JP3989536B2 - ガラニンレセプター、核酸、形質転換細胞、およびそれらの使用 - Google Patents

ガラニンレセプター、核酸、形質転換細胞、およびそれらの使用 Download PDF

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Description

本発明は、新規のポリペプチド、およびそれらの発現を可能にさせる遺伝物質に関する。より具体的には、本発明はガラニンレセプター活性を有する新規のポリペプチドに関する。
ガラニンは哺乳類における29のアミノ酸(ヒトでは30のアミノ酸)の汎存性神経ペプチドであり、そして雑多な生物学的機能、すなわち(i)内分泌物質の分泌(インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン、成長ホルモンなど)、(ii)消化管の筋緊張、(iii)行動の調節(食物摂取、疼痛刺激知覚、学習、記憶、痛覚など)を、中枢神経系レベルでの神経調節効果を通して制御する。これはガラニンのすべての作用を示すものでないが、動物において最も頻繁に証明されており、このことにより、この神経ペプチドに薬理学者が大変な興味を示してきていることが説明される。選択的分子(ガラニンのアゴニストもしくはアンタゴニスト)は、内分泌学、神経学、および精神医学における有望な薬理学的作用物質を構成するであろう(Bartfai et al.、(1992) TIPS 13、312−317)。
ガラニンの作用メカニズムの研究により、ガラニンは特異的膜レセプターを介して作用することが示される。このレセプターの生化学的および分子的特性決定により(Chen et al.、(1993) PNAS 90、3845−3849、Fisone et al.、(1989) Eur.J.Biochem. 180、269−276)、このレセプターはG蛋白質に結合するレセプターファミリーに属することが示される。標的組織に依存してこのペプチドは、アデニルシクラーゼを阻害するか、細胞内カルシウムを減少させるか、電位−依存性カルシウムチャネルを遮断するか、あるいはATP−感受性カリウムチャネルを活性化させる。ガラニンおよびキメラペプチドのC−およびN−末端断片による構造−活性関連性の調査により、(1)組織にかかわりなくそのペプチドのいずれの部分配列も完全な活性を取得するには不十分であり、(2)組織に依存してガラニンの最初の2つのN−末端アミノ酸およびC−末端ドメイン16〜29はその活性にとって必ずしも必須であるとは限らないことが既に示されている。これらの所見により、ガラニン作動性レセプターのサブタイプの存在が示唆される。
本発明は、ヒトのガラニン作動性レセプターをコードする遺伝子のクローニングを初めて記載する。本発明は更に、ガラニン作動性レセプターの配列および組換え細胞内での発現を初めて記載する。従って本発明によりガラニン作動性レセプターの構造を一層深く理解することが可能となり、かつその作用メカニズムを一層詳細に調査することが可能となる。本発明により更に、非常に高い純度のガラニン作動性レセプターを大量に取得することが可能となり、そのことにより機能的および薬理学的研究、抗体の産生などを実施することが可能となる。本発明により更に、特定のサイズのガラニン作動性レセプターの断片およびガラニン作動性レセプターの全種類の誘導体を調製することも可能となる。本発明は更に、ガラニン作動性レセプターもしくはガラニン作動性レセプターの断片を発現する組換え細胞をも提供し、これらの細胞はそれらのレセプターのリガンド(アゴニスト、アンタゴニスト、および調節因子など)のスクリーニングに有用である。本発明のDNA配列により更に、生物学的試料中のガラニン作動性レセプターの発現のいずれかの異常(非発現、突然変異、および多形性など)を検出することが可能なプローブを提供することが可能となる。これらのプローブは更に、多様な源の組織からのガラニン作動性レセプターをコードするいずれかの他のcDNAをハイブリダイゼーションによりクローニングするのに用いることが可能であり、これについては後に記載がなされている。
従って本発明の第一主題は、ガラニン作動性レセプター活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列である。本発明の目的のためには、ガラニン作動性レセプターは特に全ての可能なサブタイプを含む。
本発明に従うポリヌクレオチドが:
(a)配列番号1のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子、
(b)配列番号1に記載されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子、ならびに
(c)ストリンジェントな条件下で、上記(a)または(b)記載のポリヌクレオチド分子とハイブリダイズし、かつガラニン作動性レセプター活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子、
からなる群より選択されるポリヌクレオチドがより好ましい。
本発明の非常に特別な態様は、配列番号1のヌクレオチド配列もしくはその相補鎖の全部もしくは部分を含むヌクレオチド配列により表される。
本発明の様々なヌクレオチド配列は、人工起源もしくはその他のものであることができる。それらはゲノム、cDNA、もしくはRNA配列、ハイブリッド配列、あるいは合成もしくは半合成配列であることが可能である。これらの配列は例えば、DNAライブラリー(cDNAライブラリー、ゲノムDNAライブラリー)の、配列番号1の配列を基にして産生されるプローブの手段により取得することができる。このようなライブラリーは、当業者に知られる分子生物学の標準技術により様々な源の細胞から調製することができる。本発明のヌクレオチド配列は更に、化学合成(特にホスホルアミダイト法に従うもの)によるか、あるいは別法ではライブラリーのスクリーニングにより取得される配列の化学的もしくは酵素的改変を含む混合方法により調製することもできる。
本発明のヌクレオチド配列を、ガラニン作動性ポリペプチドの生産に用いることができる。用語「ガラニン作動性ポリペプチド」は、ガラニン作動性レセプター活性を有するいずれかのポリペプチドおよびそのようなポリペプチドのいずれかの断片もしくは誘導体を意味する。ガラニン作動性ポリペプチドの生産のためには、前記ポリペプチドをコードする部分は一般的には、ある細胞宿主内でのその発現を可能にさせるシグナルの制御下に置かれる。これらのシグナル(プロモーター、および停止因子など)の選択は用いられる細胞宿主に応じて変化できる。この目的のためには、本発明のヌクレオチド配列は、自立的複製もしくは組込みが可能であるベクターの部分を形成することがある。より具体的には自律的複製性ベクターを、選択された宿主内で自律的に複製する配列を用いて調製することができる。組込みベクターに関しては、これらを例えば、宿主ゲノムの所定の領域と相同な配列を用い、相同組換えによりそのベクターの組込みを可能にさせて調製することができる。組換えを利用する方法による本発明のガラニン作動性ポリペプチドの産生に利用することが可能な細胞宿主は、真核生物もしくは原核生物宿主のいずれかである。適切な真核生物宿主の中では、動物細胞、イースト、もしくは真菌類を挙げることができる。特にイーストに関しては、サッカロミセス(Saccharomyces)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)、ピキア(Pichia)、シュワンニオミセス(Schwanniomyces)、もしくはハンセヌラ(Hansenula)属を挙げることができる。動物細胞に関しては、COS、CHO、C127、およびNIH−3T3などの細胞を挙げることができる。真菌類の中では、アスペルギルス エスエスピー(Aspergillus ssp.)もしくはトリコデルマ エスエスピー(Trichoderma ssp.)をより具体的なものとして挙げることができる。原核生物宿主としては以下の細菌を用いることが好ましく、それらは:大腸菌(E.coli)、バチルス(Bacillus)、もしくはストレプトミセス(Streptomyces)、である。
本発明のヌクレオチド配列は更に、遺伝子療法に関連して使用することが可能なアンチセンス配列の作製、もしくはハイブリダイゼーション実験による生物学的試料中のガラニン作動性レセプターの発現の検出ならびに遺伝子異常(多形性、突然変異)もしくは過誤発現の証明を可能にするプローブの作製のいずれかのために、薬剤学的分野において利用することも可能である。
アンチセンス配列による所定の遺伝子の発現の阻害は、遺伝子の活性の制御における有望な手法であることが判明している。アンチセンス配列は、その転写産物が所定の遺伝子のコーディング鎖に相補的であり、かつその結果転写されたmRNAもしくはその遺伝子と特異的にハイブリダイズし、その転写もしくは蛋白質への翻訳を阻害することが可能である配列である。従って本発明の主題は、先に特定されるガラニン作動性ポリペプチドの産生を少なくとも部分的に阻害することが可能なアンチセンス配列である。このような配列は先に特定されるヌクレオチド配列の全部および部分からなることが可能である。これらは一般的には、本発明のペプチドをコードする配列に相補的な配列もしくはそのような配列の断片である。このような配列は配列番号1の配列から断片化などか、もしくは化学合成かにより取得することができる。
先に記載されるように、本発明により更に、本発明のガラニン作動性ポリペプチドをコードする先に特定されるヌクレオチド配列もしくはそれに対応するmRNAとハイブリダイズすることが可能なヌクレオチドプローブ、合成プローブ、もしくはそれ以外のプローブを作製することが可能となる。このようなプローブは、ガラニン作動性レセプターの発現を検出するため、もしくは別法では遺伝子異常(スプライシングの過誤、多形性、および点突然変異など)を証明するための診断用の道具としてインビトロで用いることができる。ガラニン作動性レセプター用の内因性リガンドの多数の活性を考慮すると、従って本発明のプローブは、神経学的、心臓血管的、内分泌学的、もしくは精神医学的障害を同定することを可能にすることができる。これらのプローブは更に、先に特定されるガラニン作動性ポリペプチドをコードする相同核酸配列を他の細胞源および好ましくはヒト起源の細胞から証明および同定するために使用することができる。本出願はGalR1と表示されるクローンによって一層特別に説明されるが、刊行物に記載される生化学的および免疫学的調査により、ガラニン作動性レセプターのサブタイプの存在が示されている。本発明のプローブにより、これらの様々なサブタイプを当業者に知られる技術により単離することが可能となる(実施例4を参照されたい)。本発明のプローブは一般的には少なくとも10塩基を含み、そしてそれらは配列番号1もしくはその相補配列の最高全配列までを含むことが可能である。これらのプローブはそれらの使用前にラベル化されることが好ましい。この目的では、当業者に知られる様々な技術を利用することができる(放射性ラベル化、および酵素ラベル化など)。これらのプローブを用いることができるハイブリダイゼーション条件は、以下の一般的クローニング技術、ならびに実施例に示される。
本発明の目的は更に、先に特定されるヌクレオチド配列の発現から生じるいずれかのポリペプチドでもある。そのポリペプチドが、配列番号1のペプチド配列もしくは後者の誘導体の全部もしくは部分を含むポリペプチドであることが好ましい。
本発明の目的のためには、用語「誘導体」は、配列番号1のペプチド配列の遺伝子的および/または化学的特徴の改変により取得されるいずれかの分子を意味する。遺伝子的および/または化学的特徴の改変は、一つもしくは複数の残基のいずれかの突然変異、置換、欠失、付加、および/または改変を意味することが理解される。このような誘導体は様々な目的のために作製されることがあり、それは例えば、特にそのペプチドのリガンド(一つもしくは複数)への親和性を増加させる目的、その産生レベルを改善する目的、プロテアーゼに対する耐性を増加させる目的、その活性を増加を改変する目的、あるいはそのペプチドに新規の薬物動態的および/または生物学的特性を付与する目的である。添加により生じる誘導体の中では、一つの末端に連結された追加的異種部分を含むキメラペプチドを一例として挙げることができる。用語「誘導体」も、他の細胞源から、そして特にヒト起源の細胞からか、もしくは他の生物体から得られる配列番号1のポリペプチドと相同であり、かつ同タイプの活性を保持するポリペプチドを含む。このような相同ポリペプチドは特に様々なサブタイプのガラニン作動性レセプターを含む。これらは特に、実施例において記載されるハイブリダイゼーション実験により取得することができる。したがって、本発明によれば、(a)配列番号1に記載されたアミノ酸配列を有するポリペプチド、および
(b)アミノ酸配列(a)において1つもしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつガラニン作動性レセプター活性を有するポリペプチド、
からなる群より選択されるポリペプチドも提供される。
本発明のポリペプチドは、ガラニンもしくはガラニンの変異体に結合する能力を保持するポリペプチドであることが好ましい。好ましい態様に従うと更に、本発明のポリペプチドは配列番号1の全ペプチド配列を認識する抗体により認識され得る。このような抗体は、当業者に知られる既知のいずれかの技術により、抗原として本発明に記載されるポリペプチドを用いて作製することができる。
実施例に記載されるように、これらのポリペプチドは様々なタイプの細胞内で発現されて機能的ガラニン作動性レセプターを形成することができる。
本発明のポリペプチドは先に記載されるヌクレオチド配列の細胞宿主内での発現によってか、当業者に知られる技術を用いる配列番号1の配列を基にする化学合成によってか、もしくはそれらの技術の組み合わせによって取得することができる。
本発明の他の主題は、ガラニン作動性レセプター活性を有するポリペプチドを表面に発現することが可能な組換え細胞に関する。これらの細胞は先に記載されるヌクレオチド配列を組み込ませ、そしてその後に前記細胞を前記配列の発現用の条件下で培養することにより取得することができる。
本発明に従う組換え細胞は、真核生物もしくは原核生物のいずれかの細胞であることが可能である。適切な真核生物細胞の中では、動物細胞、イースト、もしくは真菌類を挙げることができる。特にイーストに関しては、サッカロミセス(Saccharomyces)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)、ピキア(Pichia)、シュワンニオミセス(Schwanniomyces)、もしくはハンセヌラ(Hansenula)属のイーストを挙げることができる。動物細胞に関しては、COS、CHO、C127、およびNIH−3T3などの細胞を挙げることができる。真菌類の中では、アスペルギルス エスエスピー(Aspergillus ssp.)もしくはトリコデルマ エスエスピー(Trichoderma ssp.)をより具体的なものとして挙げることができる。原核生物細胞としては以下の細菌を用いることが好ましく、それらは:大腸菌(coli)、バチルス(Bacillus)、もしくはストレプトミセス(Streptomyces)である。このようにすることで取得される細胞を用いて、ガラニン作動性レセプターのリガンドとしてか、もしくはこれらのレセプターの活性の調節因子として作用する様々な分子の能力を測定することができる。従ってより特別には、それらを、ガラニン作動性レセプターのリガンドもしくはそれらのレセプターの活性の調節因子を明確化および単離するのに用いることができ、そしてそれがアゴニストおよびアンタゴニストの証明および単離であることがより好ましい。
従って本発明の他の主題は、ガラニン作動性レセプターのリガンドの明確化および/または単離のための方法に関し、この方法に従って以下の段階が実施され、それらの段階とは:
− 一つの分子、もしくは様々な分子(適切な場合には、これらは未同定である)を含む混合物を、先に記載されその表面にガラニン作動性レセプター活性を有するポリペプチドを発現する組換え細胞に、前記ポリペプチドと前記分子との間の相互作用を可能にさせる条件下(後者が前記ポリペプチドに対する親和性を有する予定になっている場合に)で接触させる段階、および
− 前記ポリペプチドに結合した分子を検出および/または単離する段階、
である。
特別な態様では、本発明のこの方法を採用して、ガラニン作動性レセプターについてガラニンのアゴニストおよびアンタゴニストの明確化および/または単離が行われる。
本発明の他の主題は、ガラニン作動性レセプター用の調節因子の明確化および/または単離のための方法に関し、その方法に従って以下の段階が実施され、それらの段階とは:
− 一つの分子、もしくは様々な分子(適切な場合には、これらは未同定である)を含む混合物を、先に記載されその表面にガラニン作動性レセプター活性を有するポリペプチドを発現する組換え細胞に、前記レセプター用の内因性リガンドの存在下、前記ポリペプチドとそのリガンドとの間の相互作用を可能にさせる条件下で接触させる段階、ならびに
− 前記ポリペプチドに関してそのリガンドの活性の調節を行うことが可能な分子を検出および/または単離する段階、
である。
特別な態様では、本発明のこの方法を採用して、ガラニン作動性レセプターに関してガラニンの活性の調節因子の明確化および/または単離が行われる。
本発明の他の主題は、医療用産物としての、先に記載される方法に従って同定および/または取得されるリガンドもしくは調節因子の使用に関する。このようなリガンドもしくは調節因子は実際に、ガラニン作動性レセプターに関連する所定の障害を治療することを可能にし得る。特にガラニンレセプターは鎮痛効果の化学伝達物であるため、これらのレセプターについてのアゴニストを用いて疼痛感覚を減少させることができる。ガラニン作動性レセプターの他の活性は序文に既に記載されている。
本発明は更に、本発明のレセプターに作用する少なくとも一つの分子を活性成分として含むいずれかの医療用産物に関する。この分子が先に記載される方法に従って同定および/または単離されるリガンドもしくは分子であることが好ましい。
本発明の他の利点は以下に記載される実施例を読む際に明らかになるであろうが、それらの実施例は説明的かつ非制限的として見なされるべきである。
図面に対する説明文
図1:クローンGalR1でトランスフェクトさせたCos1細胞の膜上でのブタガラニンでのガラニンレセプターの飽和。挿入図は結合曲線データのスキャチャード(Scatchard)プロットを表す(表示される各値は代表実験に相当し、各プロットは三重実験で決定された)。
図2:クローンGalR1で形質転換させたCos1細胞の膜への[125I]ガラニンの特異的結合の各ペプチドによる置換。(表される各値は、各プロットが三重実験で決定された代表実験に対応する)。
図3:クローンGalR1でトランスフェクトさせたCos1細胞内でのcAMPの刺激化のガラニンによる阻害。(表される各値は代表実験に相当し、各プロットは三重実験で決定された)。
一般的クローニング技術
分子生物学で用いられる方法(例えば、プラスミドDNAの調製的抽出、塩化セシウム濃度勾配液中でのプラスミドDNAの遠心分離、アガロースもしくはアクリルアミドゲル電気泳動、電気溶出によるDNA断片の精製、蛋白質のフェノールもしくはフェノール−クロロホルム抽出、食塩水培地中でのDNAのエタノールもしくはイソプロパノール沈殿、および大腸菌(Escherichia coli)内での形質転換など)は当業者に熟知されており、かつ刊行物において豊富に記載されている[Maniatis T.et al.、「Molecular Cloning、a Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.、1982;Ausubel F.M. et al.(eds)、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley & Sons、New York、1987]。
連結操作を実施するためには、DNA断片をアガロースもしくはアクリルアミドゲル電気泳動によりサイズに従って分離させ、フェノールもしくはフェノール−クロロホルム混合物で抽出させ、エタノールで沈殿させ、そしてその後に供給社の推奨事項に従ってファージT4 DNAリガーゼの存在下でインキュベートする。
5’突出端の充填は、供給社の推奨事項に従って大腸菌(coli)DNAポリメラーゼIのクレノウ(Klenow)断片で実施される、3’突出端の破壊は製造業者の推奨事項に従って用いられるファージT4 DNAポリメラーゼの存在下で実施される。5’突出端の破壊はS1ヌクレアーゼの制御的処理により実施される。
合成オリゴデオキシヌクレオチドを用いるインビトロ部位特異的突然変異誘発は、Taylor et al.[Nucleic Acids Res. 13(1985) 8749−8764]により開発された方法に従って実施される。
DNA断片の酵素的増幅は、いわゆるPCR[olymerase−catalysed hain eaction、Saiki R.K. et al.、Science 230 (1985) 1350−1354;Mullis K.B. and Faloona F.A.、Meth.Enzym. 155 (1987) 335−350]技術により実施される。
ヌクレオチド配列の確認は、Sanger et al.、[Proc.Natl.Acad.Sci.USA、74 (1977) 5463−5467]により開発された方法により実施される。
ハイブリダイゼーション実験用のストリンジェント(または「緊縮」という。)条件は、先に引用されるManiatis T. et al.、に基づく。
1. ヒトガラニンレセプターの単離
この実施例は、cDNAライブラリーの発現によるスクリーニングによる、ヒトガラニンレセプターをコードするクローンGalRIの単離法を記載する。
1a. ライブラリーの構築
cDNAライブラリーは、Bowesヒトメラニン細胞株(ATCC CRL 9607)から、哺乳類の一過性発現ベクターpcDNA1を用いて作製された。総RNAの抽出後、polyA+ RNAをオリゴ−dT−セルロースカラム上で精製する。cDNAの合成は複数のプライマーの混合物の存在下で実施される(オリゴ−dTおよびオリゴヌクレオチドはランダムにハイブリダイズする)。サイズによる分画化(>1100塩基対)の後、このライブラリーを、ベクターpcDNA1(Bsx1クローニング部位)内へのcDNAの連結、および大腸菌(coli)(MC 1061/P3)内での形質転換により構築した。106の独立クローンが取得され、そしてこれらを増幅させた。その後に約720000の細菌クローンを、ディッシュ当たり8000コロニーの密度で選択的固相培地上で培養した。90バッチのプラスミドDNA(各々は8000コロニーに相当する)をアリカリ性溶菌により調製した。
1b. トランスフェクション
各バッチからのプラスミドDNAを独立に、以下のプロトコールに従う電気穿孔法によりCos1細胞(ATCC CRL1650)中にトランスフェクトした:32mgのDNA、10%のウシ胎仔血清、6mMのグルタミン、100IU/mlのペニシリン、および100mg/mlのストレプトマイシンを補足してある500mlのDMEM(Dulbecco Modified Eagle Medium)中の8×106細胞、5%CO2下、960mF、250ボルト、Biorad社の電気穿孔装置。電気穿孔後には、細胞を直径16cmの培養用ディッシュ(Nunc社)中、単層で72時間培養した。これらの条件下で平均30%の細胞がトランスフェクトされた。
1c. 発現によるスクリーニング
トランスフェクトさせた細胞を、[125I]ガラニンと結合する能力について検査した。トランスフェクション後48時間目に細胞は変化を示した。結合当日に細胞をDMEMの存在下に1時間放置し、そしてその後に10mlの緩衝液1(25mM Tris−HCl pH7.5、10mM MgCl2、2% BSA)で洗浄した。その後にそれらの細胞を、10-10Mの[125I]ガラニン(NEN、ブタガラニン 1−29、SA:2200キューリー/mモル)を含む緩衝液2(プロテアーゼ阻害剤のカクテル:10mg/mlのアプロチニン、1mg/mlのバシトラシン、10mg/mlのペプスタチンA、および10-5Mのフッ化フェニルメチルスルホニル、を含む緩衝液1)の存在下で5時間、20℃下でインキュベートした。洗浄(5×15mlの緩衝液1)後、これらのディッシュを乾燥させ、そして−80℃で15日間、オートラジオグラフィー(Amersham hyperscreen MP フィルム)に露出させた。
1d. ガラニンレセプターをコードするクローンGalR1の単離
検査した720000の細菌クローンの内、オートラジオグラフィーにおいて特異的シグナル(すなわち、(i)バックグラウンドを上回り、(ii)10-6Mのコールド(非放射性ラベル化)ガラニンの存在下では消失するシグナル)を示す8000コロニーからなる一つのバッチが同定された。その後にこのバッチを各700クローンからなる48バッチに分割した。トランスフェクション後、これらの細胞を、[125I]ガラニンに結合する能力について検査した。3つのバッチがオートラジオグラフィーにおいて特異的シグナルを示した。それらの内の一つを2度にわたって再分割し(30クローンからなる25バッチに分割後、60の個々のクローンに分割した)、そのことにより[125I]ガラニンに結合する強い能力をCos1細胞に付与する2つのクローンが見いだされた。
2. ガラニンレセプターの構造研究
実施例1において単離された2つのクローンは、3.1kbの相同挿入断片を含む。これら2つのクローンの内の一つのものの配列を両鎖について、Sangerの方法に由来する蛍光技術(Applied Biosystems社)により、Taqポリメラーゼおよび蛍光ジデオキシヌクレオチドを用いて決定した。
取得された配列は配列番号1の配列に対応する。この配列は1053塩基対の読み取り枠を保持し:翻訳開始部位には配列番号1の配列の位置787のATGコドンがあてがわれている。
このように特定された読み取り枠は算出分子量38897ダルトンの349アミノ酸(配列番号1)の一部分をコードする。このアミノ酸配列のヒドロパシー曲線の分析により、そのレセプターは過半量の疎水性アミノ酸を含んでなる7つのセグメントを保持し、それらは全体として貫膜セグメント(TMS)(これは、G蛋白質に結合するレセプター一族の膜に関する共通点である)を形成している。このレセプターは以下のように編成されている:MET1−ASN33(N−末端セグメント);PEH34−LEU58(TMS I);ALA59−ASN71(細胞内ループ I);LEU72−LEU98(TMS II);PRO99−LYS109(細胞外ループ I);PHE110−ASP132(TMS III);ARG133−ASN151(細胞内ループ II);ALA152−VAL170(TMS IV);ALA171−ALA199(細胞外ループ II);TYR200−VAL223(STMV);LEU224−LYS244(細胞内ループ III);THR245−LEU268(TMS VI);TRP269−PRO279(細胞外ループ III);ALA280−SER307(TMS VII);GLU308−VAL349(C−末端セグメント)。
それに加え、G蛋白質に結合するレセプターの一族の内のあるメンバー内に保存される幾つかのアミノ酸が、GALR1レセプターの蛋白質配列内に存在する。特に、(1)2つのN−グリコシル化部位(ASN7およびASN12)、(2)cAMP−もしくはcGMP−依存性蛋白質キナーゼによる1つのリン酸化部位(SER143)、(3)1つのファルネシル化部位(CYS340)、(4)2つのシステイン(CYS187および308)、(5)4つのプロリン(PRO169、212、262、および300)、(6)モチーフGLY.ASN.X.X.VAL(50−54)、(7)モチーフASP.ARG.TYR(132−134)、ならびに(8)モチーフASN.PRO.ILE.X.TRY(299−303)が認められる。
本発明の蛋白質の配列に関して最終的には、G蛋白質に結合するレセプター一族の蛋白質の配列との比較を行った(Swissport data データバンク)。最多相同性(3つのギャップを含めて33.8%)がタイプ4のソマトスタチンレセプターに関して観察された。
3. Cos1細胞内で一過性に発現されるGalR1レセプターの生化学的調査
3a. GalR1レセプターの化学量論および薬理学
クローンGalR1のプラスミドDNAは、Cos1細胞をトランスフェクトするための分子生物学の標準的技術により調製された。その後に、このトランスフェクト化細胞の膜を用いてガラニン1−29およびガラニン断片(複数)の平衡結合のパラメーターを評定した。
プラスミドDNA(90mg/8×106Cos1細胞)を、先に記述の要領で電気穿孔法によりトランスフェクトした。トランスフェクト後72時間後に組換え細胞を回収し、そして沈降させた。その後に膜を以下の要領で調製した:4℃下、細胞ペレットを10mlの緩衝液3(5mM Hepes pH7.5)の存在下に20分間放置し;13,000gで15分間の遠心分離後にそのペレットを緩衝液3中に再懸濁させ、そして使用するまで−80℃に保存した。
平衡結合実験(飽和および競合)を、[125I]ガラニンおよび様々なペプチドの存在下で膜上において、以下の実験条件下で実施した:膜(10mgの蛋白質)を30分間、20℃下、5×10-11Mの[125I]ガラニンと共に、ガラニンの非存在下、あるいは増加濃度のガラニン1−29、ガラニン2−29、ガラニン3−29、もしくはガラニン1−16(10-11M〜10-6M)の存在下、0.25mの緩衝液2(1c)の最終容量中でインキュベートした。その後にこの反応を0.25mlの緩衝液1(1c)の添加および13000gでの15分間の遠心により停止させた。得られたペレットを、10%のスクロースを含む0.2mlの氷冷25mM Tris緩衝液(pH7.5)で3度洗浄し、そしてその後に放射活性をガンマーシンチレーション計測器で測定した。
非特異的結合は、10-7Mのブタガラニン1−29の存在下で測定される。親和性定数(Ki)の値は、ChengおよびPrussofの等式:Ki=IC50/(1+L/Kd)に従って取得された。
先に記載した実験条件下では以下の結果が取得される:非トランスフェクト化Cos1細胞もしくは対照プラスミドでトランスフェクトさせたCos1細胞とは対照的に、クローンGalR1でトランスフェクトさせたCos1細胞はヨウ素化ガラニンの特異的結合を示す。スキャチャード(Scatchard’s)法による結果の分析により、高親和性(その見かけ上の解離定数(Kd)=0.8nM)でありかつ高容量(その最高結合部位数(Bmax)=2.8Pモル/mg蛋白質)の単一クラスの部位(複数)の存在が示される。トランスフェクションの効率(約30%、1b)を考慮に入れると、Cos1細胞内における本発明のガラニン作動性レセプターの発現のレベルは5×105部位/細胞であると推定される。
ラット、ブタ、およびヒトのガラニンは、トランスフェクト化細胞の膜への[125I]ガラニンの結合を競合的に阻害し、その各Ki=0.3、0.2、および0.8nMである。ガラニン2−29(Ki=115nM)およびガラニン1−16(Ki=5nM)は[125I]ガラニンの結合を競合的に阻害するが、その阻害はガラニン1−29と比較して低い親和性によるものである。このクローンはガラニン3−29に対する親和性は有さない。
これら様々な分子の効率の程度により、ガラニン作動性レセプターとしてのGalR1レセプターの特異性が確認される。その上これらの結果により、本発明のCos1細胞は、天然のレセプターのものに匹敵する結合特性を有するガラニンについてのレセプターを発現することが可能であることが示される。
3b. GalR1レセプターの機能調査
アデニレートシクラーゼへのガラニンレセプターの結合を、クローンGalR1でトランスフェクトさせたCos1細胞におけるcAMP産生を阻害するガラニンの能力により評定した。この調査のためには、先に記載の条件下でトランスフェクトさせた105細胞をマウチウエル(直径1.5cm)の培養プレート内に接種し、そしてcAMP実験をトランスフェクション後72時間目に実施した(この培養培地は実験の前日に新しいものと交換する)。37℃下、DMEM培地中での1時間の予備インキュベーションの後、細胞を、2%のBSAを含むDMEMで洗浄した。その後にこれらの細胞を、2×10-4Mのイソブチルメチルキサンチンを含む同一培地中、フォルスコリン(10-4M)および/またはヒトガラニン(10-11M〜10-6M)の非存在および存在下でインキュベートした。これらの細胞をDMEM培地中で3度洗浄した後、細胞内cAMPを70%エタノールの添加により抽出した。凍結乾燥後にはcAMPは放射性免疫検定法(cAMP Kit、Amersham社)により測定される。
これらの結果により、クローンGalR1でトランスフェクトさせたCos1細胞内ではガラニンは強力に細胞内cAMPのフォルスコリン−誘導性産生を阻害することが示される(誘導される産生は2pモル/105細胞の桁のものであり、これはすなわち基準線レベルの10倍に相当する)。この効果は基本条件下では観察されない。cAMP産生の半阻害および最大阻害は各々10-9Mおよび10-6Mのヒトガラニンにより誘導される。10-6Mのガラニンの存在下ではフォルスコリンにより誘導される細胞内cAMPの産生は50%減少する。
細胞内cAMPのフォルスコリン−誘導性産生のガラニンによる阻害によりガラニン作動性レセプターとしてのGalR1レセプターの特異性が証明される。それに加えてこれらの結果により、本発明のCos1細胞は天然のレセプターのものに匹敵する機能特性を有するガラニンについてのレセプターを発現することが可能であることが示される。
4. 他の組織における特にサブタイプに関する相同配列についての調査
この実施例により、配列1のヌクレオチド配列もしくは後者の断片を、他の組織からの相同配列(特にサブタイプの)の証明に用いることができることが示される。この目的のためには様々な技術を用いることが可能であり、それらは例えばPCR、インサイチューハイブリダイゼーション、およびノザン(Nothern)転移などである。
より具体的には、PCRを用いる調査のためには、調査される様々な組織の総RNAを調製し、そしてその後にそれを、逆転写酵素、Taqポリメラーゼ、および配列番号1の配列に由来する適切なプライマー(複数)の存在下での逆転写および増幅に供する。このことにより取得される産物をその後にニトロセルロースフィルター上に転移させ、そして可変緊縮性条件下でハイブリダイズさせる。
これらの実験において確認された相同配列は、その後には分子生物学の標準技術により単離および/または増幅することができる。
配列表
(1)一般情報:
(i)出願人
(A)氏名:RHONE−POULENC RORER S.A.
(B)街路名:20,aveneue Raymond ARON
(C)市:ANTONY
(D)国:FRANCE
(F)郵便コード番号:92165
(ii)発明の名称:ガラニンレセプター、核酸、形質転換細胞、およびそれらの使用。
(iii)配列数:1
(iv)コンピューター解読形態:
(A)媒体のタイプ:テープ
(B)コンピューター:IBM PC compatible
(C)操作システム:PC−DOS/MS−DOS
(D)ソフトウエアー:PatentIn Release #1.0、Version #1.25(EPO)
(2)配列番号1:
(i)配列の性質
(A)配列の長さ:3083
(B)配列の型:核酸
(C)鎖の数:二本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:cDNA
(iii)ハイポセティカル配列:NO
(iii)アンチセンス:NO
(vi)起源
(A)特徴を表す記号:CDS
(B)存在位置:787..1836
(C)他の情報:/産物=「ヒトガラニンレセプター」
(xi)配列
Figure 0003989536
Figure 0003989536
Figure 0003989536

Claims (13)

  1. (a)配列番号1のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド分子、
    (b)配列番号1に記載されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子、ならびに
    (c)ストリンジェントな条件下で、上記(a)または(b)記載のポリヌクレオチド分子とハイブリダイズし、かつガラニン作動性レセプター活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子、
    からなる群より選択されるポリヌクレオチド。
  2. ヒトガラニン作動性レセプターをコードすることを特徴とする、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
  3. 配列番号1のヌクレオチド配列もしくはその相補鎖を含むことを特徴とするポリヌクレオチド。
  4. ゲノムDNA、cDNA、もしくはRNA配列、ハイブリッド配列、あるいは合成もしくは半合成配列からなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
  5. 前記ポリペプチドをコードする部分が、ある細胞宿主中でのその発現を可能にさせるシグナルの制御下に置かれることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のポリヌクレオチド分子の発現により生じるポリペプチド。
  7. (a)配列番号1に記載されたアミノ酸配列を有するポリペプチド、および
    (b)アミノ酸配列(a)において1つもしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつガラニン作動性レセプター活性を有するポリペプチド、
    からなる群より選択されるポリペプチド。
  8. 請求項1の(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドを特異的に検出するためのヌクレオチドプローブであって、
    請求項1の(a)または(b)のポリヌクレオチドもしくはそれに対応するmRNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能なヌクレオチドプローブ。
  9. 請求項6または7に記載のポリペプチドをその表面に発現することが可能な組換え細胞。
  10. 真核生物および原核生物細胞から選択されることを特徴とする、請求項9に記載の細胞。
  11. (a)未同定であってもよい、一つの分子、もしくは様々な分子を含む混合物を、請求項9に記載された表面にガラニン作動性ポリペプチドを発現する組換え細胞に、前記ポリペプチドと前記分子との間で親和性による相互作用を可能にさせる条件下で接触させる段階、ならびに
    (b)前記ポリペプチドに結合した分子を検出および/または単離する段階、
    を実施することを特徴とする、ガラニン作動性レセプターのリガンド単離するための方法。
  12. ガラニン作動性レセプターについてのアゴニストおよび/またはアンタゴニスト単離するための、請求項11に記載の方法。
  13. (a)未同定であってもよい、一つの分子、もしくは様々な分子を、請求項9に記載された表面にガラニン作動性レセプター活性を有するポリペプチドを発現する組換え細胞に、前記レセプターのリガンドの存在下、前記ポリペプチドとそのリガンドとの間で親和性による相互作用を可能にさせる条件下で接触させる段階、ならびに
    (b)前記ポリペプチドに関するリガンドの活性の調節を行うことが可能な分子を検出および/または単離する段階、
    を実施することを特徴とする、ガラニン作動性レセプターについての調節因子を単離するための方法。
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