JP3987137B2 - 硬化性塗料組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は新規な硬化性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術及びその課題】
従来、水酸基含有樹脂、ポリエポキシド及びオルガノシラン化合物の混合物に金属キレート化合物を配合してなる硬化性樹脂組成物が特開平2−73825号公報に開示されている。
【0003】
この公報の組成物は優れた硬化性を示すが、水酸基含有樹脂としてポリエステル樹脂を用いた場合、ポリエステル樹脂とオルガノシラン化合物との相溶性が悪く、透明で均一な、仕上り外観の優れた硬化塗膜を得ることは困難であった。
【0004】
本発明は、水酸基含有樹脂としてポリエステル樹脂を用いた場合において、相溶性が良好で、透明で、均一な、仕上り外観の優れた硬化塗膜を形成できる硬化性樹脂組成物の開発を目的になされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行い、その結果、水酸基含有ポリエステル樹脂、ポリエポキシド、特定の有機基を有する珪素化合物、金属キレート化合物及び有機溶剤を含有する組成物が、相溶性が良好で、透明で、均一な、仕上り外観の優れた硬化塗膜を形成できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、(a)溶解性パラメータ値(sp値)が10.0〜12.0の範囲の水酸基含有ポリエステル樹脂、
(b)ポリエポキシド、
(c)下記示性式〔1〕で表され、かつ1分子中に珪素原子を1〜20個有する珪素化合物
SiO(4−(a+b)/2)(OR1)a (OR2)b 〔1〕
(式中、R1 は炭素原子1〜3のアルキル基又は水素原子を、R2 はアラルキル基、又はエーテル結合及び/又はエステル結合を含有する炭素原子数4〜24の1価の炭化水素基を表す。aは0.10〜3.95、bは0.05〜1.95の数を表し、aとbとの和は4以下である。)、
(d)アルミニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物及び錫キレート化合物から選ばれる少なくとも1種のキレート化合物及び
(e)有機溶剤を含有することを特徴とする硬化性塗料組成物を提供するものである。
【0007】
本発明組成物において、水酸基含有ポリエステル樹脂(a)は、溶解性パラメータ値(sp値)が10.0〜12.0であって水酸基を含有するポリエステル樹脂であれば特に限定されるものではないが、硬化性、得られる塗膜の耐久性、塗膜の耐水性などの点から一般に、水酸基価が2〜200mgKOH/g の範囲が好ましく、2〜120mgKOH/g の範囲であることがさらに好ましい。sp値が10.0未満のポリエステル樹脂の製造は困難であり、sp値が12.0を超えると(c)成分である珪素化合物との相溶性が悪くなる。
【0008】
本発明において、溶解性パラメータ値(sp値)は、Polym. Eng. Sci.(ポリマー エンジニアリング サイエンス),14, [2] 147 (1974)における、R. F. Fedorsによる下記式から求められる値である。
【0009】
【数1】
【0010】
またポリエステル樹脂(a)の酸価は、硬化性、得られる塗膜の耐水性などの点から通常、0〜30mgKOH/g であることが好ましく、0〜20mgKOH/g の範囲であることがさらに好ましい。
【0011】
さらにポリエステル樹脂(a)は、得られる塗膜の耐久性、塗料固形分の点などから通常、数平均分子量が1,000〜30,000の範囲にあることが好ましく、1,500〜20,000の範囲にあることがより好ましく、2,500〜8,000の範囲であることがさらに好ましい。
【0012】
またポリエステル樹脂(a)は、得られる塗膜の硬度、加工性などの点からガラス転移温度(以下、「Tg」と略称することがある)が、−40〜60℃の範囲であることが好ましく、−10〜30℃の範囲であることがさらに好ましい。
本発明組成物におけるポリエステル樹脂(a)は、水酸基を含有するポリエステル樹脂であり、オイルフリーポリエステル樹脂、油変性アルキド樹脂、また、これらの樹脂の変性物、例えばウレタン変性ポリエステル樹脂、ウレタン変性アルキド樹脂などのいずれであってもよい。
【0013】
上記オイルフリーポリエステル樹脂は、主に多塩基酸と多価アルコールとのエステル化物である。多塩基酸としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルメタンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、シクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸、トリヒドロトリメリット酸、ジヒドロピロメリット酸、エンドメチレンヘキサヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、こはく酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、二量体脂肪酸(ダイマー酸)、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの酸の酸無水物などを挙げることができる。これらの多塩基酸は単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0014】
多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサン、1,3−ジヒドロキシメチルシクロヘキサン、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどを挙げることができる。これらの多価アルコールは単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。またε−カプロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン類などもこれらの反応に使用することができる。これらのエステル化反応は、公知の方法によって行うことができる。
【0015】
上記オイルフリーポリエステル樹脂は、上記エステル化反応において、多塩基酸のかわりに多塩基酸の低級アルキルエステル(例えばメチルエステル、エチルエステルなど)を用い、エステル交換反応を行うことによっても得ることができる。両成分のエステル交換反応は、公知の方法によって行うことができる。
【0016】
アルキド樹脂は、上記オイルフリーポリエステル樹脂の酸成分及びアルコール成分に加えて、油脂肪酸を公知の方法で反応せしめたものであって、油脂肪酸としては、例えばヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、トール油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、キリ油脂肪酸などを挙げることができる。
【0017】
ウレタン変性ポリエステル樹脂は、上記オイルフリーポリエステル樹脂、又は上記オイルフリーポリエステル樹脂の製造の際の、酸成分及びアルコール成分を反応させて得られる数平均分子量300〜10,000程度の低分子量オイルフリーポリエステル樹脂を、ポリイソシアネート化合物と公知の方法で反応せしめたものである。
【0018】
ウレタン変性アルキド樹脂は、上記油変性アルキド樹脂、又は上記油変性アルキド樹脂製造の際の各成分を反応させて得られる数平均分子量300〜10,000程度の低分子量油変性アルキド樹脂を、ポリイソシアネート化合物と公知の方法で反応せしめたものである。ウレタン変性ポリエステル樹脂、ウレタン変性アルキド樹脂を製造する際に使用するポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトカプロエートなどが挙げられる。
【0019】
本発明におけるポリエポキシド(b)は、樹脂(a)の架橋剤成分である。
【0020】
ポリエポキシド(b)は、1分子中に少なくとも平均約2個以上のエポキシ基を有する化合物であり、エポキシ当量が、通常、60〜10,000程度であることが好ましく、65〜4,000であることがより好ましい。
【0021】
ポリエポキシド(b)は、数平均分子量約120〜20,000、好ましくは約240〜8,000の範囲のものが好ましい。数平均分子量が約120を下回るものは入手が困難であり、一方数平均分子量が約20,000を超えると高固形分濃度の塗料が得られないこと及び架橋間分子量が大きくなり塗膜の耐溶剤性、耐すり傷性等が低下するので好ましくない。
【0022】
ポリエポキシド(b)の具体例としては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有モノマー、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等の脂環式エポキシ基含有モノマー等のラジカル重合性エポキシモノマーと、必要に応じて前記C1-24のアルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、芳香族ビニルモノマー等のその他のビニルモノマーをラジカル重合反応させて得られる重合体;ジグリシジルエーテル、2−グリシジルフェニルグリシジルエーテル、2,6−ジグリシジルフェニルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル化合物;ビニルシクロヘキセンジオキサイド、リモネンジオキサイド等のグリシジル基及び脂環式エポキシ基含有化合物;ジシクロペンタジエンジオキサイド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、エポキシシクロヘキセンカルボン酸エチレングリコールジエステル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エポリードGT300(ダイセル化学工業社製、3官能脂環式エポキシ化合物)、エポリードGT400(ダイセル化学工業社製、4官能脂環式エポキシ化合物)、セロキサイド2081、同2082、同2083(以上、いずれもダイセル化学工業社製、開環ε−カプロラクトン鎖含有2官能脂環式エポキシ化合物)、エポリードGT301、同GT302、同GT303(以上、いずれもダイセル化学工業社製、開環ε−カプロラクトン鎖含有3官能脂環式エポキシ化合物)、エポリードGT401、同GT402、同GT403(以上、いずれもダイセル化学工業社製、開環ε−カプロラクトン鎖含有4官能脂環式エポキシ化合物)等の脂環式エポキシ基含有化合物;「エピコート1001」(油化シェルエポキシ社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)等のビスフェノール型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂などが包含される。これらの中でも低温硬化性が優れる点から脂環式エポキシ基を2個以上有するポリエポキシドが特に望ましい。
【0023】
本発明における珪素化合物(c)は、前記ポリエステル樹脂(a)中の水酸基及び上記ポリエポキシド(b)中のエポキシ基と反応する成分であり、下記示性式〔1〕で表され、かつ1分子中に珪素原子を1〜20個有するものである。
【0024】
SiO(4−(a+b)/2)(OR1)a (OR2)b 〔1〕
(式中、R1 は炭素原子1〜3のアルキル基又は水素原子を、R2 はアラルキル基、又はエーテル結合及び/又はエステル結合を含有する炭素原子数4〜24の1価の炭化水素基を表す。aは0.10〜3.95、bは0.05〜1.95の数を表し、aとbとの和は4以下である。)、
珪素化合物(c)において、(OR1)は、炭素原子数1〜3のアルコキシル基又は水酸基を表す。炭素原子数1〜3のアルコキシル基としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ基を挙げることができる。
【0025】
またR2で表されるアラルキル基の具体例としては、ベンジル、フェネチルなどのアラルキル基(アリール基で置換されたアルキル基)等を挙げることができる。
【0026】
また、R2 で示されるエーテル結合及び/又はエステル結合を含有する炭素原子数4〜24の1価の炭化水素基としては、基中にエーテル結合及び/又はエステル結合を含有する炭化水素基であれば、脂肪族、脂環族、芳香族、及びこれらの混合した系の炭化水素基のいずれであってもよい。
【0027】
(OR2)で表される基の具体例としては、ベンジルオキシ、フェネチルオキシなどのアラルキルオキシ基;下記式〔2〕で表されるエーテル結合を含有する基;下記式〔3〕又は〔4〕で表されるエステル結合を含有する基;下記式〔5〕で表されるエーテル結合及びエステル結合を含有する基などを挙げることができる。
【0028】
−O−(Ck H2k−O)p−R3 〔2〕
式〔2〕中、kは1〜7の整数、pは1〜9の整数、R3 は炭素原子数1〜8のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
【0029】
式〔2〕で表される基の具体例としては、ブトキシエチルオキシ、フェノキシエチルオキシ、−O−(C2 H4 O)2−C4 H9 で表される基などを挙げることができる。
【0030】
【化1】
【0031】
(式中、k及びR3 はそれぞれ前記と同じ意味を有する。)
【0032】
【化2】
【0033】
(式中、jは1〜5の整数、qは1〜3の整数を表し、R3 は前記と同じ意味を有する。)
式〔3〕又は式〔4〕で表されるエステル結合を含有する基の具体例としては下記式で表される化合物などを挙げることができる。
【0034】
【化3】
【0035】
【化4】
【0036】
(式中、rは2〜9の整数を示し、k及びR3 は、それぞれ前記と同じ意味を有する。)
上記式〔5〕で表されるエーテル結合及びエステル結合を含有する基の具体例としては下記式で表される化合物などを挙げることができる。
【0037】
【化5】
【0038】
(OR2)で表される基としては、上記〔2〕〜〔5〕で表される基の中で、式〔4〕で表される基が好ましく、このうちjが5であるものが特に好ましい。
【0039】
上記珪素化合物(c)としては、下記式〔6〕で表される珪素モノマー;該珪素モノマー同士の縮合物;該珪素モノマーと下記式〔7〕で表されるテトラアルコキシシラン又はテトラアルコキシシランの縮合物との共縮合物;上記テトラアルコキシシラン又はその縮合物とR2 OH(R2 は前記と同じ意味を有する)で表される1価の水酸基含有炭化水素類とをエーテル交換反応させてなる反応生成物;及び上記テトラアルコキシシラン又はその縮合物とラクトン化合物との開環付加反応物などを挙げることができる。
【0040】
(R1O)m−Si−(OR2)n 〔6〕
(式中、R1 はそれぞれ同一又は異なって前記と同じ意味を有し、R2 はそれぞれ同一又は異なって前記と同じ意味を有する。mは2又は3の整数、nは1又は2の整数を表し、mとnとの合計は4である。)
上記式〔6〕で表される珪素モノマーの具体例としては、トリエトキシベンジルオキシシラン、トリエトキシ(フェネチルオキシ)シラン、ジメトキシ−ジ(ブトキシエチルオキシ)シラン、ジエトキシ−ジ(ブトキシエチルオキシ)シラン、トリメトキシ(ブトキシエチルオキシ)シラン、トリエトキシ(ブトキシエチルオキシ)シラン、ジメトキシ−ジ(フェノキシエチルオキシ)シラン、ジエトキシ−ジ(フェノキシエチルオキシ)シラン、トリメトキシ(フェノキシエチルオキシ)シラン、トリエトキシ(フェノキシエチルオキシ)シラン、ジメトキシ−ジ〔2−(アセトキシ)ペンチルオキシ〕シラン、ジエトキシ−ジ〔2−(アセトキシ)ペンチルオキシ〕シラン、トリメトキシ−2−(アセトキシ)ペンチルオキシシラン、トリエトキシ−2−(アセトキシ)ペンチルオキシシラン、ジメトキシ−ジ〔2−(エトキシ)ペンチルオキシ〕シラン、ジエトキシ−ジ〔2−(エトキシ)ペンチルオキシ〕シラン、トリメトキシ−2−(エトキシ)ペンチルオキシシラン、トリエトキシ−2−(エトキシ)ペンチルオキシシランなどを挙げることができる。
【0041】
Si−(OR1)4 〔7〕
(式中、R1 は、それぞれ同一又は異なって前記と同じ意味を有する。)
上記式〔7〕で表されるテトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、ジメトキシジプロポキシシランなどを挙げることができる。
【0042】
テトラアルコキシシランの縮合物としては、市販品として例えば「コルコートES40」(コルコート社製、商品名、テトラエチルシリケートの1〜10量体、平均約5量体)、「コルコートMS51」(コルコート社製、商品名、テトラメチルシリケートの1〜8量体、平均約4量体)などを挙げることができる。
【0043】
上記式〔6〕で表される珪素モノマー同士の縮合物及び該珪素モノマーと上記式〔7〕で表されるテトラアルコキシシラン又はその縮合物との共縮合物を得るための(共)縮合反応は、常法により行うことができる。例えば所定量の水の存在下で加熱することにより加水分解縮合することができる。
【0044】
テトラアルコキシシラン及び/又はその縮合物と前記R2 OHで表される1価の水酸基含有炭化水素類(エーテル結合及び/又はエステル結合を含んでいてもよい)とをエーテル交換反応させることにより(Si−OR1)結合の一部を(Si−OR2)結合に置換することができる。
【0045】
上記R2 OHで表される1価の水酸基含有炭化水素類としては、ベンジルアルコールなどのアラルキルアルコール;(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、1,1−ジメチル−1,3−プロピレングリコールなどの(ポリ)アルキレングリコールの片末端の水酸基をR3 OH(R3 は前記と同じ意味を有する)で表される炭素原子数1〜8の1価のアルカノール、フェノール類又はアラルキルアルコールでエーテル化してなる水酸基含有エーテル化物(前記式〔2〕の基導入に対応);エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルキレングリコールの片末端の水酸基をR3 COOH(R3 は前記と同じ意味を有する)で表される炭素原子数2〜8のモノカルボン酸でエステル化してなる水酸基含有エステル化物(前記式〔3〕の基導入に対応);ε−カプロラクトンなどのラクトン類を前記R3 OHで表される化合物を開始剤として開環し、必要に応じて重合してなる水酸基含有エステル化物(前記式〔4〕の基導入に対応);前記ポリアルキレングリコールの片末端の水酸基を前記R3 COOHで表される炭素原子数2〜8のモノカルボン酸でエステル化してなるエーテル結合及びエステル結合を有する水酸基含有化合物(前記式〔5〕の基導入に対応)などを挙げることができる。
【0046】
テトラアルコキシシラン及び/又はその縮合物と上記1価の水酸基含有炭化水素類との反応は、常法により、例えば、これらの成分を混合して又は前者に後者を滴下しながら、必要に応じてトリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、n−ブチル錫トリオクタノエートなどのエーテル交換触媒の存在下で、約80〜200℃で加熱下、1〜10時間程度反応させることにより行うことができる。
【0047】
用いる触媒の量は、テトラアルコキシシラン及び/又はその縮合物と上記1価の水酸基含有炭化水素化合物との合計量に対して0.001〜1重量%程度、好ましくは0.003〜0.1重量%程度である。
【0048】
前記テトラアルコキシシラン及び/又はその縮合物とラクトン化合物とを開環付加反応させることにより(Si−OR1)結合の一部を開環したエステル基を有する(Si−OR2)結合に置換することができる。
【0049】
上記ラクトン化合物としては、例えば、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−β−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、3−n−プロピル−δ−バレロラクトン、6,6−ジメチル−δ−バレロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−カプロラクトン等が挙げられる。これらの中でも、特にε−カプロラクトンが望ましい。
【0050】
テトラアルコキシシラン及び/又はその縮合物と上記ラクトン化合物との開環付加反応は、両者を混合して、又は前者に後者を滴下しながら、常法によって行うことができる。この反応は、通常、ラクトン化合物の開環付加触媒の存在下で行うことが好ましい。ここで使用できる開環付加触媒としては、例えば、n−ブチル錫トリオクタノエート、ジブチル錫ジラウレート、ジメチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジアセテート等の有機錫化合物;塩化第一錫、塩化第二錫等のハロゲン化錫化合物;有機ジルコニウム化合物;テトラブチルチタネート、テトラブトキシチタネート、テトラエチルチタネート等の有機チタン化合物;三フッ化ホウ素、三塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化チタン等のルイス酸;フッ化テトラブチルアンモニウム、フッ化セシウム、フッ化カリウム、フッ化ルビジウム等のフッ化物塩等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これら触媒は、1種で又は2種以上混合して使用することができる。
【0051】
用いる触媒の量は、テトラアルコキシシラン及び/又はその縮合物とラクトン化合物との合計量に対して0.01〜10重量%程度、好ましくは0.2〜4.0重量%程度である。
【0052】
上記開環付加反応は、無溶媒又は該反応に不活性な溶媒の存在下で、通常80〜200℃程度、好ましくは100〜180℃程度の温度範囲で、好適に行うことができる。反応時間は、通常1〜20時間程度である。
【0053】
上記不活性な溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶剤等を挙げることができ、これらは単独使用でも2種以上を併用しても良い。該反応に活性な溶媒、例えば水酸基を含んだ溶剤を多量に用いることは、ラクトンの変性率が低下することから望ましくない。
【0054】
珪素化合物(c)において、1分子中の珪素原子の数は1〜20個、好ましくは4〜8個であり、珪素原子の数が20個を超えるとポリエステル樹脂との相溶性が低下し、透明で均一な硬化塗膜が得られなくなる。
【0055】
珪素化合物(c)は、通常、数平均分子量が、200〜3,000の範囲にあることが好ましく、500〜2,000の範囲にあることがより好ましい。
【0056】
珪素化合物(c)を表す前記式〔1〕におけるR1 は、反応して架橋塗膜を形成するための反応性基であり、R1 であるアルコキシル基の炭素原子数が3を超えると反応性が低下し硬化性が不十分となる。また前記式〔1〕におけるR2 である基の種類が範囲外となったり炭素原子数が規定した範囲より少なくなるとポリエステル樹脂との相溶性が低下し、透明で均一な硬化塗膜が得られなくなり、一方、炭素原子数が24を超えると得られる塗膜の硬度が低下する。
【0057】
珪素化合物(c)を表す前記式〔1〕におけるaの値は、0.10〜3.95、好ましくは0.75〜2.00であり、bの値は、0.05〜1.95、好ましくは0.50〜1.50である。aの値が0.10未満となると反応性が低下し硬化性が不十分となり、一方、3.95を超えると必然的にR2 の量が少なくなり、ポリエステル樹脂との相溶性が低下し、透明で均一な硬化塗膜が得られなくなる。bの値が0.05未満となるとポリエステル樹脂との相溶性が低下し、透明で均一な硬化塗膜が得られなくなり、一方、1.95を超えると珪素化合物の反応性が低下する。また式〔1〕におけるaとbとの和は4以下であるが、1.5〜2.5の範囲内にあることがポリエステル樹脂との相溶性、好ましくないゲル状物の発生防止などの点から好ましい。
【0058】
本発明組成物におけるキレート化合物(d)は、アルミニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物及び錫キレート化合物から選ばれるキレート化合物であり、前記(a)〜(c)成分の硬化触媒として使用されるものである。
【0059】
キレート化合物(d)としてはケト・エノール互変異性体を構成し得る化合物を、キレートの配位子として含むキレート化合物が好ましい。
【0060】
ケト・エノール互変異性体を構成し得る化合物としては、β−ジケトン類(アセチルアセトン等)、アセト酢酸エステル類(アセト酢酸メチル等)、マロン酸エステル類(マロン酸エチル等)、β位に水酸基を有するケトン類(ダイアセトンアルコール)、β位に水酸基を有するアルデヒド類(サリチルアルデヒド等)、β位に水酸基を有するエステル類(サリチル酸メチル)等を使用することができる。特にβ−ジケトン類、アセト酢酸エステル類が好適である。
【0061】
キレート化合物(d)としては、金属種からみると特にアルミニウムキレート化合物が好ましく、好適なアルミニウムキレート化合物としては、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、トリス(プロピオニルアセトナト)アルミニウム、トリス(プロピオニルプロピオナト)アルミニウム、トリス(ブチリルアセトナト)アルミニウム、ベンゾイルアセトナト・ビス(アセチルアセトナト)アルミニウム、ビス(ベンゾイルアセトナト)・アセチルアセトナトアルミニウム、トリス(ベンゾイルアセトナト)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセタト)アルミニウム、トリス(プロピルアセトアセタト)アルミニウム、トリス(ブチルアセトアセタト)アルミニウム、モノエチルアセトアセタト・ビス(アセチルアセトナト)アルミニウム及びモノアセチルアセトナト・ビス(エチルアセトアセタト)アルミニウムなどを挙げることができる。
【0062】
チタニウムキレート化合物の代表例としては、ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセタト)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウムなどを挙げることができる。ジルコニウムキレート化合物の代表例としては、テトラキス(アセチルアセトナト)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセタト)ジルコニウムなどを挙げることができる。錫キレート化合物の代表例としては、ビス(アセチルアセトナト)モノブチル錫オクタノエート、ビス(アセチルアセトナト)モノブチル錫アセテート、ビス(ベンゾイルアセトナト)モノブチル錫オクタノエート、ビス(ベンゾイルアセトナト)モノブチル錫アセテートなどを挙げることができる。
【0063】
本発明組成物において、上記(a)〜(d)成分の配合量は特に限定されるものではないが、通常、各成分は(a)〜(d)成分の総重量に対して下記の配合割合であることが得られる塗膜の仕上り外観、硬化性、耐水性などの塗膜性能の点から好ましい。
【0064】
(a)成分:5〜94重量%、さらに好ましくは14〜75重量%、
(b)成分:5〜94重量%、さらに好ましくは10〜75重量%、
(c)成分:0.1〜50重量%、さらに好ましくは0.5〜30重量%、
(d)成分:0.01〜10重量%、さらに好ましくは0.1〜5重量%。
【0065】
本発明組成物における有機溶剤(e)は、上記(a)〜(d)成分を溶解又は分散するための成分である。有機溶剤(e)としては、上記(a)〜(d)成分を溶解又は分散するものであれば特に制限なく、従来の有機溶剤から適宜選択して使用することができる。
【0066】
有機溶剤(e)の具体例としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系、エチレングリコールモノブチルエーテル等のアルコール系等が挙げられる。
【0067】
該有機溶剤(e)は、樹脂組成物の固形分が通常約10〜90重量%の範囲になるように配合される。
【0068】
本発明組成物は、上記した(a)〜(e)成分以外に、必要に応じてシランカップリング剤を配合することができる。該シランカップリング剤を用いると硬化性をそこなうことなく基材に対する付着性を向上させるといった利点がある。シランカップリング剤の例としては、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン等が包含される。
【0069】
シランカップリング剤を本発明組成物に配合する場合には、通常、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分の合計100重量部に対して、10重量部以内の範囲で使用される。
【0070】
更に、上記した以外にも必要に応じて硬化触媒、着色顔料、体質顔料、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、流動性調整剤及びその他の塗料用添加剤等が配合できる。
【0071】
本発明組成物は、金属、プラスチック等の基材に直接又はこれらのものにプライマーなどの塗料の塗装を施した塗装基材に塗装することができる。
【0072】
塗装膜厚は、乾燥膜厚で約1〜100μm 、好ましくは約10〜50μm の範囲が良く、また硬化条件は約60〜260℃の温度で加熱すれば約30秒〜180分間程度で硬化する。
【0073】
【発明の効果】
本発明塗料組成物によれば、特定のsp値を有する水酸基含有ポリエステル樹脂と特定の珪素化合物とを使用することにより、該ポリエステル樹脂、該珪素化合物及びポリエポキシドの3者の相溶性が著しく向上し、3者の反応が効果的に行われることになり、その結果として仕上り外観、塗膜性能(耐酸性、耐水性、耐候性、耐衝撃性など)に優れた塗膜を形成することができる。
【0074】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。以下、「部」及び「%」は、いずれも重量基準によるものとする。
【0075】
ポリエステル樹脂の製造
製造例1
温度計、撹拌機及び水分離機を備えたフラスコ内に下記成分を仕込んだ。
【0076】
ヘキサヒドロテレフタル酸 307部
ヘキサヒドロフタル酸 275部
トリメリット酸 90部
1,4−ジ(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン 474部
1,6−ヘキサンジオール 166部
モノブチル酸ハイドロオキサイド 0.1部
次いで内容物を撹拌しながら4時間かけて240℃まで加熱した。240℃に2時間保持した後、副生する縮合水の除去を促進するため、全仕込み量に対して4%のキシレンを加えて240℃でさらに反応を進め、酸価が8mgKOH/g となったところで加熱をやめ、シクロヘキサノンを加えて希釈し、固形分約60%のポリエステル樹脂溶液(A)を得た。得られた樹脂は、数平均分子量3,300、水酸基価(樹脂1gを中和するに要する水酸価カリウムのmg数)48mgKOH/g 、溶解性パラメータ値(sp値)10.7、ガラス転移温度(Tg点)14℃を有していた。
【0077】
製造例2
無水フタル酸 510部
アジピン酸 215部
トリメチロールエタン 100部
ネオペンチルグリコール 440部
モノブチル錫ハイドロオキサイド 0.1部
フラスコ内にはじめに仕込んでおく成分を上記の成分とする以外は製造例1と同様に行い、固形分約60%のポリエステル樹脂溶液(B)を得た。得られた樹脂は、数平均分子量4,400、水酸基価58mgKOH/g 、sp値11.3、Tg点−8℃を有していた。
【0078】
製造例3
イソフタル酸 410部
ヘキサヒドロフタル酸 380部
ネオペンチルグリコール 311部
ヘキサンジオール 233部
モノブチル錫ハイドロオキサイド 0.1部
フラスコ内にはじめに仕込んでおく成分を上記の成分とし、酸価が2mgKOH/g となったところで加熱をやめる以外は製造例1と同様に行い、固形分約60%のポリエステル樹脂溶液(C)を得た。得られた樹脂は、数平均分子量28,000、水酸基価2mgKOH/g 、sp値10.7、Tg点8℃を有していた。
【0079】
製造例4
イソフタル酸 239部
ヘキサヒドロフタル酸 469部
トリメチロールプロパン 73部
ネオペンチルグリコール 336部
ヘキサンジオール 189部
モノブチル錫ハイドロオキサイド 0.1部
フラスコ内にはじめに仕込んでおく成分を上記の成分とする以外は製造例1と同様に行い、固形分約60%のポリエステル樹脂溶液(D)を得た。得られた樹脂は、数平均分子量1,200、水酸基価113mgKOH/g 、sp値11.1、Tg点1℃を有していた。
【0080】
製造例5(比較用)
イソフタル酸 711部
テレフタル酸 178部
グリセリン 54部
ネオペンチルグリコール 306部
エチレングリコール 144部
モノブチル錫ハイドロオキサイド 0.1部
フラスコ内にはじめに仕込んでおく成分を上記の成分とする以外は製造例1と同様に行い、固形分約60%のポリエステル樹脂溶液(E)を得た。得られた樹脂は、数平均分子量1,900、水酸基価79mgKOH/g 、sp値12.2、Tg点32℃を有していた。
【0081】
ポリエポキシドの製造
製造例6
製造例1で得たポリエステル樹脂溶液(A)5,500部、下記式で示される化合物296部、ジブチル錫ラウレート2.93部及びシクロヘキサノン197部を混合し、80℃で3時間反応させ、固形分60%のポリエポキシド溶液(ニ)を得た。得られたポリエポキシドは、数平均分子量約3,900、水酸基価26mgKOH/g であり、1分子中に平均約2個のエポキシ基を有し、エポキシ当量1,950を有していた。
【0082】
【化6】
【0083】
製造例7
温度計、撹拌機を備えたフラスコ内に、キシレン490部、トリメチロールプロパン137部及びヘキサヒドロフタル酸462部を仕込み、次いで内容物を撹拌しながら、2時間かけて130℃まで加熱し、同温度で3時間保持してハーフエステル化反応を行った。次いで、60℃まで冷却し、この中にトリス(アセチルアセトナト)アルミニウム11部、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート1,584部及びキシレン45部を仕込み、内容物を撹拌しながら1時間かけて100℃まで加熱し、同温度でさらに反応を進め、酸価が1mgKOH/g となったところで加熱を止め、冷却して固形分約80%のポリエポキシド樹脂溶液(ホ)を得た。得られた樹脂は、数平均分子量約640、水酸基価77mgKOH/g 、1分子当たり平均約2.5個の脂環式エポキシ基を有しており、エポキシ当量約260を有していた。
【0084】
珪素化合物の製造
製造例8
冷却管、温度計、窒素吹込み管、撹拌機、滴下漏斗を備えた4つ口フラスコに、「コルコートES40」(日本コルコート社製、商品名、テトラエチルシリケートの平均約5量体、1分子中に平均約12個のエトキシ基を有する。)744g及びn−ブチル錫トリオクタノエート7gを仕込み140℃に昇温した。次いで滴下漏斗よりε−カプロラクトン684g(6モルに相当)を3時間かけて滴下し、次いで同温度で4時間撹拌後冷却し、ラクトン変性された珪素化合物(1)を得た。この化合物(1)は、1分子中平均12個のエトキシ基の内約6個が、下記式で示される基で置換されており、GPCによる数平均分子量は約1,600であり、珪素原子を平均5個有しており、前記示性式〔1〕におけるaは1.2、bは1.2であった。
【0085】
【化7】
【0086】
製造例9
冷却管、温度計、窒素吹込み管、撹拌機、滴下漏斗を備えた4つ口フラスコに、「コルコートMS51」(日本コルコート社製、商品名、テトラメチルシリケートの平均約4量体、1分子中に平均約10個のメトキシ基を有する。)470g及びn−ブチル錫トリオクタノエート1gを仕込み120℃に昇温した。次いで滴下漏斗よりε−カプロラクトン342g(3モルに相当)を3時間かけて滴下し、次いで同温度で2時間撹拌後冷却し、ラクトン変性された珪素化合物(2)を得た。この化合物(2)は、1分子中平均10個のメトキシ基の内約3個が、下記式で示される基で置換されており、GPCによる数平均分子量は約850であり、珪素原子を平均4個有しており、前記示性式〔1〕におけるaは1.75、bは0.75であった。
【0087】
【化8】
【0088】
製造例10
冷却管、温度計、窒素吹込み管、撹拌機、滴下漏斗を備えた4つ口フラスコに、「コルコートES40」744g、ベンジルアルコール648g及びトリス(アセチルアセトナト)アルミニウム0.1gの混合物を仕込み160℃で6時間撹拌して脱エタノール反応を行い276gのエタノールを除去した後冷却し、ベンジルアルコール変性された珪素化合物(3)を得た。この化合物(3)は、1分子中平均12個のメトキシ基の内約6個が、ベンジルオキシ基で置換されており、GPCによる数平均分子量は約1,100であり、珪素原子を平均5個有しており、前記示性式〔1〕におけるaは1.2、bは1.2であった。
【0089】
製造例11
冷却管、温度計、窒素吹込み管、撹拌機、滴下漏斗を備えた4つ口フラスコに、「コルコートES40」744g、3−メトキシ−3−メチルブタノール756g及びトリス(アセチルアセトナト)アルミニウム0.1gの混合物を仕込み160℃で6時間撹拌して脱エタノール反応を行い276gのエタノールを除去した後冷却し、3−メトキシ−3−メチルブタノール変性された珪素化合物(4)を得た。この化合物(4)は、1分子中平均12個のエトキシ基の内約6個が、3−メトキシ−3−メチルブトキシ基で置換されており、GPCによる数平均分子量は約1,200であり、珪素原子を平均5個有しており、前記示性式〔1〕におけるaは1.2、bは1.2であった。
【0090】
製造例12(比較用)
冷却管、温度計、窒素吹込み管、撹拌機、滴下漏斗を備えた4つ口フラスコに、「コルコートES40」744g及びn−ブチル錫トリオクタノエート7gを仕込み140℃に昇温した。次いで滴下漏斗よりε−カプロラクトン1,140g(10モルに相当)を3時間かけて滴下し、次いで同温度で4時間撹拌後冷却し、ラクトン変性された珪素化合物(6)を得た。この化合物(6)は、1分子中平均12個のメトキシ基の内約10個が、下記式で表される基で置換されており、GPCによる数平均分子量は約1,900であり、珪素原子を平均5個有しており、前記示性式〔1〕におけるaは0.5、bは2.0であった。
【0091】
【化9】
【0092】
実施例1
製造例1で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A)100部にタイペークCR−95〔石原産業(株)製、チタン白〕100部を混合し、ボールミルにて顔料分散を行い、次いでエポリードGT401(ダイセル化学工業社製、開環ε−カプロラクトン鎖含有4官能脂環式エポキシ化合物、分子量約790)30部、製造例7で得た珪素化合物(1)10部及びベンゾイルアセトナト・ビス(アセチルアセトナト)アルミニウム1.0部を配合しシクロヘキサノンを加えて均一に撹拌し、固形分60%の塗料組成物を得た。
【0093】
実施例2〜16及び比較例1〜6
実施例1において、水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A)の代わりに後記表1に示すポリエステル樹脂溶液を用いて、混合、顔料分散を行い、次いで表1に示す残りの成分を混合する以外は実施例1と同様に行って各塗料を作成した。なお、比較例4及び5の塗料は塗料安定性が悪く層分離を起こしたので塗膜性能の試験には供さなかった。なお表1における原材料の配合量は固形分量(金属キレートは有効成分量)による重量部表示である。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
表1における註はそれぞれ下記の意味を有する。
【0097】
(*1)ポリエポキシド(イ):「エポリードGT401」(ダイセル化学工業社製、開環ε−カプロラクトン鎖含有4官能脂環式エポキシ化合物、分子量約790)
(*2)ポリエポキシド(ロ):3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート
(*3)ポリエポキシド(ハ):「エピコート1001」(油化シェルエポキシ社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、数平均分子量約900、エポキシ当量約490)
(*4)珪素化合物(5):「コルコートES40」(日本コルコート社製、商品名、テトラエチルシリケートの平均約5量体、1分子中に平均約12個のエトキシ基を有する)
(*5)アルミニウムキレート:ベンゾイルアセトナト・ビス(アセチルアセトナト)アルミニウム
(*6)チタニウムキレート:ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセタト)チタニウム
(*7)ジルコニウムキレート:テトラキス(エチルアセトアセタト)ジルコニウム
(*8)錫キレート:ビス(アセチルアセトナト)モノブチル錫アセテート
上記各実施例及び比較例で得た塗料組成物のそれぞれについて試験塗板を作成し、下記試験方法に従って各種試験を行った。試験結果を後記表2に示す。
【0098】
試験塗板の作成
厚さ0.4mmの無処理アルミニウム板にKPカラー8652改プライマ(関西ペイント(株)製、プレコートメタル用ポリエステル樹脂系プライマ)を乾燥膜厚が約4ミクロンとなるように塗装し、素材到達最高温度(PMT)が220℃となる条件で40秒間焼付けてプライマ塗装板を得た。このプライマ塗装板に上記各実施例及び比較例で得たそれぞれの塗料組成物を乾燥膜厚が約18ミクロンとなるように塗装し、雰囲気温度260℃にて50秒間焼付けて各試験塗板を得た。この際、素材到達温度PMTは220℃であった。
【0099】
試験方法
塗膜外観:
試験塗板の塗膜外観を目視にて下記基準にしたがって評価した。
【0100】
○:異常が認められない
×:ツヤボケが認められる
塗面光沢:
JIS K 5400 7.6(1990)の60度鏡面光沢度に従い、入射角と受光角とがそれぞれ60度のときの反射率(%)を測定した。
【0101】
鉛筆硬度:
JIS K 5400 8.4.2に規定する鉛筆引っかき試験を行い、塗膜の破壊による評価を行った。
【0102】
加工性:
20℃の室内において、塗面を外側にして試験板を180°折曲げて、折曲げ部分にワレが発生しなくなるT数を表示した。T数とは、折曲げ部分の内側に何もはさまずに180°折曲げを行った場合を0T、試験板と同じ厚さの板を1枚はさんで折曲げた場合、1T、2枚の場合2T、3枚の場合3Tとした。
【0103】
耐溶剤性:
20℃の室内においてメチルエチルケトンを浸み込ませたガーゼにて塗面に約1kg/cm2の荷重をかけて、約5cmの長さの間を往復させた。プライマー塗膜が見えるまでの往復回数を記載した。50回の往復でプライマー塗膜が見えないものは50<と表示した。
【0104】
耐酸性:
濃度5%の硫酸水溶液に試験片を60℃で3時間浸漬した後の塗面を目視で下記基準にしたがって評価した。
【0105】
○:異常が認められない
×:著しい光沢低下がみられる
折曲げ部付着性:
試験板を塗面を外側にし、180°折曲げ、0T折曲げ加工を行い、この折曲げ部にテープを付着させ瞬時に剥離した場合の塗膜の残存程度を評価した。
【0106】
また試験板を沸騰水中に2時間浸漬した後の塗板について上記と同様に0T折曲げ加工を行い、加工部のテープ剥離テストを行い塗膜の残存程度を評価した。塗膜の剥離が全く又はほとんど認められない場合○とし、明らかに塗膜の剥離が認められる場合を×とした。
【0107】
【表3】
【0108】
【表4】
Claims (6)
- (a)溶解性パラメータ値(sp値)が10.0〜12.0の範囲の水酸基含有ポリエステル樹脂、
(b)ポリエポキシド、
(c)下記示性式〔1〕で表され、かつ1分子中に珪素原子を1〜20個有する珪素化合物
SiO(4−(a+b)/2)(OR1)a (OR2)b 〔1〕
(式中、R1 は炭素原子1〜3のアルキル基又は水素原子を、R2 はアラルキル基、又はエーテル結合及び/又はエステル結合を含有する炭素原子数4〜24の1価の炭化水素基を表す。aは0.10〜3.95、bは0.05〜1.95の数を表し、aとbとの和は4以下である。)、
(d)アルミニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物及び錫キレート化合物から選ばれる少なくとも1種のキレート化合物及び
(e)有機溶剤を含有することを特徴とする硬化性塗料組成物。 - ポリエステル樹脂(a)の水酸基価が2〜200mgKOH/g であることを特徴とする請求項1記載の硬化性塗料組成物。
- ポリエステル樹脂のガラス転移温度が、−40〜60℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載の硬化性塗料組成物。
- ポリエポキシド(b)が、脂環式ポリエポキシドであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性塗料組成物。
- ポリエポキシド(b)が、数平均分子量120〜20,000であることを特徴とする請求項4記載の硬化性塗料組成物。
- 珪素化合物(c)が、分子中に珪素原子を4〜8個有し、前記式〔1〕におけるaとbとの和が1.5〜2.5であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化性塗料組成物。
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