JP3982744B2 - 像が形成された再帰反射性物品およびその製造方法 - Google Patents

像が形成された再帰反射性物品およびその製造方法 Download PDF

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Description

【産業上の利用分野】
【0001】
本発明は,像が形成された再帰反射性物品およびその製造方法に関し,鏡面反射層の部分的除去により像が形成された再帰反射性物品およびその製造方法に関する。
【0002】
詳しくは,本発明は,道路標識,工事標識等の標識類,自動車やオートバイ等の車両のナンバープレート類,衣料,救命具等の安全資材類,看板等のマーキング,可視光,レーザー光あるいは赤外光反射型センサー類の反射板等において有用な再帰反射素子の鏡面反射層の部分的除去により像が形成された再帰反射性物品およびその製造方法に関する。
【0003】
さらに詳しくは,平坦な第1面をもつ実質的に透明な層を含んでなる第1層と,鏡面反射層が露出している第2面をもつ再帰反射素子層を含んでなる第2層とからなる再帰反射性物品を用いて,
A.第2面の鏡面反射層上に光反応性樹脂層を設置する工程
B.選択的光照射により光反応性樹脂を部分的に反応させる工程
C.光反応性樹脂層の非反応領域を部分的に除去をする工程
D.鏡面反射層の部分的除去により像を形成する工程
により像が形成された再帰反射性物品およびその製造方法に関する。
【従来の技術】
【0004】
従来より,再帰反射性物品に像を形成する方法としてはさまざまな方法が提案されている。
【0005】
従来公知の像を形成する方法としては,表面保護層の表面(第1面)や内面などに印刷インキを用いて印刷法により像を形成する方法が一般的であった。印刷法による方法としては米国特許第3,154,872,第3,801,183,第4,082,426(特開昭53-68596号),第4,097,838が開示されている。ここでは,この文献の引用をもって,この具体的記述に代える。
【0006】
さらに,像を再帰反射素子上に直接設置する方法も知られている。
【0007】
ライトルの特表平10-500230号再帰反射製品およびその製造においては,
(a)微小球の層をキャリヤー上で支持すること;
(b)微小球の層の第1部分がその後方に機能的にコーティングされた反射性金属層を有し,且つ,第2部分がそのような反射性金属層を有しないように,支持された微小球の層に反射性金属層を選択的に蒸着すること;
(c)微小球の層をバインダー層の第1主要表面に部分的に埋め込むこと;
(d)微小球の層がバインダー層の第1主要表面に部分的に埋め込まれたまま残って第1及び第2セグメントを有する再帰反射製品が形成されるように微小球の層からキャリヤーを除去すること,但し,前記第1セグメントは微小球の埋め込まれた部分の後方に機能的に配置された蒸着された反射性金属層を有する;
と言う方法が開示されている。
【0008】
マーチンの特開平4-229244号においては,逆反射マイクロプリズム面上に形成された金属付着層に部分的に接着層を形成し,接着層により保護されていない金属層を引き剥がすことにより,部分的に金属層の設置されていない逆反射マイクロプリズムシートの形成方法が開示されている。また,部分的に設置する接着剤層(保護コーティング材)は後工程における溶剤処理段階にて甚だしい悪影響を受けない感圧接着剤であるのが望ましいと記載されている。さらに,設置する方法としては印刷法が記載されている。
【0009】
さらに,マーチンの特開平1-231004号においては,逆反射マイクロプリズム面上に形成された金属付着層に部分的に接着層を形成し,接着層により保護されていない金属層を引き剥がすことにより,部分的に金属層の設置されていない逆反射マイクロプリズムシートの形成方法と,逆反射マイクロプリズム面上に部分的に被覆材料を設置した後に,金属蒸着をほどこし,しかる後に,部分的に被覆した材料を除去することにより部分的に金属層の設置されていない逆反射マイクロプリズムシートの形成方法が開示されている。
【0010】
また,レーザーにより蒸着層を除去する方法も一般的に用いられている。
【0011】
ガラノス(Galanos)による米国特許第4,200,875号には,露出レンズ型再帰反射シートに,あらかじめ決められたパターンでレーザー法により像を形成する方法が開示されている。
【発明が解決すべき課題】
【0012】
本発明の目的は,像が形成された再帰反射性物品およびその製造方法に関し,鏡面反射層の部分的除去により像が形成された新規な再帰反射性物品およびその製造方法に関する。
【0013】
従来公知の像を形成する方法としては,表面保護層の表面(第1面)や内面などに印刷インキを用いて印刷法により像を形成する方法が一般的であった。しかしながらこのような印刷インキを用いる方法においては像を形成する樹脂層が外部からの光や水の侵入によって劣化が促進されやすく,耐久性の優れた像を得ることが困難であった。
【0014】
さらに,マーチンの特開平4-229244号や特開平1-2311004号に開示されているような,逆反射マイクロプリズム面上に形成された金属付着層に部分的に接着層を形成し,接着層により保護されていない金属層を引き剥がすことにより,部分的に金属層の設置されていない逆反射マイクロプリズムシートの形成方法においては,接着剤層を印刷法などで設置する必要があるためにプリズム間の溝に沿って溶剤を含んだ接着剤が流れ出して鮮明な像が形成しづらいという問題点があった。さらに,溶剤によりプリズムが変形を起こし再帰反射性能が低下するという問題点もあった。
【0015】
また,レーザーにより蒸着層を除去する方法も一般的に用いられている。しかしながら,レーザー法による像の形成方法は反射素子である微小硝子球やプリズムの部分的破壊を起こすために,再帰反射性能を低下させるという問題点があった。さらに,用いることのできるレーザー光線の径が小さいために形成しうる像は微小点の集合像として得られるために,鮮明な像が得られにくく,広範囲の像を形成するのが困難であった。
【0016】
本発明の目的は,上記の従来公知技術の問題点を改善するために,鏡面反射層の部分的除去により像が形成された新規な再帰反射性物品およびその製造方法の提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は,平坦な第1面をもつ実質的に透明な層を含んでなる第1層と,鏡面反射層が露出している第2面をもつ再帰反射素子層を含んでなる第2層とからなる再帰反射性物品を用いて,
A.第2面の鏡面反射層上に光反応性樹脂層を設置する工程
B.選択的光照射により光反応性樹脂を部分的に反応させる工程
C. 光反応性樹脂層の選択領域を部分的に除去をする工程
D.鏡面反射層の部分的除去により像を形成する工程
により像が形成された再帰反射性物品およびその製造方法に関する。
【0018】
本発明で用いることのできる再帰反射性物品の種類は,平坦な第1面をもつ実質的に透明な層を含んでなる第1層と,鏡面反射層が露出している第2面をもつ再帰反射素子層を含んでなる第2層とからなる再帰反射性物品であれば適宜選択することができるが,再帰反射素子層が封入レンズ型,カプセルレンズ型および鏡面反射式プリズム型再帰反射素子の群より選ばれた再帰反射素子より構成されてなる再帰反射性物品が好ましい。
【0019】
封入型の再帰反射素子の例としては,再帰反射部分を構成する再帰反射素子の直径が30〜500μmの微小硝子球型再帰反射素子が好ましく,表面が平滑で透明な表面保護層により覆われている。30μm未満の直径の反射素子においては,回折効果による光の発散が過大となり再帰反射性能が低下し好ましくなく,500μmを超える直径の反射素子においてはシートの厚さが過大となり,また,形成される像の鮮明度が低下するので好ましくない。
【0020】
カプセルレンズ型再帰反射素子の例としては,再帰反射部分を構成する再帰反射素子の直径が30〜500μmの微小硝子球型再帰反射素子が好ましく,表面保護層を構成するプラスチックフイルムは表面が平滑で透明である。封入レンズ型再帰反射シートと同様に30μm未満の直径の反射素子においては,回折効果による光の発散が過大となり再帰反射性能が低下し好ましくなく,500μmを超える直径の反射素子においてはシートの厚さが過大となり,また,形成される像の鮮明度が低下するので好ましくない。
【0021】
鏡面反射式プリズム型素子の例としては,再帰反射部分を構成する再帰反射素子の高さが50〜500μmのキューブコーナー型再帰反射素子であって,素子の反射表面が金属薄膜により鏡面処理化されて鏡面反射層が形成されている再帰反射素子があげられる。素子の高さが50μm未満のキューブコーナー反射素子においては回折効果による光の発散が過大となり再帰反射性能が低下し好ましくなく,500μmを超える高さのキューブコーナー反射素子においてはシートの厚さが過大となり,また,形成される像の鮮明度が低下するので好ましくない。
【0022】
鏡面反射式プリズム型素子の好適な実施態様としては,断面が実質的に対称型のV字状の溝が互いに交叉することにより形成される底面が三角形であり,3つの略直角に交叉する側面によって区切られた一対の鏡面反射式三角錐型プリズム型素子が好ましい。
【0023】
また,鏡面反射式プリズム型素子のもつ光学軸は,再帰反射時の入射角特性を改善するために傾斜することができる。傾斜する角度は0.5〜12度,好ましくは0.6〜10度,さらに好ましくは0.7〜1.5度であり,傾斜する方向はお互いに対峙する一対の鏡面反射式三角錐型プリズム型素子の光学軸が互いに近づく方向でも,遠ざかる方向のいずれでもよい。
【0024】
好ましい鏡面反射式三角錐型プリズム型素子の例としては,共通する一底面(X−X′)上に突出した三角錐型キューブコーナー再帰反射素子が,互いに該底面(X−X′)上の一つの底辺を共有して,相対峙して該底面上に最密充填状に配置されており,該底面(X−X′)は該三角錐型反射素子が共有する多数の該底辺(x,x,....)を包含する共通の一平面であり,相対峙する二つの該三角錐型反射素子は該底面(X−X′)上の共有する底辺(x,x,....)を含む該底面に垂直な平面(Y−Y′,Y−Y′,....)に対してそれぞれ対称となるように向き合った実質的に同一形状の素子対をなしており,該三角錐型反射素子は該共有する底辺(x,x,....)を一辺とする実質的に同一の五角形状の傾斜面(c1,c2)と,該三角錐型反射素子の頂点(H)を起点とする前記c1面又はc2面の上部の二辺をそれぞれ一辺とし,該三角錐型反射素子の一つの稜線を共有して,これを一辺とする該c1面又はc2面と直角に交叉する実質的に同一の四角形状の傾斜面(a1面,b1面;a2面,b2面)から成り,該三角錐型反射素子の頂点(H)から,該三角錐型反射素子の五角形状の傾斜面(c1,c2)の底辺(x,x,....)を含む該底面(X−X′)までの高さ(h)が,該三角錐型反射素子の頂点(H)から,該三角錐型反射素子の他の傾斜面(a1面,b1面;a2面,b2面)の底辺(z,w)を包含する実質的に水平の面(仮想面Z−Z′)までの高さ(h′)よりも実質的に大であることを特徴とする鏡面反射式プリズム型素子をあげることができる。このような素子を含む三角錐型キューブコーナー再帰反射シートについては,国際公開特許第WO 01/57560A1号に記載されており,ここでは,この文献の引用をもって,この具体的記述に代える。
【0025】
さらに好ましい鏡面反射式プリズム型素子の例としては,該三角錐型キューブコーナー再帰反射素子が,断面が実質的に対称形のV字状の溝が互いに交叉することにより, 3つの互いに略直角に交叉する側面(a1面, b1面, c1面;a2面, b2面, c2面;…), によって区切られた一対の三角錐型キューブコーナー再帰反射素子が共通する一底面(S-S’)上の一方の側に突出するように最密充填状に配置されており, 該一対の三角錐型再帰反射素子は, 互いに向かい合った側面(c1面, c2面)が一つの底辺(x)を共有して対をなしており, 該底面(S-S’)は, 該一対の三角錐型再帰反射素子の一方の側面(a1面, a2面)の底辺(z, z)および他方の側面(b1面, b2面)の底辺(y, y)とを共に包含する共通の一平面であって, 該底辺(x)を共有する該一対の三角錐型再帰反射素子は, 互いに向かい合った側面(c1面, c2面)が異なる形状を有し, かつ, 該平面(S-S’)からの頂点までの高さが互いに異なることを特徴とする鏡面反射式プリズム型素子をあげることができる。このような素子を含む三角錐型キューブコーナー再帰反射シートについては,特開2001−264525号に記載されており,ここでは,この文献の引用をもって,この具体的記述に代える。
【0026】
再帰反射素子の鏡面反射層を構成する物質には,例えば,アルミニウム,銀,ニッケル,銅、金などの金属薄膜をそれぞれ単独に,あるいは複合して設置することができる。鏡面反射層を設置する方法としては,蒸着法,スパッタリング法,電気メッキ法,化学メッキ法または金属光沢調の外観をもつインキまたは塗料による金属調樹脂層設置法などを適宜採用することができる。また,設置する鏡面反射層の厚さは,0.2〜2μm,好ましくは0.5〜1.5μmの厚さを例示することができる。
【0027】
上記の鏡面反射層は特にアルミニウム鏡面反射層が好ましい。アルミニウム鏡面反射層の連続蒸着処理装置は、真空度が7〜9×10−4mmHg程度に維持できる真空容器、その中に設置された基体シート及びその光入射側表面上に積層された表面保護層からなるプリズム原反シートを繰り出す巻き出し装置、蒸着処理されたプリズム原反シートを巻き取る巻き取り装置、並びにそれらの間にあって、黒鉛坩堝中で電熱ヒーターでアルミニウムを溶融させることが可能な加熱装置よりなっている。黒鉛坩堝中には純度が99.99重量%以上の純アルミニウムペレットが投入され、例えば、交流電圧350〜360V、電流が115〜120A、処理速度が30〜70m/分の条件で、溶融され蒸気化されたアルミニウム原子によって再帰反射素子の表面に鏡面反射層を例えば0.2〜2μmの厚さで蒸着処理することができる。
【0028】
本発明における,平坦な第1面をもつ実質的に透明な層を含んでなる第1層は,封入型の再帰反射素子の場合は再帰反射部分を構成する再帰反射素子の直径が30〜500μmの微小硝子球型再帰反射素子と直接接触しており,カプセルレンズ型再帰反射素子の場合には部分的な密封封入構造を介して空気層で隔たれている。また,鏡面反射式プリズム型素子の場合には反射素子層と密着するように独立した層として構成されていてもよく,あるいは,プリズム型素子を構成する樹脂層と同一の層として構成されていてもよい。
【0029】
本発明における第1層の厚さは,本発明の目的である形成された像の視認性を妨げない範囲で適宜選択することができるが,好ましい厚さとしてはいずれのタイプの素子においても,10〜2000μm,さらに好ましくは,20〜100μmが例示される。
【0030】
さらに,第1層に用いることのできる樹脂は,再帰反射性能や像の視認性を向上するために透明性の優れたものを用いることが望ましい。本発明に用いる第1層の透明性としては,着色されていない無色の樹脂の場合には,光線透過率が50〜98%,好ましくは,60〜97%のものを用いることができる。
【0031】
本発明における,平坦な第1面をもつ実質的に透明な層を含んでなる第1層に用いることのできる樹脂といては,各種の透明プラスチック材質を用いることができ,例えば,ポリカーボネート樹脂,塩化ビニル樹脂,(メタ)アクリル樹脂,エポキシ樹脂,ポリスチレン樹脂,ポリエステル樹脂,フッ素樹脂,ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂,セルロース系樹脂及びポリウレタン樹脂などをそれぞれ単独又は組み合わせて用いることができる。
【0032】
さらに、耐候性を向上する目的で紫外線吸収剤、光安定剤及び酸化防止剤などをそれぞれ単独あるいは組み合わせて用いることができる。さらに着色剤として各種の有機顔料、無機顔料、蛍光顔料、染料および蛍光染料などを含有させることができる。
【0033】
つぎに,本発明において,平坦な第1面をもつ実質的に透明な層を含んでなる第1層と,鏡面反射層が露出している第2面をもつ再帰反射素子層を含んでなる第2層とからなる再帰反射性物品を用いて,
A.第2面の鏡面反射層上に光反応性樹脂層を設置する工程
B.選択的光照射により光反応性樹脂を部分的に反応させる工程
C.光反応性樹脂層の選択領域を部分的に除去をする工程
D.鏡面反射層の部分的除去により像を形成する工程
により像が形成する工程を以下に説明する。
【0034】
第1の工程である第2面の鏡面反射層上に光反応性樹脂層を設置する工程としては,鏡面反射層が露出している第2面に連続または枚様でのスクリーン印刷法,グラビア印刷法,各種のコーティング法,スプレー法などで直接塗工する方法が採用できる。
【0035】
この際に,あらかじめ光反応性樹脂を設置する領域を限定して,印刷法やコーティング法などによって部分的に設置することもできる。
【0036】
または,シート状の光反応性樹脂を鏡面反射層に熱ロールで圧力をかけて積層する方法も採用することができる。
【0037】
本発明において,第2面の鏡面反射層上に設置する光反応性樹脂層を形成する層の最小部分の厚みが10〜200μmであることが望ましい。さらに好ましくは30〜100μmが望ましい。
【0038】
10μm未満の場合には鏡面反射層を部分的に除去する際に,鏡面反射層を除去する薬剤が光反応性樹脂層を通じて浸透して鏡面反射層と反応するので好ましくない。また,200μmを超える場合には,選択的に光反応を行う際に光反応性樹脂層の内部において光の散乱が起こりやすく,鮮明な像の形成が困難になるので好ましくない。さらに,鏡面反射層を部分的に除去する際に,鏡面反射層を除去する薬剤の進入が困難になり鏡面反射層を除去が困難になり,やはり,鮮明な像の形成が困難になるので好ましくない。また,光反応性樹脂層の厚さが過大となり柔軟なシート製品を得にくいので好ましくない。
【0039】
本発明において,第2面の鏡面反射層上に設置する光反応性樹脂層は光重合性,光縮合成,光架橋性および光分解性の樹脂を適宜用いることができる。これらの樹脂は光の照射により溶解性の変化,液体から固体への相変化および接着性の変化などの物理的性質変化を起こし部分的な像の形成を可能とする。
【0040】
本発明に用いることのできる光反応性樹脂の第1の例としては,いわゆる,UV硬化型インキとして用いられるようなアクリルプレポリマーをビヒクルとして,これに反応性モノマー,光重合開始剤および助剤類を加えたUV硬化型樹脂を用いることができる。ビヒクルとしては重量分子量が1000〜5000程度のポリエステルアクリラート,エポキシアクリラート,ウレタンアクリラートなどのアクリルポリマー類やアクリロイル基が導入された変性アルキッド樹脂などを用いることができる。
【0041】
ポリエステルアクリラートの例としてはアジピン酸と1,6−ヘキサンジオールより得られるポリエステル樹脂の両末端にアクリロイル基を導入したプレポリマーなどが上げられる。エポキシアクリラートの例としてはエポキシ樹脂の両末端のグリシジル基とアクリル酸とを反応させたプレポリマーなどを用いることができる。ポリウレタンアクリラートの例としてはアジピン酸と1,6−ヘキサンジオールより得られるポリエステル樹脂の両末端をトリレンジイソシアネート樹脂で反応させた後に,引き続いて,2−ヒドロキシエチルアクリレートで反応させたプレポリマーなどを用いることができる。
【0042】
用いることのできる反応性モノマーの例としては,ジエチレングリコールジアクリレート,ネオペンチルグリコールジアクリレート,1,6−ヘキサンジオールジアクリレート,トリメチロールプロパントリアクリレート,ペンタエリスリトールトリアクリレートなどの多官能性アクリラート類を用いることができる。
【0043】
上記の光反応性樹脂に用いることのできる光重合開始剤としては,UV光を吸収して重合反応に有効なラジカルを効率よく発生するものが好ましい。たとえば,各種のベンゾイン誘導体,2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン,水素供与体の存在下でUV光照射により水素引き抜き反応を起こしてラジカルを発生するベンゾフェノン,チオキサントンなどの芳香族カルボニル化合物を用いることができる。さらに,アミン類を添加することによりラジカルの発生を効率的にすることもできる。
【0044】
さらに,各種の顔料,チキソトロピー付与剤,熱重合禁止剤,ワックス類などを添加することもできる。
【0045】
これらの,UV硬化型の樹脂は各種の印刷法,たとえば,スクリーン印刷法,グラビア印刷法,さらに,各種のコーティング法により鏡面反射層上に設置することができる。
【0046】
本発明に用いることのできる光反応性樹脂の第2の例としては,p−ジアゾフェニルアミンをパラホルムアルデヒドで縮合して芳香族スルホン酸塩とすることで得られる,いわゆるネガ型のジアゾ樹脂感光材料を用いることができる。
【0047】
上記の芳香族スルホン酸塩は2−エチルヒドロキシメタクリラート−メチルメタクリラート共重合樹脂などのバインダーポリマーと混合して用いることが好ましい。このような光反応性の樹脂は光照射によりジアゾ基が分解して不溶化することができる。
【0048】
本発明に用いることのできる光反応性樹脂の第3の例としては,側鎖にアリール基が導入されたアクリルポリマーバインダー,多官能性アクリラートモノマーおよび光重合開始剤から構成されている光重合型フォトポリマーを用いることができる。
【0049】
側鎖にアリール基が導入されたアクリルポリマーバインダーに用いることのできるアクリルモノマーの例としては各種のアクリル酸,メタクリル酸,アクリル酸エステル類,メタクリル酸エステル類およびアリールメタクリレートなどを用いることができる。
【0050】
本発明に用いることのできる多官能性アクリラートモノマーの例としては,ジエチレングリコールジアクリレート,ネオペンチルグリコールジアクリレート,1,6−ヘキサンジオールジアクリレート,トリメチロールプロパントリアクリレート,ペンタエリスリトールトリアクリレートなどを用いることができる。
【0051】
本発明に用いることのできる光重合開始剤の例としては,各種の有機過酸化物,ジフェニルヨウドニウム塩,N−フェニルグリシン,トリクロロメチルトリアジンおよび鉄アレーン錯体などを用いることができ,さらに,チオピリリウム塩,ケトクマリン色素,チオキサンテン色素などの光増感剤と併用して用いることが好ましい。
【0052】
本発明に用いることのできる第3の光反応性樹脂の例としては,一般的にフォトレジスト材料として光照射により耐エッチング性の薄膜を形成して金属の部分的なエッチング処理を行うために用いられるレジスト用光反応性樹脂をあげることができる。
【0053】
レジスト用光反応性樹脂の具体的な例としては,o−ナフトキノンジアゾスルフォン酸をノボラック樹脂,2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンあるいはテトラヒドロキシベンゾフェノンなどにエステル化した感光剤と,クレゾール型ノボラック樹脂とを混合したポジ型のフォトレジスト樹脂をあげることができる。
【0054】
o−ナフトキノンジアジド化合物は光照射により分解して,カルベン,ケテン構造を経由して,アルカリ可溶な3−インデンカルボン酸型化合物に変化する。光照射前にはo−ナフトキノンジアジドスルフォニル基は,ノボラック樹脂に対して溶解促進剤として作用するが,光分解後には溶解促進剤として作用するので,アルカリ水溶液に対する光照射部分の溶解性が増大して,露光部分のみが溶解除去されてポジ型の像が形成される。
【0055】
上記のようなタイプのポジ型のフォトレジスト樹脂は,紫外線領域から可視光領域にわたって優れた解像度と耐アルカリ性を持つのでエッチング適性に優れており,本発明の像の形成された再帰反射性物品の形成に好ましい。
【0056】
水溶性のフォトレジスト材料例としては,カゼイン,グルー,ポリビニールアルコールなどの水溶性高分子に2〜9%の重クロム酸塩を添加した材料をあげることができる。
【0057】
また,ケイ皮酸系レジスト材料も用いることができる。このレジスト材料はポリビニールアルコールに,光二量化型の感光基をもつケイ皮酸クロリドを反応させたものであり,230〜450nmの紫外線を照射することにより不溶の樹脂を生成する。さらに,光増感剤として5−ニトロアセナフテンや1,2−ベンズアントラキノンなどを添加することが好ましい。
【0058】
さらに,ゴム系のレジスト材料も用いることができる。このレジスト材料は,たとえば,天然ゴム,環化ポリイソプレン,ポリブタジエンなどのゴムに感光剤としてビスアジド化合物を添加したものである。光照射によりアジド基が分解して反応性のニトレン中間体となり,これがゴムと反応して不溶化する。
【0059】
これらゴム系のレジスト材料に用いるビスアジド化合物としては,2,6−ジ−(4‘−アジドベンジリデン)シクロヘキサンや2,6−ジ−(4‘−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサンなどをあげることができる。
【0060】
これらのゴム系のレジスト材料は耐薬品性,耐久性および解像度に優れているので,本発明の像の形成された再帰反射性物品の形成に好ましい。
【0061】
本発明で用いることのできる第4の光反応性樹脂の例としては,一般にドライフイルムフォトレジストとして電子機器のプリント配線の形成等の用途に製品として販売されているシート状の光反応性樹脂である。通常は両面に保護フイルムをサンドイッチされた形状で販売されており,保護フイルムを剥離しながら本発明に用いる再帰反射性物品の鏡面反射層と加熱圧着してラミネートする。
【0062】
ドライフイルムフォトレジストに用いる材料はバインダーポリマー,多官能性モノマー,重合開始剤,熱重合禁止剤,密着付与剤および可塑剤などで構成されている。バインダーポリマーの例としてはメチルメタアクリラートを主成分とする(メタ)アクリラート樹脂,または,スチレン,アクリロニトリルと(メタ)アクリル酸共重合物を用いることができる。重合開始剤としてはベンゾイン誘導体や2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどを用いることができる。
【0063】
このドライフイルムフォトレジストは紫外線の照射によりアルカリ現像液に不溶となる。用いることのできるシートの厚みとしては,10〜100μm,好ましくは10〜50μmを例示することができる。このようなシート状の光反応性樹脂は,均一な膜形成が可能であるために解像度に優れており,本発明の像の形成された再帰反射性物品の形成にとくに好ましい。また,溶剤を用いないために再帰反射性物品の鏡面層を通じて再帰反射素子の溶剤による変形が起こらないために,プリズム型再帰反射性物品の場合にとくに好ましい。
【0064】
ドライフイルムフォトレジストと再帰反射性物品の鏡面反射層と加熱圧着してラミネートするさいには,熱による素子の変形が起こらないように注意する必要がある。たとえば,プリズム層にポリカーボネート樹脂を用いた鏡面反射式プリズム型再帰反射性物品の場合には,たとえば,加熱温度50〜90度で加圧力2kg/cm2の条件を例示することができる。加熱温度が低い場合には鏡面反射層との密着が不十分となり現像液の浸入がおこり好ましくなく,高すぎる場合にはプリズム素子の変形により再帰反射性能が低下して好ましくない。この圧着温度と圧力は再帰反射性物品に用いられている樹脂とレジストフイルムの熱変形温度により適宜選択されるべきである。
【0065】
上記のようにして設置された光反応性樹脂は,第2の工程として選択的に光を照射することにより,光重合,光縮合,光架橋および光分解を行なわれ,所望の像に一致したパターンで光反応性樹脂層を除去することができる。
【0066】
選択的な光の照射法としては,像パターンが印刷又はくり抜かれた光遮蔽マスクを用いる方法,レーザービームなどを用いて像を連続的に形成する方法などを用いることができる。用いるレーザービームとしては可視光レーザーである波長436nmのg線,紫外線レーザーとしては波長365nmのi線やKrFによる発生される波長248nmのエキシマレーザー線などを用いることができる。
【0067】
本発明において,光反応性樹脂の反応に用いる光とは,光重合,光縮合,光架橋および光分解を行うことができれば,特に可視光に限定されるものではなく,紫外線光,赤外線光、遠赤外線あるいはX線などの電磁波も含まれる。
【0068】
生成する像の形状は特に限定されるものではなく,文字やロゴなどの情報パターンを設置したり,部分的に鏡面反射層を除去することにより夜間における再帰反射性を低下あるいは消失せしめたり,昼間での色相や反射光色相の変化によって視別可能な模様,情報の設置などを行うことができる。
【0069】
さらに,薄層アンテナ付の非接触型IC通信装置が積層された再帰反射性物品においては,鏡面反射層を部分的に除去し,その反射素子層の下面に設置した情報通信用の薄層アンテナの受信感度を向上することもできる。
【0070】
上記で記載した選択的に光反応を行った光反応性樹脂は,第3の工程として各種の溶剤などを用いて,光重合性,光縮合性,ネガ型の光架橋性樹脂の場合には光を照射しなかった非反応部分を,また,ポジ型の光分解性樹脂の場合には光を照射した分解反応部分を部分的に除去する。
【0071】
光反応をおこなった後に,可溶性部分として残った部分は各種の溶剤で除去されるが,用いることのできる除去するための溶剤としては用いる光反応性樹脂の溶解性に合わせて適宜選択できるが,たとえば,水系のエマルジョンタイプ樹脂の場合には水や酸水溶液,アルカリ水溶液を用いることができ,また,各種の有機溶剤を用いてもよい。
【0072】
ついで,第4の工程として部分的に光反応性樹脂を除去し鏡面反射層が露出している再帰反射性物品を,各種の酸やアルカリ水溶液または有機酸を用いて露出した鏡面反射層を部分的に除去する。
【0073】
この鏡面反射層の除去工程は前記で説明した光反応性樹脂の除去工程で用いる除去溶剤がアルカリ水溶液などの場合には,一連の工程として引き続いて行われてもよい。
【0074】
さらに,光反応性樹脂や鏡面反射層を除去するのに用いたアルカリや酸は,中和剤や水を用いて洗浄を行い,近接する鏡面反射層の残留部分が侵されないようにするのが好ましい。
【0075】
残留した光反応性樹脂層はそのまま残しても残さなくても構わない。光反応性樹脂層を除去するには,さらに強力な溶剤などを用いて取り除いたり,粘着剤シートを積層した後に光反応性樹脂層と共に引き剥がすなどの方法を用いることができる。
【0076】
本発明においては鏡面反射層を除去した領域に着色剤を設置して像を着色することも可能である。着色する方法としては各種の顔料や染料などを含有した着色樹脂を塗布する方法が採用できる。また,着色樹脂中に金属箔やパール顔料を含有せしめた金属調外観をもつ樹脂を設置したり,光透過性の着色樹脂層を設置した後に再び鏡面反射層を設置することにより,着色領域に再帰反射性能を付与することも可能である。
【0077】
上記のようにして作成した像の形成された再帰反射性物品は,アルミニウム,鉄,プラスチック、ガラス,紙や木板などに積層する目的で接着剤や粘着剤を積層することができる。積層する方法としては接着剤と剥離ライナーを積層した接着剤ライナーと再帰反射性物品とを圧着ロールで必要に応じて熱をかけながら圧着する方法が採用できる。
【0078】
本発明の再帰反射シートに用いることのできる接着剤としては、感圧型接着剤、感熱型接着剤、架橋型接着剤などを適宜選択できる。感圧接着剤としてはブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ノニルアクリレートなどアクリル酸エステルをアクリル酸、酢酸ビニルなどと共重合して得られるポリアクリル酸エステル粘着剤やシリコン樹脂系粘着剤、ゴム系粘着剤などを用いることができる。感熱型接着剤としてはアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系樹脂などを用いることができる。
【0079】
次に図によって本発明をより詳しく説明する。
【0080】
図1は従来技術に基づく封入型再帰反射性物品を説明する断面図である。印刷層3が印刷法により設置されて像が形成されている。鏡面反射層7が焦点層6を介して微小硝子球5に設置された再帰反射素子を形成し,固着層を介して平坦で透明な表面層2に積層されている。さらに,鏡面反射層には接着剤層8および剥離材層9が設置されており,入射光1を光の入射した方向に再帰反射するように作られている。
【0081】
つぎに,図2〜図7によって本発明における像が形成された封入型再帰反射性物品の形成方法を詳細に説明する。
【0082】
図2は従来技術により形成された像の形成されていない封入型再帰反射性物品の断面図である。第1面は平坦で透明な表面層2をもち,第2面は鏡面反射層7が焦点層6を介して微小硝子球5に設置された再帰反射素子が露出している。
【0083】
図3は露出した鏡面反射層7の上に光反応性樹脂10が積層されている。
【0084】
図4は積層された光反応性樹脂10の上に,光遮蔽マスク11を設置し,光を照射して選択的な光反応を行う工程を説明する図である。選択的な光反応は図4に示されるようなマスクを用いずにレーザービーム法により選択的に光を照射することにより達成することも出来る。
【0085】
図5は選択的光反応により形成された光反応部分を各種の溶剤などを用いて,光重合性,光縮合性のネガ型の光架橋性樹脂の場合には光を照射しなかった非反応部分を,また,ポジ型の光分解性樹脂の場合には光を照射した分解反応部分を部分的に除去する工程を説明する図である。光反応性樹脂層10は像を形成する部分が除去されており,鏡面反射層が露出している。
【0086】
図6は図5の工程で露出した鏡面反射層7を除去溶剤により除いて,その部分に像が形成された再帰反射性物品である。
【0087】
図7は図6における像が形成された再帰反射性物品を,各種の基材に貼り付けるために接着剤層8を設置した図である。
【0088】
図8は従来技術に基づき,印刷法により像3が形成された鏡面反射式プリズム型再帰反射性物品を説明する断面図である。第1面は透明で平坦な表面層2をもち,プリズム層12におけるプリズム素子の反射表面には鏡面層7があり,さらに,接着剤層8および剥離材層9が設置されている。
【0089】
つぎに,図9〜図12によって本発明における像が形成された鏡面反射式プリズム型再帰反射性物品の形成方法を詳細に説明する。
【0090】
図9は光反応性樹脂10が鏡面層7に設置されたプリズム型再帰反射性物品に光遮蔽マスク11を設置し,光を照射して選択的な光反応を行う工程を説明する図である。選択的な光反応は図9に示されるようなマスクを用いずにレーザービーム法により選択的に光を照射することにより達成することも出来る。
【0091】
図10は選択的光反応により形成された光反応部分を各種の溶剤などを用いて,光重合性,光縮合性のネガ型の光架橋性樹脂の場合には光を照射しなかった非反応部分を,また,ポジ型の光分解性樹脂の場合には光を照射した分解反応部分を部分的に除去する工程を説明する図である。光反応性樹脂層10は像を形成する部分が除去されており,鏡面反射層が露出している。
【0092】
図11は図10の工程で露出した鏡面反射層7を除去溶剤により除いて,その部分に像が形成された再帰反射性物品である。
【0093】
図12は図11における像が形成された再帰反射性物品を,各種の基材に貼り付けるために接着剤層8を設置した図である。
【発明の効果】
【0094】
本発明による方法で形成された像は、反射素子に直接構成されており、像そのものが印刷インキなどによる着色剤やバインダー樹脂などの本質的に光や水などの浸入により分解しやすい構成物を必要としていないので、耐侯性や耐久性の優れた像を形成することができる。
【0095】
従来公知の像を形成する方法である表面保護層の表面(第1面)や内面などに印刷インキを用いて印刷法により像を形成する方法においては,樹脂層が外部からの光や水の侵入によって劣化が促進されやすく,耐久性の優れた像を得ることが困難であった。しかしながら,本発明による鏡面反射層の部分的な除去により像の形成方法においては,印刷インキの劣化という不具合が発生しないので耐久性に優れた像が形成される。
【0096】
さらに,マーチンの特開平4-229244号や特開平1-231004号に開示されているような,逆反射マイクロプリズム面上に形成された金属付着層に部分的に接着層を形成し,接着層により保護されていない金属層を引き剥がすことにより,部分的に金属層の設置されていない逆反射マイクロプリズムシートの形成方法においては,接着剤層を印刷法などで設置する必要があるためにプリズム間の溝に沿って溶剤を含んだ接着剤が流れ出して鮮明な像が形成できないという問題点があった。さらに,溶剤によりプリズムが変形を起こし再帰反射性能が低下するという問題点がおこりがちであった。しかしながら,本発明による鏡面反射層の部分的な除去により像の形成方法においては,上記のような不具合がおこらず鮮明な像の形成が可能である。
【0097】
また,レーザー法による像の形成方法は反射素子である微小硝子球やプリズムの部分的破壊を起こすために,再帰反射性能を低下させるという問題点があった。さらに,用いることのできるレーザー光線の径が小さいために形成しうる像は微小点の集合像として得られるために,鮮明な像が得られにくく,広範囲の像を形成するのが困難であったが,本発明による鏡面反射層の部分的な除去により像の形成方法においては,上記のような不具合が発生しにくく鮮明で広範な像の形成が可能である。
【0098】
以下,実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。
【実施例】
【0099】
<実施例1>
日本カーバイド工業株式会社製の鏡面反射式プリズム型再帰反射シート、ニッカライトクリスタルグレード#96002タイプの粘着材層を設置する前の、鏡面反射層が露出している第2面をもつ再帰反射シートを出発原料(出発原料1)として、下記の工程により像が形成された再帰反射シートを作成した。以下に、この製造工程を詳細に説明する。
【0100】
この実施例でもちいた出発原料1は、図8に示される従来公知の鏡面反射式プリズム型再帰反射シートの印刷層3、粘着剤層8および剥離材層9がない構造であり、第1面は平坦で透明な厚さ50μmのアクリル樹脂製の表面層2であり、ポリカーボネート製のプリズム層12におけるプリズム素子の反射表面には厚さ0.8μmのアルミニウム製の鏡面層7が真空蒸着法により設置されて露出している。
【0101】
光反応性樹脂として、ドライフイルムフォトレジストタイプの日立化成工業株式会社製アルカリ現像型感光性フイルム「フォテック」H2300を用いた。このドライフイルムレジストは膜厚が48μmであり、光透過性のキャリアフイルムと保護フイルムにより両面が保護されていた。
【0102】
一対の加熱圧着ロールを用いて、上記の出発原料1にドライフイルムレジストの保護フイルムを剥離しながら鏡面反射層の露出した側の面に空気が残留しないようにして積層を行い、出発原料1、ドライフイルムレジストおよびキャリアフイルムが積層された工程品1−1を得た。
【0103】
この工程品1−1のキャリアフイルム側の面に、黒色インキにより文字像が印刷された厚さ75μmのポリエステル樹脂製のマスクフイルムを設置して、ランプ入力80w/cmの高圧水銀ランプタイプの紫外線照射装置(ウシオ電機社製)を用いて20秒間露光処理をおこない、選択的光照射により光反応性樹脂を部分的に反応させる工程品1−2を得た。なお、用いたマスクフイルムには視認性の評価を目的として文字大きさ11ポイントで文字体がCenturyのアルファベット文字“ABC”が印刷されていた。
【0104】
ついで、上記の工程品1−2のキャリアフイルムを取り除いた後に、濃度3重量%の水酸化ナトリウム水溶液を現像液として用いて、温度40度の条件で未反応部分の光反応性樹脂を取り除いたのちに、水洗浄を行って工程品1−3の作成を行った。
【0105】
上記の工程品1−3は引き続いて、濃度10重量%の硝酸水溶液を用いて鏡面反射層を部分的に取り除いたのちに、水洗浄と乾燥を行って工程品1−4を得た。硝酸処理の条件としては温度40度、エッチング時間15秒であった。
【0106】
上記の工程品1−4の、像が形成された側の第2面に厚さ50μmのアクリル樹脂製の粘着剤(日本カーバイド工業株式会社製ニッセツKP1818)と厚さ80μmの大倉工業株式会社製ポリプロピレン製の剥離材を積層して、像が形成された再帰反射シート(試作品1)を作成した。
【0107】
<実施例2>
実施例1で用いた出発原料1にかわり、日本カーバイド工業株式会社製の封入レンズ型再帰反射シートELGタイプの粘着材層を設置する前の、鏡面反射層が露出している第2面をもつ再帰反射シートを出発原料(出発原料2)をもちいた以外は、実施例1と同じ方法で、像が形成された再帰反射シート(試作品2)を作成した。
【0108】
実施例2でもちいた出発原料2は、図1に示される従来公知の封入レンズ型再帰反射シートの印刷層3、粘着剤層8および剥離材層9がない構造をもつ。第2図に示されるように第1面は平坦で透明な厚さ35μmのポリエステル樹脂製の表面層2であり、微小硝子球5には厚さ1μmのアルミニウム製の鏡面層7が真空蒸着法により設置されて露出している。
【0109】
<実施例3>
実施例2で用いた出発原料2を用いて、実施例2に記載の工程品2−1を作成するのに用いたドライフイルムレジストフイルムに代わり、東京応化工業株式会社社製のポジ型g線レジスト樹脂OFPR800を用いて、スクリーン印刷法で鏡面反射層が露出している第2面の全面に積層後乾燥処理を行って厚さ40g/mの光反応性樹脂層を設置した以外は、実施例2と同じ方法で像が形成された再帰反射シート(試作品3)を得た。
【0110】
実施例3で用いたレジスト樹脂はナフトキノンジアジド(NQD)化合物を溶解禁止剤として用いたノボラック樹脂をバインダーとする組成として成り立っていると信じられる。露光に用いた紫外線は波長436nmの紫外線を用いた。また、露光液としては濃度3重量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いて、温度40度の条件で未反応部分のレジスト樹脂を取り除いたのちに、水洗浄を行って工程品3−3の作成を行った。
【0111】
<実施例4>
実施例1により作成した、鏡面反射層を部分的に取り除いたのちに、水洗浄と乾燥を行った工程品1−4の鏡面反射層が露出している部分を含めた第2面側の全面に赤色のスクリーンインキを用いて赤色の樹脂層を設置して、第1面側から見たときの像の色が赤色になるようにした。
【0112】
しかる後に、像が形成された側の第2面に厚さ50μmのアクリル樹脂製の粘着剤と厚さ80μmのポリプロピレン製の剥離材を積層して、像が形成された再帰反射シート(試作品4)を作成した。
【0113】
<比較例>
比較品として、実施例1で用いた出発原料1にかわり、日本カーバイド工業株式会社製の封入レンズ型再帰反射シートELGタイプに印刷像が形成された再帰反射シートを用いた。比較例でもちいた再帰反射シートは、図1に示される従来公知の封入レンズ型再帰反射シートに赤色の印刷層3がグラビア印刷方で設置されている。第2図に示されるように第1面は平坦で透明な厚さ35μmのポリエステル樹脂製の表面層2であり、微小硝子球5には厚さ1μmのアルミニウム製の鏡面層7が真空蒸着法により設置されて露出している。
【0114】
<測定法1>視認性試験
文字像“ABC”が形成された試作品を水平に置き、高さ1mの真上から蛍光灯の光を照射し、角度45度の観察角で距離45cmの条件で形成された像の視認性を目視で判断して以下のようにランク付けを行った。
A:像“ABC”の存在が鮮明に確認できる。
B:像“ABC”の存在が確認できる。
C:像“ABC”の存在がかすかに確認できる。
D:像“ABC”の存在が確認できない。
【0115】
<測定法2>耐侯性試験後の視認性
耐候性試験機として、アトラスエレクトリックデバイス社製CXW−B−812501500を用いて、暴露時間を3000時間とした以外は、JIS Z−9117に準じて、耐候性試験を行った。促進耐侯性試験後の像の視認性を測定法1に規定の視認性試験法に基づいて評価を行った。
【0116】
<測定法3>耐侯性前の再帰反射性能の測定
再帰反射性能測定器として、アドバンスト・レトロ・テクノロジー社製「モデル920」を用い、測定法2で規定された促進耐侯性試験前の100mm×100mmの試作品の再帰反射性能をJIS Z−9117に準じて、観測角0.2°、入射角5°により適宜の5点について測定し、その平均値をもって再帰反射シートの再帰反射性能とした。
【0117】
<測定法4>耐侯性後の再帰反射性能の測定
測定法3と同じく,再帰反射性能測定器としてアドバンスト・レトロ・テクノロジー社製「モデル920」を用い、促進耐侯性試験後の100mm×100mmの試作品の再帰反射性能をJIS Z−9117に準じて、観測角0.2°、入射角5°により適宜の5点について測定し、その平均値をもって再帰反射シートの促進耐侯性評価後の再帰反射性能とした。
【0118】
上記実施例に記載の試作品を上記の測定法により対比した表を以下に示す。
【0119】
【表1】
Figure 0003982744
【0120】
本発明の記載により像が形成された試作品1〜4はいずれも優れた視認性と耐久性を示した。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来技術による封入型再帰反射物再帰反射性物品
【図2】 本発明の封入型再帰反射物再帰反射性物品の工程を説明する図
【図3】 本発明の封入型再帰反射物再帰反射性物品の工程を説明する図
【図4】 本発明の封入型再帰反射物再帰反射性物品の工程を説明する図
【図5】 本発明の封入型再帰反射物再帰反射性物品の工程を説明する図
【図6】 本発明の封入型再帰反射物再帰反射性物品の工程を説明する図
【図7】 本発明の封入型再帰反射物再帰反射性物品の工程を説明する図
【図8】 従来技術による鏡面反射式プリズム型再帰反射物再帰反射性物品
【図9】 本発明のプリズム型再帰反射物再帰反射性物品の工程を説明する図
【図10】 本発明のプリズム型再帰反射物再帰反射性物品の工程を説明する図
【図11】 本発明のプリズム型再帰反射物再帰反射性物品の工程を説明する図
【図12】 本発明のプリズム型再帰反射性物品の工程を説明する図
【符号の説明】
1 入射光
2 表面層
3 印刷層(像)
4 固着層
5 微小硝子球
6 焦点層
7 鏡面反射層
8 接着剤層
9 剥離材層
10 光反応性樹脂層
11 光遮蔽マスク
12 プリズム層

Claims (13)

  1. 平坦な第1面をもつ実質的に透明な層を含んでなる第1層と,鏡面反射層が露出している第2面をもつ再帰反射素子層を含んでなる第2層とからなる再帰反射性物品を用いて,A.第2面の鏡面反射層上に光反応性樹脂層を設置する工程B.選択的光照射により光反応性樹脂を部分的に反応させる工程C.光反応性樹脂層の選択領域を部分的に除去をする工程D.鏡面反射層の部分的除去により像を形成する工程により像が形成された再帰反射性物品。
  2. 再帰反射素子層が封入レンズ型,カプセルレンズ型および鏡面反射式プリズム型再帰反射素子の群より選ばれた再帰反射素子より構成されてなる請求項1に記載の像が形成された再帰反射性物品。
  3. 鏡面反射式プリズム型再帰反射素子を構成する再帰反射素子が,3方向から交差する断面が実質的に対称な平行V溝群により切取られて形成された三角錐型キューブコーナー型再帰反射素子対である請求項1または2に記載の像が形成された再帰反射性物品。
  4. 鏡面反射式プリズム型再帰反射素子を構成する再帰反射素子が,3方向から交差する断面が実質的に対称な平行V溝群により切取られて形成された三角錐型キューブコーナー型再帰反射素子対であって,3方向のV溝の少なくとも1方向のV溝の深さが異なっている請求項3に記載の像が形成された再帰反射性物品。
  5. 第2面の鏡面反射層上に設置する光反応性樹脂層が光重合性,光縮合性,光架橋性および光分解性いずれかである請求項1〜4のいずれかに記載の像が形成された再帰反射性物品。
  6. 第2面の鏡面反射層上に設置する光反応性樹脂層が光重合性,光縮合性,光架橋性および光分解性いずれかであり,光反応性樹脂層を形成する層の最小部分の厚みが10〜200μmである請求項1〜5のいずれかに記載の像が形成された再帰反射性物品。
  7. 第2面の鏡面反射層上に設置する光反応性樹脂層が、シート状の形態である請求項1〜6のいずれかに記載の像が形成された再帰反射性物品。
  8. 選択的に光を照射する方法が光遮蔽マスク法または光走査法である請求項1〜7のいずれかに記載の像が形成された再帰反射性物品。
  9. 平坦な第1面をもつ第1層と,鏡面反射層が露出している第2面をもつ再帰反射素子層を含んでなる第2層からなる再帰反射性物品を用いて,A.第2面の鏡面反射層上に光反応性樹脂層を設置する工程B.選択的光照射により光反応性樹脂を部分的に反応させる工程C.光反応性樹脂層の選択領域を部分的に除去をする工程D.鏡面反射層の部分的除去により像を形成する工程により像を形成する方法。
  10. 第2面の鏡面反射層上に設置する光反応性樹脂層が光重合性,光縮合性,光架橋性および光分解性のいずれかである請求項9に記載の像を形成する方法。
  11. 第2面の鏡面反射層上に設置する光反応性樹脂層が光重合性,光縮合性,光架橋性および光分解性のいずれかであり,光反応性樹脂層を形成する層の最小部分の厚みが10〜200μmである請求項9または10に記載の像を形成する方法。
  12. 第2面の鏡面反射層上に設置する光反応性樹脂層が、シート状の形態で供給され、第2面の鏡面反射層上に設置される請求項9〜11のいずれかに記載の像を形成する方法。
  13. 選択的に光を照射する方法が光遮蔽マスク法または光走査法である請求項9〜12のいずれかに記載の像を形成する方法。
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