JP3982198B2 - ゴムブッシュ組付け構造 - Google Patents
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Description
【技術分野】
本発明は、ゴムブッシュ組付け構造、特に防振ゴムブッシュ組付け構造の改良に係り、中でも、圧入による組付けに際しての異音発生の問題を解消したゴムブッシュ組付け構造に関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来から、二つの部材の間を弾性的に連結すべく、ゴム外周部に外筒金具が加硫接着等により一体的に設けられてなるゴムブッシュが、広く用いられてきている。特に、自動車等の車両においては、そのようなゴムブッシュの一つである防振ゴム(ブッシュ)として、同心的に若しくは偏心して配された外筒金具及び内筒金具と、それら内、外筒金具間に位置して、それら金具を連結するゴム弾性体とからなる構造のものが採用され、その内筒金具側が一方の部材に、また外筒金具側が他方の部材に、それぞれ取り付けられて、それら二つの部材間を防振連結せしめるようになっている。
【0003】
そして、そのような防振ゴムの如きゴムブッシュにあっては、それの車両における使用位置や使用環境等を考慮して、その外筒金具、特にその外部に露出する表面には、常温乾燥型塗料や酸化重合型塗料等を用いた防錆塗装が施されているが、その際、例えば、アルキッド樹脂を主成分とした酸化重合型塗料を用いた場合には、塗料ミストが万一微細化されたり、その乾固物が多孔質状態で存在すると、空気中の酸素との接触面積が増大することで、発熱を伴なう酸化重合反応が進み易く、更に熱伝導が小さく、蓄熱し易い状態にあると、自然発火し易い状態となる問題がある。これに対して、常温乾燥型塗料であるエマルジョンタイプを用いた防錆塗料を使用すると、そのような自然発火を防止することが出来る特徴がある。
【0004】
一方、かかるゴムブッシュは、一般に、そのゴム外周部に一体的に設けられた外筒金具において、一方の部材たる所定の支持部材に取り付けられて、支持せしめられるようになっているのであるが、そのような支持部材に対するゴムブッシュの取付けは、支持部材の保持孔内にゴムブッシュを圧入せしめることによって取り付けられることとなるところ、そのような保持孔の内面を含んで、かかる支持部材の表面には、通常、カチオン型電着塗料の如き電着塗料を用いた電着塗装が施されて、その防錆が図られている。
【0005】
しかしながら、そのような支持部材の、少なくとも孔内面が電着塗装面とされた保持孔内に、前記した常温乾燥型塗料を用いて外筒金具表面に防錆塗装を施してなるゴムブッシュを圧入して、それらを組み付ける作業を実施すると、それら保持孔の内面と外筒金具の外周面との間において、スティックスリップ現象が惹起され、大きな異音、具体的には120dBにも達する異音が発生し、作業環境が悪化するという問題を内在するものであった。
【0006】
特に、そのような異音発生は、支持部材の保持孔内面をカチオン型電着塗料にて電着塗装した場合において顕著であり、更に支持部材として、その保持孔の外周部に中空部が設けられてなる中空部材が用いられている場合において、前記したスティックスリップによる振動が、その中空部の中で共振することにより、非常に高い音となって、大きな問題を惹起するようになるのである。
【0007】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、ゴムブッシュの組付け作業に際して、異音の発生を抑制乃至は阻止せしめ、以て作業環境の改善を図ることにあり、またそのような異音の発生の低減を図った、自動車用等として有用な防振ゴムブッシュ組付け構造を提供することにある。
【0008】
【解決手段】
そして、そのような技術的課題を解決するために、本発明にあっては、ゴム外周部に金属製の外筒金具が一体的に設けられてなるゴムブッシュを用い、該外筒金具の外周面において、所定の金属製支持部材の、少なくとも孔内面が電着塗装面とされた保持孔内に圧入して、固定せしめてなるゴムブッシュ組付け構造にして、該金属製の外筒金具の少なくとも外周面が常温乾燥型塗料を用いて形成される塗膜にて被覆されていると共に、該塗膜中に、フッ素樹脂粒子または鱗片状粒子が分散、含有せしめられているゴムブッシュを用い、これを、前記金属製支持部材の保持孔内に圧入せしめたことを特徴とするゴムブッシュ組付け構造を、その要旨とするものである。
【0009】
要するに、かくの如き本発明に従うゴムブッシュ組付け構造に用いられるゴムブッシュにあっては、その外筒金具の少なくとも外周面に、常温乾燥型塗料からなる防錆塗膜が形成されて、そのような外周面において、所定の支持部材の保持孔の、電着塗装面からなる内面に対して圧入せしめられても、ゴムブッシュの外筒金具の外周面に形成された常温乾燥型塗料からなる防錆塗膜中に分散、含有せしめられているフッ素樹脂粒子または鱗片状粒子による滑り性向上作用乃至は凝集力低減作用によって、それら防錆塗膜と電着塗装面との間におけるスティックスリップの発生が効果的に抑制乃至は阻止せしめられ得ることとなって、異音が大幅に低減せしめられ、以て作業環境が大きく改善され得ることとなるのである。
【0010】
なお、このような本発明に従うゴムブッシュ組付け構造の好ましい態様の一つによれば、前記鱗片状粒子としては、タルク粉末が有利に用いられ、これによって優れた異音低減効果が奏され得ることとなるのであり、また他の好ましい態様によれば、そのような鱗片状粒子は、有利には、前記塗膜中に15〜50重量%の割合において含有せしめられることにより、塗膜特性を低下させることなく、本発明の目的が、よりよく達成され得ることとなる。
【0011】
また、本発明に従うゴムブッシュ組付け構造の望ましい態様の他の一つによれば、前記フッ素樹脂粒子は、前記塗膜中に5〜20重量%の割合において含有せしめられており、これによって、本発明の目的が、よりよく達成されるのである。
【0012】
さらに、本発明の他の望ましい態様によれば、前記支持部材の少なくとも保持孔内面は、カチオン型電着塗料を用いて形成された電着塗装面にて構成されており、これにより、特にスティックスリップの発生し易いカチオン電着塗装面における異音の発生が、より効果的に抑制乃至は阻止され得て、作業環境の有効な改善を実現することが出来る。
【0013】
加えて、本発明にあっては、支持部材としては、ゴムブッシュが圧入せしめられるに際して、異音の発生が顕著である、少なくとも保持孔の外周に中空部が設けられてなる中空部材にて構成されるものが、有利に対象とされるのである。それによって、そのような支持部材に対するゴムブッシュの圧入・組付けに際して、問題となる異音の低減が効果的に図られ得るのである。
【0014】
また、本発明は、上述の如き構成のゴムブッシュ組付け構造から構成される防振ゴムブッシュ組付け構造であって、前記ゴムブッシュが、同心的に若しくは偏心して配された内筒金具及び外筒金具と、それら内、外筒金具間に位置して、それら金具を連結するゴム弾性体とから構成されていることを特徴とする防振ゴムブッシュ組付け構造をも、その対象とするものであって、そのような防振ゴムブッシュ構成において、本発明の特徴がよりよく発揮され得ることとなる。
【0015】
【発明の実施の形態】
ところで、図1には、本発明が好適に適用される、サスペンションアームにおけるブッシュ組付け構造の一例が示されており、そこでは、支持部材たるサスペンションアーム2の端部に、円筒状のアームアイ部4が、図示の如く、一体的に取り付けられており、その内孔が保持孔6とされて、そこに、防振ゴムブッシュたるサスペンションブッシュ8が、圧入せしめられるようになっている。なお、図において、7は保持孔6の内面を示している。
【0016】
一方、サスペンションブッシュ8は、よく知られているように、円筒状の内筒金具10と、円筒状の外筒金具12とが、同心的に配置され、そしてそれら内、外筒金具10、12が、それらの間において加硫成形されたゴム弾性体14によって、相互に弾性的に連結されて、一体的な構造のブッシュとされているのである。そして、このようなサスペンションブッシュ8は、その外筒金具10の外周面において、サスペンションアーム2の端部のアームアイ部4の保持孔6内に圧入せしめられて、固定されることによって、組み付けられるようになっているのである。
【0017】
而して、かくの如きサスペンションアームのブッシュ組付け構造にあっては、一般に、そのようなサスペンションアーム2のアームアイ部4を含む部分は、鉄等の材質の金属製とされているところから、その防錆のために、適当な防錆塗装が施されることとなるが、塗装の作業性、ひいては生産性や防錆特性等の点よりして、そのようなサスペンションアームの防錆塗装は、電着塗料を用いた電着塗装が採用されており、それによって、アームアイ部4の保持孔6の内面7も電着塗装されて、電着塗装面とされているのであり、以て保持孔内面7の防錆も図られ得るようになっているのである。
【0018】
なお、そのようなアームアイ部4における保持孔6の内面7にまで実施される電着塗装は、電気泳動塗装とも称され、電気泳動の原理にて、水に分散または溶解した所定の電着塗料中に浸漬された金属製被塗物の表面に水不溶性の塗膜を形成した後、焼付けを行なう、従来から公知の各種の手法によって、実施され得るものであって、例えば、アニオン型電着塗料やカチオン型電着塗料を用いた公知の手法が採用されることとなるが、特にサスペンションアーム等の自動車用部材の防錆塗装には、厳格な特性乃至は条件が要請されるところから、一般に、防錆力やつきまわり性が優れる等の特徴を有する、カチオン型電着塗料を用いた電着塗装が、有利に採用されることとなる。
【0019】
一方、サスペンションブッシュ8にあっても、それを構成する内筒金具10や外筒金具12も、鉄等の金属製とされているところから、その防錆を図る必要があり、そのために、その外表面が適当な防錆塗料を用いて塗装されているのであるが、前記したサスペンションアームのアームアイ部4における保持孔6内に圧入せしめられる外筒金具12の外周面にも、そのような防錆塗装が、施されているのである。
【0020】
かかる状況下、そのようなサスペンションブッシュ8の外筒金具12の少なくとも外周面に施される防錆塗装において、従来からの自然発火の危険性が内在する酸化重合型塗料に代えて、そのような問題のない常温乾燥型塗料を用いて塗装を行ない、目的とする防錆塗膜を形成した場合において、前記したサスペンションアームのアームアイ部4における保持孔6内への圧入操作時に、保持孔内面7に形成された電着塗装膜にて与えられる塗装面と外筒金具12の外周面に形成された防錆塗膜との間において、スティックスリップ現象が惹起され、それによって120dBにも達する大きな異音が発生するようになるところから、本発明では、そのような防錆塗膜中に、フッ素樹脂粒子または鱗片状粒子を、分散、含有せしめることとしたのである。
【0021】
すなわち、この本発明において用いられるフッ素樹脂粒子は、常温乾燥型塗料を用いて形成される外筒金具12外周面の防錆塗膜の表面の滑り性を向上せしめ、保持孔6の内面7に対する圧入の際に、塗膜表面に存在するフッ素樹脂粒子によって、かかる保持孔内面7の電着塗装面との間の滑り性を向上して、スティックスリップ現象の発生を抑制乃至は阻止せしめるようにしたものであり、以て異音発生を効果的に低減せしめ得たのである。なお、ここで対象とされるフッ素樹脂粒子としては、フッ素樹脂からなる公知の各種の粒子が、何れも適宜に選択して用いられ、またその粒径は、一般に1〜100μm程度、好適には10〜50μm程度のものが利用される。更に、かかるフッ素樹脂粒子の塗料への添加量は、目的に応じて適宜に選定されることとなるが、固形分換算にて、一般に、5〜20重量%程度の割合において含有せしめられることとなる。その含有量が少なければ、スティックスリップ現象の抑制効果が低く、また多過ぎると、防錆塗膜の塗膜特性に悪影響をもたらすようになるからである。
【0022】
また、かかるフッ素樹脂粒子と同様に、外筒金具12外周面の防錆塗膜中に分散、含有せしめられる鱗片状粒子は、前記した保持孔6の内面7に対する圧入に際して、非常に高い応力が負荷されたときに、常温乾燥型塗料からなる防錆塗膜の凝集力を下げる役割を為し、そして、そのような高応力の負荷時に、鱗片状粒子と塗料中の樹脂との間で滑りを生じさせるようにすることによって、スティックスリップ現象の発生を抑制乃至は阻止して、異音の低減を効果的に図り得るものと推察されている。
【0023】
本発明にあっては、そのような鱗片状粒子として、タルク粉末が有利に用いられることとなるが、その他にも、雲母や黒鉛等の板状の粒子も使用可能であり、そしてそのような鱗片状粒子は、一般に、15〜50重量%、好ましくは20〜40重量%の割合において、また上記のフッ素樹脂粒子と同様な粒径において、防錆塗膜中に含有せしめられることとなる。従って、常温乾燥型塗料中には、固形分換算で、上記の割合となるように、鱗片状粒子が添加、含有せしめられることとなるのである。なお、かかる鱗片状粒子の含有量が余りにも少ないと、充分なスティックスリップ現象の抑制効果を有利に発揮し難くなる問題を生じ、また、それが多過ぎると、防錆塗膜の塗膜性能を劣化せしめるようになる問題を惹起する。
【0024】
なお、ここで、上記したフッ素樹脂粒子や鱗片状粒子が分散・含有せしめられる防錆塗膜を与える常温乾燥型塗料は、従来からよく知られているように、外部からエネルギーを強制的に与えずに、常温の大気中で自然に乾燥することによって、目的とする塗膜が形成されるようにした塗料であって、溶剤の揮発乃至は蒸発、大気中の成分との反応、樹脂成分間の反応等によって塗膜が硬化する、公知の各種のものが適宜に用いられ得、例えばラッカー、塩化ゴム樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、アルキッド樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料等を例示することが出来るが、中でもエマルジョン乃至はディスパージョンタイプの水性塗料、特にアクリル樹脂を主成分とした常温乾燥型の水性塗料を好適に用いることが出来る。
【0025】
そして、本発明にあっては、そのような常温乾燥型塗料に対して、フッ素樹脂粒子または鱗片状粒子が所定割合において配合され、均一に分散、含有せしめられた状態において、前記したサスペンションブッシュ8の少なくとも外筒金具12の外周面に対する塗装が実施されるのであり、以て、そこに形成される防錆塗膜中にも、前記したフッ素樹脂粒子または鱗片状粒子が分散、含有せしめられることとなる。
【0026】
従って、このようにして得られた、外筒金具12の外周面の防錆塗膜中に、フッ素樹脂粒子または鱗片状粒子が分散、含有せしめられてなるサスペンションブッシュ8を、図1に示される如く、サスペンションアーム2の端部に一体的に設けられたアームアイ部4における保持孔6内に圧入せしめるようにしても、そのような保持孔内面7に形成された電着塗装面との間において、スティックスリップ現象が惹起されることが、効果的に抑制乃至は阻止されることとなり、以て発生する異音が有利に低減され得て、例えば、90dB程度或いはそれ以下にまで、効果的に低減され得て、その組付け作業における作業環境の効果的な改善が図られ得るのである。
【0027】
なお、以上においては、本発明に係るゴムブッシュの一つを用いた、サスペンションアームにおけるブッシュ取付け構造の一例に基づいて、本発明の構成を詳述してきたが、本発明の対象とするゴムブッシュは、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、公知の各種のゴムブッシュに適用することが出来る。尤も、本発明は、例示の如きサスペンションアームにおけるゴムブッシュ(8)を始め、メンバーマウント、トーコレクトブッシュ等の自動車における防振ゴムブッシュに、有利に適用せしめられ得るものである。
【0028】
因みに、図2には、本発明が好適に適用されるメンバーマウントの組付け構造の一例が示されており、そこでは、本発明に従うゴムブッシュたるメンバーマウント20が、支持部材たる取付筒30の保持孔32内に圧入せしめられて、固定されることによって、組み付けられるようになっているのである。
【0029】
具体的には、かかるメンバーマウント20は、従来と同様な構造を有するものであって、円筒状の内筒金具22と、外向きフランジ部を有する円筒状の外筒金具24とが、同心的に配置され、それら内、外筒金具22、24が、それらの間において加硫成形されたゴム弾性体26によって、相互に弾性的に連結されて、一体的な構造のブッシュとされている。なお、外筒金具24の外向きフランジ部上には、ゴム弾性体26から一体的に延びるストッパ部としての凸部が設けられており、またゴム弾性体26を軸方向に貫通する肉抜部28は、ゴム弾性体26の特定の径方向におけるバネ特性を柔らかく変化せしめるためのものである。
【0030】
一方、取付筒30は、保持孔32の外周に中空部34を設けてなる構造の、二重筒形状の中空部材にて構成されており、該中空部材の内孔を形成する内面、換言すれば保持孔32の内面36が、前記メンバーマウント20の圧入面とされている。
【0031】
そして、このようなメンバーマウント20がその外筒金具24の外周面において、取付筒30の保持孔32の内面36に圧入せしめられるに際して、スティックスリップ現象が惹起されるのを効果的に防止乃至は抑制すべく、本発明に従って、該取付筒30の、少なくとも保持孔32の内面36が電着塗装面とされている一方、メンバーマウント20の少なくとも外筒金具24の外周面が、フッ素樹脂粒子または鱗片状粒子を分散、含有せしめた常温乾燥型塗料にて形成される防錆塗膜にて覆われた構成とされているのであり、これによって圧入時における前記スティックスリップ現象に基づくところの異音発生の問題が有利に解消乃至は軽減され得ることとなるのである。
【0032】
従って、ゴムブッシュの構造にあっても、公知の各種の構造が適宜に採用され得、例えば、例示の構造においても、ゴム弾性体が内筒金具と外筒金具とを周方向において部分的に連結する構造も採用可能であり、更には、それら内、外筒金具を、例示の如く同心的に配設する構造の他、偏心した状態において配設してなる構造も、ゴムブッシュの用途においては採用され得るものであることが、理解されるべきである。
【0033】
また、本発明に従うゴムブッシュが圧入により組み付けられる支持部材の構造にあっても、中空構造に基づくところの共鳴による異音の増大を有利に回避し得る点よりして、本発明は、図2に例示の如き、少なくとも保持孔32の外周に中空部36が設けられてなる取付筒30の如き中空部材に対して、有利に適用し得るものであるが、また、そのような中空部の設けられていない支持部材に対しても、図1に示される如く、同様に適用され、スティックスリップ現象の低減乃至は阻止、更には異音の低減を図り得ることは、言うまでもないところである。
【0034】
【実施例】
以下に、本発明の幾つかの実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが理解されるべきである。
【0035】
実施例 1
先ず、図1に示されるサスペンションアームのブッシュ組付け構造を実現すべく、サスペンションアーム2について、その端部に一体的に設けたアームアイ部4を含んで、その外表面を、常法に従ってカチオン型電着塗料を用いて、カチオン電着塗装を行ない、かかるアームアイ部4の保持孔6における内面7をも電着塗装面としたサスペンションアームを、準備した。
【0036】
一方、下記表1に示される割合(重量%)において、固形分が40重量%である変性エポキシ樹脂エマルジョンの50重量%と固形分が40重量%とされたアクリル樹脂エマルジョンの50重量%とからなる樹脂ワニス(固形分:40重量%)、リン酸亜鉛からなる防錆顔料、炭酸カルシウムからなる体質顔料、カーボンブラックからなる着色顔料、分散剤と消泡剤と増粘剤とpH調整剤とからなる添加剤、並びにイオン交換水と成膜助剤からなる内部添加剤を配合して、No.1〜No.6の6種の水性常温乾燥型塗料を調製し、更に、それら塗料に、ポリテトラフルオロエチレンからなるフッ素樹脂粒子(粒径:30μm)、中空ガラスビーズ(粒径:70μm)、または高密度PE(ポリエチレン)粒子(粒径:80μm)を、下記表1に示される割合(重量%)において適宜に配合して、均一に分散、含有せしめた。
【0037】
そして、このようにして得られた6種の常温乾燥型塗料を用いて、常法に従って、図1に示される如きサスペンションブッシュ8の露出する金属表面に対して塗装を行ない、少なくとも外筒金具12の外周面に、それぞれの常温乾燥型塗料からなる防錆塗膜を形成した。
【0038】
次いで、このようにして防錆塗装されたサスペンションブッシュ8を用い、先に準備されたサスペンションアーム2のアームアイ部4における保持孔6内に圧入せしめることにより、それらの組付けを行ない、その際における異音発生状況を評価し、その結果を、下記表1に併せ示した。なお、表1における圧入時の異音発生評価結果における○印は、圧入時に異音の発生がないことを示し、また△印は、圧入時に若干異音が発生したことを示し、更に×印は、圧入時における異音の発生が顕著であったことを示している。
【0039】
【表1】
【0040】
かかる表1の結果から明らかなように、本発明に従って、常温乾燥型塗料中にフッ素樹脂粒子を添加、配合せしめてなる塗料No.2〜4を用いて、サスペンションブッシュ8における外筒金具12の外周面上に、そのようなフッ素樹脂粒子が分散、含有せしめられた防錆塗膜を形成した場合にあっては、圧入時の異音発生が全く認められないのに対して、そのようなフッ素樹脂粒子の含有せしめられていない塗料No.1や、フッ素樹脂粒子に代えて、中空ガラスビーズや高密度PE粒子の配合された塗料No.5や塗料No.6を用いて防錆塗装した場合にあっては、サスペンションアーム2のアームアイ部4における保持孔6に対しての圧入に際して、異音が発生せしめられたり、或いはそのような異音発生の抑制効果が充分ではないのである。
【0041】
実施例 2
実施例1と同様にして、サスペンションアーム2のアームアイ部4の保持孔6に対するサスペンションブッシュ8の圧入による組付けを行なうに際して、常温乾燥型塗料として、下記表2に示される6種の水性塗料を用いて、サスペンションブッシュ8の防錆塗装を行なった。
【0042】
すなわち、それら6種の塗料は、基本的には、固形分が40重量%の変性エポキシ樹脂エマルジョンの40重量%と固形分が40重量%のアクリル樹脂エマルジョンの60重量%とからなる樹脂ワニス(固形分:40重量%)、リン酸亜鉛からなる防錆顔料、カーボンブラックからなる着色顔料、分散剤と消泡剤と増粘剤とpH調整剤とからなる添加剤、イオン交換水と成膜助剤とからなる内部添加剤を、下記表2に示される如き割合において配合すると共に、更に、体質顔料として、炭酸カルシウムと硫酸バリウムと本発明に従う鱗片状粒子たるタルク粉末(粒径:4〜6μm)とを組み合わせて、下記表2に示される割合(重量%)において、配合し、均一な塗料組成物として、実施例1と同様にしてサスペンションブッシュ8に適用した。
【0043】
そして、このようにして得られた、少なくとも外筒金具12の外周面に、所定の常温乾燥型塗料からなる防錆塗膜が形成されてなるサスペンションブッシュ8を、サスペンションアーム2の端部に設けたアームアイ部4における保持孔6内に圧入せしめて、それらの組付けを行なったところ、そのような圧入時の異音発生の有無に関する評価は、下記の表2に示される如く、タルク粉末の含有によって、異音発生が効果的に低減せしめられ得ることが明らかとなった。
【0044】
【表2】
【0045】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明に従うゴムブッシュ組付け構造にあっては、そこで用いられるゴムブッシュの外筒金具の少なくとも外周面における常温乾燥型塗料からなる防錆塗膜中に、フッ素樹脂粒子または鱗片状粒子が分散、含有せしめられていることにより、そのようなゴムブッシュを、その外筒金具の外周面において、所定の支持部材の内面が電着塗装面とされた保持孔内に圧入されても、それらの間におけるスティックスリップ現象の発生が効果的に抑制乃至は阻止され得ることとなり、以てそのようなスティックスリップ現象の発生による異音の惹起、更には大きな異音による作業環境の悪化の問題が効果的に解消せしめられ得ることとなったのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の対象とするゴムブッシュの一例に係るサスペンションブッシュの、サスペンションアームにおける組付け形態を示す断面説明図である。
【図2】本発明の対象とするゴムブッシュの一例に係るメンバーマウントの組付け形態を示す断面説明図である。
【符号の説明】
2 サスペンションアーム 4 アームアイ部
6、32 保持孔 7、36 保持孔内面
8 サスペンションブッシュ 10、22 内筒金具
12、24 外筒金具 20 メンバーマウント
14、26 ゴム弾性体 28 肉抜部
30 取付筒 34 中空部
Claims (7)
- ゴム外周部に金属製の外筒金具が一体的に設けられてなるゴムブッシュを用い、該外筒金具の外周面において、所定の金属製支持部材の、少なくとも孔内面が電着塗装面とされた保持孔内に圧入して、固定せしめてなるゴムブッシュ組付け構造にして、
該金属製の外筒金具の少なくとも外周面が常温乾燥型塗料を用いて形成される塗膜にて被覆されていると共に、該塗膜中に、フッ素樹脂粒子または鱗片状粒子が分散、含有せしめられているゴムブッシュを用い、これを、前記金属製支持部材の保持孔内に圧入せしめたことを特徴とするゴムブッシュ組付け構造。 - 前記鱗片状粒子が、タルク粉末である請求項1に記載のゴムブッシュ組付け構造。
- 前記鱗片状粒子が、前記塗膜中に15〜50重量%の割合において含有せしめられている請求項1又は請求項2に記載のゴムブッシュ組付け構造。
- 前記フッ素樹脂粒子が、前記塗膜中に5〜20重量%の割合において含有せしめられている請求項1に記載のゴムブッシュ組付け構造。
- 前記金属製支持部材の少なくとも保持孔内面が、カチオン型電着塗料を用いて形成された電着塗装面にて構成されている請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載のゴムブッシュ組付け構造。
- 前記金属製支持部材が、少なくとも前記保持孔の外周に中空部を設けてなる金属製の中空部材にて構成されている請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載のゴムブッシュ組付け構造。
- 請求項1乃至請求項6の何れか一つに記載のゴムブッシュ組付け構造から構成される防振ゴムブッシュ組付け構造にして、前記ゴムブッシュが、同心的に若しくは偏心して配された内筒金具及び外筒金具と、それら内、外筒金具間に位置して、それら金具を連結するゴム弾性体とから構成されていることを特徴とする防振ゴムブッシュ組付け構造。
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