JP3995603B2 - 円形構造物の補修方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プレストレストコンクリートや鉄筋コンクリートタンク等の円形構造物の補修方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
上水等の液体等を貯留するタンクとしては、壁体に作用する荷重が均等な内圧であることから、円形の構造物とすることによって壁体には円周方向に作用する引張力だけとなるため、多くの構造物に円形状のタンクが採用されてきた。構造物を構成する材料としては、耐久性に優れたコンクリ−ト材を用いるために、引張力の弱いコンクリ−トの弱点を補うために、鋼を組み合わせた鉄筋コンクリ−ト構造のものが多く採用されてきた。また、鉄筋コンクリ−ト構造は、コンクリ−トの乾燥収縮と引張強度の小さいことに由来するひび割れが発生することから、コンクリ−トに発生する引張応力を打ち消すために、あらかじめコンクリ−トの外壁面にPC鋼線を巻き付けて、圧縮応力を与えるプレストレストコンクリ−ト構造のタンクが、近年多く構築されてきている。PC鋼線の防錆方法としては、吹付器によってモルタル等を吹き付け、PC鋼線表面が大気と接触することを防止して防護する方法が採られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記したプレストレストコンクリ−ト構造のタンクは、あらかじめ導入された圧縮力によってひび割れ等のトラブルを発生することなく、コンクリ−トの耐用年数を経過しても健全であるが、PC鋼線を防護するモルタルが風雨にさらされて劣化し、PC鋼線が錆びて所定の応力を維持できなくなるという問題が発生している。また、鉄筋コンクリ−ト構造のタンクも、壁体自体が健全であつても耐震設計基準等の変更に伴い、構造物が現在の設計基準に合わないという問題が発生していた。
【0004】
このため、前記問題点を解決するための技術文献はないが、通常は、既設のコンクリ−トタンクの外周壁面に、新たに所定の厚さでコンクリ−トを打ち足して、壁体の外周面または壁体内に設置したPC鋼材によって、壁体にプレストレスを与えて設計基準を満足させる方法が実施されている。
【0005】
しかし、前記した技術は、新たに外側型枠や支保工を組み立て、コンクリ−トを打設して養生後に、プレストレスを導入するという作業工程となり、非常に工期が長くなるという問題や工事費用も大きくなるという問題がある。また、既設タンクのコンクリ−ト壁体自体が劣化していることは少なく、十分に活用できる健全なものであっても有効利用されることがないという問題があった。
【0006】
本発明は、円筒状に製作されたコンクリ−トタンク等を低コストで、効率よく補修できる方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、円筒状に製作されたプレストレストコンクリートタンクや鉄筋コンクリートタンクの円形構造物の補修方法において、
円筒構造物の平面上の中心点に対して、対向する外壁面に円周方向に移動可能に設置した鉛直方向に4条のPC鋼材を挿通して定着できる一対の定着金具と、前記一対の定着金具間の半周分だけ外周壁に沿って配置し、両端を一対の定着金具に定着した2条のPC鋼材と、前記一対の定着金具間の反対側の半周分だけ外周壁に沿って配置し、両端を一対の定着金具を通して緊張ジャッキに定着した2条のPC鋼材と、円形構造物の外壁面の円周方向に所定の間隔を置いて設置して前記PC鋼材を所定の高さに保持するための外ケーブル配置用スペーサーとにより構成され、前記緊張ジャッキを伸長させて2条のPC鋼材を緊張することによって、反対側の2条のPC鋼材にも緊張力を与える円形構造物の補修方法である。
【0008】
定着金具は、両端には鉛直方向に4本のPC鋼材を挿通させる4つの孔を有する支持板が固定板によって固結されて構成されている。一端の支持板の上下の2つの挿通孔には支圧板が設置され、他端の支持板の中間の2つの挿通孔には支圧板が設置されている。定着金具は、PC鋼材の緊張による大きな荷重を支持するため、比較的強度のある鋼材で製作されている。鉛直方向に配置される定着金具の間隔は、タンク壁体の円周方向に内圧によって引張力が発生しないように、PC鋼材の径や本数が決められ、それによって定着金具の配置も決まる。定着金具は、円周方向に移動可能なように、上部からの吊り設備等で支持されている。
【0009】
PC鋼材は、周りを樹脂等の被覆材で覆い、その中に樹脂等からなる充填材で充填したPC鋼材を使用することによって、緊張後にPC鋼材を防護するためのモルタルの吹き付け作業等を必要とせず、工期の短縮や工事費用の低減が行える。通常の裸線状態であるPC鋼材を使用する場合は、PC鋼材の緊張後にモルタル等の吹き付けによる表面防護工が必要となる。
【0010】
外周壁に配置されるPC鋼材は、タンクの外周壁の半周箇所には、一対の定着金具が設置されている。外周壁に配置されるPC鋼材は、半周分は各定着金具の一端の支持板の2つの挿通孔からPC鋼材を挿通させて、他端の支持板の挿通孔まで通して支持板の支圧板部で固定具で定着させる。他の半周分のPC鋼材は、各定着金具の一端の支持板の前記した挿通孔とは違う挿通孔からPC鋼材を挿通させて、他端の支持板の挿通孔に通す。前記支持板の挿通孔部には緊張ジャッキを設置して、緊張ジャッキ内にPC鋼材を通して頭部でPC鋼材を固定する。
【0011】
PC鋼材の緊張は、一対の定着金具に設置した緊張ジャッキを同時に伸長させることにより、半周分のPC鋼材は緊張される。半周分のPC鋼材が緊張されることにより、可動式となっている定着金具が移動することによって、他の半周分のPC鋼材も緊張されることとなり、緊張作業が非常に効率よく行えるようになる。
【0012】
外ケ−ブル配置用スペ−サは、壁体の高さに合わせた鋼板にPC鋼材の配置に合わせてカギ型の棚金具を取り付け、タンクの外周壁の円周方向に所定の間隔を置いて設置される。外ケ−ブル配置用スペ−サは、ホ−ルインアンカ−等によって壁面に固定される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を基に説明する。図1は、本発明の円形構造物の補修方法を説明する模式図である。円形構造物であるコンクリ−トタンクの外壁面の半周箇所には、一対の定着金具1が円周方向に移動可能となるように設置されている。定着金具1は、両端に鉛直方向にPC鋼材であるPC鋼線2が4条挿通できる挿通孔を有した支持板4が、固定板5によって固結されている。PC鋼線2の配置は、2条づつのセットで外周壁に沿って半周分づつ配置し、一方は一対の定着金具1の支持板4の中間の2つの挿通孔6からPC鋼線2の端部を挿通させて、他端の支持板4の挿通孔6まで通して支持板4の支圧板7部で固定具14によりPC鋼線2を定着する。他方は一対の定着金具1の支持板4の上下の2つの挿通孔6からPC鋼線2の端部を挿通させて、他端の支持板4の挿通孔6を通して支持板4に設置した緊張ジャッキ3に固定する。
【0014】
次に、図1をもとにPC鋼線2の緊張方法について説明する。定着金具1へのPC鋼線2の取り付けが完了すると、一対の定着金具1にセットされた緊張ジャッキ3を伸長させて半周分のPC鋼線2を緊張させる。PC鋼線2の緊張によって、定着金具1は緊張ジャッキ3と反対側に移動し、それに伴って反対側の半周分のPC鋼線2も緊張されることとなる。このように、従来技術のように半周分づつの2回の緊張作業が必要でなくなり、1回の緊張作業で全周のPC鋼線2の緊張が行え、工期の短縮が容易になった。
【0015】
図2は、本発明の定着金具を説明する平面図である。両端に挿通孔6を有する支持板4が固定板5によって固結されている。挿通孔6の大きさは、外周壁に配置されるPC鋼線2が挿通できる大きさとなっている。PC鋼線2の端部を定着する支持板4側には、緊張力を広く支持板4に分布させるために、支圧板14が固定されている。
【0016】
図3は、本発明の定着金具を説明する正面図である。定着金具1は、PC鋼線2による緊張力が定着金具1に均等に働くように、PC鋼線2を2条づつセットで配置する方法が採用されている。本実施形態では、中間部は左側よりPC鋼線2の端部を挿通孔6に挿通し、右側の支持板4に設置した支圧板7に固定具14により定着する。一方、上下部は右側よりPC鋼線2の端部を挿通孔6に挿通し、左側の支持板4に設置した支圧板7に固定具14によって定着されて、定着金具1には均等な緊張力が働くようになっている。
【0017】
図4は、本発明の外ケ−ブル配置用スペ−サの説明図である。外ケ−ブル配置用スペ−サの構成は、タンク等の壁体の高さに合わせた鋼板8に、外周壁に配置されるPC鋼線2の高さに合わせてカギ型の棚金具9が固設されている。外ケ−ブル配置用スペ−サの円周方向への配置は、PC鋼線2が自重によって垂れない間隔で設置される。
【0018】
図5は、外ケ−ブル配置用スペ−サの鋼板の設置方法を説明する詳細図である。外周壁に打ち込んだホ−ルインアンカ−11を、鋼板8の上部に設けた孔に通してナットで締め付けることによって、外ケ−ブル配置用スペ−サを外周壁に固定する。鋼板8と外周壁面の間には、均等な接触が行えるようにゴムマット10が挿設されている。外ケ−ブル配置用スペ−サの設置条件は、円形構造物の円周方向に所定の間隔を置いて設置されるが、円形構造物の外壁面であるコンクリ−ト表面の状況によって、その間隔を変化させてPC鋼線2の力を直接外壁面に伝達させたり、外ケ−ブル配置用スペ−サの鋼板8から伝達させる方法が選択される。
【0019】
図6は、棚金具を説明する詳細図である。鋼板8の表面には、計画されたPC鋼線2の高さに合わせてカギ型の棚金具9が固設されている。外ケ−ブル配置用スペ−サを外壁面に設置することで、その棚金具9にPC鋼線を乗せるだけで正確な配置が行える。
【0020】
図7は、固定具を防護するためのキャップを説明する詳細図である。定着金具1において、PC鋼線2の緊張が完了すると、固定具14によりPC鋼線2を支圧板7に定着する。そして、固定具14を覆うようにキャップ12を支圧板7に固定し、キャップ12に設けた充填孔13から樹脂材15を充填してPC鋼線2端部の錆び付き等を防止する。
【0021】
本実施形態では、キャップ12内の樹脂材15の充填を注入方式で開示したが、予めキャップ12内に樹脂材15を満たしておき、固定具14に嵌設する方法を用いることも可能である。
【0022】
【発明の効果】
上記したように、本発明の円形構造物の補修方法により、従来技術のように既設のコンクリ−トタンク等の外周壁面に、新たに所定のコンクリ−トを打ち足して、壁体の外周面または壁体内に設置したPC鋼材でプレストレスを与える作業等はなくなり、既設の円形構造物に直接PC鋼材の緊張作業を、本発明の定着金具によって効率よく行うことが可能となった。このため、既設構造物を活用して工期の短縮と工事費の低減を可能とした。
【0023】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の円形構造物の補修方法を説明する模式図である。
【図2】本発明の定着金具を説明する平面図である。
【図3】本発明の定着金具を説明する正面図である。
【図4】本発明の外ケ−ブル配置用スペ−サの説明図である。
【図5】外ケ−ブル配置用スペ−サの鋼板の設置方法を説明する詳細図である。
【図6】棚金具を説明する詳細図である。
【図7】固定具を防護するためのキャップを説明する詳細図である。
【符号の説明】
1 定着金具
2 PC鋼線
3 緊張ジャッキ
4 支持板
5 固定板
6 挿通孔
7 支圧板
8 鋼板
9 棚金具
10 ゴムマット
11 ホ−ルインアンカ−
12 キャップ
13 充填孔
14 固定具
15 樹脂材
Claims (1)
- 円筒状に製作されたプレストレストコンクリートタンクや鉄筋コンクリートタンクの円形構造物の補修方法において、
円形構造物の平面上の中心点に対して、対向する外壁面に円周方向に移動可能に設置した鉛直方向に4条のPC鋼材を挿通して定着できる一対の定着金具と、前記一対の定着金具間の半周分だけ外周壁に沿って配置し、両端を一対の定着金具で定着した2条のPC鋼材と、前記一対の定着金具間の反対側の半周分だけ外周壁に沿って配置し、両端を一対の定着金具を通して緊張ジャッキに定着した2条のPC鋼材と、円形構造物の外壁面の円周方向に所定の間隔を置いて設置して前記PC鋼材を所定の位置に保持するための外ケーブル配置用スペーサーとにより構成され、前記緊張ジャッキを伸長させて2条のPC鋼材を緊張することによって、反対側の2条のPC鋼材にも緊張を与えることを特徴とする円形構造物の補修方法。
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