JP3993193B2 - 車両のエンジン自動停止装置 - Google Patents

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Description

この発明は、車速やブレーキペダル操作等の車両の運転状況に応じてエンジンを自動的に停止させる車両のエンジン自動停止装置に関するものである。
近年、燃料消費の低減と排気エミッションの改善等を目的として、車両が所定の運転条件下にあるときにエンジンを自動的に停止するエンジン自動停止装置が開発されている。このエンジン自動停止装置は、例えば、ブレーキペダルが踏み込まれ、かつ、車速が基準車速以下になったことを条件にエンジンを自動停止するようになっている。
特開2000−175304号公報
ところで、エンジンの動力が自動変速機を介して車輪に伝達される車両においては、車速の低下に伴ってエンジンの回転速度が低くなると、そのエンジンによって駆動されるオイルポンプの発生油圧が低くなる。このため、温度上昇による作動油の粘性低下等の条件が重なると、自動変速機内のクラッチやブレーキ(動力伝達機構)を操作するための油圧が基準値以下に低下し、それによってクラッチやブレーキの締結状態が不安定になりやり易い。
したがって、このような自動変速機を備えた車両にエンジン自動停止装置が適用された場合には、車速が基準車速以下の低速になってエンジンが自動停止するときに、温度上昇によって自動変速機内の作動油の粘土が低下すると、自動変速機内のクラッチやブレーキの締結状態が不安定になり、このときショックを発生することが懸念される。
しかし、このショックを嫌ってエンジンの自動停止を中止すると、車速が低下してもエンジンが燃焼を続けることになるため、燃費性能の向上やエミッションの改善を充分に図ることができない。
そこでこの発明は、自動変速機内の作動油の温度が高い状況下においても、不具合なくエンジン自動停止を実行できるようにして、充分な燃費の低減とエミッションの改善を図ることが可能な車両のエンジン自動停止装置を提供しようとするものである。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、エンジン(例えば、実施形態におけるエンジン1)の動力が自動変速機(例えば、実施形態における自動変速機5)を介して車輪(例えば、実施形態における車輪7)に伝達される車両に搭載され、車速が基準車速(例えば、実施形態における基準車速V1)以下になったことを一つの条件としてエンジンを自動停止する車両のエンジン自動停止装置であって、前記自動変速機内の動力伝達機構が、エンジン駆動されるオイルポンプ(例えば、実施形態におけるオイルポンプ22)の油圧によって操作されるものにおいて、前記自動変速機を操作する作動油の温度を監視し、その作動油の温度が高いほど前記基準車速を高く変更するようにした。
この場合、作動油の温度が上昇してその作動油の粘度が低下する傾向になると、作動油の温度上昇に応じて基準車速が高く変更される。これにより、作動油の粘度の低下に相反してエンジン自動停止時のオイルポンプの回転数が高くなり、エンジンの自動停止が開始されるときの作動油の圧力が高く維持される。したがって、エンジン停止時に自動変速機内のクラッチ等の動力伝達機構は不安定になり難くなる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記作動油の温度に応じた基準車速の変更は、エンジンと自動変速機の間に介装されたロックアップクラッチ(例えば、実施形態におけるロックアップクラッチ8)が締結状態にあることを一つの許可条件として実行するようにした。
この場合、ロックアップクラッチが締結されずトルクコンバータ等によってショックを吸収し易い状態にあるときには、必要外の基準車速の変更を無くすことが可能になる。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記作動油の温度とその温度に対応する基準車速の関係は、自動変速機の変速比または変速段に応じて設定するようにした。
請求項1に記載の発明によれば、作動油の温度が上昇するに従ってエンジン自動停止が開始される基準車速が高くなるため、エンジン自動停止時における動力伝達機構の操作油圧が高く維持され、自動変速機でのショックがより発生し難くなる。
さらに、この発明においては、作動油の温度上昇時にエンジン自動停止を中止するものではないため、燃費性能の向上とエミッションの改善を確実に図ることができる。
また、請求項2に記載の発明によれば、ロックアップクラッチが締結されずトルクコンバータ等によってトルクを吸収し易い状態にあるときには、不要な基準車速の変更を行わないため、より低速度でエンジンの自動停止を実行させることができる。
また、請求項3に記載の発明によれば、自動変速機の変速比や変速段に応じた最適な基準車速の変更を行うことができる。したがって、各変速段でより低速度でエンジン自動停止を実行することができるため、燃費性能の向上とエミッションの改善を図るうえで有利となる。
次に、この発明の一実施形態を、図1〜図4を参照して説明する。
図1は、この実施形態の車両の動力伝達系を示す全体構成図である。
この実施形態は、駆動源としてエンジン1とモータ2を併せ持つハイブリッド車両に、この発明にかかるエンジン自動停止装置を適用したものである。このハイブリッド車両は、発電機を兼ねるモータ2がエンジン1に直結されて、エンジン1の駆動補助と制動時にエネルギー回生を行う所謂パラレル式のものが採用されている。
エンジン1とモータ2の動力が取り出される駆動軸3は、トルクコンバータ4を介して多段式の自動変速機5に連結され、自動変速機5の出力軸6は図示しないディファレンシャル機構を介して左右の駆動車輪7に連結されている。なお、図1では一方の車輪7のみを模式的に示している。また、トルクコンバータ4は、作動油を媒体とするトルク伝達と、摩擦係合による機械連結式のトルク伝達とを切り換えるためのロックアップクラッチ8を備えている。このロックアップクラッチ8の締結と解除は自動変速機5の変速操作と同様に油圧制御回路9から供給される制御油圧によって行われる。
エンジン1は、レシプロタイプの多気筒エンジンであり、各気筒での燃料噴射と点火は、点火プラグと燃料噴射弁が一体に組み込まれた燃焼操作ユニット10によって行われる。この燃焼操作ユニット10は、車両の運転状況に応じて電子制御式のコントローラ11(ECU)によって制御される。燃焼操作ユニット10は、コントローラ11による制御によって通常の運転状況下でエンジン1の燃焼を最適に調整するが、車両状態と運転操作が所定の自動停止条件を満たしたときにエンジン1を自動停止させ、その後に自動再始動条件を満たしたときにエンジン1を自動的に再始動させる。この実施形態では、燃焼操作ユニット10とコントローラ11がこの発明にかかるエンジン自動停止装置を主として構成している。
また、エンジン1の吸入空気量を調整するスロットル(図示せず)は電子制御スロットルによって構成され、アクセルペダルの踏み込み量に応じたバルブ開度がコントローラ11によって制御されるようになっている。
コントローラ11の入力部には主要な検出手段として以下のようなものが接続されている。
(a) ブレーキペダルが踏み込まれたか否かを検出するブレーキスイッチ12
(b) アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルペダルセンサ13
(c) エンジン回転数を検出するためのクランク角センサ14
(d) 自動変速機5の入力軸15の回転数を検出する入力軸回転センサ16
(e) 車速を検出するための車速センサ17
(f) 自動変速機5のシフトポジションを検出するシフトポジションセンサ18
(g) バッテリ19の残容量を検出する残容量センサ(図示せず)
(h) 自動変速機5内の作動油の油温を検出する油温センサ20
モータ2は、PDU(パワードライブユニット)21を介してバッテリ19に接続され、コントローラ11によるPDU21の制御によってバッテリ19の電力によって駆動軸3を回転させる。また、車両の制動時にはモータ2は発電機として機能し、コントローラ11によるPDU21の制御によって回生エネルギーをバッテリ19に充電する。
このハイブリッド車両は、油圧制御回路9に対する油圧供給源として、機械式オイルポンプ22と電動オイルポンプ23を備えている。機械式オイルポンプ22はエンジン1の回転軸に連係され、エンジン1またはモータ2の駆動力によって作動する。また、電動オイルポンプ23は、ポンプドライバ24を介して12Vの補助バッテリ25に接続された電動モータ26によって駆動される。この電動オイルポンプ23は、機械式オイルポンプ22がエンジン1またはモータ2の動力によって通常に作動しているときには基本的に停止しており、駆動軸3の回転数の低下によって機械式オイルポンプ22による充分な吐出量が得られなくなったときに、コントローラ11による制御によって駆動される。
また、油圧制御回路9は、シフトレバー(図示せず)に連動して前進、中立、後退の基本となる油路を選択切り替えするマニュアルバルブ(図示せず)と、作動油の圧力や細部の油路の切り替えを制御する他の複数のバルブ(図示せず)を備えており、車両の運転状況に応じてこれらのバルブがコントローラ11によって制御され、それによって自動変速機5内のクラッチやブレーキの操作圧を調整する。これにより、自動変速機5では変速段の変更や動力の断切が行われる。また、油圧制御回路9は、前述のように車両の運転状況に応じたコントローラ11によるバルブ制御により、トルクコンバータ4のロックアップクラッチ8に適宜制御油圧を供給する。
このハイブリッド車両における基本的なエンジン自動停止制御(以下、「基本自動停止制御」と呼ぶ。)は、次の(1)〜(3)の条件をすべて満たしたときにコントローラ11によって実行される。
(1) ブレーキスイッチ12がON
(2) アクセルペダルセンサ13による検出踏み込み量が0
(3) 車速が制御許可車速を一度超え、かつ現在の車速が基準車速V1以下(図2参照)
ただし、この実施形態の場合、制御許可車速と基準車速V1は同値に設定されている。しかし、制御許可車速と基準車速V1は必ずしも同値に設定する必要はなく、制御許可車速を基準車速V1よりも大きく設定するようにしても良い。
また、エンジン自動停止制御が行われた後のエンジン再始動制御は、次の(4),(5)の条件を同時に満たしたときにコントローラ11によって実行される。
(4) ブレーキスイッチ12がOFF
(5) アクセルペダルセンサ13による検出踏み込み量が所定値以上
なお、ここで述べた基本自動停止制御やエンジン再始動制御の条件は一例であり、さらに別の条件を付加することも可能である。
ところで、この実施形態のエンジン自動停止装置は、前述の基本自動停止制御をベースに、エンジン自動停止を許可する基準車速V1を自動変速機5内の作動油の温度に応じて変更するようになっている。即ち、コントローラ11内の記憶部には、自動変速機5の変速段毎に図3に示すような車速と油温の関係を設定したテーブルが記憶されており、エンジン自動停止を開始するときに油温センサ20によって作動油の温度を読み込み、このとき、前記テーブルを参照して検出温度に対応する車速を求める。そして、ここで求めた車速を基準車速V1に代入し、基準車速V1を作動油の温度に応じた値に変更する。なお、前記テーブルにおける常用温度範囲での車速と油温の関係は、基本的に油温の上昇に応じて車速が略比例的に上昇するように設定されている。
図4は、この実施形態のエンジン自動停止制御を示すフローチャートである。以下、このフローチャートに従って具体的制御について説明する。
S101では、ブレーキスイッチ12とアクセルペダルセンサ13の信号を基にブレーキペダルが踏み込まれ、かつアクセルペダルが解放されていること(条件(1),(2))を判断し、この両条件を満たすときにはS102に進み、満たさないときには処理を抜けてエンジン1の自動停止を行わないようにする。
S102では、現在の自動変速機5の変速段と作動油の温度に対応する基準車速V1を、記憶部の車速−油温テーブルを参照して決定し、つづくS103において、現在の車速がS102で決定した基準車速V1以下であるかどうかを判断する。そして、この103において、基準車速V1以下でないと判断したときにはエンジン1の自動停止を行わず、基準車速V1以下と判断したときにはエンジン1を自動停止して制御を終了する。
以上のように、この実施形態のエンジン自動停止装置は、自動変速機5内の作動油の温度が上昇すると、その上昇に応じて基準車速V1が高まるように変更されるため、温度上昇と共に作動油の粘度が低下しても、エンジン自動停止時における自動変速機内動力伝達機構(クラッチやブレーキ)の締結圧を高く維持することができる。即ち、このエンジン自動停止装置では、温度上昇に伴う作動油の粘度低下によって起こる締結圧の低下分は、エンジン自動停止の開始速度(基準車速V1)を高め、エンジン停止時の機械式のオイルポンプ22の吐出圧を高めることによって相殺することができる。したがって、このエンジン自動停止装置を用いた車両においては、エンジン自動停止時に自動変速機5内のクラッチやブレーキの締結が不安定になる不具合を無くすことができるため、締結の不安定化によって起こるショックを未然に防止することができる。
また、このエンジン自動停止装置は、自動変速機内の作動油の温度が上昇してもエンジン自動停止の開始速度(基準車速V1)を高めるだけで、エンジン自動停止自体を中止するものではないため、燃費性能の向上と排気エミッションの抑制を図るうえでは有利となる。
つづいて、この発明の他の実施形態を、図5を参照して説明する。
この実施形態の車両の概略構成は前述した実施形態と同様であり、図面で示せば図1と同じになる。したがって、ここでは車両の構成は図1を参照し、具体的な説明は省略するものとする。
図5は、この実施形態のエンジン自動停止装置の制御を示すフローチャートである。この装置は、自動変速機内の作動油の温度に応じた基準車速を決定する処理を行う前に、別の条件を付している点で異なっている。
即ち、この装置による制御は、S102において、車速−油温テーブルを参照して作動油の温度に応じた基準車速V1を決定する前に、S120において、トルクコンバータ4内のロックアップクラッチ8が締結状態にあるか否かを判断し、締結状態にあると判断したときにだけS102の処理を行い、締結状態にないと判断したときにはエンジン自動停止を不許可にするようになっている。なお、ロックアップクラッチ8の締結・非締結の判断は、例えば、エンジン1側のクランク角センサ14と自動変速機5側の入力軸回転センサ16の検出信号を基にして判断するようにすれば良い。
したがって、この実施形態のエンジン自動停止装置による制御によれば、ロックアップクラッチ8が非締結で、エンジン1と自動変速機5がトルクコンバータ4内の作動油を介して連結されているときには、作動油の温度に応じた基準車速V1の変更は行わないようになる。つまり、エンジン1と自動変速機5がトルクコンバータ4内の作動油を介して連結されているときには、エンジン停止時に自動変速機内で僅かなショックが生じても、トルクコンバータ4内の作動油によってそのショックを吸収することができる。よって、この実施形態の装置においては、基準車速V1の引き上げ変更をできる限り無くし、燃費性能の向上とエミッションの抑制をより一層図ることができる。
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、この発明にかかるエンジン自動停止装置をエンジンとモータを備えたハイブリッド車両に適用したが、動力源としてエンジンのみを備えた車両に適用することも可能である。また、上記の実施形態においては、エンジン動力を車輪に伝達する変速機として多段式の自動変速機を採用したが、無段式の自動変速機を採用することも可能である。この場合、作動油の温度とその温度に対応する基準車速の関係は、例えば、自動変速機の変速比に応じて演算等によって求めるようにすれば良い。
この発明の一実施形態のエンジン自動停止装置を搭載したハイブリッド車両の概略構成図。 同実施形態のエンジン停止時における車速と、エンジン回転数と、ブレーキ信号の関係を示すタイムチャート。 同実施形態における自動変速機の変速段毎の車速−油温テーブル。 同実施形態のエンジン自動停止時における制御を示すフローチャート。 この発明の他の実施形態のエンジン自動停止時における制御を示すフローチャート。
符号の説明
1…エンジン 5…自動変速機 7…車輪 8…ロックアップクラッチ 22…オイルポンプ V1…基準車速

Claims (3)

  1. エンジンの動力が自動変速機を介して車輪に伝達される車両に搭載され、
    車速が基準車速以下になったことを一つの条件としてエンジンを自動停止する車両のエンジン自動停止装置であって、
    前記自動変速機内の動力伝達機構が、エンジン駆動されるオイルポンプの油圧によって操作されるものにおいて、
    前記自動変速機を操作する作動油の温度を監視し、その作動油の温度が高いほど前記基準車速を高く変更することを特徴とする車両のエンジン自動停止装置。
  2. 前記作動油の温度に応じた基準車速の変更は、エンジンと自動変速機の間に介装されたロックアップクラッチが締結状態にあることを一つの許可条件として実行することを特徴とする請求項1に記載の車両のエンジン自動停止装置。
  3. 前記作動油の温度とその温度に対応する基準車速の関係は、自動変速機の変速比または変速段に応じて設定することを特徴とする請求項1または2に記載の車両のエンジン自動停止装置。

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