、次に焼結炉を用いて焼結し(第5工程)、次に不活性ガスを用いて高温でHIPを行い(第6工程)、最後に加熱炉を用いて内部応力を除去する(第7工程)ことを必要とする。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、上述した従来の製法による場合には、ファインセラミックス成形品の製造に多数の工程を必要とするために長期間を要するという難点がある。また、4つの加熱工程を経る故に温度制御や焼結材料の排出・装入を要するため作業が煩雑であるとともに消費エネルギーが極めて大きいものになるという課題があった。更に、プレス成形性を考慮して混合させた潤滑剤は、最終的に脱脂して除去する必要があり、環境保全の点で難点があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の課題を解消するためになされたもので、短時間で成形品を製造できるとともに作業性を向上でき、しかも低エネルギー化を図れ、環境の保全化も向上させ得るセラミックス成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のセラミックス成形品の製造方法は、筒状をした型の内部に、金属酸化物からなる粉末焼結材料を一対の対向電極で挟持した状態で装填する装填工程と、少なくとも該型内を減圧雰囲気とした状態で該型を加熱手段により加熱して、粉末焼結材料の外表面に、酸素減少による導電層を形成する導電層形成工程と、少なくとも導電層形成工程の後に、該対向電極間への電流供給により、上記導電層が形成された粉末焼結材料を焼結温度にまで加熱し、かつ、導電層形成工程のときからまたは導電層形成工程の後から該対向電極を互いに接近する方向に押圧し、上記導電層を有する粉末焼結材料を焼結する焼結工程とを含み、上記粉末焼結材料を焼結温度にまで加熱するに際し、前記粉末焼結材料の相変態温度を挟むように1乃至2回以上温度を上下させることを特徴とする。
【0007】
本発明方法による場合には、型を加熱手段により加熱し、粉末焼結材料の外表面を溶融化する。この溶融化に加熱手段を用いるのは、金属酸化物は一般に導電性が低く対向電極間への電流供給では加熱し難いからである。そして、この溶融化のとき、粉末焼結材料が装填された型内が減圧雰囲気であるので、粉末焼結材料の外表面から部分的に酸素が減少(還元)していき導電性を有する導電層が形成され、隣り合う粉末焼結材料同士が接合可能な状態となる。かかる導電層形成工程のときからまたは導電層形成工程の後から対向電極には、互いに接近する方向に押圧力が作用するので、隣り合う粉末焼結材料同士が接合することになる。また、少なくとも導電層形成工程の後に、対向電極間へ電流を供給すると、上記接合した粉末焼結材料の導電層を介して電流が流れ、焼結材料の固有抵抗により自己発熱し、焼結材料の粒子間にアーク溶解が起こる。そして、粉末焼結材料を焼結温度にまで昇温させて所定時間保持させると、この保持時間の間、対向電極の押圧力により粉末焼結材料が押圧されているので、粉末焼結材料は焼結されて高密度のセラミックス成型品となる。
【0008】
よって、減圧雰囲気下の型内で粉末焼結材料を加熱しつつプレスするだけでセラミックス成形品の製造が可能となり、非常に短時間での製造が可能となるとともに、低エネルギー化が図れる。また、隣り合う粉末焼結材料が接合する導電層が溶融化状態であるため、金属酸化物とは異なり塑性流動が容易になり、潤滑剤が無くても成形圧縮性が十分に発生し焼結が可能となり、環境の保全化も向上させ得る。更に、塑性流動性に富む導電層により隣り合う粉末焼結材料同士が接合するので、従来よりも低押圧力でも高密度のセラミックス成型品の製造が可能となる。なお、本明細書では、粉末焼結材料は粒体のものを含み、径寸法および形状に関しては特に限定をしていない。また、導電層としては、導電性が得られるレベルの酸素を含んでいてもよく、要は導電性を確保できれば含酸素レベルは問わない。更に、減圧雰囲気は、解離反応が起こって加熱溶融した粉末焼結材料の表面から酸素を減少させ得るように100Pa未満としてもよいが、焼結時間の短縮を考慮すれば、10Pa未満とするのがよいが、好ましくは1Paにより近い真空度とする方が好ましい。
【0009】
更に、本発明方法による場合には、粉末焼結材料の相変態温度を挟むように温度を上下させるので、例えば金属酸化物がジルコニアのとき、単斜晶系と正方晶系との相変態が起こる温度である1150℃より低い温度と高い温度とに粉末焼結材料を加熱制御するので、相変態を完全に終えるような熱履歴が可能となる。即ち、上記加熱制御を行わないときは、相変態が不完全になって部分的に単斜晶系と正方晶系が混在し、各相の体積が異なることより各相の間でのストレスに伴う割れや品質むらが発生する虞がある。これに対し、本発明のように加熱制御を行うと、全体を同じ相で変態させ得るので、割れや品質むらの発生を防止することが可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を具体的に説明する。
【0011】
まず、本実施形態で用いる熱加工装置につき述べる。
【0012】
図1はその熱加工装置の一例を示す一部切欠き斜視図、図2は図1のA−A線断面図であり、図3は制御装置により実行される熱加工装置の運転制御の一構成例を示すブロック図である。
【0013】
この熱加工装置10は、焼結材料(被加工物)M(図2参照)に対して上下方向に押圧力を付与するとともに電流供給により当該焼結材料Mに焼結処理を施すものであり、枠体20、安全カバー30、熱加工炉40、対向電極50、シリンダ装置70、型60および型加熱部材80を備える。
【0014】
上記枠体20は、外観縦長の直方体状になっていて、平面視で正方形状を呈する基礎板21と、この基礎板21の四隅部に立設された4本の円柱状のガイド支柱22と、このガイド支柱22の頂部にボルト止めで固定された平面視で正方形状の天板23と、四隅部が上記各ガイド支柱22に摺接状態で貫通された平面視で正方形状の仕切板24とを備える。
【0015】
上記基礎板21と仕切板24との間には、後で詳述する上部電極51および下部電極52を有する対向電極50、安全カバー30および熱加工炉40が設けられ、天板23にはシリンダ装置70が設けられている。
【0016】
上記シリンダ装置70は、天板23に固定された油圧シリンダ71と、下方に向けて突出したピストンロッド72と、このピストンロッド72の下端部に固定されたプレスラム73とを有し、仕切板24を介して上部電極51を押圧するようになっている。
【0017】
前記対向電極50は、型60の上部に設けられる上部電極51と型60の下部に設けられる下部電極52とを有し、型60はこの構成例では円筒状のもので、下部内周面に角部が全周に亘って切り欠かれ環状角溝61が形成されている。なお、型60は円筒状のものでなくてもよく、角筒状などでもよい。
【0018】
上部電極51は、型60のキャビティ内に摺接状態で嵌挿される黒鉛製の上部均熱板51aを有し、この上部均熱板51aの上に設けられた黒鉛製の上部パンチ板51b、上部均圧板51c、第一上部スペーサー51d、第二上部スペーサー51e、第三上部スペーサー51fおよび第四上部スペーサー51g等を有する。
【0019】
上記下部電極52は、型60のキャビティ内に摺接状態で嵌挿される黒鉛製の下部均熱板52aを有し、この下部均熱板52aの下に設けられた黒鉛製の下部パンチ板52b、下部均圧板52c、第一下部スペーサー52d、第二下部スペーサー52e、第三下部スペーサー52fおよび第四下部スペーサー52g等を有する。これら上部電極51と下部電極52を有する対向電極50には、電源装置90の電流供給部91から所定の直流電流が供給される。上記パンチ板51b,52bは、均熱板51a,52aを介して焼結材料Mを挟持するようになっている。
【0020】
上部電極51の上部と下部電極52の下部、つまりこの構成例では第四上部スペーサー51gおよび第四下部スペーサー52gは、内部に冷却水路55が設けられており、冷却水路55には、冷却水源120からの冷却水が供給される。冷却水源120から上部電極51に向かう冷却水配管には上部電極用制御弁121が、冷却水源120から下部電極52に向かう冷却水配管には下部電極用制御弁122がそれぞれ設けられ、これら制御弁121,122の開閉操作で上部電極51の上部位置および下部電極52の下部位置の温度が制御される。なお、上部電極51は、上部均熱板51a〜第四上部スペーサー51gが一体化されたものを用いてもよく、下部電極52も下部均熱板52a〜第四下部スペーサー52gが一体化されたものを用いてもよい。また、上部均熱板51aおよび下部均熱板52aは省略した構成としてもよい。
【0021】
上記型60は、この構成例では導電性を有する黒鉛製のものを使用しており、上述したようにこの構成例では上下の均熱板51a,52aと摺接するので、上部電極51と下部電極52との間に電流が供給されると、型60にも電流が流れて発熱するようになっている。また、型60の下側は、下部パンチ板52bにて封止されている。具体的には、下部パンチ板52bは、その上部が下部よりも小径となった段付き状に形成されており、その下部を前記環状角溝61に入れ、上部を環状角溝61よりも上側部分に入れて型60の下側に配置されている。
【0022】
前記熱加工炉40は、上部電極51の一部および下部電極52の一部をいずれも内装した状態で設けられ、加工炉本体41と、この加工炉本体41に着脱自在に装着される蓋体42と、加工炉本体41の底面開口を閉止する底板44と、加工炉本体41の上面開口を閉止する天板43とを備える。
【0023】
加工炉本体41の内側には、型60および焼結材料Mをその外側から加熱する型加熱部材80が、型60を包囲するように設けられ、型加熱部材80は、煉瓦やモルタル等の断熱材からなる円弧状に形成された断熱部材81と、この断熱部材81に設けられた棒状の通電発熱体82とからなる基本構成を有している。通電発熱体82としては、ニクロム線等の金属ヒータや黒鉛ヒータ等を挙げることができる。なお、型加熱部材80は、この構成例では蓋体42と、加工炉本体41の蓋体42以外の部分とに分断されていて、蓋体42を開け閉めしても通電発熱体82の通電に支障がないようになっている。
【0024】
かかる熱加工炉40は、安全カバー30に内装されている。安全カバー30は、基礎板21と仕切板24との間に設けられる薄板製の筒状に形成され、密封状態で熱加工炉40、対向電極50および型60を収容するものであり、円筒状の容器本体31と、この容器本体31の上面開口を閉止する天板32と、容器本体31の周面に開閉自在に取り付けられた開閉扉33とからなる。上記天板32の中央位置には、上部電極51を摺接状態で嵌挿する嵌挿孔(図示せず)が穿設されている。
【0025】
熱加工装置10には、真空ポンプ100と油圧ユニット110が設けられ、真空ポンプ100は熱加工炉40内の空気を吸引除去して当該熱加工炉40内を減圧(真空)環境にする。油圧ユニット110は、シリンダ装置70に油圧を供給して上部電極51を昇降させるもので、この油圧ユニット110の駆動による仕切板24を介した上部電極51の押圧によって型60内に装填されている焼結材料Mが所定の圧力で圧縮されるようになっている。
【0026】
図3に示す制御装置130は、熱加工装置10の全体的な運転制御を行うためのものであって、いわゆるマイクロコンピュータによって構成され、演算処理装置であるCPU131が内蔵されているとともに、制御装置130に対して所定のデータを入力したりCPU131の演算結果を出力する入出力装置132と、データを一時的に記憶する読み書き自在の外部記憶装置であるRAM133と、制御プログラムを記憶した読み込み専用の外部記憶装置であるROM134とを備える。
【0027】
かかる制御装置130は、入出力装置132から入力された所定の指令信号および後述する各種のセンサからの検出信号に基き、ROM134から読み取った制御プログラムの実行によって電源装置90(電流供給部91および型加熱用電力供給部92)、真空ポンプ100、油圧ユニット110および上下の電極用制御弁121,122に向けてそれぞれ所定の制御信号を出力し、これによる真空ポンプ100の駆動で熱加工炉40内が減圧状態とされる。また、油圧ユニット110からの駆動信号(油圧)の出力によるシリンダ装置70の駆動で上部電極51に対するプレスラム73の押圧力が調節され、電極用制御弁121,122の開度調節で冷却水源120の流量が制御される。また、電流供給部91からの駆動信号(電流)の出力によって対向電極50を介して型60に電流を供給し、かつ型加熱用電力供給部92からの駆動信号(交流電流)の出力によって型加熱部材80に交流電力を供給して焼結材料Mを加熱し、これにより型60内の焼結材料Mの外表面を活性化、例えば溶融させ、溶融した外表面を介して隣り合う焼結材料M同士を接合させることにより、焼結材料Mにも電流を流して焼結材料Mを加熱させ、所定の焼結温度で焼結を行わせるようになっている。つまり、焼結材料Mが電流を通し難い金属酸化物であっても、対向電極50への通電と型加熱部材80への通電とにより焼結材料Mを加熱させて焼結させ得るように設計されている。
【0028】
制御装置130による上記のような制御を実行するために、熱加工装置10には各所に加工状況を検出する各種のセンサ140が設けられている。かかるセンサ140としては、均熱板51a,52aに径方向に所定ピッチで内装された複数の第一温度センサ141と、第四上部スペーサー51gに内装された第二温度センサ142と、第四下部スペーサー52gに内装された第三温度センサ143と、プレスラム73直下の仕切板24に設けられた感圧センサ144とが採用されている。
【0029】
これらセンサ141、142、143および144の検出信号はCPU131に入力される。一方、CPU131には予め入出力装置132から焼結材料Mを加熱する型60の型温度パターン、型加熱部材80の温度パターン、型加熱用電力供給部92から供給する電流パターンおよびシリンダ装置70の駆動による上部電極51の下部電極52に対する圧力パターンが入力される。
【0030】
かかるCPU131は、入力された型温度パターンに基づき電流供給部91から供給する電流パターンを決定し、前記制御装置130は決定された電流を対向電極50へ供給するように電流供給部91を制御し、また制御装置130はCPU131に入力された電流パターンに基づく電流を型加熱部材80へ供給するように型加熱用電力供給部92を制御する。そして、第一温度センサ141からの検出信号に対応する検出温度と上記型温度パターンの設定温度とを逐一比較演算し、検出温度と設定温度との差が許容限度を越えている場合には、電流供給部91および型加熱用電力供給部92に向けてこの差を許容範囲内に収めるように温度制御を行うようになっている。また、制御装置130は、感圧センサ144の検出信号と前記圧力パターンとに基づきシリンダ装置70による押圧力を制御する。他の制御の内容は割愛する。
【0031】
(本発明の基本方法)
次に、このように構成された熱加工装置10を用いて、本発明に係るセラミックス成形品の製造方法の基本方法につき説明する。なお、ここでは、金属酸化物からなる焼結材料Mとしてジルコニア(酸化ジルコニウム)粉末を用いる例を挙げる。
【0032】
まず、表1に示すように、CPU131に入出力装置132から、前述した型温度パターン、温度パターン、電流パターンおよび圧力パターンを入力する。なお、これらの型温度パターン等は、図4に示すジルコニア粉末Mの焼結温度特性および焼結圧力特性が得られるように設定されている。基本方法では、上記焼結温度特性としては、60分で室温から1300℃に達し、1300℃で約70分保持してその5分後に電流カットにより炉冷するようにしており、上記焼結圧力特性としては、最初から200kg/cm2の圧力に保持し、電流カットと同時に圧力オフするようにしている。減圧雰囲気は保持する。
【0033】
【表1】
【0034】
その後、対向電極50を構成する上部電極51の均熱板51aと下部電極52の均熱板52aとの間に、ジルコニア粉末Mを装填する装填工程を行う。つまり、型60の内部に、上部電極51と下部電極52で挟持した状態でジルコニア粉末Mを装填する。この装填工程は、上記CPU131への温度パターン等の入力よりも先に行ってもよい。
【0035】
次に、真空ポンプ100を作動させて熱加工炉40内、つまりジルコニア粉末Mが装填された型60内を真空引きする。そして、以降の加熱工程において、真空度が所定値以上、例えばジルコニア粉末Mの表層部が加圧および加熱により活性化、例えば溶融化してそのジルコニア粉末Mの表層部から酸素が減少(還元)するような真空度(例えば基本方法では10Pa未満)に達すると、制御装置130による制御を開始する。
【0036】
この制御開始に伴い、制御装置130は、CPU131に入力された型温度パターンに基づき決定した電流を対向電極50へ供給するように電流供給部91を制御する。また、CPU131に入力された電流パターンに基づく電流を型加熱部材80へ供給するように型加熱用電力供給部92を制御する。また、CPU131に入力された圧力パターンに基づく圧力となるように油圧ユニット110からの油圧をシリンダ装置70に供給し、下部電極52に対して上部電極51を200kg/cm2の圧力で押圧する。
【0037】
これに伴い、図4に示したようなジルコニア粉末Mの温度特性および圧力特性が得られる。即ち、焼結初期においては、対向電極50への電流供給と、型加熱部材80への電流供給とにより型60が直接的に加熱され、型60内のジルコニア粉末Mが型60からの熱伝達により加熱されていく。そして、約900℃程度に達すると、ジルコニア粉末Mの外表面が活性化して溶融し始める。このとき、ジルコニア粉末Mが装填された型60内が10Pa未満のある程度の真空雰囲気であるので、活性化(溶融化)したジルコニア粉末Mの表層部から酸素が減少し、その表層部が導電性を有する導電層となる。つまり、導電層形成工程が行われる。また、この導電層形成工程のとき、上部電極51が下部電極52に対して押圧されているので、隣り合うジルコニア粉末Mの溶融導電層同士が接合する。この接合に伴って、対向電極50へ供給される電流が型60内のジルコニア粉末Mの表層の導電層にも流れ、その電流によっても急速にジルコニア粉末Mが加熱促進される。
【0038】
そして、この状態が保持されたまま、ジルコニア粉末Mがより高温に加熱されていく。しかる後、所定の焼結温度、基本方法では1300℃に達すると、その温度に約70分保持される。この間、上部電極51が下部電極52に対して押圧されているので、ジルコニア粉末Mが焼結される焼結工程が行われる。
【0039】
焼結工程が終了すると、対向電極50への電流供給と、型加熱部材80への電流供給とを停止し、かつ、上部電極51の下部電極52への押圧を停止する。
【0040】
したがって、この基本方法による場合には、減圧雰囲気とされた1つの型60内でジルコニア粉末Mを加熱しつつプレスするだけでセラミックス成形品の製造が可能となり、非常に短時間、基本方法では約3時間程度での製造が可能となる。即ち、従来では1工程50時間以上の最低4工程を必要とし、1ロット分とする製造に約31日程度要していたが、基本方法ではその1ロット分の製造が約半日で済み、製造日数の大幅な短縮が図れる。また、従来のHIP技術によるエネルギーは1個あたり1192W/個を要するのに対し、基本方法によるエネルギーは1個あたり100W/個と約1/12に低減できるので低エネルギー化が図れる。更に、隣り合うジルコニア粉末Mが接合する導電層同士が溶融化状態であるため、塑性流動が容易になり、潤滑剤が無くても成形が可能となり、環境の保全化も向上させ得る。また、潤滑剤を使用しないので、その潤滑剤を添加し、また除去する工程を省略することができる。また、基本方法では、コンピュータによる制御で温度および圧力の調整を行っているので、焼結材料の装填と成型品の取り出しを除いて製造の無人化も可能となる。更に、基本方法では導電層成形工程の初期から対向電極へ通電しているので、型加熱部材80による加熱に加え、前記アーク溶解によってもジルコニア粉末Mの表面を導電層に迅速に形成し得る。
【0041】
なお、上述した基本方法では導電層成形工程の後においても型加熱部材80により型60をその周囲から加熱するようにしているが、本発明はこれに限らず、導電層成形工程の後では省略しても加熱を実行させ得る故に、型加熱部材80による加熱を省略することもできる。しかし、基本方法のように、導電層成形工程の後においても型加熱部材80により型60をその周囲から加熱する場合には、型60内のジルコニア粉末Mの温度を均一化させることが可能となる。即ち、型加熱部材80による加熱を省略した場合には、対向電極50間への電流供給により型60内の中央部に位置するジルコニア粉末Mの温度が、型60に接する外側のジルコニア粉末Mの温度よりも高温となり、つまり温度勾配が発生する。これに対し、基本方法のように導電層成形工程の後においても型加熱部材80により型60をその周囲から別途加熱すれば、型60内のジルコニア粉末Mの温度を均一化させることが可能となる。その結果、前記温度勾配に伴うセラミックス成形品の割れを防止できるとともに品質むらを抑制することが可能となる。
【0042】
また、上述した基本方法ではジルコニア粉末Mを用いてジルコニア成形品を製造する例を示しているが、本発明はこれに限らず、他の金属酸化物からなる粉末の焼結材料を用いたセラミックス成形品の製造にも同様にして適用することができる。但し、焼結条件については、適宜金属酸化物の種類に応じて変更することとなる。
【0043】
表2は、上述した基本方法により製造されたジルコニア成形品(参考例1)の特性を、焼結条件と共に示す表である。なお、この表2には、焼結条件を適宜変更して製造したアルミナ成形品(参考例2)の特性および焼結条件も、従来のHIP技術を用いた方法による場合(従来例)の特性および焼結条件と併せて示している。また、カタログ値は、使用したジルコニア粉末とアルミナ粉末を用いることで製造される焼結品の特性値の目安である。上記アルミナ成形品の焼結条件としては、焼結温度を1490℃、焼結時間(保持時間)を10分とし、焼結雰囲気は真空引きとした。
【0044】
【表2】
【0045】
この表2より理解されるように、基本方法による場合には、従来のHIP技術による場合よりもボイド数を、約1/5程度まで格段に少なくすることが可能となる。換言すれば、基本方法による場合には、ジルコニア粉末およびアルミナ粉末の表面が溶融した状態で焼結が行われるので、高密度となったファインセラミックス成形品を製造することが可能となる。
【0046】
(本発明方法の実施形態)
ところで、上述した基本方法ではジルコニア成形品の焼結温度を約1300℃にしていて、相変態が起こる温度、つまり1150℃を単に通過する加熱温度パターンに設定しているが、本発明はこのような加熱温度パターン(基本パターン)に代えて、図5に示すように相変態が起こる温度を挟む2温度、例えば1200℃と1100℃の2温度で、ジルコニア粉末Mの温度を上下させる加熱制御を行う加熱温度パターン(実施例パターン)を 採用し、更に、基本方法における前記加熱温度パターン(基本パターン)を除く構成要素を採用する。
【0047】
この本発明方法の実施形態による場合には、基本方法により得られる効果に加えて、単斜晶系と正方晶系との相変態を完全に終えるような熱履歴が可能となる。即ち、上記加熱制御を行わないときは、相変態が不完全になって部分的に単斜晶系と正方晶系が混在し、各相の体積が異なることより各相の間でのストレスに伴う割れや品質むらが発生する虞がある。これに対し、加熱制御を行うと、全体を同じ相で変態させ得るので、セラミックス成形品に割れや品質むらの発生を防止することが可能となる。
【0048】
なお、図5の例では、ジルコニア成形品の場合を例に挙げているが、他の焼結材料の場合には該当する焼結材料の相変態温度を挟むように温度を上下させることとなる。また、図5の例では、相変態が起こる温度を挟んで4回温度を上下させているが、本発明はこれに限らず、1回または2回以上の任意な回数で温度を上下させてもよい。
【0049】
また、上述した実施形態では型に導電性を有する黒鉛を使用しているが、本発明はこれに限らず、導電性を有する他の材料からなる型を同様にして用いても同様の効果が得られる。また、本発明は、非導電性の型を使用することもできる。但し、この場合には、導電層形成工程までの加熱を型加熱部材80のみで行う必要がある。
【0050】
また、上述した実施形態では図1〜図3に示す熱加工装置10を用いているが、本発明はこれに限らない。例えば、減圧雰囲気にすることができる型と、加圧できる対向電極と、型を外部から加熱するための型加熱部材(または型加熱部材に相当する加熱手段)とを少なくとも備えた熱加工装置などを使用することができることは勿論である。
【0051】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明による場合には、型を加熱手段により加熱し、粉末焼結材料の外表面を溶融化状態にする。このとき、粉末焼結材料が装填された型内が減圧雰囲気であるので、溶融した粉末焼結材料の外表面から酸素が減少して導電層が形成され、隣り合う粉末焼結材料同士が接合可能な状態となる。かかる導電層形成工程のときからまたは導電層形成工程の後から対向電極には、互いに接近する方向に押圧力が作用するので、隣り合う粉末焼結材料同士が接合することになる。また、少なくとも導電層形成工程の後に対向電極間へ電流を供給すると、上記接合した粉末焼結材料の導電層を介して電流が流れ、焼結材料が発熱する。その発熱により粉末焼結材料を焼結温度にまで昇温させて所定時間保持させる。この保持時間の間、対向電極の押圧力により粉末焼結材料が押圧されているので、粉末焼結材料は焼結されて高密度のセラミックス成型品となる。よって、型内で粉末焼結材料を加熱しつつプレスするだけでセラミックス成形品の製造が可能となり、非常に短時間での製造が可能となるとともに、低エネルギー化が図れる。また、隣り合う粉末焼結材料が接合する導電層が溶融化状態であるため、金属酸化物とは異なり塑性流動が容易になり、潤滑剤が無くても焼結が可能となり、環境の保全化も向上させ得る。更に、本発明による場合には、粉末焼結材料の相変態温度を挟むように温度を上下させるので、例えば金属酸化物がジルコニアのとき、単斜晶系と正方晶系との相変態が起こる温度である1150℃より低い温度と高い温度とに粉末焼結材料を加熱制御するので、相変態を完全に終えるような熱履歴が可能となる。即ち、上記加熱制御を行わないときは、相変態が不完全になって部分的に単斜晶系と正方晶系が混在し、各相の体積が異なることより各相の間でのストレスに伴う割れや品質むらが発生する虞がある。これに対し、本発明のように加熱制御を行うと、全体を同じ相で変態させ得るので、割れや品質むらの発生を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に用いる熱加工装置の一例を示す一部切欠き斜視図である。
【図2】 図1のA−A線断面図である。
【図3】 図1の熱加工装置に備わった制御装置により実行される熱加工装置の運転制御の一構成例を示すブロック図である。
【図4】 本発明の基本方法で得られるジルコニア粉末の温度特性および圧力特性を示す図である。
【図5】 本発明において相変態が起こる温度を挟むように温度を上下させる加熱制御例を説明する図である。
【図6】 従来のHIP技術を用いたファインセラミックスの製造工程を示す工程図である。
【符号の説明】
M ジルコニア粉末(焼結材料)
10 熱加工装置
40 熱加工炉
50 対向電極
51 上部電極
52 下部電極
60 型
80 型加熱部材
100 真空ポンプ
Claims (1)
- 筒状をした型の内部に、金属酸化物からなる粉末焼結材料を一対の対向電極で挟持した状態で装填する装填工程と、
少なくとも該型内を減圧雰囲気とした状態で該型を加熱手段により加熱して、粉末焼結材料の外表面に、酸素減少による導電層を形成する導電層形成工程と、
少なくとも導電層形成工程の後に、該対向電極間への電流供給により、上記導電層が形成された粉末焼結材料を焼結温度にまで加熱し、かつ、導電層形成工程のときからまたは導電層形成工程の後から該対向電極を互いに接近する方向に押圧し、上記導電層を有する粉末焼結材料を焼結する焼結工程とを含み、上記粉末焼結材料を焼結温度にまで加熱するに際し、前記粉末焼結材料の相変態温度を挟むように1乃至2回以上温度を上下させることを特徴とするセラミックス成形品の製造方法。
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