JP3982612B2 - 移動体通信端末の高速移動検出方法、移動体通信端末及びプログラム - Google Patents

移動体通信端末の高速移動検出方法、移動体通信端末及びプログラム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、移動体通信端末の高速移動検出方法、移動体通信端末及びプログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば携帯電話機といった移動体通信端末は、複数の基地局それぞれが形成するセルのうちから自局となるものを選択し、無線信号を送受信することで通信する。
ここで、W−CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)方式に対応した移動体通信端末は、例えば待受け中において、自局及び周辺セルにおける無線信号の品質を定期的に測定する。この際、無線信号の品質を測定する対象となる周辺セルの指定などといった、品質測定に関する設定は、自局から報知されたシステム情報に基づいて規定する。
【0003】
こうした移動体通信端末は、品質測定の結果を予め定めたセル再選択基準に照らし合わせ、セルの再選択を自律的に行って在圏ゾーンを移行し(ゾーン移行)、自局を切り替えることができる。ここで、セル再選択基準を規定するためのパラメータ群は、自局からのシステム情報により移動体通信端末に報知される。
【0004】
ここで、移動体通信ネットワークは、階層的セル構造(HCS;Hierarchical Cell Structure)と称されるアルゴリズムを適用して、移動体通信端末がゾーン移行を行う際の基準を規定することがある。このアルゴリズムを適用する際の設定値は、自局からのシステム情報により移動体通信端末に報知される。
【0005】
このHCSは、自局からのシステム情報にて、自局及び周辺セルに対してHCS優先度を示す値を割り当て、移動体通信端末が自局を切り替えてゾーン移行する際のセルを再選択する処理にて、このHCS優先度を使用する。HCS優先度は、移動体通信端末がゾーン移行する際に、周辺セルを自局に切り替えるための選択基準を、周辺セルごとに設定するためのものである。
すなわち、例えば、移動体通信ネットワークの側で、移動体通信端末によるゾーン移行の際に、優先的な選択が望ましいと判別した周辺セルに対しては、現在の自局よりも高いHCS優先度を割り当てる。一方、劣後的な選択が望ましいと判別した周辺セルに対しては、現在の自局よりも低いHCS優先度を割り当てる。
【0006】
また、このHCSを適用する場合には、移動体通信端末が高速で移動しているか否かを判別するための処理を実行することがある。この判別処理に用いるパラメータ群も、自局からのシステム情報により移動体通信端末に報知される。
【0007】
この判別処理は、所定の測定満了時間T_CR_MAXが経過するまでの間にセルを再選択してゾーン移行した回数が所定の閾値N_CRを越えたか否かを判別し、越えたと判別した場合に、高速移動状態であるとして、セル再選択基準を変更する。
例えば、通常の(非高速移動状態での)セル再選択基準では、HCS優先度がより高いセルをより優先的に選択する。一方で、高速移動状態でのセル再選択基準では、HCS優先度がより低いセルをより優先的に選択する。
この場合、移動体通信ネットワークは、移動体通信端末が非高速移動状態にあるときはHCS優先度が高いセルを優先的に選択し、高速移動状態にあるときはHCS優先度が低いセルを優先的に選択するように規定したことになる。
【0008】
例えば、図8は、従来の移動体通信端末が高速で移動していることを検出する処理の一例を説明するためのフローチャートである。
移動体通信端末は、所定の測定満了時間T_CR_MAXが経過するまでの間にセルを再選択した回数を示す変数V_CRを0として初期化する(ステップS20)。
次に、移動体通信端末は、セルの再選択回数を測定する時間を計測するための測定区間タイマを起動し、所定の測定満了時間T_CR_MAXが経過したことを検出可能とする(ステップS21)。
【0009】
移動体通信端末は、セル再選択が発生したか否かを判別し(ステップS22)、発生したと判別すると(ステップS22にてYES)、変数V_CRを1だけインクリメントする(ステップS23)。一方、移動体通信端末は、セルの再選択が発生していないと判別すると(ステップS22にてNO)、タイマにより計測された時間が測定満了時間T_CR_MAXを経過したか否かを判別する(ステップS24)。
【0010】
移動体通信端末は、測定満了時間T_CR_MAXを経過していないと判別すると(ステップS24にてNO)、処理を上記ステップS22にリターンして、セルの再選択の発生を検出する。
一方、移動体通信端末は、測定満了時間T_CR_MAXを経過したと判別すると(ステップS24にてYES)、変数V_CRに示される再選択回数が、所定の閾値N_CRを越えたか否かを判別する(ステップS25)。
【0011】
移動体通信端末は、閾値N_CRを越えていないと判別すると(ステップS25にてNO)、処理を上記ステップS20にリターンして、高速での移動を検出する処理を継続する。
一方、移動体通信端末は、閾値N_CRを越えたと判別すると(ステップS25にてYES)、高速で移動していることを検出したとして、セル再選択基準を変更するなどの高速移動状態に遷移するための処理を実行する(ステップS26)。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の移動体通信端末では、変数V_CRにより示されるセルの再選択回数を基準として、高速で移動していることを検出していた。すなわち、従来の移動体通信端末では、所定の測定満了時間が経過するまでの間に、同一のセルが自局として複数回選択された場合であっても、他のセルを選択する場合と区別せずにカウントするようにしていた。
【0013】
このため、例えば、移動体通信端末がセルの境界に存在するなどして同一のセルを何度も自局として選択し直していた場合には、実際には高速で移動していないにも関わらず、高速移動状態に遷移してしまうことがあった。
このように現実とは異なって高速移動状態に遷移してしまうと、セル再選択基準も変更されてしまうので、不適切な周辺セルが優先的に選択されるという問題が生じる。
【0014】
この発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、移動体通信端末が高速で移動していることを適切に検出することができる移動体通信端末の高速移動検出方法を、提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明の第1の観点に係る移動体通信端末の高速移動検出方法は、
高速で移動しているか否かを判別した結果に対応して、自局を切り替える基準となるセル再選択基準を変更し、無線信号の品質を測定した結果をセル再選択基準に照らし合わせて自局となるセルを切替可能な移動体通信端末の高速移動検出方法であって、
移動体通信端末は、
自局とするセルを再選択した際に、自局として選択したセルが所定のリストに登録されているか否かを判別し、
登録されていないと判別した場合に、自局として選択したセルを前記リストに登録し、
所定の測定満了時間が経過すると、前記リストに登録されているセルの数が所定の閾値を越えたか否かを判別し、
閾値を越えたと判別した場合に、高速で移動しているとして、セル再選択基準を、カバー範囲が比較的狭いセルを優先して再選択するための基準から、カバー範囲が比較的広いセルを優先して再選択するための基準に変更する、
ことを特徴とする。
【0016】
所定の記憶部に、自局として選択したセル固有の識別情報を示すデータを記憶させることにより、前記リストに自局として選択したセルを登録することが望ましい。
【0017】
前記リストに登録されているセル数が所定の閾値を越えたと判別された場合に優先して再選択されるセルのカバー範囲と、前記リストに登録されているセル数が所定の閾値以下であると判別された場合に優先して再選択されるセルのカバー範囲は、互いに重なり合う領域を有することが望ましい。
【0018】
前記リストに登録されているセル数が所定の閾値を越えたと判別された場合に優先して再選択されるセルはマクロセルであり、
前記リストに登録されているセル数が所定の閾値以下であると判別された場合に優先して再選択されるセルはマイクロセル或いはピコセルであることが望ましい。
【0019】
この発明の第2の観点に係る移動体通信端末は、
基地局との間で無線信号を送受信して通信を行う通信手段と、
自局として選択されたセルを識別するための情報を記憶することにより、自局として選択されたセルを登録するセル情報記憶手段と、
前記通信手段が自局として通信を行うセルを再選択した際に、前記セル情報記憶手段に記憶されている情報を検索して、自局として選択したセルが登録されているか否かを判別し、登録されていないと判別すると、自局として選択したセルを識別するための情報を前記セル情報記憶手段に記憶させてセルを登録し、所定の測定満了時間が経過すると、前記セル情報記憶手段にて登録されているセルの数が所定の閾値を越えたか否かを判別し、越えたと判別すると、高速で移動しているとして、無線信号の品質を測定した結果に基づいて自局を切り替える際の基準となるセル再選択基準を、カバー範囲が比較的狭いセルを優先して再選択するための基準から、カバー範囲が比較的広いセルを優先して再選択するための基準に変更する処理制御手段とを備える、
ことを特徴とする。
【0020】
この発明の第3の観点に係るプログラムは、
移動体通信端末として機能するコンピュータに、
自局とするセルを再選択した際に、自局として選択したセルが所定のリストに登録されているか否かを判別する登録判別処理と、
前記登録判別処理にて登録されていないと判別された場合に、自局として選択したセルを前記リストに登録するセル登録処理と、
所定の測定満了時間が経過すると、前記リストに登録されているセルの数が所定の閾値を越えたか否かを判別するセル数判別処理と、
前記セル数判別処理にて閾値を越えたと判別された場合に、高速で移動しているとして、無線信号の品質を測定した結果に基づいて自局を切り替える際の基準となるセル再選択基準を、カバー範囲が比較的狭いセルを優先して再選択するための基準から、カバー範囲が比較的広いセルを優先して再選択するための基準に変更する高速移動状態遷移処理と、
を実行させることを特徴とする。
【0021】
前記セル登録処理は、所定の記憶部に、自局として選択したセル固有の識別情報を示すデータを記憶させることにより、前記リストに自局として選択したセルを登録することが望ましい。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して、この発明の実施の形態に係る移動体通信端末について詳細に説明する。
【0023】
図1は、この発明の実施の形態に係る移動体通信端末100の構成を示す図である。
図示するように、この移動体通信端末100は、通信処理部1と、記憶部2と、処理制御部3と、入出力部4とを備えている。
【0024】
通信処理部1は、例えばアンテナやRF(Radio Frequency)信号処理回路、ベースバンド信号処理回路等を備えて構成され、移動体通信ネットワークが備える基地局との間で無線信号を送受信することにより、通信するためのものである。
【0025】
記憶部2は、例えばEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等から構成され、処理制御部3の動作を規定する動作プログラムやデータを記憶する。
また、記憶部2は、例えばRAMにより、図2に示すようなセル遷移リスト20を構成するデータを記憶する。
【0026】
セル遷移リスト20は、所定の測定満了時間T_CR_MAXが経過するまでの間に、移動体通信端末100がゾーン移行により自局として選択したセルに関する情報を格納する。例えば、セル遷移リスト20は、「PLMN ID」(Public Land Mobile Network ID)と、「セル ID」とを示すデータを記憶することにより、自局として選択したセルを登録する。
ここで、「PLMN ID」は、自局として選択したセルを提供する移動体通信ネットワークの事業者を識別するための識別情報である。
「セル ID」は、移動体通信ネットワークが備える各基地局によってカバーされるセルに割り当てられた識別番号である。ここで、「セル ID」は、各通信事業者においてセルごとに固有の値が割り当てられる。
【0027】
また、記憶部2は、自局としているセルに設置された基地局から受信したシステム情報に含まれる各種の情報を記憶する。例えば、記憶部2は、セル遷移リスト20に登録されたセルの数を示す変数Nや、セル遷移リスト20の有効エントリ数から移動体通信端末100が高速で移動しているか否かを判別する際の基準となる閾値N_CRを記憶する。さらに、記憶部2は、処理制御部3が備える測定区間タイマ10が計測する所定の測定満了時間T_CR_MAXを示すデータを記憶する。
【0028】
処理制御部3は、例えばCPU(Central Processing Unit)といったマイクロプロセッサ等から構成され、この移動体通信端末100全体の動作を制御するためのものである。
例えば、処理制御部3は、記憶部2に記憶された後述する動作プログラムを実行し、通信処理部1等を制御して、図5のフローチャートに示す高速移動検出処理や、図6のフローチャートに示すセル遷移リスト更新処理といった各種の処理を実行する。
また、処理制御部3は、図5のフローチャートに示す高速移動検出処理を実行する際に、所定の測定満了時間T_CR_MAXが経過したことを検出するための測定区間タイマ10を備えている。この測定区間タイマ10は、例えば記憶部2に格納されている所定の動作プログラムを処理制御部3が実行することにより実現される。
【0029】
入出力部4は、キーパッドや液晶ディスプレイ、スピーカ、マイクロフォン、発光ダイオード等から構成され、ユーザ・インタフェースを提供して各種の情報を入力、あるいは出力するためのものである。
【0030】
次に、この移動体通信端末100が適用される移動体通信システムの構成について説明する。
図3は、移動体通信端末100が適用される移動体通信システムの構成を示す図である。
この移動体通信システムは、例えばW−CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)方式等を用いて移動体通信端末100による通信を可能とするシステムであり、図3に示すように、複数の基地局101、101、…、101(mは自然数)と、移動通信制御局102とが結合されて構成される移動体通信ネットワーク110を備えている。
【0031】
複数の基地局101〜101は、少なくともいずれか1つの基地局が移動体通信端末100との間で無線信号を送受信することにより無線回線を設定する。各基地局101〜101は、移動体通信端末100による通信を可能とするための複数のセルそれぞれに設置され、各セルがカバーするエリアを通信サービスエリアとして、移動体通信サービスを提供する。
また、各基地局101〜101には、固有の識別番号が付与され、「セル ID」として、「PLMN ID」と共に、各基地局101〜101が送信するシステム情報により移動体通信端末100に報知される。
さらに、各基地局101〜101は、移動体通信端末100が自局とするセルを再選択してゾーン移行するために無線信号の品質を測定する対象となる周辺セルを、システム情報により移動体通信端末100に報知する。
【0032】
移動通信制御局102は、移動体用の無線通信回線を提供するためのものであり、複数の基地局101〜101に有線又は無線にて結合されている。
また、移動通信制御局102は、公衆回線や他の移動体通信システム等に結合されて、移動体通信端末100と他の通信機器との間での通信を可能とする。
【0033】
以下に、この発明の実施の形態に係る移動体通信端末100の動作を説明する。
この移動体通信端末100は、例えば待受け中において、自局及び周辺セルにおける無線信号の品質を測定して、自局とするセルの再選択を試みる。
ここで、移動体通信ネットワーク110は、階層的セル構造(HCS;Hierarchical Cell Structure)と称されるアルゴリズムを適用して、移動体通信端末100がゾーン移行するための基準を規定する。
【0034】
例えば、図4に示すように、周辺セルとして、それぞれ基地局101〜101を有する複数のセルが存在し、移動体通信端末100が基地局101を自局としているものとする。
また、移動体通信端末100が無線信号の品質を測定した結果、基地局101〜101を有する各セルが再選択の対象であると評価され、基地局101、101を有する各セルが再選択の対象ではないと評価されたとする。
すなわち、移動体通信端末100は、例えば基地局101、101それぞれから送信された無線信号の品質測定値を用いて所定の計算処理を実行し、計算の結果として得られた値が所定の足きりレベル未満であることを検出して、基地局101、101を有する各セルを、再選択の対象から除外する。
【0035】
ここで、HCS優先度を考慮して自局となるセルを切り替える場合には、再選択の対象であると評価した基地局101〜101を有する各周辺セルのHCS優先度を比較し、HCS優先度が高いセルを優先的に選択する。
このHCS優先度は、自局としているセルからのシステム情報により、移動体通信端末100に報知される。
【0036】
例えば、基地局101、101を有するセルが同一優先度であり、再選択の対象であると評価されたセルの中で最高の優先度(HCS優先度=5)である場合、移動体通信端末100は、基地局101、101を有する各セルを再選択の対象から除外する。
こののち、処理制御部3が、基地局101、101を有する各セルにおける無線信号の品質を測定した結果に基づいて、セルの序列化(セルランキング)を行い、より良い品質の無線信号を送受信することができるセルを自局に切り替える。
【0037】
こうしたHCSを用いてセルの再選択基準を規定する移動体通信システムでは、移動体通信端末100の移動速度に対応してセル再選択基準を変更することで、適切にゾーン移行させることができる。
すなわち、移動体通信端末100は、高速移動状態と非高速移動状態とで異なったセル再選択基準を採用して自局を切り替えることにより、高速で移動した場合であっても、良好な待受け状態、あるいは通信状態を維持することができる。
【0038】
例えば、移動体通信端末100は、通常の(非高速移動状態での)セル再選択基準では、HCS優先度がより高いセルをより優先的に選択する。一方、移動体通信端末100は、高速移動状態でのセル再選択基準では、HCS優先度がより低いセルをより優先的に選択する。これらのセル再選択基準に関する情報は、自局としているセルからのシステム情報により移動体通信端末100に報知される。
すなわち、この場合、移動体通信ネットワーク110は、移動体通信端末100が非高速移動状態ではHCS優先度が高いセルを優先的に選択し、高速移動状態ではHCS優先度が低いセルを優先的に選択するように規定したことになる。
【0039】
ここで、HCS優先度の具体的な割当方針は移動体通信ネットワーク110の実装形式に応じて任意に設定可能であるが、例えば、以下のような設定が考えられる。
【0040】
すなわち、カバー範囲が比較的狭いセルについてはHCS優先度を高く設定し、カバー範囲が比較的広いセルについてはHCS優先度を低く設定することが考えられる。ここで、カバー範囲が比較的狭いセルは、一般にピコセルやマイクロセルと称され、例えば、高層ビルや駅、繁華街といった、多くの人が集まってトラフィックが集中する可能性のある場所で、通信容量を確保するために配置される。また、こうしたピコセルやマイクロセルを配置して移動体通信端末100と基地局との間の距離を縮めることで、移動体通信端末100での送信電力を節約して電池の消耗を抑制できる可能性も高い。このピコセルやマイクロセルといったカバー範囲が比較的狭いセルは、マクロセルと称されるカバー範囲が比較的広いセルと、互いに重なり合って配置される。
移動体通信端末の所在地が低速で移動する場合や一定の場所で停止している場合には、前述したトラフィックの分散や消費電力の抑制などの観点から、ピコセルやマイクロセルを優先して選択することが望ましい。これに対し、高速移動の際にカバー範囲の狭いセルを選択すると、ゾーン移行が頻繁に発生するため、移動体通信ネットワークへのアクセス回数増大によるトラフィックの増大や、通信が途切れやすくなるなどの問題が生じる。
そこで、移動体通信端末100は、高速移動の際にカバー範囲が比較的広いマクロセルを優先して選択するためのセル再選択基準を採用することで、この問題を解決することができる。更に、移動体通信端末100の電源となる電池の消耗を抑制できることもある。
【0041】
また、他の一例として、現在の自局に近い周辺セルについてはHCS優先度を高く設定し、遠い周辺セルについてはHCS優先度を低く設定することが考えられる。
この場合、非高速移動状態では、たとえ自局から遠く離れたセルにおける無線信号の品質が最良であっても、自局や他の高優先度の周辺セルが再選択の対象であると評価されていれば、自局から離れたセルを選択することがない。従って、自局から離れた周辺セルにおける無線信号の品質が一時的に向上した場合であっても、そのセルを直ちに自局に切り替えてしまうことを防止できる。これにより、元の自局と遠く離れたセルとの間でゾーン移行が頻発することや、元の自局に戻れずに圏外と判定されてセルサーチを実行しなければならなくなることを、避けることができる。
一方、高速移動状態では、自局に隣接する周辺セルにおけるHCS優先度を高く設定し、それらの周辺セルに隣接する周辺セルにおけるHCS優先度を低く設定することで、高速移動に対応したゾーン移行を実現することができる。
すなわち、1つのセルにて提供される無線信号が隣接する周辺セルでも通信可能な程度の品質を有している場合には、移動体通信端末は、自局としているセルに隣接する周辺セルにて、さらにその周辺セルの1つ先の周辺セルを、優先的に再選択の対象として自局を切り替えることができる。
【0042】
こうしたHCSに基づいてセル再選択基準を設定可能な移動体通信端末100は、高速で移動していることを適切に検出するため、図5のフローチャートに示す高速移動検出処理を実行する。
以下に、移動体通信端末100が実行する高速移動検出処理について説明する。
処理制御部3は、記憶部2に記憶されている動作プログラムを実行することで、高速移動検出処理の実行を開始する。
【0043】
高速移動検出処理を開始すると、処理制御部3は、記憶部2に記憶されている変数Nを0に設定する(ステップS1)。すなわち、処理制御部3は、セル遷移リスト20をクリアして、有効なエントリとなる登録セルがない状態に設定する。
ただし、記憶部2にセル遷移リスト20として具体的に記憶されているデータについては、登録されたセルの数を示す変数Nを用いてエントリ数を管理することから、特に記憶内容の消去といった初期化を施す必要はない。
【0044】
処理制御部3は、測定区間タイマ10を初期化して起動し(ステップS2)、測定満了時間T_CR_MAXまでの経過時間の計測を開始させる。
こののち、処理制御部3は、セル再選択が発生したか否かを判別する(ステップS3)。
【0045】
処理制御部3は、セル再選択が発生したと判別すると(ステップS3にてYES)、図6のフローチャートに示すセル遷移リスト更新処理を実行する(ステップS4)。
【0046】
セル遷移リスト更新処理を開始すると、処理制御部3は、記憶部2に格納されているセル遷移リスト20を検索し(ステップS10)、セル再選択により自局として選択したセルがセル遷移リスト20に既に登録されているか否かを判別する(ステップS11)。
【0047】
処理制御部3は、セル遷移リスト20に登録されていると判別すると(ステップS11にてYES)、そのままセル遷移リスト更新処理を終了し、処理を図5のステップS3にリターンする。
すなわち、セル再選択により自局として選択したセルがセル遷移リスト20に重複して登録されることを防止して、測定満了時間T_CR_MAXが経過するまでの間に自局として選択したセルの正確な数を測定可能とする。
【0048】
一方、処理制御部3は、自局として選択したセルがセル遷移リスト20に未だ登録されていないと判別すると(ステップS11にてNO)、自局として選択したセルをセル遷移リスト20に登録する(ステップS12)。すなわち、処理制御部3は、自局からのシステム情報により報知された自局の識別番号を示す情報を、セル遷移リスト20の「PLMN ID」及び「セル ID」として格納する。
【0049】
こののち、処理制御部3は、変数Nを1だけインクリメントしたのち(ステップS13)、セル遷移リスト更新処理を終了し、処理を図5のステップS3にリターンする。
【0050】
また、上記ステップS3にて、セル再選択が発生していないと判別すると(ステップS3にてNO)、処理制御部3は、測定区間タイマ10が計測した時間を読み取り、測定満了時間T_CR_MAXが経過したか否かを判別する(ステップS5)。
【0051】
処理制御部3は、測定満了時間T_CR_MAXが経過していないと判別すると(ステップS5にてNO)、処理を上記S3にリターンして、セル再選択の発生を検出する。
【0052】
一方、処理制御部3は、測定満了時間T_CR_MAXが経過したと判別すると(ステップS5にてYES)、変数Nにより示されるセル遷移リスト20の登録セル数が、所定の閾値N_CRを越えたか否かを判別する(ステップS6)。
【0053】
処理制御部3は、閾値N_CRを越えていないと判別すると(ステップS6にてNO)、処理を上記ステップS1にリターンして、高速移動検出処理を再度実行する。
【0054】
一方、処理制御部3は、閾値N_CRを越えたと判別すると(ステップS6にてYES)、移動体通信端末100が高速で移動しているとして、セル再選択基準を変更するなどの高速移動状態に遷移するための処理を実行する(ステップS7)。
例えば、処理制御部3は、セル再選択基準を、カバー範囲が比較的狭いマイクロセル或いはピコセルを優先して再選択するための基準から、カバー範囲が比較的広いマクロセルを優先して再選択するための基準に変更する。
こののち、処理制御部は、図5のフローチャートに示す高速移動検出処理を終了する。
【0055】
このようにセル遷移リスト20に登録されているセルの数をカウントして閾値N_CRと比較することで、同一のセルを重複してカウントすることなく、自局として選択したセルの数をカウントすることができる。
これにより、移動体通信端末100が高速で移動していることを適切に検出することができる。
【0056】
例えば、図7に示すように、移動体通信端末100が、基地局101を有するセル103(セルA)、基地局101を有するセル103(セルB)、基地局101を有するセル103(セルC)の境界付近に所在したとする。
ここで、セルA〜セルCは、それぞれ、基地局101を有するセル103(セルD)とカバー範囲が重なり合うピコセルであり、自局より低いHCS優先度の周辺セルとして、マクロセルであるセルDをシステム情報により移動体通信端末100に報知していたとする。
【0057】
この状況の下で、移動体通信端末100は、例えば、セルA、セルB、セルA、セルC、セルB、セルC、…、セルAといったように、3つのセルA〜セルCの間で繰り返し自局を切り替えていたとする。
この場合、セル遷移リスト20には、セルA〜セルCを識別するための情報が重複することなく登録され、セル遷移リスト20の有効エントリ数を示す変数Nは、N=3となる。
従って、所定の閾値N_CRがN_CR≧3と設定されていれば、処理制御部3は、移動体通信端末100が高速で移動していると検出することがない。これにより、一時的にセルDにおける無線信号の品質が向上した場合であっても、移動体通信端末100がHCS優先度の低いセルDを自局として選択することを防止できる。すなわち、移動体通信端末100は、高速移動状態を適切に検出し、セル再選択基準を、カバー範囲が比較的狭いピコセル或いはマイクロセルを優先して再選択するための基準から、カバー範囲が比較的広いマクロセルを優先して再選択するための基準に変更することができる。
以上述べたように高速移動状態を適切に検出してセル再選択基準を変更可能としたことで、トラフィックの増大を防止し、通信を安定化することができる。また、非高速移動状態において、マクロセルが誤って選択されることを防止し、近くのピコセルやマイクロセルを適切に選択することができる。これにより、無線通信路の長距離化に対応して送信電力を増大させなければならない機会を減らすことができ、送信電力の節約を可能にして移動体通信端末100の電池の消耗を抑制することもできる。
【0058】
このように、この発明の実施の形態に係る移動体通信端末100は、セル遷移リスト20に自局として選択したセルを重複することなく登録し、測定満了時間T_CR_MAXが経過した時点での登録セル数に基づいて、高速で移動しているか否かを判別する。
これにより、例えば移動体通信端末100が複数のセルの境界に所在するなどして同一のセルを何度も自局として選択し直す場合等に、誤って高速移動状態に遷移することを防止できる。すなわち、高速で移動していることを適切に検出することができ、正しいセル選択基準を適用して自局の切替を行うことができる。
【0059】
また、この発明は、専用の装置によらず、通常の移動体通信端末として動作するコンピュータを用いても実現可能である。すなわち、移動体通信端末として機能するコンピュータに上述の各処理を実行させるための動作プログラムを所定の記録部に記録し、CPU等のマイクロプロセッサが当該動作プログラムを読み出して実行することで、上述の移動体通信端末100として機能させることができる。
ここで、動作プログラムは、FD、CD−ROM、MO、メモリーカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して配布するものとしてもよい。さらに、インターネット上のFTP(File Transfer Protocol)サーバ等が有するファイルシステムに動作プログラムを格納しておき、コンピュータに、例えば、搬送波に重畳して、ダウンロード等するようにしてもよい。
【0060】
【発明の効果】
以上の説明のように、この発明によれば、自局として選択したセルを重複することなくリストに登録することで、移動体通信端末が高速で移動していることを適切に検出して、正しいセル選択基準による自局の切替を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態に係る移動体通信端末の構成を示す図である。
【図2】セル遷移リストを示す図である。
【図3】移動体通信端末が適用される移動体通信システムを示す図である。
【図4】HCSを適用して自局となるセルを選択する動作を説明するための図である。
【図5】高速移動検出処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】セル遷移リスト更新処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】移動体通信端末の動作の具体例を説明するための図である。
【図8】従来の移動体通信端末が高速で移動していることを検出する処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
1 通信処理部
2 記憶部
3 処理制御部
4 入出力部
10 測定区間タイマ
20 セル遷移リスト
100 移動体通信端末
101〜101、101〜101 基地局
102 移動通信制御局
103〜103 セル
110 移動体通信ネットワーク

Claims (7)

  1. 高速で移動しているか否かを判別した結果に対応して、自局を切り替える基準となるセル再選択基準を変更し、無線信号の品質を測定した結果をセル再選択基準に照らし合わせて自局となるセルを切替可能な移動体通信端末の高速移動検出方法であって、
    移動体通信端末は、
    自局とするセルを再選択した際に、自局として選択したセルが所定のリストに登録されているか否かを判別し、
    登録されていないと判別した場合に、自局として選択したセルを前記リストに登録し、
    所定の測定満了時間が経過すると、前記リストに登録されているセルの数が所定の閾値を越えたか否かを判別し、
    閾値を越えたと判別した場合に、高速で移動しているとして、セル再選択基準を、カバー範囲が比較的狭いセルを優先して再選択するための基準から、カバー範囲が比較的広いセルを優先して再選択するための基準に変更する、
    ことを特徴とする移動体通信端末の高速移動検出方法。
  2. 所定の記憶部に、自局として選択したセル固有の識別情報を示すデータを記憶させることにより、前記リストに自局として選択したセルを登録する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の高速移動検出方法。
  3. 前記リストに登録されているセル数が所定の閾値を越えたと判別された場合に優先して再選択されるセルのカバー範囲と、前記リストに登録されているセル数が所定の閾値以下であると判別された場合に優先して再選択されるセルのカバー範囲は、互いに重なり合う領域を有する、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の高速移動検出方法。
  4. 前記リストに登録されているセル数が所定の閾値を越えたと判別された場合に優先して再選択されるセルはマクロセルであり、
    前記リストに登録されているセル数が所定の閾値以下であると判別された場合に優先して再選択されるセルはマイクロセル或いはピコセルである、
    ことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の高速移動検出方法。
  5. 基地局との間で無線信号を送受信して通信を行う通信手段と、
    自局として選択されたセルを識別するための情報を記憶することにより、自局として選択されたセルを登録するセル情報記憶手段と、
    前記通信手段が自局として通信を行うセルを再選択した際に、前記セル情報記憶手段に記憶されている情報を検索して、自局として選択したセルが登録されているか否かを判別し、登録されていないと判別すると、自局として選択したセルを識別するための情報を前記セル情報記憶手段に記憶させてセルを登録し、所定の測定満了時間が経過すると、前記セル情報記憶手段にて登録されているセルの数が所定の閾値を越えたか否かを判別し、越えたと判別すると、高速で移動しているとして、無線信号の品質を測定した結果に基づいて自局を切り替える際の基準となるセル再選択基準を、カバー範囲が比較的狭いセルを優先して再選択するための基準から、カバー範囲が比較的広いセルを優先して再選択するための基準に変更する処理制御手段とを備える、
    ことを特徴とする移動体通信端末。
  6. 移動体通信端末として機能するコンピュータに、
    自局とするセルを再選択した際に、自局として選択したセルが所定のリストに登録されているか否かを判別する登録判別処理と、
    前記登録判別処理にて登録されていないと判別された場合に、自局として選択したセルを前記リストに登録するセル登録処理と、
    所定の測定満了時間が経過すると、前記リストに登録されているセルの数が所定の閾値を越えたか否かを判別するセル数判別処理と、
    前記セル数判別処理にて閾値を越えたと判別された場合に、高速で移動しているとして、無線信号の品質を測定した結果に基づいて自局を切り替える際の基準となるセル再選択基準を、カバー範囲が比較的狭いセルを優先して再選択するための基準から、カバー範囲が比較的広いセルを優先して再選択するための基準に変更する高速移動状態遷移処理と、
    を実行させるためのプログラム。
  7. 前記セル登録処理は、所定の記憶部に、自局として選択したセル固有の識別情報を示すデータを記憶させることにより、前記リストに自局として選択したセルを登録する、
    ことを特徴とする請求項6に記載のプログラム。
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