JP3981785B2 - 画像鮮鋭化プログラムを記録した媒体、画像鮮鋭化装置および画像鮮鋭化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像を鮮鋭化させる画像鮮鋭化プログラムを記録した媒体、画像鮮鋭化装置および画像鮮鋭化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータなどで画像を扱う際には、画像をドットマトリクス状の画素で表現し、各画素を階調値で表している。例えば、コンピュータの画面で水平方向に640ドット、垂直方向に480ドットの画素で写真を表示することが多い。
【0003】
また、各画素ごとに色や明るさを表すデータを持つことになるため、このデータを変化させて画像処理することが行われている。この際、ぼけた感じの画像をシャープに見せる鮮鋭化処理も広く行われており、画像全体に対して一律に鮮鋭化処理をかけている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の画像鮮鋭化装置においては、画像全体に対して一律に鮮鋭化処理をかけているが、一律に鮮鋭化させてしまうと、本来のエッジ部分は良好となっても部分的には鮮鋭化させることによってざらついた感じが表れて好ましくないことがあるという課題があった。
【0005】
一方、本願出願人はエッジ画素を検出してその部分にだけエッジ強調処理を施すことも行っているが、エッジ強調処理をかけたところとそうでないところとで、画像のジャンプが生じるとか、エッジの近隣で画素が不安定になるという課題もあった。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、より自然な感じで鮮鋭化させることが可能な画像鮮鋭化プログラムを記録した媒体、画像鮮鋭化装置および画像鮮鋭化方法の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1にかかる発明は、画像をドットマトリクス状の画素で多階調表現した画像データに基づいて画像の鮮鋭領域を検出する鮮鋭領域検出工程と、非鮮鋭領域の側から鮮鋭領域の側に向かって徐々に鮮鋭度合いを上げていきながらある閾値においてその増加度合いの変化を大きくするように鮮鋭度合いを設定する鮮鋭度合設定工程と、この鮮鋭度合設定工程にて設定された鮮鋭度合いに基づいて上記画像データに対して鮮鋭化する画像鮮鋭化工程と、鮮鋭化された画像データを出力する画像データ出力工程とを具備し、上記鮮鋭領域検出工程では、入力された原画像データとこの原画像データに対して平滑化処理をかけた平滑化画像データとの差分値についてトーンカーブ補正して鮮鋭領域の検出範囲を調整する構成としてある。
【0007】
上記のように構成した請求項1にかかる発明においては、画像をドットマトリクス状の画素で多階調表現した画像データに基づいて画像の鮮鋭領域を検出する。そして、鮮鋭度合設定工程が入力された原画像データとこの原画像データに対して平滑化処理をかけた平滑化画像データとの差分値についてトーンカーブ補正して鮮鋭領域の検出範囲を調整することにより非鮮鋭領域の側から鮮鋭領域の側に向かって徐々に鮮鋭度合いを上げていきながらある閾値においてその増加度合いの変化を大きくするように鮮鋭度合いを設定するので、画像鮮鋭化工程ではこの鮮鋭度合設定工程にて設定された鮮鋭度合いに基づいて上記画像データに対して鮮鋭化し、鮮鋭化された画像データを画像データ出力工程で出力する。
【0008】
すなわち、ただ鮮鋭な領域だけを鮮鋭化させるというのではなく、非鮮鋭領域の側から鮮鋭領域の側に向かって徐々に鮮鋭度合いを上げていきながらその増加度合いの変化が急激に急峻となるようにしている。
画像データは、既に記憶領域に保存されている画像データを取得して対象とするものであっても良いし、カメラのように逐次入力されてくる画像データを取得して対象とするものであるなど、適宜変形可能である。
【0009】
また、画像データ出力工程についても同様であり、出力先が具体的な記録媒体であるほか、メモリなどの一時的な記憶領域であるとか、ネットワークなどの通信回線を介した出力先であっても良い。
さらに、この画像鮮鋭化処理自体が、画像処理における複数の処理のうちの一つであってもよく、その場合には実質的には他の処理が取得した画像データに対して読み書きをすることになる。
【0010】
すなわち、画像データの入出力は以下の鮮鋭化領域検出工程と鮮鋭度設定工程と画像鮮鋭化工程で処理できるようにするものであればいかなる態様のものであっても構わない。また、画像データについても、画像をドットマトリクス状の画素で多階調表現したものであればよく、モノクロの画像でもカラーの画像でも良いし、カラー画像の場合には表色空間における座標系の取り方であるとか、階調範囲などについても特に限定されるものではない。
【0011】
鮮鋭領域検出工程では、画像の鮮鋭領域を検出するが、その具体的手法はさまざまであり、その一例として、請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の画像鮮鋭化方法において、上記鮮鋭領域検出工程では、入力された原画像データと、この画像データに対して平滑化処理をかけた平滑化画像データとの差分が大きい領域を鮮鋭領域として検出する構成としてある。
上記のように構成した請求項2にかかる発明においては、入力された画像データを原画像データとして残しつつ、この画像データに対して平滑化処理をかけることによって平滑化画像データを生成させ、その上で、上記鮮鋭領域検出工程では、原画像データと平滑化画像データとの差分が大きい領域を鮮鋭領域として検出する。
【0012】
平滑化処理は対象となる中心画素の周りの画素との平均化した画素を生成することになるが、これは周辺画素から見た場合の当該中心画素における期待値ともいえる。だとすると、この中心画素での具体的な値との差分を求めるのであれば、その期待値との差が大きいほど当該画素での変化具合が大きいといえ、いわゆるエッジ分あるいは周波数の高い鮮鋭な領域を表すことになる。
ただ、以上のようにして鮮鋭な領域が分かるにしてもその差分値自体が以降の処理において利用しやすいとは限らない。このため、上記鮮鋭領域検出工程では、上記原画像データと上記平滑化画像データとの差分値についてトーンカーブ補正して鮮鋭領域の検出範囲を調整する構成としてもよい。
【0013】
このように構成すると、上記原画像データと上記平滑化画像データとの差分値についてトーンカーブ補正する。そのままの差分値を用いた場合は、あるしきい値を境に大きく意味内容が異なる場合が考えられる。こうした場合でもトーンカーブを使用して差分値の意味に軽重を付けることにより、鮮鋭領域の検出範囲を調整できる。
原画像データの値によっては同じ鮮鋭さを備えていても判断が変化してくることがある。例えば、全体的に暗い場合と全体的に明るい場合とでは、明暗の変化度合いが比例していると考えると、暗い方について非鮮鋭な領域が大きいと判断するはずである。しかし、このような結果となるのは妥当ではなく、その対策の好適な一例として、請求項4にかかる発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の画像鮮鋭化方法において、上記非鮮鋭領域検出工程では、上記原画像データに対して予めトーンカーブ補正しておいて上記非鮮鋭領域の検出に利用する構成としてある。
【0014】
上記のように構成した請求項4にかかる発明においては、原画像データに対して予めトーンカーブ補正しておくので、上記鮮鋭領域を検出するにあたって妥当な領域を得られるようになる。また、かかる明暗に対する調整目的に限らず、意識的に調整を加えたいということも当然に可能である。
一方、鮮鋭度合設定工程では、非鮮鋭領域の側から鮮鋭領域の側に向かって徐々に鮮鋭度合いを上げていきながらその増加度合いの変化が急激に急峻となるようにしているが、その具体的態様は種々のパターンが考えられる。
【0015】
その一例として、請求項5にかかる発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の画像鮮鋭化方法において、上記鮮鋭度合設定工程では、画像の鮮鋭領域と非鮮鋭領域との境界において外側から内側にかけて徐々に鮮鋭度合い高めていく構成としてある。
上記のように構成した請求項5にかかる発明においては、画像の鮮鋭領域と非鮮鋭領域との境界において外側から内側にかけて徐々に鮮鋭度合い高めていく。
【0016】
また、別の一例として、請求項6にかかる発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の画像鮮鋭化方法において、上記鮮鋭度合設定工程では、画像の鮮鋭領域の中心をピークとして非鮮鋭領域の側から徐々に鮮鋭度合い高めていく構成としてある。
上記のように構成した請求項6にかかる発明においては、画像の鮮鋭領域の中心をピークとして非鮮鋭領域の側から徐々に鮮鋭度合い高めていく。
【0017】
請求項6にかかる発明の場合、鮮鋭度合いはある鮮鋭領域において一つのピークを持つ山形となることを想定としており、鮮鋭領域が比較的幅狭なときに有効である。これに対して、請求項5にかかる発明の場合は、鮮鋭領域が幅のある場合に非鮮鋭領域と鮮鋭領域の境目で鮮鋭度合いが所望の変化をなすことになる。 さらに、請求項7にかかる発明は、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の画像鮮鋭化方法において、上記鮮鋭度合設定工程は、上記鮮鋭領域を平滑化してぼかしをかける平滑化工程と、平滑化させた領域を幅狭にして急峻な変化領域を設定する縮小化工程と、平滑化させた領域と急峻化させた領域とを合成して増加度合いの変化が急激に急峻となるようにする合成工程とを有する構成としてある。
【0018】
上記のように構成した請求項7にかかる発明においては、平滑化工程で上記鮮鋭領域を平滑化してぼかしをかけ、縮小化工程で平滑化させた領域を幅狭にして急峻な変化領域を設定する。この後、合成工程では、平滑化させた領域と急峻化させた領域とを合成し、増加度合いの変化が急激に急峻となるようにする。
例えば、鮮鋭度合いがある山形をなしていると、平滑化すると山はなだらかになり、縮小化すると山は急峻となる。従って、両者を合成すると裾野においてなだらかで中腹から急峻な山形となり、所望の変化度合いといえる。
【0019】
また、合成手法といっても一義的ではなく、一例として、請求項8にかかる発明は、請求項7に記載の画像鮮鋭化方法において、上記合成工程では、平滑化させた領域と急峻化させた領域とを足し合わせて合成する構成としてある。
上記のように構成した請求項8にかかる発明においては、単純に足し合わせることになる。従って、相対的な値は大きくなるものの簡易に合成される。
別の一例として、請求項9にかかる発明は、請求項7に記載の画像鮮鋭化方法において、上記合成工程では、平滑化させた領域と急峻化させた領域とのうち鮮鋭度合いが大きい方の値を選択して合成する構成としてある。
【0020】
上記のように構成した請求項9にかかる発明においては、上述したような二つの山があるとして、高い方を選ぶのであるから、裾野においてはなだらかな山が選ばれ、中腹から急峻な山が選ばれることになる。
画像鮮鋭化工程は画像データに対して鮮鋭化するものであり、鮮鋭化の手法自体は各種のものを採用可能である。その一例として、請求項10にかかる発明は、請求項1〜請求項9のいずれかに記載の画像鮮鋭化方法において、上記画像鮮鋭化工程では、平滑化した画像データと元画像データとの差分に上記設定された鮮鋭度合いを乗算しつつ、同元画像データに加算して鮮鋭化処理する構成としてある。
【0021】
画像データを平滑化するのは、いわばローパスフィルタをかけることと同義であるから、低周波成分が得られることになり、これと元画像データとの差分を取れば高周波成分を得たことになる。従って、上記のように構成した請求項10にかかる発明において、かかる高周波成分を元画像データに加算するので高周波成分を加えたことになって鮮鋭化し、さらにその加算程度を鮮鋭度合いで調整すると、鮮鋭化処理の強弱を調整したことになる。
【0022】
このように、ただ鮮鋭な領域だけに鮮鋭化させるというのではなく、非鮮鋭領域の側から鮮鋭領域の側に向かって徐々に鮮鋭度合いを上げていきながらその増加度合いの変化が急激に急峻となるようにする手法は実体のある装置において実現され、その意味で本発明を実体のある装置としても適用可能であることは容易に理解できる。このため、請求項11にかかる発明は、画像をドットマトリクス状の画素で多階調表現した画像データに基づいて画像の鮮鋭領域を検出する鮮鋭領域検出手段と、非鮮鋭領域の側から鮮鋭領域の側に向かって徐々に鮮鋭度合いを上げていきながらある閾値においてその増加度合いの変化を大きくするように鮮鋭度合いを設定する鮮鋭度合設定手段と、この鮮鋭度合設定手段にて設定された鮮鋭度合いに基づいて上記画像データに対して鮮鋭化する画像鮮鋭化手段と、鮮鋭化された画像データを出力する画像データ出力手段とを具備し、上記鮮鋭領域検出手段では、入力された原画像データとこの原画像データに対して平滑化処理をかけた平滑化画像データとの差分値についてトーンカーブ補正して鮮鋭領域の検出範囲を調整する構成としてある。
【0023】
すなわち、実体のある装置としても有効であることに相違はない。このような画像鮮鋭化装置は単独で実施される場合もあるし、ある機器に組み込まれた状態で他の方法とともに実施されることもあるなど、発明の思想としてはこれに限らず、各種の態様を含むものである。従って、ソフトウェアであったりハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。
発明の思想の具現化例として画像鮮鋭化方法を実施するソフトウェアとなる場合には、かかるソフトウェアを記録した記録媒体上においても当然に存在し、利用されるといわざるをえない。
【0024】
その一例として、請求項21にかかる発明は、画像をドットマトリクス状の画素で多階調表現した画像データに基づいてコンピュータにて画像を鮮鋭化させる画像鮮鋭化処理プログラムを記録した媒体であって、入力された原画像データとこの画像データに対して平滑化処理をかけた平滑化画像データとの差分値についてトーンカーブ補正して鮮鋭領域の検出範囲を調整しつつ該鮮鋭領域を検出する鮮鋭領域検出ステップと、非鮮鋭領域の側から鮮鋭領域の側に向かって徐々に鮮鋭度合いを上げていきながらある閾値においてその増加度合いの変化を大きくするように鮮鋭度合いを設定する鮮鋭度合設定ステップと、この鮮鋭度合設定ステップにて設定された鮮鋭度合いに基づいて上記画像データに対して鮮鋭化する画像鮮鋭化ステップと、鮮鋭化された画像データを出力する画像データ出力ステップとをコンピュータに実行させる構成としてある。
【0025】
むろん、その記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。また、一次複製品、二次複製品などの複製段階については全く問う余地無く同等である。その他、供給方法として通信回線を利用して行なう場合でも本発明が利用されていることにはかわりない。
さらに、一部がソフトウェアであって、一部がハードウェアで実現されている場合においても発明の思想において全く異なるものではなく、一部を記録媒体上に記憶しておいて必要に応じて適宜読み込まれるような形態のものとしてあってもよい。むろん、このプログラム自体に発明の思想が反映されていることはいうまでもない。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、非鮮鋭な領域から鮮鋭な領域に向かっていわば指数関数的に鮮鋭度が上がるため、単に鮮鋭化してしまったときのように非鮮鋭な領域がざらつくことなく、さらに鮮鋭な領域も周りから浮いてしまうようなことがなくなり、良好に鮮鋭化した画像を得ることが可能な画像鮮鋭化方法を提供することができる。
また、請求項2にかかる発明によれば、比較的容易に鮮鋭領域を検出することができる。
【0027】
さらに、請求項3にかかる発明によれば、鮮鋭領域の検出範囲の調整が容易になる。
さらに、請求項4にかかる発明によれば、鮮鋭領域の検出を良好に行うための調整手法を提供することができる。
さらに、請求項5にかかる発明によれば、鮮鋭領域が幅広の場合に好適な手法を提供できる。
さらに、請求項6にかかる発明によれば、鮮鋭領域が幅狭の場合に好適な手法を提供できる。
さらに、請求項7にかかる発明によれば、比較的簡易に所望の変化度合いを設定できる。
【0028】
さらに、請求項8にかかる発明によれば、足し合わせるだけなので簡易な演算で実現できる。
さらに、請求項9にかかる発明によれば、一方の値をそのまま使うことになるため、汎用的な利用に耐える。
さらに、請求項10にかかる発明によれば、一般的な鮮鋭化手法で実現できる。
さらに、請求項11〜請求項20にかかる発明によれば、同様の効果を奏する画像鮮鋭化装置を提供でき、請求項21にかかる発明によれば、画像鮮鋭化プログラムを記録した媒体を提供できる。
【0029】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一実施形態にかかる画像鮮鋭化装置をクレーム対応図により示しており、図2は同画像鮮鋭化装置を実現するハードウェアの一例としてのコンピュータシステム10をブロック図により示している。まず、このコンピュータシステム10について説明する。
本コンピュータシステム10は、画像データを直接的に入力する画像入力デバイスとして、スキャナ11aとデジタルスチルカメラ11bとビデオカメラ11cとを備えており、コンピュータ本体12に接続されている。それぞれの入力デバイスは画像をドットマトリクス状の画素で表現した画像データを生成してコンピュータ本体12に出力可能となっており、ここで同画像データはRGBの三原色においてそれぞれ256階調表示することにより、約1670万色を表現可能となっている。
【0030】
コンピュータ本体12には、外部補助記憶装置としてのフロッピーディスクドライブ13aとハードディスク13bとCD−ROMドライブ13cとが接続されており、ハードディスク13bにはシステム関連の主要プログラムが記録されており、フロッピーディスクやCD−ROMなどから適宜必要なプログラムなどを読み込み可能となっている。
また、コンピュータ本体12を外部のネットワークなどに接続するための通信デバイスとしてモデム14aが接続されており、外部のネットワークに同公衆通信回線を介して接続し、ソフトウェアやデータをダウンロードして導入可能となっている。この例ではモデム14aにて電話回線を介して外部にアクセスするようにしているが、LANアダプタを介してネットワークに対してアクセスする構成とすることも可能である。この他、コンピュータ本体12の操作用にキーボード15aやポインティングデバイスとしてのマウス15bも接続されている。
【0031】
さらに、画像出力デバイスとして、ディスプレイ17aとカラープリンタ17bとを備えている。ディスプレイ17aについては水平方向に800画素と垂直方向に600画素の表示エリアを備えており、各画素毎に上述した1670万色の表示が可能となっている。むろん、この解像度は一例に過ぎず、640×480画素であったり、1024×768画素であるなど、適宜、変更可能である。
【0032】
また、カラープリンタ17bはインクジェットプリンタであり、CMYKの四色の色インクを用いて記録媒体たる印刷用紙上にドットを付して画像を印刷可能となっている。画像密度は360×360DPIや720×720DPIといった高密度印刷が可能となっているが、階調表限については色インクを付すか否かといった2階調表現となっている。
一方、このような画像入力デバイスを使用して画像を入力しつつ、画像出力デバイスに表示あるいは出力するため、コンピュータ本体12内では所定のプログラムが実行されることになる。そのうち、基本プログラムとして稼働しているのはオペレーティングシステム(OS)12aであり、このオペレーティングシステム12aにはディスプレイ17aでの表示を行わせるディスプレイドライバ(DSP DRV)12bとカラープリンタ17bに印刷出力を行わせるプリンタドライバ(PRT DRV)12cが組み込まれている。これらのドライバ12b,12cの類はディスプレイ17aやカラープリンタ17bの機種に依存しており、それぞれの機種に応じてオペレーティングシステム12aに対して追加変更可能である。また、機種に依存して標準処理以上の付加機能を実現することもできるようになっている。すなわち、オペレーティングシステム12aという標準システム上で共通化した処理体系を維持しつつ、許容される範囲内での各種の追加的処理を実現できる。
【0033】
この基本プログラムとしてのオペレーティングシステム12a上でアプリケーション12dが実行される。アプリケーション12dの処理内容は様々であり、操作デバイスとしてのキーボード15aやマウス15bの操作を監視し、操作された場合には各種の外部機器を適切に制御して対応する演算処理などを実行し、さらには、処理結果をディスプレイ17aに表示したり、カラープリンタ17bに出力したりすることになる。
【0034】
ところで、デジタルスチルカメラ11bで撮影した画像は画像データとなり、アプリケーション12dにて各種の画像処理を実行後、ディスプレイ17aに表示したり、カラープリンタ17bに出力できる。このような画像処理の一例として強調処理(鮮鋭化処理のことを以後、このように呼ぶことにする)があり、本実施形態においては、アプリケーション12dが最適な結果を得られる強調処理を実行するものとして、以下に説明していく。
【0035】
以上において、画像入力デバイスなどから画像データを取得する処理が図1に示す画像データ取得手段A1を構成することになり、これに関連するハードウェア及びソフトウェアが実際には該当する。また、鮮鋭領域検出手段A2はこのように取得される画像データのうちで鮮鋭度が高い領域を検出する処理に該当し、アプリケーション12dが具体的に実施する。また、アプリケーション12dはこの検出結果を利用して画像の部位ごとに最適な鮮鋭度合いを設定するとともに、この鮮鋭度合いを利用して上記画像データに鮮鋭化処理をも実施するため、鮮鋭度合い設定手段A3と画像鮮鋭化手段A4も構成する。
【0036】
本実施形態においては、アプリケーション12dが画像処理を実施しているが、ディスプレイドライバ12bやプリンタドライバ12cが画像出力する際に自動的に鮮鋭化処理を実現するような構成とすることも当然に可能である。
むろん、かかる処理を実行するアプリケーション12dやディスプレイドライバ12bやプリンタドライバ12cは、ハードディスク13bに記憶されており、適宜、コンピュータ本体12にて読み込まれて稼働する。また、導入時にはCD−ROMであるとかフロッピーディスクなどの媒体に記録されてインストールされる。従って、これらの媒体は画像鮮鋭化プログラムを記録した媒体を構成する。
【0037】
アプリケーション12dは画像処理した画像データをファイル形式で以降の処理プロセスに委ねるが、このように画像データをファイル形式で出力する過程が画像データ出力手段A5を構成する。なお、上述したようにディスプレイドライバ12bやプリンタドライバ12cが画像出力する際に鮮鋭化処理を実現する場合にはその出力段が画像データ出力手段A5を構成するといえる。
本実施形態においては、画像鮮鋭化装置をコンピュータシステム10として実現しているが、必ずしもかかるコンピュータシステムを必要とするわけではなく、同様の画像データに対して補間処理が必要なシステムであればよい。例えば、図3に示すようにデジタルスチルカメラ11b1内に強調処理する画像鮮鋭化装置を組み込み、強調処理した画像データを用いてディスプレイ17a1に表示させたりカラープリンタ17b1に印字させるようなシステムであっても良い。また、図4に示すように、コンピュータシステムを介することなく画像データを入力して印刷するカラープリンタ17b2においては、スキャナ11a2やデジタルスチルカメラ11b2あるいはモデム14a2等を介して入力される画像データについて自動的に強調処理するように構成することも可能である。このようなカラープリンタ17b2は、近年、ビデオプリンタとして家庭用テレビやビデオに接続して一場面をハードコピー化するのに使用されることも多く、着脱可能な記録メディアから画像データを取得しつつ解像度変換において最適な強調処理を実行すればよい。
【0038】
この他、図5に示すようなカラーファクシミリ装置18aや図6に示すようなカラーコピー装置18bといった画像データを扱う各種の装置においても当然に適用可能である。
上述した強調処理は、具体的には上記コンピュータ本体12内にて図7〜図9に示すフローチャートに対応した画像処理プログラムで行っている。また、図10は画像処理プログラム中での処理対象の変化を概略的に示している。なお、図10は画像処理プログラムの中でのワークエリアを示しており、RGBの3要素色のデータからなる各画像データはレイヤと呼ぶ個別のプレーンを想定したワークエリアを使用して処理対象となり、さらに各画像処理を制御するために演算結果などを格納するためにチャンネルというワークエリアを使用している。
【0039】
図7〜図9に示すフローチャートにおいて、ステップ100では画像データを入力する。この画像データはオペレーティングシステム12aを介してスキャナ11a2やデジタルスチルカメラ11b2あるいはモデム14a2等から取り込まれ、取り込んだ入力画像データは上述したレイヤにおけるオリジナル画像レイヤに格納される。
次に、オリジナル画像を残して処理を進めるためにオリジナル画像レイヤの画像データを背景レイヤと複製レイヤにコピーする(ステップ102、ステップ104)。本実施形態においては、この背景レイヤの画像データに対して最終的な強調処理を加えることとし、複製レイヤについてマスクを生成していくための画像処理を実施する。
【0040】
画像処理の最初に行なうのはトーンカーブ補正であり(ステップ106)、図12に示すトーンカーブを利用して複製レイヤに格納されている画像データのコントラストを上げている。ここでコントラストを上げる処理を行う意義については、後述することにする。
コントラストを上げた画像データについて、ステップ108では硬調複製レイヤにコピーしてオリジナルを残しておき、ステップ110では硬調複製レイヤの画像データに平滑化処理を実施する。平滑化処理は注目画素を中心とする所定領域について画像データの平均化を行なうものであり、図13に示すフィルタマスクを利用してフィルタ処理する。このフィルタ処理では、注目画素に隣接する8画素と注目画素の画像データを全て加え、画素数で除算するため、平均値を求めることに他ならない。図示するフィルタマスクは3×3画素の9画素であるが5×5画素というようなサイズの異なるフィルタマスクを使用しても良いし、周辺画素の重み付けを減らすような平滑化を行っても良い。
【0041】
平滑化した画像データは硬調複製レイヤに格納され、ステップ112では、硬調複製レイヤの画像データと複製レイヤの画像データとの差の絶対値を演算し、演算結果をアルファチャンネル1に格納する。
図14は、この一連の処理の意味するところを説明するための参考図であり、本来、二次元的な画像データを分かりやすく一次元的に並べ直したものである。複製レイヤの画像データが同図(a)に示すとおりであるとすると、平滑化することによって同図(b)に示すように段差部分が滑らかになる。次いで、両者の差分を演算すると同図(c)に示すように平滑化して変化した画素において差分値が生じ、かつ、その絶対値(図中一点鎖線で表れたもの)が大きくなるのは複製レイヤの画像データが大きく変化しているところである。この絶対値が大きい部分こそ画像が大きく変化しているところであり、この一連の処理は画像の鮮鋭領域を検出することに他ならない。また、ステップ106で複製レイヤの画像データのコントラストを上げたのは、上述した差分値を大きくすることに貢献し、鮮鋭領域の検出を行いやすくしている。この点、最初に鮮鋭領域を検出できれば以降においてその調整は任意に行えるが、鮮鋭領域を検出する段階で対象外となってしまうと調整の余地が小さくなる。従って、このように広めに鮮鋭領域を検出するようにしている。
【0042】
また、図15は具体的な画像イメージで上述した処理の意味するところをを説明している。同図(a)がオリジナルの画像であるとすると、平滑化処理することによって同図(b)に示すように輪郭部分の画像データに変化が表れ、それ以外の部分は元の色のままとなる。従って、オリジナルの画像との差分値を求めると、同図(c)に示すように元の画像の輪郭を中心とする領域だけが残るのである。
【0043】
アルファチャンネル1は汎用的なチャンネルであるので、差分値の絶対値を保存するためにアンシャープマスクオリジナルチャンネルとアンシャープマスク硬調化チャンネルとに格納しておき(ステップ114とステップ116)、以下、具体的な演算結果を良好とするためのアンシャープマスク硬調化チャンネルに対して調整を行っていく。
まず、ステップ118では図16に示すトーンカーブを利用してトーンカーブ補正を行う。図14(c)に示すようにして画像の鮮鋭化に対応する差分値を得られても、このデータそのものが演算に利用しやすいとは限らない。特に、かかる差分値の絶対値自身は小さな値にしかならないので、より大きな値にする必要もある。図15に示すものでは、小さな絶対値を比例的に大きくさせることを目的としているが、あるしきい値を設定してそれ以下のものは余り変化させないような急峻なS字カーブを採用することも可能である。
【0044】
次に、ステップ120ではアンシャープマスク硬調化チャンネルの縮小化処理を実施する。縮小化処理は実際のイメージとして線の幅を狭めるような処理であり、図17(a)に示す実線から破線へというように台形の山がシャープな山形になる。そして、このようにして縮小化した時点のデータを、ステップ140にて、一旦、アンシャープマスク硬調化2チャンネルにコピーして保存しておく。
【0045】
一方、縮小化したらこれに平滑化処理をかける。図17(b)には実線にて平滑化前の状態を示し、破線にて平滑化後の状態を示している。平滑化することにより、シャープな山形であったのが、裾野が広がり頂点が低くなる。一方、平滑化の前の状態はアンシャープマスク硬調化2チャンネルに残っており、次のステップ142ではこれら二つのチャンネルを合成する。合成した状態を同図(c)に示しており、裾野部分でなだらかであり、中腹から急峻に立ち上がる傾斜面が形成されたことになる。
【0046】
同図(b)から同図(c)へ示した合成は、二つのチャンネルのうちいずれか大きな値の方を選択する合成であり、二つの山を重ね合わせたときには上の線を選んだことになる。ただ、合成自体はかかる手法に限られるものではなく、両者を足すようにしてもよい。同図(d)はこのような加算結果を示している。加算すると値が大きくなるので最大値で正規化するようにしても良い。
また、縮小化は必ずしも図17に示したような一つの頂部を持つシャープな山形を形成しなければならないわけではなく、幅狭にするという意味であればよい。従って、図18(a)に示すように元もとの台形形状が幅広の場合に外縁部を内側に寄せる処理を行うものであっても良い。このような場合でも、平滑化処理で同図(b)に示すような処理を経て合成処理を行うと、同図(c)に示すように外縁部においては裾野がなだらかに広がり、中腹から急峻に立ち上がることになる。
【0047】
なお、このような図17に示すような鮮鋭度合いの変化が画像の鮮鋭領域の中心をピークとして非鮮鋭領域の側から徐々に鮮鋭度合い高めていく対応に相当し、図18に示すような鮮鋭度合いの変化が画像の鮮鋭領域と非鮮鋭領域との境界において外側から内側にかけて徐々に鮮鋭度合い高めていく対応に相当する。
傾斜を活かしながら縮小する手法の一例を図19を参照しながら説明する。画素を縦横にスキャンするものとすると、前の値(Dp−1)が今回の値Dpよりも小さければ前の値に置き換えるという処理を行う。これを画面上で左から右に注目画素を移動させていって処理すれば右上がりの傾斜位置で1ピクセル分だけ右に縮小化することになる。同様の処理を左から右に、上から下へ、下から上へ処理すれば、左右上下方向に1ピクセル分ずつ縮小化できる。そして、図20はこのようにして1画素(1ピクセル)分だけ領域を狭める状況を示している。
【0048】
なお、上述したように、ステップ118ではしきい値の設定次第で脱落してしまいかねない画素を拾い上げている関係上、ステップ120で縮小化を行なうことにより実質的には適度な範囲に調整し直したことになる。図15に示す具体的な画像のイメージの変化では、同図(c)から同図(d)への変化が縮小化に対応しており、同(d)から同図(e)への変化が平滑化に対応しており、同図(e)から同図(f)への変化が合成に対応している。
【0049】
以上によって、鮮鋭領域を中心とする鮮鋭化処理での鮮鋭度合いの設定が終了する。終了したマスクは図15(f)に示すようになり、周縁部においては低めの鮮鋭度合いであるが、内側において急峻なカーブを経て増加している。なお、図には示していないが、この時点でもう一度だけ平滑化処理を施すとマスク画像での境界部分が滑らかになり、次に実施する強調処理でより画像にジャンプが生じないようにすることを期待できる。
【0050】
そして、この完成したマスクを完成アンシャープマスク1チャンネルにコピーし(ステップ126)、設定された鮮鋭度合いで強調処理を行う(ステップ132)。
強調処理では図21〜図22に示すアンシャープマスクを使用する。ここで、ステップ132で実施する強調処理について輝度を例として説明する。
強調前の各画素の輝度Yに対して強調後の輝度Y’は、
Y’=Y+Eenhance ・(Y−Yunsharp )
として演算される。このYunsharp は各画素の画像データに対してアンシャープマスク処理を施したものであり、強調係数Eenhance は上記完成アンシャープマスク1チャンネルを「255」で除算して正規化した値である。
【0051】
ここでアンシャープマスク処理について説明する。図21〜図23は三つの大きさの異なるアンシャープマスク41〜43を示している。このアンシャープマスク41〜43は、中央の「100」の値をマトリクス状の画像データにおける処理対象画素Y(x,y)の重み付けとし、その周縁画素に対して同マスクの升目における数値に対応した重み付けをして積算するのに利用される。今、図22に示すアンシャープマスク42を利用するのであれば、
【0052】
【数1】
なる演算式に基づいて積算する。同式において、「632」とは重み付け係数の合計値であり、むろんサイズの異なる三つのアンシャープマスク41〜43においては、それぞれ「396」、「632」「2516」というような値となる。また、Mijはアンシャープマスクの升目に記載されている重み係数であり、Y(x,y)は各画素の画像データである。なお、ijについては異なる縦横サイズの三つのアンシャープマスク41〜43に対して横列と縦列の座標値で示している。
【0053】
このような演算の意味するところは次のようになる。Yunsharp (x,y)は注目画素に対して周縁画素の重み付けを低くして加算したものであるから、いわゆる「なまった(アンシャープ)」画像データとしていることになる。このようにしてなまらせたものはいわゆるローパスフィルタをかけたものと同様の意味あいを持つ。従って、「Y(x,y)−Yunsharp (x,y)」とは本来の全成分から低周波成分を引いたことになってハイパスフィルタをかけたものと同様の意味あいを持つ。そして、ハイパスフィルタを通過したこの高周波成分に対して強調係数Eenhance を乗算して「Y(x,y)」に加えれば同強調係数Eenhance に比例して高周波成分を増したことになり、エッジが強調される結果となる。
【0054】
また、エッジの強調度合いは、アンシャープマスクの大きさによっても変化する。縦横の升目数の異なる三つのアンシャープマスク41〜43であれば、大きなマスクほど注目画素の近隣の画素に対する重み付けが大きく、遠くの画素にいたるまでの距離の中で徐々に重み付けが減っていっている。これは言い換えればよりローパスフィルタとしての性格が強くなり、高周波成分を生成しやすくなるからである。
【0055】
従って、強調係数Eenhance による強調度合いの調整に加えて、大きなサイズのアンシャープマスク43を利用すれば強い強調処理を行うことになり、小さなサイズのアンシャープマスク41を利用すれば弱い強調処理を行うことになる。むろん、中間的な強さの強調処理を行うのであれば中間サイズのアンシャープマスク42を利用すればよくなる。例えば、鮮鋭度合いが強調係数Eenhance を表すものとして同じサイズのアンシャープマスク41〜43を使用しても良いし、強調係数Eenhance は一定としておいて鮮鋭度合いに応じてサイズの異なるアンシャープマスク41〜43を使い分けるようにしても良い。
【0056】
なお、アンシャープマスク41〜43のフィルタマスクは一例に過ぎず、適宜変更することも可能である。また、図22を参照すると分かるように、最外周のパラメータは「0」または「1」であり、画素の画像データに乗算しても「632」で除算した場合の影響度を考えると殆ど無意味である。このため、最外周のパラメータを無視して5×5画素としたアンシャープマスク44のフィルタマスクを使用すれば、除算の演算回数「49(=7×7)」回から「25(=5×5)」回へと半減し、演算処理時間を短縮化させることもできる。
【0057】
以上のような処理を経ることにより、デジタルスチルカメラ11b2あるいはモデム14a2等を介して取り込んだディジタルの画像データについては、そのエッジ部分で周縁から徐々に鮮鋭度を高めつつエッジに対して鮮鋭度を高めるため、エッジだけが浮き上がってしまう不具合を防止することができる。
このようにして得られた画像データ自体は背景レイヤに格納されており、この画像データをディスプレイドライバ12bやプリンタドライバ12cを介してディスプレイ17aやカラープリンタ17bに出力すると、綺麗な画像となっている。
【0058】
なお、一般的にはこの強調処理で概ね自然な感じで画像の鮮鋭度が上がるが、人の肌に表れる境界部分を鮮鋭化してざらついた感じに見えることもあり得る。人自体が写真のオブジェクトであるため、特にその部分を注目してしまうためである。同様なことは、写真の中で広い面積を占める空の部分に表れる境界部分についても生じる。このような場合は、各画素が肌色や空色であるか否かを判断し、肌色や空色であったら強調処理を弱めるようにすればよい。ここで、各画素が肌色や空色であるか否かを判断する手法について説明する。
【0059】
各画素の画像データが(R,G,B)で表されるとすると、色度は、
r=R/(R+G+B)
b=B/(R+G+B)
として表される。
図24は人間の肌を表す画像データのサンプリング結果を示している。すなわち、左側の三つのデータは肌を構成する画素の(R,G,B)の値であり、その右方に(R+G+B)の合計(sum_rgb)を示し、その右方に上記計算に基づく色度r,bと輝度Yとを示している。また、図25は各画素についてrb空間にプロットした場合のグラフを示している。同図に示すように、RGBデータとしては統一性を見出しにくいようでも、色度としてグラフにプロットしてみると規則性があることが見出される。すなわち、人の肌であれば暗く写っているときも明るく写っているときもあり得るが、それにもかかわらず、図11に示すように直線状に分布しているのである。同図に示す直線状の分布は、
0.33<r<0.51
|0.74r+b−0.57|<0.1
なる関係式が成立しているといえるから、各画素についてこの条件があてはめられれば肌色領域に属するものといえる。
【0060】
また、図26は同様にして青空を表す画像データのサンプリング結果を示しているとともに図27は各画素についてrb空間にプロットした場合のグラフを示しており、この場合は肌色の場合よりも変動幅が大きいことを考慮すると、
0.17<r<0.30
|1.11r+b−0.70|<0.2
なる関係式が成立しているといえる。
図28は、ステップ132の内部でこのような処理を実行するフローチャートを示しており、ステップ132aにて色度を計算し、ステップ132bとステップ132cとで肌色や空色であるかを判断し、いずれにも引っかからなければステップ132dで本来の強調処理を実行する。しかし、ステップ132bとステップ132cのいずれかで肌色や空色であると判断されると、ステップ132eで弱めに強調処理を実行する。具体的には、小さいサイズのアンシャープマスク41を使用したりすればよい。
【0061】
ところで、以上の処理はコンピュータシステム10を使用しつつ主にソフトウェア的な処理で実現している。しかしながら、本発明は必ずしもソフトウェア的な構成に限るものではなく、ハードウェアによるワイヤロジックで実現することもできる。
図29は具体的なブロック回路を示しており、入力画像データは平滑化回路51に入力されてぼかしの処理を経たものと経ていないものとを差分絶対値回路52に入力し、両者の差分値の絶対値を演算し、トーンカーブ補正回路53で図16に示すようなトーンカーブ補正を実施する。次いで、縮小化回路54では外縁部を狭める処理を実行し、その結果を平滑化回路55で平滑化させる一方、平滑化の前後のものを合成回路56で合成する。この後、生成されたマスクデータを使用して強調化回路57で強調化を施す。
【0062】
各回路ではロジック回路でディジタル的に処理すればよいが、一部ではアナログ化して処理しても良い。
このように、デジタルスチルカメラ11b2等を介して取り込んだディジタルの画像データは、平滑化してぼかしたものと元のものとの差を演算し(ステップ112)て鮮鋭化領域を検出した後、トーンカーブ補正と縮小化を行い、これを平滑化したものとそうでないものとを合成することによって裾野が広がりつつも中腹から急峻に立ち上がる傾斜の鮮鋭度合いを設定し(ステップ118〜142)、完成したマスクデータを完成アンシャープマスク1チャンネルに格納するとともに、同マスクデータを使用して元の画像データに強調処理を施すようにした(ステップ132)ため、エッジだけが浮き上がってしまうような不具合を避けつつ鮮鋭化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態にかかる画像鮮鋭化装置のクレーム対応図である。
【図2】 本発明の一実施形態にかかる画像鮮鋭化装置が適用されるコンピュータシステムのブロック図である。
【図3】 本発明の画像鮮鋭化装置の他の適用例を示す概略ブロック図である。
【図4】 本発明の画像鮮鋭化装置の他の適用例を示す概略ブロック図である。
【図5】 本発明の画像鮮鋭化装置の他の適用例を示す概略ブロック図である。
【図6】 本発明の画像鮮鋭化装置の他の適用例を示す概略ブロック図である。
【図7】 本発明の一実施形態にかかる画像鮮鋭化装置のフローチャートの一部である。
【図8】 同フローチャートの一部である。
【図9】 同フローチャートの一部である。
【図10】 処理の全体を示す概略ブロック図である。
【図11】 データの格納状態を示す概念図である。
【図12】 トーンカーブの一例を示す図である。
【図13】 平滑化処理に使用するフィルタマスクを示す図である。
【図14】 画像データの変化過程を示す概念図である。
【図15】 画像の変化過程を示す概念図である。
【図16】 トーンカーブの一例を示す図である。
【図17】 鮮鋭度合いの変化過程を示す図である。
【図18】 幅広の領域に対する鮮鋭度合いの変化過程を示す図である。
【図19】 縮小化の手法を示す説明図である。
【図20】 縮小化処理の実例を示す図である。
【図21】 小サイズのアンシャープマスクを示す図である。
【図22】 中サイズのアンシャープマスクを示す図である。
【図23】 大サイズのアンシャープマスクを示す図である。
【図24】 肌色の画素の画像データと色度と輝度を示す図である。
【図25】 肌色の画素を色度のグラフで示す図である。
【図26】 空色の画素の画像データと色度と輝度を示す図である。
【図27】 空色の画素を色度のグラフで示す図である。
【図28】 強調処理の変形例を示すフローチャートの一部である。
【図29】 ハードウェアロジックで実現した画像鮮鋭化装置のブロック図である。
【符号の説明】
10…コンピュータシステム
11a…スキャナ
11a2…スキャナ
11b…デジタルスチルカメラ
11b1…デジタルスチルカメラ
11b2…デジタルスチルカメラ
11c…ビデオカメラ
12…コンピュータ本体
12a…オペレーティングシステム
12b…ディスプレイドライバ
12b…ドライバ
12c…プリンタドライバ
12d…アプリケーション
13a…フロッピーディスクドライブ
13b…ハードディスク
13c…CD−ROMドライブ
14a…モデム
14a2…モデム
15a…キーボード
15b…マウス
17a…ディスプレイ
17a1…ディスプレイ
17b…カラープリンタ
17b1…カラープリンタ
17b2…カラープリンタ
18a…カラーファクシミリ装置
18b…カラーコピー装置
41〜43…アンシャープマスク
51…平滑化回路
52…差分絶対値回路
53…トーンカーブ補正回路
54…縮小化回路
55…平滑化回路
56…合成回路
57…強調化回路
Claims (21)
- 画像をドットマトリクス状の画素で多階調表現した画像データに基づいて画像の鮮鋭領域を検出する鮮鋭領域検出工程と、
非鮮鋭領域の側から鮮鋭領域の側に向かって徐々に鮮鋭度合いを上げていきながらある閾値においてその増加度合いの変化を大きくするように鮮鋭度合いを設定する鮮鋭度合設定工程と、
この鮮鋭度合設定工程にて設定された鮮鋭度合いに基づいて上記画像データに対して鮮鋭化する画像鮮鋭化工程と、
鮮鋭化された画像データを出力する画像データ出力工程とを具備し、
上記鮮鋭領域検出工程では、入力された原画像データとこの原画像データに対して平滑化処理をかけた平滑化画像データとの差分値についてトーンカーブ補正して鮮鋭領域の検出範囲を調整することを特徴とする画像鮮鋭化方法。 - 上記鮮鋭領域検出工程では、入力された原画像データと、この画像データに対して平滑化処理をかけた平滑化画像データとの差分が大きい領域を鮮鋭領域として検出することを特徴とする上記請求項1に記載の画像鮮鋭化方法。
- 上記トーンカーブ補正は、小さな絶対値を比例的に大きくさせることと、あるしきい値を設定してそれ以下のものは余り変化させないような急峻なS字カーブ状に補正すること、の少なくとも一方であることを特徴とする上記請求項1または請求項2に記載の画像鮮鋭化方法。
- 上記非鮮鋭領域検出工程では、上記原画像データに対して予めトーンカーブ補正しておいて上記非鮮鋭領域の検出に利用することを特徴とする上記請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の画像鮮鋭化方法。
- 上記鮮鋭度合設定工程では、画像の鮮鋭領域と非鮮鋭領域との境界において外側から内側にかけて徐々に鮮鋭度合い高めていくことを特徴とする上記請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の画像鮮鋭化方法。
- 上記鮮鋭度合設定工程では、画像の鮮鋭領域の中心をピークとして非鮮鋭領域の側から徐々に鮮鋭度合い高めていくことを特徴とする上記請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の画像鮮鋭化方法。
- 上記鮮鋭度合設定工程は、上記鮮鋭領域を平滑化してぼかしをかける平滑化工程と、平滑化させた領域を幅狭にして急峻な変化領域を設定する縮小化工程と、平滑化させた領域と急峻化させた領域とを合成してある閾値においてその増加度合いの変化が大きくなるようにする合成工程とを有することを特徴とする上記請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の画像鮮鋭化方法。
- 上記合成工程では、平滑化させた領域と急峻化させた領域とを足し合わせて合成することを特徴とする上記請求項7に記載の画像鮮鋭化方法。
- 上記合成工程では、平滑化させた領域と急峻化させた領域とのうち鮮鋭度合いが大きい方の値を選択して合成することを特徴とする上記請求項7に記載の画像鮮鋭化方法。
- 上記画像鮮鋭化工程では、平滑化した画像データと元画像データとの差分に上記設定された鮮鋭度合いを乗算しつつ、同元画像データに加算して鮮鋭化処理することを特徴とする上記請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の画像鮮鋭化方法。
- 画像をドットマトリクス状の画素で多階調表現した画像データに基づいて画像の鮮鋭領域を検出する鮮鋭領域検出手段と、
非鮮鋭領域の側から鮮鋭領域の側に向かって徐々に鮮鋭度合いを上げていきながらある閾値においてその増加度合いの変化を大きくするように鮮鋭度合いを設定する鮮鋭度合設定手段と、
この鮮鋭度合設定手段にて設定された鮮鋭度合いに基づいて上記画像データに対して鮮鋭化する画像鮮鋭化手段と、
鮮鋭化された画像データを出力する画像データ出力手段とを具備し、
上記鮮鋭領域検出手段では、入力された原画像データとこの原画像データに対して平滑化処理をかけた平滑化画像データとの差分値についてトーンカーブ補正して鮮鋭領域の検出範囲を調整することを特徴とする画像鮮鋭化装置。 - 上記鮮鋭領域検出手段では、入力された原画像データと、この画像データに対して平滑化処理をかけた平滑化画像データとの差分が大きい領域を鮮鋭領域として検出することを特徴とする上記請求項11に記載の画像鮮鋭化装置。
- 上記トーンカーブ補正は、小さな絶対値を比例的に大きくさせることと、あるしきい値を設定してそれ以下のものは余り変化させないような急峻なS字カーブ状に補正すること、の少なくとも一方であることを特徴とする上記請求項11または請求項12に記載の画像鮮鋭化装置。
- 上記非鮮鋭領域検出手段では、上記原画像データに対して予めトーンカーブ補正しておいて上記非鮮鋭領域の検出に利用することを特徴とする上記請求項11〜請求項13のいずれか一項に記載の画像鮮鋭化装置。
- 上記鮮鋭度合設定手段では、画像の鮮鋭領域と非鮮鋭領域との境界において外側から内側にかけて徐々に鮮鋭度合い高めていくことを特徴とする上記請求項11〜請求項14のいずれか一項に記載の画像鮮鋭化装置。
- 上記鮮鋭度合設定手段では、画像の鮮鋭領域の中心をピークとして非鮮鋭領域の側から徐々に鮮鋭度合い高めていくことを特徴とする上記請求項11〜請求項14のいずれか一項に記載の画像鮮鋭化装置。
- 上記鮮鋭度合設定手段は、上記鮮鋭領域を平滑化してぼかしをかける平滑化手段と、平滑化させた領域を幅狭にして急峻な変化領域を設定する縮小化手段と、平滑化させた領域と急峻化させた領域とを合成してある閾値においてその増加度合いの変化が大きくなるようにする合成手段とを有することを特徴とする上記請求項11〜請求項16のいずれか一項に記載の画像鮮鋭化装置。
- 上記合成手段では、平滑化させた領域と急峻化させた領域とを足し合わせて合成することを特徴とする上記請求項17に記載の画像鮮鋭化装置。
- 上記合成手段では、平滑化させた領域と急峻化させた領域とのうち鮮鋭度合いが大きい方の値を選択して合成することを特徴とする上記請求項17に記載の画像鮮鋭化装置。
- 上記画像鮮鋭化手段では、平滑化した画像データと元画像データとの差分に上記設定された鮮鋭度合いを乗算しつつ、同元画像データに加算して鮮鋭化処理することを特徴とする上記請求項11〜請求項19のいずれか一項に記載の画像鮮鋭化装置。
- 画像をドットマトリクス状の画素で多階調表現した画像データに基づいてコンピュータにて画像を鮮鋭化させる画像鮮鋭化処理プログラムを記録した媒体であって、
入力された原画像データとこの画像データに対して平滑化処理をかけた平滑化画像データとの差分値についてトーンカーブ補正して鮮鋭領域の検出範囲を調整しつつ該鮮鋭領域を検出する鮮鋭領域検出ステップと、
非鮮鋭領域の側から鮮鋭領域の側に向かって徐々に鮮鋭度合いを上げていきながらある閾値においてその増加度合いの変化を大きくするように鮮鋭度合いを設定する鮮鋭度合設定ステップと、
この鮮鋭度合設定ステップにて設定された鮮鋭度合いに基づいて上記画像データに対して鮮鋭化する画像鮮鋭化ステップと、
鮮鋭化された画像データを出力する画像データ出力ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする画像鮮鋭化プログラムを記録した媒体。
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