JP3987638B2 - 発煙剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、飛しょう体の飛行形跡や着地点がわかるようにするための、飛しょう体に使用する発煙剤組成物に関する。
発煙剤は、通常、缶体に着火薬とともに填薬することにより発煙部品として製造される。この発煙部品を、砲弾の構成部品として使用したり、また、発煙剤そのものを着火薬とともに砲弾に填薬して砲弾を構成する材料として使用している(例えば、JANE'S 1997〜1998参照)。
缶体に填薬して部品として使用する場合は、缶体を複数個、砲弾に組み込み、一つは、砲弾の弾着点で缶体を発射薬で砲弾の外に放出する。この放出時の発射薬の火が発煙剤と一緒に組み込まれている着火薬に点火し発煙剤を発火させる。発煙剤は煙を発することにより、砲弾の弾着点を表示し、遠方より目視で弾着点が確認できる。この弾着点の確認のために使用している。
また、発煙剤の入った缶体を砲弾が空中を飛しょうしている途中で放出し、缶体が煙を出しながら落下すれば、缶体の落下してくる状況を観察することもできるし、缶体の落下位置を表示することもできる。
このように、砲弾の弾着位置の表示、砲弾に組み込まれた部品を空中で放出した場合の落下の軌跡、落下位置の確認などをするために使用している。
【0002】
【従来の技術】
従来、白色の発煙剤は、6塩化エタンを金属粉末と反応させることにより発熱剤として使用し、また、6塩化エタンが塩素を発生することにより酸化亜鉛と反応させ、その生成物が煙の成分として作用されていた。
この発煙剤等に関する文献としては、下記の出版物がある。
【0003】
▲1▼「Military and Civi1ian Pyrotechnics」by Dr. Herbert Ellern (CHEMICAL PUBLISHING COMPANY INC. New York 1968)、
▲2▼「PYROTECHINICS From the Viewpoint of Solid State Chmistry」by Joseph Howard McLain (THE FRANKLIN INSTITUTE PRESS)
そして、これらの文献等から発煙剤は、6塩化エタン(以下、HCと呼ぶ)、酸化亜鉛(ZnO)およびアルミニウム(Al)等を組合せたものが白煙剤の代表例として記載されている。
【0004】
この組成の場合の発煙作用(反応)は、HC(C2Cl6)と金属粉(Al)が、下記(1)式に示すように、テルミット反応を起こす。
C2Cl6+2Al→2AlCl3+2C+△H(発熱)・・・(1)
このときの発熱により、ZnOが気化する。
また、余分なHCが分解してCl(塩素)を発生する。
【0005】
気化したZnOと塩素が、下記(2)式のように反応する。
ZnO+Cl2→ZnCl2+1/2O2・・・(2)
この際、塩化亜鉛(ZnCl2)が白煙(灰色煙)となる。
このように、白煙(灰色煙)を出すためには、発熱剤と酸化亜鉛と塩素があればよいことが分かる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、HCが近年入手難い事情から、HCを使用しない組成でHC同様の白煙(灰色煙)を発生させる発煙剤組成物が要望されている。
本発明はかかる要望に応えるためになされたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発煙剤組成物は、金属粉末とフッ素樹脂から成り、テルミット反応を生起する発熱剤と、酸化亜鉛と、塩化ビニル樹脂とを混合して成り、前記塩化ビニル樹脂を10〜60重量%含有することを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発煙剤組成物は、請求項1記載の発煙剤組成物において、前記金属粉末が、マグネシウムまたはアルミニウムであることを特徴とする。
請求項3に係る発煙剤組成物は、請求項1記載の発煙剤組成物において、前記フッ素樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはポリクロロトリフルオロエチレン(C 2 ClF 3 )であることを特徴とする。
【0010】
(作用)
請求項1に係る発煙剤組成物は、金属粉末がフッ素樹脂のフッ素と反応して発熱する。この発熱により塩化ビニル樹脂が分解して塩素を発生し酸化亜鉛が塩素と反応し白い煙となる。ここで、塩化ビニル樹脂含有量が10重量%未満では、発煙量が少なく発煙剤として用をなさないので、最低10重量%とした。また、60重量%を超えると、総体的にZnOが少なくなり発煙量が少なくなってしまうので、最高60重量%とした。
【0011】
請求項2に係る発煙剤組成物は、フッ素樹脂のフッ素と反応する反応材として作用する。
請求項3に係る発煙剤組成物は、金属粉末と反応する反応材として作用する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明に係る発煙剤組成物は、テルミット反応を起こす発熱剤の発熱により塩化ビニル樹脂を分解し、塩素を発生する。
そして、この塩素が酸化亜鉛と反応して白煙(灰色煙)の成分である塩化亜鉛となって煙を発生させる。
【0014】
すなわち、本発明に係る発煙剤組成物は、
(1)発熱のためのテルミット反応を利用する
(2)白煙(灰色煙)の発生に必要な塩素を塩化ビニル樹脂から発生させる
(3)白煙(灰色煙)と成るために、塩素と酸化亜鉛とを反応させる
ものである。
【0015】
本発明の発熱成分は、主にテルミット反応を生起する発熱剤を使用するもので、反応熱はかなりの高温となり、一般的には金属を溶かしてしまうが、配合組成物中にはZnO、塩化ビニル樹脂が入っており、テルミット剤の量は相対的に少なくなっているので、飛しょう体が溶けるおそれはない。
また、飛しょう体は飛行中に空気抵抗を受け大気により飛しょう体外殻は冷やされ温度が下がるので、飛しょう体が溶けるおそれはない。
【0016】
なお、本発明において、主にテルミット反応を生起する発熱剤は、公知であり、その組成、割合を特に限定するものではない。
本発明において、塩化ビニル樹脂は、粉末である。
プラスチックに成形された塩化ビニル樹脂は、PTFE,ZnOなどと混和ができないので除かれる。
【0017】
燃焼により塩素を発生する物質としては、例えば、6塩化ベンゼンがある。6塩化ベンゼンは6塩化エタンの変わりに使用できることが公知であるが、この物質も工業的規模で使用したいとしても入手は困難である。
塩化ビニル樹脂は最も汎用的な樹脂材料であり、塩素発生材料として入手が容易であるので好適である。
【0018】
また、本発明において、フッ素樹脂とは、ハロゲン元素が多く含まれているもので、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)が好適である。
また、本発明において、金属粉末(Mg)と酸化亜鉛(ZnO)と塩化ビニル樹脂との混合に際し、Mgを塩化ビニル樹脂、ZnOで希釈する。
【0019】
これは、Mg粉末が、燃焼性の良い金属であり、ライターの炎を当てるだけで燃焼するので、他の燃焼しにくい物質と混合することによって、混合物全体をMgの反応性を弱めた安全性の高いものに変ることを意味する。
MgはPTFEと反応しやすい物質であり、MgとPTFEを直接混合することはきわめて発火しやすい物質を作ることになる。このため、MgをZnO、塩化ビニル樹脂と先に混ぜておき、PTFEと混合する前に、その危険性を減らしておく必要がある。
【0020】
【実施例】
以下、本発明の代表的な実施例1について説明する。
(実施例1)
組成1
Mg粉末 12.5重量%
PTFE 19.1重量%
ZnO 39.3重量%
塩化ビニル樹脂粉末 29.1重量%
組成1では、Mg、塩化ビニル樹脂およびZnOを、それぞれ秤量して混合する。その際、Mgを塩化ビニル樹脂、ZnOで希釈することにより、Mgの反応性が弱められる。
【0021】
そして、Mg、塩化ビニル樹脂およびZnOの混合後に、PTFE(C2F4)を混合する。
この配合順序は、MgとPTFEが発熱反応を起こすことから、反応性を弱められたMg、塩化ビニル樹脂およびZnO混合物にPTFEを混ぜることにより作業の安全性が図れることにある。
【0022】
ここで、Mg60重量%とPTFE40重量%との反応を次に示す。
2Mg+C2F4→2MgF2+2C+△H(発熱)
この反応では、未反応Mg,MgF,MgF2,C等が生じ、発生する熱量は、4,922KJ/kg、反応温度は3,060゜K(計算値)である。
次に、発生した熱により塩化ビニル樹脂が分解する。塩化ビニル樹脂は200℃(573゜K)を超すと分解を始める。
【0023】
C2H3Cl→C2+3/2H2+1/2Cl2
そして、塩素がZnOと反応してZnCl2になり、白煙を発生する。
本実施例1では、組成1を着火させ反応させる着火薬に、四三酸化鉛70重量%、フェロシリコン30重量%およびバイトンA1重量%(外割)の組成を用いた。
【0024】
また、図1の煙を発生させる試験装置を使用し、燃焼性および発煙性を調べた。
図1の試験装置は、一側底部に発煙孔5を形成し他側が開口する金属製の円筒状容器1から成り、発煙孔5に、着火薬2および発煙剤3が装填時に漏れないようにするため蓋6をする。そして、この容器1の他側開口部から着火薬2と発煙剤3を装填(圧填)し、開口部4に蓋7をして固定する。
【0025】
この後、容器1の発煙孔5側を上にして配置し、発煙孔5の蓋6を外し、この発煙孔5から着火薬2へ導火線(図示しない)で火を付ける。
これにより、導火線→着火薬2→発煙剤3と順次着火し、発煙剤3が燃焼して発煙孔5から煙の成分が外へ出る。
その結果は、表1に示すように、燃焼性および発煙性ともに良好であった。
【0026】
なお、本実施例1において、C2F4(ポリテトラフルオロエチレン)の代わりにC2ClF3(ポリクロロトリフルオロエチレン)を用いても同様の結果を得ることができた。
【0029】
(考察)
本実施例1は、塩素を発生する塩化ビニル樹脂の量に視点を置いたもので、塩化ビニル樹脂の量をこれら範囲以外で試験を行ったところ、表1に示すように、塩化ビニル樹脂の量が60重量%を超えると、発煙剤が燃焼しなくなり、塩化ビニル樹脂が10重量%未満では発煙(反応)しなくなることが分かった。
【表1】
【0030】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明では、HCを用いなくとも、従来同様の白煙(灰色煙)を発生することのできる発煙剤組成物を容易に製造できる。
これにより、飛しょう体に使用される発煙剤として、飛しょう体の飛行形跡や着地点が分かるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の発煙剤組成物の反応性(燃焼性および発煙性)を試験する試験装置の断面図である。
【符号の説明】
1 容器
2 着火薬
3 発煙剤
4 開口部
5 発煙孔
6 発煙孔の蓋
7 開口部4の蓋
Claims (3)
- 金属粉末とフッ素樹脂から成り、テルミット反応を生起する発熱剤と、酸化亜鉛と、塩化ビニル樹脂とを混合して成り、前記塩化ビニル樹脂を10〜60重量%含有することを特徴とする発煙剤組成物。
- 前記金属粉末が、マグネシウムまたはアルミニウムであることを特徴とする請求項1記載の発煙剤組成物。
- 前記フッ素樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはポリクロロトリフルオロエチレン(C 2 ClF 3 )であることを特徴とする請求項1記載の発煙剤組成物。
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