JP3994200B2 - 半音階行列鍵盤 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、一種類の鍵を台の上に縦横に整然と並べたボタン式(タイプライター型)の楽器鍵盤の配列と相互の音程関係に関する
【0002】
【従来の技術】
現在普及しているピアノ・オルガンの鍵盤は、ハ長調の音階に含まれる七音と残りの五音を差別化して配置しているため、十二ある調子ごとに指使いが違い、調子記号が増える程指使いが難しくなる移調の煩わしさがあった。また広い域を滑らかに演奏するためには指使いの独特の制約があり、数オクターブの音域を移動してあるいは跳躍しての速く正確な演奏には高度な技術が必要であった。今までの鍵盤楽器を移調の煩わしさから開放する方法として、ボタン式アコーディオンの鍵盤やヤンコ式鍵盤があるが、音程配置が独特で習得に難があり他に応用ができない事もあって、一般化していない。
近年、電子音源はコンピュータ技術の発達により高性能多機能化しているがその操作装置として、鍵盤機構は最も簡便確実ではあるが、演奏の手段としての従来の楽器鍵盤では電子音源の能力に対して不足が多い。
また、今日までに商品化されている演奏装置としてギターの機能を電子化した形態のものがある。この種の製品はギター奏者が操作する事を前提としているため、ギター奏法にかなり習熟した上で個々の製品の特性や演奏上のこつを学習する事が必要で、まだ共通の規格や基準となるメソードが確立しない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、西洋音楽において平均率が確立する以前より慣習的に使われてきた鍵盤の形式・形状や配列を一新し、従来は不可能であったり高い技術を要した演奏上の制約を克服するよう工夫したものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
以下、図式化した具体的な実施例をもって本発明の特徴を説明する。
図面1は本発明において
(イ)鍵盤列を横方向に設定し
(ロ)隣接する列の隣接する鍵同士の音程差を6半音として
(ハ)左から右、手前から奥の方に音程が高くなるように配列した実施例のC2からB6までの5オクターブ分の鍵盤列の見本の一部である。
いま、図面1の鍵の横の並びを列として、列の中の鍵の場所を桁とする。図の鍵の縦の並びを桁数が同じであると表記する。
本発明において隣の列の最も近い鍵との音程差を6半音とすると、一列が6桁の鍵盤列を重ねてゆくと十二音は総てその中に含まれる。
図面1においては、6桁10列の範囲にC2からB6まで5オクターブの半音列が入る。このように必要な音域を総て6桁の鍵盤列に収めると従来は横方向のみであった音域移動を効率良く奥行きの方向に置き換えることができる。本発明の音程配列は列を有棹弦楽器の弦、桁をフレットと見なすと理解しやすく、実施例の隣接する列の隣接する鍵同士の音程差が7半音ではバイオリン・マンドリン類の、5半音ではコントラバスやベースギターなどの標準的な調弦に準じて考えられるのでそれらの経験者には理解し易い利点がある。また、ギターの標準的な調弦は音程差が一定でない部分があるが5半音が基本と考えられる。
しかし有棹弦楽器では広い音域移動の場合はポジションを何度も横に移る必要があるが本発明では基本的に不要である。また、鍵盤列の間の音程差が一定でない部分があるとその部分でポジションがずれるため、その近傍のみの特殊な運指や和音の変形に習熟せねばならず、咄嗟の転調や即興に障害となる。音程差が総て一定であれば鍵盤全域を統一した法則性で音程を把握できる。
そのほかにも7半音は完全五度、5半音は完全四度の音程にあたるため一本の指で二鍵同時に弾いて音に厚みを出すテクニックが使える利点がある。
ただし、本発明の特徴は従来は横の動きのみだった音域移動を奥行きの方向に置き換える形式のため、図面1のような6半音の場合一列おきの同桁の鍵同士の音程差は完全八度となりオクターブ関係にある鍵が同桁に揃うが、7半音では長九度、5半音では短七度となりオクターブが二桁づつずれてゆく。そのため何オクターブにも渡って同じ音型で上下する演奏の場合、6半音は同じ運指で縦にポジションを変えずに演奏できるが、7半音や5半音ではポジションを変えずに運指を変えるか、運指を変えずにポジションを変えるかを選択する必要がある。したがって広い音域を扱う場合は6半音が簡便といえる。
いま、片手分の運指を考えると、一つの調子について6桁内の縦の動きで音型を練習すると、音域に不足がなければ6×2−1の11桁の鍵盤列があると他の調子をポジションを変えて同じ運指で演奏ができる。そして、両手分の運指を考えると、右手分の6桁+左手分の6桁で12桁内の縦の動きで音型を練習すると最低11+6の17桁の鍵盤列で12の調子を同じ運指で演奏ができることになる。そして、本発明では1種類の運指を覚えれば12の調子の旋律や和音がポジションを変えてそのまま演奏できる上に、ひとつの旋律や和音に対して数種類の運指があるため演奏の前後のつながりにより効率的な運指を選択できる。
従来の鍵盤では音程が一直線上に並び、鍵がジグザグに配置してあるため、音域移動のときの指詰まりの問題がある。しかし、本発明では桁数を多くして中央寄りのポジションで常に音程の高い鍵を左奥、低い鍵を右手前に置いて演奏できるため指詰まりを回避できる。
本発明では片手で同時に非常に離れた音程を押さえることが可能で、図面1の鍵の一個の大きさを縦横ともに従来の鍵盤の白鍵の幅と同じ長さの正方形に仮定すると4オクターブは小柄な女性でも楽にとどく距離にある。したがって従来は片手ではできなかったオープンハーモニーを取る事ができる。離れた音域に移る場合も容易で音が途切れない。
ストライド奏法もベースを親指で取り、コードを他の指で弾くことにより容易になる。
ベースは音程が低いほど深みがあり効果的であるが、楽理上和音は低音に限界があり、従来は奏法上の難点であった。本発明ではその音程差を広くして16ビートなどの複雑なリズムで鮮明な効果が可能となる。また、その場合に両手の役割を反対にして左手で旋律、右手で伴奏を弾くことも容易で、従来の鍵盤では両手を交差させるため制限が多い。
本発明では縦に音域移動するため、桁数が十分あれば両手の音域がぶつかるような音型でも手を交差させたり重なることが無い。
図面1では、6桁10列の鍵盤列を1組として音階がつながるように階段状に一列づつずらして3組連結してある。したがって、C2からB6までの総ての音程の鍵が3個づつあることになる。もちろん、この鍵盤列は必要であれば同じパターンで何組でも増設することができる。オルガンでは鍵盤を二段、三段と階段のように配置するが本発明では横に隙間なく並べて一台の鍵盤として扱ったり桁数で分割して音色を振り分けたりすることができる。
本発明では同じ音程の鍵が複数あるため、その内の2鍵を交互に弾くことにより片手でも弦楽器や打楽器のようなトレモロが容易に演奏できる。
本発明では従来の鍵盤では不可能なクロマチックグリッサンドが容易にできる。そして6+12桁あると任意の音程から1オクターブのクロマチックグリッサンドが可能である。その場合、6桁以内で和音を取っていれば和音で1オクターブのクロマチックグリッサンドができる。鍵盤列の桁数が多ければグリッサンドの幅も増える。
【0005】
【作用】
本発明は電子音源の演奏用に、従来の鍵盤に無い高度な適性を有する。
従来の鍵盤では複数の音色を振り分けるため鍵盤を分割すると当然音域が比例して減っていくが、本発明では元々音域に対して鍵盤数が多いため分割数と音域が比例しない。図面1を6桁ずつ縦に分割しても奏法に制限は加わるが音域は減らない。分割することを前提に桁数を多く設定することもできる。
また、横の分割では音域は減るが片手で多くの鍵に指が届くため親指でベースやカウンターメロディを取って他の指で別の音色でコードや主旋律を弾くなど有機的な演奏ができる。
さらに、一列づつ別の音色を割当て、たとえば和音を上からTp/As/Ts/TbでブラスあるいはFl/Ob/Cl/Fgで木管のパートのハーモニーを組み立てできる。
管楽器は音域によって倍音が異なるため同属であっても楽器の大きさで同じ音程の音色は性質が違う。しかし従来の一列の鍵盤では広い音域に割り当てるには一部分を切り取ってつぎはぎする他はなかった。本発明では数多い鍵盤列に同属楽器の全音域あるいはその大半を割り当て、効果的に組み合わせて演奏に取り入れることができる。
従来の鍵盤では一度に弦楽器の総てのポジションを割り当てることができないが、本発明では一列に一弦を割当てさらに一列ごとに特殊効果を設定して従来の鍵盤では不可能な演奏ができる。
一列ごとにシングルトリガーにしてハンマリングオン・プリングオフ・グリッサンドのニュアンスが出せる。アルペジオに取り入れると効果がある。
一列ごとに独立したピッチベンダーを設定して二弦同時に弾いて片方だけをベンドする効果が再現できる。
一列ごとに独立したポルタメントを設定して、一列ごとに一鍵づつ押さえて和音を取り横に移動してペダルスチールに似た効果が生み出せる。
本発明では弦楽器の奏法の模倣性に優れているだけでなく元の楽器では不可能な音型や強調した効果ができる。
【0006】
【実施例】
図面1では鍵は隙間無く並んでいるが上下左右に隙間があっても良く、隙間があれば鍵を小さくして全体をさらにコンパクトにできる。また鍵の上面は縦長でも横長でも良く、丸や他の形でも良い。イニシャルタッチの検出が不要であれば薄いタッチスイッチでも良いし、機械的にトラッカーやアクションと繋ぐ場合はタイプライターのように梃子の先に鍵を付けてもよい。
本発明では鍵一個の機構や機能は従来の技術が応用できるため、従来の鍵盤と互換性を持たせれば、置き換えて音源部と接続できる。ピアノやパイプオルガンと機械的に接続するには技術的な課題があるが、電気的な接続であれば一台の鍵盤で複数のピアノを同時に操作することも難しくない。
【0007】
【発明の効果】
本発明は従来の鍵盤と違い、調子が変わる度に新しい指使いを覚えずにすむので習得が速く、鍵盤楽器の不得手な器楽奏者向きであり、作曲や編曲、楽理の学習や研究にも簡便である。
原理的に調性に影響されないため現代の転調の多い音楽や無調音楽に適し、音域や音型の自由度が高いため多声の演奏にも適している。
従来の鍵盤では通常、六種類の白鍵と黒鍵の計七種類の形状の異なる鍵を必要な比率で製造し規則正しく並べねばならず、白鍵は元が細く長い端が宙に浮いているため事故で折れる場合があった。本発明では従来に比べて小さな一種類の形状の鍵のみでよいため生産効率が高く、破損の危険性も少ない。
単純に鍵盤部の大きさだけを比べても、本発明は従来の鍵盤と同じ音域分でも体積を少なくすることが可能で特に、幅を狭くできる。スペースを取らないため生産・保管・輸送などのコストが抑えられる。利用者の持ち運びや設置に簡便で融通性が高い。
鍵盤を含む従来の演奏装置では日々高性能化していく電子音源の能力を十分に引き出せないため演奏におけるシーケンサー類の比重が増大しつつある。
本発明は電子音源の多才な能力をできるかぎりリアルタイムに引き出して演奏する楽しみを機械から人間の手に取り戻す効果を持つ。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の配列見本図
Claims (1)
- 楽音の発生開始と音程を直接に決定する鍵盤楽器の鍵を、演奏台上に、同じ大きさ同じ形状の物を一直線上に等間隔に並べた鍵盤列をそれぞれが互いに平行になり更にその中の任意の鍵には隣接する一列の中に最も近い鍵が一個となるように複数列を等距離に配置し、その鍵に対し同じ列の隣接する鍵との音程差が半音となり更に隣の列の最も近い鍵との音程差が常に6半音となる音程配列方法
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