JP3984850B2 - 希土類永久磁石の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は希土類元素R、FeおよびCoの1種または2種T、ホウ素Bを主成分とする希土類永久磁石の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
R−Fe−B系焼結磁石、特にNd−Fe−B系焼結磁石は、磁気特性に優れていること、主成分であるNdが資源的に豊富で比較的安価であることから、需要は年々、増大している。Nd−Fe−B系焼結磁石の磁気特性を向上するための研究開発も精力的に行われており、様々な希土類永久磁石の製造方法が提案されている。
【0003】
Nd−Fe−B系焼結磁石は温度上昇に伴い保磁力が低下してしまうという問題点がある。このため、Dy、Tb等の重希土類元素の添加により室温の保磁力を高めることで、昇温により保磁力が低下しても使用に支障を来さない程度に維持できるように試みられている。しかし、重希土類元素のR2Fe14B化合物は、異方性磁界は高いが飽和磁化が低いために、その添加によって残留磁束密度が低下してしまう。(特公平5−10806号公報)
R2Fe14B化合物を主体とする主相用合金(R−T−B系合金)の粉末と、より希土類量の高いRリッチ相を主体とする合金(R−T系合金)の粉末とを混合する方法である混合法において、残留磁束密度を向上されることが提案されている(特開平6−207204号公報、特開平7−50205号公報)。
通常のNd−Fe−B系焼結磁石は、溶解・鋳造、粉砕、磁場中配向、圧縮成形、焼結、熱処理の一連の工程からなるプロセスによって製造される。このなかで、粉砕工程は、合金脆化のための水素吸収・脱水素工程(水素粉砕処理)、スタンプミル、ブラウンミルなどの機械粉砕により平均粒径数百μm程度の粗粉砕粉を得るための粗粉砕工程、主としてジェットミルを用いて平均粒径3〜5μmになるまで粉砕する微粉砕工程を順次実行する。
【0004】
水素粉砕処理では、合金の組成、作製方法によって水素粉砕処理条件、処理後の脆化の状態が異なる。例えば、鋳型を用いた通常の鋳造法により得たR−T−B系合金インゴットの場合、水素粉砕処理後に数mm程度の塊状の合金が残存するために、機械粉砕による粗粉砕工程が必要となる。一方、ストリップ・キャスト法により得たR−T−B系合金ストリップは、水素粉砕処理により数百μmまで粉砕することができるため、機械粉砕を経ることなく微粉砕が可能となる。したがって、R−T−B系合金のみからR−T−B系焼結磁石を得る方法においては、ストリップ・キャスト法を用いることが生産効率の点からは望ましい。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
R−T−B系磁石をR−T−B系合金とR−T系合金の混合法で作製するに際してDy、TbおよびHoの1種または2種以上を添加する場合、R−T−B系合金にDy、TbおよびHoを多く含むと成型時の配向が悪くなり、作製された磁石の残留磁束密度(Br)が低下する。そのため、混合法を適用する場合には、Dy、TbおよびHoの1種または2種以上をR−T系合金に添加することが望ましい。
ところが、前述した混合法にストリップ・キャスト法を適用する場合には、以下のような問題が生じた。つまり、混合法に用いる二種類の合金の一方の合金であるR−T系合金は、RがDy、TbおよびHoの1種または2種以上のみの場合に、水素粉砕処理をR−T−B系合金と同条件で行うと薄片の合金が残存することがあり、水素粉砕処理において加圧・加熱等による活性化が必要となり、そのための制御及び設備が必要である。
そこで本発明は、R−T−B系合金とR−T系合金を用いる混合法において、その粉砕工程の1つである水素粉砕処理に際し、二種類の合金を特別な制御・設備なしに平均粒径数百μmまで粗粉化することにより、粗粉砕工程を簡略化することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
ストリップ状のR−T−B系合金は、水素粉砕処理により微粉砕工程を省略できる程度の粒径まで粉砕することができる。ところが、RがDy、TbおよびHoの1種または2種以上のみの場合に、ストリップ状のR−T系合金は、水素粉砕処理を施しても微粉砕工程を省略できる程の粒径まで粉砕することができない。そこで、R−T系合金については、ストリップではなく、鋳型を用いた鋳造インゴットの形態で水素粉砕処理に供したところ、微粉砕処理工程を省略できる程度に粉砕することができることを知見した。
本発明は以上の知見に基づいてなされたものであり、R−T−B(R=Yを含む希土類元素の1種または2種以上、T=FeおよびCoの1種または2種、B=ホウ素)系希土類永久磁石を製造する方法であって、R2T14B化合物を主体とするR−T−B系合金ストリップ、RおよびTを主体とするR−T系合金インゴットを作製する工程と、前記R−T−B系合金ストリップおよび前記R−T系合金インゴットに対して水素吸収・放出処理を施すことにより粗粉砕粉末を得る工程と、前記粗粉砕粉末を微粉砕する微粉砕工程と、前記微粉砕工程で得られる微粉末を磁場中で成形し成形体を得る工程と、前記成形体を焼結する焼結工程とを含むことを特徴とする。
本発明は、混合法により希土類永久磁石を製造する際に、水素粉砕処理に供する合金の形態を特定することにより、水素粉砕処理後に機械的な粉砕を行うことなく、微粉砕を行うことのできる程度の粒径の粉末を得ることを可能とする。したがって、混合法による希土類永久磁石の製造コスト低減に寄与することができる。
【0007】
本発明の希土類永久磁石の製造方法において、前記R−T−B系希土類永久磁石を、R1−R2−T−B系の組成を有することが磁気特性の観点から望ましい。なお、R1:Yを含むDy、TbおよびHo以外の希土類元素の1種または2種以上、R2:Dy、TbおよびHoの1種または2種以上である。このとき、R−T−B系合金ストリップは、(R1R2)2T14B化合物を主体とするR1−R2−T−B系合金ストリップから構成することが望ましく、またR−T系合金インゴットは、R2−T系合金インゴットから構成することが望ましい。
本発明の希土類永久磁石の製造方法において、R−T−B系合金ストリップおよびR−T系合金インゴットに対して、水素吸収・放出処理を同一環境下で同時に行うことが望ましい。
また本発明の希土類永久磁石の製造方法において、R2としてDyを用いることが最も望ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る希土類永久磁石の製造方法について説明する。なお、本発明は、その製造方法に特徴があるため、はじめに製造方法について説明を行い、その後に希土類永久磁石の組成について述べることにする。
本発明のR−T−B系希土類永久磁石の製造方法では、R2T14B化合物を主体とするa合金と、RおよびTを主体とするb合金とを用意する。ここで、本発明は、a合金をストリップ・キャスト法により作製し、一方、b合金を鋳型を用いた鋳造法により作製する点に1つの特徴がある。
【0010】
まず、a合金は、ストリップ・キャスト法により得る。ストリップ・キャスト法は、合金溶湯を単ロール法または双ロール法により急冷凝固して帯状の鋳塊(ストリップ)を得る方法である。ストリップは、その結晶粒径が微細で、優れた磁気特性を得ることができるという特徴を有している。ストリップ・キャスト法に供される原料金属としては、純希土類元素あるいは希土類合金、純鉄、フェロボロン、さらにはこれらの合金等を使用することができる。真空中または不活性ガス雰囲気下で、高速で回転するロール上に所定組成の合金溶湯を帯状として滴下することにより、合金溶湯を急冷凝固させる。凝固した合金(ストリップ)は、急冷凝固により微細組織を有する。ストリップの厚さは、種々の条件により、2mm以下の範囲で変動させることができる。なお、得られたストリップ状のa合金を、a合金ストリップと称する。
次に、b合金は、原料金属を真空または不活性ガス、好ましくはAr雰囲気中で溶解し鋳造することにより得る。この鋳造は、所定形状のキャビティを有する鋳型を用いる場合が典型であるが、本発明は例えば遠心鋳造法も包含する概念を有している。得られたインゴット(b合金インゴット)に凝固偏析がある場合は、必要に応じて固溶化熱処理を行う。その条件は真空またはAr雰囲気下、700〜1500℃の領域で1時間以上保持すれば良い。
【0011】
a合金ストリップおよびb合金インゴットは、粗粉砕工程に供される。粗粉砕工程は、a合金ストリップおよびb合金インゴットを別々に行ってもよいし、同一環境下で同時に行なってもよい。以下では、同一環境下で同時に処理する例について述べる。
まず、a合金ストリップおよびb合金インゴットを粗粉砕工程に含まれる水素粉砕処理に供する。水素粉砕処理は、a合金ストリップおよびb合金インゴットを例えば吸排気可能な密閉した容器内に収容し、水素ガス圧が19.6〜245kPaとなるように水素ガスを供給してa合金ストリップおよびb合金インゴットに水素吸収を行わせる。
a合金ストリップとb合金インゴットの混合比率は、最終的に得たい組成と関連するが、重量比で75(a合金):25(b合金)〜97(a合金):3(b合金)程度とすればよい。
本発明において、a合金ストリップおよびb合金インゴットは、水素吸収・放出処理により粒状に粉砕可能な形態である。
【0012】
水素粉砕処理により得られた粒径数百μm程度の粉砕粉末を、微粉砕工程に供する。微粉砕は、主にジェットミルが用いられ、粒径数百μm程度の粗粉砕粉末が、平均粒径3〜5μmになるまで行われる。ジェットミルは、高圧の不活性ガス(例えば窒素ガス)を狭いノズルより開放して高速のガス流を発生させ、この高速のガス流により粉体の粒子を加速し、粉体の粒子同士の衝突やターゲットあるいは容器壁との衝突を発生させて粉砕する方法である。この微粉砕により、a合金とb合金は均一に混合される。
【0013】
次いで、a合金粉末およびb合金粉末からなる混合粉末を、電磁石に抱かれた金型内に充填し、磁場印加によってその結晶軸を配向させた状態で磁場中成形する。この磁場中成形は、800〜1300kA/mの磁場中で、100〜160MPa前後の圧力で行えばよい。
磁場中成形後、その成形体を真空または不活性ガス雰囲気中で焼結する。焼結温度は、組成、粉砕方法、粒度と粒度分布の違い等、諸条件により調整する必要があるが、1000〜1130℃で1〜5時間程度焼結すればよい。
【0014】
焼結後、得られた焼結体に時効処理を施すことができる。この工程は、保磁力Hcjを制御する重要な工程である。時効処理を二段に分けて行う場合には、800℃近傍、600℃近傍での所定時間の保持が有効である。800℃近傍での熱処理を焼結後に行うと、保磁力Hcjが増大するため、混合法においては特に有効である。また、600℃近傍の熱処理で保磁力Hcjが大きく増加するため、時効処理を一段で行う場合には、600℃近傍の時効処理を施すとよい。
以上では、図1に示すように水素吸収・粉砕処理の段階でa合金ストリップとb合金インゴットを混合する例について説明した。しかし、図2に示すように水素吸収・粉砕処理まで個別に行った後に水素粉砕により得られた粉末を微粉砕時に混合し、次いで磁場中成形、焼結および時効処理を行うというプロセスを採用することができる。さらに、図3に示すように、水素吸収・粉砕処理、微粉砕まで個別に行った後に得られた微粉砕粉末を混合し、しかる後に混合、磁場中成形、焼結および時効処理を行うというプロセスを採用することができる。製造コストを考慮すると、図1に示したプロセスを採用することが望ましい。
また、以上では、水素吸収・放出処理後に機械的な粉砕を行わないことを前提としたが、本発明はこの機械的な粉砕を否定するものではない。生産性の観点からすると、水素吸収・放出処理後に機械的な粉砕を行わないことが最も望ましいが、水素吸収・放出処理後に得られた粉末のサイズが微小であれば、機械的な粉砕を行ったとしても、軽微な条件、例えば短時間の粉砕で所望するサイズの粉末を得ることができる。機械的な粉砕は、スタンプミル、ジョークラッシャー、ブラウンミル等を用い、不活性ガス雰囲気中にて行うことが望ましい。
【0015】
本発明が対象とする希土類永久磁石の組成は、目的に応じ選択すればよいが、磁気特性に優れた希土類永久磁石を得るためには、希土類元素R:20〜40wt%、ホウ素B:0.5〜4.5wt%、FeおよびCoの1種または2種T:残部、となるような配合組成とすることが望ましい。
ここで、希土類元素Rは、Yを含む希土類元素(La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,YbおよびLu)の1種または2種以上である。希土類元素Rの量が20wt%未満であると、希土類永久磁石の主相となるR2T14B化合物相の生成が十分ではなく軟磁性を持つα−Feなどが析出し、保磁力Hcjが著しく低下する。一方、希土類元素Rが40wt%を超えると主相であるR2T14B化合物相の体積比率が低下し、残留磁束密度Brが低下する。また希土類元素Rが酸素と反応し、含有する酸素量が増え、これに伴い保磁力発生に有効なR−rich相が減少し、保磁力Hcjの低下を招くため、希土類元素Rの量は20〜40wt%とする。Ndは資源的に豊富で比較的安価であることから、希土類元素Rとしての主成分をNdとすることが好ましい。またDy、TbおよびHoは異方性磁界が大きく、保磁力Hcjを向上させる上で有効である。
R1:Yを含むDy、TbおよびHo以外の希土類元素の1種または2種以上、R2:Dy、TbおよびHoの1種または2種以上とすると、R−T−B系希土類永久磁石がR1−R2−T−B系の組成を有することが、磁気特性の観点から望ましい。
また、ホウ素Bが0.5wt%未満の場合には高い保磁力Hcjを得ることができない。但し、ホウ素Bが4.5wt%を超えると残留磁束密度Brが低下する傾向がある。したがって、上限を4.5wt%とする。望ましいホウ素Bの量は0.5〜1.5wt%である。
さらに、保磁力Hcjを改善するために、Mを加えてR−T−B−M系の希土類永久磁石とすることもできる。ここで、Mとしては、Al,Cr,Mn,Mg,Si,Cu,C,Nb,Sn,W,V,Zr,Ti,Moなどの元素を1種または2種以上添加することができるが、添加量が6wt%を超えると残留磁束密度Brが低下してくる。
【0016】
以上の組成を有する希土類永久磁石を得るために、本発明は前述した混合法を適用する。前述のように、a合金ストリップはR2T14B化合物を主体としている。R2T14B化合物を主体とするa合金ストリップを得るためには、例えば、その原料を(20〜34)wt%R―(0.6〜6.0)wt%B-bal.Feの組成範囲で調整する。また、b合金インゴットを得るためには、例えば、その原料を(30〜70)wt%R―bal.Feの組成範囲とする。これら原料には、適宜前述したM元素を加えてもよい。
R1−R2−T−B系の希土類永久磁石を製造する場合には、a合金ストリップを、(R1R2)2T14B化合物を主体とするR1−R2−T−B系合金ストリップから構成し、b合金インゴットを、R2−T系合金インゴットから構成することが、その水素吸収・放出処理における粉砕性にとって最も望ましい。
【0017】
【実施例】
次に、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
(実験例1)
重量%で、51%Dy−38%Fe−10%Co−1%Cu、51%Nd−38%Fe−10%Co−1%Cu、26%Nd−25%Dy−38%Fe−10%Co−1%Cuの3種類のR−T−M系合金を、鋳造法(厚さ10mmのインゴット)とストリップ・キャスト法(厚さ200μmのストリップ)で作製した。それぞれの合金を10〜60℃、101kPaの下で水素吸収処理を行い、その後300〜600℃に昇温して水素放出処理を行った。得られた処理粉を目の開き500μmのふるいで分級し、その回収量を分級処理した量に対する百分率で換算した。その結果を表1に示す。表1より以下のことが言える。なお、ジェット・ミル等の気流粉砕機により微粉砕を行うためには、平均粒径数百μmとすることが必要であり、したがって、500μmのふるいで分級してその回収量が100%であれば、機械的な手段で粗粉砕を行う必要がないことを示している。
【0018】
【表1】
【0019】
(1)実施例1と比較例1より、同一の組成を有するR−T−M系合金であっても、その製造方法が異なると、水素吸収・放出処理を施した後の粉砕性に差異があることがわかる。具体的に言うと、R−T−M系合金の場合、鋳造法により得られたインゴットの方がストリップ・キャスト法で得られたストリップよりも、水素吸収・放出処理による粉砕性が優れる。
(2)鋳造法により得られたインゴットは、希土類元素としてDy、TbおよびHoのいずれかのみを含む組成(実施例1、4および5)の場合に最も優れた粉砕性を有しており、機械的な粉砕処理を全く省くことができる。
以上より、R−T−B系希土類永久磁石を混合法で製造する場合、R−T系合金またはR−T−M系合金については、鋳型を用いた鋳造法により得たインゴットを水素吸収・放出処理に供することにより、その粉砕性を向上することができる。特に、R−T系合金またはR−T−M系合金がRとしてDy、TbおよびHoの1種または2種以上のみからなるときに、その後の機械的な粉砕処理を省略できることがわかった。
【0020】
(実験例2)
重量%で、29%Nd−1%Dy−68.9%Fe−1.1%BとしたR−T−B系合金を、鋳造法(厚さ10mmのインゴット)とストリップ・キャスト法(厚さ200μmのストリップ)で作製した。それぞれの合金を10〜60℃、101kPaの下で水素吸収処理を行い、その後300〜600℃に昇温して水素放出処理を行った。得られた処理粉を目の開き500μmのふるいで分級し、その回収量を分級処理した量に対する百分率で換算した。その結果を表2に示すが、R−T−B系合金の場合、ストリップ・キャスト法で作製されたストリップに対して水素吸収・放出処理を行った場合でも、その回収量が100%であり、機械的な手段による粗粉砕が不要であることがわかる。これに対して、鋳造法による比較例2は、分級量が少なく、機械的な手段による粗粉砕が必要であることがわかる。
【0021】
【表2】
【0022】
(実験例3)
重量%で、29%Nd−1%Dy−68.9%Fe−1.1%BとしたR−T−B系合金をストリップ・キャスト法(厚さ200μm)により作製した。この合金と実施例1のR−T−M系合金を重量比で90:10の割合で混合し、同時に実施例1と同様の条件で水素吸収・放出処理した。この水素粉砕処理粉を気流粉砕機にて平均粒径3〜5μmにまで微粉砕した。得られた微粉を1185kA/m(15kOe)の磁場中で147Mpa(1.5ton/cm2)の圧力で成形、この成形体を真空中において1050〜1090℃で4時間焼結した後、急冷し、Ar雰囲気中で二段時効処理を施して試料を作製した。
また、水素粉砕処理後にブラウンミルにて機械粉砕処理を行った粗粉砕粉に同様の処理を行い試料を作製した。さらに、R−T−B系合金とR−T−M系合金を別々に水素粉砕処理した後、水素粉砕処理粉をそのまま微粉砕した後R−T−B系合金微粉とR−T−M系合金微粉を重量比90:10の割合で混合し、成形以降の処理を行った試料と、水素粉砕処理粉をブラウンミルにて機械粉砕処理を行った後微粉砕した後混合し、成形以降の処理を行った試料を作製した。結果として、いずれの試料もBr=1.23〜1.25T、HcJ=1980〜2060kA/mと大きな差はなく、機械粉砕による粗粉砕工程の有無、R−T−B系合金とR−T−M系合金の同一環境での同時処理または個別処理によらず、特性に大きな変化はないことがわかった。
【0023】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、R−T−B系合金とR−T系合金を用いる混合法において、その粉砕工程の1つである水素粉砕処理に際し、二種類の合金を特別な制御・設備なしに平均粒径数百μmまで粗粉化することにより、粗粉砕工程を簡略化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による希土類永久磁石の製造工程の一例を示す図である。
【図2】 本発明による希土類永久磁石の製造工程の他の例を示す図である。
【図3】 本発明による希土類永久磁石の製造工程の他の例を示す図である。
Claims (4)
- R−T−B(R=Yを含む希土類元素の1種または2種以上、T=FeおよびCoの1種または2種、B=ホウ素)系希土類永久磁石を製造する方法であって、
R2T14B化合物を主体とするR−T−B系合金ストリップ、RおよびTを主体とするR−T系合金インゴットを用意し、
前記R−T−B系合金ストリップおよび前記R−T系合金インゴットに対して水素吸収・放出処理を施すことにより粗粉砕粉末を得る工程と、
前記粗粉砕粉末を微粉砕する微粉砕工程と、
前記微粉砕工程で得られる微粉末を磁場中で成形し成形体を得る工程と、
前記成形体を焼結する焼結工程と、
を含むことを特徴とする希土類永久磁石の製造方法。 - 前記R−T−B系希土類永久磁石が、R1−R2−T−B系の組成を有し(R1:Yを含むDy、TbおよびHo以外の希土類元素の1種または2種以上、R2:Dy、TbおよびHoの1種または2種以上)、
前記R−T−B系合金ストリップが、(R1R2)2T14B化合物を主体とするR1−R2−T−B系合金ストリップから構成され、かつ
前記R−T系合金インゴットが、R2−T系合金インゴットから構成されることを特徴とする請求項1に記載の希土類永久磁石の製造方法。 - 前記R−T−B系合金ストリップおよび前記R−T系合金インゴットに対して、水素吸収・放出処理を同一環境下で同時に行うことを特徴とする請求項1または2に記載の希土類永久磁石の製造方法。
- 前記R2がDyであることを特徴とする請求項2または3に記載の希土類永久磁石の製造方法。
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