JP3982394B2 - スピーカ装置および音響再生方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、複数個のスピーカユニットが1次元的に、あるいは2次元的に配列されたアレースピーカを用いたスピーカ装置および音響再生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
複数個のスピーカユニットが1次元的に、あるいは2次元的に配列され、パネル型に構成されたアレースピーカを、例えばリスニングポジションの正面前方に配置し、このアレースピーカのみで、2チャンネル以上の音響再生を行なうスピーカシステムが提案されている(例えば、特開平9−233588号公報(特許文献1)や特開平6−205496号公報(特許文献2)参照)。
【0003】
このシステムは、アレースピーカより放射される音波をビーム状の指向性として、リスナの側方の壁面、後方の壁面、天井などに反射させてリスナに到達させ、あたかも、最後に音波が反射された壁の方向に音源があるように知覚させるもので、リスナ前方に配置される1パネルのアレースピーカだけで、あらゆる方向への音像定位が可能となる。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−233588号公報。
【特許文献2】
特開平6−205496号公報。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のアレースピーカを用いた音響再生方法においては、音像定位方向がリスナにとって不自然になる場合があるという問題がある。例えば、アレースピーカによって左右2チャンネルの音響再生を行なう場合を例に説明する。図12は、幅Rw、奥行きRdの部屋(リスニングルーム)において、アレースピーカ1を用いて左右2チャンネルの音響再生を行なう場合を説明するための図である。
【0006】
この例の場合には、アレースピーカ1は、リスナ2の前方の壁3側において、当該部屋の幅方向の中央に配置されている。また、リスナ2は、当該部屋の幅方向の中央位置であって、当該部屋の奥行き方向の任意の位置において、アレースピーカ1による再生音を聴取するものとしている。
【0007】
入力音声信号から、アレースピーカを構成する複数のスピーカユニットのそれぞれに供給する複数のユニット駆動信号が生成されるが、この場合に、当該生成された複数のユニット駆動信号は、それらが前記複数のスピーカユニットに供給されることによって、アレースピーカ1からビーム状の所望の指向性で音波を放音させるように生成される。
【0008】
この場合に、前記複数のユニット駆動信号のそれぞれは、入力音声信号に対する遅延量および振幅がそれぞれ調整されて、前記ビーム状の所望の指向性が得られるように生成される。
【0009】
図12の例においては、例えば、アレースピーカ1から放音される左チャンネルの音声信号による音波の場合には、図12において、リスナ2の左側の壁4Lに反射してリスナ2に到達するようにしており、左チャンネルの音声信号からは、図12において、アレースピーカ1から実線矢印5Lで示すような方向にビーム状に左チャンネルの音波が放射されるように、複数のユニット駆動信号が生成される。
【0010】
実線矢印5Lの方向にアレースピーカ1から放射されたビーム状の左チャンネルの音波は、壁面4Lで反射された後、実線矢印6Lのように伝搬して、リスナ2に到達する。
【0011】
同様に、アレースピーカ1から放音される右チャンネルの音声信号による音波の場合には、図12において、リスナ2の右側の壁4Rに反射してリスナ2に到達するようにしており、右チャンネルの音声信号からは、図12において、アレースピーカ1から実線矢印5Rで示すような方向にビーム状に右チャンネルの音波が放射されるように、複数のユニット駆動信号が生成される。
【0012】
実線矢印5Rの方向にアレースピーカ1から放射されたビーム状の右チャンネルの音波は、壁面4Rで反射された後、実線矢印6Rのように伝搬して、リスナ2に到達する。
【0013】
つまり、従来のスピーカ装置では、便宜上、図12において、アレースピーカ1の中心位置Pr0より左チャンネル音波および右チャンネル音波が発せられたと考えたとき、アレースピーカ1の位置とリスナ2の位置とのほぼ中間位置を左方壁面4Lおよび右方壁面4Rに射影した点PLrefおよびPRrefで左チャンネル音波および右チャンネル音波が反射され、その反射波がリスナに届き聴取されていた。
【0014】
以上のようにして、図12のスピーカ装置によれば、アレースピーカ1の複数個のスピーカユニットのそれぞれに、左右2チャンネルの音声信号から生成した複数個のユニット駆動信号の対応するものを供給することにより、中央の一つのアレースピーカ1からの音波のみによって、リスナ2は、左右に音像が定位する2チャンネルステレオ再生音を聴取することができる。
【0015】
この場合の左右チャンネルの音波は、実際のスピーカ(アレースピーカ1)はリスナ2の正面前方に存在しながら、それぞれ、左右の壁面4L,4Rで反射された後、リスナ2に到達するため、それら左右チャンネルの音像の定位方向は、実線矢印6Lおよび6Rの延長方向となって、あたかも図12において、点線で示した虚スピーカ位置1L,1Rから左右チャンネルの音波が到来するように、リスナ2には聴取される。
【0016】
ところで、例えば5.1チャンネルなどのマルチチャンネル・サラウンド再生の場合、左右チャンネル信号は、正面の中央位置から左壁面4Lおよび右壁面4Rの隅部までの間の中間位置にそれぞれ音像定位させるように音源信号が調整されて記録メディアに一般に記録されている。
【0017】
しかしながら、前述したように、図12の従来のアレースピーカを用いたスピーカ装置の場合、左右チャンネルの音声は、上述のように、想定された音像定位位置に対してあまりにも離れすぎた位置である虚スピーカ位置1L,1Rに定位されてしまい、センターチャンネルの音像の定位方向との間に大きな開きができてしまう。このため、不自然な音像定位感となり、繋がりのある滑らかな音像移動が得られないという欠点がある。
【0018】
すなわち、従来のスピーカ装置および音響再生方法では、各チャンネルの音声についての音像定位方向を、予め想定された音像定位方向に合わせるようにすることが非常に困難であった。
【0019】
図12の従来例の場合においても、原理的には、アレースピーカ1から放射されたビーム状の音波を、リスナ2の左右の壁面、後方の壁面、天井などに多数回にわたって反射させることにより、リスナに最後に到達する音波反射位置を、各チャンネルの音声に対して予め想定された音像定位方向位置となるようにさせて、当該チャンネルの音声の音像定位方向を、想定された音像定位方向と一致させるようにすることは可能であると思われる。
【0020】
しかしながら、アレースピーカの規模や音波の波長の制限により、光ビームのように指向性を細く絞り込むことはほぼ不可能に近く、また、多数回、壁面に反射させてリスナに到達させるようにすることは、当該音波の行路長が非常に長くなり、その音波の距離減衰が大きくなる。さらに、通常、壁面は音波を完全に反射するわけではなく、一部吸音してしまうので、反射の回数に応じて音波の減衰が激しくなる。したがって、上述のように、アレースピーカから放音された音波を、多数回、壁面に反射させて、各チャンネル毎に想定された音像定位方向に定位させることは現実にはきわめて困難であると考えられる。
【0021】
この発明は以上の点にかんがみ、アレースピーカからビーム状の指向性を持って放射された音波が、壁に反射された後にリスナに到達するようにされる場合においても、リスナに対して適当な音像定位方向に音像定位することができるようにすることを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、この発明によるスピーカ装置は、
複数個のスピーカユニットで構成されるアレースピーカと、
入力音声信号を受けて、前記アレースピーカの前記複数個のスピーカユニットに供給する第1の複数のユニット駆動信号を生成するものであって、前記第1の複数のユニット駆動信号が前記複数個のスピーカユニットに供給されることによって前記アレースピーカから放射される音波の指向性の主軸の方向を、前記アレースピーカから放射された音波が直接にリスナに到達する第1の方向とするように、前記第1の複数のユニット駆動信号を生成する第1の指向性形成用信号生成手段と、
前記入力音声信号を受けて、前記アレースピーカの前記複数個のスピーカユニットに供給する第2の複数のユニット駆動信号を生成するものであって、前記第2の複数のユニット駆動信号が前記複数個のスピーカユニットに供給されることによって前記アレースピーカから放射される音波の指向性の主軸の方向を、前記アレースピーカから放射された音波が壁面に反射した後リスナに到達する第2の方向とするように、前記第2の複数のユニット駆動信号を生成する第2の指向性形成用信号生成手段と、
少なくとも前記第1の指向性形成用信号生成手段の入力側または出力側あるいは前記第2の指向性形成用信号生成手段の入力側または出力側のいずれかに設けられ、前記アレースピーカから前記第1の方向を指向性の主軸の方向として放射される音波がリスナに到達する時間と、前記アレースピーカから前記第2の方向を指向性の主軸の方向として放射される音波がリスナに到達する時間との差を調整するための遅延手段と、
を備え、前記遅延手段により時間調整された前記第1の複数のユニット駆動信号と前記第2の複数のユニット駆動信号とを、同じスピーカユニットに供給する信号同士を合成して、それぞれのスピーカユニットに供給するようにする
ことを特徴とする。
【0023】
上述の構成のこの発明によれば、アレースピーカから、第1の方向を指向性の主軸の方向として放射される音波による音像定位方向と、第2の方向を指向性の主軸の方向として放射される音波による音像定位方向との中間位置が入力音声信号に対応する音像定位方向となる。
【0024】
すなわち、従来のスピーカ装置では、各音声チャンネルのリスナに対する音像定位方向は、一つの壁からの反射波のみにより固定的定まってしまうのに対して、この発明によるスピーカ装置によれば、リスナに対する音像定位方向は、アレースピーカからの2つの音波のそれぞれの音像定位方向の中間の位置となる。
【0025】
例えば、右チャンネルの音声信号が入力信号の場合、アレースピーカから、第1の方向として、リスナの右横の壁に反射させてリスナに到達するような方向に音波を放射させるようにすると共に、第2の方向として、リスナに直接に到達するような方向に音波を放射させるようにする。そして、これら第1、第2の方向に放射された音波がリスナに到達するタイミングを調整する。
【0026】
すると、リスナは、右横から反射して到達する音波と直接的に到達する音波との中間の方向に、右チャンネルの音像が定位しているように聴取することができる。したがって、例えばマルチチャンネル・サラウンド再生において、センターチャンネルの定位方向との間には大きな開きはなくなり、繋がりがある滑らかな音像移動が得られるという効果がある。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、この発明によるスピーカ装置および音響再生方法の実施形態を、図を参照して説明する。
【0028】
図1および図2は、この発明によるスピーカ装置を、映像再生装置の画面に映出された画像を監視しながら、その画像に関連する音声を音響再生して聴取するようにする視聴システムの一部として用いる場合のシステム構成例を示す。この例では、視聴環境(リスニングルーム)は通常の直方体のような部屋であるとし、リスナ12の左右の側方には壁面14L,14Rがあり、またリスナ12の上方には、天井14Cがあり、リスナは、床14Gの上に置かれた椅子に着座しているものとする。
【0029】
リスナ12から見て部屋の正面の壁14F側には、この例においては、ビデオプロジェクタ13(図2参照)より投影される映像を表示するための投影スクリーン11が設置されている。この投影スクリーン11の下方には、この実施形態のスピーカ装置10が配置されている。この例では、リスナ12は、投影スクリーン11を正面に見るように着座するものとしている。
【0030】
この実施形態のスピーカ装置10は、アレースピーカと、アレースピーカ用音声信号生成回路とからなる。アレースピーカは、前述もしたように、1次元的あるいは2次元的に複数個のスピーカユニットが配列されたものであり、アレースピーカ用音声信号生成回路は、左チャンネルの音声信号や右チャンネルの音声信号などの各チャンネルの音声信号のそれぞれから、複数個のスピーカユニットのそれぞれに供給する複数個のユニット駆動信号を形成する。
【0031】
[アレースピーカの構成例]
図3(A)に、この実施形態におけるアレースピーカ20の構成例を示す。この図3(A)の例のアレースピーカ20は、複数個のスピーカユニット21を2次元配列とした場合の一例であり、水平方向および高さ方向に、この例では同じ大きさの多数のスピーカユニット21が配列されている。
【0032】
ここで、複数個のスピーカユニット21を配列するというのは、複数個のスピーカユニット21を、それぞれの振動板21vがユニット取り付け板22面からすべて外部に臨むように、並べて配列することを意味している。図3の例では、スピーカユニット21は円形の振動板21vを備え、その振動板21vの振動方向の主軸が、すべて取り付け板22に対して直交する方向となるようにされるものである。
【0033】
この例では、スピーカユニット21は、例えば口径8cmのユニットが用いられ、水平方向には一定間隔Dw、高さ方向には一定間隔Dhで、図3(A)に示すように、正方格子状に配列されている。
【0034】
ここで、配列間隔DwおよびDhは、隣り合うスピーカユニット21の振動板21vの中心(ユニット中心)間の間隔であり、この例では、例えば、Dw=Dh=10cmとされている。
【0035】
そして、この場合、図3(A)に示すように、アレースピーカ20を構成する複数個のスピーカユニット21の水平方向の左端のユニット中心から、右端のユニット中心までの距離(以下、この距離をユニット配列幅と呼ぶ)をW、また、複数個のスピーカユニットの高さ方向の下端のユニット中心から、上端のユニット中心までの距離(以下、この距離をユニット配列高と呼ぶ)をHとしている。
【0036】
一般に、アレースピーカ20における複数個のスピーカユニット21の配列間隔Dw、Dhは、アレースピーカ20全体としての指向特性の、制御可能な高域限界周波数を決定する。また、アレースピーカ20のユニット配列幅Wおよびユニット配列高Hは、アレースピーカ20全体としての指向特性の、それぞれ幅および高さ方向の制御可能な低域限界周波数を決定する。
【0037】
したがって、アレースピーカ20において、低域から高域まで任意の指向特性を得るには、小型のスピーカユニットを狭い間隔で多数配置し、ユニット配列幅Wおよびユニット配列高Hを十分に大きくすることが望ましい。
【0038】
しかし、アレースピーカ20全体の大きさを極端に大きくすることは、実用上、困難であり、また、きわめて多数の小型スピーカユニットを敷き詰めることも、コストの増大、製造の困難さなどを伴うので、その目的用途に応じて、スピーカユニット21の配列間隔Dw,Dhおよびユニット配列幅Wおよびユニット配列高Hが決定されることになる。
【0039】
波長の長い低音域においては、聴取者の音源の方向弁別能が低くなるので、実用上は、低音域でのビーム状の指向特性は不要と考えられ、その点ではアレースピーカ20のユニット配列幅Wおよびユニット配列高Hは、さほど大きくする必要はなく、例えば数10cm乃至1m程度で十分である。
【0040】
また、マルチチャンネル・サラウンド信号を再生する場合には、リスナ12の周囲方向に音像定位させるようにするが、水平方向に比べ、高さ方向の方向弁別能が低いので、高さ方向には水平方向ほど厳密に指向特性をビーム状にする必要はない。
【0041】
そのため、スピーカユニット21の高さ方向の配列間隔Dhは、やや広めでもよい。また、アレースピーカ20のユニット配列高Hは、ユニット配列幅Wに比べ、小さくすることもできる。実際のスピーカユニットは、その口径の大きさにより高音域では狭い指向性となるので、高さ方向のスピーカユニット21の個数が少ないアレースピーカ20を構成した場合でも、狭い指向性を得ることは容易である。
【0042】
したがって、極端な場合には、図3(B)のように、取り付け板22に、1次元的に水平方向に複数個のスピーカユニット21の振動板21vを並べたリニアアレースピーカ20の構成とし、水平方向での指向性制御のみでも適度な効果が得られる。なお、この図3(B)のリニアアレースピーカ20の場合、基本的には、そのスピーカユニット21の配列軸を中心とした回転対称形をなす指向特性となる。
【0043】
なお、図3では、スピーカユニット21の配列間隔Dw,Dhは一定としたが、例えば中央部ではスピーカユニット21を密接させて配置すると共に、周辺部になるほどスピーカユニット21の間隔を大きくするように配列してもよい。そのようにした場合には、アレースピーカ20全体として使用するスピーカユニット21の個数を削減できる。
【0044】
また、スピーカユニット21を図3(A)のように2次元的に配列する場合において、上述の例のように、スピーカユニット21の振動板21vを正方格子状に配列するのではなく、例えば千鳥格子状に配列するようにすれば、等価的にスピーカユニット21の配列間隔Dw,Dhを、より小さくすることができる。
【0045】
さらに、アレースピーカ20を構成する複数個のスピーカユニットは、上述の例では、同じ口径の同特性のスピーカユニットを多数配列したものとしたが、高音域用ユニット(ツィータ)と中低音域用ユニットあるいはフルレンジユニットを組み合わせて配列するようにしてもよい。これ以外にもアレースピーカの構成方法は多種多様に考えられる。この発明では、少なくとも水平方向での指向特性が特に中高音域で制御可能であれば、アレースピーカの形態について限定するものではない。
【0046】
[アレースピーカ用音声信号生成回路]
以上のように複数個のスピーカユニット21が配列されて構成されるアレースピーカ20の各スピーカユニット21には、アレースピーカ用音声信号生成回路からユニット駆動信号が供給される。アレースピーカ用音声信号生成回路は、各チャンネルの音声信号から、前記複数個のスピーカユニット21のそれぞれに供給する複数個のスピーカユニット駆動信号を生成する。
【0047】
入力音声信号が2チャンネルである場合のアレースピーカ用音声信号生成回路の一例について、以下に説明する。図4は、アレースピーカ用音声信号生成回路の全体の構成を示すブロック図である。
【0048】
この例のアレースピーカ用音声信号生成回路の場合には、図4に示すように、第1チャンネル用信号生成回路41と、第2チャンネル用信号生成回路42と、制御回路43と、第1チャンネル調整操作部44と、第2チャンネル調整操作部45と、チャンネル合成回路461,462,463,・・・,46n(nはスピーカユニット21の数)と、出力アンプ471,472,473,・・・,47n(nはスピーカユニット21の数)を備える。制御回路43は、例えばマイクロコンピュータを搭載して構成される。
【0049】
第1チャンネル用信号生成回路41および第2チャンネル用信号生成回路42は、同一の構成を有するもので、それぞれ、第1の指向性形成用信号生成回路411および421と、第2の指向性形成用信号生成回路412および422と、遅延・振幅調整回路413および423と、合成回路414および424とからなり、音声入力端子48および49からの第1および第2チャンネルの入力音声信号の入力を受ける。
【0050】
第1の指向性形成用信号生成回路411および421は、それぞれの音声入力端子48および49を通じて入力された各チャンネルの入力音声信号から、制御回路43からの制御信号CT11およびCT21に基づいて、アレースピーカ20の複数個のスピーカユニット21に供給する第1の複数のユニット駆動信号U11およびU21を生成する。この第1の複数のユニット駆動信号U11およびU21は、アレースピーカ20からビーム状に放射される音波の指向性の主軸の方向を、制御回路43からの制御信号CT11およびCT21により定められる第1の方向とするように生成される。
【0051】
同様に、第2の指向性形成用信号生成回路412および422は、それぞれのチャンネルの入力音声信号から、制御回路43からの制御信号CT12およびCT22に基づいて、アレースピーカ20の複数個のスピーカユニット21に供給する第2の複数のユニット駆動信号U12およびU22を生成する。この第2の複数のユニット駆動信号U12およびU22は、アレースピーカ20からビーム状に放射される音波の指向性の主軸の方向を、制御回路43からの制御信号CT12およびCT22により定められる第2の方向とするように生成される。
【0052】
遅延・振幅調整回路413および423は、アレースピーカ20から前記第1の方向にビーム状に放射される音波(以下、第1のビーム状音波という)がリスナ12に到達する時間と、アレースピーカ20から前記第2の方向にビーム状に放射される音波(以下、第2のビーム状音波という)がリスナ12に到達する時間との差を調整すると共に、第1のビーム状音波のレベルを調整するためのものである。
【0053】
遅延・振幅調整回路413および423は、制御回路43からの制御信号CT10およびCT20により遅延時間および振幅(レベル)が制御される。
【0054】
制御回路43には、第1チャンネル調整操作部44からの調整操作信号が供給されると共に、第2チャンネル調整操作部45からの調整操作信号が供給される。第1チャンネル調整操作部44には、当該第1チャンネルの第1のビーム状音波の指向性の主軸の方向調整用つまみ51および第1のビーム状音波の振幅調整用つまみ52と、当該第1チャンネルの第2のビーム状音波の指向性の主軸の方向調整用つまみ53および第2のビーム状音波の振幅調整用つまみ54と、当該第1チャンネルの遅延時間調整用つまみ55および振幅調整用つまみ56とが設けられている。
【0055】
同様に、第2チャンネル調整操作部45には、当該第2チャンネルの第1のビーム状音波の指向性の主軸の方向調整用つまみ61および第2のビーム状音波の振幅調整用つまみ62と、当該第2チャンネルの第2のビーム状音波の指向性の主軸の方向調整用つまみ63および第2のビーム状音波の振幅調整用つまみ64と、当該第2チャンネルの遅延時間調整用つまみ65および振幅調整用つまみ66とが設けられている。
【0056】
そして、方向調整用つまみ51が調整操作されることにより、制御信号CT11のうち遅延量制御に関する部分が調整され、この制御信号CT11により第1チャンネルの第1の指向性形成用信号生成回路411からの第1のユニット駆動信号U11により決まる第1のビーム状音波の指向性の主軸の方向(第1の方向)が調整される。また、振幅調整用つまみ52が調整操作されることにより、制御信号CT11のうち振幅制御に関する部分が調整され、この制御信号CT11により第1のユニット駆動信号U11により決まる第1のビーム状音波の振幅(レベル)が調整される。
【0057】
また、方向調整用つまみ53が調整操作されることにより、制御信号CT12のうち遅延量制御に関する部分が調整され、この制御信号CT12により第1チャンネルの第2の指向性形成用信号生成回路412からの第2のユニット駆動信号U12により決まる第2のビーム状音波の指向性の主軸の方向(第2の方向)が調整される。また、振幅調整用つまみ54が調整操作されることにより、制御信号CT12のうち振幅制御に関する部分が調整され、この制御信号CT12により第2のユニット駆動信号U12により決まる第2のビーム状音波の振幅(レベル)が調整される。
【0058】
また、方向調整用つまみ61が調整操作されることにより、制御信号CT21のうち遅延量制御に関する部分が調整され、この制御信号CT21により第2チャンネルの第1の指向性形成用信号生成回路421からの第1のユニット駆動信号U21により決まる第1のビーム状音波の指向性の主軸の方向(第1の方向)が調整される。また、振幅調整用つまみ62が調整操作されることにより、制御信号CT21のうち振幅制御に関する部分が調整され、この制御信号CT21により第1のユニット駆動信号U21により決まる第1のビーム状音波の振幅(レベル)が調整される。
【0059】
また、方向調整用つまみ63が調整操作されることにより、制御信号CT22のうち遅延量制御に関する部分が調整され、この制御信号CT22により第2チャンネルの第2の指向性形成用信号生成回路422からの第2のユニット駆動信号U22により決まる第2のビーム状音波の指向性の主軸の方向(第2の方向)が調整される。また、振幅調整用つまみ64が調整操作されることにより、制御信号CT22のうち振幅制御に関する部分が調整され、この制御信号CT22により第2のユニット駆動信号U22により決まる第2のビーム状音波の振幅(レベル)が調整される。
【0060】
さらに、遅延量調整用つまみ55が調整操作されることにより、制御信号CT10のうち遅延量制御に関する部分が調整され、この制御信号CT10により第1チャンネルの遅延・振幅調整回路413における遅延時間が調整される。また、振幅調整用つまみ56が調整操作されることにより、制御信号CT10のうち振幅制御に関する部分が調整され、この制御信号CT10により遅延・振幅調整回路413における、その入力信号についての振幅(レベル)が調整される。
【0061】
また、遅延量調整用つまみ65が調整操作されることにより、制御信号CT20のうち遅延量制御に関する部分が調整され、この制御信号CT20により第2チャンネルの遅延・振幅調整回路423における遅延時間が調整される。また、振幅調整用つまみ66が調整操作されることにより、制御信号CT20のうち振幅制御に関する部分が調整され、この制御信号CT20により遅延・振幅調整回路423における、その入力信号についての振幅(レベル)が調整される。
【0062】
以上のようにして、第1チャンネルの第1および第2の指向性形成用信号生成回路411および412で生成された第1および第2のユニット駆動信号U11およびU12は、アレースピーカ20のスピーカユニット21のうちの、同じスピーカユニットに供給する信号同士が合成回路414で合成されて、アレースピーカ20のスピーカユニット21の数と同数の合成ユニット駆動信号U10が形成される。
【0063】
なお、図4では、合成回路414は、一つとして示してあるが、実際はスピーカユニット21の数と同数である。また、この合成回路414は、第1および第2の指向性形成用信号生成回路411および412の、それぞれの出力信号線のうち、同じスピーカユニットに供給する信号同士となる出力信号線同士を接続することにより構成することもできる。
【0064】
合成ユニット駆動信号U10は、後述する第2チャンネルの合成ユニット駆動信号U20とのチャンネル合成回路461,462,463,・・・,46nおよび出力アンプ471,472,473,・・・,47n(nはスピーカユニット21の数)をそれぞれ通じて、対応するスピーカユニット21のそれぞれに供給される。
【0065】
同様にして、第2チャンネルの第1および第2の指向性形成用信号生成回路421および422で生成された第1および第2のユニット駆動信号U21およびU22は、アレースピーカ20のスピーカユニット21のうちの、同じスピーカユニットに供給する信号同士が合成回路424で合成されて、アレースピーカ20のスピーカユニット21の数と同数の合成ユニット駆動信号U20が形成される。
【0066】
この合成ユニット駆動信号U20は、第1チャンネルの合成ユニット駆動信号U10との合成回路461,462,463,・・・,46nおよび出力アンプ471,472,473,・・・,47nをそれぞれ通じて、対応するスピーカユニット21のそれぞれに供給される。
【0067】
第1指向性形成用信号生成回路411、421および第2の指向性形成用信号生成回路412、422は、全く同一の構成を有するもので、それぞれスピーカユニット21の数と同数のフィルタ回路からなる。図5は、第1チャンネル用信号生成回路41の第1および第2の指向性形成用信号生成回路411および412について、その構成例を示したものである。
【0068】
すなわち、図5に示す例においては、第1指向性形成用信号生成回路411は、スピーカユニット21の数と同数のフィルタ回路711,712,713,・・・,71nからなり、第2指向性形成用信号生成回路412は、スピーカユニット21の数と同数のフィルタ回路721,722,723,・・・,72nからなる。
【0069】
そして、制御回路43からの制御信号CT11およびCT12は、図5に示すように、第1指向性形成用信号生成回路411のフィルタ回路711,712,713,・・・,71nおよび第1指向性形成用信号生成回路411のフィルタ回路721,722,723,・・・,72nのそれぞれに個別に供給する複数個の制御信号の束である。
【0070】
フィルタ回路711,712,713,・・・,71nおよびフィルタ回路721,722,723,・・・,72nのそれぞれは、例えばアナログフィルタ、あるいはデジタルフィルタによって構成される。デジタルフィルタで構成される場合には、音声入力端子48からの入力音声信号がデジタル音声信号とされる、あるいは、第1および第2の指向性形成用信号生成回路411および412の入力段において、デジタル音声信号に変換される必要がある。
【0071】
フィルタ回路711,712,713,・・・,71nおよびフィルタ回路721,722,723,・・・,72nのそれぞれをアナログフィルタで構成する場合には、例えば可変容量素子の容量値や可変抵抗器の抵抗値が制御信号CT11およびCT12により調整されることにより、遅延時間および振幅が調整される。また、デジタルフィルタで構成する場合には、制御信号CT11、CT12は、それぞれのフィルタ回路に供給するフィルタ係数のセットの束であり、それらセットのフィルタ係数値が変更制御されることにより、遅延時間および振幅が調整される。
【0072】
[音響再生方法の実施形態]
次に、上述のように構成されるアレースピーカ用音声信号生成回路と、アレースピーカ20とを用いて、左右2チャンネルの音声信号を音響再生する場合について、説明する。
【0073】
以下に説明する例は、第1チャンネル用信号生成回路41および第2チャンネル用信号生成回路42において、遅延・振幅調整回路413,423、第1の指向性形成用信号生成回路411,421、第2の指向性形成用信号生成回路412,422のすべては、デジタル回路の構成とされる。
【0074】
したがって、この例の場合には、フィルタ回路711〜71nおよび721〜72nのそれぞれは、デジタルフィルタで構成され、制御信号CT11,CT21およびCT12,CT22は、フィルタ回路711〜71nおよび721〜72nのそれぞれに供給される複数のフィルタ係数のセットとされる。そして、各セットのフィルタ係数の値が調整用つまみ51〜54および61〜64の調整により変更される。また、遅延・振幅調整回路413,423も、デジタルフィルタの構成として、制御信号CT10、CT20は、フィルタ係数のセットの束とされる。
【0075】
この場合において、例えば、制御回路43には、ビーム状音波の指向性の主軸の方向を順次に変更するためのフィルタ回路711〜71nおよび721〜72n用のフィルタ係数のセットが、例えば不揮発性メモリに記憶されており、そのメモリから読み出されるフィルタ係数のセットが、調整用つまみ51〜54および61〜64の調整に応じて変更されることにより、前記ビーム状音波の指向性の主軸の方向および前記ビーム状音波の振幅が変更される。
【0076】
先ず、図4において、この例においては、第1チャンネルの音声入力端子48を通じて左チャンネルのデジタル音声信号が供給される。また、第2チャンネルの音声入力端子49を通じて右チャンネルのデジタル音声信号が供給される。先ず、左チャンネルのデジタル信号から、複数個のスピーカユニット21を駆動するためのユニット駆動信号U10が生成される動作について説明する。
【0077】
この実施形態においては、第1チャンネル用信号生成回路41の第2の指向性形成用信号生成回路412では、音声入力端子48を通じた左チャンネルのデジタル音声信号から、図6において、実線矢印15Lに示すように、左側壁面14Lに反射した後、実線矢印16Lに示すように伝搬して、リスナ12に到達するようにするビーム状音波(反射波)BLrefをアレースピーカ20から発生するようにする第2のユニット駆動信号U12を生成するようにする。
【0078】
前述したように、この反射波BLrefのビームの指向性の主軸の方向は、方向調整用つまみ53により調整される。また、この反射波BLrefのビームの振幅は、振幅調整用つまみ54により調整される。
【0079】
また、第1チャンネル用信号生成回路41の第1の指向性形成用信号生成回路411では、遅延・振幅調整回路413を通じた左チャンネルのデジタル音声信号から、図6において、実線矢印17Lに示すように、直接的にリスナ12に到達するようにするビーム状音波(直接波)BLdirをアレースピーカ20から発生するようにする第1のユニット駆動信号U11を生成するようにする。
【0080】
前述したように、この直接波BLdirのビームの指向性の主軸の方向は、方向調整用つまみ51により調整される。また、この直接波BLdirのビームの振幅は、振幅調整用つまみ52により調整される。
【0081】
この場合、遅延・振幅調整回路413の振幅ゲインが「1」(入力信号の振幅の増減無し)のとき、反射波BLrefのレベルと、直接波BLdirのレベルとが、リスナ12において等しくなるように、第1指向性形成用信号生成回路411および第2指向性形成用信号生成回路412において、振幅調整される。
【0082】
ところで、直接的にリスナ12に到達するビーム状音波BLdirの行路長は、壁に反射されてリスナ12に到達するビーム状音波BLrefの行路長よりも短いので、両方の音波BLdir、BLrefが同時にアレースピーカ20から放射されると、直接波BLdirの方が早くリスナ12に到達する。しかも、行路長による距離減衰と、反射壁による一部吸音により、直接波BLdirに比べて反射波BLrefのレベルが小さくなってしまう。この両音波BLdir、BLrefをリスナが聴くと、先行音定位の原理に基づき、ほぼ正面方向に音像定位してしまう。
【0083】
この問題のうち到達時間に関する問題を解決するのが、遅延・振幅調整回路413である。すなわち、この例の場合には、直接波BLdirに対して、調整用つまみ55の調整操作により遅延調整処理が施される。この遅延調整処理が施されることにより、両ビーム状音波BLdir、BLrefがリスナに同時に到達するように調整される。
【0084】
また、前記問題のうちレベルの違いに関する問題は、第1指向性形成用信号生成回路411および第2指向性形成用信号生成回路412を構成するフィルタ回路における振幅調整機能により解決できる。また、遅延・振幅調整回路413の振幅調整機能を用いることによっても解決できる。
【0085】
両音波BLdir、BLrefがほぼ同時に、同レベルでリスナ12に届けば、それらの中間的な方向に音像定位感が得られる。このことは、通常のステレオシステムにおいて、左右のスピーカに同じ信号を入力したときに、その中間位置に音像が定位する(ファントム・センター)ことと同じ現象である。
【0086】
以上のようにして形成されたユニット駆動信号U11およびU12は、同じスピーカユニット21に供給すべきもの同士が合成された後、チャンネル合成回路431〜43nおよび出力アンプ441〜44nを通じてそれぞれのスピーカユニット21に供給される。これにより、アレースピーカ20から、両ビーム状音波BLdir、BLrefがリスナ12に同時に、かつ同レベルで到達するように、放射される。
【0087】
この結果、リスナ12は、実線矢印16Lで示される方向からのビーム状音波BLrefと、実線矢印17Lで示される方向からのビーム状音波BLdirとを同時に聴取するため、前述したように、図6において、実線矢印18Lで示すように、あたかもビーム状音波BLdirの到来方向と、ビーム状音波BLrefの到来方向との中間の方向から左チャンネルの音声が到来するように聴取するようになる。
【0088】
つまり、左チャンネルの音声による音像は、中央のアレースピーカ20の位置と左側の壁面14Lとの間の、左チャンネルの音声信号が予定している所定の位置(図6において、虚スピーカ位置20L参照)に定位するようにリスナ12は、聴取することができるようになる。
【0089】
ここで、両ビーム状音波BLdir、BLrefのレベルが等しいときには、左チャンネルの音声の音像定位位置は、ビーム状音波BLdirの到来方向と、ビーム状音波BLrefの到来方向との中間の、中央の方向となるが、両ビーム状音波BLdir、BLrefの強さが異なる場合には、左チャンネルの音声の音像定位位置は、より振幅の大きいビーム状音波の到来方向に偏った方向となる。
【0090】
また、反射波BLrefと直接波BLdirとのレベルを調整することにより、音像定位方向をその左右方向に変化させることができる。同様に、直接波BLdirに与えた遅延時間を増減させることにより、音像定位方向を変化させることができる。
【0091】
このことから、振幅調整用つまみ52,54を調整して、ビーム状音波BLdir、BLrefの振幅を調整することにより、あるいは、その調整に代えて、またはその調整に加えて、振幅調整用つまみ56を調整して、遅延・振幅調整回路413で信号振幅を制御することで、ビーム状音波BLdirの振幅を調整することにより、中央のアレースピーカ20の位置と左側の壁面14Lとの間の、左チャンネルの音声の音像定位位置を、より振幅の大きいビーム状音波の到来方向に偏った方向に調整することができる。
【0092】
また、遅延量調整用つまみ55を調整して、直接波BLdirに与える遅延時間を調整することにより、左チャンネルの音声信号による音像定位方向を調整することができる。
【0093】
音声入力端子49から第2チャンネル用信号生成回路42に供給される右チャンネルのデジタル音声信号についても、上述と全く同様の処理がなされて、第2の指向性形成用信号生成回路422では、右チャンネルのデジタル音声信号から、図6において、実線矢印15Rに示すように、右側壁面14Rに反射した後、実線矢印16Rに示すようにして、リスナ12に到達するようにするビーム状音波(反射波)BRrefをアレースピーカ20から発生するようにする第2のユニット駆動信号U22を生成する。
【0094】
前述したように、この反射波BRrefのビームの指向性の主軸の方向は、方向調整用つまみ63により調整される。また、この反射波BRrefのビームの振幅は、振幅調整用つまみ64により調整される。
【0095】
また、第2チャンネル用信号生成回路42の第1の指向性形成用信号生成回路421では、遅延・振幅調整回路423を通じた左チャンネルのデジタル音声信号から、図6において、実線矢印17Rに示すように、直接的にリスナ12に到達するようにするビーム状音波(直接波)BRdirをアレースピーカ20から発生するようにする第1のユニット駆動信号U21を生成する。
【0096】
前述したように、この直接波BRdirのビームの指向性の主軸の方向は、方向調整用つまみ61により調整される。また、この音波BRdirのビームの振幅は、振幅調整用つまみ62により調整される。
【0097】
そして、両ビーム状音波BRdir、BRrefがリスナ12に同時に到達するように、遅延・振幅調整回路423の遅延時間が調整用つまみ65の調整操作により調整される。また、第1指向性形成用信号生成回路421および第2指向性形成用信号生成回路422を構成するフィルタ回路における振幅調整機能により、また、これに代えて、あるいはこれに加えて、遅延・振幅調整回路423の振幅調整機能を用いることによって両ビーム状音波BRdir、BRrefがリスナに同レベルで到達するように調整される。
【0098】
以上のようにして形成されたユニット駆動信号U21およびU22は、同じスピーカユニット21に供給すべきもの同士が合成された後、チャンネル合成回路431〜43nおよび出力アンプ441〜44nを通じてそれぞれのスピーカユニット21に供給される。これにより、アレースピーカ20から、両ビーム状音波BRdir、BRrefがリスナ12に同時に、かつ同レベルで到達するように、放射される。
【0099】
この結果、リスナ12は、実線矢印16Rで示される方向からのビーム状音波BRrefと、実線矢印17Rで示される方向からのビーム状音波BRdirとを同時に聴取するため、図6において、実線矢印18Rで示すように、あたかもビーム状音波BRdirの到来方向と、ビーム状音波BRrefの到来方向との中間の方向から右チャンネルの音声が到来するように聴取するようになる。
【0100】
つまり、右チャンネルの音声による音像は、中央のアレースピーカ20の位置と左側の壁面14Rとの間の、右チャンネルの音声信号が予定している所定の位置(図6において、虚スピーカ位置20R参照)に定位するようにリスナ12は、聴取することができるようになる。
【0101】
そして、前述した左チャンネルの音声信号の場合と同様にして、この右チャンネルの音声信号についても、反射波BRrefと直接波BRdirとのレベルを調整することにより、音像定位方向をその左右方向に変化させることができる。同様に、直接波BRdirに与えた遅延時間を増減させることにより、音像定位方向を変化させることができる。
【0102】
つまり、振幅調整用つまみ62,64を調整して、ビーム状音波BRdir、BRrefの振幅を調整することにより、振幅調整用つまみ66を調整して、遅延・振幅調整回路423で信号振幅を制御することで、ビーム状音波BRdirの振幅を調整することにより、中央のアレースピーカ20の位置と右側の壁面14Rとの間の、右チャンネルの音声の音像定位位置を、より振幅の大きいビーム状音波の到来方向に偏った方向に調整することができる。
【0103】
以上のようにして、この実施形態によれば、左右チャンネルの音声信号による音像を、所期の音像定位位置に定位させることが可能となり、良好な音響再生空間を得ることができる。したがって、マルチチャンネル・サラウンド再生において、センターチャンネルの音声信号による音波は、直接的にリスナ12に到達するようにアレースピーカ20から放射した場合に、従来のような不自然な音像定位感がなくなり、繋がりのある滑らかな音像移動が得られるようになるという効果がある。
【0104】
なお、上述の実施形態では、第1および第2の指向性形成用信号生成回路41および42のそれぞれは、アレースピーカ20の複数個のスピーカユニット21の数と同数のフィルタ回路を備えるようにした。そして、そのフィルタ回路は、遅延調整機能と、振幅調整機能の両方を備えるように記述したが、ビーム状の指向性を形成するためには少なくとも遅延時間を調整できればよい。
【0105】
従来のアレースピーカを用いたスピーカ装置において、左右チャンネルの音声信号を再生する場合には、アレースピーカからのリスナへの直接波のレベルを抑えるために、遅延時間のみならず、必ず振幅をも調整し、場合によっては周波数特性をも調整する必要がある場合もあるが、上述の実施形態によるスピーカ装置では、アレースピーカ20からのリスナ12への直接音をも積極的に音響再生に使用するので、アレースピーカ20からのビーム状音波BLrefおよびBRrefの指向性として、小さいレベルでのサイドローブがリスナ12に向いていたとしても問題ない。
【0106】
したがって、第1および第2の指向性形成用信号生成回路411,421および412,422を構成する回路(フィルタ回路)では、遅延処理ができるだけのものでもよいのである。
【0107】
しかし、上述の例のように、第1および第2の指向性形成用信号生成回路411,421および412,422を構成する回路として、遅延調整機能および振幅調整機能を備えるフィルタ回路を用いた場合には、上述したように、その振幅調整機能により、各チャンネルの音声信号についての音像定位位置を左右方向に移動調整することが可能となる。
【0108】
なお、振幅調整機能は、信号経路上に設けたアッテネータを用いるように構成することもできる。
【0109】
ところで、上述した実施形態では、第1および第2の指向性形成用信号生成回路411,421および412,422を構成する複数個のフィルタ回路は、アレースピーカ20の複数個のスピーカユニット21のそれぞれに対応して設けられているので、多様な指向性制御が可能である。
【0110】
このことを利用して、例えば、第2チャンネル用信号生成回路42で、ユニット駆動信号U20として、右チャンネル用のユニット駆動信号を生成する場合において、直接にリスナ12に到達させるようにするビーム状音波BRdirの指向特性を、図7に示すように、指向性の主軸Axの方向が、中央のリスナ12の方向よりも、若干右側にずれたような指向特性とすることにより、右チャンネルの音声について適切な定位感が得られるサービスエリアを拡大することができる。
【0111】
通常のステレオシステムで、中央より右側にシフトして聴くと、音像がほとんど右側に寄ってしまい、左チャンネルの音があまり聴けないという現象が生じることがある。これは、サービスエリアが狭いことに起因する。
【0112】
これに対して、図7に示したような直接波BRdirの指向特性においては、リスナがアレースピーカ20の正面の位置12Cで聴いている場合には、前述したようにして、右チャンネルの音声は、適正な中間位置に音像定位する。
【0113】
そして、リスナが中央よりも右側にシフトした位置12Rで聴いている場合には、中央の位置12Cで聴いている場合よりも、直接波BRdirのレベルが大きくなるので、必要以上に反射波BRrefの到来方向に音像が引っ張られることがない。
【0114】
逆に、リスナが中央よりも左側にシフトした位置12Lで聴いている場合には、中央の位置12Cで聴いている場合よりも、直接波BRdirのレベルが小さくされるので、反射波BRrefによる音像定位感が損なわれず、この場合でも適正な方向に音像定位させることができる。つまり、サービスエリアが拡大するのである。
【0115】
次に、図6に示されるように、直接波BLdir、BRdirの行路長は、反射波BLref、BRrefの行路長よりもかなり短い。上述の例では、直接波BLdir、BRdirと、反射波BLref、BRrefのリスナへの到達タイミングを揃えるために、遅延・振幅調整回路413,423において直接波BLdir、BRdirを遅延させた。
【0116】
しかし、直接波BLdir、BRdirの等価音源位置が、図6において、例えばアレースピーカの中心位置Pr0にある場合、つまり、当該中心位置Pr0から直接波BLdir、BRdirが放射されているように聴こえる場合、不自然な音場が形成されており、特にリスナが正面位置よりも僅かに左右にシフトして聴く場合に不自然な音場感を得ることがある。
【0117】
この問題は、直接波BLdir、BRdirの等価音源位置が、反射波BLref、BRrefの行路長と同じ分だけリスナから離れた位置にあるようにすれば、解決することができる。
【0118】
これを実現するためには、アレースピーカ20から直接波BLdir、BRdirを得るための第1指向性形成用信号生成回路411,421のフィルタ回路711〜71n、721〜72nの、各セットのフィルタ係数の値を調整して、各ユニット駆動信号についての遅延時間を調整し、アレースピーカ20より放射される直接波BLdir、BRdirの波面を、より平面波に近くなるようにすればよい。
【0119】
具体的には、直接波BLdir、BRdirについては、各スピーカユニット21からはほぼ同時に音波を出力するようにする。つまり、第1指向性形成用信号生成回路411,421の各フィルタ回路での遅延時間をほぼ等しくするようにする。
【0120】
このようにすれば、図8に示すように、アレースピーカ20の近傍では、直接波BLdir、BRdirの波面は、ほぼ平面波となる。ただし、アレースピーカ20が有限の大きさを持つため、アレースピーカ20の端部では円弧状の波面となる。そして、アレースピーカ20から離れるにしたがって、直接波BLdir、BRdirの波面は、徐々に球面上の波面に近づいていく。
【0121】
以上のようにして、アレースピーカ20より放射される直接波BLdir、BRdirの波面を、より平面波に近くなるようにすることにより、図8からも分かるように、リスナ位置における音波面の曲率が大きくなり、等価音源位置20Dが、実際のアレースピーカ20の位置より奥まった位置にあるかのようになるので、より自然な音場感が得られるものである。
【0122】
なお、リスナ位置によっては、各フィルタ回路の遅延時間を調整してその波面を整えればよい。例えば、より深い位置に等価音源位置20Dを設定したい場合には、図9に示すように、アレースピーカ20の中央部のスピーカユニット21に供給する信号を、他より遅延させて、周辺部のスピーカユニット21から先に音波を放射させて、アレースピーカ20近傍では凹状の波面とし、リスナ位置での波面を、より平面的にすればよい。
【0123】
[音響再生方法の他の例]
上述の例では、左右2チャンネルの音声信号による音像を、前方壁面14Fの左右の所望の位置に定位させる場合であるが、この発明は、この場合の例に限られないことは言うまでもない。
【0124】
<第1の他の例>
例えば、センターチャンネルの音声信号による音像を、投影スクリーンの裏側にあるように定位させることもできる。図10は、その場合の音響再生方法を説明するための図である。
【0125】
すなわち、この例の場合には、第1チャンネル用信号生成回路41または42と全く同一の構成のセンターチャンネル用信号生成回路を用いて、当該センターチャンネル用のユニット駆動信号が生成される。そして、この例の場合には、第1指向性形成用信号生成回路では、アレースピーカ20からリスナ12に対する直接波BCdirを形成するためのユニット駆動信号を生成し、第2指向性形成用信号生成回路では、アレースピーカ20から、一旦、リスニングルームの天井14Cで反射させた後、リスナ12に到達するようになる反射波BCrefを形成するためのユニット駆動信号を生成する。
【0126】
そして、前述と同様にして、直接波BCdirと、反射波BCrefとについて、リスナへの到達時間の時間の調整およびリスナへの到達時点におけるレベルを調整するようにする。そして、それら2種のユニット駆動信号の、同じスピーカユニット21に供給するもの同士を合成して、対応するスピーカユニット21に供給し、アレースピーカ20を駆動する。
【0127】
この例によれば、前述と同様にして、直接波BCdirと、反射波BCrefとについて、リスナへの到達時間の時間の調整およびリスナへの到達時点におけるレベルを調整することによって、センターチャンネルの音声信号による音像を、投影スクリーン11の裏側の仮想音源位置20Cにすることができる。
【0128】
この例の場合においても、図8および図9で説明した手法を用いることにより、投影スクリーン11の裏側の、より奥まった位置に仮想音源位置に、センターチャンネルの音声信号による音像を定位させるようにすることができ、投影スクリーンに投影された映像と仮想音源位置を一致させることができる。
【0129】
また、同様にして、例えば、投影スクリーン11の上端部と天井14Cとの中間位置に音像定位させるようにすることもできる。
【0130】
また、アレースピーカ20が投影スクリーン11の上部に設置されている場合には、第2の指向性形成用信号生成回路のフィルタ係数を調整して、第2のビーム状音波を床面14Gに反射させてからリスナへ到達させるようにすればよい。
【0131】
<第2の他の例>
上述の例は、いずれも反射波と直接波とを合成して、所望の方向に音像定位させた場合であるが、リスナ12への直接波を用いる代わりに、別の方向への反射波を生成して、2つの反射波の合成により所望の方向に音像定位させることも可能である。
【0132】
図11は、その場合の一例を説明するための図である。この例では、例えば、右壁面14Rへの反射波BARref(上述の例の反射波BRrefと同様)と、天井14Cへの反射波BACref(上述の第1の他の例の反射波BCrefと同様)とを合成して、投影スクリーン11の斜め右上に、仮想音源位置20Dとして、音像定位させるようにする。
【0133】
この例の場合には、第1指向性形成用信号生成回路では、アレースピーカ20から、一旦右側の壁面14Rで反射させた後、リスナ12に到達するようになる反射波BARrefを形成するためのユニット駆動信号を生成し、第2指向性形成用信号生成回路では、アレースピーカ20から、一旦、リスニングルームの天井14Cで反射させた後、リスナ12に到達するようになる反射波BACrefを形成するためのユニット駆動信号を生成する。
【0134】
そして、前述と同様にして、直接波BARrefと、反射波BACrefとについて、リスナへの到達時間の時間の調整およびリスナへの到達時点におけるレベルを調整するようにする。そして、それら2種のユニット駆動信号の、同じスピーカユニット21に供給するもの同士を合成して、対応するスピーカユニット21に供給し、アレースピーカ20を駆動する。
【0135】
[その他の変形例]
マルチチャンネル・サラウンド再生の場合に、すべてのチャンネルの音声信号に対して、上述した実施形態のように2つの音波を合成する方法を適用してもよいし、左右チャンネルやセンターチャンネルなど、一部のチャンネルの音声信号についてのみ、上述した実施形態のように2つの音波を合成する方法を適用してもよい。
【0136】
なお、上述の例では、映像再生装置としてビデオプロジェクタを用いたので、投影スクリーンをアレースピーカの上方に配置したが、映像再生装置としては、CRT(Cathode Ray Tube)を用いたテレビモニター装置や、LCD(Liquid Crystal Display)あるいはPDP(Plasma Display Panel)などを用いたフラットディスプレイ装置を用いてもよい。
【0137】
また、投影スクリーン11として、透音性の投影スクリーン(透音のための微小な穴があいている投影スクリーン)の場合には、その投影スクリーンの背部に、アレースピーカを配置した構成としてもよい。もちろん、音楽鑑賞用として、映像再生装置を設けずに、アレースピーカのみを配置してもよい。
【0138】
また、この遅延・振幅調整回路413および423は、上述の例では、第1の指向性形成用信号生成回路の入力側に設けるようにしたが、出力側に設けるようにしてもよい。もっとも、出力側に設けた場合には、遅延・振幅調整回路は、各スピーカユニット21に対して設ける必要があり、しかも、遅延量および振幅は、アレースピーカ20を構成するすべてのスピーカユニット21に供給する複数のユニット駆動信号について、同様の値となるように連動して制御する必要がある。
【0139】
また、前述もしたように、遅延・振幅調整回路413および423は、振幅調整機能を持たない遅延調整回路の構成であってもよい。
【0140】
さらに、上述の実施形態では、遅延・振幅調整回路は、第1および第2の指向性形成用信号生成回路のいずれか一方に対して設けるようにしたが、第1および第2の指向性形成用信号生成回路の双方に対して設けるようにしてもよい。
【0141】
また、上述の実施形態では、第1、第2のビーム状音波の指向性の主軸の方向、そのレベルや遅延時間の調整を、調整操作部44、45により行なうようにしたが、これに限らず、例えばリスニングルームの大きさ(幅、奥行き、高さなど)やリスニング位置を入力して、制御回路43において第1、第2のビーム状音波に関する上記のフィルタ係数などのパラメータを算出するようにしてもよい。
【0142】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、アレースピーカからビーム状の指向性を持って放射された音波が、壁に反射された後にリスナに到達するようにされる場合においても、リスナに対して適当な音像定位方向に音像定位させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるスピーカ装置の実施形態を含むシステム構成の一例を説明するための図である。
【図2】この発明によるスピーカ装置の実施形態を含むシステム構成の一例を説明するための図である。
【図3】この発明によるスピーカ装置の実施形態に用いるアレースピーカの例を説明するための図である。
【図4】この発明によるスピーカ装置の実施形態に用いるアレースピーカ用音声信号生成回路の一例のブロック図である。
【図5】図4の一部の回路の詳細回路例を示す図である。
【図6】この発明によるスピーカ装置の実施形態に用いた音響再生方法の一例を説明するための図である。
【図7】この発明によるスピーカ装置の実施形態に用いた音響再生方法の一例を説明するための図である。
【図8】この発明によるスピーカ装置の実施形態に用いた音響再生方法の一例を説明するための図である。
【図9】この発明によるスピーカ装置の実施形態に用いた音響再生方法の一例を説明するための図である。
【図10】この発明によるスピーカ装置の実施形態に用いた音響再生方法の他の例を説明するための図である。
【図11】この発明によるスピーカ装置の実施形態に用いた音響再生方法の他の例を説明するための図である。
【図12】従来のアレースピーカを用いたスピーカ装置による音響再生方法の一例を説明するための図である。
【符号の説明】
20…アレースピーカ、21…スピーカユニット、41…第1チャンネル用音声信号生成回路、42…第1チャンネル用音声信号生成回路、43…制御回路、44…第1チャンネル調整操作部、45…第2チャンネル調整操作部、48…第1チャンネルの音声入力端子、49…第2チャンネルの音声入力端子、411、421…第1の指向性形成用信号生成回路、412,422…第2の指向性形成用信号生成回路、413…遅延・振幅調整回路

Claims (11)

  1. 複数個のスピーカユニットで構成されるアレースピーカと、
    入力音声信号を受けて、前記アレースピーカの前記複数個のスピーカユニットに供給する第1の複数のユニット駆動信号を生成するものであって、前記第1の複数のユニット駆動信号が前記複数個のスピーカユニットに供給されることによって前記アレースピーカから放射される音波の指向性の主軸の方向を、前記アレースピーカから放射された音波が直接にリスナに到達する第1の方向とするように、前記第1の複数のユニット駆動信号を生成する第1の指向性形成用信号生成手段と、
    前記入力音声信号を受けて、前記アレースピーカの前記複数個のスピーカユニットに供給する第2の複数のユニット駆動信号を生成するものであって、前記第2の複数のユニット駆動信号が前記複数個のスピーカユニットに供給されることによって前記アレースピーカから放射される音波の指向性の主軸の方向を、前記アレースピーカから放射された音波が壁面に反射した後リスナに到達する第2の方向とするように、前記第2の複数のユニット駆動信号を生成する第2の指向性形成用信号生成手段と、
    少なくとも前記第1の指向性形成用信号生成手段の入力側または出力側あるいは前記第2の指向性形成用信号生成手段の入力側または出力側のいずれかに設けられ、前記アレースピーカから前記第1の方向を指向性の主軸の方向として放射される音波がリスナに到達する時間と、前記アレースピーカから前記第2の方向を指向性の主軸の方向として放射される音波がリスナに到達する時間との差を調整するための遅延手段と、
    を備え、前記遅延手段により時間調整された前記第1の複数のユニット駆動信号と前記第2の複数のユニット駆動信号とを、同じスピーカユニットに供給する信号同士を合成して、それぞれのスピーカユニットに供給するようにする
    ことを特徴とするスピーカ装置。
  2. 請求項1に記載のスピーカ装置において、
    前記第1および第2の指向性形成用信号生成手段のそれぞれは、少なくとも前記複数個のスピーカユニットの数に対応した数の複数個の遅延調整手段を備える
    ことを特徴とするスピーカ装置。
  3. 請求項1に記載のスピーカ装置において、
    前記第1および第2の指向性形成用信号生成手段のそれぞれは、前記複数個のスピーカユニットの数に対応した数の複数個の遅延および振幅調整手段を備える
    ことを特徴とするスピーカ装置。
  4. 請求項1に記載のスピーカ装置において、
    前記遅延手段は、その入力信号についての遅延量が制御信号により可変であって、
    前記遅延手段の遅延量を制御する前記制御信号を発生する制御手段を設ける
    ことを特徴とするスピーカ装置。
  5. 請求項1に記載のスピーカ装置において、
    前記遅延手段は、その入力信号についての遅延量と振幅が制御信号により可変であって、
    前記遅延手段における前記遅延量と前記振幅を制御する前記制御信号を発生する制御手段を設ける
    ことを特徴とするスピーカ装置。
  6. 請求項1に記載のスピーカ装置において、
    複数チャンネルの入力音声信号のそれぞれチャンネルに対して、前記第1および第2の指向性形成用信号生成手段と、前記遅延手段とが設けられ、
    各チャンネル用の前記複数のユニット駆動信号のうちの、同じスピーカユニットに供給する信号同士を合成して、それぞれのスピーカユニットに供給するようにする
    ことを特徴とするスピーカ装置。
  7. 請求項に記載のスピーカ装置において、
    前記第1の指向性形成用信号生成手段において、前記リスナに直接に到達する方向の音波の指向性の主軸の方向が、リスナ位置に対してずれた方向となるように、前記第1の複数のユニット駆動信号が形成される
    ことを特徴とするスピーカ装置。
  8. 請求項に記載のスピーカ装置において、
    前記第1の指向性形成用信号生成手段において、前記リスナに直接に到達する方向の音波の波面の曲率中心位置が、前記アレースピーカの実際の配置位置よりもリスナから見て遠くになるように、前記第1の複数のユニット駆動信号が形成される
    ことを特徴とするスピーカ装置。
  9. 複数個のスピーカユニットで構成されるアレースピーカ用いて音響再生する音響再生方法において、
    入力音声信号から、前記アレースピーカの前記複数個のスピーカユニットに供給する第1の複数のユニット駆動信号を生成するものであって、前記第1の複数のユニット駆動信号が前記複数個のスピーカユニットに供給されることによって前記アレースピーカから放射される音波の指向性の主軸の方向をリスナの周囲の壁の一つに反射して、リスナに到達する方向となるように、前記第1の複数のユニット駆動信号を生成する第1の指向性形成用信号生成工程と、
    前記入力音声信号から、前記アレースピーカの前記複数個のスピーカユニットに供給する第2の複数のユニット駆動信号を生成するものであって、前記第2の複数のユニット駆動信号が前記複数個のスピーカユニットに供給されることによって前記アレースピーカから放射される音波の指向性の主軸の方向を直接的にリスナに到達する方向となるように、前記第2の複数のユニット駆動信号を生成する第2の指向性形成用信号生成工程と、
    前記アレースピーカから、前記第1の方向を指向性の主軸の方向として放射される音波がリスナに到達する時間と、前記アレースピーカから、前記第2の方向を指向性の主軸の方向として放射される音波がリスナに到達する時間との差を調整するための遅延工程と、
    を備え、
    前記遅延工程により時間調整された前記第1の複数のユニット駆動信号と前記第2の複数のユニット駆動信号とを、同じスピーカユニットに供給する信号同士を合成して、それぞれのスピーカユニットに供給するようにする
    ことを特徴とする音響再生方法。
  10. 請求項に記載の音響再生方法において、
    前記第1および第2の指向性形成用信号生成工程のそれぞれにおいては、少なくとも前記入力音声信号に対する遅延量を調整して前記第1および第2の複数のユニット駆動信号を生成する
    ことを特徴とする音響再生方法。
  11. 請求項に記載の音響再生方法において、
    前記第1および第2の指向性形成用信号生成工程のそれぞれにおいては、前記入力音声信号に対する遅延量および振幅を調整して前記第1および第2の複数のユニット駆動信号を生成する
    ことを特徴とする音響再生方法。
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